第55回 中小企業から見た会社法改正 - 弁護士法人 神戸シティ法律事務

2014 11 17 mon.
兵庫県版
第三種郵便物認可
03
弁護士法人神戸シティ法律事務所
弁護士 高島 浩
(兵庫県弁護士会所属)
第55回
中小企業から見た会社法改正
1 改正会社法は本年 6 月20日に成立し、同月
本制度が適用される子会社は、親会社の総
27日に公布されています(施行日は公布の日
資産に占める子会社株式の帳簿価格の割合が
から 1 年 6 カ月以内)。
20%を超えるものに限られますが、グループ
多くの方は、会社法の改正については上場
企業を対象としたものであり、中小企業に
とっては関係がないと考えておられるかもし
れません。確かに今回の改正は、監査等委員
会社内の内部統制がこれまで以上に求められ
ることになります。
3 もうひとつは、スクイーズアウト(特別支
配株主による株式等の売渡請求)の制度です。
会設置会社制度の導入、社外取締役不設置理
この制度を利用することによって、会社の
由に係る説明義務の導入、社外取締役及び社
株式の90%以上保有している特別支配株主
外監査役の要件の変更など、公開会社や大会
は、少数派株主の株式を強制的に取得できる
社を念頭に置いたものが中心となっていま
ようになりました。またこの制度は、株主が
す。
亡くなって会社にとって好ましくない相続人
しかし、中小企業にとっても影響の少なく
ない制度も幾つか導入されています。
今回は、その中から二つの制度をご紹介し
ます。
が株主となった場合、その相続人から強制的
に株式を買い取る方法としても有用です。
現在でも、会社法には相続人に対する売渡
請求の制度がありますが、あまり利用されて
2 まず、多重代表訴訟制度です。
いません。なぜなら、現行法の制度は定款に
中小企業でも、株式が多数の株主に分散し、
定めを置いた会社が、株主総会の決議を得て
会社の支配権を巡って紛争に発展することが
会社が相続人から株式を強制的に買い取ると
あります。そして、少数派株主が、多数派株
いうものですが、相続人は株主総会において
主によって選任された経営陣による経営が不
議決権を行使できないため、もし大株主が亡
当であり会社に損害を与えているとして、経
くなった場合は、少数派が会社の資金で多数
営陣に対して損害賠償請求の訴訟を起こすよ
派の株式を強制的に買い取ることができてし
うに会社に求めることがあります。
まうという不都合が生じてしまい、使い勝手
このような株主代表訴訟の制度は現行の会
社法にも存在していますが、今回の改正で
が悪いからです。
今回新設された制度を利用すれば、多数派
は、100%子会社に発生した損害についても、
株主が少数派株主から株式を買い取ることが
親会社の経営陣が責任を問われ、株主代表訴
でき、現行制度のようなデメリットもないた
訟の対象となることが明らかにされたので
め、今後利用されるケースは増えていくもの
す。
と考えられます。