イ イヌ ヌワ ワシ シ ~ ~そ その の現 現状 状~ ~ イヌワシは主に北半球の山岳地帯や開けた草原地 帯に生息する大型の猛禽類の一種です。日本では北 海道から九州の山岳地帯に生息していることが確認さ れていますがその数は決して多くありません。 種の保存法により国内希少野生動植物種(国内で 絶滅のおそれのある種)、環境省のレッドリスト絶滅危 惧ⅠB 類(近い将来における野生での絶滅の危険性 が高い種)などに指定されています。また、国の天然 記念物でもあります。 イヌワシは主にノウサギやヤマドリなどの生きた獲 物を食べます。ときにはカモシカなどの死体を食べる こともあります。上空から獲物を見つけると急降下して 鋭い脚の爪で獲物を捕らえます。 会員による全国各地での調査によって 231 箇所の 登録、150 つがいの生息が確認されています(日本イ ヌワシ研究会 2011 年度集計データより)。未調査地 域を考慮しても、 全国で約 500 羽と推定しています。 本会のまとめによると繁殖成功率は調査開始時 の 1980 年代初めは 50%程度でしたが、1990 年頃か ら、20~30%という低い値で推移しています。 現状のままでは個体群を維持することが難しく、 絶滅の危機に瀕していることを示しています。 繁殖成功率低下の原因は主に生息地における人 工林面積の拡大や生息地周辺の開発などの環境変 化、それに伴う餌動物の減少などによるものと推定 されています。 イ イヌ ヌワ ワシ シ ~ ~生 生活 活サ サイ イク クル ル~ ~ イヌワシは晩秋から繁殖期に入ります。主に岩壁の 岩棚に巣を造ります。巣は条件がよければ数年から 数十年使われます。 その後、最も寒 い1月から2月に かけて産卵し、主 にメスが抱卵しま す。この間、 オス はメスへのエサ運 び、巣の周辺で侵 入者などに対して イヌワシの親鳥とヒナ の監視活動を行な います。 3月にヒナがふ化すると、オスはヒナの分の食物を 持ってくる必要があるため、忙しくなります。食物を食 べてヒナはどんどん大きく成長します。 ヒナの成長に伴い必要な食物の量も増えるためオス だけでなくメスも狩りに出ます。 ヒナは5月中旬から 7 月上旬にかけて巣立ちをしま す。 巣立ち し た幼鳥は、 秋ごろまで は親ワシか ら食物をも らったり、 狩の方法を イヌワシの幼鳥 学んだりし ながら、独り立ちの準備をします。 そして、親ワシが繁殖期を迎えるころには、若ワシと して親の縄張りを出て旅立って行きます。 日 日本 本イ イヌ ヌワ ワシ シ研 研究 究会 会の の活 活動 動 日本各地で個人や小グループでイヌワシを調査し ていた研究者が、1980 年に滋賀県の鈴鹿山脈に集ま り、合同でイヌワシの行動調査を行いました。 これを機会に、イヌワシの研究と保護には全国的な 協力体制と情報交換が必要であることがわかり、翌年 の 1981 年 5 月、日本イヌワシ研究会が設立されまし た。 日本イヌワシ研究会は絶滅の危機にあるイヌワシ の調査研究と保護を行う民間研究者による全国組織 です。イヌワシの生息繁殖状況調査を基本とし、会員 間や国内外の研究機関と情報交換を行い、イヌワシと その生息環境の保全に取り組んでいます。 研究会の目的と主な活動 イヌワシ保護のため、生態研究、生息地における保全活動 を継続することが私たちの責務だと考えています。 ◎調査・研究活動 ・全国イヌワシ生息・繁殖状況調査 ・生態、生活史の研究 ・会員の相互連携による広域的な調査の実施 ・生息地における環境改善活動 ◎普及啓発活動 ・機関誌「Aquila chrysaetos」の発行 ・保全シンポジウム、講演会の開催 ・学会発表、雑誌投稿 ・イヌワシの生息地保全に向けた提言の発信 ・協働事業の展開・社会貢献活動とその広報 研究会ではイヌワシの保全に志が高く、フィールド調査を行な っている人に対し、会員への推薦を行なっています。 イ イヌ ヌワ ワシ シに に関 関す する るデ デー ータ タ イ イヌ ヌワ ワシ シ ~ ~生 生息 息環 環境 境の の保 保全 全に に向 向け けて て~ ~ イヌワシのプロフィール 名 前 名前の由来 和名 イヌワシ(狗鷲) 狗鷲の狗は天狗の狗。各地の天狗伝説の正体はイ ヌワシなのかもしれない。 英名 Golden Eagle 頭の後と翼の一部が金色をしていることからゴール デン(金)イーグル(鷲)という。 学名 Aquila 本当の鷲という意味 chrysaetos 生息地 北海道、本州、四国、九州の山地帯(近年、四国には定着ペアはいないようだ) 行動圏 21-237km2(平均すると60k㎡ *近年の富山地区の調査では平均160-170k㎡) 身体の大きさ 全長75-85cm、翼開長175-210cm、体重3-5kg (メスはオスよりも大きい) 食 物 ノウサギ、ヤマドリ、ヘビ、キツネ、テン、カモシカなど 繁殖成功率 30 年(1981~2010 年)の推移と巣立ち雛数 ダム建設やリゾート開発、高速道路網整備などの 大規模な開発、単一樹種による大規模な植林とその 後の管理不足などによりイヌワシの生息環境は悪化 していす。イヌワシの生息に適した環境が急速に減 少しているのです。 地球温暖化対策として全国各地に立地されるよう になった風力発電施設もイヌワシの生息には影響が あります。 イヌワシは食物連鎖の頂点に位置する種です。そ のため多様な自然が保たれている場所にだけ生息す ることができる鳥です。言い換えれば、イヌワシの 生息する場所には多様な自然があり、私たち人間に とっても大切な環境であると言えます。 イヌワシは私たち共有のかけがえのない生物であ り、次の世代に引き継いでいかなければならない、 すばらしい自然資産です。イヌワシの生息環境保全 は、地域の生物多様性の保全に繋がります。 Golden Eagle ~豊かな自然環境を未来に~ 日本イヌワシ研究会 事務局 〒170-0011 東京都豊島区池袋本町 2-28-13 TEL 090-7739-7761 FAX 03-3986-6639 日本イヌワシ研究会では、個人、企業等からの寄付金を募っ ています。 振込先 郵便振替 01030-9-84066 日本イヌワシ研究会 寄付金は ホームページ http://srge.info お問い合わせはホームページからもどうぞ イヌワシの研究・保全活動、自然保護活動、社会貢献活動に 活用させていただきます。 写真・文の無断転載・無断転用を禁じます。 (20150227 版) 日本イヌワシ研究会 The Society for Research of Golden Eagle
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