離婚の撤回

離婚の撤回
最高裁昭和34年8月7日第二小法廷判決
(昭和32年(オ)第508号離婚届出無効確認請求事件)
民集13巻10号1251頁,家月11巻10号79頁
<事案>
1 X男とY女は協議離婚届を作成し
2 XはYに届出書を渡して届出を委託した
3 Yは昭和27年3月11日に市役所に提出して受理された
4 ところが、Xは前日の3月10日に市役所に対して離婚届に関して承諾していないか
ら受理しないでほしいと申し出た
5 Xから離婚届出無効確認を請求
2審は「市町村長に対して届出がなされた当時に夫婦ともに協議離婚をしようとする意
思を保有することが必要」としてXの請求を認めたため、Yが上告
<争点>
離婚届作成後の翻意を事前に市役所に対して通知していた場合、離婚届出は無効になるの
か?
<判旨>
上告棄却。
Yから届出がなされた当時にはXには離婚の意思がなかったものであるところ、協議離婚
の届出は協議離婚意思の表示とみるべきであるから無効とはいえず、かならずしも、離婚
に関しての翻意は相手方に表示されること、届出委託を解除する等の事実がなかったから
とはいえ無効であるとは言い難いとされている。
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<解説>
今回の協議離婚について考えてみると、現在の日本においての協議離婚制度は裁判所も通
さず、本人の出頭すら必要な要件に入っておらず当事者の意思に基づく離婚届さえ提出し
たならば、比較的簡単に離婚は成立する。だが、この容易さからか一方の当事者の意思は
関係なく他方が偽造した届出と提出することによって成立させるいわゆる追い出し離婚が
少なくなかった。したがって、不受理申出が存在しており、これを出しておけば勝手に離
婚が成立するという事態は回避することができるとされている。
では日本以外の国の離婚制度はどうなっているのか?
ドイツやフランスでは日本とは違い、裁判と介さなければならないために今回のような事
例の事態になることは少ないとされています。
そして、日本は平成19年の戸籍法改正によって法務省通達は廃止され、本人いわゆる当
事者が出頭しない限り受理しないように申し出ることが可能にした戸籍法27条の2第3
項は立法された。
そして、離婚には大まかに分けると4つ存在する。
協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚である。
1 協議離婚
夫婦の間で離婚について話し合い、お互いが離婚に合意したうえで、市区町村役所へ「離
婚届」を提出し、受理された時点で協議離婚は成立します。協議離婚は、「夫婦間の合意」
と「離婚届の提出」だけで離婚が成立するため、離婚する夫婦の約90%が「協議離婚」の
方法をとっています。協議離婚の特徴は、ほかの離婚の方法とは違い、離婚に際して夫婦
間で取り決めた内容に関して、裁判所は一切関与しないという点です。
2 調停離婚
夫婦間での話し合いでは、離婚が出来ないときは、夫婦の一方が家庭裁判所に離婚の調停
を申し立て「調停離婚」によって離婚する方法を考える必要があります。離婚の調停では、
夫婦間で話し合っても離婚の合意ができない場合や、離婚の合意はできていても、離婚に
伴う問題が夫婦間で解決できないために離婚に踏み切れない場合などに、家庭裁判所が夫
婦の間に入って、離婚問題を解決するためのサポートをしてくれます。調停という方法を
利用すれば、離婚そのものだけではなく、離婚に伴う「お金の問題(財産分与)」や「子
供の問題(親権、面接交渉権、養育費)」なども同時に解決することもできます。ただし、
家庭裁判所が判断を下すのではなく、協議離婚と同様に、最終的には夫婦の合意がなけれ
ば調停離婚は成立しません。離婚した夫婦の約10組に1組は「調停離婚」によって離婚して
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います。
3 審判離婚
夫婦間の意向の違いなどで、調停でも離婚が成立する見込みがなく、尚かつ家庭裁判所が
相当と認めたときには、家庭裁判所が独自の判断のもとに「調停に代わる審判」によって、
離婚を成立させることもあります。この方法を「審判離婚」といいます。調停離婚の場合、
最終的には夫婦間の合意が必要ですから、夫婦の一方がどうしても離婚に合意しなければ
調停離婚は成立しません。
4 裁判離婚
「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」のいずれの方法でも離婚が成立しない場合には、
夫婦の一方から地方裁判所に離婚の訴訟を起こすことが可能です。これを『離婚裁判(離
婚訴訟)』といい、離婚裁判で勝訴判決を得た場合には、一方が離婚を拒んでも強制的に
「裁判離婚」が成立します。たとえ夫婦の一方が離婚することに反対したり、離婚条件に
合意していないときでも「調停」の段階を経ずに、いきなり「離婚裁判」へと進むことは
出来ません。そのため、離婚した夫婦の約99%は、裁判離婚へ至る前に協議離婚や調停離
婚によって離婚している。
さらに上記で挙げた不受理届出制度というものは1の協議離婚において効果がでる制度で
ある。離婚届は、通常記入漏れやミスがない限り受理されてしまいます。そのため、自分
の知らないところで離婚届を偽造され、提出されると言う事も考えられます。相手が勝手
に離婚届を提出する恐れがあるときは、意思に反した離婚届が受理されることを防ぐため
に市役所に手続を行っておけば安心である。
国際離婚の場合はどうしたらいいのか?という疑問がでたので調べてみたら下記のように
なった。
国際結婚をした夫婦が離婚する場合、問題は「どこの国の法律が適用されるのか」という
ことです。適用する国の法律を「準拠法」と呼び、日本では次の1~3が段階的に適用され
ます。
1.離婚時の夫婦の本国が同一であれば、その本国法(本国法=夫婦それぞれの国の法律)
外国人の夫や妻が日本に帰化している場合は日本の法律が適用されます。
2.離婚時の夫婦の常居所が同一であれば、その常居所地の法律
日本に住民票がある場合には、日本が常居所(長期間にわたって居住し、生活の基盤とな
っている所)と認められ、日本の法律が適用されます。ただし、外国に5年以上継続して滞
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在しているときは、その国が常居所と認定され、その国の法律が適用されます。
3.夫婦に最も密接な関係のある地の法律
夫婦の一方が日本に常居所のある日本人の場合は、日本の法律が適用されます。
<私見>
今回の事例で考えたことがあり、日本もドイツやフランスのように裁判所を介せばこのよ
うな問題も簡単に片がつくと考えましたが、それでは裁判所を介するためのコストや時間
といった問題は発生してしまうので、日本はまだ改善していかなくてはならないところも
ありますが、裁判所を介さないという形は日本に合っているのではないかと考えます。余
談ですが、この事例を調べていく上で海外の離婚事情も軽く触り、なかなか面白かったで
す。
参考文献 判例プラクティス
民法Ⅲ親族・相続 松本恒雄、潮見佳男 編
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