研修報告書 - 社会福祉法人 たすけあい ゆい

ゴールドマン・サックス証券株式会社
2009年
秋
寄付金プログラムによる
睦母子生活支援施設における研修報告書
平成 23 年
社会福祉法人
たすけあいゆい
睦母子生活支援施設
目次
はじめに .............................................................................................. 3
Ⅰ 睦母子生活支援施設について ........................................................ 4
Ⅱ 研修の目的と狙い ......................................................................... 5
研修前の状況 ............................................................................................................................ 5
研修の目的 ................................................................................................................................ 5
Ⅳ 対応困難事例支援者スキルアップトレーニングに関する報告につい
て ........................................................................................................ 7
第 1 回研修会 .............................................................................................................................. 7
第2回研修会 .............................................................................................................................. 7
第3回研修会 .............................................................................................................................. 9
第4回研修会 ............................................................................................................................ 10
第5回研修会 .......................................................................................................................... 12
第6回研修会 .......................................................................................................................... 15
第7回研修会 .......................................................................................................................... 19
第8回研修会 .......................................................................................................................... 21
第9回研修会 .......................................................................................................................... 22
第 10 回研修会 ........................................................................................................................ 24
振り返り................................................................................................................................... 27
効果測定の結果 ...................................................................................................................... 28
Ⅳ 子どもの虐待防止センターによる「ファシリテーター養成講座」
.......................................................................................................... 29
「CSP(コモンセンスペアレンティング)
」に関する報告.................... 29
1 ファシリテーター養成講座.......................................................................................... 29
2 CSP (コモンセンス・ペアレンティング)に関する報告 ........................................ 31
第 1 回 CSP 研修会................................................................................................................ 31
第2回 CSP 研修会................................................................................................................ 32
第3回 CSP 研修会................................................................................................................ 33
第4回 CSP 研修会................................................................................................................ 34
第5回 CSP 研修会................................................................................................................ 36
第6回 CSP 研修会................................................................................................................ 37
CSP 研修の振り返り ............................................................................................................... 39
当研修を終えて.................................................................................. 39
2
はじめに
睦母子生活支援施設は、母と子の権利擁護と生活の拠点として、母親を支援し、
子どもを育み、子どもが育つことを保障し、安定した生活の営みを支えます。母
と子の主体性を尊重した自立への歩みを支えるとともに、常に職員の研鑽と資質
向上に励み、公正で公平な施設運営を心がけ、母と子及び地域社会から信頼され
る施設として支援を行うことを目指します。
この研修は、職員のバーンアウト防止及びスキル向上を目的に、2009(平成 21
年)度ゴールドマン・サックス証券株式会社の寄付金プログラムを受けて 21 年
12 月から 23 年 1 月まで実施いたしました。
研修の結果、新年度を迎える際に、職場を去る者がありませんでした。研修の
効果の大きさを深く受け止めております。ご協力いただいたゴールドマン・サッ
クス証券株式会社の皆様に、そして臨床心理士の生田
倫子先生、社会福祉法人
子どもの虐待防止センターのスタッフ皆様に心より感謝申し上げます。
平成 23 年6月
社会福祉法人
たすけあいゆい
睦母子生活支援施設
施設長
3
濱田
静江
Ⅰ
睦母子生活支援施設について
設立目的と活動内容
母子生活支援施設は、1947(昭和 22)年に制定された児童福祉法上に定められる施設です。原
則として、18 歳未満の子どもとその母が入所する施設ですが、事情によっては 20 歳まで暮らす
ことが出来ます。戦後間もない当初は、戦争により夫を亡くした母子が入所することの多い施設
でした。時代の変化に伴い、DV(ドメスティックバイオレンス)や虐待による被害者が増加しま
した。
私達の施設は、日本で唯一地域ケアプラザ(地域包括支援センター)と合築された母子生活支援
施設です。母子が、地域で安心してより豊かな生活できるようにしたいという考えのもと複合施
設として設計し、建てられました。平成 18 年 12 月開所し、平成 19 年 4 月より緊急一時保護事
業を開始しました。
以下に当施設の基本方針を掲載します。
むつみハイムの理念と基本方針
<理念>
・お母さんとお子さんが、安定した生活が送れるよう支援します。
・お母さんとお子さんが、主体性を持って、地域で自立した生活が出来るよう支援します。
<基本方針>
・お母さんとお子さんが、様々な経験を通して、地域社会の一員として生活できるよう支援
していきます。
・子どもの意思と可能性を尊重し、ひとりひとりの成長を見守ります。
職員配置: 施設長 1 名・副施設長 1 名・主任 2 名・母子指導員4名(内非常勤 1 名)・尐年指
導員2名・個別対応職員 1 名・緊急一時保護事業担当職員 1 名・保育士2名(内非常勤 1 名)・退
所後支援事業職員 1 名・トワイライト事業 1 名・小規模分園担当 2 名(内非常勤 1 名)、臨床心理
士1名・清掃員 1 名(非常勤)、夜間は、警備員(非常勤3名)が勤務しています。昼夜を通して職
員がローテーションとチームワークにより母子の安全を守れるよう、支援に努めています。
相談支援、保育、学童保育、心理療法、母の会、こども会、配食サービス(2 回/週)、実習生
の受入、就労支援、日常生活支援(金銭管理・清掃・家事など)、緊急一時保護事業、地域交流事
業、退所世帯や地域に暮らす一人親家庭の子ども達の夜間、休日預かり(トワイライト)事業、退
所後の相談支援を継続するアフターケア事業を行っています。
地域包括支援センターと協力し、児童委員の皆さんを中心に「虐待防止見守り隊」を結成し、子
どもが安心して暮らせる街作りを目指しています。
4
Ⅱ
研修の目的と狙い
研修前の状況
母子生活支援施設入所母子は、虐待被害者であることが稀ではありません。DV 被害者である母親
が、被害の影響によりコントロール不能の状態となり、子に対して更に不適切な養育に陥るリス
クを負っている事例も見られます。被虐待児童が ADHD と同様の状態に陥り、発達障害と同様の
症状を伴うことは稀ではないため更に良好な親子関係を保てないこともよく見られました。
職員は入层母子に対して熱意とやさしさをもって対処します。一方で職員自身にも怒りや攻
撃が入层母子から向くことが多々ありました。創立当初は入层者の問題行動に疲弊しバーンアウ
トをし、退職や転職を余儀なくされることが繰り返された苦い経験を重ねました。常勤職員の定
数が 10 名前後のところ、2 年半で常勤職が 30 人退職している現状でした。
この現状では、現場に残った職員が多くの仕事を抱えて新人教育どころではなく、新人は教育
されぬまま、よくわからぬまま難易度の高い対応を余儀なくされ、困難を抱えても放置されると
いう、まさに悪循環的な構造が起きていました。 研修によって、バーンアウトを防止し、専門
スキルを向上することを目標としました。
研修の目的
当プログラムの目的は職員の二次被害的な心的外傷による悪循環を防止すること、職員の
メンタルヘルスが安定し、入层母子のネガティブな行動様式に対処できる必要な専門的スキ
ルアップにより更なる充実した母子支援の施設ケアにつなげることである。よって、以下の
ような研修プログラムを実施した。
1 )対応困難事例支援者スキルアップトレーニングプログラム実施。+ バーンアウト防
止として職員のメンタルヘルスケア実施。
2 )子ども虐待防止センターによる虐待問題支援「ファシリテーター養成講座」
3)
コモンセンスペアレンテイング トレーニング
以下1-3の研修目的は以下の通りである。
1)対応困難事例支援者スキルアップトレーニングプログラム実施と職員のメンタルヘルスケア
の目的は、アスペルガー症候群・ADHD(注意欠陥多動性障害)・知的障害を含む発達障害と診断
された児童の、親や支援者が子どもによりうまく関わるようになるためのスキルアップトレーニ
ングを支援全般に活用できるスキルを得ることである。
このプログラムは、ミネソタ大学の重度の発達障害/ADHD(注意欠陥多動性障害)児に対応す
る支援者・親向けに開発されたペアレントトレーニングを応用したものである。ADHD 児の問題行
動の繰り返しや過度な要求のしつこさ、パニック、攻撃などは、様々な被虐待児にも見られる反
応である。対応困難な利用者への支援スキルを学び、職員の疲弊を防止し、バーンアウト予防す
ることまで期待した。毎回職員の困難に感じていることを取扱いながらすすめた。
職員の心が安定すると、対象母子への間接援助につながることを意図した。バーンアウト防止
5
と離職防止に向けて、仕事に関わるメンタルヘルスに焦点をあてて個別カウンセリングを実施し
た。
また、管理職へのコンサルテーションによって、施設の構造的問題を把握すること、その解決
に対する支援を行うことによって、職員がバーンアウトしないシステム作りを現場職員で作るこ
とを進めた。
2) 虐待に関連する問題の支援者に必要な基礎的な支援スキルを学ぶため計 2 回受講した。子
ども虐待防止センターによる虐待問題支援「ファシリテーター養成講座」の目的は、
情報を集め、整理する能力を高めることである。エコマッピング、ジェノグラムなど、子どもと
家族を理解するために集めた情報を整理する技法をグループワークで学ぶ。また、整理すること
で、今後の支援の展開を検討し、発展させる力をつける。
2)
コモンセンスペアレンテイングトレーニングは子どものしつけのスキルを学ぶこと
を目的とした。支援者の年齢や職種を問わず、スキルを共有できることを意図した。職
員が児童とコミュニケーションをとる時や職員が母親の怒りのコントロールができるよ
う支援する時等の参考とした。
※毎回の参加者に関しては、社会福祉法人全体の人材育成に役立てるため、母子生活支援施設の
みの職員ではなく、障害児・者分野の就労移行・就労継続 A 型施設、児童デイサービス1、共同
生活援助施設、地域活動支援センター所属職員が参加している。
6
Ⅳ
対応困難事例支援者スキルアップトレーニングに関する報告について
以下毎回の実施日時と実施内容に関して報告する。
第 1 回研修会
平成 21 年 12 月 2 日 10:00-12:00
参加者:12名(母子生活支援施設 12 名)
テーマ:研修開始にあたり、対象者向けに心理検査を実施。後に実施後の検査を報告する。
第2回研修会
平成 21 年 12 月 16 日
10:00-12:00
研修の流れ
個々が対応に苦慮している困難事例を職員間にて共有した。また、研修のテーマに沿った課題
を次回までに実行してもらい、うまく行ったこととうまく行かなかったことを再度話し合う、振
り返りを重視した。
参加者:15人(母子生活支援施設11人、就労移行・就労継続 A 型施設1人、児童デイサービ
ス1人、共同生活援助施設1人、地域活動支援センター1人)
テーマ:
「オリエンテーション、対象者の行動を3種類に分けてみよう。」
・ インタビュー形式による相互紹介(他己紹介)
・ 「行動を3種類に分ける」
注目には肯定的注目と否定的注目がある。否定的注目ばかり浴びて成長している人は、肯定的
注目を得た経験が尐ないので、まったく無視されるなら、否定的注目をされることを選ぶ。注目
されるために肯定的な行動をするという選択肢がなく、誰かの注目をうけるためには、否定的行
動をするという選択をしがちである。そこで対応が困難な対象者は、こうすれば肯定的な注目を
もらえるということを根気よく学び身につけることが望ましい。肯定的行動様式を身につけるこ
とで、それが将来的な周囲の対人関係の改善にもつながる可能性が考えられる。
7
【実際に参加者から発表された行動
1
例】
行動を3種類に分ける
好ましい行動
好ましくない行動
危険な行動・許しがたい行動
機嫌よく子どもに接す
威圧的に子どもに接する
人前で怒鳴る
る
子どもに有無を言わせず言う
子どもを「お前が悪い子なんだ」と
子どもを褒める
ことを聞かせる
追い詰める
子どもの世話(食事・入
自分のこだわりが強く気がす
人前で子どもに暴力をふるう
浴・衛生)、困っている
まない
ときに相談してくれる
子どもを追い詰めるような言
い方で接する
2
3
部屋の掃除ができる
他人を非難する
子どもに手をあげる
友人大切にしている
文句が多い
子どもを罵倒
資格を取るために勉強
大声でわめく
している
場所を選べない
目を見て笑顔で話がで
他人を馬鹿にする
他メンバーが人間的に劣ってると口
きる
屁理屈を言う
にする
物を投げる
暴言を吐く
失敗を人のせいにする
*好ましくない行動と許しがたい行動の区別がとても難しいので、みんなで共通し、ある程度統
一した基準を作るためにグループで話し合う。
好ましくない行動・許しがたい行動の区別の基準
例:・自傷他害行動。通院をやめることや服薬管理など命に関わること、暴力など子どもや他人
に危険が及ぶ行為、自傷行為など。暴力と暴言がどの程度のラインで好ましくない行動か危険な
行動かを区別するのか難しい。物を壊す行為、法律に反することなど。
第一回研修の成果:話し合いの結果、身体的な暴力や服薬管理、子どもの虐待などついては許
しがたい行動、それ以外のネガティブな行動は好ましくない行動、と具体的に全職員での統一が
一定レベルでなされた。分類が難しかった暴言(精神的なもの)は好ましくない行動に入れるこ
とにした。今後、変更するタイミングが来るかもしれないが、その時まで全体で共有することし
た。
【宿題】次回までに起こった入层者の行動を、もういちど3つ基準に合わせて3分類してみるこ
と。
8
第3回研修会
平成 22 年 1 月 6 日 10:00―12:00
研修の流れ
前回の課題である、
「行動を三種類に分ける」という宿題をグループで話し合い、好ましくな
い行動・危険な行動・許し難い行動の基準を共有する。また、3つに分けた行動の中で好ましい
行動に着目し、今回のテーマである肯定的な注目について考え、それに沿った課題を次回までに
実行してもらい、振り返りを行う。
参加者:14人(母子生活支援施設10人、就労移行・就労継続 A 型施設1人、児童デイサービ
ス1人、共同生活援助施設1人、地域活動支援センター1人)
テーマ:
「前回の宿題について報告、肯定的な注目を与えよう。」
〈ワークシート〉
職員
1
宿題: 行動分類の発表例
好ましい行動
・あいさつでき
好ましくない行
危険な行動
動
許しがたい行動
気づいたこと
・ 高圧的な態
・ 危険な行動はあまりな
る
度で不満を
く、あまり迷わなかっ
・お礼を言える
言う
た。
・子どもにやさ
・ 陰口を言う
前回に比べて、対象者が落
しく接すること
ち着いている。丁寧に挨
ができる
拶、お礼を言うようになっ
て、接しやすくなった。
2
・子どもの力を
・ 場所と状況
・ 前は対象者がもっと揺
のばすことを考
を考えず、自
れている時期で、好ま
えていた
分の思い通
しくない行動・危険な
・ 部屋がきれ
りにいかな
行動・許し難い行動が
いことへの
あったが、今は、落ち
不満をぶつ
着かれて、好ましい行
ける
動がたくさん見つか
い(大掃除)
・ お礼を言う
ことができ
る
・ 挨拶ができ
る
・ 子どもの夕
り、好ましくない行動
食のメニュ
が尐なくなった。
ーが同じ日
が続いた。
3
・ 挨拶ができ
る
・ 頼みごとす
るのが上手
・ 時間を守る
・ 朝、身支度を
・ 思春期の子の
不潔にしていること
行動(法に触れ
は、病気にも関わるの
布団を敷いたま
る行為)を注意
で、危険な行動・許し
ま1日中寝転ん
することがで
難い行動にしていた
でいる。
きない。
が、好ましくない行為
しない
に入れることにした。
9
◎ 「肯定的な注目を与える」について
好ましい行動を増やすためには、肯定的な注目を与えることが効果的である。人は、肯定的な
注目を与えられることにより、自分のことを理解してもらえたと感じる。自分が認められている
と感じたり、自信を持って行動できるようになる。対応が困難な対象者に対して、肯定的な注目
をしていることを伝えることが大切である。
今回は、対象者の行動を3つに分けた中から、好ましい行動への注目と、好ましくない行動が
比較的でなかった場面への注目を行う。好ましい行動より2つ、好ましくない行動より1つを選
択し、次回までに実行してみる。
例)
職員
好ましい行動
好ましくない行動
好ましくない行動への
声かけの方法
1
・ お礼を言ってくれた
とき
・ 高圧的に不満をぶつけ ・ここ2日怒鳴っている
る
のを見なければ褒める。
・ 子どもに優しく接し
てたとき
2
・ 笑顔のとき
・ 人のいいところを褒
・ 施設のルールを守らな
い
のルールは守れま
める
3
・ 子どもの力を伸ばす
ことを考えている
・ 守れたところで「こ
したね」と声かけ
・ 我慢できずに不満を言
う
・ 「後で言うわ」とな
ったら褒める
・ 予定を話してくれた
・ 言い方が優しくな
とき
ったら、「今日は高
圧的ではない」と伝
える。
【宿題】以上のことをそれぞれ対象者に実行し、相手の反応について観察してください。
第4回研修会
平成 22 年 1 月 20 日 10:00-12:00
研修の流れ
前回の課題である、「肯定的な注目を与える」という宿題を、実際にどのように褒めたのかを
具体的に発表してもらう。また、その中で、うまくいかなかったものを取り出し、ロールプレイ
を行い、よりよい対応を検討する。
今回は、好ましくない行動に対して、否定的な注目を与えず待つことについて学ぶ。また、ロ
ールプレイを通して、効果的な方法について考える。
参加者:14人(母子生活支援施設10人、就労移行・就労継続 A 型施設1人、児童デイサービ
ス1人、共同生活援助施設1人、地域活動支援センター1人)
10
テーマ:
「前回の宿題報告、好ましくない行動を減らす①」
前回の宿題報告:宿題で取り組んできた内容について、順番に発表した。発表後、うまくいかな
かった事例に関して、ロールプレイを通して対応方法について考える。
例)
名前
褒めた行動
どのように褒めたか
入层者の反応
感想
1
・長男の今後のことを考
・長男のためを思っ
・うれしそう
・自分を見てと
えていた。
て考えていることは ・そうなんです
いうような人。
・「人前で怒鳴ってない
すごくいいこと、長
よと誇らしげ
「子どものため
だった。
に考えてあげた
のだけど、どうかな?」 男が成長しているこ
と聞かれた。
とを褒めた。
母」を褒めたの
・
「母も嫌なことがあ
がよかった。
ったのですね。
」とね
ぎらう。
2
・アパートの契約を済ま
・家族5人が順調に ・安心した表情
せた後、丁寧にお礼を言
暮らせるようにお手
でうなずいた。 しないが、表情
ってくれた。
伝いしますね。
・うれしそう。 が嬉しそうであ
・資源ごみの紙パックを
・丁寧に開くんです
った。退所に向
きれいに開いてくれた。 ね。気持ちがいいで
けて整理をして
すね。
・会話をあまり
いるが、活き活
きしていた。
3
・クリニックに同行した ・言えてよかったね。 ・何度も言って
・これまではあ
時に、自分の希望を Dr.
・子ども用の食事を
きたので、一度
まり視線が合わ
にきちんと伝えられて
作っていたことを褒
受け止めて、今
なかったが、褒
いた。
めた。
後のためにが
めたことによっ
・子どもの具合が悪かっ
んばろうねと
て、顔を見てく
た。
返した。
れた。
【ロールプレイ】
・ルールを守らない方が、ルールを守り、順番を待てたとき。
①「えらいですね~」
②「順番をきちんと守れる方なのですね」「順番をきちんと守れることがすごいですね」
感想:①は人物評価、②の場合は行動を褒められていると感じる。また、①の場合は何を褒めら
れているのか分らないが、②は「わたし順番守れる」と、自信がついた感じがする。
【復習】
① 25%で褒めること
② 具体的な行動を褒めること
③ 表情に迷いが出ないようにすること(迷う場合は事前にセリフを決めておくこと)
④ 可能であれば、シンプルにわかりやすく伝える。
11
◎「好ましくない行動にどう対応するか」
普段の生活の中では、好ましい行動に関しては褒め、普通の行動に対しては注目をせず、好ま
しくない行動に関してはネガティブな反応をすることが多い。
問題を抱えた方や、やっかいな行動をする人は、親にあまり褒められたことがなく、ネガティ
ブな行動によって注目を集めることを選択する。つまり、その人が気を引きたくなったときには、
ネガティブな行動をとる。好ましくない行動を減らすには、先ほどのコンプリメントとともに、
好ましくない行動で注目を浴びて喜ぶという行動様式を減らす必要がある。
好ましくない行動に対しては、対応しない、注目を与えないことが大切である。しかし、ただ
与えないのではなく、好ましくない行動が減尐するのを待ち、10%減ったところで褒めるとい
う対応をする。
【ロールプレイ】冷静さに欠け、悪口をいい続ける人への対応。
「穏やかにお話をしてくれてありがとう。もう一回お話してくれますか」ということで、相手の
声がトーンダウンする。もしも止まらない場合は、「穏やかに話していただいたら聞きます」と
いう風にこちらがどうしてほしいか伝える。また、して欲しい行動以外の言葉を発せず、うなず
きなどノンバーバルで聞き、必要外のメッセージが伝わらないようにする。
支援者は、「どんな相手でも一生懸命聞かなくては」という気持ちがあるが、好ましくない行
動は減らない。聞き込むことが良いことではない。好ましくない行動が尐し減った時に、大いに
ほめると行動が修正される。待つことは、ポジティブに対応するためにしているということに配
慮する。また、こちらがしてほしいことはシンプルに話すことが大切である。
次回の宿題:好ましくない行動を減らす、Wait(待つ)のテクニックを実行してみて、表にま
とめてくること。
第5回研修会
平成 22 年 2 月 3 日 10:00-12:00
研修の流れ
対応困難者に対して実行した Wait について発表してもらい、それぞれの事例についての対応
や、工夫点について共有する。また、講師からのコメントを参考により効果的な方法について考
える。
後半は、今回のテーマである、好ましくない行動を減らす効果的な方法について学ぶ。今回は、
3~4人のグループに分かれ、アクションプランを立てる。Wait することと、褒めることの組み
合わせについて考え、より効果的な方法について考える。
参加者13人(母子生活支援施設9人、就労移行・就労継続 A 型施設1人、児童デイサービス1
人、共同生活援助施設1人、地域活動支援センター1人)
12
本日のテーマ「前回の宿題報告と本日のテーマである好ましくない行動を減らす②-Wait とほめ
るの組み合わせ-」
① 前回の宿題報告:好ましくない行動を減らす①-上手な Wait の仕方-
対象者の好ましくない行動に対して実行した Wait を報告してもらう。取り組んだ感想や、対
象者の変化などについて振り返ることで、再度取り組みについて考える。また、講師からのコメ
ントを聞き、よりよい Wait について考える。 例)
名前
1
無視した行動
・子の帰宅しぶり
どのように無視
無視した後に褒
したか
めた行動
・
「落ち着いて話
・話を聞いた。
をしてくれたら
結果
・スムーズに帰
宅
話を聞くよ」
2
・ 長女の受験の前日に、 ・ 「 そ う い う
長女の前で「落ちると
ことは言わ
思う」と言う。
ないでくだ
・支持できる行
・落ち着いた
動を褒めた。
さい」と具体
的にアドバ
イス。
3
・母の会の件でもめ、退所
・ まず話を聞
を希望し、行政の人に訴え
いた。
た。
話していいんだ
よ。
・ 事務所に寄
って話せる
ようになっ
た。
・ 積極的に相
談に来るよ
うになった。
講師助言
対象者の悪い印象を引きずり、現在のその人が見えてないのではないだろうかということを意
識することも大切。また、施設の職員の対応が変わったことで、対象者が落ち着いた可能性もあ
る。
支援者があまりにもイライラしてしまった場合、支援者は自分を落ち着ける行動をとり、相手
と自分の両方をよく観察するとよい。
本日のテーマ:好ましくない行動を減らす②-Wait(待つ)とほめるの組み合わせ-
対象者に対してアクションプランを作成する。アクションプランとは、Wait するときの心の準
備として、計画を立てておくことである。好ましくない行動に対して、代わりにとってほしい行
13
動をコマンド(指示)として出し Wait し、その後、コマンドが尐しでも達成されたらすかさず
行動を褒める。3~4人のグループに分かれて、その中の1人の対象者に関してアクションプラ
ンを考えた。
アクションプラン例)
A グループ
B グループ
C グループ
D グループ
被害的に物事を
周りを自分の思
施設のルールを守らな
動、減らしたい行
とらえ、大声でど
うように動かし
い
動は何ですか?
なる
たい
好ましくない行
他者批判
代わりにしてほ
今日の話をして
落ち着いて気持
言い方を優しく
しい行動は何で
ほしい
ちを話してほし
柔らかくして欲
い
しい
すか?
どこで好ましく
子どもが注意さ
子どもの1日の
事務所の前、层
ない行動は起き
れた後
行動を報告する
室の前に職員を
とき
呼んで
子どもが帰宅し
子が学校から帰
てから
ってきてから
ますか?
いつ起きます
午後
か?
時間を守ってほしい
施設の入り口
その行動が起き
視線上に顔は入
事務所から出な
事務所から外に
ミーティングを続け
たとき(視線、か
るが、口元などを
い。側に行かな
出て対応。目線
る。
らだ、感情も含め
見る様心がける。 い。書きながら聞
を外して聞く。
て)自分はどうし
「事務所で聞き
いているという
事務所内にいる
たらいいでしょ
ます」と事務所ま
ことを崩さず、書
ときは、距離を
うか?
で来てもらう。
類に集中する。
とる。時計など
を見る。
自分を励ます言
「褒めるために
「褒めるために
「褒めるために
「褒めるために Wait
葉は?
Wait している」
Wait している」
Wait している」
している」
好ましくない行
よくできました
トーンが下がっ
トーンが落ちた
いつもより早かったで
動をやめて、好ま
ね。
てきた時に、子ど
ら「落ち着いて
すねと褒める。
しい行動をはじ
また、批判以外の
もと母のことを
話してくれてあ
めた時、その行動
話が出た時に褒
肯定的に伝える
りがとう。いろ
を増やすために
める。
いろ考えてくれ
どうやって褒め
てるんだね」
ますか?
※ アクションプランを立てるときには、好ましくない行動を具体的な行動にすること、また、
ハードルは低く設定することが重要である。
講師助言:
好ましくない行動を減らすための Wait がうまく行きやすいのは、尐しでも好まし
14
くない行動が減ったときに褒めることをプラスすることである。また、攻撃的に話す行動が続く
場合は、意図的にその場を離れ、3分ぐらいたった後に戻り、「穏やかに待ってくれたのは、本
当にすばらしいですね」と、やってみましょう。そのようにして、行動パターンにノイズを入れ
るのも効果的である。また、話をそらすということも効果的です。たとえば、話しが続いている
ときに、
「昨日、子どもの話をしたって聞いたよ。それってすごいことだよね」と話題を変える。
受講者より、
「子どもが褒められた話などもしてくれるので、
「ちょっといい?この間○○君が学
校の先生に褒められたんだって?なんて言われたの?」と話しをそらすこともいいかも」という
アイデアが出る。
宿題: 各自、自分の対象者に対してアクションプランを考えて、実行してみること。
第6回研修会
平成 22 年 2 月17日 10:00-12:00
研修の流れ
対応困難者に対するアクションプランと、実行した感想をそれぞれ発表する。
後半は、今回のテーマである入层者の協力を増やす方法を学び、効果的な指示の出し方につい
て、グループでロールプレイを行う。各グループで、よりよい指示の出し方について話し合い、
全体で共有をする。
参加者:14人(母子生活支援施設10人、就労移行・就労継続 A 型施設1人、児童デイサービ
ス1人、共同生活援助施設1人、地域活動支援センター1人)
テーマ 「前回の宿題:好ましくない行動を減らす②-Wait とほめるの組み合わせ-の振り返り
と、本日のテーマ:入层者の協力を増やす方法①-効果的な指示の出し方①-」
研修の様子
15
前回の宿題報告:好ましくない行動を減らす②-Wait と褒めるの組み合わせー
宿題で作成し、取り組んだアクションプランについて報告してもらう。 例)
項目/人
好ましくない行動、
1
時間を守らない。
2
3
被害的に捉える。
何かに対してイライラ、必要以上に
減らしたい行動は何
子どもを怒る。
ですか?
代わりにしてほしい
時間を守ってほし
落ち着いて話し
子どもに優しい言い方をしてほし
行動は何ですか?
い。
てもらう。
い。子どもに食事を早めに渡してほ
しい。
どこで好ましくない
施設の入り口。
事務所前
层室前
通所時間(朝)
。
子どもの1日の
夕方の配食時
行動は起きますか?
いつ起きますか?
報告があったと
き。
その行動が起きたと
ミーティングを続
事務所に誘導し、
き自分はどうしたら
ける。
中で仕事をする。
その行動に注目する
ミーティングの進
PC をする
代わりに何に集中し
行。
子どもに目線をそらし話しかける
いいでしょうか?
メニューについて
たらいいでしょう
か?
自分を励ます言葉
褒めるために Wait
どこで褒めるか
は?
している。
考えながら。
好ましくない行動を
尐しでも早ければ
できてない。
やめて、好ましい行
「いつもより早か
動をはじめた時、そ
ったですね」と褒め
の行動を増やすため
る。
「子どもが安心して食事ができてい
ますね。
」
にどうやって褒めま
すか?
入层者が好ましくな
トライできなかっ
い行動をやめようと
た。
話を変える。
ドアをしめて立ち去る。
しない時、何をしま
すか?
感想など
変化はあまりない。 こ れ を や る こ と
イライラしているときは、何を言っ
で、自分の気持ち
ても子どもに当り散らしているの
のゆとりができ
で、あまり変化はなかった。しかし、
た。子どものいい
実行することで相手への怖さを感じ
ところを言うこ
なくなった。
とで気がそれた。
16
今後の課題
困ったことが出てきたら、以下のことを実行すること。
① 困ったことがあったら、その場で2~3人のチームを作り、適当にリーダーを決める。
② その事例に対するアクションプランを各自5分で埋める。
③ 10分で話し合い、結果をまとめて実行してみる。
15分以上かけるのはあまり効率的ではないので、決まったことをとりあえずやってみる。
うまくいけば続け、うまくいかなかった場合でも、問題を共有できたということは大きなことで
ある。また、ケースにはまっている人ほど対応が出てこないし、他の人が出したことに対して、
拒否したくなるが、とりあえず実行することが大切である。
◎テーマ 入层者の協力を増やす方法①-効果的な指示の出し方①-
指示とは、「もう尐し穏やかに話してください」「時間に合わせてきてください」「部屋に集ま
ってください」など取るべき行動の内容を伝えることである。真剣な声と態度で、対象者の注意
を引き、視線を合わせることは重要である。また、指示は短く具体的に、落ち着いて口調はきっ
ぱりと言い切る。
講師によるロールプレイ
例)ペチャクチャしゃべる入层者に対する支持の出し方。
悪い例)遠くから、
「早く来てください」
「なんで来ないの~」
「始まりますよ~」
「いいかげんに
してください」と声をかける。
いい例)
「こちらの方に集まってください」
「始めますよ~」と遠くから言い、聞かない場合は対
象者の元へ行き、個別に声をかけに行く。
対象者役の感想)遠くから大声で言われても、話に夢中になっているため、なかなか入らないが、
近づいて来られると「なんだろう?」と気持ちがそちらに向く。
講師から助言
対象者の元に行かずに叫んでいても行動が起こることはなく、嫌々行動が起きるときには双方に
険悪なムードが漂うことがある。指示の出し方が、注意を引けているのかということが前提であ
り、遠くからだと、意外と届いていないこともある。そのため、注意を引き、目線を合わせて、
きっぱりと落ち着いて言い切ることが大切である。また、「そろそろご飯食べない?というよう
な疑問形に対しては、反抗的な態度が返ってくることが多く押し問答になりがちなので、次の行
動を支持することが効果的である。また、25点で褒めることも忘れない。複数いる場合は、不
満がでないように個別に褒めるという配慮も必要である。支持を聞かない場合は時間をおいて再
度言う。
2グループに分かれてロールプレイ
グループに分かれて、話を続けて指示を聞かない入层者への指示の仕方をやってみよう。どの
17
やり方が一番良かったか、よりよい言い方について話し合いながら考える。
<グループ間におけるロールプレイ実施と感想について 例>
A グループ:軽く身体に触れて話をすることは有効だと思った。
「~してくれますか?」という言
い方になるので、指示にしたほうがいいと感じた。相手が進む方向を開けて、指示を出した方が、
スムーズだと思うので、回り込んで声をかけ、一緒に行くように促す。疑問系はあまり効果がな
いのではないかと思うので、簡潔に指示を出す。身体に触れるのは異性の場合は難しいかもしれ
ない。子どもは目線を同じ高さに合わせた方がいいと思うし、大人も目線を合わせて指示を出す
方が有効ではないか。また、遊びの片付けをしていない段階で「ありがとう」といわれると、あ
せってしまい、
「片付けなきゃ」と思った。片付けたら褒められるぞという気持ちになった。
B グループ:目線を合わせることや、名前を呼ぶこと、具体的に指示を出すことが効果的だと思
った。また、軽く肩を叩くのも有効だと思う。「すみませんが・・・」などといった、あやまっ
たりへりくだった言い方はよくないのではないかと思った。
いい例のロールプレイ
A グループ:ゲームに夢中な子どもの例。子どもに近寄り、目線合わせて「ご飯ができたから、
あっちで一緒にごはんですよ。上手にかたづけられるかな?」と声をかけ、子どもが行動に移し
かけたときに「
(お片づけ)上手上手、じゃあ行こう~。
」子どもが移動し始めたら「立つのはや
いね~。
」と声をかける。
B グループ: 話に夢中で集まらない母親の例。対象者に近づき、
「始まりの会が始まるので、椅
子に座ってください」と名前を呼び支持する。移動しようとしたら、「ありがとうございます」
と声をかける。
講師助言:支援関係者は、へりくだる態度が癖になっているので、気をつける。(すぐに「申し
訳ないけど~」
、「悪いけど~」と言ってしまう。)指示以外の余計なものがつくことによって、
隙を与えると、ひと悶着になり双方がイライラしがちになるので、シンプルに伝える。他に、ゲ
ームを止めさせたいときに、
「今していることをもうすぐやめないといけないよ」という予告を
することにより、指示がはいりやすくなることもある。そして、尐しでも対象者が従う姿勢を見
せたら褒めるということをセットでやると効果的である。
次回の宿題 : 以下の内容について、正しい情報を書き換えてください。
18
第7回研修会
平成 22 年 3 月 3 日 10:00-12:00
研修の流れ
対応困難者に対し実行した「指示の出し方」について報告してもらう。指示の出し方を整理し、
支援者が対応困難者のネガティブな反応を Wait して行動の変化をとらえることができたことや
褒めることができたことを確認する。お互いの方法を聞くことでそれぞれの新たな発見につなが
る。
後半は、今回のテーマである入层者の協力を増やす方法を学び、よりよい行動のためのチャー
ト(BBC)を作成して共有する。
参加者:13人(母子生活支援施設9人、就労移行・就労継続 A 型施設1人、児童デイサービス
1人、共同生活援助施設1人、地域活動支援センター1人)
テーマ 「前回の宿題:好ましくない行動を減らす②-Wait とほめるの組み合わせ-の振り返り
と、本日のテーマ:入层者の協力を増やす方法②-効果的な出し方②-、-よりよい行動のため
のチャート(BBC)-」
前回の宿題報告:好ましくない行動を減らす②-Wait とほめるの組み合わせ-
宿題で取り組んだ効果的な指示の出し方について報告をしてもらい、気付いたことや感想を発
言する。
前回の宿題報告
1
指示の出し方
入层者の反応
掃除の時間の 5~10 分前に声かけ。時
掃除をやり始めた。褒めるとさらに掃
間になり掃除してない子に関しては、
除をしてくれた。
子どもたち同士で声かけをし合ってい
る様子を見て Wait する。それでもダメ
な場合は声をかける。
2
3
道路で「急に飛び出さないで」と指示。 手をつながない子もいたが、無事に帰
「協力してね」と伝えた。
れた。
子どもの件で母が気に入らないことが
穏やかになったときに褒めると納ま
あり爆発。落ち着いたところで「一緒
った。
に子どもと明日の約束をしましょう」
と指示。
【感想・講師コメント】
スタッフの感想例:対象者への対応を「相手の話を聞けない場合は、状況を伝え、話しを聞ける
時間を伝える」に統一した。以前よりスタッフの過敏さが低下した。
19
☆ルールを守れたこと、困ったときに人に頼ることができたことを褒め、相手の生活もあるから
そこも考慮して相手に負担をかけない程度に人に頼ることが必要と伝えることが大切である。
◎ 本日のテーマ 入层者の協力を増やす方法②-効果的な出し方②-・-よりよい行動のため
のチャート(BBC)-
効果的な指示の出し方を学ぶ。一つ目は「選択させる」。2つ以上の可能性のあるやり方を提
案し、そのうちのひとつを選ばせる方法である。例えば、着替えを嫌っている子に、「この縞々
の服とピンクの服どっちがいい」と聞き選んでもらう。ここで意図しているのは「着替えてほし
い」ということで、相手がどちらを選んでもよい。それでも嫌がった場合は「今日はわたしが決
めます」といって決めてあげる。どちらの場合も従ったら褒めましょう。
2つめは「~したら、~できる」という取り決めをする。たとえば、好ましい行動をしたとき
に、掃除や料理を手伝ってあげる等です。お互いに無理のないものに設定する。
3つ目はブロークンレコードテクニック。相手が屁理屈を言って注意をそらそうとするときに、
シンプルに指示だけを繰り返すことで、感情的になってしまうことを防ぐ。
よりよい行動のためのチャート(BBC)とは、1日の中でスムーズにことが進まない時間を取
り出し、相手にしてほしい行動を5つ程チャートに書きだしたリストのことである。時間帯を絞
り、その時間帯でやらなければいけない行動を時間の流れにそって5つ程挙げる。すべてできて
いない行動だと相手のモチベーションも下がってしまうので、できているものを3つ、ときどき
できているものを2つ、できてないものを1つ入れる。それぞれが対象者の BBC を作成する。
スタッフ事例 1 : 朝の場面を取り上げ、保育園に通園させる・事務所に鍵を預ける・定時
に登園をさせる・子どもに朝食を食べさせているなどを入れようと考えてい
る。
スタッフ事例 2 :挨拶ができる・時間通りに子どもを預ける・弁当を手作りする・鍵を預け
る。できていないことは、嘘をついて遊びに行くこと。
講師より、嘘をつくことを扱うのは難しいとコメント。嘘をつく人には、都合の悪いことでも話
してくれたと褒めることが大切だとアドバイス。
宿題:BBC を作成し、実行する。
20
第8回研修会
平成 22 年 3 月 17 日 10:00-12:00
研修の流れ
作成した BBC を実行した感想をそれぞれ発表してもらい、グループで共有する。うまくいかな
かったところに関しては講師からのコメントやアドバイスをもらい、よりよい BBC ができるよう
考える。
後半は今回のテーマである制限を設ける―警告とペナルティーの与え方―について学ぶ。
これまで学んだ対応を続けても、なかなか行動が改善されない場合に与える制限について考える。
参加者:13人(母子生活支援施設9人、就労移行・就労継続 A 型施設1人、児童デイサービス
1人、共同生活援助施設1人、地域活動支援センター1人)
テーマ
「前回の宿題:よりよい行動のためのチャート(BBC)試験的な記録表と、本日のテー
マ:制限を設ける―警告とペナルティーの与え方―」
前回の宿題報告:よりよい行動のためのチャート(BBC)試験的な記録表
宿題で作成し実行した BBC について報告をする。取り組んでみてうまくいったことやうまくい
かなかったことを整理する。また、講師からのコメントを聞き今後のよりよい対応について考え
る。 例)
評価した行動
1
感想
対象者に提示するまでいかなかった。過食になってしま
うという訴えがあり、相手は嫌がっていたが病院へ同行
した。プライドが高く、自分のことに口出しされるのは
拒否するが、子どものことでの提示であればできるかも
しれない。
2
褒美をどうしようと悩んだ。また、別の発達障害を持つ
子どもを迎えに行ったときにブロークンレコードを実
行した。本人はブーツを履いていくといったが、「靴、
履きます」だけ言い続けた。母が靴を2足出し本人が選
んだほうが小さくて履けなかったというハプニングが
あったがうまくいった。
3
引越しの準備をする
シールをしようと提案したら「子どもっぽい」といった
ので、心情に沿って話すと話が入るので、私の心にシー
ルを貼るねと伝えた。翌日「お掃除手伝うよ」と声かけ
たら「荷物詰めといたよ」と答えたので「わたしの心に
シールを貼っとくね」と伝えた。次の日にもダンボール
が増えていた。
21
テーマ:制限を設ける ―警告とペナルティーの与え方―
どうしても人を叩いてしまう、まったく言うことをきかないなど、これまで学んだ対応法で対
応できないケースに関して制限を設けることも必要である。また、制限のするためにペナルティ
ーが必要なことがある。まず、警告を与える。辞めてほしい行動、従うべき行動を明確に伝え、
対象者が取るべき行動をも明確に伝える。また、従わなかった時のペナルティーを具体的に伝え
る。警告は入层者が指示に従える最後のチャンスとし、1度だけ行う。
ペナルティーとは、本人が選択した結果として責任を本人が負うことである。ペナルティーと
して何ができるのかディスカッションした。
ペナルティーについて 例
・ 施設内の健康診断を受けなければ生活保護のケースワーカーに相談し、指導を受けてもらう。
受診につなげてもらう。
・ 他人に迷惑をかける、宗教・営利活動をしたら退所要件に当るので、関係機関から指導を受
ける若しくは、退所要件とする。
・ 母のお迎えが遅れたり連絡がつかない場合は、子どもを保育室に預けられる時間を減らす。
・ 金銭管理について、一週間ごとに設定していたが、できなかったら毎日手渡すように戻す。
・ 理事長に報告する。
・ 母の会の役員をやらないともう一回役員をしてもらう。
・ 学童:ルールを守れない子は帰宅する。
・ 学童:学校に行かなかったら、学童に参加できない。
次回までの宿題: ・ 施設におけるペナルティーについて考える。 ・ タイムアウトに関し
て考えてみる。
第9回研修会
平成 22 年 3 月 31 日 10:00-12:00
参加者11名(母子生活支援施設7人、就労移行・就労継続 A 型施設1人、児童デイサービス1
人、共同生活援助施設1人、地域活動支援センター1人)
テーマ:アクションプランの作成と実行
担当者がいないとき、主任や理事長がいないときなどの隙をついて問題が起こることがある。
このような時には、対応が後手になりやすく問題が大きくなるが、その場にいるスタッフ3~4
人で集まり案を出し合うと、いい解決策が出る。そのため、困ったときにはその場にいる職員同
士で時間を区切ってアクションプランを立てることも効果的である。
アクションプランを行う時は、その場に层合わせた人達の知恵を結集する。行う前に、意思や
方向性を統一にすること、問題をオープンにすることが大切である。病院などで行っている「ひ
22
やりハット」のようなものである。
そもそも、ケース会議や相談などは軽い問題はコンパクトに、重い問題はだらだらと続くことが
多いが、長いからいいというわけではないので、短時間でパッと行うことが効果的である。
アクションプランを実践してみる
アクションプランのやり方
① 問題提起する
② 「アクションプランを開始します」と言う。
③ A4の紙に「本日の御題」
・名前・解決策をできる限りたくさん書く。
(5分)
④ その状況をコンプリメントする言葉も記入する。
(5分)
⑤ リーダーを決め、書いた内容を発表しあう。
⑥ 現実的にできそうなことを検討し、決める。
(5分)
例1)スタッフの A さんと B さんの仲が悪く、周りがきまずい
A グループ:リーダーが個々に話しをする。研修で話し合う。上司や第三者が入って話しをする。
B グループ:それぞれに話す。そのときに、いいところをたくさん挙げた後、一つだけ直してほ
しいところを加える。
C グループ:飲み会などで親睦を深める。お互いの言い分を聞いてもらう。
D グループ:関係を取りまとめる人や第三者が話しを聞く。その時に、相手の思いを伝える。周
りが2人を心配していることも伝える。食事に誘って親睦を深めたり、共通の趣味
があればそれを伝える。
⇒それぞれのグループのリーダーが主任に相談する。
※ このようにアクションプランを行い、記録を増やしていくことは後々似たような問題へのマ
ニュアルになる。
※ ケースの詳細な情報を共有する必要はなく、情報が尐ない中から生まれるものを重視する。
【リーダーと主任の話合いより】
仲がいい人たちが2人の情報を集めた後、主任がそれぞれ別に呼んで改善を求めるように話を
するという結論を得た。
例2) 一人で当番をしているときに服薬したいという入层者が来たが、飲んでよい薬なのか分
からなくて困った。
①主任が場を仕切ってスタート
②⑩さんへリーダーが相談し、精査する。
③主任のアナウンス:
⇒服薬管理の開始には、処方箋をもらう。確認できなければ、担当の職員が病院の先生や薬局へ
服薬内容を聞き職員同士で共有するためメモに書いておく。また、入层者とも内容を確認してメ
23
モに書き、入层者が認識しやすいところに貼る。
職員同士で職場に分かるようにしておき対応してもらうことと、それでも入层者が従わない場合
は、自分で病院に電話して確認してもらう。
例3)施設のマニュアルつくりをするとしたら、どういう項目が優先か?
A グループ:施設の運営理念や方針・ペナルティ・1日の流れをフローチャートにする・個別支
援計画を立てる・服薬管理の説明。守秘義務を明確化・備品管理
B グループ:金銭管理に関すること。退所時の掃除。親就労の段階について。施設内の掃除。利
用者へのマニュアル作り。退所時のルール作り。備品に関する取り決め。施設内の
モラルについて入层時の面接に提示するためのマニュアル作り。
C グループ:退所に向けてやるべきことを入层者向けにマニュアル化(金銭管理も含む)。服薬管
理についてのマニュアル。入所者向けと退所者向けに決まりをつくる。
【取りまとめ】
退所へのスケジュールについて入层者に分りやすいようにすること、金銭管理と服薬支援のマ
ニュアルを作る。服薬支援については、悩んだときには処方箋を読むなどといったところから入
层者が自分で確認できるものにする。また、退所時のマニュアルは、どのような流れで退所準備
をしていくのかを入层者に分りやすいものを作る。建物の破損も含めたものにしたい。難しいと
ころはグループに相談してもかまわないので、15日までに提出する。
【講師助言】
入层者に対応する際にマニュアルやルールというものはとても大切なものである。マニュアルや
ルールはスタッフを守るものになるので、どれぐらい破ったらどのぐらいの罰則があるのかをき
ちんと決めておき、入层者にもアナウンスして理解してもらうことが大切である。器物破損、無
断外泊、ネグレクトや登校時の遅刻など、程度を分けてペナルティーを分けるとよい。自然にル
ールを守れる人と守れない人がいる。後者を抱えている場合、ルールがないままではうまくいか
ない場合が多い。もっと枠を作って管理をしていく必要があると考えられる。これまで困ってい
た問題を出し合って、問題レベルごとに分けてペナルティーを含めたルール作りをする。また、
問題行動に対するスタッフの対応がばらばらになりがちなので、ルールを決めた後はそれに従っ
て統一するとよりよい支援ができるであろう。
第 10 回研修会
平成 22 年 4 月 28 日 10:00-12:00
研修の流れ
この研修を通して、入层者への対応について考えてきた。研修で学んだことを振り返りながら自
分の対応を振り返る。
参加者:11人(母子生活支援施設7人、就労移行・就労継続 A 型施設1人、児童デイサービス
24
1人、共同生活援助施設1人、地域活動支援センター1人)
以下研修に関する感想 例
1
研修前
現在
仕事への思いがなく疲れており、仕
学童の業務にやりがいを感じ、楽しいと思うよ
事に疑問もあった。子どもはかわい
うになった。入所世帯への対応についてはまだ
いが、母親は怖いと感じていた。対
疲れがあるが、子どもはかわいいし、色々なこ
応することへの恐れや、自信のなさ
とをさせたいと思う。また、母親については理
があり臆病だった。
解できないくらいで丁度良いと思うようにな
り、怖れはなくなった。何事もやってみようと
思うようになった。
2
入所世帯を客観視できず、不調だっ
研修の中でヒントを得、他の人のことも分かっ
た。宿直勤務への不安や職場への恐
た。入所世帯を客観視することや、頭の整理が
怖を感じていた。入所世帯への対応
できた。世帯には世帯の未来があって、そのた
に嫌悪感を抱き、支援の意味が分か
めに自分は何ができるかと考えるようになっ
らなくなった。
た。対応の引き出しが多くなり、世帯の存在を
認めてどういう支援が良いか考え始めた。
3
入层者の課題を施設長の指導を受け
入层者の気持ちを分析する力がつき、冷静に対
ながらやっていくのみで、相手の気
応できるようになった。合理的な反論ができる
持ちを考えることができなかった。
ようになったため、入层者の対応もスムーズに
入层者の言葉に傷つくこともあっ
なった。スタッフ間の連携で解決できるのでは
た。
ないかという思いが生まれ、信頼し合えるよう
になった。
4
入层者に怒鳴られることへの恐怖を
怒鳴られても作業しながら聞き流したり、条件
感じていた。宿直時に緊張していた。 をつけて対応できるようになったことで気持ち
5
また、障害がある人への理解が不十
が楽になった。宿直のときの緊張がなくなった。
分であったことに気がついた。相談
障害がある人への対応法を工夫できるようにな
できる人、マニュアルがないので困
った。困ったときの対応方法をある程度知って
る。
いると助かると実感している。
入层者の苦情や文句へ動揺してしま
苦情を落ち着いて聞けるようになった。自分で
い、対応方法が分からなかった。入
対処できなければ別のスタッフにつなぐように
层者への指示が薄かったり、課題が
なった。また、入层者へ問題が伝わりやすくな
伝わらなかった。入层者にただ鍵を
り容易に共有できるようになった。
渡すだけなど最低限のコミュニケー
入层者への声かけも自然にできるようになり話
ションしか取っていなかった。
も増えた。職員として接することへの自覚や、
チームの一員としての立ち位置を感じるように
なった。
25
まとめ
問題の整理がうまくできず漠然と困っていたが、現在はうまくいかないところを整理し、スタ
ッフ間にて相談しながらチームワークにて対処できるように変化した。ある程度の共通認識がで
き、より安心して対応ができてきたことがよい影響をもたらしたと言える。以前より個々の能力
が発揮できるようになった。対応に関する自信のなさから、過度にやり過ぎることが減った。問
題が起こる前に落ち着いて対応ができるようになったことから入层者の問題行動自体も減って
きた。研修で学んだコンプリメント(ほめる)技法が入ってきたことでスタッフ同士がより理解
し合えるようになった。
<今後の課題>
① ルール作り
福祉職は、無理なことやひどい人、悪い状況などを努力と優しさ、我慢で突っ切ろうとすると
ころがある。しかし、自己犠牲の考え方や無理しすぎることで心身共に消耗し、時にはバーンア
ウトしてしまう。そのため、ルールや枠をきちんと作ることが大切と考えられる。対応困難なケ
ースは、社会のルールのように枠となるルールがないとうまく行かないので、ペナルティや規定
を定めることが必要である。
今回の研修は内容を大きく分けると①褒めること②制限を設けること③罰則と3つであった。
入层者を褒めることは肯定的で前向きなことであり、生き生きと取り組めた。制限を設け、ルー
ル作りにも取り組めた。罰則を設けるということに関してはまだ抵抗が見られる。物を壊した
り・夜帰らないという問題行動が大きい人に対しては、ルール作りを課題として整えていきたい。
②入层者の背景に関して。
疾患による対応方法を知る必要性がより必要と感じられた。知的障がい者の配慮も必要である。
また、パーソナリティ障がいへの対応を学ぶ必要もある。また、一般的に求められるようなこと
をゴールにすると空回りすると考えられる。
③業務マニュアル作り
個々の関わりをマニュアル化することは難しいと考えがちだが、大体の対応方法を決めておく
ことも大切と考えられる。
26
振り返り
研修終了後約 8 ヶ月後、振り返りを行った。
平成 23 年 1 月 12 日(木)
10:00-12:00
目的 概念の復習・振り返りと今後のビジョン 参加者 睦母子生活支援施設職員 6 名
過去
現在
近未来
(全体として)
・仕事が出来ていなかったの ・何が必要かを先に先にと考 ・より信頼されるようになりたい。
で上司から信頼されていな
えて対応できるようになっ
・指示待ちではなく、どうしたら
かった。
た。
よいか自ら工夫できる人材になり
・ベテランの意見に振り回さ ・仕事のビジョンが見えるよ
れていた。
たい。
うになった。
(利用者の対応について)
・仕事が出来ないからトラブ
・自信が持ててきた。
・自分たちで処遇や対応を考える
ルが起こり、そのトラブルで
・地盤は出来たと思う。
力をつけたい。今はベテランの意
打ちのめされる負のスパイ ・自分たちで考える力が尐し
見をうのみにしすぎている。自分
ラル。
ついてきた。
たちで考える癖をつけることが必
・信頼されていなかった。
・入退所などやったことのな
要。
・仕事が出来ていなかった。 い業務では自信が無くなる。 →現在、ミーティングの後にやっ
ている研修を工夫する。
(職員の対応の一致)
・他人の意見に振り回されて ・マニュアルが完成したので
・マニュアルを周知徹底したい
いた。人によってアドバイス
楽になった。
・もっと工夫して改変。
がまちまちだった。
・新人でも全部教えなくても
よいので楽。
(ストレスへの対処)
・その日の業務の出来具合
・一番夕方でバタバタする時間帯、
ストレスにより辞める職員
や、事務所の雰囲気でストレ
事務所でヒーリングミュージック
多かった。
スがたまることがたまにあ
をかけてみる。
・アロマオイルを焚
る。
いてもいいと思う。
・数分のお茶タ
イム
(業務連絡について)
・スタッフの意思疎通がなか ・ミーティングの時間が短く
・ミーティングの後にやっている
った。
なって集中力が増した。
研修の工夫、一ケース 20 分で、緊
・業務連絡が長い割にうまく
・合理的なミーティング。
急なものから3つやるなど。
いっていなかった。
・入退所など連携難しい。
27
効果測定の結果
事前事後効果測定尺度として、CES-D(うつ症状自己評価尺度)、バーンアウト(燃え尽き
症候群)尺度、蓄積疲労尺度を行った。対人ストレスの多い母子支援施設においては、援助者の
精神健康が損なわれやすく、うつ症状を示したり、バーンアウト(燃え尽き感)を感じて辞職希
望を秘めているという援助者も多いことが知られている。
手続き:効果測定の質問紙調査を行った回数は、初回、中間、最終回の 3 回である。
この質問紙の結果によって、勤務評価や通常の業務などに与えることは全くないことの説明が行
われた。22 歳から 60 歳 11~13 人で、日にちによって当番の職員等の人員の入れ替わりが 2,3 名
あった(職種は保育士と社会福祉士である)
。平均年齢 43.45 歳(SD=14.49)
プライバシーへの配慮:このような研修において管理職に情報が開示されるかもしれないという
恐れが、虚偽の記載につながる可能性が予想された。よって、個人名の記載は避け、ニックネー
ムでの記載によるプライバシー保護の配慮を行った。
研修の効果測定
50
45
各尺度得点の平均値
40
35
30
バーンアウト
蓄積疲労
うつ症状
25
20
15
10
5
0
1
2
3
時系列(初回、中間、最終)
<結果>
バーンアウト尺度とうつ症状自己評価尺度については、初回については高い平均が見られてい
るが、中間で大きく下がり、研修の最終日でも中間とほぼ同程度で推移している。一方、蓄積疲
労インデックスについては、初回と中間ではほぼ数値が変わらないにもかかわらず、最終日に低
い数値に推移しているのが特徴的である。
この結果から、職員の心理健康状態について、バーンアウトとうつ症状が軽減し、その後に蓄
積疲労が改善されていったと推測できる。特にバーンアウト尺度に関する改善が顕著に見られる
という結果となった。(分析
生田)
28
Ⅳ
子どもの虐待防止センターによる「ファシリテーター養成講座」
「CSP(コモンセンスペアレンティング)」に関する報告
1
ファシリテーター養成講座
受講者 睦母子生活支援施設職員 9 名
児童デイサービス職員 6 名
第 1 グループ
受講日 平成 22 年 4 月 8 日・22 日
テーマ:①ジェノグラムの理解
②事例検討を通して、施設入所前後の支援を考える
③自己紹介・CCAP の活動について
④スタッフミーティングについて
⑤ロールプレイング(保護者への伝え方)
第 2 グループ
受講日 平成 22 年 9 月 2 日・16 日
テーマ:①「聴く」ことの意味と方法
・
オープンクエスチョン・クローズクエスチョン
・
障害にあわせた聴き方
②ジェノグラムとエコマップの書き方と使い方について
家族のアセスメント・・・家族のヒストリーとして広げていく
③事例検討
*虐待死に至ったケース(最近の新聞で報道された事例をもとに)
研修の感想について
「聴く力」と「聴いたことをまとめ、生かす力」の向上を目的に実施した。研修を受けていく中
で、虐待する親=悪い親という固定観念を頭から外し、ジェノグラムやエコマップを活用し、家
族関係図から虐待を考える視点を基本に研修が進められた。
家族全体を把握しアセスメントをとる、アセスメントを活用し、利用できるサービスや繋ぐべ
き関係機関はどこがあるかを整理した。アセスメントをとることにより、課題や支援の方法が見
えてくることを理解した。
親に対する接し方や質問方法のほか、スタッフ間にて情報共有や困っている事を相談し、対応
を共に考える手法を学んだ。スタッフ個人で抱え込まず、より多くの支え手によって子どもとそ
の家族を守るという基本姿勢について学んだ。
29
* 職員の研修報告書を添付いたします。
(母子指導員)
(児童デイサービス職員)
(母子指導員)
30
2
CSP
参加者
(コモンセンス・ペアレンティング)に関する報告
睦母子生活支援施設職員 9 名
児童デイサービス職員 5 名
CSP とは:暴力や暴言を用いずに、子どもに躾(コミュニケーション)をすること。躾の中でも、
特に「教育」に焦点をあてている。躾とは、子どもに行うトレーニング、教育、説明。
それにより、子ども自身が、自分をコントロールし、学ぶこと。躾により、家族や社
会の一員としてどのように振舞えばよいのかを学んでいく
第1回
CSP 研修会
平成 22 年 5 月 19 日・9 月 8 日(左:第 1 グループ 右:第2グループ 以下日付について同じ)
テーマ:
「わかりやすいコミュニケーション」
わかりやすいコミュニケーションとは→
あいまいな表現ではなく、してほしい行動を具体
的に簡潔に説明することである。
・ 大人にはイメージできる「ちゃんと」や「いい子」という言葉では、相手に理解ができない
ことが多い。
「分かっているだろう」と言う意識はだめ。これは、施設の支援でも当てはま
る事である。
「分かるはず」という決め付けは、対象者に伝わりにくい。一人々々の対象者
の状態に合わせて表現の仕方を工夫する必要がある。
・ 伝えるときには、環境作りが必要である。気を散らせるものを取り除く(テレビをつけっ放
しで注意するなど)
○
目線を合わせる
○ 穏やかな表情、口調で話す
○ 身振り、手振り(叩かれることを連想するようなもの)に注意する
○ 叩くしつけは、暴力に親子が慣れてしまう為、1 回叩くだけでは済まなくなるので意
味がない。
○
「上手ね」
、「すごいね」と言う誉め言葉は、抽象的で良くない。具体的に「○○がで
きたね」と伝えることが必要。
○ バッドサイクルをグッドサイクルへ変えていくよう働きかける。
-<ロールプレイング>-
<職員の感想>
・ 子どもだけでなく、母親にも役に立つと感じた
・ 「何が良くて、誉められたのか」を具体的に伝えることが効果的であるということは、仕事
も家庭でも直ぐに実行してみようと思った。今まで気がつかなかったことを教えてもらった。
子どもが言うことを聴かないのではなく、自分の言い方を変える必要性を感じた。
31
第2回
CSP 研修会
平成 22 年 6 月 2 日・9 月 22 日
テーマ:
「良い結果・悪い結果」
良い行動を増やし、悪い行動を減らす方法
状況(刺激)
行動
結果
<問題を起こす前の状況><子どもの問題行動>
<親の躾>
< 問題行動 >
子
○
お菓子を買って!
だだをこねる
買ってあげる
だだをこねれば
買ってもらえる
母
○
昨日買ったからだめ
だめと言う
折れて買ってあげる
* こどもの問題行動は減らない。
(例) 良い結果
母
○
出かける前に
「今日は、買わないよ」
(買わない)
「お約束を守れたから、大好きな
おやつ(ホットケーキ)を作る」
子
○
「うん!」
(だだをこねない)
ご褒美がもらえる
(例)悪い結果
① 子どもの楽しみに一時的な制限を与える・・子どもに落ち着く時間を与える
(タイムアウト)
*タイムアウトの条件 年齢×1 分
②
暗いところや怖いところは適さない
子どもが牛乳をこぼし、子どもに責任をとらせる。
子どもに汚した床を拭か
せる。または一緒に拭くのもよい
-<ロールプレイング>-
・子どもにとって良い結果とは、子どもが行った行動後に与えられる、子どもにとって良か
った!と思えるものであり、逆に悪い結果とは、子どもが「しまった!」という体験を言
う。この二つを効果的に使うことで、良い結果を与えられた行動は、自然に行うことにな
り、悪い結果を与えられた子どもは、その後にどう対処すれば良いのかを学ぶことができ
る。
32
・良い結果を与えているのに、行動が増えない場合は、親の思う「よい結果」と子ども達の
思う「良い結果」に相違があることが考えられるため、結果を考え直すことが必要である。
・がんばり表の活用・・出来たらご褒美シールを貼る。子どもがちょっと頑張ればできそう
なことを目標にする。3 才以上が対象。
・分かりやすいコミュニケーションを使い、子どもにやってほしいことをしっかり伝える。
<職員の感想と活用法>
・ がんばり表は、子どもの励みになるだけでなく、親が子どもを誉める上、親子のコミュニ
ケーションを深めると思った。
・ ロールプレイングを実際にやってみると、なかなか上手く行かない。悪い例のビデオを見
ていて、
「あれはまさに昔の私だ!」と思った。しかし、基本的に子どもが親の愛情を確認
できていれば、多尐親が感情的になっても大丈夫かなあと思う。しかし、入所世帯を見てい
るとこども達が日々親の愛情を感じることが希薄なケースが尐ない。今日学んだペアレント
トレーニングをお母さんたちにも身につけてほしいと思った。とりあえず、自分の担当世帯
から始めてみようかと思った。
第3回
CSP 研修会
平成 22 年 6 月 16 日・10 月 6 日
テーマ:効果的な誉め方
何に注目し誉めるのか、誉め方の効果的な段階(いつ誉めると効果的か)をポイントに学ぶ
<何に注目して誉めるか>
① 既に身についているよい行い
② もっと伸ばしたい、出来つつある行い
③ 新しく身につけさせたい行い
この3つを誉められることで、子どもは「なるほど!この行いをすると誉められる」と知り、
「ま
た、やってみよう!」という意欲を持つ事ができる。そして、良い行いが増える結果となる。
・ 講義中に、1 分間互いに誉めあう時間を持った。
<効果的な誉め方>
① 誉める・賞賛を与える
② 子どもの取ったよい行動を伝える
③ 理由を述べる
* (子どもの側に立った理由)
* 「帰ってすぐに宿題をしたから遊ぶ時間が増えたね」
「お手伝いをしてくれたら早く終わったよ。
」
④ 良い結果を与える(誉める・ご褒美)
* 「30 分余計に遊んでいいよ。」
33
-<ロールプレイング>-
<職員の感想>
・ 前回の「よい結果・悪い結果」の手法を活用したところ、効果を尐し感じました。今回の誉め
方も実践してみようと思います。
・ 子どもの立場に立った理由を説明する事が必要だが、大人にとってはそれが難しい。
・ 普段見逃してしまう子ども側に立った理由は、とても難しいが、いつも頭の隅においてお
くことで普通に子どもを誉めたり、笑顔で接することが大切なことだと感じました。
・ 子にも母にも職員にも実行したい。
・ 互いに誉めあう時間を持った時に、嬉しく感じた。誉められることは、
「次も頑張ろう」と
前向きになれることを実感した。
・ 「まぁ一人で片付けたの。ママ、片付けなさいって言わなくてすむから本当に嬉しい」と
いう様な誉め方は、子どもにとって皮肉に感じる。あくまでも、子どもの側に立つよう、
例えば一人で片付けられるほど自分は成長したことを実感できるように伝える事が大事と
のこと。この点は、実際に誉める事を行なう際、気をつけたいと思った。
・ 母を誉める事で、育児のやる気を増進させ、結果子どもとの関係が良好に繋がるよう、子
ども達の良い行いに加え、親の良い行いについても見落とさず賞賛していきたい。
(母子生活支援施設
尐年指導員)
(母子生活支援施設
第4回
尐年指導員)
CSP 研修会
平成 22 年 6 月 30 日・10 月 20 日
テーマ:予防的教育法
予防的教育法の目標 : 前もって子どもに言って聞かせる方法を親が身につけ、子どもの発
達のレベルを把握し、レベルに合った方法で子どもにして欲しい行動を伝えることで、大人自
身の気持ち(主に怒り)をコントロールできるようになり、常に落ち着きを維持しながら子ども
に向き合えるようになる事を目標とする。
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ステップ①子どもにして欲しいことを説明する。より具体的にする。例えば、いつも失敗して
いる事などを取り入れる
②理由を説明する。あくまでも、子どもの側に立った理由であること。
子どもがやりたくなるように説明すると良い。
③練習・楽しく・短く・励まして、効果的な誉め方を使う。念を入れるよう練習
すると良い。
予防的教育法を上手く使う方法・・・大人自身が落ち着くこと
大人に気持ちの余裕が無い時には、その焦りやイライラが子どもにストレートにぶつかりやすい。
① どんな時に怒りが爆発するか・・・「嵐の前の静けさ」
② 怒る前の小さなサインは?・・爆発のサイン
③ 落ち着くプラン実行・・リラックス
自分が怒りそうになる前にその感情を感じ、その感情をそらす行動をとる。例えば、手
に輪ゴムをつけておいて、怒りそうな時に輪ゴムをはじく。
講師助言
:
入所世帯に実行するのは、悪くないと考える。知っているのと知らないのでは、
大きな差がある。
CSP の参加条件:
・
家事がこなせるレベルであること
・ 精神疾患のある方については、まだ早いと判断する場合がある。
・ 押し付けは出来ない。
<職員の感想と活用法>
・ いつでも子どもと向き合うときには、気持ちを落ち着かせた状態で向き合いたいと思う。
・ スイッチが入るポイントを自らが知り、コントロールすることで冷静な対応が出来るよう、
心の安定を図りたいと思う。
・ 現場で実際に子どもの立場に立った理由を言うと効果があったので、意識して取り入れて
いくことで、レパートリーを増やしたい。
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第5回
CSP 研修会
平成 22 年 7 月 14 日・11 月 10 日
テーマ:問題行動を正す教育法
目標 子どもの問題行動に介入する方法を身につける
(叩いたり、怒ったりせず問題行動の変わりに取る行動を教える)
ステップ
①問題行動をやめさせる
・
・
②悪い結果を与える ・
・
穏やかに注意を引く
「~したいのは、わかるけど」分かりやすく指示を与える
・
何が起こっているのかを説明する
・
共感的表現をする
問題行動に関係したもの
「しまった」と思わせる結果:子どもの年齢と能力に合ったもの
※ 楽しみに一時的な制限を与える例 : 30 分長くテレビを見たら、翌日 30 分短くする
③ 子どもにして欲しいことを説明
:具体的にとるべき行動を説明する「分かりやすいコミ
ュニケーション」をとる
④ 子どもにして欲しいことを練習させる: ③を練習する 短く、誉め、励ます。
※練習しても出来ない理由:言っていることが理解できない場合と実行する事ができない場合
がある。その子のレベルに合わせて、できることから始める。
<職員の感想と活用法>
・ 自分自身の子育てを振り返ると、大きな声をあげないでケンカを止めさせたりすることは、
なかなか難しいが、落ち着いて、わき道にそれぬよう行動が出来た場合は、誉める事を忘
れないことである。私の場合、子どもより親と接することが多いので、自分もマスターし
てそれを親にやり方を伝えていく事が大事だと思った。
・ 心身の健康度の高いお母さんに育児支援で活用していきたい。
・ 出来て当り前と捉えず、常に見逃さず誉めていきたい。
36
第6回
CSP 研修会
平成 22 年 7 月 28 日・11 月 24 日
テーマ:自分自身をコントロールする教育法
目標 子どもが感情的になって反抗したり、泣いたり、すねたりするといった親子間の緊張が
高まる場面での対処法を身につける
* 子どもは、セルフコントロールが大人より困難である為、自分自身をコントロールする教
育法でステップを使って接することにより、再び問題が起こるのを防ぐ事ができる。
第1ステップ
① 親(支援者)がまず落ち着く : 例)深呼吸・一旦、その場を離れる。クールダウン。
② 子どもに落ち着く指示を出す : 何が起こったのか説明して、落ち着く方法を指示する。
例えば、10 数える。 タイムアウト(子どもの年齢×1 分)
③
落ち着くまでの時間を与える。
第2ステップ
① 共感的表現 : 例) 気持ちは分かるよと話す。嫌だったね。
② (落ち着いたら)状況を説明する。何が起こっていたかを説明する :
例) イライラして大きな声を出したね
③ 落ち着くヒントを与える : 例)10数えてごらんと指示する
④ 落ち着くヒントを練習 :
例) 10一緒に数える
⑤ 元の問題に戻る : 例)
友達に謝らせるなど
<事例> 宿題をやらずに、オモチャで遊ぶ
第1ステップ
① 声をかけても、宿題をやらずに遊び続ける状況。まず親が落ち着く
② 子どもを現在気持ちが向いている遊びから離し、座らせる。
③ 落ち着いて話が聞ける状況になるまで、座らせる。
第2ステップ
① ・②遊びたい気持ちを受容しつつ、今何をやるべきか話す
③・④深呼吸等落ち着く方法を与え、一緒に練習する。
④ 落ち着いたところで、今は何をやるべきか一緒に整理する。
オモチャを片付け、宿題をやらせる。
<職員の感想>
・ 業務の中で、子どもに対してタイムアウトを実施したが、場所の設定が上手く行かず
落ち着けなかった。タイムアウトでは、楽しみのない明るい場所で怒りをぶつける相手は
離れるようにする必要があると学び、どの点が足りなかったかが分かった。
・ 業務の中でイライラすることは当然ある。職員も落ち着いて対応していけることが重要で
37
ある。
・ セルフコントロールが、困難な場面があり、実際に活用してた。スムーズでないものの、
以前に比べパニック泣きが早くおさまり、最終指示が入った。この研修の有効性を感じ、こ
の研修に参加してよかったと感じました。今後の課題として、取り組みたいと思う。
(母子生活支援施設 尐年指導員)
(母子生活支援施設 保育士)
子どもの虐待防止センターによる「ファシリテーター養成講座」
・「コモンセンス
ペアレンティング」については、資料や内容の開示に制約があるため、詳細について
お知らせすることができません。研修の概略や職員の感想などに控えさせて頂きました。
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CSP 研修の振り返り
「誉めて伸ばす」というのは、子育ての極意としてよく聞く話です。CSP は、ただ誉めるのでは
なく、子どもの立場になってどう誉めるかということを教えてくれました。子どもの立場になっ
て分かるほめ方というのは、よくできたとかえらいという言葉ではなく最初は、今まで使ってい
た言葉がこどもにとって必ずしも誉め言葉にならないことに戸惑うこともがありました。研修も
回を重ねるごとに職員自身が日常で実践し、その効果を感じました。
躾について乱暴な言葉や暴力を用いないで行う方法を学べたことはよい影響をもたらしまし
た。大人が、言葉を用いて行動を修正することや親自身が自分の感情に気がつき、自分自身をコ
ントロールする方法なども学べたことは幸いでした。
昨今、
「家庭力が落ちている(一人で育てるのが大変)」
・
「子育ての情報源が尐ない」
・
「育児書
どおりに子どもが育たない(うちの子は、変なの?)」と育児の中で様々な不安や疑問を抱えつ
つ、相談相手もなくストレスを溜めてしまうお母さんが尐なくありません。ストレスの結果、気
がつくと「子どもを怒鳴ってしまった」、
「気が付いたら叩いていた」
・
「子どもを可愛いと思えな
い」など残念なことに母子関係に悪影響を与え、親と子どもの心に傷を残すことも尐なくありま
せん。プログラムを受講する中で、「これは、ごく当たり前に子育てをする人たちが知っていた
ら、もっと子育てが楽になるのではないか。
」と感じました。
子育て支援というのは、夫婦でこどものお風呂の入れ方を学ぶだけではなく、子育ての技術を
学ぶことも含まれると考えます。地域ケアプラザ、保育所といった場所で、母子生活支援施設に
留まらず、今後も広めて行きたいと考えております。
ファシリテーター養成講座やコモンセンスペアレンティングの受講を通して 社会福祉法人
子ども虐待防止センターとのつながりができました。子どもの命を守る新たな仲間と出会えたこ
とは大きな喜びです。心より感謝申し上げます。
当研修を終えて
今年度の研修を経験後、職場によい影響をもたらしたことを以下に報告する。
1)組織の全体の変化
① 全員参加の意義
職員全員が参加しました。施設としてのサービス(保育室)を 2 時間停止して、出席していま
した。施設にとってサービスを停めると言うことは、たやすいことではありません。研修によ
り共通認識ができたことで連携体制ができるようになったことは大きな成果でした。研修受講
開始後から、研修で学んだことを活用することにより、まず職員が落ち着くというよい変化を
もたらしました。
② 職員の連携の強化
・ 職員間の連携が強まり、職員同士困っている事を共有できるようになった。全体的に職員
に対するクレームが減った。
・ 職場の雰囲気が楽しそうになった。日常業務の中で色々なことが回るようになった。誰か
が指示を出さなくてもアイディアが出てきて回るように変わってきた。スタッフ間で相談する中
で解決方法を見出すことができるようになった。
39
・職員に余裕が出来、対象母子との関係がより良好となった。
・朝のミーティングは、15 分とし、情報を共有できるようになった。当施設は、24 時間、365 日
シフトにより運営されている。職員間の情報伝達にもれがあり、トラブルが発生することがあっ
た。ミーティングや会議のあり方を見直し、安定した情報の共有が可能になり、施設内がより安
定した。
③ 職員の能力発揮が安定したことで、先手に職務がまわるようになった。
④マニュアル作成
入所時からの利用者間とのルール作りを徹底する必要性を考え、入所者向けに『重要事項説明
書』を加筆、修正した。
職員向けに、業務マニュアル作りに取り組んだ。ある程度枠が出来る事により、入所者にか
えって安心感が生まれ、結果として施設が安定するであろうとの期待により取り組まれた。マ
ニュアルが出来る事により、新人職員を迎えた時に、仕事の引継ぎがより円滑となった。
2)職員の変化について
職員自身の関わり方が明確になったことで、施設、行政などの関係機関との役割分担を大きく
捉えていた処遇から、自立を援助する目的や時間、距離等個別に支援の幅を広げることができる
ようになった。まずカンファレンスを開く前に、担当と母と子と別に面談を重ね、役割分担をす
る、関係機関で世帯を支えるシステムができてきている。また、地域住民の協力もあり、民生・
児童委員の皆さんの「見守り隊」も効果を挙げてきている。民生・児童委員の方々と施設、行政と
の有機的な構造が築かれ、子どもが安心して暮らせる町作りが進んでいる。また、危険度の高い
状況の場合、警察との連携も可能になり、母子を守る体制作りが出来た。
3)職員の変化に伴うよい影響について
世帯の抱える課題は、世帯によって異なる。研修を受けたことにより、「今、その世帯にとって
一番必要な支援は何か」ということを職員が理解し、専門職が役割分担をしてその支援に取り組
むことが出来るようになった。そのため、母の不安が軽減し、母子支援がより充実した。
4)学童保育支援の変化について
特に学童期の子どもには、自主性を尊重し、子ども主導型への支援に考え方を修正した。子ど
も達の中に肯定感やエネルギーが生まれてきた。それは、計画し行動することで実現することが
培われた。
自主性を重んじるが、子ども達に対してわかりやすいルール作りをしていった。ルールの明確
化により、子ども達自身でその時々の場面での振る舞い等が落ち着いて出来るようになった。
支援にあたり、社会性、生活力、情操教育の 3 本柱を掲げ、それに基づき行事計画を立てた。行
事の実施には、子どもが中心になって進めるようにしたところ、子ども達の充実感、創造力が増
した。
40
謝意
この研修、カウンセリング、報告書作製にかかる費用はすべてゴールドマン・サック
ス証券株式会社の寄付金によるものです。
私たち母子生活支援施設の活動をより深くご理解頂いた寄付金は、何よりも重みの
あるものと受け止めております。
母子支援施設がこの様な形で支えられている事を今後も職員の心の支えとして、努力
して参りたいと思います。
職員一同心より感謝申し上げます。
社会福祉法人
たすけあいゆい
睦母子生活支援施設
41
職員一同