1 【2012年11月号】 FMやまびこ 西部 真弓 2 FM

1980年5月7日
第三種郵便物認可
2012年11月15日発行
KAS1386号
毎月1回15日発行
185系(157系あまぎ色風)臨時特急「そよかぜ」
大宮駅にて 2012 年 7 月 15 日撮影
【2012年11月号】
▼FMやまびこ
△FMやまびこ番外編
▼ノートンの映画大好き!
△自閉症児の親も一日にしてならず
▼本棚から
◆よこはま三歩 (小島
◇コラム
(保
西部 真弓
武本 全史
ノートン
momoe
西尾 紀子
あすか) ・・・ 8
一平)
・・・14
◇疑問符だらけの現場用語集
・・・ 9
◆後援会・編集後記
・・・20
マンやま
1
2
10
15
16
19
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第三種郵便物認可
2012年11月15日発行
祝!!床屋デビュー
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~見通しを持って生活する~
東やまたレジデンス
西部
真弓
Aさんは、東やまたレジデンスに入所して 10 年以上になる 30 代半ばの男性です。
時折みせる人懐っこい笑顔が印象的なAさんは、発語はありませんが、要求を伝えた
い時には、介助者の手を取ったり使う物を差し出したりして要求することがあります。
感覚が過敏な自閉症の人は、子どものころから爪切りや散髪が苦手な方が多くいま
すが、Aさんも散髪に対しての抵抗が強く、レジデンスに入所してきた頃は胸の辺り
まで髪の毛が伸びていました。子どものころから散髪しようとすると激しく抵抗し、
噛み付いてきたりするので、Aさんが寝ている間にこっそりと、だまし騙し切ってい
たこともあったようで、親御さんや学校の先生も苦戦していたそうです。
今回は、そんなAさんの床屋デビューに至るまでの道程をお伝えしたいと思います。
まず、Aさんがなぜ散髪に抵抗を示すのか、その理由を考えてみました。
仮説①
「いつ(のタイミングで)」「どこで」「何をする」「どのように」「いつまで」
髪をきるかがわからない。見通しがつかず、不安なのではないか
Aさんは普段から納得がいかないときや、変更が受け入れられないときに、声を出
して怒っていることがあります。そのときに介助者が無理に介入すると、噛みついた
り、つめを立てたりすることがあります。しかし、Aさんが納得いくように伝えたり
(後に説明するスケジュールや手順書等)、時間を置いて対応すると、抵抗なく受け入
れてくれます。Aさんは納得するのに時間がかかるようです。
仮説② 「散髪」の行為自体の苦手さ
自閉症の人特有の感覚的な問題(皮膚の感覚・音の感覚の過敏さ;顔にかかる髪の
毛の不快さ、うなじ付近の過敏さ、耳元で聞こえるバリカン・ハサミの音の不快さ、
等)です。Aさんは、耳元、うなじ付近は特に苦手なようです。
マンやま
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仮説③ 「散髪」という活動自体が、抵抗を示す活動になっている
Aさんはとても怖がりで慎重派です。例えば、注射は介助者が押さえないと激しく
抵抗します。しかし怖い要素だけでなく、形として抵抗している部分もあるように感
じられます。
「抵抗しないと始まらない」といった様子で、注射の場合は、当初は腕を
出すことに抵抗しつつも、止血バンド・消毒・・・と手順が進んでいくと諦めて、最
近では注射自体は介助者が押さえなくても行えるようになりました。
散髪も同様に、苦手さはありつつも、徐々に抵抗感が薄まりよい流れが出来ればよ
いのではないか、と考えました。
以上のような仮説から、Aさんが納得してスムーズに散髪ができるように、いくつ
かのステップを経て、最終的に「床屋」で散髪ができることを目標におきました。
■ステップ① 散髪の様子を実際に見てもらいながら行い、見通しを持ってもらう
今まで、だまし騙し行っていた散髪ですが、実際にAさんに洗面所の鏡の前に座っ
てもらい、切っているところを本人に確認してもらいながら散髪するようにしました。
鏡の前で実施することで、見えない状態で音だけ聞こえるよりは、バリカンが近づい
ていることが、見てわかったうえで行うほうが怖くなく、またAさんも何となく「今
どこを切っているか」
「あとどの程度で終わるのか」見通しが持ちやすくなり、抵抗も
少なくなっていきました。
また、人に噛み付くことを防止する意味合いで、散髪中は氷を口に含んでもらいま
した。(氷はAさんの好物でもあります)
何年間かは、この対応で順調に行えていたのですが、対応する職員が変わっていく
なかで、Aさんが散髪中にトイレに逃げ込んだり、散髪中の抵抗が増してきたりと、
対応が困難になっていきました。
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■ステップ② 「散髪部屋」で実施する ~手順書の使用~
それまでは洗面所の鏡の前で行っていた散髪を、「散髪専用の部屋(空き部屋)」で
行うことに変更しました。専用の部屋で実施することにより、Aさんに「どこで」
「何
をするか」をわかりやすくするとともに、トイレに逃げ込むのを避け、集中して散髪
できるようにしました。
さらに、Aさんが見通しを持てるように、「どこで」「何を」「どのように(順番)」
行うかを伝える手順書を使用しました。【写真①】
【どこで】実施する部屋にかかって
いるプレートの写真
【ケープを着る】ケープを着て、準備
します
【バリカン】散髪開始です
【ケープを脱ぐ】ケープを脱いでかご
に片付けたら終了です
【お部屋に戻る】作業場から戻ると
きにも使用しているカードです
【写真① 散髪部屋での手順書】
カードを上から下に取っていきま
す。
Aさんがカードを並び替えてしまっ
たり、違うタイミングで取ってしまう
ことがあるため、カードは介助者
が取っていきます。
散髪の手順書を使用し、回数を重ねるごとに、次第に落ち着いて散髪することがで
きるようになっていきました。
◆視覚的に伝える・見通しがもちやすい配慮◆
余談ですが、実は、これまでAさんは、生活の場面で手順書やスケジュール等は特に
使用していませんでした。
あるとき宿泊旅行に参加したのですが、レジデンスでの宿泊旅行の経験がなかったA
さんは、「宿泊」することに納得できず、なかなか布団に入って休むことができませんでし
た。その反省を受けて、翌年の宿泊旅行では、予定を『写真(または絵)カード』を使って
伝えてみました。すると、その内容をAさんはよく見ながら動いており、非常にスムーズに
参加することができたのです。
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■ステップ③ 床屋への移行の前段階として ~スケジュールの使用~
ステップ②の手順書の導入で、「どこで」「何をする」「どのように(順番)」は伝え
られましたが、
「いつ(どのタイミングで)」は、
『スケジュール』を通して伝えること
にしました。
スケジュールを導入する前は、実際に使うバリカンを見せながら心づもりをしても
らい、Aさんが動けたタイミングで実施していました。散髪に限らず、Aさんは納得
して動きだすまでに時間がかかるのですが、それまでは、その日の予定や活動の順番
を伝えることはしていませんでした。他の場面でも、Aさんが理解、納得していない
のに活動に促そうとすると、拒否したり動きが滞ったりしてしまうことがありました。
そこで、散髪の日に限らず、生活場面のスケジュールを、半日単位で示すことにし
ました。【写真②】
日常的にスケジュールを使用して見通しを持ちやすくなったことで、生活の中でA
さんがイライラすることが減り、活動にもスムーズに取り組めるようになっていきま
した。
【バリカン(散髪】の写真
【写真②スケジュール】
Aさんがカードを並び替えてしまったり、違
うタイミングで取ってしまったりすることが
あるため、スケジュールはカードではなく、
1枚に印刷された形態にしました。
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■ステップ④ 床屋デビューに向けて~手順書のリニューアル~
散髪専用部屋で、手順書とスケジュールを使用して半年程たち、落ち着いて散髪で
きるようになったタイミングで、目標にしていた『床屋デビュー』を計画しました。
まず懸念された点は、Aさんが「床屋で散髪することを理解、納得できるか」です。
散髪場所の変更に伴い、スケジュールの写真を『バリカン』から『床屋』にしました。
また、床屋の写真だけでは、行ったことのない場所ですし、
「何をするところなのか」
わかりにくいので、
「何をするか」を伝えるために、スケジュールと合わせて手順書も
みせて心づもりをしてもらいました。【写真③】
この手順書は、「どこ」に行って「何をするのか」「終わったらどうする(どこに帰
る)か」を伝えるもので、前段階でも使用していましたが、持ち歩けるように、普段
から休日の外出時に使用している形態と同様のめくり式にしました。形態は変えまし
たが、写真の内容は以前使っていた手順書と同様のものを使用し、Aさんが初めてで
もイメージしやすくしました。
また、床屋の活動が本人にとって楽しいものになるよう、床屋後のご褒美の意味合
いで、コンビニで軽食を購入する流れにしたので、床屋後に「どこに行くか(コンビ
ニ)」も、手順書に盛り込みました。(ゆくゆくは、ご褒美に買う物等もAさんが選べ
ればいいな、と思います)さらに実際に床屋で行うことも、別の手順書で示すことに
しました。
(ステップ②では、上から下に貼られたものを使用しましたが、Aさんが張
り替えることがあったため、同様のめくり式にしました)。【写真④】
【写真③ 「行き先」の手順書】
【写真④ 「散髪」の手順書】
床屋(どこに行く)
ケープを着る
髪を切る(何をする)
バリカン
ローソン(どこに行く)
はさみ ※新たに導入
買うもの(何をする)
ドライヤー ※新たに導入
部屋(どこに戻る)
ケープを脱ぐ
)
行く場所、髪を切る手順等が増えたので、手順書は「行き先(床屋⇔部屋)の手順書」と「散髪の
手順書」に分けて伝えることにしました。毎回、付添者と手順を確認してから床屋に出かけます。
マンやま
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■ステップ⑤ いざ!! 床屋デビュー
いよいよ、床屋デビューです。スケジュールと手順書を見せたところで、Aさんは
どこに行って何をするか、大方理解したようで、声を出しながら少し不機嫌な顔をし
ていましたが、Aさんの手を取り、いざ床屋に出発しました。床屋に入ることは非常
にスムーズでした。
手順書の内容で十分に理解できるのか懸念されたので、Aさんと一緒に他の利用者
も連れて行き、先にその方が切っている様子を見せ、Aさんには手順書を見せながら、
【実際行うこと】と【手順書の内容】を結びつけました。
そしていざ、Aさんの順番です。イスに座ることに時間がかかり、散髪中も激しく
抵抗しましたが、職員2人で両手を押さえ、なんとか散髪できました。
拒否があることは最初から予想できましたが、初回は両手を押さえ、良い流れ、取
り掛かりやすい姿勢を作り、成功体験を作ることに重点を置きました。
2回目は1回目に比べると抵抗感は半分ほどになり、4回目には自分でイスに座る
ことができました。また、レジデンスで散髪しているときはハサミへの拒否が強く、
使用できなかったのですが、はさみも『散髪の手順書』の中に盛り込み、Aさんに予
告しながら実施していくなかで、次第に抵抗することなく使えるようになりました。
今は職員1人が付き添い、手を押さえなくても殆ど抵抗することなく散髪すること
が出来ています。ニコニコと笑顔を浮かべて床屋に出かけ、ごほうびのアイスやジュ
ースを楽しんでいるAさんです。
また、今は生活アシスタント(アルバイトの介助者)に引き継ぎを始めており、A
さんが納得し、落ち着いて活動できるようになったことで、様々な人がAさんに関わ
れるようになりました。
■今回の取り組みを振り返って
結果的に、床屋で散髪するほうが、
「手順」
「場所」
「切る人」が毎回一緒なので、A
さんにとってもわかりやすく、慣れることが出来たのでしょう。また、手順書で示し
たことで、切る場所が変わっても、行うことは一緒だとAさんも理解できたようです。
そして何よりも、日常的にスケジュールや手順書を使い生活するなかで、散髪の日
に限らず、普段から、生活の見通しがつくようになったことで、変更等も以前と比べ
ると抵抗なく受け入れることが出来るようになりました。見通しがつき、安心が確保
されたためか、数年前のAさんと比べると、今はとても穏やかな顔つきになった気が
します。
マンやま
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そして今回の取り組みは、床屋の店主の方の協力があってこそ、実現できたとも言
えます。店主の方も、回を重ねるごとに慣れていくAさんを褒めてくれます。Aさん
の成長を、店主の方と分かち合える瞬間が、職員にとって喜ばしいひとときでもあり
ます。
地域の人々に、Aさんや自閉症の人への理解が広まり、施設に入所している自閉症
の人たちが、地域の人々の協力を得ながら、地域で生活できることに大きな意味があ
ると思います。
■最後に
自閉症の方と関わるには、観察力と同時に、コミュニケーションが苦手な彼らだか
らこそ、
「相手の立場に立って考える」支援者の想像力が大切である、と日々感じてい
ます。
自閉症の人たちの思い・行動の意味が理解できたとき、そしてこちらの伝えたいこ
とが伝わったときが、彼らと関わるうえで、たまらなくうれしい瞬間でもあります。
今後もAさんを含め、自閉症の人たちの生活の幅が少しでも広がるように、日々関わ
っていければよいなと思います。
よこはま三歩
はじめまして。今年の4月よりYOUに勤務している小島あすかです。
どうぞよろしくお願いします。
今回私の住んでいる相模原について少し紹介したいと思います。相模原市は横浜
市の隣にある市ですが、緑や公園が多く自然のあふれた街です。
私のおすすめスポットの一つとして、相模原市南区にある麻溝公園という公園があ
ります。
園内には、緑の三角屋根が目印になっているグリーンタワーと呼ばれる高さ55
メートルの展望塔があり、相模原の風景を上から堪能することが出来ます。天気の
良い日には横浜の方も見えるとか・・・。他にもふれあい動物広場や、アスレチッ
ク、四季折々の花を見る事のできる花壇などがあり、子どもから大人まで楽しめる
場所です。
また、相模原市には1年を通して四季にあわせた行事やお祭りがあります。春に
は相模原市民桜祭り、夏には相模原納涼花火大会、秋には相模ねぶたカーニバル、
スイーツフェスティバルなど、楽しいお祭りがたくさんあるので、機会があればみ
なさんも是非一度足を運んでみて下さい。
YOU 小島あすか
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~その46~ 目標と戦略
前回は、組織の理念について話をしました。理念があやふやだったりいい加減に取り扱われてい
たりすると、組織の進むべき方向を見失い、スタッフもバラバラになる危険があることを指摘しました。
今回は、組織の理念が明確で大切に扱われているとして、では、具体的に自分たちは何をすればい
いのか、どのように事業を展開していけばいいかを、目標と戦略という視点から考えてみます。
組織の事業目標としてよく掲げられるのは、「私たちは、〇〇年度には△△を実現します」という文
言です。年数を区切り、達成すべき事業内容を挙げるわけです。具体性を持たせるため、数値目標
を示す場合があります。「毎年ケアホームを1カ所作る」とか「地域就労を前年度より何%上積みする」
みたいな書き方です。数字で書けない場合は「推進します」「努力します」「検討します」といった文言
を入れて、前向きに取り組む姿勢を強調します(しかしそうやって、限りなく曖昧にして問題を先送りし
てしまうこともよくあります)。
最近はやりのマニフェストではありませんが、事業目標が設定され公表されるということは、組織の
覚悟としてそれなりの重みがあってしかるべきです。当然、それに向かって組織が一丸となって事業
が進められると思うのが自然です。しかし実際は、何年も同じ目標を掲げながら一向にそれは実現さ
れないとか、日々の現場の動きは組織の目標とは何ら関係なく淡々と進んでいる、という事例に出く
わすことがよくあります。時には、現場スタッフはこぞって組織が決めた目標設定に批判的で、サボタ
ージュの振る舞いをして目標実現の足を引っ張るケースも見られます。いったい何が問題なのでしょ
うか?
最近読んだ『良い戦略、悪い戦略』(リチャード・P・ルメルト;日本経済新聞社)という本に、そのヒン
トが見つかりました。組織が適切に目標設定し実現に向けて取り組んでいくためには、良い戦略が伴
っているかどうかが鍵になります。良い戦略には、<診断と基本方針と行動>からなるカーネル(核)
がきちんと備わっていると本書は説きます。つまり、現状を的確に分析し、これから取り組むべきポイ
ントや有効な方策が明らかで、スタッフの日々の行動にそれが反映されていることが戦略の必須条
件です。良い戦略があれば、トップダウンで重要な判断がくだされても、迅速に組織的な行動がとれ
るでしょう。逆に悪い戦略は、目標を列挙するだけで満足していたり、空疎な目標設定や重要な課題
を避け、あとは精神論で突き進むようなケースが当てはまります。悪い戦略では、スタッフのやるべき
ことは何ら示されず、あるいは場当たり的な対応でスタッフを疲弊させたりやる気をそいだりして、さら
に状況が悪化していくスパイラルに陥る可能性が大です。
良い戦略があって初めて、目標到達への具体的な道筋が見えてきます。そして、限られた資源(ス
タッフ、資金、設備、情報・・・)と時間的制約を上手に管理し、組織を束ね、目標に向けて着実に事業
を進めることがリーダーの役割です。目標を書きだしただけで事が成るわけではないことを、リーダー
はよく自戒すべきです。
<横浜やまびこの里専門員 自閉症eサービス代表 中山清司>
マンやま
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“ひとりひとり”の健康維持
ケアホームハウス G
武本
全史
■自己紹介
私は入職して1年目の職員です。短期間ではありますが、日中作業場で2ヶ月、ケ
アホームハウス G で約10ヶ月と、2つの場面で支援に携わっています。
以前は、一般の会社員で自閉症のある方の支援は言うまでもなく、福祉の世界には
縁のない生活をしていました。
私が自閉症のある方の支援に携わりたいと思ったきっかけは、息子が3歳児検診の
時に自閉症と診断され、地域の訓練会で支援する方々の愛情あふれる、子ども1人1
人の特徴を押さえた接し方を目の当たりにしたことでした。
そこで、私も自閉症のある方とその家族が暮らしやすい社会・環境を整備する支援
員になれば、現場で築いた知識と経験が息子の将来にも役立つのではないかと考えた
からです。
■ハウス G の紹介&課題
ハウス G では、男性6名の自閉症のある方々が共同生活をしています。開所は平成
12年ですので、今期で12年目を迎えます。開所当事は平均30歳前後だった利用
者も、現在は平均年齢40歳と中年真っ只中に差し掛かり、健康診断では年々成人病
の可能性を指摘されるようになってきました。
今回は、自身で健康管理をする意味の理解が苦手な利用者に、健康的な生活を送っ
てもらう為に、個人の特性を活かして無理のない範囲で運動などの健康対策に取り組
んでいる様子をお伝えしたいと思います。
■Aさんの健康維持
AさんはハウスGで最高齢の50代の利用者です。好きなことは、古き良き昭和の
歌謡曲を聴くことで、普段は懐メロのCDを聴いたり、TVを見たりしてのんびり過
ごしています。
本人から「これがしたい!ここが嫌!」ということを言葉で表現することはできず、
周りのスタッフは本人の表情や行動をみてそれらを推測しています。
(トイレに行きた
いなどの簡単な要求は言葉で伝えてくれます)
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A さんのケアホームでの様子として・・・
・口癖は「あのね~あのね~」で、独り言を言っていることが多い。
・笑顔になったり、しかめ面だったり状態によって表情がかわる
・暇な時間は基本的に居室でゴロゴロして過ごしている。
・長時間集中することはあまり得意でない。
→好きな歌謡ショーの番組も30分以上見続けることはめったにない。
ということがあります。
上に挙げたようにゴロゴロ過ごすことの多い A さんは、自分から体を動かす機会が
少なく、体重も肥満傾向にあります。毎日の生活習慣として体重が増えすぎないよう
次のような取り組みをしています。
■好きな事と運動を組み合わせる
Aさんは数年前からルームランナーを用いて5分間の運動をしていましたが、医師
から20分以上運動を続けないと脂肪が燃焼されないと指摘を受けました。
医師の指示のもと20分間のルームランナーでの運動を試行してみましたが、走っ
ている途中で何度も後ろを振り返ってしまい、集中が続かない様子が目立ちました。
スタッフ間で、Aさんの「長時間の集中は得意でない」といった特性に対してどう
アプローチすべきか考えたところ、好きな歌謡曲を運動に活かしてみようという結論
になり、CDを聴きながらルームランナーをしてもらうことにしました。
CDを聴きながらルームランナーをするようになってすぐに、本人の運動中の表情
も活き活きとし、時折鼻歌を歌いながら走るようになり、一工夫するだけでこんなに
変わるんだと驚きました。
まだ目に見えた体重の変化こそありませんが、現在はキョロキョロ後ろを振り向く
こともなく20分間の運動ができています。なにより本人の運動中の表情が良くなっ
たことが 1 番の収穫だと感じています。
好きな歌謡曲を聴いて走っています♪
マンやま
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■手順がわかると最後までやる特性を活かす
また、Aさんは集中が続きにくいこともあります。
その例として、たまに週末活動で料理の手伝い等の活動をしてもらっているのです
が、活動の手順やいつ終わりなのかが分からない為か、活動中にフラフラと関係ない
場所へ行ってしまったりして、最後まで活動することが苦手です。
逆に終わりが明確で手順が同じであれば最後までやり遂げることが出来るのです。
そのため上記の特性を活かして、次のような活動を日課に取り入れています。
①腰痛防止の体操
腰痛防止の為に整形外科で教わった体操を朝晩行っていますが、2ヶ月ごとの通院
で体操の方法や手順が変わっていくことが多く、その時は手順を伝えてもどう運動す
るのか分からないようで、とまどっている様な事が度々あります。
ただ、2週間ほど体操を続けると体操の手順が身に付くようで支援者が促さなくて
も自分で“1・2・3・4”とカウントしながら手順を最後まで行っています。
②ガイドヘルパーとの散歩
また、ガイヘルパーとの活動として北山田駅まで1駅歩き、折り返し地点でお茶を
して帰ってくるという事を続けています。
毎週同じルートの散歩でお茶を飲んだら帰るという事を繰り返す中で、活動の流れ
を覚えたようでトータル 1 時間半と長時間の活動ですが、現在ではガイドヘルパーを
先導して歩くこともあります。
散歩提示カード
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③ゴミ捨て
ケアホームでは、共同生活なので利用者の出来る活動は分担して担ってもらうこと
があります。Aさんも家事活動の一環としてゴミ捨てをしています。
集積所は距離的に遠くありませんが、毎日の生活場面で自然と体を動かすことで健
康が維持できるのであれば、これ以上のことはないと思いAさんに取りくんでもらっ
ています。
Aさんがゴミ捨てについてどう思っているかは分かりませんが、自分も皆の役に立
っていると自信をもってもらえれば良いなと思っています。
今日はプラごみだ!
④洗濯物干し
洗濯物干しは毎日の習慣になっているので、ハンガーさえ広げて用意しておけば、
後は衣類の入った籠をAさんに渡すだけで、居室から洗濯物を干す部屋に移動し、衣
類を干し終えたら居室に戻ることが出来ます。
他の利用者の分も干してもらっていて、積極的に10分ほど手伝ってくれているの
で、良い運動になっているのではないでしょうか。
キレイに干せま~す!
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■ 支援を通して気付いた事と私の想い
A さんの例を通して「その人の特性を活かして」運動してもらうことが大切だと気
付くようになりました。ここで挙げた活動は日常生活では決して珍しい活動ではない
と思いますし、ひとつひとつの運動量は少ないかもしれませんが、好きなことや得意
なことを活かして、自然と体が動かすことが出来れば理想的だと思います。
また、自分から「こうしたい!」といった要求を伝えることが苦手な利用者が多い
ので、何が正解なのか、得意なことの見立てを職員がする事は容易ではありません。
時には親御さんや日中作業場面の支援者、夜間生活場面の支援者の中で見立てが違う
こともあります。そんな時は親御さんや先輩支援員が言っているからその通りにすれ
ば良いという訳でもなく、
「本人にとって大事なことは何か」ということを第一に考え
て意見を出し合うことが重要だと思います。
親としての自分も、支援者から見た息子の見立てや支援に対する意見を客観的に受
け入れ、支援者と共に息子には今一番何が重要なのかを見出していきたいと考えるよ
うになりました。
~コラム~
はじめまして。今年の4月から東やまた工房に勤務している保一平です。
今日は、私の趣味でもあるサッカー、フットサルについて少しお話したいと
思います。
私は小学校の頃、地元のチームに所属していました。当時は特に好きでもな
く友達に誘われ小学校6年生まで何となく蹴っていました。本格的に興味を持
ったのは大学時代の頃です。友達に誘われてチームを作り様々なチームと対戦
してきました。その中で勝利した時の喜び、負けたときの悔しさを常に一緒に
味わう事で「仲間」として一体感が生まれたことを感じました。サッカー、フ
ットサルはドリブルやパスを駆使してゴールし勝敗を競うものなので個人の
スキルも重要です。しかしサッカーやフットサルを通じて皆でやり遂げる事の
素晴らしさ、チームワークの大切さを学びました。
人生は常に学びの連続です。今後も仕事、プライベート全てにおいて日々精
進していきたいと考えています。どうぞよろしくお願いします。
東やまた工房
保 一平
マンやま
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ノートンの 《映画、大好き!》
「鍵泥棒のメソッド」(2012年)
だんだんと寒くなってまいりましたが、最近
はベルギービールにこっています。ビール
はラガーとエールの 2 種類あります。それぞ
れ発酵させる酵母が違います。ラガー酵母
とエール酵母。日本のビールはほとんどが
予定がとても整然と記入されていた。そこに
は相手もいないのに結婚の予定まである。
手帳を確認し、彼女は自分の結婚について
会議の場で発表。部下に相手探しの協力を
頼んだのであった。その頃、売れない役者
ラガーです。ヨーロッパ(特にイギリスとベル
ギー)はエールが主流です。エールの方が
高温で発酵させ、香り高くなると言われてい
の桜井武志(堺雅人)は何もかも思ったよう
にいかず、散らかった自室で自殺を試みる
がそれも失敗。財布の中には僅かな所持金
ます。私が好きなのはベルギービールでも、
樽の中で長期熟成させて作られるランビッ
クビールです。樫の樽で 1~2 年熟成させ、
ワインのようなフルーティーな香りとほんの
り酸味のある味わいが何とも言えないので
す。ベルギービールを飲みながらチーズを
つまむ。そんなサイコーなひと時を楽しんで
と銭湯の無料券。彼はそれらをポケットに突
っ込んで銭湯に出かけることにした。またそ
んな頃、一仕事終えた伝説の殺し屋コンド
ウ(香川照之)は渋滞に巻き込まれていた。
イライラしながら腕時計を見ると血しぶきで
汚れている。ふと外を見ると銭湯の煙突が
見えた。真っ黒なスーツで身を包んだ彼は
いるノートンです。
さて、映画ですね。2012 年を少し振り返っ
てみました。昨年に比べると少しペースダウ
ンしていますが、それなりにたくさんの映画
を観ています。ここ何年かの流れと同様、今
年も洋画にパンチのある映画が少ないです
ね。反対に邦画の方が面白い作品が多い
ように感じました。今年も残すところ 3 ヶ月弱。
年末に向けて面白そうな映画がラインナッ
プされているので、期待しましょう。というこ
銭湯に向うことにした。銭湯で売れない役
者と伝説の殺し屋が出会い、そこに結婚を
ゴールに突き進む女性が加わって物語は
意外な方向へ進んでいくのだが…。
あんまりストーリーを書きすぎると観た時
の面白さが半減するのでこれぐらいで。とに
かく面白かったです。ずっと笑っていたよう
な気がします。役者陣もサイコーでした。映
画ではなく、舞台にしても面白い作品になる
だろうと思います。監督は内田けんじさん。
とで、今回は勢いのある邦画で最近観た
「鍵泥棒のメソッド」を紹介します。では簡単
にストーリーを…。
デビュー作の「運命じゃない人」は観ていな
いですが、2 作目の「アフタースクール」は観
ました。これもどんでん返しのある映画で面
白かったです。この監督の作品は今後も目
が離せませんね。本当に楽しい作品です!
雑誌社で編集長として働く水嶋香苗(広末
涼子)。几帳面な彼女の手帳には、今後の
マンやま
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2012年11月15日発行
KAS1386号
自閉症児の親も
一日にしてならず。
★momoeさん紹介★
知的障害のある人の地域生活支援をする特定非営利活動法
人の理事です。首都圏通勤圏にある某市に夫と夫の母親(要
支援 2)、専門学校 1 年の長男と所属法人で新規に設立した
作業所 3 年目・21 歳で知的障害と自閉症がある(療育手帳で
最重度、障害程度区分 6)の次男と暮らしています。
薬でないほうの不安定対策
7月2日
ペンネームは
momoe
の巻
春先の不安定(不眠、多動)から必要があると考えられた作業のステップ
アップを考えるため、昨年度オープンした喫茶と菓子製作の作業所に職員付きで出張
する。
初日なので、まずは場所になれるため午前中の作業はいつもしているものを持って
いって行い、午後はメンバーになれるため作業所周りの清掃を一緒に行う。いつもの
場所ではルーチンになっていて本人が「いらない」、と切ってしまってスケジュールを
『卒業』していたが、この出張に際しては活動場所も含めてきちんとスケジュールを
作成して臨んだ。午前中は個室での作業なので大変集中したとのこと。職員もマンツ
ーマンだったので、普段見過ごしていた次男からの「サイン」によく気が付き、普段
どれだけ見過ごしていたかよくわかったと言っていた。また午後の顔合わせでは利用
者に女性が多く、また言葉でのコミュニケーションをする方が多いので、非常にテレ
まくっていたらしいが、年長の利用者に作業をリードしてもらったり、ほめてもらっ
たりして大変満足した表情をしていたとのこと。
8月上旬まで何回か職員交代して一人ひとりが付いて行き、それぞれの感想を聞い
たが、大勢のなかの次男、作業を率先している次男、我慢強い次男というだけではな
い姿がよく見えたし、作業をきちんと組み立てることの大切さがわかったと言ってい
た。大幅な変更というまでにはいかないが、作業の組み立てや新しい作業の開拓など
は少しずつできている。
マンやま
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1980年5月7日
第三種郵便物認可
2012年11月15日発行
KAS1386号
7月6日 7日に東北の重度障害者施設に支援に行っていた重度重複の施設長の方の
報告と私たちが今できることを考える集会の宣伝のために地元の FM 局に出演。パー
ソナリティーの女性も食料の運びこみなどの支援を月に1回はしているということで
充実した30分の放送だったと思う(?)土曜の午後という時間帯なので、出席でき
る人は少ないと思うが、聞いてくれた人が少しでも私たちの知っていてもらいたいこ
と(「障害」のある人も同じ避難所に行く、ということ)を頭の片隅に残しておいても
らえればと思う。
7月13日 朝実家の母から電話があり、父が昨夜心不全で入院したとのこと。昨年
夏は一過性の脳梗塞でやはり入院しており、新潟に近い長野県生まれは夏に弱いの
か・・・などと思う(たぶん関係ないと思うけど〈笑〉高齢と水分不足か)。昨年の脳
梗塞で少し認知症的な状態になっている(それから過度の人みしりがある)父は夜中
にトイレにナースコールを押さないで一人で行き、病室に帰れなくなったとのことで、
母は夜一緒に泊まるように言われたとのこと。結局心不全の原因ははっきりしないま
ま(カテーテル挿入してもつまりはない、心房細動と不整脈だろうとのこと)、頻脈発
作が治まったので1週間足らずで退院したが、母の泊まり込みは最後まで続いた。入
院時コミュニケーション支援の必要性を訴えている私たちだが、こんなところにも必
要性が・・・!!
7月20日
市内の飲食の事業所が就労移行と継続 A/B を立ち上げていたことが分
かった。まだ県に認可があった昨年度末に立ちあげていたらしく、商工会議所とだけ
話をしていて福祉関係のほうには何も知らせていなかったらしい。そんなことで利用
希望者が訪ねていくわけではないので、養護学校の進路担当に募集を持ちかけてやっ
とこちらのほうに存在がわかったのであった。長年障害者雇用をしている事業者が雇
用報奨金より自立支援法内施設にしたほうが「儲かる」ということで移行し認可され
ている今日この頃、ある意味「商業的視点」は必要だと思う反面、安易な考えすぎや
しないか、とも思うんですけど・・・利用者の状況はどうなんだろう・・・ふうぅ
7月26~28日 定例の2泊3日短期利用。26日夜施設から電話があり、何かあ
ったかと驚いて出ると、次男のズボンに入っていた携帯電話に気づかず洗濯機に入れ
てしまったとのこと。「いつもお持ちでしたっけ?」というので、「いつも持っている
し、いつもは施設に着いたら職員がチェックして携帯と定期は小袋に入れてかばんに
しまっていてくれていたんですけど・・・」と答える。しばらくして短期利用担当者
からも電話があり、壊れているようだったらこちらで取り換えさせてもらいます、と
のこと。帰宅後スイッチを入れると入るしGPSも大丈夫なので、大したことではな
かったのだが、ちょっとなあ・・・物だからいいけどなあ・・・
マンやま
17
1980年5月7日
第三種郵便物認可
2012年11月15日発行
KAS1386号
7月28日 プール遊びの訓練会の余暇でボリショイサーカスを見に行く。車椅子ユ
ーザーのメンバーもいるので最前列。次男はいつもの通り始まるまでは冷たーい手を
して私の手を握っていたが、売店で買ったポップコーンを食べ始めるころには舞台?
を見られるようになってくる。いちばんよく見たのは猫の平行棒かなあ・・・馬の曲
乗りとか空中ブランコなどはほとんど見ていなかったなあ・・・いや、見てないよう
でいてみているのが彼らだ・・・
8月1~3日 夏休み家族旅行。今回は「鉄」の私と長男の趣味で「あずさ」と「長
野新幹線」利用、現地はレンタカーという2泊3日。松本城、美ヶ原高原、安曇野、
善光寺、戸隠中社奥社、小布施、と道の駅。長野市中心部は自宅近辺より気温が高く
渋滞もあり、旅行気分にはならなかったが、ちょっと高いところに行けば涼しく次男
や私の歩行速度は上がる一方であった・・・よく食べよく歩き温泉も堪能し、良い旅
行でした。「おみそ」は1日朝の中央線人身事故で、到着が2時間遅れだったことと、
就職試験(2次面接)が急に入り、2日目途中で帰宅した長男(しかも残念な結果)
・・・
マンやま
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1980年5月7日
本棚から
第三種郵便物認可
2012年11月15日発行
KAS1386号
「新・水滸伝」全4巻
吉川英治
著
講談社文庫
著
集英社文庫
「水滸伝」全19巻
北方謙三
中学生の時に、クラスで三国志ブーム
が巻き起こり、男子のほとんどは吉川英
治の「三国志」を読んでいました。僕は
つき」
「ならずもの」と言われる人たちで
す。それが官軍と戦っていく訳ですから、
庶民の間で人気が出たのも頷けます。
その流れで吉川英治の「新・水滸伝」を
読んで夢中になり、水滸伝ブームを起こ
そうと画策しましたが、誰もついてきま
せんでした…。
水滸伝は、中国の説話を編集したもの
ですが、説話として語り継がれていくう
ちに話が強引にまとめられてしまった部
分があり、話の前後関係や主人公たちの
性格付けが曖昧で、とても分かりにくく
破綻した物語であるという側面を持ち合
日本でも色々な訳が出ていますが、個
人的にオススメなのは吉川英治の「新・
水滸伝」と北方謙三の「水滸伝」です。
「吉川版」は単純な翻訳版に比べて表
現が非常に活き活きとしていて、中国の
風景を感じられ、時に艶めかしく、子ど
もの頃に読んだ僕にとっては、大人の世
界に足を踏み入れたという妙な感覚を得
た記憶が強烈に残っています。この「新・
水滸伝」は未完で、吉川英治の遺作とな
わせていますので、そのせいなのか、万
人には受け入れられにくい物語であると
言えます。
それでも、江戸時代には水滸伝の方が
三国志よりも人気が高い小説であったと
言われており、滝沢馬琴がそれに触発さ
れて「南総里見八犬伝」を書いたのは有
名な話です。
水滸伝は、中国の宋を舞台にした物語
で、封じ込められていた108匹の魔物
ってしまっているのが、非常に残念です。
一方「北方版」は1999年から20
05年まで連載され、原典を基にしなが
らも、その中の矛盾点や破綻している部
分を、新たな設定や人物たちを登場させ
ることで整合性をつけ、リアリティを持
たせる事に成功しています。これはもう
「水滸伝であって水滸伝でない」と言え
るかもしれません。翻訳版の水滸伝を読
んで、
「面白くない」と思った方、挫折し
が解き放たれ、その後人間に生まれ変わ
って梁山泊という山塞に集結し、悪政を
布く宋と戦ったのちに帰順し、宋の先頭
に立って隣国と戦って滅んでいく、とい
う内容です。
三国志と違い、主人公たちの多くは軍
人ではなく一般庶民で、「無頼漢」「ごろ
た方にこそ読んで欲しい作品です。
主人公だけで108人いるので、名前
が覚えられるか、という心配があります
が、北方謙三の描く強烈な個性を持った
キャラクターたちですので、むしろ忘れ
られません。ご安心を。
<津村 康>
マンやま
19
1980年5月7日
第三種郵便物認可
2012年11月15日発行
KAS1386号
△▼横浜やまびこの里後援会▼△
横浜市内で自閉症という障害を持つ人たちが地域で生活をするためのサ-ビスを、一つずつ
作り出していく活動をしている『社会福祉法人横浜やまびこの里』の活動のバックアップを目
的としています。
入会された方には「マンスリーやまた」「後援会報」をお届けします(郵送)
会員種別
会費
入会時期
(定時入会)
会費納入方法
振込口座
(郵便振替)
個人会員
法人会員
1口 3,000円/年
1口 10,000円/年
7月または1月
(ア)7月入会者
7月~12月入会者は当該年度の会費を納入し、次回からの会費は
翌年の7月に納入し、以後毎年7月となります。
(イ)1月入会者
1月~6月入会者は当該年度の会費を納入し、次回からの会費は翌
年の1月に納入し、以後毎年1月となります。
横浜やまびこの里後援会 <口座番号> 00240-3-76163
★後援会のお申し込み・お問い合わせ★
横浜やまびこの里 後援会事務局
TEL045(591)2728
~編集後記~
10 月 1 日から障害者虐待防止法が施行されました。それに合わせて、横浜市でも
虐待防止センターが開設され、支援者を対象とした研修会があちこちで開催されて
います。横浜やまびこの里でも 9 月末に全職員を対象とした研修が行われました。
その中で「小さな不適切な支援の積み重ねから虐待は始まる」という話がありまし
た。虐待は決して他人ごとではなく、身近で起こり得ることなのかもしれません。
支援者それぞれが、日々の仕事の中で「適切な支援となっているか」考え続ける必
要があります。(桜井美佳)
表紙写真 ペンネーム:国鉄福私鉄道(こくてつふくしてつどう)
編
集 社会福祉法人横浜やまびこの里 (編集責任者 小林信篤)
横浜市都筑区東山田町 270 番地
TEL.045-591-2728/FAX.045-591-2768
法人ホームページ http://www.yamabikonosato.jp/
印
刷 ワークステーション 横浜市神奈川区西神奈川 1-14-6-1F TEL.045-316-5710
発 行 人 神奈川県自閉症児・者親の会連合会 代表者 内田照雄
厚木市愛甲 2-11-6-109
購読料1部 50円(税込み)
マンやま
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