オンライン・英語発音トレーニング教材の開発と実践報告 今関雅夫・帝京大学短期大学 東京都八王子市大塚359 [email protected] 1.目的・意図 コミュニケーションにおいて、意味を伝える役割の 大きな部分を音声が担っていると考えると、イントネ 長・宮地利彦教授に仰ぎ、オンライン英語発音トレー ニング教材 (Access to Better English Pronunciation) を開発・制作した。 ーション、強弱、リズムを含め、正しい英語の発音を 音声分析ソフトに関しては、市販のものは多機能で 習得しておくことは重要である。この教材は、音声、 あるが数万円もするため、今回は波形と声紋(フォル 映像、音声分析ソフトを用いて、飽きずに楽しみなが マント表示) 、イントネーションに特化したオープン・ ら正しい英語の発音を習得することを目的に開発され ソースソフトウェアの WaveSurfer を用意した。学習 た。また、発音トレーニングをしていく中で、語彙力・ 者は自分のパソコンにダウンロード、インストールす 表現力も合わせて高められるようにも工夫されている。 ることで使用できる。 このようなオンライン教材を開発するにあたり、か つて筆者はネット上の英語発音関連サイトを 15 ほど調 べ、比較検討し、そこからネットを利用する理想的な 教材としては以下のような要素を備えていることが重 要であるということを指摘したことがある。 (帝京大学 短期大学紀要第 22 号) ①単語レベルでは、正しい発音を聞き、発音反復練 習をする。学習者の発音を録音、声紋分析し native speaker のそれと比較する。minimal pair による練習 をする。 ②語句(熟語)レベルでは、発音反復練習の他、音 連結や同化に対する練習もする。 2.内容および学習方法 「はじめに」では、なぜ発音学習が重要かを説き、 この教材の特色、学習方法、専門用語の解説を扱う。 「Pre-Unit (基本練習) 」では、alphabet から始ま り、曜日、月、季節、挨拶等の常套句の発音練習を行 う。 次に学習者は本教材のメインである学習ユニット 「発音トレーニング」に入っていく。 学習ユニット数は全部で 21 あり、内訳は、母音の発 音練習が 9 ユニット、子音の発音練習が 11 ユニット、 音連結や同化、イントネーションなどの解説、練習ユ ③文レベルでは、発音反復練習の他、機能語・内容 ニットが 1 つという構成になっている。各ユニットは 語、区切り方、イントネーションに注意しての練習を 概ね 12 のセクションからなり、学習者は以下のような する。 ステップで発音の学習をしていく。 ④文章レベルでは、文レベルの内容に加えて、感情 等の表現方法の練習をする。 ⑤音声素材の録音に関しては、reading のプロによ るものが理想である。 ⑥単語、熟語、文などの選択にあたっては、ただ単 なる発音練習のための発音に終わることなく、学習者 の教養や人間性を高められるような、教育的配慮が施 されたものが望ましいということも述べた。 以上のことを念頭に置き、制作を㈱ユニコンの水谷 嘉治氏に、アドバイスを帝京大学情報処理センター 各セクションの紹介(丸数字はセクション番号) ① ユニットで取り上げる発音を示す。 ② 発音の解説を読み、ネイティブの口の動きを参考 に発音練習をする。 ③ 及び④ 写真をクリックしながら単語の発音練 ⑫ 会話レベルの発音練習をする。 習をする。(導入部であるので楽しみながら発音 また、英語の歌を歌うことも発音向上につながるこ 練習してもらえるよう、写真をクリックすると音 とから、Units 8,9,19,20 の各セクション 12 では、よ 声が聞けるという形をとった。) く知られた英米の歌 (My Grandfather’s Clock、Home on the Range、The Water Is Wide) を用意した。歌詞 の発音練習をしてからネット上の推奨 MIDI を用いて 歌えるようになっている。 3.期待される効果 ①学習者は音声分析ソフトを使用し、モデルの発音 と比較することで、客観的に自分の発音を評価するこ とができる。また、このソフトのイントネーション機 ⑤ 及び⑥ 音声分析ソフトを用いてネイティブの 発音と学習者の発音を比較する。 能を用いれば、native speaker が会話などでいかに表 現力豊かに話しているかが分かる。 ②会話練習では role play(役割練習)も用意したの で、擬似会話練習ができる。 ③英語の歌もあり、楽しく英語の強弱やリズムを習 得することができる。 ④単語から文、会話レベルまでの発音の向上が図れ る。 ⑤このような発音練習を通して、語彙力を高め、英 語特有の表現を多く身に付けられる。最終的に、概算 ⑦ 比較練習 (minimal pair)をする。 ではあるが、単語数は 1,080、熟語・短文数は 180、文 ⑧ 聞き取りのテストを行う。 は 200 を習得することになる。 4.今後の課題 春学期は『言語と文化』という英語学関係の科目の 中で利用したこともあり、時間的な制約の中、全ユニ ットの半分ほどしかできなかった。学習者は音声分析 ソフトが入ったパソコンに向かい、マイク付きのヘッ ドフォンをして学習した。 「写真のクリック」 、 「音声分 ⑨ 単語レベルの発音練習をする。 析」に関心を示したが、単語や文の発音練習は 1 回程 ⑩ 熟語・短文レベルの発音練習をする。 度しかせず、反復練習が重要にもかかわらず、練習量 ⑪ 文レベルの発音練習をする。 が足りないように思えた。自宅でも学習できるオンラ イン教材の特性を活かし、学習を継続し、反復練習し てもらう方策を考えねばならない。 教材に関しては、音質の向上、各素材の再吟味等を し、ヴァージョン・アップを図ることを考えている。 その折には、今回はあまり素材として入れられなかっ た、学習者の知的・内面的な成長を高められるような ことばや文章(パッセージ)も入れたいと考えている。
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