どうなる!静岡茶 「駿河路や花橘も茶の匂ひ」と芭蕉の句にあるように、静岡県といえばお茶。 今月は新茶も出回り茶市場が最も活気づく時期だが、春先の低温による影響で、 お茶の生育が悪く生産農家の表情はさえない。加えて生活スタイルや嗜好の多 様化、少子高齢などお茶を取り巻く環境は激変しており、茶業全体の変革がま ったなしにもかかわらず追いついていないのが現状だ。 個別所得補償制度でお茶が再生できるか? 民主党のマニフェストの中に、農家の個別所得補償をするというのがある。 これは、農家に一定以上の所得補償をして、日本農業を発展させようとするも のだ。稲作農家には、補償することが決まっているようだが、本県の特産品で あるお茶やミカンは現行のカロリーベースによる算出では貢献度が低く、所得 補償の対象になる化のう性は低い。 お茶農家の中には、取引価格の低迷を理由に戸別所得補償を歓迎する声が強 いが、私は、戸別所得補償は一時的には農家を救うかもしれないが、本当の意 味でお茶の体質強化につながるかどうか疑問に思っている。 なぜなら、所得が補償されるということは、生産されるお茶の品質に関わら ず、お金が支払われることである。静岡茶全体の品質低下を招くことにもな りかねないからだ。 目標は「売れるお茶」 川勝知事は「本県の新茶は八十八夜前後が一番おいしい。お茶は出荷が早け れば早いほど高い値段がつくが、最もおいしい時期に価格が下がらないよう、 『八十八夜のお茶が一番』ということを文化として広めたい」と、静岡茶を『文 化』の観点から売り込む戦略を明かした。 私は静岡茶を世界で通用する産業に育てるには、何よりも『売れるお茶』を 実現することを当面の目標とすべきだと考える。 世界に通用する静岡茶にする 「日本の農業を活性化するには、マーケットを国内だけでなく世界にまで広 げて考える必要がある」。こう語るのは、東京大学大学院教授の本間正義氏だ。 同氏は日本の農業が向かうべき方向として農地の大規模化だけでなく、極論す れば作物1本ずつの生育条件をきめ細かくコントロールするような「精密農業」 も必要だと説く。 これは、そのまま静岡茶にも当てはまる。島国で起伏に富んだ日本、特に静 岡県のように中山間地を主体とした茶園を考えた場合、大規模化に限界がある のは明らかだ。日本の最大規模の茶園でも、中国では小規模茶園だ。とても大 規模化によるコスト低減だけでは海外に太刀打ちできない。たとえ大規模化し なくても、海外のお茶に勝てる方法を見つけることが必須である。 日本のものづくりを見ても、同じものを安く大量に造るメーカーだけが生き 残っているわけではない。少量であっても、高品質な製品を提供することで確 固たる地位を築いているメーカーは数知れない。 静岡茶の未来は高付加価値化 そこで必要となるのが、従来にない新しいお茶によって強さを身につける ことだ。規模の拡大によるコスト削減だけでは、恩恵を受けられるお茶農家は 限られるし、価格競争に巻き込まれる危険性もある。規模が小さくても『売れ るお茶』を実現することこそ、静岡茶再生につながる。 まずは、 「やぶきた」の標準製法から脱皮する必要がある。そのうえで、私は 静岡茶の未来は高付加価値化しないと考えている。無農薬有機栽培のお茶も有 望な手段の一つだ。 静岡茶再生に全力で取り組む 今、危機的な状況にあるお茶。お茶産業の再生は静岡県活性の源だ。今まで 以上に知恵をしぼり、静岡茶業会議所理事として汗を流し全力で取り組んでい く決意である。 静岡県議会議員 天の一
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