離婚給付等契約

離婚給付等契約
~ 契約締結上の留意点について ~
目
Ⅰ
1
2
3
Ⅱ
1
2
離婚
離婚の方法
離婚の効果
まとめ
離婚給付等公正証書
公正証書の機能
記載事項
3 離婚給付等契約の性質
次
4
5
6
7
8
子の監護
財産上の効果
年金分割
清算条項
強制執行
Ⅱ
離婚
1
離婚の方法
調停前置
訴訟手続
調停手続
当事者の協議
○ 協議離婚
○ 調停離婚
○ 審判離婚
家事事件手続法
○ 認諾離婚
○ 和解離婚
○ 裁判離婚
人事訴訟法
(1) 離婚の方法と離婚の成立要件
要
離婚の方法
件
協議離婚
調
停
手
続
調停離婚
訴
訟
手
続
裁判離婚
審判離婚
認諾離婚
和解離婚
要
件
(離婚が成立するには)
①
②
①
②
①
②
当事者間の離婚の合意
市町村長に対する離婚届の提出
調停における当事者間の離婚の合意
同合意を記載した調停調書の作成
離婚を認める審判
異議申立期間(2週間)の経過又は異議申立てを却
下する審判の確定
① 離婚判決
② 同判決の確定
① 口頭弁論等期日における離婚請求の認諾又は離婚す
る旨の訴訟上の和解の成立
② 請求の認諾又は訴訟上の和解を記載した調書の作成
(2) 協議離婚とその他の離婚方法との異同
①
裁判離婚は当事者の意思を要件としないのに対し、協議離婚
及び調停離婚その他の離婚方法はこれを成立要件とする。
②
協議離婚は、離婚の合意と離婚届を離婚の成立要件とする。
但し、他の離婚方法では届出が戸籍法により義務付けられる。
離婚の合意
離婚届
離婚意思
届出意思
離婚の成立
②
協議離婚における離婚意思と届出意思は、離婚届の受理時に
存在することが必要である。裁判離婚を除くその他の離婚方法
は調書記載時に離婚意思が必要である。
離婚意思の形成
離 婚 の 合 意
(離婚の成立)
離婚意思の不
存在・瑕疵等
(調書への記載)
届出意思の形成
離婚意思の消滅
離婚届の作成
届出意思の不存在等
離婚届の提出
離婚の成立
離婚届の受理
不受理
戸籍への記載
戸籍の訂正
離婚届の
不受理申出
家裁の許可等
離婚無効
2
離婚の効果
(1) 離婚の主たる効果
(1) 同居協力義務からの解放
(2) 復氏。但し、3ヵ月以内の届出により離婚時の
氏を続称することができる。
(3) 相手方親族との姻族関係の終了
(4) 再婚の可能性~重婚禁止の解除
(2) 附帯処分等 ― 離婚時に解決を迫られる課題
協議の要素
効果の分類
子 の 監 護
財産上の効果
行政上の効果
そ
の
他
※
協議事項
協議期限
(1) 親権者・監護者の指定
離婚届受理時(離婚届には親権者の
(2) 面接交渉
(3) 養育費
(4) 財産分与~財産の清算、
離婚後の扶養及び慰謝料
(5) 損害賠償(慰謝料)
(6) 離婚時年金分割
(7) 祭祀供用物の承継
期限の定めなし
期限の定めなし
記載を要し、親権は監護権を含む。)
離婚時から2年の除斥期間
3年又は20年の時効期間
離婚時から2年の請求期間
期限の定めなし
表中、協議事項(1)「監護者の指定」、(2)~(4)(6)を「附帯処分」といい、こ
れに同(1)「親権者の指定」を含めて「附帯処分等」という。協議事項(5)は離婚
訴訟に併合可能な関連損害賠償請求事件であり、同(7)も家事事件である。
附帯処分等の解決方法 ― 同時解決の保障
解決方法
終了事由
調停の成立
離婚に伴う合意又は判断
判断対象外事項等の処理
申立に係る附帯処分等の全部又は一部に ○ 調停外事項~調停に代わる審判又は
関する合意(親権者の必要的指定?)
調停終了・取下
調 停 に 代 附帯処分等の全部又は一部に関する職権 ① 確定又は異議申立による審判の失効
② 審判外事項~調停の終了・取下
わ る 審 判 判断(親権者の必要的指定?)
認
諾
※ 離婚に限る。また、親権者指定の必要か附帯処分に係る申立があるときは、認
諾はできない。
○ 親権者の必要的指定
① 和解外事項の審理・裁判
○
申立に係る附帯処分の全部又は一部
訴訟上の和解
② 和解外事項の協議+申立取下
に関する合意
裁判(判決)
○ 職権による親権者の指定
○ 申立に係る附帯処分等の全て
訴 又 は 申
立 の 取 下
○ 協議離婚先行の場合の離婚時協議に
離婚の訴・調停の取下に伴う附帯処分等 よる解決済外事項の審理・裁判
に係る申立の全部又は一部の取下
○ その他の場合における当事者の協議、
再調停又は再訴
○ 確定又は不服申立て
(3) 各離婚方法の特有の効力
①
協議離婚には既判力・執行力はない。これに対し、裁判離
婚には既判力及び執行力が認められ、調停離婚・審判離婚、
認諾離婚・和解離婚には確定判決と同一の効力が認められる。
(既判力・執行力の存否)
効
力
既判力
執行力
協 議 離 婚
×
×
裁 判 離 婚
○
○
調停離婚・和解離婚等
△
○
離婚方法
(既判力と離婚意思等に係る主張可能な離婚無効事由)
離婚方法
協議離婚
裁判離婚
他の離婚方法
離婚意思の不存在
○
×
○
錯誤,詐欺・脅迫
○
×
○
離婚意思の消滅
○
×
×
届出意思の不存在
○
×
×
無効事由
※
②
裁判離婚は離婚意思を要件としていないから、その不存在等は、既判力とは
関係なく、離婚無効事由とはなり得ない。確定判決と同一の効力を有する調停
離婚等、離婚意思の表示を成立要件とするから、意思表示の効力を否定する事
由を既判力によって排除できない。
離婚方法の別は戸籍に記載される。
3
まとめ
(1) 協議離婚は離婚調停中及び離婚訴訟係属中でも可能であ
る。調停手続又は訴訟手続において離婚が成立した後は、
協議離婚の合意をしても無効である。
(2) 離婚調停中又は離婚訴訟継続中に協議離婚したときは、
調停取下げ、訴えの取下げが必要である。その際、裁判所
に対し、付帯処分等に関する合意内容を明らかにしなけれ
ばならない。
(3) 附帯処分等に関する協議は、これに関する裁判が確定す
るまですることができる。但し、附帯処分に関する申立て
係属中に協議の整ったときは、申立ての取下げが必要で、
その際、裁判所に対し、協議結果の明示が必要である。
Ⅱ
離婚給付等公正証書
1
離婚給付等公正証書の機能
(1) 離婚問題の適正な解決
○ 違法無効な合意の排除
ex.監護者の再婚を理由とする養育費の打ち切り
○ 必要な知識の提供
ex.離婚時年金分割制度
(2) 当事者の協議結果の確実な証明~協議離婚の弱点の補正
○ 文書成立の推定
○ 高い信用性(無効主張の排除)
○ 安全性(偽造・変造の排除)
(3) 強制執行機能~履行の確保
2
離婚の合意
離婚後の
子の監護
財産分与
財
産
の
清
算
損害賠償
祭祀承継
年金分割
そ
の
他
離婚給付等契約公正証書の記載事項
離婚の効果に関する事項
左記事項の執行に関する事項
① 離婚の合意
② 離婚の届出
③ 親権者・監護者の指定
④ 面接交渉(父又は母と子との面 ⑭ 住所・勤務先
会及びその他の交流)
等の変更通知
⑤ 養育費
⑥ 夫婦協力により得た財産の分与
⑮ 強制執行認
⑦ 離婚後の扶養
諾(金銭債権
同 上
等に限る。)
⑧ 有責配偶者から他方当事者に対
する慰謝料の支払い
⑨ 墳墓その他祭祀供用物の承継
⑩ 両当事者の年金分割請求の意思 ⑫ 保険料納付記録分割請求者
⑪ 標準報酬分割割合に関する合意 の指定
⑫ 清算条項
3
離婚給付等契約の法的性質
(1) 離婚合意等の法的性質
ア
離婚前
(ア) 離婚の合意 ― 事実上の離婚の予約
○ 法的拘束力なし(身分行為の本人意思尊重の原則)
○ 不当な離婚予約の破棄を理由とする損害賠償は可能
か?
○ 公正証書作成時の離婚意思(届出時におけるその存在
の間接事実)の証明手段となる。
(イ) 離婚給付等契約 ― 離婚を解除条件とする法的契約
イ
○
離婚後
離婚給付等契約 ― 離婚給付等を内容とする法的契約
(2) 離婚給付等契約公正証書の作成と代理
ア
離婚(創設的身分行為)は代理になじまない。
イ
離婚前の離婚給付等契約は離婚の合意を含む。
(ア) この離婚の合意には法的拘束力がないから、代理による
証書作成の法的障害とはならない。
(イ) 但し、公正証書は離婚届時の離婚意思の存在を証明する
手段としての機能があり、代理による証書作成は、この機
能を阻害し、望ましくはない。
(ウ) 代理の不正を防止する手段が整備されていない。
(エ) 代理による証書作成が許される場合
① 代理による作成を止むを得ないとする事情の存在
② 代理人は弁護士等に限る。
③ 公証人による委任状の認証
(3) 離婚届の提出
ア より強く離婚を求める一方配偶者に届出権限を与え
る。
(ア) 離婚届提出時 ― 離婚の意思及び届出意思の存在
(イ) 離婚における本人意思尊重の原則~離婚届の不受理申出
制度
(ウ) 使者による届出~本人の意思表示の伝達手段
(エ) 実際の取扱い
公正証書作成時に離婚届を完成させて持参させ、証書作成
後直ちに離婚届を提出させる。
4
子の監護に関する処分
(1) 親権者・監護者の指定
ア
親権と監護権の位置付けと相互関係
配慮の主体
配慮の類型
親がいるとき
子の監護教育
(身上監護権)
親がいないとき
公法的保護
後見
児童福祉法
親族扶養
生活保護法
監護
子の財産管理
(財産管理権)
親権
経済的扶養
親子扶養
イ
身上監護権の内容(民法820条)
(ア)
(イ)
(ウ)
(エ)
(オ)
居所指定権(民法821条)
懲戒権(民法822条1項)
職業許可権(民法823条1項)
子の引渡し請求権
身分上の行為の代理権(具体的には個別の規定で定めている。)
ex. 代諾縁組(民法797条)、子の氏の変更申立て(民法791条)等
ウ
財産管理権(民法824条)
(ア) 財産の管理
エ
(イ) 法定代理権
親権者と監護者の分離
(ア) 親権者の変更~家裁の調停又は審判(民法819条6項)
(イ) 監護者の変更~当事者の協議(非戸籍記載事項)
(2) 面接交渉
ア
性質
面接交渉権といわれているものは、面接交渉を求める請求権では
なく、子の監護のために適正な措置を求める権利であるというのが
相当である。
イ
履行確保手段~基本的には、任意的履行
○
○
損害賠償を認めた例あり
「面接交渉させないときは、養育費を支払わない。」との
文言を入れられるか。
ex. 非親権者である実父の遺言
ex. 非親権者である実父の両親の遺言
(3) 養育費
ア
法的性質~監護費用の分担
親権者
監護費用の支払い
非親権者
監護(扶養)
扶養義務
未成年の子
監護費用の支払いは、扶養義務の履行方法としての側面もある。
イ
扶養義務の分類~生活扶助義務と生活保持義務
扶養の程度及び方法は扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一
切の事情を考慮して決せられる。
ウ 養育費の額、支払期間、事情変更による増減、特別
費用の負担~強制執行との関係
(1) 養育費算定表(判例タイムズ1111号)
(2) 20歳までが原則。但し、大学卒業までの例も増加傾向
(3) その他
エ
親権者の再婚、再婚相手との養子縁組
オ
監護費用支払いの担保
ex.
所得補償保険・生命保険等の活用
5
財産的効力
(1) 財産分与
ア
財産分与の法的性質 (民法768条1項)
(ア) 潜在的共有財産の清算
(イ) 離婚後の扶養
(ウ) 損害賠償(慰謝料)
イ
財産分与の対象財産~潜在的共有財産
(夫)
婚姻期間
特
有
財
産
(妻)
共有財産
特
有
財
産
ex. 夫が父から1,000万円の贈与を受けた場合
ex. 夫が父から住宅資金とした1000万円の援助を受けて、2,000万円の住
宅を購入し、離婚時その評価額が1,000万円となっていた場合
ex. ローン付き自宅土地建物の給付
ウ
離婚後の扶養
(2)
損害賠償(慰謝料)
(ア) 法的性質~不法行為
(イ) 財産分与として慰謝料を受け取った場合に、別途
損害賠償請求ができるか。~清算条項との関係
6
年金分割
(1) 合意分割と3号分割
ア
イ
合意分割~平成19年4月1日実施
3号分割~平成20年4月1日実施
(2) 清算条項との関係
7
(1) 養育費
ア 監護費用
(1) 財産分与
(2) 年金分割
清算条項
イ
扶養の代理請求
8
強制執行認諾条項
(1) 執行証書~表示事項
ア
イ
金銭の一定の支払い等を目的とする請求
強制執行認諾文言
(2) 強制執行に至る手続
(3) 自宅のローンの連帯保証