2012 年度 修士論文 伝統文化に関する学習を盛り込んだ歴史教育における 新授業構想の提案 奈良教育大学大学院 修士課程 教科教育専攻 社会科教育専修 113202 木之下 昇平 目 1. 次 序論 1.1 伝統文化とは何か ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.2 伝統文化に関する学習の教育的意義 1.3 本研究の目的と方法 2. ・・・・・・・・・・・・・・・2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 歴史教科書における文化の扱われ方の概要 2.1 小学校の歴史教科書における文化の扱われ方と素材選択 ・・・・・・7 2.2 中学校の歴史教科書における文化の扱われ方と素材選択 ・・・・・・9 2.3 歴史教科書における文化の扱い方の問題点 3. ・・・・・・・・・・・・13 伝統文化に関する学習を歴史教育に盛り込んだ授業構想を行うにあたって 3.1 墨を素材とした理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 3.2 「奈良墨づくり」の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 3.2.1 固形墨づくりの概要 3.2.2 墨汁づくりの概要 3.3 墨に関する授業の実際 4. ~「奈良墨」を事例として~ 歴史教育における文化史学習のあり方の新提案 ~伝統文化・墨を素材として~ 4.1 年間指導計画における文化史の扱い方に関する新提案 4.2 授業開発「墨の歴史とこれから」 5. ・・・・・・・25 ・・・・・・・28 ・・・・・・・・・・・・・・・・33 結論 5.1 本稿の成果 5.2 本研究の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38 脚注 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 調査教科書・副読本一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43 参考文献・参考資料一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44 資料編 1.序論 1.1 伝統文化とは何か 我々は、絶えず古い文化を吸収・加工し、新しい文化を生み出して生活している。この ような過程を踏んで生み出されてきた現代の文化の代表例として、携帯電話やパソコンな どの電子機器を挙げることができる。しかし、このように絶えず変化する文化がある一方 で、先人が構築した文化が後世に脈々と伝承され今日に至っている文化も存在する。これ が伝統的な文化(以下、伝統文化とする)である。 藤本(2010)は、伝統文化について、以下の 3 つに分類して定義している。 1.生活文化(販売・消費・地域における開発・伝統工芸など、地域の生活とかかわりの深い 伝統と文化) 2.食文化(食糧生産や料理など、地域の食生活とかかわりの深い伝統と文化) 3.芸能文化(浄瑠璃や神楽、邦楽など、地域の芸能とかかわりの深い伝統と文化) つまり、伝統文化はある一定の地域において発展した文化で、その地域内では普遍的かつ 不変的であり、人々のくらしに関連した文化なのである。そしてそれは、実際に存在する 有形の文化から人々の意識に内在しているような無形の文化まで、数多の現れ方がある。 2006(平成 18)年に農林水産省農村振興局が発行した「美の里づくりガイドライン」1)で は、伝統文化の現れ方として具体的に次のようなものを挙げている。 1. 日常の生活行為(伝統的な衣食住様式) 2. 言語(方言、ものの名称) 3. 生産技術(農作業方法や工芸技術) 4. 空間の利用形態(集落形態、山河の利用方法) 5. 祭礼神事(年中行事、人生儀礼) など 上記のような現れ方をする伝統文化には、地域の気候やその地域に暮らす人々に伝わる 古くからの考え方などといった、いわゆる地域性というものが影響している。したがって、 それらは他地域では簡単に模倣できないということもまた大きな特徴である。 「ガイドライ 1 ン」では、上記の伝統文化の現れ方が「ハレ(非日常)」と「ケ(日常)」の要素にも分類 できるとし、前述の「有形・無形」の軸を合わせた両軸の総体として認識するべきである と主張している。 また、その土地や人々のくらしに密着して現れる伝統文化にとって、伝承様式や変容の 仕方もまた重要な構成要素であると言える。一般的に伝統文化とは以下のように構築され、 継承されてきた。 1. 生活の必要の中で構築 2. 各時代各世代の役割として伝承 3. 変容しながらも地域独自の形態を構築 4. 地域特性として潜在化=地域性の創造 しかし、近年ではこうした伝統文化の継承ルートが消失の危機を迎えている。従来存在 した世代間の繋がりが希薄になり、集落や自治会組織も形骸化している。教育現場では、 地元出身の教員の減少で、地元の伝統文化に長けた教員が少なく、特殊技能が必要な伝統 文化は後継者不足に悩まされている。 このように、伝統文化の継承に暗雲が立ち込めている今、この問題を取り上げることに は大きな意義がある。人々が伝統文化を学び伝えるという行為には、人と人を繋ぐだけで はなく、地域を相互に結びつける効果があり、それは社会個性(アイデンティティ)を現 す効果がある。そして、それは当然ながら伝統文化それ自体の普及にも繋がる。伝統文化 の継承を促すひとつの方策として「教育」があろう。次節では、伝統文化に関する学習の 教育的意義について述べたい。 1.2 伝統文化に関する学習の教育的意義 伝統文化に関する教育を行う際、「伝統的な工業」2)として具体的生産物を取り上げるこ とが多い。小学校における社会科教育で「伝統的な工業」が初めて取り上げられたのは、 小学校指導要領の第 5 次改訂(1989)時である。 「伝統的な工業」は当時第 5 学年に導入さ れ、近代的な設備を使って製造する「近代的な工業」との比較において扱われた。それは、 その後 1998(平成 10)年の学習指導要領改訂において第 3・4 学年に移行され、 「地域学習」 の対象として位置づけられた。これは、伝統文化のもつ「地域社会の独自性」の要素が極 2 めて強いからであるといえる。2008(平成 20)年改訂の学習指導要領(以下現行学習指導 要領)では、地域の伝統や文化を学ぶツールとして「伝統的な工業」という言葉が用いら れており、「近代的な工業」との比較という観点よりもむしろ「地域学習」として地域の伝 統文化そのものを学ぶ方向に学習の重点がシフトされた。 では、現行学習指導要領における「地域学習」の目的とは何であろうか。小学校におけ る現行学習指導要領には第 3 学年及び第 4 学年の社会科目標について以下のように示され ている。 1.地域の産業や消費生活の様子、人々の健康的な生活や良好な生活環境及び安全を守るため の諸活動について理解できるようにし、地域社会の一員としての自覚をもつようにする。 2.地域の地理的環境、人々の生活の変化や地域の発展に尽くした先人の働きについて理解で きるようにし、地域社会に対する誇りと愛情を育てるようにする。 3.地域における社会的事象を観察、調査するとともに、地図や各種の具体的資料を効果的に 活用し、地域社会の社会的事象の特色や相互の連携などについて考える力、調べたこと や考えたことを表現する力を育てるようにする。 安藤(2005)によると、現在の小学校社会科授業カリキュラムは、同心円的拡大の原理 に基づいて構成されている。この理論に基づくと、小学校中学年で学習する「地域学習」 は単に地域に関する学習だけで終わることなく、小学校高学年・中学校における「国土理 解」や国際社会の中の「異文化理解」に関する学習へ繋げていく必要がある。安藤はこの 理論に対し、子どもの視野を身近な地域から世界的なものへと「繋げる」だけではなく、 子どもの身近な地域と国や県、そして世界を「比べる」という視点の重要性を指摘してい る。さらに安藤は、歴史学習を国際化や多文化学習のカウンターパートとして機能すると 認識し、小学校第 6 学年から学ぶものではなく、例えば低学年の生活科などにおいても昔 話などで取り上げる余地があることを指摘している。このような「比べる」という視点を 社会科学習に持ち込むことは、従来の「繋げる」という視点による「網羅的な暗記主義」 (安 藤 2005)に陥ることを防ぐ可能性がある。 安藤の理論は、主に小学校高学年社会科における視点を中学年や低学年にも持ち込むこ とで、複合的な視点を持った社会科教育を実践しようというものである。しかし、社会科 教育に「比べる」という視点を持ち込むのであれば、高学年の内容を前倒しして扱うだけ 3 ではなく、中学年までに学習した内容を高学年においてより発展的に理解させる必要も生 まれる。つまり、現行学習指導要領における中学年の社会科目標である「地域社会の一員 としての自覚」 ・ 「地域への誇りや愛情」を育むことは小学校第 3・4 学年のみで学ぶ一過性 のものではなく、その後の小学校高学年における社会科授業カリキュラムの中でも継続し て指導していくべきである。このことは、上記のような知識を「繋げる」だけの授業にな ることを防ぐことができ、学習者である子どもたちにとって、日本や世界と自分たちの住 んでいる地域を「比べ」 、自分たちの地域が日本・世界に果たしている役割をより複合的な 視点で理解することができる。 小学校の現行学習指導要領における第 5 学年、第 6 学年の目標・内容における以下の文 言からは、「伝統的な工業」、総じて伝統文化を小学校高学年社会科カリキュラムで指導で きる可能性を見出すことができる。 [第 5 学年] 1.目標 (2)我が国の産業の様子、産業と国民生活との関連について理解できる ようにし、我が国の産業の発展や社会の情報化の進展に関心をもつようにする。 2.内容 (3)我が国の工業生産について、次のことを調査したり地図や地球儀、資料などを 活用したりして調べ、それらは国民生活を支える重要な役割を果たしていることを考える ようにする。 ア 様々な工業製品が国民生活を支えていること。 イ 我が国の各種の工業生産や工業地域の分布など。 ウ 工業生産に従事している人々の工夫や努力、工業生産を支える貿易や運輸などの働き。 [第 6 学年] 1.目標 (1)国家・社会の発展に大きな働きをした先人の業績や優れた文化遺産 について興味・関心と理解を深めるようにするとともに、我が国の歴史や伝統を大切にし、 国を愛する心情を育てるようにする。 (3)社会的事象を具体的に調査するとともに、地図 や地球儀、年表などの各種の基礎的資料を効果的に活用し、社会的事象の意味をより広い 視野から考える力、調べたことや考えたことを表現する力を育てるようにする。 2.内容 (3)世界の中の日本の役割について、次のことを調査したり地図や地球儀、資料な どを活用したりして調べ、外国の人々と共に生きていくためには異なる文化や風習を理解 し合うことが大切であること、世界平和の大切さと我が国が世界において重要な役割を果 たしていることを考えるようにする。 4 ア 我が国と経済や文化などの面で繋がりが深い国の人々の生活の様子 イ 我が国の国際交流や国際協力の様子及び平和な国際社会の実現に努力している国際連 合の働き 伝統文化の高学年における教材化に関する先行研究は複数ある。吉田(2010)は、 「世界 に誇れるもの」という視点で、日本の伝統的な「秩序」に関して授業プランを発表してい る。安野(2010)は、文化遺産教育の一層の充実を提唱し、「受け継ぎ・次世代につなぐ」 教育の重点的に実行すべきであると述べている。これらは、日本古来の風習や文化遺産の 「よさ」を学び取ることに重点を置いて、論が展開されている。佐島(1992)は、「伝統・ 文化」の学習モデルとして、1.体験化(遊びだすことから創り出すことへのアプローチ)・ 2.地域化(所属感へのアプローチ)・3.人間化(人間理解へのアプローチ) ・4.自分化(解決 行動へのアプローチ)の 4 点を提唱している。これに関して、金子(2004)は、第 3・4 学 年の教科書や社会科教育副読本における「伝統的な工業」の扱いが、 「地域性」と「人間性」 を生かし切れていない点を指摘している。金子は小学校第 5 学年の授業内容に「伝統的な 工業」を組み込むことで、上記事項に関する改善を図り、佐島は上記の「伝統・文化」に 関する学習モデルを歴史学習の中に組み込むことは、「伝統・文化」に関する教育の充実が 図られる他、年代を追って教えるものというイメージが持たれがちな従来の歴史教育にと っても大きな効果があると述べている。 1.3 本研究の目的と方法 前節でも述べた通り、暗記型の社会科教育から脱却し、子ども達に考えさせるような授 業のあり方を目指すならば、「比べる」という視点が非常に重要になる。そして、それはす なわち従来の同心円的拡大カリキュラムを基軸としつつ、小学校ならば低・中学年でも高 学年の視野を持たせるための学習を行い、逆に高学年でも低・中学年で持った視野をより 拡充するようなカリキュラム構成を工夫する必要が出てくるということである。その方策 のひとつが、現行学習指導要領では中学年の地域学習における学習内容となっている伝統 文化に関する内容を高学年の歴史教育で取り扱うものである。 伝統文化を歴史教育の中で取り扱うには、文化史の内容の一環として扱うのが妥当であ ろう。よって、本稿でも歴史教育における文化の扱われ方の現状に対しては、批判的な立 場に立って論を進めていくことになる。 5 高山(1990)は、 「歴史とは広義の文化そのものである」と述べている。筆者も、歴史を 学ぶ究極の意義は先人から脈々と受け継がれた文化を学ぶことであると考えている。しか し現在の小学校における歴史教育では、政治史を学ばせることに非常なる重きが置かれて おり、文化についてはそれほど重要視されていないのが現実であろう。そこで本稿では、 歴史教育における文化史の扱われ方に関して再検討を行った上で、伝統文化を文化史学習 に組み込んだ新授業構想を提案したい。 はじめに小学校・中学校の歴史教科書を分析し、文化がどのような単元においてどの程 度扱われているのかを検証し、その上で浮上した問題点について述べたい。次に、現在の 小学校社会科教育における伝統文化の扱われ方の実際を述べ、これについても問題点を指 摘する。素材としては、資料収集上の便宜を得やすいことを考慮し、筆者の出身地である 奈良県奈良市における伝統文化・墨を用いたい。そのため、奈良墨の製造工程や現在の使 用状況なども併せて述べることにする。 最後に、これらのことを踏まえて、文化史学習の中に伝統文化に関する学習を取り入れ る余地があるかを検討する。具体的には、奈良市において採択されている東京書籍の小学 校第 6 学年社会科教科書の指導計画作成資料をもとに、可能な範囲で文化史学習の時間を 増加させるとともに、そこに伝統文化に関する学習を盛り込んだ筆者独自の指導計画改善 案を提示する。 次章では、小学校及び中学校の歴史教科書において、文化史に関する事項が何の素材を 用いてどのように扱われているのか、現状を明らかにすることにする。なお、本稿でいう 歴史教科書とは、小学校の場合小学校社会科教科書(6 年上)、中学校の場合は社会科教科 書(歴史的分野)のことをそれぞれ指す。 6 2.歴史教科書における文化の扱われ方の概要 2.1 小学校の歴史教科書における文化の扱われ方と素材選択 本節では小学校歴史教科書の日本の歴史に関する大単元の記述における文化の扱われ方 と素材選択について調査し、その結果を述べる。本調査の対象とする教科書は、近畿 2 府 4 県 3)で 2012(平成 24)年度に採択されている社会科教科書のうち、採択率上位 5 冊(東京 書籍、日本文教出版 A・B4)、光村図書、教育出版)の 2009(平成 21)年度検定済教科書 とする。記述の調査結果をまとめたものが資料 1(巻末)である。 まずは、古代における各教科書の文化の扱い方について見ていきたい。飛鳥時代以前の 古代は文献資料が残っていないため、各社とも遺跡や古墳の発掘状況から当時の人々のく らしを考察するという方法を取っている。このため、扱う遺跡こそ違うものの、取り上げ られる内容は時代ごとにさほど変わりはない(縄文時代-竪穴住居・縄文土器・石器など、 弥生時代-米作り・弥生土器など、古墳時代-埴輪・鉄製武器など)。ただし、日本文教出版 B 版が時代ごとの食事の移り変わりについて扱っていたり、日本文教出版 A 版が衣服の移 り変わりについて扱っていたりし、文化に対する出版社独自のアプローチが伺える。 奈良時代に入ると、現存する古文書 5)を参考にしているため、文化へのアプローチも少し ずつ変容してくる。貴族と庶民の食事についてそれぞれ復元し、イメージ写真を掲載して いる教科書が多いことはそのことを如実に示している。もっとも、当時の食事の復元につ いて何の文書をもとにして行われたのかという説明書きはどの教科書にもなされていない。 ただし、後述する清水書院版中学校歴史教科書には「(長屋王)邸宅跡で発見された大量の 木簡からわかった貴族の食事は豪華なもので・・・(以下略)」と述べられており、小学校 歴史教科書における食事の復元もこれらの木簡をもとに行われたものと推測できる。 このように、古文書には書写材料が紙の他に木簡も存在し、3 冊(日本文教出版 B、光村 図書、教育出版)が木簡について写真を載せて扱っている。日本古代の木簡は「文書木簡」・ 「付札(荷札)木簡」・ 「その他(主に習書木簡など)」に大別される(市 2012)。この定義 で 3 冊に掲載されている木簡を見ると、そのいずれもが付札木簡であり、特に光村図書版 には「木簡を調べると当時の暮らしが見えてきます。」という説明がなされている。しかし、 どの教科書にも付札木簡以外の木簡の種類に関する説明はなされていない。光村図書版に はさらに「紙は貴重なものだったので、このような木の札が、手紙や荷札として使われま した。」という説明がなされている。市はこの見解について、一面では正しいものの、木簡 7 が何度も削って使用できるというメリットを指摘し、決して紙が高価であるという理由だ けが当時木簡が人々の間で重宝された理由ではないとも語っている。 平安時代に入ると、国風文化の説明の過程ですべての出版社がひらがな・かたかなの成 り立ちについて図入りで説明している。東京書籍版には伝・紀貫之筆寸松庵色紙も写真で 掲載されており、当時書かれたかな文字に触れることもできる。当時の宮中の生活のよう すは各社とも大和絵を掲載したり、光村図書版は小コーナーを設けて貴族のくらしについ てまとめたりしている。しかし、庶民のくらしについての記載といえば、東京書籍版が僅 かに庶民の食事について触れているくらいである。 これらのことから、教科書における古代の文化に関する扱いは、時代を経るにしたがっ て一般庶民を対象にしたものから徐々に上流貴族のみを対象としたものに変容しているこ とが伺える。また、古文書が現存しているものについては写真、その他については絵とい うように、現在では想像しにくい当時の文化を視覚的に理解させようという教科書会社の 配慮が垣間見られる。 中世における文化は、武家社会の中で生まれた風習を中心に扱われている。鎌倉時代で は光村図書版と教育出版版がやぶさめを写真で紹介している。室町時代に入ると、全社の 教科書が金閣・銀閣の写真を掲載し、室町文化を学ばせる足がかりとしている。室町時代 には、伝統文化として現在まで受け継がれてきた茶の湯・生け花・能などが写真入りで紹 介されている。加えて、伝統の継承に現在携わっている人物の話を載せたり、室町文化に ついて小コーナーを作ってより深く掘り下げたりするなど、今に伝わる室町時代の文化を 子ども達により深く理解させようとする各社の意図が伝わってくる。 近世では、導入で各社とも身分制について取り扱っている。その中で、文化の形成主体 としてはおもに町人が取り上げられている。江戸時代では元禄文化の紹介が中心で、浮世 絵が掲載されていたり、伝統芸能である人形浄瑠璃や歌舞伎などが現在でも行われている ことが写真などで記されたりしている。日本文教出版 B 版では、こうした町人文化と農村 のくらしを当時の食事によって比較しており、後に町人文化が農民や武士のあいだにも広 がっていったことが記載されている。 農村部の様子としては、各社で農具の改良が取り上げられている。しかし、そのいずれ もが文化としては扱われていない。同様に、庶民の学校として寺子屋、武士の学校として 藩校を取り上げている教科書もあるが、いずれも文化としては扱われていない。また、江 戸時代の鎖国政策下の外交として琉球や北海道、朝鮮や対馬のことについて触れている教 8 科書もあるが、いずれも細部まで掘り下げていない。 近代以降、表題に「文化」という文言がついているのは、僅かに日本文教出版 A 版の「科 学や文化の発展」という項目のみである。ここでは、明治維新後に近代化を目指す過程で 生まれた印刷の技術や美術、音楽などが取り上げられている。 しかし、表題にこそなっていないものの、近代以降の文化は主に人々の暮らしの変化と 関連付けながら記されている。明治期では、ガス灯・鉄道・郵便など、文明開化などによ って欧米化した文化を各社が絵や表を用いて記載している。大正期から昭和初期にかけて は、地下鉄・バス・デパート・ラジオ放送などが近代化の象徴として多くの教科書で取り 上げられている。戦時中の人々のくらしについては、各社がそれぞれ独自の切り口で迫っ ている。東京書籍版は疎開先の食事例を表にまとめて示しており、光村図書版は当時のア イロンやランドセルの写真を掲載したり、軍隊式の運動会プログラムを表にまとめて載せ たりしているのがその一例である。戦後は、高度経済成長以降急速に豊かになった人々の 暮らしについて、高速道路や新幹線、さまざまな電化製品や自動車などの普及を素材にま とめている教科書が多い。ただし、これらの扱いについては、高度経済成長における経済 の発展と結びつけて記述している教科書会社も多数あり、一概にすべてが文化として扱わ れているとは言い難い。大正期から戦時中を経て戦後に至るまでの暮らしの変化について は、各社総じて写真による掲載は非常に少なく、主に活字によって説明されているのが大 きな特徴である。また、それぞれが近代化・現代化の過程で生まれた文化であるため、伝 統的なものではない。 これらのことから考察すると、小学校歴史教科書では時代区分によって文化の意味する ところやその素材がずいぶん違うことが分かる。時代の中で特徴的な文化について、小コ ーナーを設けて具体的に掘り下げてはいるものの、それが後の時代にどのように受け継が れたのかが非常に分かりづらく、文化がその時代一過性のものとして読み手に捉えられて しまっても仕方ないような扱われ方をしている。もっとも、初めて歴史に触れる小学校第 6 学年の子ども達にとっては、政治史こそが歴史であり、文化史を過度に深追いできないと いう事情も一定の理解はできる。しかし、序論でも述べたとおり、歴史を学ぶ意義を考え る際、文化史を軽視しすぎることはいささか問題である。 2.2 中学校の歴史教科書における文化の扱われ方と素材選択 中学校における歴史教育は、小学校におけるそれに上積みをしていく形で行われている 9 と言えよう。従って、当然小学校での既習箇所と重複する部分も出てくる。では、中学校 の歴史教科書における文化の扱われ方で、小学校歴史教科書とは異なる部分はどのような ところなのであろうか。また、重複している部分での扱い方の違いはあるのだろうか。本 節ではそれらについて、主に小学校歴史教科書と比較しながら考察していきたい。本調査 に使用する教科書は、小学校社会科教科書と同じく近畿 2 府 4 県で 2012(平成 24)年度に 採択されている中学校社会科教科書(歴史的分野)のうち、採択率上位 5 冊(東京書籍、 日本文教出版、帝国書院、清水書院、教育出版)の 2010(平成 22)年度検定済教科書とす る。記述の調査結果をまとめたものが、資料 2(巻末)である。 原始時代は、各社とも人類の誕生と進化から話が始まっている。エジプト・メソポタミ ア・インダス・中国の四大文明については各社の教科書で扱われており、象形文字・くさ び型文字・インダス文字・甲骨文字といった各文明で発明された文字が写真入りで紹介さ れている。このうち、東京書籍・清水書院・教育出版のものに関しては、それぞれの書写 材料や用途などについても触れられており、どのような目的で文字が発明されたのかが非 常に理解しやすくなっている。ただし、各社ともに筆記具のことに関しては触れていない。 縄文・弥生時代における中学校歴史教科書と小学校歴史教科書の文化の扱いに関する大 きな違いは、後者が日本の代表的な遺跡の様子や発掘状況から当時の人々の暮らしを探っ ているのに対して、前者がそれを最小限に抑え、縄文・弥生時代がどのような時代であっ たのかを文章主体で表記している点である。したがって、後者で盛んに行われていた遺跡 写真の掲載は極端に減り、「当時のむらの暮らし」などと銘打たれて、各社ともジオラマや 挿絵を載せて当時の暮らしに迫っている。また、東京書籍版と清水書院版がタイトルに「文 化」という文字を入れてこの単元を文化史学習として扱っているのも小学校歴史教科書と の大きな違いである。帝国書院版は、「死因不明の人骨が見つかる!」という特設ページを 設け、周囲の状況や貝塚からの出土物などから当時の人々の生活の様子にもより深く迫っ ている。ただし、土器・銅剣・銅鐸など、写真などで掲載されている遺物については小学 校歴史教科書と大差は見られない。 古墳時代の扱いについては、小・中学校ともさほど大きな違いはない。大陸文化が伝わ り、須恵器 6)や漢字などが日本に伝わったことなど、各社概ね同じような史実を記載してい る。ただし、東京書籍版のみが「古墳文化」という小項目で埴輪・銅鏡・玉・銅剣や当時 の人々が死後の世界についての考え方を持っていたことなどを記載していることは特筆に 値する。 10 飛鳥時代では、小学校歴史教科書には一切扱われていなかった飛鳥文化が、「最初の仏教 文化」として各社で扱われている。小学校同様、中学校歴史教科書も、飛鳥時代以降は古 文書が現存している影響からか、文化というものの扱いが少し変容している。すなわち、 朝廷による中央集権化が図られ始めた飛鳥時代を契機に、文化においても庶民というより はむしろ中央に近いものが教科書において取り扱われているのである。法隆寺金堂釈迦三 尊像や広隆寺弥勒菩薩像などが、飛鳥文化の代表例として多くの教科書で扱われているこ とで、このことがよく分かる。飛鳥文化は、全社の教科書において「渡来人などによって 日本に伝えられた大陸文化が基になっている」という趣旨の説明がなされており、古墳時 代(文化)からの連続性を学びやすい部分である。連続性という観点で見れば、日本文教 出版版が「国際色豊かな文化」という括りで飛鳥文化と天平文化をまとめて取り扱ってい るのは、他社にはない斬新な構成である。また、清水書院版は飛鳥文化と区別して唯一白 鳳文化 7)にも触れており、コラムを作って説明している。 奈良・平安時代における文化に関する記載については、小学校歴史教科書とあまり差異 がない。ただし、ほとんどの教科書で万葉集における万葉仮名の読み方が記されていたり、 平等院蔵阿弥陀如来像の写真が掲載されていたりといったように、細かい点で小学校歴史 教科書とは違ったところも見られる。そのような中で、教育出版版は木簡や文字の歴史に ついて他社よりも詳しく触れており、「木簡が語る人々の暮らし」、「文字の移り変わり」と いったタイトルでページを別に割いて扱っている。前者は、木簡にどのようなことが書か れており、どのようなことが分かるのか・どのようにして使用したのか・なぜ現存してい るのかなどが記されている。後者は、万葉仮名の成立からひらがな・かたかなへの変遷過 程について図式を交えて説明している。図式中には日本最古の古文書である『法華義疏』 も写真で掲載されており、「日本最古の肉筆といわれている」と説明書きがなされている。 中世では、小学校歴史教科書では扱いが無かった鎌倉文化について各社とも取り扱って いる点が大きな特徴である。主に、鎌倉新仏教や軍記物(平家物語)、随筆(方丈記など) や新古今和歌集などについて活字で説明されている他、東大寺南大門・金剛力士像などは 写真入りで掲載されている。また、当時の庶民の暮らしの様子についても触れている出版 社が多く、二毛作や定期市、製塩技術の説明がなされている教科書もあった。室町文化で は、各社が小学校歴史教科書における内容に加え、御伽草子・連歌・七夕・盆といった庶 民が担い手となった伝統的な文化にまで話を広げて記述している。また、日本の文化に加 え、琉球やアイヌ、朝鮮の文化についても扱っている出版社が多い。 11 安土桃山時代の文化についても、小学校歴史教科書では全く取り上げられていなかった 部分である。医学・天文学・航海術・活版印刷術・メガネ・時計などといった西洋の文化 さん しん (南蛮文化)や陶芸などの東アジアからの文化、三線などに代表される琉球の文化が相次 いで日本に流入してきたことは各社それぞれ取り扱っている。中世に代表される武家文化 という視点では、千利休による侘び茶の大成や姫路城、大阪城などの日本を代表する城を 桃山文化として扱っている教科書もある。日本文教出版版では、 「城下町姫路」を取り上げ、 今も残る町名や地形図から当時の城下町としての名残を探すというコーナーを設けている。 ここでは、木綿問屋や染物業者など、当時から存在したいろいろな職業が紹介されている。 また、阿国歌舞伎・囲碁・将棋・双六・浄瑠璃・小袖・木綿の広まりなど、庶民の文化を 扱った教科書も数冊あった。ここまで見てくると、中学校歴史教科書の中世における文化 は、小学校歴史教科書のそれのように一概に武家の文化という括りで扱われてはおらず、 普遍的に暮らす庶民の生活文化にも目を向け、より広い視点で述べられていることが分か る。また、これらの文化史のまとめ方にも各社とも工夫が凝らされている。例えば、東京 書籍版は室町時代の生活文化を現代と比較するとともに、衣・食・住のカテゴリーに分け て捉えている。日本文教出版版では、鎌倉・室町時代の文化をまとめて扱っており、学び 手に文化の連続性を捉えさせている。 近世では、室町時代以降に生まれた文化が町人によって各方面で大成され、より親しみ やすい形で庶民に伝わっていく過程が各教科書で紹介されている。例えば、浄瑠璃は人形 浄瑠璃として、歌舞伎は踊りから演劇としてそれぞれ発展し、小袖には友禅染、木綿の普 及、年中行事の定着など、元禄期にはほぼ大成され庶民化していることが各社の教科書か ら読み取ることができる。現代人にとって常識である「1 日 3 食」の伝統がこのころ確立さ れたという史実も、ほとんどの教科書で扱われている 8)。江戸時代後期の文化・文政期には、 元禄期に盛んになった俳諧や浮世絵などが、それぞれ小林一茶・歌川広重らによって大成・ 庶民化されたことなどが記述されている。帝国書院版ではこのほかにも、戦国時代におけ る鉄砲や火薬を作る技術が江戸時代に転用され、それぞれ和時計やからくり人形、花火に 生かされたことや、浮世絵の構図が「ジャポニズム」としてヨーロッパの絵画に大きな影 響を与えたことがコラムで記載されており、日本の技術の偉大さを伝えている。寺子屋で の「読み・書き・そろばん」の教育についても各社が取り上げているが、その中でも東京 書籍版では寺子屋が室町時代から存在していたこと、教育出版版では 18 世紀後半から数が 増え、子どもが 8~9 歳ぐらいから通ったこと、帝国書院版では子どもの識字率が世界的に 12 高水準となったことなどにも触れており、より学びを深める内容となっている。このよう に、中学校歴史教科書の近世における文化の扱いは、小学校のそれとは異なり、江戸時代 以前(室町時代以降)や江戸時代中(元禄期と文化・文政期)で比べても発展・変革・庶 民化していることが読み取れる。 近代以降における文化の扱いは、僅かな用語の違いこそあるものの、小・中学校共にそ れほど大きな違いはない。庶民の暮らしが現代にいたるまで豊かになっていく過程を各社 とも政治史の間に効果的に挿み込んでいる。 このように見てくると、小・中学校の歴史教科書で文化における扱いが圧倒的に違うの は、中世・近世であることが分かる。中学校歴史教科書におけるそれの扱いは、小学校の それと比べて時代ごとの文化の移り変わりが明確であり、政治史と同じく流れがある。ま た、文化に関する事項で、小学校歴史教科書で扱われていて、中学校歴史教科書で扱われ ていないという内容はほとんどないことも大きな特徴である。つまり、中学校歴史教科書 は、小学校で習った事項をほぼすべて再確認した上で、さらに新しい内容を積み重ねて子 ども達に提供しているのである。 2.3 歴史教科書における文化の扱い方の問題点 以上、本章 1・2 節で小・中学校歴史教科書における文化の扱い方の違いを見てきた。小・ 中学校において記載内容や事象の扱いに諸所違いがあることはすでに述べたとおりである が、小・中学校いずれの教科書においても大まかな時代区分ごとの文化の扱われ方は同じ 流れをたどっている。すなわち、原始や飛鳥時代以前の古代であれば、文化とは庶民の生 活において発明され、その生活に欠かせないものである。しかし、同じ古代でも飛鳥時代 以降において、それは上流貴族の生活文化を指すことが多くなる。中世に入り武士の世の 中になると、文化とは武士の生活から生まれたものがその中心となっており、近世ではそ の中心は町人の文化であった。中学校歴史教科書では中世・近世において、一部文化の庶 民化について扱っていたが、文化史学習の骨格にはなり得ていない。そして、近代以降に なると文化はまた庶民の生活文化のことを指すようになる。 ここで問題となるのは、「文化とは何か」ということである。『大辞泉』(第 1 版 1995) には、文化について「1. 人間の生活様式の全体。人類が自らの手で築き上げてきた有形・ 無形の成果の総体。それぞれの民族・地域・社会に固有の文化があり、学習によって伝達 されるとともに相互の交流によって発展してきた。 2. 1 のうち、特に哲学・芸術・科学・ 13 宗教などの精神的活動、およびその所産。物質的所産は文明とよび、文化と区別される。 3. 世の中が開けて生活内容が高まること。」とある。また、 『広辞苑』 (第 5 版 1998)では 「1. 文徳で民を教化すること。 2. 世の中が開けて生活が便利になること。文明開化。 3. 人間が自然に手を加えて形成してきた物心両面の成果。衣食住をはじめ、技術・学問・芸 術・道徳・宗教・政治など生活形成の様式と内容とを含む。文明とほぼ同義に用いられる ことが多いが、西洋では人間の精神的生活にかかわるものを文化と呼び、技術的発展のニ ュアンスが強い文明と区別する」とされている。このように、2 つの辞典を比較しただけで も、それぞれの文化の定義が違うことが読み取れる。 これに関して、アメリカ合衆国の文化人類学者であるクリフォード・ギアツ(Clifford Geertz、吉田ほか訳 1987)は、「文化は象徴に表現される意味のパターンで、歴史的に伝 承されるものであり、人間が生活に関する知識と態度を伝承し、永続させ、発展させるた めに用いる、象徴的な形式に表現され伝承される概念の体系とを表している」と述べてい る。この「伝承・永続・発展」という文言の意味合いについては、表現こそ異なるものの、 上記の 2 つの辞典の表記からも見出すことが可能である。よって、本稿では文化を「伝承・ 永続・発展する人間の生活に関する知識と態度」というように定義する。この定義に基づ いて現在の小・中学校歴史教科書を見直すと、 「伝承」の性質については主に中学校歴史教 科書から読み取ることが可能なものの、「永続・発展」の性質についてはほとんど読み取る ことができない。 文化の「永続・発展」性を歴史教科書から見いだせない原因は一体何か。ひとつは、歴 史教科書において政治史と文化史が完全に分断されており、文化が時代ごとに突発的に形 成されるという印象を読み手に与えてしまうことにある。そういった意味で、日本文教出 版版中学校歴史教科書のように、文化を 2 つの時代について連続して扱うことは、突発的 に形成された「文化」ではなく、「文化史」として永続しているものであるという印象を子 ども達に与える非常に画期的な掲載方法であると捉えることができる。しかし、ここにも 弊害は存在する。文化と政治史との関係が読み取ることができなくなる点である。したが って、文化が時代とともにどのように発展してきたかを子ども達に学ばせるために、教科 書はまだまだ改良の余地があるということができる。 また、以下は私見であるが、歴史教科書はほとんどが史実と歴史用語の列挙に終始して いる。そして、そのことは少なからず社会科という教科が暗記教科であるという印象を子 ども達に抱かせ、子どもの社会科嫌いを加速させる恐れがある。暗記に頼らず、子どもが 14 自由に考え意見を共有することができる社会科教育を目指す上で、このような史実と用語 の列挙はあまり好ましくはない。ある史実や用語に対して、それがどのように発生し、ど のように発展し、現在にどのような形で伝承しているのかなど、より史実や用語を掘り下 げる表記や図解などが必要である。そして、そのような歴史教科書の記述をもとに、決し て暗記に陥らない社会科特有の「自分たちで調べて学ぶ」楽しさを子ども達が感じられる ような指導を行っていかなければならない。 次章以降では、奈良県の伝統文化のひとつである「奈良墨」を上記のような発展的かつ 子どもの自由な思考を伴う「文化史」として学ばせる方法を模索する。 15 3.伝統文化に関する学習を歴史教育に盛り込んだ授業構想を行うにあたって 3.1 墨を素材とした理由 伝統文化を歴史学習の中に効果的に取り入れていく上で、重要なことは素材選択である。 目賀田(1979)は、伝統的な工業の教材化における素材選択には、1.伝統技術を生かして という内容からの素材選択、2.指導計画の前後の関係・系統からの素材選択、3.自主的学習 を促進させる立場からの素材選択といった基準があると述べている。 本稿では、こういった基準を踏まえ、奈良県の地場産業でもある「墨」を素材とした歴 史教育の授業構想を行う。墨を素材として取り上げる理由を下記 2 点から述べる。 Ⅰ.墨が古代から現代へと連綿と受け継がれる筆記用具であること 発展的かつ子どもの自由な発想を伴う文化史の授業を構築するうえで必要なことは、選 定する素材が「伝承・永続・発展」の性質を有していることである。すなわち、それが伝 統文化であり、今も昔も変わらず人間の生活に密着した文化である必要がある。 前章で見てきたとおり、人間の「文字を書く」という習慣は原始から現在に至るまで変 わることなく続いているものである。7 世紀に古代中国から朝鮮半島を経由して墨が伝わり、 「書」は現在に至るまで後世に脈々と伝えられてきた。そんな中で、室町時代には水墨画 が発達したり、江戸時代には広く一般に「習字」が広まったりするなど、人々にとって墨 のあり方は絶えず変容してきた。殊に、明治期以降に新しく製造された鉛筆やインクペン などの新しい筆記用具の開発は、墨の生産自体に多大な影響を与えた。しかし、このよう な変化の中でも、墨汁や筆ペンが新たに開発されることで、墨は廃れずにその姿を残し、 またその中で固形の墨の良さも見直され、現代でも伝統産業として生き残っている。 このように、時代を経るにつれて少しずつその姿を変えてきているものの、「書く材料」 としての墨の存在は今も昔も変化していない。故に、墨について学習することは、子ども 達が「書」や「文字」に関する日本の文化史を理解することにも繋がりやすい。 Ⅱ.墨作りが奈良県を代表する伝統産業であること 「奈良墨」について述べる前に、奈良県内の伝統工芸品の概要について少し触れておき たい。奈良県内には、開発及び都市形成の歴史が古いという地域性を反映して伝統工芸品 が数多く点在している。伝統工芸品には、経済産業大臣が指定するものと都道府県が指定 16 するものの 2 種が存在する。2013(平成 25)年 1 月現在、前者が指定する伝統工芸品は全 国に 212 品目(巻末資料 3 参照)あり、うち奈良県には 2 品目 9)存在する。また、奈良県 が指定する伝統工芸品は 15 品目 10)が存在する。このうち、前者の指定対象になるものは法 律 11)によって次のように規定されている。 1. 主として日常生活で使われるもの 2. 製造過程の主要部分が手作り 3. 伝統的技術または技法によって製造 4. 伝統的に使用されてきた原材料 5. 一定の地域で産地を形成 また、後者指定の伝統工芸品の対象になるものは、県内でつくられている工芸品で、次 の要件を満たすことが必要とされている。 1. 日常生活の用に供されている工芸品であり、それが熟練した技により実用性と美しさを 兼ね備えていること。 2. 工芸品の持ち味に影響を与える部分が手作業を中心としてつくられていること。 3. 原則として工芸品がおおむね 100 年以前に確立した伝統的技術・技法によりつくられて いること。 4. 伝統的に使用されてきた原材料を主として用いられ、つくられていること。 本稿で取り扱う「奈良墨」は、経済産業大臣もしくは奈良県の指定する伝統工芸品には 含まれていない。それは、双方の要件に含まれている「伝統的に使用されてきた原材料」 という規定を満たしていないことが大きな原因である。「奈良墨(油煙墨)」の材料となる 油には、菜種・胡麻・椿・桐などが用いられているが、近年では良質の原材料の生産が奈 良市の近郊で行われていないため、他地域からの輸入に頼らざるを得ないのである。しか し、この規定を除けば、 「奈良墨」は上記双方の伝統工芸品としての条件を概ね満たしてい ると言える。 もっとも、伝統工芸品としての指定はないとは言え、「奈良墨」は奈良県の重要な伝統産 業である。奈良県ホームページ 12)では、県指定の伝統工芸品とは別に、その他の工芸品と 17 いう欄で「奈良墨」を取り上げている。榊(1981)は、奈良県における墨作りは全国でも 群を抜いており、日本全国における生産量の実に 90 パーセントを占めていると述べている。 もっとも、原料のほとんどを輸入に頼るようになってしまったとは言え、墨作りの伝統を 守るために品質保持という点では常に細心の注意が払われている。 このように奈良県の重要な伝統産業である「奈良墨」は、現在では主に小学校中学年の 地域学習の素材として扱われることが多い。詳しくは後述するが、奈良市や奈良県の副読 本には「奈良墨」が扱われており、筆者も小学生の頃、実際にこのような「奈良墨」を素 材にした授業を受けたことを記憶している。このように、 「奈良墨」を素材とした学習は奈 良県内のほとんどの小学校中学年の社会科学習においては一般的な学習として既に定着し ている。 以上、筆記用具としての墨の重要性と奈良県における「墨づくり」の重要性の 2 つの観 点を基に、本稿では伝統文化に関する学習を含めた新しい文化史学習の授業構想を行って いきたい。 3.2 「奈良墨づくり」の概要 本節では、奈良墨づくり(固形墨・墨汁)について、その概要を記述する。第 1 項では、 株式会社古梅園でのインタビュー(2011 年 12 月 14 日実施)を参考にしながら固形墨作り の概要について述べる。第 2 項では、株式会社呉竹でのインタビュー(2012 年 3 月 21 日 実施)を参考にして墨汁生産の概要について述べる。 3.2.1 固形墨づくりの概要 『日本書紀』によれば、墨は古代中国で製造され、610 年(推古 18)3 月に高句麗僧曇 徴等によって採色・紙とともに日本に伝えられたとされている。しかし、墨の伝来の起源 についてはよく分かっておらず、それ以前から既に使用されていたとも言われている。製 まつやに 墨が始まった当初は、日本では松脂を燃やして製造する松煙墨の生産が主であった。しか し、これは後に宋から伝わる油煙墨と比べると品質・色ともに格段に劣るものであった。 松煙墨は、写経のために奈良時代から奈良の寺院僧坊によって自給自足されていた。 明徳・応永年間(1390-1428)に伝わったとされる油煙墨は、煤をとる原料となる胡麻油 を一手にしていた興福寺二諦坊において最初に作られ、その後京都貴族への贈答品となっ 18 て広ま まった。現在 在の奈良市周 周辺では、当 当時菜種・桐・胡麻などが が多く栽培さ されていたた ため、 応仁の の乱(1467--77)の頃に には、それらの原料を利用 用した良質な な油煙墨(南 南都油煙)が が全国 的に有 有名になった た。 江戸 戸時代には寺 寺院勢力の衰 衰退とともに に製墨の主力 力も寺院から ら町方に移り り、現在の奈 奈良市 ひがしむき もち い どの 中心部 部に位置する る 東 向通り・餅飯殿通り・三条通りなどに墨屋 屋が名を連ね ねた。町人の の間に も書写 写や筆録の習 習慣が広まっ っていたこの の時代には、墨は奈良町 町周辺を訪れ れた際の名物 物土産 でもあった。また た、この影響 響を受けて各 各地で墨の製 製造が始まる るが、中でも も技術の高い い現在 の奈良市近郊に職 職人が多く集 集まったため め、今日に至 至るまで奈良 良県特有の伝 伝統産業とし して息 づいて ている。 奈良 良市内には、 、江戸時代に に誕生した多 多数の製墨業 業者の名残を を受けて、現 現在でも複数 数の製 墨会社 社が存在する る。固形墨の の製墨は現在 在も冬季(10 0 月~4 月) )頃を中心に に行われてお おり、 中には は団体による る工場見学を を許可してい いる会社も存 存在する。 株式 式会社古梅園 園発行の来客 客者向けパン ンフレット「なら 墨づく くり」による ると、固形墨 墨の製 墨は概 概ね以下のよ ような手順を を踏んで行わ われている。 1. 採 煙 : 純植物性油を土器に入れ れ、燈芯に火 火をともして て土器の覆を をかざし、そ それに ついた煤煙 煙をとる作業。 (写真 1) 2. 膠 膠溶解 : 牛の皮や骨を約 70℃の の湯で炊き、膠 膠を作る作業 業。膠は煤ど どうしを接着 着する 役 役目をする。 (写真 2) 1. 採 2. 膠 煙 写真 1(2011 年 12 月 14 日 溶 解 写真 2(2012 年 12 月 14 日 株式会社古 古梅園にて筆者撮 撮影) 19 株式会社 社古梅園にて筆者 者撮影) 3. も み : 煤と液体の膠 煤 膠を 5:3 の割 割合で混ぜ、手や足を使っ 手 ってよく交ぜ ぜ合わせる作 作業。 こ この練り具合 合で墨の生命 命が決まる。 (写真 3) 4. 型入れ 型 : 「もみ」の作 作業の約 30 分後、 分 墨が漆 漆黒の輝きを放ってくると、香料を加 加え、 木 木型に入れて て型入れ作業 業を行う。和墨 墨では一丁型 型 13)の目方が が 15g である るが、 木 木型に入れる るときは乾燥 燥して小さくなることを考慮して生墨 墨で約 25g 入れ 入 る る。プレスし し、木箱から ら取出すと、墨の耳を削り、形を整える。(写真 真 4) 3. も み 4. 4 型 入 れ 写真 3(2012 3 年 3 月 21 2 日 5. 灰乾燥 灰 写真 写 4 (2012 年 3 月 21 日 株式会社 社呉竹にて筆者撮影 影) 株式 式会社呉竹にて筆 筆者撮影) : 木箱から取 木 り出した墨を を灰に埋め、水分を取り り除く作業。第 1 日目に には水 分の多い木 木灰に埋め、2 日目以後は徐々に水分 分の少ない木 木灰に埋め変 変えて いく。この工程で、墨全 全体の 70%の水分を取り除く。灰乾 乾燥は、小型 型の墨 で約 1 週間 間、大型のもので 30~40 0 日ほど続け ける。(写真 5) 6. 自然乾燥: 自 灰 灰乾燥が終わ わった墨を藁 藁で編んで、天井からつ つるして室内 内乾燥させ、墨全 体の水分を取 取り除く作業 業。通常約半 半月から 3 か月程度を要 か 要する。(写 写真 6) 5. 灰 乾 燥 写真 5(2011 年 12 月 14 1 日 6. 自 然 乾 燥 写真 真 6 (2011 年 12 月 14 日 株式会社古 古梅園にて筆者撮 撮影) 20 株式会 会社古梅園にて筆 筆者撮影) 7. 磨 き : 表面に付着 表 した灰やその の他のものを を水で洗い落 落す作業。そ その後、蛤の の貝殻 でよく磨く。 。 8. 彩 色 : 磨かれた墨を を水洗いによ よる水分を取 取り除くため めに 3 日及び び 1 週間ほど ど空気 乾燥した後、 、金粉・銀粉 粉・絵の具を を使って彩色 色する作業。 奈良 良墨は、戦後 後では 1960(昭和 35)年をピークに生産者数・生産量とも もに減少傾向 向にあ る(図 図 1)。奈良 良製墨組合ホームページ 14)によれば ば、2011(平 平成 23)年現 現在、奈良市 市には 11 軒の製墨会社 軒 社が存在している。同年の の生産数は 80 8 万丁であり、これらは は近代以降最 最大の 生産者 者数と生産量 量を誇った 1935(昭和 10)年の 44 4 軒・2,265 5 万丁と比べ べて極端に減 減少し ている。その理由 由としては、 、昭和期以降 降、能率的な なペンや万年 年筆の使用が が一般化し、毛筆 の日常 常的実用性が が徐々に減少 少したことに によって、人 人々の墨・筆 筆離れが進ん んでいること となど が考えられる。 現在 在では、固形 形墨は書家や や水墨画家な などへの需要 要が主であり り、教育現場 場への需要は は減少 の一途 途をたどって ている。なぜ ぜならば、教 教育現場にお おける「習字 字」の授業で では、もっぱ ぱら墨 汁が用 用いられてい いるからであ ある。一般的 的に教育現場 場で使用され れている墨汁 汁は、固形墨 墨とは 異なり、煤の粒子 子が均一なた ため色の濃淡 淡が出ない。しかし、そ その手軽さ・ ・便利さ故に に固形 墨に変 変わり徐々に に重宝される るようになっ った。 <図 1> 1 奈良墨生 生産業者数と生産量の推 推移(『奈良県 県のくらし』学習の手引 引きより引用) 21 3.2.2 2 墨汁づくりの概要 墨汁 汁は、明治期 期に大工が使 使っていた墨 墨壷から発想 想を得、墨の の販売促進事 事業の一環と として す 考案された。この の当時から教 教育現場では は、書道の時 時間のほとん んどを子ども もが墨を磨る時間 る に費や やしてしまうことが問題 題となってお おり、このよ ような時間の の短縮のため め、製墨会社 社に液 体墨を販売して欲 欲しいという要望があっ ったという。この要望を を受けて製墨 墨された、呉 呉竹精 昇堂(現在の株式 式会社呉竹) )が開発した た当初の墨汁 汁「墨のかお おり」は、半 半練り状態で でチュ ーブに入った練り墨を使用しており、使 使用時には練 練り墨を水に に浸した筆で で溶かして使 使う方 法が取 取られていた た。しかし、 、この練り墨 墨はすぐ腐敗 敗してしまっ ったり、水に に溶けにくく くムラ が出や やすかったりするのが大 大きな欠点で であり、これ れらが原因で で返品が相次 次いだという。 これ れらの欠点を を極力解消す するために、 、最初から液 液体のままで で墨を販売す する方法で試 試行錯 誤が重 重ねられ、戦後 戦 1958(昭 昭和 33)年の の同社による る書道用液体 体墨「墨滴」の の発売を契機 機に、 ようや やく今日販売 売されている るような液体 体の墨汁が世 世の中に姿を を見せることになる。この の「墨 滴」は、煤の比重 重をあげて浮 浮かすことで で沈殿を防ぎ ぎ、書面が光 光らないとい いう工夫が施 施され ていた た。 近年 年では、墨汁 汁は学校や書 書道教室とい いった教育現 現場を中心に に重宝されて てきているほ ほか、 書家に にも重宝され れるようにな なってきてい いる。製墨さ される液質の の種類は、各ブランド・書 書家・ 教育現 現場などの要 要望にあわせ せて数百種類 類にも及ぶ。 様々な種 種類の固形墨 墨と墨汁 写真 7(2012 年 3 月 21 日 株式会 会社呉竹にて筆者 者撮影) 22 製墨 墨は、箱詰め めまでに以下 下の作業を一 一本のベルト トライン上で で流れ作業的 的に行う。 1. 原 原料の煤・膠 膠・香料を混ぜ、ローラー ーにかけて平 平らに伸ばし した後、水で で薄める(写真 真 8) 2. 充 充てん(充て てん機で、一 一度にたくさ さんの容器に に墨汁を入れ れる)(写真 9 9) 1. 原料を平 平らに伸ばすローラー 写真 8 (2012 年 3 月 21 2 日 2. 充てん機 機 写真 9(2012 年 3 月 21 日 株式会社 社呉竹にて筆者撮 撮影) 株式会 会社呉竹にて筆者 者撮影) 3. キ キャップを閉 閉める(キャッパーで一度にたくさん んの容器のキ キャップを閉 閉める) (写真 真 10) 4. ラ ラベルを貼る る(ラベラー ーで一度にた たくさんの容 容器にラベル ルを貼る) 5. 包 包装(包装機 機でフィルム ムを筒丈にし し、容器の寸法に合わせて てカットした た後、シュリ リンク で で圧縮する) ) (写真 11) 3.キャッパー ー 写真 10 (2012 年 3 月 21 日 5.包装機 機 写真 写 11 (2012 年 3 月 21 日株式会 会社呉竹にて筆者 者撮影) 株式会社 社呉竹にて筆者撮 撮影) 23 6. 人 人の目での点 点検(キャッ ップがきちん んと閉まっているか、フィ ィルムが破れ れていないか かなど をチェックす する)(写真 真 12) 6. 人の の目による点 点検作業 箱詰めされた た墨汁 写真 12(2012 年 3 月 21 日株式会社 社呉竹にて筆者撮 撮影) 写真 13 (2012 年 3 月 21 日株式会 会社呉竹にて筆者 者撮影) 数百 百種類の墨汁 汁それぞれが が基本的に上 上記の製造工 工程を辿って て作られるが が、液質が変 変わる とその都度充てん ん機の洗浄を を行わなけれ ればならなか かったり、箱 箱詰め作業や や箱詰め前の の最後 の点検 検は人間が行 行わなければ ばならなかっ ったりするな など、機械を を使いながら らも要所は手 手作業 で行な なわれている る。 固形 形墨と比較し した墨汁の長 長所は、生産 産者側から見 見れば 1 年中 中生産できる るという点、職人 に頼らずとも機械 械で大量生産 産できるとい いう点などが がある。一方 方消費者側か から見れば、墨を 磨る時 時間の短縮な などが挙げられる。短所 所としては、墨汁は固形 形墨とは違い い水を含んだ だ生も のであるため、腐 腐りやすいという点が挙 挙げられる。使用頻度の の少ない子ど ども用の墨汁 汁には 防腐剤 剤が入れられ れているが、 、書家などが が使用するよ ような清書用 用の値段の高 高い墨汁には は、基 本的に防腐剤を入 入れないため め、水中を浮 浮遊している る墨が次第に に沈殿して凝 凝固し、その のまま 腐って てしまうので である。また た、墨汁は固 固形墨と比べ べて濃淡が出 出ないことに については前 前項で 触れた たが、実際に に墨汁を製造 造する会社で では清書用の の墨汁を濃い い目にして、消費者が自 自分で 水を加 加減できるようにするな など、各社で で工夫が施さ され、問題は は解消傾向に にある。墨汁 汁の生 産量は は増加してお おり、本場・中国でも日本の墨汁の製造技術は高く評価され れている。故 故に、 今後は は墨汁の中国 国へのさらな なる輸出が期 期待される。 24 3.3 墨に関する授業の実際~「奈良墨」を事例として~ 本章第 1 節で、奈良墨は奈良県小学校中学年向けの教材として既に取り入れられている と述べた。そこで本節では、奈良墨が現段階でどのように教材化されているのかを小学校 の副読本を中心に調査し、実際に奈良墨を教材として取り上げた経験を持つ奈良県内の小 学校の現職教員への聞き取り調査 15)も参考にしながらその概要を述べることにする。なお、 本稿の調査対象となる副読本は、現在奈良市の小学校第 3 学年を対象に配布されている『わ たしたちの奈良市』 (2011 年 4 月発行)、及び奈良県の小学校第 4 学年を対象に配布されて いる『奈良県のくらし』 (2010 年 3 月発行)の 2 冊である。 前節 2 項で述べた墨汁づくりについては、 『わたしたちの奈良市』の中の「工場で作られ ているものを調べよう」という項目の中で取り上げられている。株式会社呉竹製造の「ぼ くてき」や「筆ペン」が取り上げられ、写真を用いて墨汁の製造工程が説明されている。 本単元では、手紙や本・インターネットなどを通して子どもが主体的に調査を行ったり、 個人の興味関心を基に実際に工場見学に行ったりすることが目的とされており、工場のよ うすや工夫を知ること、奈良墨の生産が墨汁や筆ペンの製造で成り立っていることを知る ことなどが主な目標となる。 固形墨については『奈良県のくらし』の中の「伝統や文化を産業に生かしている地いき墨づくりが伝わる奈良市-」として取り上げられている。具体的には、奈良市で墨作りが盛 んな理由を奈良時代における日本の中心都市「奈良」としての機能や、冬の底冷えする独 特な気候の中に見出したり、前節 1 項で述べた墨作りの工程を写真で掲載していたりして いる。また、1 年間でおよそ 60 万本もの墨が奈良市で作られている事実や、日本で使われ る墨のほとんどが奈良市で作られていることも述べられている。しかしその一方で、昔な がらの技術を伝える職人の減少などの負の部分にも目を向けている。 『奈良県のくらし』の「指導の手引き」には、本単元の目標として以下のことが記され ている。 ・奈良市の伝統的な工業のようすを調べ、人々が伝統的な技術を守り、発展させるために 様々な工夫や努力をしていることに気付く。 ・奈良市に伝統産業が根付き、盛んになった社会的(歴史、文化、地理)条件について考 える。 25 また、学習活動と主な内容としては、以下のことが記されている。 1.墨づくりがさかんな奈良市の様子について調べる問題をつくる。 ・身の回りで、墨がどのように使われているか思い起こす。 ・副読本から「どうしてかな?」と思うことを出し合う。 ・墨づくりの学習問題を整理して、調査活動の計画を立てる。 2.墨づくりについて調べ、資料にまとめ、話し合う。 ・見学に行ったり、マルチ教材 16)を活用したりして調べる。 【調べる内容の例】 ・墨づくりの工程 ・奈良市でさかんになった理由 ・伝統を守り続けるための工夫や努力 ・墨づくりの伝統を生かした新しいものづくり 3.墨づくり以外の、奈良市の伝統的な工業を調べ、墨づくりと比べながら気付いたことを話 し合う。 【取り上げる伝統的な工業の例】 ・奈良人形一刀彫 ・奈良漆器 ・赤膚焼 ・奈良筆 ・奈良団扇 「指導の手引き」における学習活動を見てみると、固形墨についても墨汁と同じく工場 見学や調べ学習を行うことを前提に単元が構成されていることが分かる。実際の授業では、 この他にもビデオを借りてきての学習や実際に生の墨を手で握って作る「握り墨」の体験 などを行っている学校もあり、触って学んだり、見て学んだりと様々な学習方法で奈良墨 についての理解を深めさせる活動を行っている。また、墨づくり以外の伝統的な工業を調 べるという学習活動においては、どれも基本的に機械化が進んでいないこと、よって大量 生産には適さないこと、販売市場が限られていることといった共通点を見出すことが目標 となろう。 以上のことから、奈良県の小学校現場では、中学年社会科の奈良墨に関する学習活動と して概ね次のようなことが行われていることが分かる。 1. 工場見学や調べ学習などを通して、奈良墨の製造工程を知る。 26 2. インタビューやマルチ教材での学習などを通して、奈良墨づくりに携わっている職人の 工夫や努力について知る。 3. 調べ学習を通して、なぜ奈良市で墨づくりが行われているのかを知る。 これらはすべて、本章第 1 節で筆者が提起した「墨作りが奈良県を代表する伝統産業で あること」に関わる学習活動である。しかしながらその一方で、墨が持つ学習素材として のもうひとつの側面とも言える「古代から現代へと連綿と受け継がれる筆記用具であるこ と」に関する学習活動はなされていない現実が見えてくる。つまり、子ども達は「墨」と いう伝統産業を通して奈良市の特色や奈良市の人々のくらしについて学習しているのであ り、「墨」そのものについて学んでいるとは言い切ることができない。「墨」がどのように して日本に伝わり、現在に至るまでどのような変化を遂げて今日に至っているのかを学習 するためには、『奈良県のくらし』の学習と関連付けて取り上げるだけではなく、より広い 時間的・空間的視野を持った歴史学習の中で取り上げる必要がある。 27 4. 歴史教育における文化史学習のあり方の新提案 ~伝統文化・墨を素材として~ 4.1 年間指導計画における文化史の扱い方に関する新提案 本章では、第 2 章で述べた歴史教科書における文化史の扱い方に関する問題点と、前章 で述べた奈良県における社会科教育を見通した際の伝統文化・墨の扱い方に関する問題点 を基に、両者を小学校第 6 学年の歴史学習で扱うことを想定した新しい授業構想を行いた い。この新授業構想(以下、改善案)は、奈良市内の小学校現場で授業実践を行うことを 想定し、使用教科書についても 2012(平成 24)年現在、奈良市内の小学校現場で採択され ている東京書籍版社会科教科書を使用することを前提としている。本節では、東京書籍が ホームページ上で公開している小学校第 6 学年の指導計画作成資料(以下、現行案)の「1. 日本の歴史」に関わる部分を上記の問題点に即した形で見直し、その改善例を述べる(表 1)。 東京書籍が指導計画作成資料で提示している歴史単元に当てる年間総時数は 72 時間とされ ており、本稿でも全 72 時間構成で改善を試みた。なお、表 1 の左側に記載したのが現行案 における「1.日本の歴史」の単位時間あたりの学習内容であり、右側に記載したのが筆者の 改善案である。 <表 1> 年間指導計画の中での「文化史」の扱い方(全 72 時間構成) 時代 現行案 改善案 オリエンテーション(2 時間) 縄文時代 ~ ○縄文のむらから古墳のくにへ(8時間) 1.三内丸山遺跡と縄文のむら 2.板付遺跡と米づくり 3.縄文と弥生のくらし 4.学習の進め方 古墳時代 5.むらからくにへ 6.巨大古墳と豪族 7.大和朝廷と国土の統一 8.学習のまとめ 飛鳥時代 ○天皇中心の国づくり(9 時間) ○天皇中心の国づくり(8 時間) 1.世界文化遺産の法隆寺 2.聖徳太子の国づくり 1.聖徳太子と法隆寺 2.大化の改新と天皇の力の広がり 3.大化の改新と天皇の力の広がり 3.仏教文化の広がりと奈良の大仏 4.仏の力で国を治める 4.仏の力で国を治める 5.全国から集められた人々が大仏をつくる 5.日本風の文化と貴族のくらし 6.大陸の文化を学ぶ 6.貴族のくらしと庶民のくらし 7.貴族のくらし 7.昔のことってどうやってわかるの?~絵巻や古文書を読 8.日本風の文化が生まれる 9.学習のまとめ んでみよう~ ~ 平安時代 28 8.学習のまとめ 鎌倉時代 室町時代 ○武士の世の中へ(6 時間) ○武士の世のはじまり(6 時間) 1.武士の登場と武士のくらし 1.武士の登場と平氏の政治 2.武士の政治の始まり 2.源平合戦と南都焼討 3.源氏と平氏が戦う 3.幕府政治のしくみと朝廷との関係 4.頼朝が東国を治める 4.武士のくらしと庶民のくらし、将軍と執権 5.元の大軍がせめてくる 5.元の襲来と幕府政治のゆらぎ 6.学習のまとめ 6.学習のまとめ ○今に伝わる室町文化(4 時間) ○足利氏の政治と室町文化(7 時間) 1.金閣と銀閣 1.足利義満の政治と北山文化 2.書院造と室町文化 2.足利義政の政治と東山文化 3.雪舟とすみ絵、生活のなかの室町文化 3.民衆の成長と室町文化 4.学習のまとめ 4-5.すみ絵を体験してみよう(2 時間) 6.中世の奈良~南都寺院の勢力拡大と文化~ 7.学習のまとめ 安土桃山 ○戦国の世から江戸の世へ(10 時間) ○武士の世の完成(14 時間) 時代 1.全国統一を目指して 1.全国統一への道 2.全国統一を進めた 3 人の武将 2.全国統一を進めた 3 人の武将 3.安土城と織田信長 3.江戸幕府のしくみ 4.大阪城と豊臣秀吉 4.身分差別と人々のくらし 5.江戸城と徳川家康 6.江戸幕府と大名 5.キリスト教の禁止と鎖国 7.人々のくらしと身分 8.キリスト教を禁止する 6.鎖国の中での交流 9.鎖国の中での交流 10.学習のまとめ 7.沖縄の歴史と文化 ○江戸の文化と新しい学問(6 時間) 8.北海道の歴史と文化 1.江戸のまちと人々のくらし 9.産業・観光都市、奈良 2.人々が歌舞伎を楽しむ 10.絵巻や文書から当時のくらしを考えよう 3.浮世絵が広がる 11.今に残る江戸文化 4.新しい学問、蘭学 12.蘭学と国学 5.国学と本居宣長、新しい時代への動き 13.庶民の幕府政治への不満と一揆 6.学習のまとめ 14.学習のまとめ ~ 江戸時代 29 明治期 ~ 大正期 ○明治の国づくりを進めた人々(7 時間) ○国際社会の中の日本(11 時間) 1.明治時代に始まった学校 1.開国と討幕 2.平等な世の中で進められた富国強兵政策 2.若い武士たちが幕府をたおす 3.学校のはじまり、文明開化と人々のくらしの変化 3.大久保利通と富国強兵 4.明治の新しい世の中 4.武力の世から言論の世へ~自由民権運動~ 5.板垣退助と自由民権運動 5.初めての選挙と憲法発布 6.伊藤博文と国会開設、大日本帝国憲法 6.日本の産業の近代化と国際化 7.学習のまとめ 7.明治維新以後の奈良県のあゆみ~奈良県の設置と鉄道 ○世界に歩みだした日本(7 時間) 1.発展していく産業 2.条約改正を目指して 8.世界の中の日本 1~日清・日露戦争~ 3.中国やロシアと戦う 4.朝鮮を植民地にする 9.世界の中の日本 2~日韓併合と不平等条約撤廃~ 5.国際社会で日本人が活やくする 10.世界の中の日本 3~日本人が世界で活躍するようにな 6.生活や社会の変化 昭和期 ~ の敷設~ 7.学習のまとめ る~、庶民の生活や社会の変化 11.学習のまとめ ○長く続いた戦争と人々のくらし(7 時間) 1.世界文化遺産の原爆ドーム 2.中国との戦争が広がる 3.戦争が世界に広がる 4.生活すべてが戦争のために 5.空襲で日本各地の都市が焼かれる 6.原爆の投下と戦争の終わり 7.学習のまとめ ○新しい日本、平和な日本へ(6 時間) 1.戦争のない世の中を目指して 2.民主主義による国を目指して 3.再び世界の中へ 4.高度経済成長の中の東京オリンピック 5.これからの日本を考えよう 6.学習のまとめ、上巻をふりかえって 授業開発 ○ 墨の歴史とこれから(3 時間) 1.墨の「これまで」を考えよう 2.墨の「いま」を考えよう 3.墨の「これから」を考えよう 年間指導計画の見直しを行う目的としては、主に次の 4 点を挙げる。 1. 文化史そのものを取り扱う授業時間数の増加 政治史に比べた文化史の相対的な時間不足という観点から見直しを行った。表 1 にお ける網掛けの部分が文化史学習にあたる部分である。現行案は 24 時間であった文化史 に 関する学習時間が、改善案では 33 時間となっている。 30 2. 文化史と政治史との関連性をできるだけ持たせる 歴史教科書において、文化史が政治史と全く関係なく突発的に形成されたような印象 を子どもが抱きかねないことを懸念し、可能な限り改善を試みた。これによって、文化 史だけが独立した学習項目になることを極力避け、文化史と政治史の関わりについても 学習できるようなカリキュラムを目指している。 3. 文化の伝承・永続・発展の性質を理解させる 文化についてその伝承性だけではなく永続性・発展性にまで視野を広げて学習できる ような改善を試みた。具体的には、単元ごとに人々のくらしに着目して時代間での共通 点や相違点を探る学習を行ったり、同じ時代の中でも身分の差による文化の違いなどに 着目したりする。その際、現在の我々の生活との比較を行い、同じ部分や違う部分を考 える活動を行うことも、文化の持つ性質を子ども達が理解することに繋がる。 4. 奈良県の歴史的なあゆみと、そこで培われた伝統文化に関する学習の時間を設ける 簡潔に述べるならば、歴史教育の中に地域学習を組み込むという改善方策である。佐 賀(1984)は、子どもの歴史事象への興味・関心を高め、喜んで学習に取り組ませるた めに、地域学習の歴史教育の中に取り入れた授業を実践している。また、筆者は現在中 学年社会科を中心に取り上げられている地域学習が高学年、とりわけ第 6 学年の歴史学 習に積極的に取り入れられていないことは、地域の歴史や、地域で生まれ伝統的に受け 継がれている文化に対する本質の理解を損なう可能性があるのではないかと考えてい る。これらのことを鑑みて、改善案では各単元で少なくとも 1 時間は奈良県の歴史に関 わる内容を授業の中に盛り込んでいる。表 1 において、太字で記してある箇所がこの学 習にあたる。このようにすることで、奈良県で培われた伝統文化も自然とその学習内容 に組み込まれることになる。 次に、各単元においてどのような意図で授業構想を行ったのかを具体的に述べたい。た だし、文化史の扱い方が比較的理想的な縄文時代~古墳時代、戦後の単元については、現 行案のとおりとする。 ・飛鳥時代~平安時代 現行案で文化について扱っている箇所は、奈良時代における大陸文化、平安時代にお ける貴族の暮らし・日本風の文化である。改善案では、奈良時代における大陸文化を仏 31 教文化として扱い、このような仏教的イデオロギーが当時の国家を支配していたのだと いう観点から政治史へのアプローチを試みる。平安時代における「日本風の文化」の担 い手は貴族であるため、貴族のくらしと文化との関連性に関する内容を盛り込むと同時 に、庶民のくらしとの比較も行いたい。また、当時のくらしを知る手段として木簡や紙 に書かれた古文書、信貴山縁起絵巻などの絵巻物に触れる時間を確保したい。その際、 奈良県の地域学習の内容を盛り込むのであれば、比較的保存状態の良好な正倉院文書に 触れることが望ましい。この内容は、次節で述べる「墨の歴史とこれから」の授業内容 に関わってくるという点でも非常に重要である。 ・鎌倉時代 鎌倉時代以降、現在の奈良県は歴史の表舞台からは姿を消すことになる。しかし、そ の中で現在に繋がる伝統文化は脈々と育まれ、受け継がれており、これに触れることは 地域学習・文化史学習の両面において大きな価値がある。改善案では、平氏の南都焼討 を学習内容に取り入れ、平安遷都後も依然として東大寺・興福寺などの勢力が力を持ち、 大和を支配していたという史実に気付かせる。また、本単元は武士政治の萌芽を学習す る単元であり、文化面でも現行案は武士のくらしを中心に取り上げている。しかし、改 善案では武士の職能集団的性格 17)を特徴付けるため、庶民のくらしとの比較を行ってい る。この際、平安時代における貴族のくらしとの比較を行うことも武士の性格の特徴付 けに非常に効果がある。 ・室町時代 室町時代は現行案でも一転して文化が重点的に取り上げられている。しかしこの単元 では、逆に政治史の扱い方が希薄になっているのが大きな欠点である。そのため、「足利 義満の政治と北山文化」・「足利義政の政治と東山文化」というように政治史と文化史を 並行して取り上げ、政治と文化の関連性を取り上げる。民衆の成長と文化との関わりも 同様に強調すべき事項である。また、「すみ絵を体験してみよう」では、実際に固形墨を 磨って濃淡をつけながら絵を描く作業を行う。この学習に関しては、図画工作との合科 的扱いにし、水の分量や筆使いなどで濃淡を表現できることを併せて理解させることが 現実的である。この単元では、現行案の内容を削ることなく、授業時間数を増やしてよ り室町文化に深く触れるようにする。 ・安土桃山時代~江戸時代 現行案では 2 つの単元で構成されているが、改善案では「武士の世の完成」と題して 1 32 つの単元で扱う。現行案で 1 時間にまとめられている「鎖国の中での交流」に関しては、 特に琉球と蝦夷地は現在では日本の領土となっているため、個別に時間を割いてそれぞ れの歴史について学ばせる必要があろう。このため、交流の概要を学ぶ時間を 1 時間・ 沖縄県と北海道の歴史と伝統文化を学ぶ時間をそれぞれ 1 時間ずつ取り、合計 3 時間の 学習時間を確保した。この増加分は、現行案における織田信長・豊臣秀吉・徳川家康に よる全国統一の過程に関する学習内容を 1 時間にまとめることで見出している。奈良県 に関する学習としては、奈良晒や墨、酒など、現在でも残る伝統産業がこの頃から奈良 町を中心に作られるようになったことや、東大寺復興事業や交通の発達と共に観光客が 流入し、今日まで続く奈良県の観光都市としての性格が大きくなっていったことなどを 学ばせる。その他にも、庶民のくらしを絵巻物から読み取らせるなど、様々な地域や身 分の人々のくらしを総合的に捉えさせたい。 ・明治期~大正期 明治という新しい世の中になり、世の中の変化を庶民の生活の変化という目線から捉 える。このため、近世以前のくらしとの違いを学ばせることが本単元の理解度を大きく 引き上げる。文明開化の中で生まれた「学校」で用いられた筆記用具という観点からは、 本稿の題材となっている墨にも話を広げやすい。 また、鎖国政策下とは違う「世界の中の日本」という位置づけにもこだわり、日本人 が世界と平等に渡り合っていく過程を学ばせる。地域学習としては、廃藩置県による奈 良県の設置や、全国の鉄道敷設に伴って奈良県にも「大佛鉄道」などの路線が敷設され、 人々の足になったことなどを取り上げる。また、明治政府による神仏分離・廃仏毀釈な どの諸政策によって、奈良県の社寺仏閣が受けた影響についても触れる。 以上が、歴史教科書および指導現行案における文化史の扱い方に関する問題点に対する 改善案である。次節では、奈良県における社会科教育を見通した際の伝統文化・墨の扱い 方に関する問題点に対して、3 単位時間の授業開発を行い、その概要を述べる。 4.2 授業開発「墨の歴史とこれから」 本単元(表 2)では、歴史学習を踏まえたうえで伝統文化・墨について捉えなおし、地域 学習のより一層の定着を図る。本単元を扱う時期については、すべての歴史学習が一通り 終了し、子ども達にとって歴史全体の見通しが効くようになった時期を想定している。 33 <表 2> 授業開発「墨の歴史とこれから」 学習活動・内容 1 時間目 指導上の留意点 評価の基準 ○墨の「これまで」を考えよう。 1.「奈良墨」の知識を整理する。 ○小学校中学年における奈良墨学習の ・奈良墨には固形墨と墨汁・筆ペン があり、近年では後者の生産で産 <知識・理解> 知識や歴史学習における墨の知識な 奈良墨に関する一定 どをいま一度想起させる。 の知識を持つことが 業が支えられている。 できている。 2.歴史教科書や授業ノート等 ○子どもたちが調べたことを略式年表 で墨を含めた筆記用具につ に書き入れて整理する。墨は飛鳥時 これまでに学習した いて扱われている箇所を探 代に伝わり、写経や古文書の編纂な ことを思い出しなが し、それらのあり方の変遷を どに利用されていること、室町時代 ら、教科書やノート 理解する。 には墨絵が大成され、文字を書く以 の該当箇所をきちん ・班に分かれ、教科書内の筆記用具 外でも墨が利用されるようになった と選び抜けている。 について扱われているページを探 こと、江戸時代には寺子屋などで子 し、発表する。 ども達が習字をする機会が増え、そ <技能> の結果墨の庶民化が起こったことな どに気づかせる。 2 時間目 ○墨の「いま」を考えよう。 1.筆記用具の移り変わりにつ ○固形墨、墨汁、鉛筆、シャープペン <関心・意欲・態度> いて考え、墨の持つ歴史が他 などの筆記用具を実際に子どもたち 筆記用具の変遷につ の筆記用具に比べて圧倒的 に提示し、どの筆記用具がそれぞれ いて興味を持ち、そ に長いということを知る。 いつ頃にできたのかを考えさせる。 の歴史について進ん ・筆記用具を実際に手に取りながら、 他の筆記用具に比べて固形墨の歴史 で考えようとしてい が古いことを理解させる。 る。 どの筆記用具がいつの時代にでき たのかを話し合う。 2.墨が飛鳥時代から長い時間 ○墨には他の筆記用具と違い、 「書いた <思考・判断・表現> を経て現在でも使用されて 文字を長期間保存できる」、「濃淡を 墨の長所・短所が、 いる理由や、近年では他の筆 しっかりと表せる」などの長所があ 人々が使用する筆記 記用具に取って代わられて り、長い歴史の中でこの利点を買わ 用具の種類に関連し 34 いる理由について考える。 れて長い間人々に使用されてきたこ ていることに気づく ・それぞれの筆記用具の使用上の長 とに気づかせる。同時に、 「墨を磨る ことができている。 所・短所について意見を出し合い、 のに時間がかかる」などを挙げさせ、 それらと使用する筆記用具との関 次第に他の筆記用具にシフトチェン 連について考える。 ジしてきている理由について考えさ ・奈良県の東大寺正倉院宝庫に保管 せる。「服についたら汚れが取れな されてきた正倉院文書には、紙や い」、「身近に売っていない」など、 麻布に書かれた文字が現在でも残 自身が使っていて不便だと感じる点 っていることを知り、墨の保存性 を挙げさせても良い。 の良さについて理解する。 3 時間目 ○墨の「これから」を考えよう。 1.我々の日常生活の中で墨を ○学校現場では書道の時間などで墨を <思考・判断・表現> 用いる機会や用いたものを 使う機会がある。この他、書道教室 現在の墨のあり方の 目にする機会はないか、用い で習字を習っている子どもはそこで 問題点をきちんと認 られているとすればどの場 墨に触れる機会も多いであろう。墨 識し、それに対して 面に用いられているかを考 を使ったものとして子どもたちが目 発想豊かな改善方法 え、話し合う。 にするものといえば、運動会などの を提案できている。 ・話し合う過程で、意外にも身近な 催し物の際の立札看板、賞状などを ところに墨が用いられている例が 思い浮かべることができる。このよ 多いことに気が付く。 うに、子どもの日常生活の中でも墨 を目にする機会は多い。 2.墨をたくさんの人々が使用 ○筆ペンやサインペンなど墨を利用し できるようにするためには、 た新しい商品が考案されていること どのような工夫をしていけ や、世界で活躍する墨絵アーティス ば良いかを考える。 トの存在など、墨の新たな需要を開 ・1 で出た意見をもとに、各班で墨 拓するために、いろいろな取り組み 文化を今後どのように人々に伝え がなされていることを伝え、子ども ていけば良いかを考え、意見を述 の発想の足がかりにする。 べる。 35 本単元の目標は以下のとおりである。 ・ これまで学習してきたことをもとに、墨の持つ長い歴史を再確認し、墨がなぜ長期にわ たって人々の筆記用具であり続けているのかを考え、理解することができる。 ・ 墨の置かれている現在の立場について理解し、どのようにすれば人々が今まで以上に墨 を利用することができるかについて自身の考えを持つことができる。 ・1 時間目― 墨の「これまで」を考えよう ― 主にこれまで学習した墨の内容を復習・整理する授業内容となる。中学年で学習済み である奈良墨に関する知識や第 6 学年で学習した歴史学習において墨について扱った部 分について振り返りを行い、学習がきちんと定着しているか、墨に関して既に持ってい る知識をいま一度喚起する。前者については、ある程度教師が誘導しながら記憶を振り 返らせる活動になるが、後者については、歴史学習の復習を兼ねて活動班ごとに教科書 や授業ノートの振り返りを行わせる。そして、墨に関わる記述を抽出させ、年表にまと めさせる活動を行うことで、墨の歴史の流れを捉えさせることが可能となる。 ・2 時間目― 墨の「いま」を考えよう ― 本時の学習内容は、筆・墨 18)・硯・紙の文房四宝が飛鳥時代以降現在に至るまで約 1300 余年変わることなく人々に使用され続けていることを知ることと、そのような中で近年 墨よりも他の筆記用具を用いられる機会が多くなった理由について考えることである。 両者共に墨汁・鉛筆・シャープペンなどの他の筆記用具と比較しながら学習していくと 子ども達の理解が深まりやすい。前半では、墨や他の筆記用具を実際に手に取らせ、そ れぞれいつごろ使用されだしたのかを既出の年表に書かせる。ここで、子ども達は他の 筆記用具と相対的に見た墨の歴史の長さ・古さを実感することになる。そこで、次の活 動として、墨が他の筆記用具と比べて圧倒的に長い間人々に使用されてきた理由は何な のか、また最近では墨に代わり他の筆記用具が使用されているが、それはなぜなのかを 考えさせる活動を行う。実際には、他の筆記用具と比較した墨の長所・短所を見つけさ せる活動を行うことになるであろう。殊に、長所を考える際には、奈良県にゆかりのあ る正倉院文書などにも触れ、奈良時代の記録が、時を経て現在でも解読することができ るという点から、墨の保存性が極めて強いことにも触れることが望ましい。全体を通し て、正しい結論を導き出させるというよりも、この問題に対して子ども達が自由に考え、 36 豊かな発想力を持って答えを導き出させることに教育の重点を置く。 ・3 時間目― 墨の「これから」を考えよう ― 前時に考えた墨の使用状況を改善するために、どのような方法があるかを考え、意見 を発表する時間である。まずは、学校生活を取り巻く環境の中で墨に触れる機会につい て話し合う。学校現場では現在でも、国語学習(書写)の一環として毛筆の学習が取り 入れられているほか、賞状や催しの際の立札看板など子ども達が墨で書かれた文字に触 れる機会は多く残されている。また、書道教室に通う子ども達 19)にとっては、墨は日常 的に触れる筆記用具として大きな影響を及ぼしていると言える。このように、使用頻度 は大幅に少なくなったものの、墨はまだまだ子ども達の生活には無関係なものであると 言い切ることはできない。そこで、活動班で墨の使用頻度と使用人口を向上させるため の墨の新しいあり方について話し合い、出た意見を発表させる。また、戦後筆ペンやサ インペン 20)などの墨を利用した新しい筆記用具の開発が行われたり、世界で墨のよさを 伝える墨絵アーティストが活躍していたりと、伝統文化・墨を絶やさないための様々な 開発活動が行われている。さらに、産業分野でもコンデンサの伝導性塗料として書道墨 汁が用いられるなど、「筆材」としてではない新しい墨の利用法なども考案されてきてい る。最後にこのようなことにも触れて授業を締めくくりたい。 37 5.結論 5.1 本稿の成果 伝統文化に関する学習は、現状では主に小学校中学年の社会科教育において行われてい る。しかし、その学習は地域学習の一部として理解されており、伝統文化そのものを学ぶ ことよりも、むしろ伝統文化を通して子ども達のくらす地域のことを学ぶということに力 点が置かれている。本稿では、小学校社会科教育における伝統文化の扱い方の不徹底性を 提起し、伝統文化の持つ長い時間の流れを子ども達に理解させるという観点から、小学校 第 6 学年の歴史教育の教材として扱うことができないかを模索した。 第 2 章では、現在の歴史教育における文化の扱われ方について小学校・中学校の歴史教 科書研究を行った。ここでは、両教科書の文化史の扱いに関する内容から文化の定義が曖 昧であることを指摘し、 「伝承性・永続性・発展性」という文化の新しい定義付けを行った。 そして、歴史学習における文化は、上記の定義を鑑みて取り扱うべきであることを確認し た。 第 3 章では、伝統文化の持つ「地方性」の観点から、奈良における伝統文化である奈良 墨を取り上げ、その概要と授業における扱われ方の実際を述べた。奈良墨は、現状ではや はり小学校中学年における地域学習の一環として使われており、墨そのものに関する学習 に関してはやや疎かにされている状況を確認した。奈良墨は、奈良市の小学校現場におい ては代表的な地域学習教材であり、教科書副読本を通じて奈良県内の子ども達が必ず一度 は学習する機会のある、奈良県における重要な伝統産業である。それゆえ、「なぜ墨は奈良 で作られているのか」、「いつから作られているのか」、「なぜ現在までほとんど変わらぬ形 で受け継がれてきたのか」など、墨の持つ伝統文化としての歴史的側面にも踏み込んだ教 育が行われなければならない。そして、それはすなわち歴史教育の中において培われるべ きではないかと述べた。 第 4 章では、第 2 章・第 3 章で述べたことを総じて、 「1.文化史そのものの時間数増加」・ 「2.文化史と政治史との関連性をできるだけ持たせる」 ・ 「3.文化の伝承・永続・発展の性質 を理解させる」・「4. 奈良県の歴史的なあゆみと、そこで培われた伝統文化に関する学習の 時間を設ける」という 4 つの目的を持ち、歴史教育における文化史に関する内容を再検討 し、改善案を提示した。現行案では政治史に偏りがちである歴史教育の中に、文化史を適 度に織り込み、かつ伝統文化についても学ぶ機会を持つことができる一案を完成させるこ 38 とができた。さらに、年間指導計画の中から 3 時間を抽出し、奈良県の伝統文化・墨の歴 史的視野をもった授業構想も行うことができた。これによって、本稿における問題点であ った社会科教育における伝統文化の扱い方の不徹底性はある程度解消されたように思われ る。 本研究を通して、社会科教育における伝統文化の扱い方に対して疑問を投げかけ、それ に対する改善案を提示できたことは、社会科のカリキュラムにまだまだ改善の余地がある ことを示すことを意味しており、この点で非常に大きな成果となったといえよう。また、 今回の伝統文化・墨に関する授業構想はあくまでも奈良市内の小学校現場を対象としたも のであり、他地域で同観点から授業構想を行うことは十分に可能であると考えられる。例 えば、第 3 章で述べたように、全国には経済産業大臣が指定している伝統工芸品が 212 品 目(巻末資料 3 参照)あり、これらを教材として本研究と同様の授業構想を行うことは非 常に現実的であると思われる。 5.2 本研究の課題 本稿では伝統文化・墨を事例に社会科教育の観点から研究を行った。しかし、本来子ど も達が墨を実際に扱う機会が多いのは国語科(書写)の授業である。ゆえに、墨を教材と して扱う際は国語科の授業と連携しながら行って行くべきである。 ところが、国語科教育では固形墨を使うことにあまり積極的ではないと思われる。理由 としては、本稿でも述べたようにやはり墨を磨る「時間」との兼ね合いという点を挙げる ことができる。筆者は、先の株式会社古梅園でのインタビューにて、近年小学校現場に支 給されている習字セットは、上記のような理由から固形墨を入れずに墨汁のみを入れたも のが大半であるという話を伺った。固形墨を入れると教材の設定価格としてはそれだけ価 格が高くなる上、授業における使用頻度もそれほど高くないため、家庭でも固形墨入りの 習字セットを敬遠する傾向が強いという。 このような現状を招いたのは、固形墨に対する教師の認識不足によるところが非常に大 きい。 「墨をする時間があれば、もっと他のことができる」という教師の安易な考えのもと、 固形墨は教育現場から今まさに姿を消そうとしている。このような教師が、いくら伝統文 化に関する学習だといって社会科の教材開発で墨を取り上げても、教師自身が墨の価値を 分かっていないので、当然ながら墨の良さが子ども達に伝わるはずはない。大切なことは、 複数教科間連携と教師自身の意識改革である。筆者自身も以後このことを忘れずに、日々 39 教材開発に励みたい。 また、本稿では授業実践を行い、子ども達の反応が見ることができなかった点も悔やま れるところである。今後、授業実践を通して子ども達が望ましい気づきを得ることが期待 される。 40 <脚注> 1) 農林水産省 HP より「美の里づくりガイドライン」 (http://www.maff.go.jp/j/nousin/soutyo/binosato_gaidorain/index.html)を参考にし た。(最終検索日 2013 年 1 月 8 日) 2) 伝統工業の定義:経済産業大臣が指定している 212 品(2013 年 1 月現在)の伝統的工 芸品を生産する工業のことである。 3) 全 101 採択地区。中央教育研究所 HP (http://www.chuoh-kyouiku.co.jp/support/adoption.php)より(最終検索日 2012 年 12 月 27 日)。 4) 日本文教出版発行の教科書については、A を「小学生の社会」、B を「小学社会」とする。 5) 望月一憲「日本最古の文献『法華義疏』」(東京医科歯科大学教養部研究紀要 10 1980: pp.1-11)にも記されているように、日本最古の古文書は『法華義疏』 (伝 615(推古 23) 年:)であると言われている。 6) 小学校教科書では須恵器という言葉を使わず、 「渡来人が伝えた新しい土器」などという 表現を用いている。 7) 7 世紀後半の仏教と新しい国づくりの時代を反映して生まれた清新な文化。代表的なもの に、薬師寺東塔や薬師三尊像・聖観音像、高松塚古墳壁画などがある(清水書院発行中 学校歴史教科書より引用) 8) 1 日 3 食の扱いについては、その萌芽について述べた教科書(日本文教出版版・帝国書 院版)と確立について述べた教科書(清水書院版・教育出版版)に二分する。 9) 高山茶筌、奈良筆が指定されている。指定の要件は伝統的工芸品産業の振興に関する法 律(「伝産法」、最終改正:2011 年 6 月 24 日法律第 74 号)で規定されている。 10) 赤膚焼(あかはだやき)、吉野手漉き和紙(よしのてすきわし)、奈良団扇(ならうちわ) 奈良晒(ならさらし) 、鹿角細工(しかつのさいく)、三宝(三宝)(さんぽう)、神酒口 (みきのくち)、吉野杉桶・樽(よしのすぎおけ・たる)、大和指物(やまとさしもの)、 坪杓子・栗木細工(つぼしゃくし・くりきざいく)、木製灯籠(もくせいとうろう)、く ろたき水組木工品(くろたきみずくみもっこうひん)、大和出雲人形(やまといずもに んぎょう)、笠間藍染(かさまあいぞめ)、高山茶道具(たかやまちゃどうぐ)が指定さ れている。 11) 伝産法のことである。 41 12) http://www.pref.nara.jp/dd_aspx_menuid-3346.htm(最終検索日 2012 年 12 月 4 日) 13) 墨の大きさは容積ではなく質量で測る。和墨では 15g が一丁型とされており、15g× 2=30g が二丁型、15g×3=45g が三丁型・・・というようにする慣わしである。― http://www.minase.co.jp/syouhin/sumi/sumimekata.htm より引用(最終検索日 2012 年 12 月 2 日) 14) http://www.sumi-nara.or.jp/(最終検索日 2013 年 1 月 7 日) 15) 生駒市立生駒南第二小学校の西浦弘望教諭への聞き取り調査(2012 年 11 月 7 日、8 日 実施)を参考にした。 16) ここで言うところの「マルチ教材」とは、所謂「マルチメディア教材」のことであると 考えられる。本稿では「指導の手引き」の表現を尊重し、本文をそのまま引用した。 以下同じ。 17) 吉川圭三発行『国史大辞典第 12 巻』 (吉川弘文館 1991:pp.127-128)によれば、武士 の起源に関する研究は大正期以降本格化しており、現在のところ主な学説としては在 地領主的武士論・国衙軍制論(いずれも 1950-60 年代を中心に展開)、職能的武士論 (1970 年代以降に展開)など諸説ある。ただし、いずれも断定できる学説ではなく、 必ずしも職能集団としての性格を持って登場したと言い切ることはできない。ここで は少なくとも初期の武士には身分的に武を職能とする性格があったと考えられるため、 この表現を用いている。 18) ここでいう「墨」とは固形墨のことを指す。 19) 2012 年 12 月 18 日に奈良市立三碓小学校の第 2~4 学年の任意の学級で挙手にて調査を 行ったところ、低学年(第 2 学年)学級の半数以上・中学年(第 3・4 学年)学級の約 半数が書道教室で毛筆を習っていることが分かった。 20) サインペン:1963(昭和 38)年「クレタケマーキングペン」として呉竹精昇堂から発 売、外国からの注文も殺到した。 筆ペン :サインペンの技術を応用して 1973(昭和 48)年 11 月に「くれ竹筆ぺん」 として開発。411 万本が一気に完売した。 42 <調査教科書・副読本一覧> ○小学校社会科教科書 ・有田和正他著『小学社会 6 上』(教育出版 ・石毛直道他著『社会 6』(光村図書出版 ・加藤幸次他著『小学生の社会 6 上 2010 年 3 月 10 日検定済) 2010 年 3 月 10 日検定済) 日本の歩み』 (日本文教出版 2010 年 3 月 10 日検定 済) ・北俊夫他著『新しい社会 6 上』(東京書籍 2010 年 3 月 10 日検定済) ・清水毅史郎他著『小学社会 6 年上』(日本文教出版 2010 年 3 月 10 日検定済) ○中学校歴史教科書 ・黒田日出男他著『社会科 中学生の歴史 日本の歩みと世界の動き』 (帝国書院 2011 年 3 月 30 日検定済) ・五味文彦他著『新しい社会 歴史』(東京書籍 2011 年 3 月 30 日検定済) ・笹山晴生他著『中学社会 歴史 未来をひらく』(教育出版 ・鈴木正幸他著『中学社会 歴史的分野』(日本文教出版 2011 年 3 月 30 日検定済) 2011 年 3 月 30 日検定済) ・三谷博他著『新中学校 歴史 日本の歴史と世界』(清水書院 2011 年 3 月 30 日検定済) ○小学校教科書副読本 ・佐々木秀樹発行 『奈良県のくらし』 (奈良県小学校第 4 学年用社会科副読本) (日本文教 出版 2010 年) ・『わたしたちの奈良市』 (奈良市小学校第 3 学年用副読本) (奈良市教育委員会 43 2011 年) <参考文献・参考資料> ・安藤輝次「同心円的拡大に関する日米教科書の比較-小学校社会科カリキュラム研究その 1-」(奈良教育大学紀要[人文・社会科学]54 2005 年:pp.83-91) ・石井昭発行『シリーズ「日本の伝統工芸」第 6 巻 オ出版 墨・筆<鈴鹿墨・奈良筆>』 (リブリ 1986 年:pp.2-23,36-39) ・市大樹著『飛鳥の木簡 -古代史の新たな解明』(中公新書 2012 年:pp.19-48) ・伊藤裕康「伝統的な工業の教材化(1)-豊橋筆づくりを素材に-」(地理学報告 1984 年-愛 知教育大学地理学会:pp.11-21) ・伊藤裕康「小学校 5 学年社会科『伝統的な技術を生かした工業』の教材化(2)-単元別地理 教育実践史研究を踏まえた授業構成に関する予察的研究-」(地理学報告 1994 年-愛知教 育大学地理学会:pp.39-46) ・金子泰昭「長野県小学校社会科における伝統工業の教材化に関する研究」(上越社会研究 2004 年-上越教育大学社会科教育学会:pp.79-88) ・納屋嘉治『書道入門』 (淡交社 1981 年:pp.2-27,45,152-157) ・佐賀有道「B 歴史学習における地域素材の教材化と関心・態度の評価 : 鳥取県弓浜半島 の農民のくらしを通して(I 小学校地域学習の指導と評価)」(社会科教育論叢 1984 年- 全国社会科教育学会:pp.32-34) ・榊莫山著『文房四宝 墨の話』(角川書店 1981 年:pp.18-35) ・佐島群巳「歴史教育における『伝統・文化』学習の意義」(学校教育研究所年報第 36 号 1992 年:pp.36-47) ・新村出編『広辞苑(第 5 版)』(岩波書店 1998:pp.2380-2381) ・高山博之『歴史教育の現実と課題』(東洋館 1990 年:p.42) ・農林水産省「美しい農山漁村を目指して 振興局 美の里づくりガイドライン」(農林水産省農村 2004 年 pp.68-79) ・藤本浩行「育てる学力を明確にした授業づくり」 (現代教育科学 2 2010 年-明治図書出版: pp.50-53) ・松村明監修『大辞泉(第 1 版)』 (小学館 1995:pp.2360-2361) ・三島康雄著『奈良の老舗物語-伝統と革新のはざまで』 (奈良新聞社 1999 年:pp.12-50) ・目賀田八郎「小 5『伝統的技術を生かした工業』の学習素材と授業構成」 (社会科教育 189 1979 年:pp.55-61) 44 ・望月一憲「日本最古の文献『法華義疏』」(東京医科歯科大学教養部研究紀要 10 1980: pp.1-11) ・文部科学省『小学校学習指導要領』(東京書籍 2008 年:pp.34-42) ・安野功「守り・受け継ぎ・次世代につなぐ」 (現代教育科学 2 2010 年-明治図書出版: pp.46-49) ・安彦勘吾著『奈良の筆と墨』(奈良市 1983 年:pp.40-95) ・吉川圭三発行『国史大辞典第 12 巻』(吉川弘文館 1991:pp.127-128) ・吉田高志「世界に誇れるものという視点で日本の歴史を見直させる(「伝統と文化」の継 承と発展をめざす社会科の授業)」 (現代教育科学 2 2010 年-明治図書出版:pp.54-57) ・吉田禎吾・柳川啓一・中牧弘允・板橋作美訳、C.ギアツ『文化の解釈学1』(岩波現代選 書 1987 年:p.148) ・和田萃他著『奈良県の歴史』(山川出版 ・『奈良の墨』(奈良県商工観光館 2003 年:pp.2-400) 製作年不明:pp.1-42) ・「別冊 墨 第七号 文房四宝-筆墨硯紙の用と美-」(芸術新聞社 45 1987 年:pp.64-67) 2012 年度 修士論文 伝統文化に関する学習を盛り込んだ歴史教育における 新授業構想の提案 資 料 編 目 次 資料 1 小学校教科書調査(文化の扱われ方や素材など)・・・1 資料 2 中学校教科書調査(文化の扱われ方や素材など)・・・4 資料 3 経済産業大臣指定 伝統工芸品一覧(2013 年 1 月現在) ・・・9 <資料 1> 小学校教科書調査(文化の扱われ方や素材など) 全 5 冊:東京書籍・日本文教出版(小学社会,小学生の社会) ・光村図書・教育出版 ※網掛け部は主に文字の歴史に関する記述箇所(資料 2 も同様) 時 東京書籍 代 日本文教出版 日本文教出版 (小学社会) (小学生の社会) 光村図書 教育出版 縄 ・三内丸山遺跡 ・狩りや漁の生活(竪穴住 ・縄文時代のくら ・大昔の人々のくらし ・縄文のくらしウォッチング-三 文 と縄文のむら 居,狩りや漁をしてくらし し(土器,縄文ポシ (弓、矢じり,石皿、すり 内丸山遺跡(土偶,土器,矢じり) 時 (土器,竪穴住 ていたころの食事,石器,土 ェット,服装) 石) 代 居,釣り針など) 器など) ・加曽利貝塚を訪ねる(石 器,石や貝などでつくら れたアクセサリー,骨角 器,竪穴住居,土器) ・縄文時代に栄えた村三内丸山遺跡(土偶,ひす いの玉,黒曜石のナイフ, 掘立柱建物など) ・縄文時代のころの世界 は?(甲骨文字-殷) 弥 ・板付遺跡と米 ・登呂遺跡の米作り ・吉野ヶ里のくら ・米作りはどうやって始 ・米づくりが始まる(田げた,土 生 づくり (くわ,田げた,物見やぐら, し(土器,うす、き まったのかな(木製のく 器,石包丁,食事,火おこし) 時 ・吉野ヶ里遺跡 剣,土器,食事など) ね,服装) わ,矢板,田げた,石ぼうち ・むらからくにへ(銅剣,銅たく, 代 の発掘状況(土 ・登呂遺跡の発掘 ょう,竪ぎね,土器) 管玉) 器,鍬,石包,鉄製 ( 田 げ た ,木 槌 ,し ・米作りによって村はど 道 具 ,貨 幣 ,管 玉 ゃくし,琴) う変わったかな(銅たく, 高床式倉庫,かめ棺) など) 古 ・石室の様子と ・復元されたはにわ工場- ・渡来人の伝えた ・どうして古墳がつくら ・巨大古墳と大王(銅鏡,はにわ, 墳 出土品-森将軍 史跡新池ハニワ工場公園 文化(埴輪,養蚕, れるようになったのかな 稲荷山鉄剣,江田船山鉄刀) 時 塚古墳(勾玉,土 (埴輪、かま,渡来土器,鉄 鍛 冶 ,青 銅 器 作 り , (はにわ,まが玉,ガラス 代 器,はにわ) 製武具、渡来人が伝えた新 漢字→木簡に練 玉,鉄製の刀とかぶと) ・大和朝廷と国 しい土器) 習、記録を残す,服 ・くには、どうなってい 土の統一(稲荷 装) ったのかな(稲荷山古墳 山鉄剣,江田船山 ・天皇中心の国(荷 鉄剣) 鉄刀,のぼりが 札に使われた木 ・大陸や朝鮮半島から伝 ま,漢字) 簡) えられたもの(高松塚古 墳壁画,藤ノ木古墳出土 のくつ,渡来系土器) 1 奈 ・正倉院の宝物 ・貴族の政治とくらし ・平城京の人びと ・平城京ってどんなとこ ・木簡からよみがえる人々の暮 良 ( 琵 琶 , 鏡 ,ガ ラ (市のようす-絵) (貴族の食事と庶 ろなのかな(市,和同開 らし(木簡,貴族、庶民の食事, 時 スのコップな ・貴族と農民の食事、木簡 民の食事、和同開 珎,木簡,木簡からわかる 万葉集,歴史書) 代 ど) (写真) 珎,歴史書、風土記) 貴族の食事) ・世界につながる文化と鑑 ・正倉院の宝物 ・大陸とは、どんな交流 (ガラスの器,瑠璃杯,水差し,大 真 (ガラスのコップ, があったのかな 仏開眼式で使われた筆とひも,琵 (ガラスのおわん,面,琵 水差し,琵琶) (琵琶,ガラスの器,うる 琶)←外国出土品と対比 琶) ・シルクロードの終着点-正倉院 しをぬった水差し) 平 ・貴族と庶民の ・藤原道長のくらしを調べ ・日本風の文化 ・貴族の暮らしからどん ・藤原道長と貴族の暮らし(寝 安 食事 る(儀式、年中行事,和歌、 (漢字からかな な文化が生まれたのかな 殿造,和歌) 時 ・日本風の文化 舞曲、絵合わせ、けまり, へ) (平仮名、片仮名,大和 ・今に受け継がれる貴族の文化 代 が生まれる 寝殿造,平等院鳳凰堂) ・国の政治のしく 絵) (和歌,囲碁) (大和絵,かな文 ・日本風の文化 みはどう整えられ ・貴族の暮らし新聞 ・紫式部と清少納言(ひらがな、 字,束帯、十二単, (ひらがな、かたかな,大和 たの (ふろ,日記をつける,歌 かたかな) 平等院鳳凰堂,寸 絵,十二単) (平等院鳳凰堂) の会,けまり,船遊び,十二 単、束帯,寝殿造) 松庵色紙) 鎌 ・鎌倉,室町時代を生きた ・見てみよう!武士の暮 倉 人々のくふうや努力(武士 らし(やぶさめ) 時 と農民の食事) ・武士の世の中(やぶさめ) 代 ・室町文化 ・金閣と銀閣(水墨画,書院造) (金閣、銀閣,生け花,書 ・祇園祭と町衆 ・いまに伝わる室 院造,能、狂言,水墨画,茶 (室町時代と現在の祇園祭の比 (水墨画,生け花,茶の湯, 町文化 の湯,祇園祭) 較) 能,石庭,祇園祭) (龍安寺石庭,書院 ・今につながる室町文化(茶の け花,墨絵,能、狂 造,水墨画,能,祭り, 湯,能) 言,食事) 盆踊り) ・伝統文化を伝える仕事-能楽師 ・文化を体験して さんにインタビュー- 室 ・室町文化、地 ・室町文化 町 方への文化の広 (金閣、銀閣,書院造,和室) (大内ぬり) 時 まり ・今に残る室町文化 代 ( 金 閣 , 銀 閣 ,書 院 造 ,茶 の 湯 ,生 ・くらしの変化 みよう (水墨画,茶会) 2 江 ・鎖国の中での ・鎖国のもとでの外国との ・さかんになった ・なぜ、キリスト教を禁 戸 交流(対馬,沖縄, 交流(朝鮮通信使に出した 産業(備中ぐわ、 止したのかな(唐子踊り) 朝鮮) 時 北海道) 料理,唐子踊) 千 歯 こ き ,養 蚕 ,紅 ・江戸時代の北海道、江 ・活気あふれる町人の文化(歌 代 ・江戸の文化と ・ポルトガル語が日本語に 花から紅を作る,唐 戸時代の琉球王国 舞伎,人形浄瑠璃,浮世絵,俳句) 新しい学問(歌 (語源など) 津 焼 ,茶 を つ く る , ・都市の発展は、どんな ・江戸・大阪・京都の発展(染 舞 伎 ,落 語 ,年 中 ・江戸時代を生きた人々の 木綿の売り買い) 文化を生んだのかな 物、絹織物,焼物) 行 事 ,浮 世 絵 ,花 くふうや努力(とうみ,千歯 ・町人の文化 (歌舞伎,人形浄瑠璃,浮 ・江戸の人々の楽しみ(相撲,花 火 , 寺 子 屋 ,貸 本 こき,からさお,備中ぐわ) (人形芝居,子ども 世絵,和時計) 火,食事) 屋) ・食事を楽しむ(農村と江 歌舞伎,わんぱく相 ・寺子屋と藩校 ・江戸時代の武 戸の食事) 撲,浮世絵,川柳) ・江戸時代の交通と作物(備中 士の学校(日新 ・町人文化と新しい学問 ぐわ、千歯こき,肥料,商品作物, 館) (浮世絵,歌舞伎,人形しば 伊勢参り、大山参り) い) ・交通の発達と特産物(織物,焼 ・鎖国下の日本(北海道,沖縄, 物,漆器,和紙) 明 ・明治の新しい ・富国強兵と文明開化(郵 ・変わる生活(新 ・文明開化-新しい生活、 ・人々の暮らしが変わった(小 治 世の中(電報、 便,学校) 聞 社 ,ガ ス 灯 , こ う 新しい考え方-(ポスト, 学校の授業,新聞,人力車,郵便,ガ 以 郵 便 ,鉄 道 ,ガ ス ・変わるくらし(洋服,れん も り が さ ,人 力 車 , 人力車、鉄道馬車,新聞, ス灯,鉄道,太陽暦,電話) 降 灯,洋服,牛肉) が造りの建物,ランプ,ガス 電 話 ,鉄 道 馬 車 ,動 パンを焼く人,牛なべ) ・産業の発達と暮らしの変化(西 ・生活や社会の 灯) 物園の開演 など) ・大正・昭和の暮らし(地 洋風の住宅,ガス、電気,デパート, 変化(交通の発 ・明治・大正を生きた人々 ・科学や文化の発 下鉄の開通,バス,ラジオ, バスの運行) 達,洋服,ラジオ) (タイピスト,バスの車 展(印刷技術,音楽, 子ども向け雑誌) ・戦争と国民生活の変化(配給 ・戦争中の生活 掌・電話交換手など) 油絵、西洋画) ・戦争中の暮らし(陶器 制など) (配給制・疎開 ・戦争で大きく変わった ・戦時中の国民の 製のアイロン,竹製のラ ・産業の発展と国民生活の変化 先の食事・軍隊 人々のくらし(配給制、切 くらし(子どもの ンドセル,学校生活、運動 (テレビ、洗濯機、冷蔵庫,高速 式の学校生活) 符制) 遊 び 道 具 ,千 人 針 , 会の様子など) 道路、新幹線) ・アイヌの伝統 ・豊かになった人々のくら 子どもの軍事教練, ・戦後の暮らしの様子(新 文化を守るため し(電気せんたく機,テレ 疎開先の食事) 幹線、高速道路) に ビ,電気冷蔵庫,自動車,クー ・豊かなくらしを ラー,パソコン) 求めて(電化製品, 自動車) 3 <資料 2> 中学校教科書調査(文化の扱われ方や素材など) 全 5 冊:東京書籍・日本文教出版・帝国書院・清水書院・教育出版 時 東京書籍 日本文教出版 帝国書院 清水書院 教育出版 ~ ・人類の出現と進 ・人類の誕生(打製石 ・人類がたどった進化(打 ・新人の登場と旧石器時 ・生き抜く知恵(打製石器, 新 化(打製石器) 器,骨角器,ラスコーの 製石器、磨製石器,言葉の発 代(打製石器,女性像,野生 磨製石器,ラスコーの洞穴 石 ・新石器時代(土 洞窟壁画,磨製石器,農 達,土器,ラスコーの洞穴壁 動物の狩り、植物の採取) 壁画,土器,弓矢) 器 器,磨製石器,青銅 耕、牧畜) 画) ・大河が生んだ文明(メ ・骨に刻まれた文字(甲骨 時 器,鉄器) ・エジプト文明(象形 ・世界各地で生まれる文明 ソポタミアのくさび形文 文字,青銅器,インダス文字, 代 ・文明の発展(エ 文字) (エジプトの神聖文字,メ 字,エジプトの象形文字, 十進法、アラビア数字) ジプトの象形文字, ・メソポタミア文明(く ソポタミアのくさび形文 インダス文字,パピルス, ・エジプトはナイルの賜物 メソポタミアのく さび型文字) 字,インダス文字,ミロのビ ハンムラビ法典) (象形文字,くさび形文字, さび形文字,インダ ・インダス文明(イン ーナス,水道橋) ・東アジアで生まれた文 ハンムラビ法典,アルファ ス文字) ダス文字) ・東アジアに生まれた文明 明(青銅器,甲骨文字、→ ベット) ・中国文明の発生 ・東アジアに広がる中 (甲骨文字,青銅器,鉄製農 漢字のもとに,貨幣) (甲骨文字,儒教, 国の文明(甲骨文字,青 具) シルクロード) 銅器,分銅,貨幣) 代 ・朝鮮半島の国々(ア ワ、キビ、イネ,青銅器、 鉄 器 ,漢字 、仏教 の普 及) 縄 ・日本列島の暮ら ・日本人のルーツと縄 ・稲作による生活の変化 ・日本列島の文化(水稲 ・日本列島のあけぼの(打 文 しと縄文文化(木 文時代(打製石器,石器, (土器,土偶,銅剣,銅鐸,青 耕作,土器,銅鐸,青銅器) 製石器,釣り針,縄文土器,土 ・ の実の煮炊き,土 土偶,縄文土器,貝塚) 銅器,鉄器) 偶,竪穴住居) 弥 器,貝塚,竪穴住居) ・稲作の広まりと弥生 ・死因不明の人骨が見つか ・古代中国の統一(シルク 生 ・弥生文化のと邪 時代(弥生土器,銅鐸, る!(周囲の情報からわか ロード,歴史書,紙の発明) 時 馬台国(稲作,金属 青銅器、鉄器) ること,貝塚から見つかる ・楽浪の海中に倭人あり 代 器,土器,銅剣、銅 もの) (稲作,弥生土器,金属器、 矛、銅鐸、銅鏡) 青銅器) 古 ・古墳文化(はに ・ヤマト王権と渡来人 ・ムラがまとまりクニへ ・古墳文化とヤマト王権 ・東アジアの中の大和政権 墳 わ,銅鏡、玉、銅剣) (鉄製の刃をつけた農 (ヒスイ,貝製の腕輪,銅 の統一(埴輪,鉄剣,金の冠 (古墳,埴輪,鉄製のよろい, 時 ・大陸文化を伝え 鏡) →韓国出土との比較) 古墳から出た冠→朝鮮と 代 た渡来人(須恵器、 器,稲荷山鉄剣,漢字の ・鉄からみえるヤマト王権 ・渡来人(須恵器,機織, の比較,稲荷山鉄剣、江田船 絹織物を作る技術, (鉄製のかぶと、よろい, 漢字) 山鉄刀) 漢字) 具,埴輪,馬具,銅鏡,須恵 伝来) 埴輪,須恵器、鉄器の製造, ・渡来人の伝えた文化(土 機織,稲荷山鉄剣、江田船山 木工事,金属加工,絹織物,須 の鉄刀,漢字の伝来) 恵器) 4 飛 ・飛鳥文化(法隆 ・ 「日本」と「天皇」 (飛 ・最初の仏教文化-飛鳥文化 ・飛鳥文化(法隆寺・釈 ・隋と唐の中国統一(唐三 鳥 寺釈迦三尊像,法隆 鳥池遺跡出土木簡) (法隆寺・釈迦三尊像・弥 迦三尊像・玉虫厨子・弥 彩) 時 寺金堂壁画,広隆寺 ・飛鳥文化と天平文化 勒菩薩像→写真) 勒菩薩像→韓国との比 ・あつく三宝を敬え(法隆 代 弥勒菩薩像,法隆寺 (飛鳥時代の仏像→朝 較) 寺、金堂釈迦三尊像、玉虫 釈迦如来像) 鮮との比較,法隆寺、金 ・律令国家を目指して(富 厨子・弥勒菩薩像→朝鮮と ・大宝律令(富本 堂 釈 迦三 尊像 ,法 隆寺 本銭) の比較) 銭) 百 済 観音 像 ,高松 塚古 ・白鳳文化(薬師寺東塔・ ・進む国づくり(富本銭) 墳壁画→中国との比 薬師三尊像・聖観音像・ 較,唐招提寺金堂,酔胡 高松塚古墳の壁画) 奈 ・奈良時代の人々 王面,五弦琵琶,紺瑠璃 ・新しい都平城京(富本銭、 ・平城京の建設と仏教(長 ・シルクロードにつながる 良 のくらし(和同開 杯→朝鮮との比較) 和同開珎) 屋王邸宅跡で発見された 道(和同開珎.歴史書、風土 時 珎,貴族と一般の ・奈良時代のくらし(衣 ・律令国家でのくらし(木 木簡,貴族の食事,荷札木 記、万葉集,興福寺の阿修羅 代 人々の食事,木簡) -貴族の服,市で売られ 簡,庶民の食事、貴族の食 簡) 像,鳥毛立女屏風→トルフ ・大陸の文化を学 た生活用品-干し柿、 事) ・大陸の影響を受けた文 ァンの樹下美人図との比 ぶ(貝細工の鏡,五 栗、塩、米、食器など, ・大陸の影響を受けた文化 化-天平文化(漆加工され 較,酔胡王面、五弦琵琶) 弦 琵 琶 , 水 さ し ,歴 食-貴族の食事と庶民 -天平文化(琵琶,女性像,歴 た水さし,ガラス製のコ ・木簡と計帳は語る(木簡, 史書、万葉集、万 の食事,住-貴族の住居 史書、万葉集) ップ,五弦琵琶,和歌,万葉 貴族の食事,農民の食事、住 葉仮名) と 庶 民の 住居 ,古 代の ・九州につくられた拠点 仮名) 居) 稲作技術) 大宰府(防人の歌→万葉が ・資料を読み取ろう(文 ・万葉集と歴史書(万 なの紹介,トイレ) 書、古記録、木簡の読み 葉集、万葉がな,歴史書, 方) 風土記) 平 ・貴族のくらし(和 ・文化の日本化(平等 ・芽ばえる日本独自の文化 ・国風文化(片仮名と平 ・ 「伊呂波」から「いろは」 安 歌,けまり,寝殿造, 院鳳凰堂、阿弥陀如来 (密教、浄土信仰,平等院鳳 仮名の成り立ち,仮名文 へ(寝殿造,古今和歌集,か 時 貴族と庶民の食事, 像,浄土信仰,寝殿造,束 凰道、阿弥陀仏,かな文字, 学作品,寝殿造り,大和絵, な文字、かな文学,平等院鳳 代 行事) 帯、十二単,かな文字) 寝殿造,庶民の生活) 末法思想、平等院鳳凰堂、 凰道、阿弥陀如来像,浄土の ・国風文化(大和 ・渡来人と渡来文化(飛 絵,仮名文字,古今 鳥寺,桂川のダム,高麗 ・木簡が語る人々の暮ら 和歌集,文学作品) 神社など) し、文字の移り変わり 阿弥陀如来像) ・浄土信仰(阿弥 陀如来,平等院鳳凰 堂) 5 教え) 鎌 ・民衆の動き(二 ・農業と商業の発達(二 ・武士、僧侶たちが広めた ・宋王朝とモンゴル帝国 ・宋の中国統一(茶の栽培, 倉 毛作,定期市) 毛作,商品作物の栽培, 文化(鎌倉新仏教,東大寺南 (磁器,羅針盤,宋銭→貿 陶磁器生産,木版印刷,火薬, 時 ・鎌倉文化(新古 宋銭,高利貸し) 大門金剛力士像,絵巻物,和 易品として) 羅針盤) 代 今和歌集,金剛力士 ・朝鮮と琉球(首里城, 歌集,随筆) ・農業技術の発達(二毛 ・祇園精舎の鐘の声(鎌倉 像,絵巻物,随筆,鎌 ハングル) 作,製塩) 新仏教,軍記物,南大門、金 倉新仏教) ・中世の文化(鎌倉新 ・新しい仏教と鎌倉文化 剛力士像,絵巻物、肖像画) 仏教,軍記物,新古今和 (鎌倉新仏教、座禅,軍記 歌集,彫刻,似絵,東大寺 物、随筆,金剛力士像) 室 ・朝鮮との貿易(ハ 南大門、金剛力士像,琵 ・琉球とアイヌの人々がつ ・室町時代の文化(金閣、 ・北と南で開かれた交易 町 ングル) 琶法師,金閣、銀閣,能 なぐ交易(首里城,生糸,絹 銀閣,書院造,能、狂言、茶 (首里城、守礼門,アザラ 時 ・琉球王国の成立 面,書院造,狂言,お伽草 織物,陶磁器,昆布,毛皮,ラ の湯、生け花,風流踊り, シ、トド、クジラの狩猟、 代 (紅型,首里城) 子,水墨画,鷺舞,連歌) ッコの皮,さけ) 水墨画,食生活の変化) 食用ブタ、ラッコの毛皮→ ・室町文化(金閣、 ・室町時代のくらし(衣 ・韓国新安沖から沈没船が オホーツク文化として) 銀閣,能,茶の湯,連 -直垂姿の公家、小袖を 見つかる!(日中韓の文化 ・今につながる文化の芽生 歌,書院造,水墨画, 担ぐ武家婦人,食-精進 交流の様子-陶磁器,木簡,将 え(金閣、銀閣,能楽,連歌, 狂言,御伽草子) 料理、そうめん売り,住 棋の駒など) 書院造,水墨画,とうふ、ま ・自治都市,堺とそ -生け花、掛軸、祇園祭) ・庶民が担い手となった文 んじゅうを食する文化,節 の遺産(堺の町並 化(能、狂言,連歌,お伽草 分、七夕、盆踊り,お伽草子, み、鉄砲、刃物) 子) 石庭) ・室町時代の生活 ・現代につながる生活様式 ・団結する村、にぎわう町 文化と現代(衣-小 の誕生(1 日 3 食の普及、 (大原女,木の桶を作る職 袖 ,食 -茶 の湯 の文 麺食,畳,木綿の服,家族のあ 人,祇園祭) 化、一服一銭売り、 りかたの変化) ・働く女性や子供たち(建 和菓子,住-書院造、 ・公家の文化と禅宗の影響 築現場で働く子ども、機を のれん,御伽草子、 (書院造,金閣、銀閣,水墨 織る女性、米を売る女性) 寺子屋,たたみ、羽 画) 根つき) 安 ・有田焼のルーツ ・安土桃山の文化(障 ・武将や豪商が担った文化 ・南蛮文化(医学、天文 ・海外から流入する文化 土 (有田焼) 壁画,茶の湯,阿国歌舞 (姫路城,唐獅子図屏風、狩 学、航海術、活版印刷術, (医学,天文学,航海術,西洋 ・ ・桃山文化(ふす 伎,三味線,浄瑠璃,西本 野永徳,茶の湯、千利休,印 地球儀,世界地図,望遠鏡, 画の技法,カステラ,カル 桃 ま絵、屏風絵,茶の 願寺書院,有田焼,1 日 3 刷) 眼鏡など) タ、眼鏡、時計,三絃→三線 山 湯、わび茶,三線) 食の普及,瓦屋根の家) ・南蛮文化(ポルトガル語 ・桃山文化(安土城、大 →三味線,そろばん) 時 ・南蛮文化(天文 ・城下町姫路を調べる が日本語に,活版印刷) 阪城、姫路城,ふすま絵、 ・桃山文化(安土城、姫路 代 学、医学、航海術、 (町名とその由来、姫 ・この世を楽しむ庶民(三 屏風絵,侘び茶,歌舞伎踊 城,ふすま絵、屏風絵,茶の 味線,浄瑠璃,阿国歌舞伎,囲 り,三味線、浄瑠璃,小袖) 湯、侘び茶) 宗教画、活版印刷 術) 路城) 碁、将棋、双六) ・民衆の文化(かぶき踊り, 浄瑠璃,小袖、木綿) 6 江 ・元禄の学問と文 ・元禄文化(浮世草子, ・琉球とアイヌの人々の生 ・農業の発達(商品作物 ・花開く町人文化(浮世草 戸 化(浮世草子,人形 人形浄瑠璃,歌舞伎,俳 活・文化(シーサー,三線, の生産) 子,人形浄瑠璃,俳諧,浮世 時 浄瑠璃,俳諧,装飾 諧,装飾画,浮世絵) 紅型,イオマンテ,アイヌ語, ・元禄時代の人びとのく 絵,友禅染,1 日 3 食の確立、 代 画,浮世絵,友禅染, ・化政文化(狂歌、川 蝦夷錦) らし(木綿の普及,1 日 3 米食,行灯,年中行事、寺社 盆踊り) 柳,俳諧の大衆化,小説, ・上方で栄えた町人の文化 食の広がり,年中行事) 参詣,奉納相撲,村芝居) ・化政文化(錦絵, 錦絵,瓦版,年中行事、社 (元禄小判,歌舞伎,人形浄 ・元禄文化(俳諧,芝居, ・化政文化(「読み,書き,そ 川柳、狂歌,貸本屋, 寺参詣,寺子屋,藩校) 瑠璃,浮世絵,装飾画,俳諧, 浮世絵、 ふすま絵,歌舞伎, ろばん」,狂歌、川柳,小説、 俳 句 ,寺 社 参 詣 ,寺 和算,年中行事) 人形浄瑠璃,浮世草子) 貸本屋,俳諧,歌舞伎,落語, 子屋、藩校) ・化政文化(浄瑠璃、歌舞 ・江戸後期の文化と民衆 錦絵,寺子屋、藩校) ・アイヌ民族の歴 伎、浮世絵,狂歌、川柳,俳 のくらし(寺子屋,晴れの 史(擦文土器、蝦 諧,寺子屋、 「読み,書き,そろ 行事,民謡、盆踊り,文学, 夷錦、にしん漁) ばん」) 錦絵,狂歌、川柳) 明 ・世界とつながる ・欧米に学び、日本を ・人々から見た文明開化 ・文明開化と教育の普及 ・ザン切り頭をたたいてみ 治 日本と文明開化 見つめ直す(岩倉使節 (ランプ,西洋料理,太陽暦, (洋風風俗のはじまり, れば(衣食住の洋風化,活字 以 (欧米風の建物,洋 団による欧米文化の吸 日曜休日,郵便制度) 新聞、演説) 印刷の新聞、雑誌,コート、 降 服、帽子、コート, 収 ,法 隆寺 夢殿の 救世 ・都市から広がる大衆の文 ・教育と文化の発展(新 帽子、牛鍋,レンガ造り,ガ 牛肉を食べる習慣, 観音像の開扉) 化(洋食,余暇,娯楽、買い 聞、雑誌、書物の発刊, ス灯、ランプ,太陽暦(農村 太陽暦,活版印刷の ・欧米文化の導入(れ 物、演劇や映画の鑑賞,スポ 絵画、彫刻→西洋芸術の →太陰暦),キリスト教容 普及) ん が づく りの洋 館 ,馬 ーツ,雑誌、文学作品,沖縄、 導入) 認) ・近代文化の形成 車、人力車,洋服,鉄道, アイヌ文化の見直し) ・都市化と文化の大衆化 ・西洋文化と伝統文化(教 (日本画、彫刻,洋 太陽暦,ポスト,電信線) ・戦争による国民生活の変 (コンクリートの建物, 育の普及,ドイツの影響を 楽,短歌、小説) ・近代文化の形成と学 化(言論統制,衣料、食糧の 自動車、 バス,円本ブーム, 受けた医学、哲学,西洋の文 ・開国と「横浜も 校教育(言文一致体の 統制,隣組) ラジオ放送,芥川龍之介) 芸理論を取り入れた文学, ののはじめ」 (アイ 確 立 ,俳句 と短歌 の近 ・戦局の悪化と苦しい生活 ・戦時下の民衆生活(町 フランス画風の美術,音楽) スクリーム、パン、 代化,日本画、西洋画, (勤労動員,学徒出陣,学童 内会、部落会,隣組,配給, ・モガ,モボの登場(サラリ 牛肉の歴史) 音楽) 疎開) 学童疎開) ーマン,タイピスト,バスの ・大衆文化の発展 ・都市化の進展と大衆 ・戦後の文化の大衆化、多 ・新しい生活様式(電車 車掌,電話交換手,インテリ, (円本、岩波文庫, 文化(電気、水道、ガ 様化(アメリカの生活,文化 通勤,デパート、映画館, メディアの発達,映画、歌謡 子ども向け雑誌,ト ス,郊外電車,デパート, の影響,テレビ放送、マスコ 遊園地,背広,洋服、洋食) 曲、野球,映画、ジャズ,プ ーキー,蓄音機、レ 映画館、演劇場,宅地開 ミュニケーションの発達, ロレタリア文学) コード,ラジオ放 発,遊園地、劇場、グラ 漫画、アニメーションな ・欲しがりません勝つまで 送、スポーツ,プロ ウンド,円本、文庫本, ど) は(愛国イロハカルタ,中国 レタリア文学,洋 ラジオ放送,トーキー, 人、東南アジア人の蔑視, 食) プロレタリア文学) 勤労動員,学徒出陣,学童疎 ・戦時下の人々(学 ・戦時下の国民の生活 開) 徒出陣,疎開,情報 ( 米 の配 給制 ,国 民の ・国民生活の変化(テレビ, 統制) 動員) 電気洗濯機,自動車の普及) 7 明 ・日本社会の変化 ・アイヌと沖縄の近代 治 とマスメディア と現代(二風谷ダム建 以 (映画,ラジオ→テ 設 と アイ ヌ文化 保 護 , 降 レビの時代→イン 伝 統 家屋 チセ ,沖 縄の ターネット) 高校野球) そ ・ルネサンス(絵 ・ルネサンス(絵画,彫刻, ・中世からの脱却(天文学, の 画,彫刻,世界地図) 文学作品,羅針盤,火薬) 宗教改革,活版印刷,絵画,タ 他 ージ・マハル) 8 <資料 3> 経済産業大臣指定 伝統工芸品一覧(2013 年 1 月現在) 都道府県名 伝統工芸品名称 工芸品の分類 指定年月日 1 青森県 津軽塗 漆器 1975 年 5 月 10 日 2 岩手県 秀衡塗 漆器 1985 年 5 月 22 日 3 浄法寺塗 漆器 1985 年 5 月 22 日 4 岩谷堂箪笥 木工品 1982 年 3 月 5 日 5 南部鉄器 金工品 1975 年 2 月 17 日 鳴子漆器 漆器 1991 年 5 月 20 日 7 雄勝硯 文具 1985 年 5 月 22 日 8 宮城伝統こけし 人形 1981 年 6 月 22 日 川連漆器 漆器 1976 年 12 月 15 日 10 樺細工 木工品 1976 年 2 月 26 日 11 大館曲げわっぱ 木工品 1980 年 10 月 16 日 12 秋田杉桶樽 木工品 1984 年 5 月 31 日 置賜紬 織物 1976 年 2 月 26 日 14 山形鋳物 金工品 1975 年 2 月 17 日 15 山形仏壇 仏壇・仏具 1980 年 3 月 3 日 16 天童将棋駒 その他工芸品 1990 年 4 月 8 日 17 羽越しな布 織物 2005 年 9 月 22 日 大堀相馬焼 陶磁器 1978 年 2 月 6 日 19 会津本郷焼 陶磁器 1993 年 7 月 2 日 20 会津塗 漆器 1975 年 5 月 10 日 21 奥会津編み組細工 木工品 2003 年 9 月 10 日 結城紬 織物 1977 年 3 月 30 日 23 笠間焼 陶磁器 1992 年 10 月 8 日 24 真壁石燈篭 石工品・貴石細工 1995 年 4 月 5 日 6 9 13 18 22 宮城県 秋田県 山形県 福島県 茨城県 25 栃木県 益子焼 陶磁器 1979 年 8 月 3 日 26 群馬県 伊勢崎絣 織物 1975 年 5 月 10 日 桐生織 織物 1977 年 10 月 14 日 春日部桐箪笥 木工品 1979 年 8 月 3 日 岩槻人形 人形 2007 年 3 月 9 日 房州うちわ その他工芸品 2003 年 3 月 17 日 27 28 埼玉県 29 30 千葉県 9 村山大島紬 織物 1975 年 2 月 17 日 32 本場黄八丈 織物 1977 年 10 月 14 日 33 多摩織 織物 1980 年 3 月 3 日 34 東京染小紋 染色品 1976 年 6 月 2 日 35 東京手描友禅 染色品 1980 年 3 月 3 日 36 江戸指物 木工品 1997 年 5 月 14 日 37 江戸和竿 竹工品 1991 年 5 月 20 日 38 東京銀器 金工品 1979 年 1 月 12 日 39 江戸木目込人形 人形 1978 年 2 月 6 日 40 江戸からかみ その他工芸品 1999 年 5 月 13 日 41 江戸切子 その他工芸品 2002 年 1 月 30 日 42 江戸節句人形 人形 2007 年 3 月 9 日 43 江戸木版画 その他工芸品 2007 年 3 月 9 日 31 44 東京都 神奈川県 1979 年 1 月 12 日 鎌倉彫 45 小田原漆器 漆器 1984 年 5 月 31 日 46 箱根寄木細工 木工品 1984 年 5 月 31 日 塩沢紬 織物 1975 年 2 月 17 日 48 本塩沢 織物 1976 年 12 月 15 日 49 小千谷縮 織物 1975 年 9 月 4 日 50 小千谷紬 織物 1975 年 9 月 4 日 51 十日町絣 織物 1982 年 11 月 1 日 52 十日町明石ちぢみ 織物 1982 年 11 月 1 日 53 村上木彫堆朱 漆器 1976 年 2 月 26 日 54 新潟漆器 漆器 2003 年 3 月 17 日 55 加茂桐箪笥 木工品 1976 年 12 月 15 日 56 燕鎚起銅器 金工品 1981 年 6 月 22 日 57 越後与板打刃物 金工品 1986 年 3 月 12 日 58 越後三条打刃物 金工品 2009 年 4 月 28 日 59 新潟・白根仏壇 仏壇・仏具 1980 年 10 月 16 日 60 長岡仏壇 仏壇・仏具 1980 年 10 月 16 日 61 三条仏壇 仏壇・仏具 1980 年 10 月 16 日 甲州水晶貴石細工 石工品・貴石細工 1976 年 6 月 2 日 47 62 新潟県 山梨県 10 63 甲州印伝 その他工芸品 1987 年 4 月 18 日 64 甲州手彫印章 その他工芸品 2000 年 7 月 31 日 信州紬 織物 1975 年 2 月 17 日 66 木曽漆器 漆器 1975 年 2 月 17 日 67 松本家具 木工品 1976 年 2 月 26 日 68 南木曽ろくろ細工 木工品 1980 年 3 月 3 日 69 信州打刃物 金工品 1982 年 3 月 5 日 70 飯山仏壇 仏壇・仏具 1975 年 9 月 4 日 71 内山紙 和紙 1976 年 6 月 2 日 駿河竹千筋細工 竹工品 1976 年 12 月 15 日 73 駿河雛具 人形 1994 年 4 月 4 日 74 駿河雛人形 人形 1994 年 4 月 4 日 有松・鳴海絞 染色品 1975 年 9 月 4 日 76 名古屋友禅 染色品 1988 年 4 月 27 日 77 名古屋黒紋付染 染色品 1988 年 4 月 27 日 78 赤津焼 陶磁器 1977 年 3 月 30 日 79 瀬戸染付焼 陶磁器 1997 年 5 月 14 日 80 常滑焼 陶磁器 1976 年 6 月 2 日 81 名古屋桐箪笥 木工品 1981 年 6 月 22 日 82 名古屋仏壇 仏壇・仏具 1976 年 12 月 15 日 83 三河仏壇 仏壇・仏具 1976 年 12 月 15 日 84 豊橋筆 文具 1976 年 12 月 15 日 85 岡崎石工品 石工品・貴石細工 1979 年 8 月 3 日 86 尾張七宝 その他工芸品 1995 年 4 月 5 日 美濃焼 陶磁器 1978 年 7 月 22 日 88 飛騨春慶 漆器 1975 年 2 月 17 日 89 一位一刀彫 木工品 1975 年 5 月 10 日 90 美濃和紙 和紙 1985 年 5 月 22 日 91 岐阜提灯 その他工芸品 1995 年 4 月 5 日 伊賀くみひも その他繊維製品 1976 年 12 月 15 日 93 四日市萬古焼 陶磁器 1979 年 1 月 12 日 94 伊賀焼 陶磁器 1982 年 11 月 1 日 65 72 75 87 92 長野県 静岡県 愛知県 岐阜県 三重県 11 95 鈴鹿墨 文具 1980 年 10 月 16 日 96 伊勢形紙 工芸用具・材料 1988 年 4 月 27 日 高岡漆器 漆器 1975 年 9 月 4 日 98 井波彫刻 木工品 1975 年 5 月 10 日 99 高岡銅器 金工品 1975 年 2 月 17 日 100 越中和紙 和紙 1988 年 6 月 9 日 101 庄川挽物木地 工芸用具・材料 1978 年 7 月 14 日 牛首紬 織物 1988 年 6 月 9 日 103 加賀友禅 染色品 1975 年 5 月 10 日 104 加賀繍 その他繊維製品 1991 年 5 月 20 日 105 九谷焼 陶磁器 1975 年 5 月 10 日 106 輪島塗 漆器 1975 年 5 月 10 日 107 山中漆器 漆器 1975 年 5 月 10 日 108 金沢漆器 漆器 1980 年 3 月 3 日 109 金沢仏壇 仏壇・仏具 1976 年 6 月 2 日 110 七尾仏壇 仏壇・仏具 1978 年 7 月 22 日 111 金沢箔 工芸用具・材料 1977 年 6 月 8 日 越前焼 陶磁器 1986 年 3 月 12 日 113 越前漆器 漆器 1975 年 5 月 10 日 114 若狭塗 漆器 1978 年 2 月 6 日 115 越前打刃物 金工品 1979 年 1 月 12 日 116 越前和紙 和紙 1976 年 6 月 2 日 117 若狭めのう細工 石工品・貴石細工 1976 年 6 月 2 日 近江上布 織物 1977 年 3 月 30 日 119 信楽焼 陶磁器 1975 年 9 月 4 日 120 彦根仏壇 仏壇・仏具 1975 年 5 月 10 日 西陣織 織物 1976 年 2 月 26 日 122 京鹿の子絞 染色品 1976 年 2 月 26 日 123 京友禅 染色品 1976 年 6 月 2 日 124 京小紋 染色品 1976 年 6 月 2 日 125 京黒紋付染 染色品 1979 年 8 月 3 日 126 京繍 その他繊維製品 1976 年 12 月 15 日 97 102 112 118 121 富山県 石川県 福井県 滋賀県 京都府 12 127 京くみひも その他繊維製品 1976 年 12 月 15 日 128 京焼・清水焼 陶磁器 1977 年 3 月 20 日 129 京漆器 漆器 1976 年 2 月 26 日 130 京指物 木工品 1976 年 6 月 2 日 131 京仏壇 仏壇・仏具 1976 年 2 月 26 日 132 京仏具 仏壇・仏具 1976 年 2 月 26 日 133 京石工芸品 石工品・貴石細工 1982 年 3 月 5 日 134 京人形 人形 1986 年 3 月 2 日 135 京扇子 その他工芸品 1977 年 10 月 14 日 136 京うちわ その他工芸品 1977 年 10 月 14 日 137 京表具 その他工芸品 1997 年 5 月 14 日 大阪欄間 木工品 1975 年 9 月 4 日 139 大阪唐木指物 木工品 1977 年 10 月 14 日 140 大阪泉州桐箪笥 木工品 1989 年 4 月 11 日 141 大阪金剛簾 竹工品 1996 年 4 月 8 日 142 堺打刃物 金工品 1982 年 3 月 5 日 143 大阪浪華錫器 金工品 1988 年 4 月 27 日 144 大阪仏壇 仏壇・仏具 1982 年 11 月 1 日 丹波立杭焼 陶磁器 1978 年 2 月 6 日 146 出石焼 陶磁器 1980 年 3 月 3 日 147 豊岡杞柳細工 木工品 1992 年 10 月 8 日 148 播州三木打刃物 金工品 1996 年 4 月 8 日 149 播州そろばん 文具 1976 年 6 月 2 日 150 播州毛鉤 その他工芸品 1987 年 2 月 2 日 高山茶筌 竹工品 1975 年 5 月 10 日 奈良筆 文具 1977 年 10 月 14 日 紀州漆器 漆器 1978 年 2 月 6 日 紀州箪笥 木工品 1987 年 4 月 18 日 弓浜絣 織物 1975 年 9 月 4 日 因州和紙 和紙 1975 年 5 月 10 日 石見焼 陶磁器 1994 年 4 月 4 日 石州和紙 和紙 1989 年 4 月 11 日 138 145 151 大阪府 兵庫県 奈良県 152 153 和歌山県 154 155 鳥取県 156 157 158 島根県 13 159 雲州そろばん 文具 1985 年 5 月 22 日 160 出雲石燈ろう 石工品・貴石細工 1976 年 6 月 2 日 備前焼 陶磁器 1982 年 11 月 1 日 勝山竹細工 竹工品 1979 年 8 月 3 日 宮島細工 木工品 1982 年 11 月 1 日 164 広島仏壇 仏壇・仏具 1978 年 2 月 6 日 165 熊野筆 文具 1975 年 5 月 10 日 166 川尻筆 文具 2004 年 8 月 31 日 167 福山琴 その他工芸品 1985 年 5 月 22 日 萩焼 陶磁器 2002 年 1 月 30 日 169 大内塗 漆器 1989 年 4 月 11 日 170 赤間硯 文具 1976 年 12 月 15 日 阿波正藍しじら織 織物 1978 年 7 月 22 日 172 大谷焼 陶磁器 2003 年 9 月 10 日 173 阿波和紙 和紙 1976 年 12 月 15 日 香川漆器 漆器 1976 年 2 月 26 日 丸亀うちわ その他工芸品 1997 年 5 月 14 日 砥部焼 陶磁器 1976 年 12 月 15 日 大洲和紙 和紙 1977 年 10 月 14 日 土佐打刃物 金工品 1998 年 5 月 6 日 土佐和紙 和紙 1976 年 12 月 15 日 博多織 織物 1976 年 6 月 14 日 181 久留米絣 織物 1976 年 6 月 2 日 182 小石原焼 陶磁器 1975 年 5 月 10 日 183 上野焼 陶磁器 1988 年 4 月 27 日 184 八女福島仏壇 仏壇・仏具 1977 年 3 月 30 日 185 博多人形 人形 1976 年 2 月 26 日 186 八女提灯 その他工芸品 2001 年 7 月 3 日 伊万里焼・有田焼 陶磁器 1977 年 10 月 14 日 唐津焼 陶磁器 1988 年 6 月 9 日 三川内焼 陶磁器 1978 年 2 月 6 日 波佐見焼 陶磁器 1978 年 2 月 6 日 161 岡山県 162 163 168 171 174 広島県 山口県 徳島県 香川県 175 176 愛媛県 177 178 高知県 179 180 187 福岡県 佐賀県 188 189 190 長崎県 14 小代焼 陶磁器 2003 年 3 月 17 日 192 天草陶磁器 陶磁器 2003 年 3 月 17 日 193 肥後象がん 金工品 2003 年 3 月 17 日 191 熊本県 194 大分県 別府竹細工 竹工品 1979 年 8 月 3 日 195 宮崎県 都城大弓 竹工品 1994 年 4 月 4 日 196 鹿児島県 本場大島紬 織物 1975 年 2 月 17 日 197 薩摩焼 陶磁器 2002 年 1 月 30 日 198 川辺仏壇 仏壇・仏具 1975 年 5 月 10 日 久米島紬 織物 1975 年 2 月 17 日 200 宮古上布 織物 1975 年 2 月 17 日 201 読谷山花織 織物 1976 年 6 月 2 日 202 読谷山ミンサー 織物 1976 年 6 月 2 日 203 琉球絣 織物 1983 年 4 月 27 日 204 首里織 織物 1983 年 4 月 27 日 205 与那国織 織物 1987 年 4 月 18 日 206 喜如嘉の芭蕉布 織物 1988 年 6 月 9 日 207 八重山ミンサー 織物 1989 年 4 月 11 日 208 八重山上布 織物 1989 年 4 月 11 日 209 琉球びんがた 染色品 1984 年 5 月 31 日 210 壺屋焼 陶磁器 1976 年 6 月 2 日 211 琉球漆器 漆器 1986 年 3 月 12 日 212 知花花織 織物 2012 年 7 月 25 日 199 沖縄県 15
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