K中間子飛崩壊実験用 溝付プラスチックシンチレータの シミュレーション

K中間子飛崩壊実験用
溝付プラスチックシンチレータの
シミュレーションによる性能評価
防衛大 原幸弘、新川孝男、松村徹
背 景
飛崩壊で
K+→π+ννの統計精度向上を狙う実験
主要B.G.
K+→π+π0
バレルvetoカウンター
10GeV/c
(分岐比21%)
2γ
1.47
+1.30
-0.89
×10-10
断面
π+
π0
γは0~10GeV
分岐比は
~10m
γ
K+
静止崩壊実験で
3evevt観測され、
~2m
γ
各シンチレータ板は、鉛板と
交互に積層する。
サンプリングカロリメータ
PMT
~40cm
真空隔壁を介して波長変換
ファイバーで読み出し
要求条件
①シンチレータを大量かつ安価に入手可能
・射出成形シンチレータを使用
・読み出しに波長変換(WLS)ファイバーを使用
・ファイバーを埋める溝も射出で成形可能(機械加工不要)
②低エネルギー ( MeV程度 ) のγでも十分検出可能
・前回発表した測定結果によれば、最も単純なファイバー
読み出しでも 30 pe/MeV 程度の光量が得られる
今回の目的
シミュレーションにより、集光の機構を明らかにする。
射出成形サンプルと
実験により得られた光量
溝付射出成形シンチレータ
10mm
1.5mm
5mm
1.2mm
15cm
発光波長
15cm
母材
蛍光剤および
波長変換剤
420nm
アクリル 10%
ポリスチレン 90%
(MS樹脂)
母材1kgに対し、
ターフェニル 1.5%
POPOP 0.05%
測定内容
PMT
FIBER
REFLECTOR
SILICON
GREASE
H3178-51
(HAMAMATSU)
PSFY-11 SJ
(KURARAY)
LUMIRROR E60L
(TORAY)
7.5cm
PMT
8cm
OKEN6262A
(OKEN)
• 溝に沿って 15 本のファイバーを配置、片側読み出し
• 計算と比較するためのデータ
①裸の場合
②反射材で4面覆った場合
(a)15本全体での光量
(b)各1本ごとの光量
ファイバー読み出しの測定結果
15本をまとめて読み出した場合、
①裸のシンチレータで 15.4 pe/MeV
②反射材付きで
28.2 pe/MeV
各ファイバーの光量は、下図のように分布
光量[pe/MeV]
反射材付きの
場合
裸の場合
この位置に線源
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
1
2
3
4
5
6
7
8
fiber No.
9
10
11
12
13
14
15
集光率計算シミュレーション
発生光子数→観測光電子数の過程
D :観測光電子数
S :発生光子数・・シンチレータの性能による
ε1:ファイバーの集光率
ε2:ファイバーの変換効率
ε3:ファイバーの捕獲効率・・ 5 %
ε4:ファイバー中での減衰・・ 95 %
ε5:PMTの量子効率・・ 16% (波長 500 nm)
D = S × ε1 × ε 2 × ε 3 × ε 4 × ε 5
これらに着目
集光率の計算モデル
裸のシンチレータ
透過 荷電粒子 ファイバー
(屈折)
吸収
シンチレータ
吸収
光子発生
反射
反射材付きシンチレータ
全反射
反射材吸収
反射材
による
反射
全反射
光子発生
シミュレーション上の仮定
• 吸収過程
– シンチレータ内での熱吸収
– 反射材表面での熱吸収
• 傷等による反射損失
– 全反射条件を満たす場合でも、 ある確率で透過
(全反射効率)
表面の傷等
使用したパラメータ
• 各物質の屈折率:
シンチレータ 1.57
グリース
1.42
ファイバーコア 1.59
空気
1.00
• ファイバーコアでの光子吸収率:
• 反射材の反射率:
97%
• シンチレータ内の減衰長: 50 cm
95%
集光率計算の実行
①溝なし直方体モデル
・8 mm×5 mm×150 mmの角柱
・光子が柱の先端に到達する確率を計算
・実測値との比較により、発生光子数を推定
②溝付き板でのファイバー読み出しモデル
・150 mm×150 mm×5 mm(溝付き)の板
・光子がファイバーに吸収される確率を計算
・実測値との比較により、ファイバー集光率を推定
溝なし直方体モデルと実測の比較
光電子数[pe/MeV]
250
測定値
200
100%
150
97%
100
全反射効率97%を選択
90%
50
0
0
20
40
60
80
100
120
140
距離[mm]
このとき発生光子は
6000±500 photon/MeV 程度
H3178-15
セットアップ
5mmφコリメータ(真鍮)
PMT
接続面はグリース
OKEN6262A
射出成形シンチレータ
Sr90β線
8mm×5mm×150mm
ファイバー読み出しモデルと実測の比較
15本読み出しの集光率は、裸のシンチレータで 34%
反射材付きで
60%
これらの比 60/34 = 1.8 は、観測光量比 28.2/15.4 = 1.8 と一致
各ファイバーごとの集光率分布と測定による光量の分布もほぼ一致
光量[pe/MeV]
10.0
8.0
反射材付きの場合
6.0
裸の場合
4.0
2.0
0.0
1
2
3
4
5
6
7
8
fiber No.
9
10
11
12
13
14
15
ファイバー読み出しの機構
S : 発生光子数・・ 6000±500 photon/MeV
ε1:ファイバーの集光率・・ 34% (60%)
※括弧内は反射材付き
D = S × ε1 × ε 2 × ε 3 × ε 4 × ε 5
右辺に得られた値を代入すると、
6000±500×0.34(0.60)×0.05×0.95×0.16
=14.2~16.8 (25.1~29.6) pe/MeV
これは実測値 15.4 (28.2) pe/MeV と一致
また、この結果からするとファイバーの変換効率は 90% 以上
まとめ
まとめ
• 射出成形シンチレータの発光量は、6000 photon/MeV 程度
• ファイバー集光率は、34(60)% で測定をほぼ再現
• 反射率は集光率への影響が大きい
• ファイバーの変換効率は、今回の結果からして90%以上
今後の予定
・大型の板について集光率をこのモデルで計算
・ファイバーの変換効率を直接に測定
射出成形シンチレータ(一般的性質)
成形方法
射出成形
キャスト成形
(標準的なメーカー製)
成形方法の概要
性 質
・ポリマーのペレットを加熱流動化(200℃程度)
・光量、透明度やや低い
・型に流し込んで成形
・型の設計に応じた自由な形状
・型内でモノマーを重合して成形
・工程は比較的低温(重合熱程度)
・仕上がりは平坦な形状
・光量、透明度に優れる
・機械加工が必要
射出成形法の模式図
ポリマーペレット
金型