不動産資産を考慮した最適資産配分に関する研究 80024622 菊地 睦

開放環境
科学
80024622
キクチ
アツシ
菊地 睦
不動産資産を考慮した最適資産配分に関する研究
機関投資家は、常々、安定的により多くの運用利回りを確保することを目指してお
り、自己が保有する資金を、性質の異なる複数の資産に、適切に配分する必要がある。
近年の日本における金融環境の変化の中で、機関投資家は投資対象を拡大することが
可能になりつつある。新たな投資対象が、従来からなじみの深い資産である株式や債
券と低い相関関係にあれば、より高い分散投資効果を受けることが可能になる。そし
て、新たな投資対象の中でも、不動産資産への注目が高まってきている。
しかしながら不動産投資に関する問題点として、株式や債券への投資に比べて、売
買価格や運用利回りに関する情報を、入手することが困難であることが指摘されてい
た。株式であれば、東証株価指数等の投資インデックスが投資に際しての判断材料と
して利用可能であるが、不動産投資については、投資判断に利用可能な市場データは
極めて限られているのが現状であった。すでに米国においては不動産資産への投資に
ついて、株式や債券等の他資産と比較をするために、不動産投資の収益性をインデッ
クスによって把握することが一般化している。しかしながら、不動産資産からの運用
利回りデータが入手しにくかったこともあって、わが国における不動産資産を考慮し
た最適資産配分に関する分析はほとんど発表されていない。
そこで本論文では、1996 年に日本で初めて公表された不動産インデックス(住生総
研不動産インデックス)のデータを不動産資産の利回りとして用いて、機関投資家に
とって代表的な投資対象である株式・債券と資産特性の比較をおこなう。さらに、平
均・分散モデルを用いて、最適ポートフォリオを構築し、不動産資産に投資が可能な
場合と、不可能な場合との違いについて分析をおこなう。
本論文の数値実験を通して、ポートフォリオの資産クラスに不動産資産を組み入れ
ることは、一定の効果があることが確認できた。しかし、今回の数値実験では限定さ
れた期間のデータを利用しているため、さらに多くの期間で数値実験をおこない分析
する必要がある。
Science for Open and Environmental Systems
80024622
KIKUCHI, Atsushi
Optimal Asset Allocation with Real Estate
The institutional investors such as life insurance companies, trust banks, and
pension funds, have to allocate their funds to several assets in order to obtain the
higher but stable rate of return. Real estate is viewed as a portfolio diversifier, or
risk reducer.
Historically, real estate has been defined as only investments in private real
estate equity and private real estate debt. The investors, who wanted to invest real
estate, needed to buy and hold individual buildings directly. There were no
secondary and securitized markets for private real estate debt or private real estate
equity. Today, however, with the advent of securitization, the definition of real
estate for institutional investors has broadened to cover many structures.
We examine the relationship among the real estate index, stock index, and bond.
index. We can find the difference among them. We examine that optimal asset
allocation problem with real estate using mean-variance approach with the
available data sets. We use the Sumitomo Life Research Index(SLRI), TOPIX,
and Nikko Bond Performance Index.
The results show that real estate can reduce risk on the asset mix. In our future
research, we need to examine the model using additional data.
不動産資産を考慮した最適資産配分に関する研究
Optimal Asset Allocation with Real Estate
2001 年度
開放環境科学専攻
指導教員:西野 寿一教授
学籍番号:80024622
菊地 睦
リアルオプションを考慮した分権組織の
資金配分に関する研究
A Study of Funds Allocation on Decentralized
Organization
2001 年度
開放環境科学専攻
指導教員:福川忠昭教授
住枝
志保
第 1 章 研究の背景および目的
第 1 章 研究の背景および目的 ............................................................................................................. 2
1-1 研究の背景および目的................................................................................................................ 3
第 2 章 資産クラスとしての不動産資産 ............................................................................................. 4
2-1 アセット・アロケーション ........................................................................................................ 5
2-2 不動産資産.................................................................................................................................... 6
2-2-1 日本の不動産市場................................................................................................................. 6
2-2-2 不動産投資におけるリスク................................................................................................. 7
2-2-3 不動産の資産特性................................................................................................................. 8
2-2-4 不動産の証券化..................................................................................................................... 9
2-2-5 不動産インデックス........................................................................................................... 11
第 3 章 資産運用理論 ........................................................................................................................... 13
3-1 最適化モデル.............................................................................................................................. 14
3-1-1 平均・分散モデル............................................................................................................... 14
3-1-2 平均・下方部分積率モデル............................................................................................... 16
3-2 国際分散投資.............................................................................................................................. 18
3-2-1 金利パリティ ...................................................................................................................... 18
3-2-2 ヘッジ無し .......................................................................................................................... 18
3-2-3 フルヘッジ .......................................................................................................................... 18
3-2-4 最適ヘッジ .......................................................................................................................... 19
第 4 章 数値実験 ................................................................................................................................... 20
4-1 数値実験の概要.......................................................................................................................... 21
4-2 数値実験-(I) ................................................................................................................................ 22
4-2-1 数値実験-(I)のデータセット ............................................................................................. 22
4-2-2 数値実験-(I)の条件設定 ..................................................................................................... 28
4-2-3 MV モデルによる効率的フロンティアおよび最適解 .................................................... 28
4-2-4 MLPM モデルによる効率的フロンティアおよび最適解 ............................................... 35
4-3 数値実験-(II) ............................................................................................................................... 42
4-3-1 数値実験-(II)のデータセット ............................................................................................ 42
4-3-2 数値実験-(II)の条件設定 .................................................................................................... 44
4-3-3 MV モデルによる効率的フロンティアおよび最適解 .................................................... 44
4-3-4 MLPM モデルによる効率的フロンティアおよび最適解 ............................................... 46
第 5 章 結論および今後の課題 ........................................................................................................... 49
5-1 結論および今後の課題.............................................................................................................. 50
参考文献 ................................................................................................................................................. 51
謝辞 ......................................................................................................................................................... 52
1
第 1 章 研究の背景および目的
第1章 研究の背景および目的
2
第 1 章 研究の背景および目的
1-1 研究の背景および目的
生命保険会社や信託銀行そして年金基金等の機関投資家は、常々、安定的により多くの運用
利回りを確保することを目指している。その目的をかなえるため、機関投資家は自己が保有す
る資金を、性質の異なる複数の資産に、適切に配分する必要がある。また、金融の自由化・国
際化・証券化といった近年の日本における金融環境の変化の中で、機関投資家は投資対象を拡
大することが可能になりつつある。新たな投資対象が、従来からなじみの深い資産である株式
や債券と低い相関関係にあれば、より高い分散投資効果を受けることが可能になる。そして、
新たな投資対象の中でも、不動産資産の注目が高まってきている。
2000 年 5 月に投資信託法(証券投資信託及び証券投資法人に関する法律)が改正(同年 11
月に施行)されたことをうけて、2001 年 9 月に日本版不動産投資信託(J-REIT:ジェイリート)
が東京証券取引所に上場されたことは記憶に新しい。しかし従来までの不動産投資は、実物不
動産の相対取引が投資における基本形態であったため、最低投資金額が多額になりがちであり、
非常に流動性の低い投資対象であった。J-REIT のような、最低投資金額が低額であり、高い流
動性を持つ、新しいタイプの不動産投資商品の登場が、不動産資産が注目されている理由の一
つである。
不動産資産への投資に関する問題点として、株式や債券への投資に比べて、売買価格や運用
利回りに関する情報を、入手することが困難であることが指摘されていた。株式であれば、東
証株価指数等の投資インデックスが投資に際しての判断材料として利用可能であるが、不動産
投資については、投資判断に利用可能な市場データは極めて限られているのが現状であった。
しかしながら、この数年の間にいくつかの機関投資家から、不動産インデックスが公表され始
めた。すでに米国においては不動産資産への投資について、株式や債券等の他資産と比較をす
るために、不動産投資の収益性をインデックスによって把握することが一般化している。
わが国ではバブル崩壊まで、不動産資産はインフレ率を上回る土地価格の値上がりが期待で
きたため、将来の不動産価格が変動することによるリスクが考慮されることはなかった。その
ため、他資産との収益性を比較するための不動産インデックスは必要とされてこなかったので
ある。しかし、1991 年以降、土地価格は下がり続け、土地価格が右肩上がりを続けるという土
地神話は崩壊した。今後、土地価格が右肩上がりを続ける状態に回帰することは考えにくく、
不動産は特別な資産ではなく、株式や債券と同様に、将来において資産価格が変動することを
念頭において、投資判断をするべきである。しかしながら、不動産資産からの運用利回りデー
タが入手しにくかったこともあって、不動産資産を考慮した最適資産配分に関する分析はほと
んど発表されていない。
そこで本論文では、1996 年に日本で初めて公表された不動産インデックス(住生総研不動産
インデックス)のデータを不動産資産の利回りとして用いて、機関投資家にとって代表的な投
資対象である株式・債券と資産特性の比較をおこなう。さらに、平均・分散モデルのアプロー
チを用いて、最適ポートフォリオを構築し、不動産資産に投資が可能な場合と、不可能な場合
との違いについて分析をおこなう。
3
第 2 章 資産クラスとしての不動産資産
第2章 資産クラスとしての不動産資産
4
第 2 章 資産クラスとしての不動産資産
2-1 アセット・アロケーション
機関投資家1が投資をおこなう際に、国内外株式や国内外債券などの資産クラスに対して、資
金を配分することを資産配分(アセット・アロケーション)という(図 2-1)。個別銘柄の選択
に比べて、投資対象資産の組み入れ比率を決めることのほうが、ポートフォリオ全体の収益率
の変動に与える影響が大きいといわれている。よって、投資家にとって資産配分比率を決定す
ることは重要な問題である。機関投資家は、常々、安定的により多くの運用利回りを確保する
ことを目指している。投資家の目的をかなえるために策定された資産配分比率(ポートフォリ
オ)を、最適資産配分(optimal asset allocation)、または最適ポートフォリオ(optimal portfolio)
という。
一般的に資産配分比率の決定には、平均・分散モデルや下方リスクモデル2が用いられている。
本論文においても、上記モデルを用いて最適ポートフォリオを構築する。そして投資対象資産
に不動産が含まれる場合と、含まれない場合との違いについて、第 4 章にて分析をおこなう。
本章ではまず、不動産資産の特性について説明する。
アセット・アロケーション
資金
資産クラス
株式
債券
不動産
図 2-1 アセット・アロケーションのイメージ図
1
資金運用をおこなうことを業務とする投資家のことで、生命保険会社や信託銀行等の金融機関および年金基
金等を指す。
2
代表的なモデルとして「平均・下方部分積率モデル」が挙げられる。平均・分散モデルとともに「第 3 章 資
産運用理論」にて解説する。
5
第 2 章 資産クラスとしての不動産資産
2-2 不動産資産
次節以降、不動産資産の特性について説明していくが、その前にまず「不動産」について定
義する。
「不動産」
民法の第 86 条により、「不動産は土地及びその定着物である」と定められており、一般的
に不動産とは「土地および建物」と定義することができる。住宅、商業施設、工場、倉庫
等その種類は多岐に渡る。
しかし本論文では、投資家が投資する対象としての「不動産」を想定している。投資家にと
って、キャッシュフローがなく投資リターンの期待できない投資は考えにくいので、本論文で
は、「不動産」といえばすでにテナントが入居してキャッシュフローを生んでいる商業不動産3
を想定する。
2-2-1 日本の不動産市場
日本の不動産市場は、戦後の多くの期間において土地価格が上昇し続けたことに支えられ、
投資家の多くがキャピタル・ゲインを得てきた。しかし、バブル崩壊後の時期においては、投
資家は反対に多額のキャピタル・ロスにさらされた。そして 1990 年頃にピークをつけた土地
価格は、現在まで下がり続けている(図 2-2)
。
120
100
市
街 80
地
価 60
格
指 40
数
20
2000年
1995年
1990年
1985年
1980年
1975年
1970年
1965年
1960年
1955年
0
期間
図 2-2 市街地価格指数4の推移
バブル崩壊以前の不動産市場においては、一定期間で投資を完了して損益を確定、リターン
を得るという、株式や債券等と同じ投資行動はみられなかった。土地価格は下落しないという
3
自己での利用が目的ではなく、収益を得る目的で保有されている不動産を指す。賃貸オフィスビル等が該当
する。
4
財団法人日本不動産研究所が、毎年 3 月末と 9 月末に公表している土地価格指数。全国主要 223 都市につい
て、調査地点を設け、鑑定により土地の価格を算出している。指数は平成 2 年 3 月末の水準を 100 としている。
6
第 2 章 資産クラスとしての不動産資産
土地神話の下、長期保有を前提に不動産への投資がされてきたのである。現在、土地は必ず値
上がりすることが期待できる資産ではなくなり、戦後の高度成長期からバブル経済期にかけて
形成されたとみられる日本の土地神話は崩壊した。もちろん、今後も土地価格が永久に下がり
続けるわけではなく、いずれは底を打つとみられる。しかし、右肩上がりの土地価格を支えた
高度成長が停滞し中心産業が製造業からサービス産業へ移行しつつあるなど、構造的要因は大
きく変化しており、土地価格の底打ち後も一本調子の上昇は期待できない。
土地神話崩壊後の不動産市場では、景気変動と不動産の需給バランスが不動産価格を決定し、
価格上昇もあれば下落もある市場が形成されていくと考えられる。
2-2-2 不動産投資におけるリスク
このような市場構造の変化を受けて、これまで土地価格が上昇することを前提にすることで
隠れていた、不動産固有の様々なリスクが顕在化した(表 2-1)。土地神話下の不動産投資では、
不動産さえ取得できれば将来のキャピタル・ゲインにより最終的には正のリターンを得ること
が期待できたため、投資家のリスク評価は甘かったといえる。
表 2-1 不動産投資におけるリスク
リスクの種類
信用リスク
内容
共同事業者、業務委託会社、債権債務者その他関係者が経営破たんや契約不
履行となるリスク。
市場変動リスク
ク。
管理運営リスク
不適切・非効率なビル管理やテナント管理により投資物件の収益性が低下
するリスク。賃貸事業の場合、テナント企業の倒産リスクや賃借人の家賃
滞納などのリスク。管理不十分による過失などでテナントや来客に損害を
与え賠償責任を負うリスク。
流動性リスク
取引市場の不在、金額の大きさ、時価評価の難しさ、テナント退去の困難
さなどから必要なときに簡単に売却して換金できないリスク。
税制等の法制度変更 不動産税制や投資に関わる税制が変更されるリスク(地価上昇局面での規
リスク
制強化が多い)。その他耐震設計基準の変更等による建物の陳腐化も->社
会的劣化リスク。
災害リスク(震災・ 阪神淡路大震災で顕在化した震災リスクは、東京圏では投資期間が長期に
火災・水害等)
なればなるほど無視できない。
地域経済リスク
周辺地域の発展や商業施設の郊外移転などにより当該地域の経済拠点性が
低下するリスク。逆に周辺開発や交通インフラ整備により不動産価値が上
昇する場合もある。
瑕疵責任リスク
設計ミスや手抜き工事などハード面の品質に関わるリスク。
建物・設備の劣化リ 建物は経年劣化を防止し商品価値維持のため、日常的な保守・修繕と改修
スク
など再投資が必要となるリスク。物理的劣化だけでなく社会的・経済的劣
化にも対応する必要がある。
不動産経営リスク
資金調達など投資の意思決定の誤りから不動産事業として経営困難になる
リスク。
(出展)ニッセイ基礎研究所
これら不動産投資の様々なリスクのうち、本論文では数値実験を通して市場変動リスクにつ
いての分析を試みる。(表 2-1)に挙げたリスクのうち、信用リスクや市場変動リスクは株式や
債券市場にも存在し、その他は不動産固有のリスクであるといえる。しかし、残念ながらそれ
らリスクは定性的には整理・理解できても、現時点では定量的に把握することは難しい。なぜ
なら、これまでの土地神話の下、不動産投資におけるリスクに関してのデータ蓄積や分析はほ
とんどおこなわれてこなかったからであり、今後の研究が期待される分野である。
7
第 2 章 資産クラスとしての不動産資産
2-2-3 不動産の資産特性
不動産は様々な特性を持つが、不動産投資の特性について株式や債券等に投資する場合と比
較することによって、次のように整理できる。
1.
投資市場、流通市場がなく流動性が低い(低流動性)
2.
収益が物件の管理運営に依存する(管理負荷)
3.
劣化や破損など物理的リスクがある(資産劣化)
4.
情報量が少なく取引や実態がわかりにくい(不透明)
5.
個別性、地域性が強い(非同質)
6.
最小投資単位が大きい(大口)
7.
償却資産としての節税効果がある(節税効果)
8.
安定した担保価値があり資金調達が容易である(担保価値)
9.
他の金融資産との相関性が低い(低相関)
10. 投資家自ら占有して使用できる(利用価値)
11. 所有していることがステイタスや顕示欲を満たす(具象性)
これらに加えバブル崩壊までは、インフレ率を上回る土地価格の値上がりが期待できると評
価されてきた。しかし、バブル崩壊後から大幅な土地価格の下落が続いている現在、不動産は
その特性があるとは考えにくい。
右肩上がりの不動産市場においては、インカム・ゲインは投資額に対して僅かでも、土地価
格上昇によるキャピタル・ゲインの増加が、高いリターンの源泉となっていたため、投資リス
クは少なくなかったにもかかわらず、それらがほとんど考慮されずに不動産投資がおこなわれ
てきた(図 2-3)。
バブル期まで
土地価格の
値上がり期待
キャピタル
現在∼将来
インカム
リスク
認識曖昧
ゲイン
ゲイン
価格下落
リスク等
期待
値上がり期待
インカム
インカム
ゲイン
ゲイン
期待
リターン
インカム
インカムゲイン
ゲイン
期待
期待
期待
リスク
リターン
リスク
図 2-3 リスク・リターンの変化
しかし、今後は不動産に期待できるキャピタル・ゲインは、不動産から将来得られる純収益
を基に評価された売却時の市場価値(売却価格)と取得価格の差から得られるものだけとなり、
周辺の地価動向とは直接関係することはない。仮りに、不動産が適切に管理運営、活用されて
いなければ将来キャピタル・ロスが発生する可能性すらある。このため、機関投資家といえど
もこのような資産特性を理解した上で慎重に不動産投資をおこなう必要がある。
8
第 2 章 資産クラスとしての不動産資産
2-2-4 不動産の証券化
今後、予想される市場変動リスクのある不動産投資においては、市場変化に柔軟に対応でき
るよう流動性が高くリスク分散の容易な投資の枠組みが必要で、不動産の証券化はこのような
投資を可能にするものである。
不動産証券化とは、不動産市場と金融資本市場とを直結させる仕組の総称である。その構造
は、不動産の収益を投資家へ分配することを約束して、投資を募るものである。投資家の権利
が証券取引法上の有価証券であることを不動産証券化の要件とする狭義の考え方もあるが、本
論文では投資の対価として投資家が不動産収益の分配を享受する権利を有する仕組を広く証
券化ととらえ、証券化の基本的な構造を(図 2-4)に示す。
不動産市場
金融資本市場
オリジネーター
購入資金
投資ヴィークル
投資資金
(原資産保有者)
不動産
不動産
不動産収益
不動産
価値
デット
(負債)
証券
エクイ
ティ
(株式)
投資家
配当・元利金払い
投資ヴィークル : 投資家から資金を集める、あるいは証券を発行する器である「ヴィークル(SPV :
special purpose vehicle)」。
図 2-4 不動産証券化の基本構造
投資家は証券化された不動産商品に投資することで、従来の実物不動産への投資に加えて、
より透明で、流動性が高く、小口化された、新たな投資手段を得ることが可能になる。つまり
不動産証券化商品へ投資することによって、投資家は流動性が低いことや最低投資金額が多額
であるといった、不動産固有の資産特性をコントロールすることが可能になる。このように不
動産の証券化は、投資家にとって大きな意味を持つ(表 2-2)。
9
第 2 章 資産クラスとしての不動産資産
表 2-2 投資家にとって不動産証券化の意味
メリット
不動産投資機会の拡大・投資選択の多様化
・実物投資以外の投資手段(エクイティ型やデット型)の選択が可能になる。
・投資単位の小口化と集団投資の仕組み整備、発行株式の上場により、個人投資家の不
動産投資参加機会が増加する。
不動産投資の洗練・高度化
・分散投資(対象資産、証券種類、運用機関の分散)による投資リスクのコントロールが
容易になる。
・不動産市場や金融資本市場の見通しに対応した柔軟な投資形態の選択が可能になる。
・実物投資と異なり保有資産の流動性リスクの低減が可能になる。
・開示情報に基づく合理的な投資判断が可能になる。
・不動産取引コストの低減・回避が可能になる(登録免許税・取得税・譲渡益課税が証券
取引税・利子配当所得課税へ)。
・レバレッジ効果の享受(エクイティ型証券投資の場合)。
留意点
不動産の資産特性が薄められ、金融資産としての特性が強まる
・償却資産保有による節税効果が期待できない。
・実物資産でないためステイタスとなったり所有を満たすことができない。
・金融資本市場との連動が強くなり、実物市場や不動産自体のファンダメンタルズと異な
る値動きをする場合がある。
証券化固有の仕組リスクの発生
・当初算定された価格で社債償還期日までに不動産が確実に売却できるか(タイムリーペ
イメント)が問題となる。
・仕組みによってはキャッシュフローの混同リスク等が生じる。
(出展)ニッセイ基礎研究所
不動産証券化商品は、債券などのデット型商品と出資に相当するエクイティ型商品に大別で
きる5。また、実務上ではデット型商品の中で優先劣後構造を作ることも多い。デット型商品は、
不動産が生むキャッシュフローや担保不動産に裏付けられた貸付債権の利払いを基に発行さ
れ、期間・利子・償還金が確定されているが、エクイティ型商品では、デット型商品の利払い・
償還や借入金返済後の利益に関する参加権である。
デット型商品を保有する投資家は、不動産が生むキャッシュフローが減少したり不動産価格
が下落して、エクイティ型商品を保有する投資家の持分によっても損失を吸収できない場合に
はじめて損失を負う。すなわち、デット型商品はエクイティ型商品に優先する利益分配の権利
を持ち、エクイティ型商品はデット型商品のリスク・バッファともいえる。不動産が生む利益
への参加権がこのような優先劣後関係に切り分けられた結果、劣後部分はリスクが凝縮される
ことになるため、もとの実物不動産への投資に比べてハイリスク・ハイリターン特性を強めて
いることになる。
証券化では、このような利益分配の優先劣後構造を作り、異なるリスク・リターンを持つ複
数の証券を発行することが可能になるため、投資家は実物不動産への投資では不可能であった
多様な投資をおこなうことができる。
小口投資が可能になる証券化投資では、資金量の問題によって複数の不動産への分散投資が
できなかった投資家でも、最低投資金額が低額になるので不動産の分散投資が可能になる(図
2-5)。
5
デット(debt)は負債・債務を意味することから、不動産投資では不動産総額における負債総額、もしくは
CP、社債発行や借入による資金調達分となる。エクイティ(equity)は自己資本・株式、持分を意味すること
から、不動産総額から負債総額を引いた自己資本による持分、もしくは株式など出資証券発行や組合出資によ
る資金調達分になる。なお、投資家からみて不動産融資との対比から不動産への直接投資、あるいは不動産そ
のものをエクイティ投資という場合もある。
10
第 2 章 資産クラスとしての不動産資産
実物不動産への投資
不動産証券化商品への投資
投資家
投資家
不動産
証券化
商品
実物不動産
最低投資額は高額
不動産
証券化
商品
不動産
証券化
商品
最低投資額は低額
図 2-5 小口化の恩恵
また、あらかじめ地域分散された不動産ポートフォリオを証券化した商品に投資することで、
すでに分散投資が図られた投資も容易になる。これまで不動産投資では、分散投資効果の恩恵
を受けることが可能だったのは、巨額の資金を持ち、不動産に関する専門能力を持つ、一部投
資家だけだったが、今後は証券化によってより多くの投資家が分散投資効果の恩恵を受けるこ
とが可能になる。
さらに不動産証券化商品は多数の投資家から投資資金を募る仕組であるため、相対でおこな
われる実物不動産取引に比べ、情報開示度合いが高く、投資家は開示された情報に基づく合理
的な投資判断が可能になる6。このため、証券化は一部の投資家層が中心であった不動産投資を、
多くの投資家層にまで拡大する効果がある。
2-2-5 不動産インデックス
今後の不動産市場は、投資家層の拡大が期待できるが、不動産投資に関する問題点として、
株式や債券への投資に比べて、売買価格や運用利回りに関する情報を、入手することが困難で
あることが指摘されている。株式であれば、東証株価指数(Topix)等の投資インデックスが投
資に際しての判断材料として利用可能であるが、不動産投資については、投資判断に利用可能
な市場データは極めて限られているのが現状であった。
米国においては株式や債券等の他資産と比較するために、不動産投資の収益性をインデック
スによって把握することが一般化している。全米不動産投資運用業者協議会(National Council
of Real Estate Investment Fiduciaries)が公表している NCREIF(ニークリフ)インデックスが、
代表的な指標として用いられている。
日本においても、この数年の間にいくつかの機関投資家から、不動産インデックスが公表さ
れ始めた。そこで本論文では、1996 年 10 月に日本で初めて公表された不動産インデックス:SLRI
(住生総研不動産インデックス)のデータを不動産資産の利回りとして用いて、機関投資家に
とって代表的な投資対象である株式・債券と資産特性の比較をおこなう。
6
特に、証券取引法上の有価証券として指定されている、SPC 法に基いて発行された証券、および改正投資信
託法に基づいて発行された証券(J-REIT)は情報開示の度合いが格段に高い。
11
第 2 章 資産クラスとしての不動産資産
SLRI(住生総研不動産インデックス)では、オフィスビル投資の収益率を年初のオフィスビ
ル総投資額に対する純収益(NOI)資産価値の変動(年末資産価値−年初資産価値)の両面(イ
ンカムリターンとキャピタルリターン)から算出している。
本論文の第 4 章において、平均・分散モデルを用いて最適ポートフォリオを構築し、不動産
資産に投資が可能な場合と、不可能な場合との違いについて分析をおこなう。
12
第 3 章 資産運用理論
第3章 資産運用理論
13
第 3 章 資産運用理論
3-1 最適化モデル
本論文では、平均・分散モデルおよび下方リスクモデルを用いて最適ポートフォリオを構築
する。一般的に資産配分比率の決定には上記モデルが用いられている。本章で、上記モデルに
ついての定式化をおこなう。
3-1-1 平均・分散モデル
資産配分比率決定問題では、「要求される期待収益率のもとで、リスク(標準偏差または分
散)を最小化する」数理計画問題を解くことによって、最適ポートフォリオを求めることがで
きる。一般的に、「ポートフォリオの期待収益率 rP が要求期待収益率 rE 以上のもとで、分散
Var(R)を最小化する」問題として定式化することができる。
Minimize
Var ( R) ≡
n
n
∑∑ σ
jk x j xk
( 3.1 )
j =1 k =1
subject to
rP ≥ rE
n
∑x
j
( 3.2 )
=1
( 3.3 )
j =1
xj ≥ 0
( j = 1 ,..., n)
( 3.4 )
x ∈X
( 3.5 )
ここで、
σjk : 資産 j と資産 k の共分散
xj
: 資産 j の投資比率 x = (x1 ,…, xn)T
rE
rj
: 投資家の要求期待収益率
: 資産 j の期待収益率
rp
: ポートフォリオの期待収益率 r p =
n
∑r x
j
j
j =1
である。(3.3)式は予算制約、(3.4)式は非負(空売りを認めない)制約を表す。(3.5)式の X は上
限制約式など、(3.2)∼(3.4)式以外で x を制約する実行可能空間を表す。
以降では、離散データを使った場合の定式化を表す。離散的なデータとしては、
・過去の収益率データ(ヒストリカル・データ)7
がある。このような場合、収益率(R1 …, Rn)が(r1t ,…, rnt), t = 1,…, T を台とする離散分布
に従うものと仮定する。ここで、rjt は事象 t における資産 j の収益率、T は期間数を表す。そ
の発生確率 pt は
pt = Pr {( R1,..., Rn ) = (r1t ,..., rnt )}
( 3.6 )
で与えられるが、通常、等確率として取り扱われることが多い。以降では、pt は 1/T とする。
7
過去に生じた事象を時点に依存せずに将来生じ得る事象と考える。したがって、t 時点の収益率を事象 t にお
ける収益率と考える。
14
第 3 章 資産運用理論
そのとき、σjk は rjt を用いて、
1
T
σ jk =
T
∑ (r −r )(r −r )
jt
j
kt
( 3.7 )
k
t =1
と表すことができる。このσjk を用いてポートフォリオの分散 Var(R)は、
Var ( R) ≡
n
n
∑∑ σ
jk x j xk
( 3.8 )
j =1 k =1
と計算することができる。平均・分散モデルは、(3.8)式直接用いて問題を解くことができるが、
本論文ではコンパクト分解表現と呼ばれる定式化を用いる。
(3.7)式を(3.8)式に代入すると
Var (R)
=
 1

k =1 
T
n
n
∑∑ ∑ (r
j =1
=
1
T
1
=
T
と計算できる。 yt =
n
∑r
jt x j
T
t =1
jt

− rj )(rkt − rk ) x j xk

n
 n

(rkt − rk ) xk 
 (rjt − rj ) x j
 j =1

k =1
T
∑ ∑
t =1
∑
2
 n

1
 (rjt − rj ) x j  =
T
 j =1

T
∑ ∑
t =1



t =1 
T

rjt x j − rp 

j =1

n
2
∑∑
− rp とおくことにより、
j =1
Var ( R) =
1
T
T
∑y
2
t
( 3.9 )
t =1
を得る。したがって、平均・分散モデルは次のように定式化できる(コンパクト分解表現)
。
Minimize
1
T
T
∑y
2
t
n
subject to
( 3.10 )
t =1
∑r x
jt
j
− yt = rp
( t = 1 ,..., T )
( 3.11 )
j =1
rP ≥ rE
n
∑x
j
=1
( 3.12 )
( 3.13 )
j =1
xj ≥ 0
( 3.14 )
x ∈X
( 3.15 )
15
第 3 章 資産運用理論
3-1-2 平均・下方部分積率モデル
収益率変動の下方部分をリスクと考えるモデルを下方リスクモデルと呼ぶ。下方リスクは、
そのリスク概念が意思決定者にとって自然であるため、そのモデル化がとても受け入れやすい
という長所を持っている。Bawa and Lindenberg の「平均・下方部分積率モデル」(Mean-Lower
Partial Moments model : MLPM)は、その代表的なモデルの一つである。このモデルではリスク
尺度として、下方部分積率(lower partial moments)を用いている。(図 3-1)に示すように目標
収益率 rG を下回る大きさをリスクと考える。
リスク
rG
rt
図 3-1 下方リスク
リスク尺度として用いられる次数 k の下方部分積率 LPMk( R ; rG )は、(3.16)式のように記述
できる。次数 k はリスク選好の度合いを表すパラメータである。
LPM k ( R ; rG ) ≡
1
T
T
∑
t =1
k
rt − rG −
( 3.16 )8
本論文では平均・下方部分積率モデルによっても最適ポートフォリオの計算をおこなうので、
以下に定式化をおこなう。
数理計画モデルとして定式化をおこなうために、
dt+ − dt− = rt − rG
( 3.17 )
とし、 d t− と d t+ はどちらしか正値を持たない非負の変数(どちらかの値は 0 になる非負変数)
とする。(3.17)式より、
(1) rt − rG ≥ 0 のときは、
dt− = 0 , dt+ = rt − rG
8
a
−
( 3.18 )
= max ( a , 0 ) である。
16
第 3 章 資産運用理論
(2) rt − rG ≤ 0 のときは、
dt− = − ( rt − rG ) , dt+ = 0
( 3.19 )
となる。したがって、 d t− と d t+ のどちらかが、0 になる場合、
dt− = rt − rG −
( 3.20 )
が成立する。
ここで、 d t− と d t+ に対する非負条件は、
dt− ≥ 0 , dt+ ≥ 0
( 3.21 )
という(線形)制約式を加えればよいが、(3.17)式だけでは、 d t− と d t+ のどちらかが 0 になる
とは限らない。例えば、d t+ + d t− = 5 の場合、d t− = 0 、d t+ = 5 だけでなく、d t− = 2 、d t+ = 7 で
も許される。したがって、一般的に d t− と d t+ のどちらかを 0 にするためには、
dt− ⋅ dt+ = 0
( 3.22 )
という非線形制約式を加える必要がある。しかし、(3.21)式の非負条件と最小化をおこなう目
的関数の中に d t− が含まれていれば、(3.22)式を加えることなく、 d t− と d t+ のどちらかを 0 にす
ることができる。(3.17)式を変形し、かつ d t− を d t と置き換えると、 d t+ の非負条件より、
dt+ = rt − rG + dt ≥ 0
が成り立つ、ここで、D を
( 3.23 )
D = { rt + dt ≥ rG , dt ≥ 0 ; t = 1 ,..., T
}
( 3.24 )
を表す制約空間とすると、
min { dt | dt ∈ D} = rt − rG
−
( 3.25 )
となる。したがって、リスク尺度として次数 k の下方部分積率 LPMk( R ; rG )を用いる場合のポ
ートフォリオ選択問題は次のように定式化できる。
Minimize
1
T
T
∑(d )
( 3.26 )
t =1
n
subject to
k
t
∑r
jt x j
+ d t ≥ rG
( t = 1 ,..., T )
( 3.27 )
j =1
dt ≥ 0
( 3.28 )
(3.2)∼(3.5)式
k = 1 ならば線形計画問題、k = 2 ならば 2 次計画問題、 k ≥ 3 ならば非線形計画問題となる。な
お本論文では k=2 を用いる。
17
第 3 章 資産運用理論
3-2 国際分散投資
本論文では、日本の投資家を想定しており、国外(米国)の資産に投資するときは為替レー
トの変動について考慮する必要がある。本論文では、為替レートのヘッジを全くおこなわない
場合(NH)、為替先物を利用してフルヘッジをおこなう場合(FH)、および事後的最適ヘッジ
(OH)について取り扱う。
3-2-1 金利パリティ
金利パリティ式とは、自由な金融市場では、自国と投資対象国の金利差は先物レート F とス
ポットレート S0 の差の割合に等しくなければならないということを述べている。数学的に表す
と次のようになる。
F 1 + rF
=
S 0 1 + rD
( 3.29 )
ここで、
rF
: 日本の金利
rD
: 投資対象国の金利
である。(3.29)式を用いて、先物レート F を求めることが可能である。
3-2-2 ヘッジ無し
全く為替ヘッジをおこなわないことを想定している。つまり、t 期で国外資産を購入し、t+1
期で国外資産を売却したとするなら、購入時には t 期の為替レートが、売却時には t+1 期の為
替レートが適用される。
3-2-3 フルヘッジ
フルヘッジをおこなうことを想定している。つまり、t 期で国外資産を購入し、t+1 期で国外
資産を売却したとするなら、購入時には t 期の為替レートが、売却時には t 期で取り決められ
た先物レートが適用される9。なお本論文では、先物レートは(3.29)式の金利パリティ式より求
めた。
9
通常の為替取引では、あらかじめ「いくら(例:5 万ドル)」の為替先物をおこなうか t 期で取り決める必要が
あるが、本論文では t+1 期で取り決めることが可能とする。すなわち本論文でフルヘッジとした場合、t+1 期
において保有する国外資産の分(ドル建て)だけ、先物レートを適用できる。また本論文では、為替取引にか
かるコストはかからないとする。
18
第 3 章 資産運用理論
3-2-4 最適ヘッジ
本論文では各資産の期待収益率をヒストリカル・データから計算している。そこで事後的に、
最適なヘッジ比率を求める。事後的最適ヘッジ比率とは、ある国外資産 j を考えたときに、為
替ヘッジのおこない方により、期待収益率の異なる二つの資産、ヘッジ無し資産 jNH およびフ
ルヘッジ資産 jFH が存在するかのように考え、最適資産配分をおこなった場合の、jNH と jFH
との最適投資比率の割合のことである。
最適資産配分
国内資産 1
国内資産2
国内資産nJP
ヘッジ無し(NH)資産の期待収益率
国外資産 1NH
国外資産2NH
国外資産nNH
フルヘッジ(FH)資産の期待収益率
国外資産 1FH
国外資産2FH
国外資産nFH
jNH : 国外資産 j をヘッジ無しで投資した場合の期待収益率
jFH : 国外資産 j をフルヘッジで投資した場合の期待収益率
図 3-2 事後的最適ヘッジ投資
19
第 4 章 数値実験
第4章 数値実験
20
第 4 章 数値実験
4-1 数値実験の概要
本章では、数値実験の結果を示し、不動産資産に投資が可能な場合と、不可能な場合との違
いについて分析をおこなう。データセットの違いによって、数値実験-(I)および数値実験-(II)を
おこなう(図 4-1)、(図 4-2)。数値実験はソフトウェア NUOPT10を用いた。
不動産資産に投資が「可能」な場合
国内株式
国内債券
米国株式
米国債券
国内転換社債
国内不動産
米国不動産
不動産資産に投資が「不可能」な場合
国内株式
国内債券
米国株式
米国債券
国内転換社債
図 4-1 投資対象資産クラス(数値実験-(I))
不動産資産に投資が「可能」な場合
国内株式
国内債券
国内転換社債
国内不動産
不動産資産に投資が「不可能」な場合
国内株式
国内債券
国内転換社債
図 4-2 投資対象資産クラス(数値実験-(II))
10
NUOPT は(株)数理システムの製品である。
21
第 4 章 数値実験
4-2 数値実験-(I)
4-2-1 数値実験-(I)のデータセット
数値実験-(I)では、{日本株式、日本債券、日本転換社債、日本不動産、米国株式、米国債券、
米国不動産}の 7 資産に投資が可能な場合と、{日本株式、日本債券、日本転換社債、米国株式、
米国債券}の 5 資産に投資が可能な場合について比較分析する。なお各資産のベンチマークと
して、(表 4-1)にあるインデックスを用いた。
表 4-1 各資産クラスのインデックス
日本
米国
株式
TOPIX
SP500
債券
NikkoBPI
GSBI
転換社債
NikkoCBPI
-
不動産
SLRI
NCREIF
なお、各インデックスの詳細は以下に示す(表 4-2)。
表 4-2 各インデックスの詳細
TOPIX
NikkoBPI
NikkoCBPI
SLRI
SP500
GSBI
NCREIF
東京証券取引所株価指数
日興ボンドパフォーマンスインデックス
日興転換社債パフォーマンスインデックス
住生総研不動産インデックス
スタンダード&プアーズ500株価指数
ゴールドマンサックス債券インデックス
全米不動産投資運用業者協議会インデックス
各インデックスはそれぞれの資産クラス市場全体の動向を表すものとして用いる。データ入
手期間の関係から 1992∼1999 年のヒストリカル・データ(年次収益率)を用いて分析をおこ
なった。まずは各資産の年次収益率の推移を示す(図 4-3)。
22
第 4 章 数値実験
70
TOPIX
NikkoBPI
NikkoCBPI
SLRI
SP500
GSBI
NCREIF
60
50
収益率 (%)
40
30
20
10
0
-10
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
-20
-30
期間
図 4-3 年次収益率(1992-1999)
日本不動産(SLRI)はどの年も収益率がマイナスになっているが、これは 90 年頃に土地価
格はピークに達し、現在まで土地価格が下がり続けていることを表している。米国不動産
(NCREIF)は 92 年に収益率がマイナスだったものの、93 年以降は安定的な利回りを投資家に
提供してきた。また各資産の基本統計量および相関係数は次の通りである(表 4-3)、(表 4-4)。
表 4-3 基本統計量(1992-1999)
期待収益率
標準偏差
歪度
尖度
最大値
最小値
TOPIX
NikkoBPI NikkoCBPI SLRI
SP500
GSBI
NCREIF
2.49
6.23
8.05
-8.60
17.69
6.66
7.86
25.66
5.22
9.40
5.95
13.07
7.50
6.72
1.63
-0.14
1.40
0.09
-0.27
-0.01
-0.74
3.45
-1.16
1.97
-2.45
-1.48
-0.50
0.11
58.44
12.85
27.53
-1.76
34.11
18.74
16.25
-23.74
-1.51
-0.97
-15.29
-1.54
-3.48
-4.26
表 4-4 相関係数(1992-1999)
TOPIX
NikkoBPI
NikkoCBPI
SLRI
SP500
GSBI
NCREIF
TOPIX
NikkoBPI NikkoCBPI SLRI
SP500
GSBI
NCREIF
1.00
-0.07
1.00
0.80
0.43
1.00
0.15
-0.44
0.08
1.00
-0.08
0.12
0.10
0.63
1.00
-0.48
0.62
-0.06
-0.16
0.56
1.00
0.18
-0.57
-0.08
0.84
0.68
-0.05
1.00
(表 4-3)より、7 資産中、日本不動産(SLRI)だけが期待収益率がマイナスになっている。
標準偏差の値は、日本資産の中では債券に次いで二番目に小さい値となっている。また米国不
動産(NCREIF)は米国資産の中で、期待収益率が株式に次いで高く、標準偏差は最も小さい
23
第 4 章 数値実験
値であることが分かる。(表 4-4)より、日本不動産(SLRI)は日本債券(NikkoBPI)および
米国債券( GSBI )と負の相関関係を持つ。また米国不動産( NCREIF )もまた、日本債券
(NikkoBPI)および米国債券(GSBI)と債券と負の相関関係を持つ。また日本不動産(SLRI)
と米国不動産(NCREIF)は高い相関関係を持つ。
なお本論文では、日本の投資家を想定しているため、米国資産から得られる収益は必ず為替
変動の影響を受ける。そこで、為替レートを考慮したときの年次収益率を示す(図 4-4)。なお
各資産名の後につく「NH」および「FH」はそれぞれ、「ヘッジをおこなわない場合」と「フル
ヘッジをおこなった場合」の収益率を表す。
70
TOPIX
NikkoBPI
NikkoCBPI
SLRI
SP500_NH
GSBI_NH
NCREIF_NH
SP500_FH
GSBI_FH
NCREIF_FH
60
50
収益率 (%)
40
30
20
10
0
-10
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
-20
-30
期間
図 4-4 為替レートを考慮した年次収益率(1992-1999)
為替レートを考慮した各資産の基本統計量ならびに相関係数を次に示す(表 4-5)、(表 4-6)。
表 4-5 為替レートを考慮した基本統計量(1992-1999)
TOPIX
期待収益率
標準偏差
歪度
尖度
最大値
最小値
2.49
25.66
1.63
3.45
58.44
-23.74
NikkoBPI
NikkoCBPI SLRI
SP500_NH GSBI_NH
NCREIF_NH SP500_FH GSBI_FH
NCREIF_FH
6.23
8.05
-8.60
15.94
4.75
5.79
13.83
3.34
4.39
5.22
9.40
5.56
20.27
13.87
12.90
9.80
6.93
4.07
-0.14
1.40
0.09
0.30
0.07
0.75
-0.30
-0.21
-0.48
-1.16
1.97
-2.45
-1.57
-1.67
-1.04
-0.71
-1.49
0.22
12.85
27.53
-1.76
46.56
23.43
27.42
27.73
13.09
10.51
-1.51
-0.97
-15.29
-12.34
-14.07
-9.18
-3.38
-6.93
-3.35
24
第 4 章 数値実験
表 4-6 為替レートを考慮した相関係数(1992-1999)
TOPIX
TOPIX
NikkoBPI
NikkoCBPI
SLRI
SP500_NH
GSBI_NH
NCREIF_NH
SP500_FH
GSBI_FH
NCREIF_FH
1.00
-0.07
0.80
0.15
-0.34
-0.61
-0.34
-0.13
-0.53
0.19
NikkoBPI
1.00
0.43
-0.44
0.21
0.49
-0.06
0.23
0.73
-0.66
NikkoCBPI
1.00
0.08
-0.15
-0.28
-0.33
0.13
-0.05
-0.12
SLRI
SP500_NH
1.00
0.48
0.07
0.57
0.57
-0.42
0.82
1.00
0.89
0.93
0.85
0.24
0.29
GSBI_NH
1.00
0.76
0.68
0.57
-0.11
NCREIF_NH SP500_FH
1.00
0.67
-0.05
0.42
1.00
0.37
0.45
GSBI_FH
1.00
-0.42
NCREIF_FH
1.00
(表 4-5)より、ヘッジ無しの場合(NH)もフルヘッジした場合(FH)も、為替レートを
考慮しない、つまりドル建ての場合よりも、期待収益率は小さくなっている。ただしフルヘッ
ジした場合(FH)のほうが、より期待収益率は小さくなっている。標準偏差に関しては、ドル
建ての場合に比べて、ヘッジ無しの場合(NH)は大きくなっているが、フルヘッジの場合(FH)
には逆に小さくなっている。なおヘッジ無しの場合に最も標準偏差が小さい資産は日本債券
(NikkoBPI)であり、最も期待収益率が高い資産は、米国株式(SP500_NH)である。フルヘ
ッジの場合に最も標準偏差が小さい資産は米国不動産(NCREIF_NH)であり、最も期待収益
率が高い資産は、ヘッジ無しの場合と同じく米国株式(SP500_NH)である。
(表 4-6)より、ヘッジ無しの場合、日本不動産(SLRI)と最も高い相関関係がみられる資
産は米国不動産( NCREIF_NH )であり、逆に最も低い相関関係がみられるのは日本債券
(NikkoBPI)である。米国不動産(NCREIF_NH)と最も高い相関関係がみられる資産は米国
株式(SP500_NH)であり、逆に最も低い相関関係がみられるのは日本株式(TOPIX)である。
また、フルヘッジの場合、日本不動産(SLRI)と最も高い相関関係がみられる資産はヘッジ無
しの場合と同じく米国不動産(NCREIF_FH)であり、逆に最も低い相関関係がみられるのもヘ
ッジ無しの場合と同じく日本債券(NikkoBPI)である。米国不動産(NCREIF_FH)と最も高
い相関関係がみられる資産は日本不動産(SLRI)であり、逆に最も低い相関関係がみられるの
は日本債券(NikkoBPI)である。
25
第 4 章 数値実験
ヘッジ無しの場合とフルヘッジした場合の各資産のリスク・リターン特性をプロットする
(図 4-5)。
20.00
SP500_NH
15.00
収益率 (%)
10.00
NikkoCBPI
NikkoBPI
NCREIF_NH
5.00
GSBI
TOPIX
0.00
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
30.00
-5.00
-10.00
SLRI
リスク(標準偏差)
図 4-5 リスク・リターン特性(1992-1999 NH)
プロットした 7 資産のうち、「日本債券(NikkoBPI)」、「日本転換社債(NikkoCBPI)」
、「米国
株式(SP500_NH)」が 1 リスクあたりの期待収益率が多いことが(図 4-5)から分かる。
26
第 4 章 数値実験
同様に、フルヘッジした場合の各資産のリスク・リターン特性をプロットする(図 4-6)。
20.00
15.00
SP500_FH
収益率 (%)
10.00
NikkoCBPI
NikkoBPI
5.00
NCREIF_FH
GSBI_FH
TOPIX
0.00
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
30.00
-5.00
SLRI
-10.00
リスク(標準偏差)
図 4-6 リスク・リターン特性(1992-1999 FH)
プロットした 7 資産のうち、「米国不動産(NCREIF_FH)」
、「日本債券(NikkoBPI)」、「日本
転換社債(NikkoCBPI)」、
「米国株式(SP500_FH)」が 1 リスクあたりの期待収益率が多いこと
が(図 4-6)から分かる。
27
第 4 章 数値実験
4-2-2 数値実験-(I)の条件設定
使用モデル
平均・分散モデル(MV モデル)
平均・下方部分積率モデル(2 次)(MLPM モデル)
パラメータ
目標収益率(MLPM モデル)
・ポートフォリオの期待収益率
要求期待収益率
・6.22%∼15.94%(NH) 0.02%刻み
・5.22%∼13.84%(FH) 0.02%刻み
・5.22%∼15.94%(OH) 0.02%刻み
4-2-3 MV モデルによる効率的フロンティアおよび最適解
平均・分散モデルによって求められた効率的フロンティアを(図 4-7)に描く(ヘッジ無し
の場合)。
20.00
15.00
不動産資産に投資が可能な場合
期待収益率(%)
10.00
不動産資産に投資が不可能な場合
5.00
0.00
0.00
2.00
4.00
6.00
8.00
10.00
12.00
14.00
16.00
-5.00
-10.00
リスク(標準偏差)
図 4-7 効率的フロンティア(NH) MV モデル
(図 4-7)より、ヘッジ無しの場合には不動産資産に投資が可能でも、あまり効率的フロン
28
第 4 章 数値実験
ティアは移動していない。
平均・分散モデルによって求められた効率的フロンティアを(図 4-8)に描く(フルヘッジ
した場合)。
20.00
15.00
不動産資産に投資が可能な場合
期待収益率(%)
10.00
不動産資産に投資が不可能な場合
5.00
0.00
0.00
2.00
4.00
6.00
8.00
10.00
12.00
-5.00
-10.00
リスク(標準偏差)
図 4-8 効率的フロンティア(FH) MV モデル
(図 4-8)より、フルヘッジの場合には期待収益率水準が低い場合には、不動産資産がリス
クを減らすことに寄与している。
29
第 4 章 数値実験
平均・分散モデルによって求められた効率的フロンティアを(図 4-9)に描く(最適ヘッジ
した場合)。
20.00
不動産資産に投資が可能な場合
15.00
期待収益率(%)
10.00
不動産資産に投資が不可能な場合
5.00
0.00
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
-5.00
-10.00
リスク(標準偏差)
図 4-9 効率的フロンティア(OH) MV モデル
(図 4-9)より、最適ヘッジの場合には期待収益率水準が低い場合には、不動産資産がリス
クを減らすことに寄与している。
次に、不動産資産への投資が可能な場合と不可能な場合について、「ヘッジ無し(NH)」、「フ
ルヘッジ(FH)」および「最適ヘッジ(OH)」のそれぞれのデータセットについて最適解の要
求期待収益率毎の推移を示す(図 4-10)∼(図 4-15)。
30
第 4 章 数値実験
100%
90%
80%
最適投資比率
70%
TOPIX
SP500_NH
SLRI
NikkoCBPI
NikkoBPI
NCREIF_NH
GSBI_NH
60%
50%
40%
30%
20%
10%
15.58
15.06
14.54
14.02
13.50
12.98
12.46
11.94
11.42
10.90
9.86
10.38
9.34
8.82
8.30
7.78
7.26
6.74
6.22
0%
収益率(%)
図 4-10 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が可能な場合(NH) MV モデル
100%
90%
80%
TOPIX
SP500_NH
NikkoCBPI
NikkoBPI
GSBI_NH
60%
50%
40%
30%
20%
10%
15.58
15.06
14.54
14.02
13.50
12.98
12.46
11.94
11.42
10.90
10.38
9.86
9.34
8.82
8.30
7.78
7.26
6.74
0%
6.22
最適投資比率
70%
収益率(%)
図 4-11 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が不可能な場合(NH) MV モデル
31
第 4 章 数値実験
100%
90%
80%
最適投資比率
70%
TOPIX
SP500_FH
SLRI
NikkoCBPI
NikkoBPI
NCREIF_FH
GSBI_FH
60%
50%
40%
30%
20%
10%
13.50
13.04
12.58
12.12
11.66
11.20
10.74
10.28
9.82
9.36
8.90
8.44
7.98
7.52
7.06
6.60
6.14
5.68
5.22
0%
収益率(%)
図 4-12 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が可能な場合(FH) MV モデル
100%
90%
80%
TOPIX
SP500_FH
NikkoCBPI
NikkoBPI
GSBI_FH
60%
50%
40%
30%
20%
10%
13.50
13.04
12.58
12.12
11.66
11.20
10.74
10.28
9.82
9.36
8.90
8.44
7.98
7.52
7.06
6.60
6.14
5.68
0%
5.22
最適投資比率
70%
収益率(%)
図 4-13 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が不可能な場合(FH)MV モデル
32
第 4 章 数値実験
100%
90%
80%
SP500_NH
NCREIF_NH
GSBI_NH
TOPIX
SP500_FH
SLRI
NikkoCBPI
NikkoBPI
NCREIF_FH
GSBI_FH
最適投資比率
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
15.86
15.30
14.74
14.18
13.62
13.06
12.50
11.94
11.38
10.82
10.26
9.70
9.14
8.58
8.02
7.46
6.90
6.34
5.78
5.22
0%
収益率(%)
図 4-14 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が可能な場合(OH)MV モデル
100%
90%
80%
SP500_NH
GSBI_NH
TOPIX
SP500_FH
NikkoCBPI
NikkoBPI
GSBI_FH
60%
50%
40%
30%
20%
10%
15.86
15.30
14.74
14.18
13.62
13.06
12.50
11.94
11.38
10.82
10.26
9.70
9.14
8.58
8.02
7.46
6.90
6.34
5.78
0%
5.22
最適投資比率
70%
収益率(%)
図 4-15 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が不可能な場合(OH)MV モデル
33
第 4 章 数値実験
(図 4-10)、(図 4-11)より、ヘッジ無しの場合には、要求期待収益率が 6.22%∼8.00%の水
準においては米国不動産にある程度、配分されている。しかし、その他の水準では、不動産は
全く組み入れられてはいない。このことが、(図 4-8)にある効率的フロンティアがあまり移動
していない原因である。また要求期待収益率が低い水準では、日本債券が高い配分比率を、要
求期待収益率が 11.00%水準付近では日本転換社債が高い配分比率を、要求期待収益率が高い水
準では米国株式が高い配分比率を保っている。
(図 4-12)
、(図 4-13)より、フルヘッジの場合には、要求期待収益率が 5.22%∼10.66%の
水準において米国不動産(NCREIF_NH)に配分されている。このことが、(図 4-9)にある効
率的フロンティアを左上に押し上げる結果につながっている。そして、不動産に投資が不可能
な場合に最適ポートフォリオを構成していた日本株式(TOPIX)および米国債券(GSBI_FH)
は、不動産に投資が可能な場合は、どの要求期待収益率水準においても最適ポートフォリオを
構成することは無くなった。また要求期待収益率が低い水準では、日本債券が高い配分比率を、
要求期待収益率が高い水準では米国株式が高い配分比率を保っている。これは米国不動産を除
けばヘッジ無しの場合と似たポートフォリオ構成である。
(図 4-14)
、(図 4-15)より、最適ヘッジの場合には、要求期待収益率が 5.22%∼10.66%の
水準において米国不動産(NCREIF_NH)に配分されている。このことが、(図 4-10)にある効
率的フロンティアを左上に押し上げる結果につながっている。そしてフルヘッジの場合と同様
に、不動産に投資が不可能な場合に最適ポートフォリオを構成していた日本株式(TOPIX)お
よび米国債券(GSBI_FH)は、不動産に投資が可能な場合は、どの要求期待収益率水準におい
ても最適ポートフォリオを構成することは無くなった。また要求期待収益率が低い水準では、
日本債券が高い配分比率を、要求期待収益率が高い水準では米国株式が高い配分比率を保って
いる。これは米国不動産を除けばヘッジ無しの場合およびフルヘッジの場合と似たポートフォ
リオ構成である。
34
第 4 章 数値実験
4-2-4 MLPM モデルによる効率的フロンティアおよび最適解
平均・下方部分積率モデルによって求められた効率的フロンティアを(図 4-16)に描く(ヘ
ッジ無しの場合)。
20.00
15.00
不動産資産に投資が可能な場合
10.00
期待収益率(%)
不動産資産に投資が不可能な場合
5.00
0.00
0.00
20.00
40.00
60.00
80.00
100.00
120.00
-5.00
-10.00
リスク(LPM)
図 4-16 効率的フロンティア(NH) MLPM モデル
(図 4-16)より、ヘッジ無しの場合には平均・分散モデルで得られた結果と同様に、不動産
資産に投資が可能でも、あまり効率的フロンティアは移動していない。なおリスクは LPM で
ある。
35
第 4 章 数値実験
平均・下方部分積率モデルによって求められた効率的フロンティアを(図 4-17)に描く(フ
ルヘッジした場合)。
20.00
15.00
不動産資産に投資が可能な場合
期待収益率(%)
10.00
不動産資産に投資が不可能な場合
5.00
0.00
0.00
10.00
20.00
30.00
40.00
50.00
60.00
-5.00
-10.00
リスク(標準偏差)
図 4-17 効率的フロンティア(FH) MLPM モデル
(図 4-17)より平均・分散モデルで得られた結果と同様に、フルヘッジの場合には期待収益
率水準が低い場合には、不動産がリスクを減らすことに寄与している。
36
第 4 章 数値実験
平均・下方部分積率モデルによって求められた効率的フロンティアを(図 4-18)に描く(最
適ヘッジした場合)。
20.00
不動産資産に投資が可能な場合
15.00
不動産資産に投資が不可能な場合
期待収益率(%)
10.00
5.00
0.00
0.00
20.00
40.00
60.00
80.00
100.00 120.00 140.00 160.00 180.00 200.00
-5.00
-10.00
リスク(LPM)
図 4-18 効率的フロンティア(OH) MLPM モデル
(図 4-18)より平均・分散モデルで得られた結果と同様に、最適ヘッジの場合には期待収益
率水準が低い場合には、不動産がリスクを減らすことに寄与している。
次に、不動産資産への投資が可能な場合と不可能な場合について、「ヘッジ無し(NH)」、「フ
ルヘッジ(FH)」および「最適ヘッジ(OH)」のそれぞれのデータセットについて最適解の要
求期待収益率毎の推移を示す(図 4-19)∼(図 4-24)。
37
第 4 章 数値実験
100%
90%
80%
最適投資比率
70%
TOPIX
SP500_NH
SLRI
NikkoCBPI
NikkoBPI
NCREIF_NH
GSBI_NH
60%
50%
40%
30%
20%
10%
15.58
15.06
14.54
14.02
13.50
12.98
12.46
11.94
11.42
10.90
9.86
10.38
9.34
8.82
8.30
7.78
7.26
6.74
6.22
0%
収益率(%)
図 4-19 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が可能な場合(NH) MLPM モデル
100%
90%
80%
TOPIX
SP500_NH
NikkoCBPI
NikkoBPI
GSBI_NH
60%
50%
40%
30%
20%
10%
15.58
15.06
14.54
14.02
13.50
12.98
12.46
11.94
11.42
10.90
10.38
9.86
9.34
8.82
8.30
7.78
7.26
6.74
0%
6.22
最適投資比率
70%
収益率(%)
図 4-20 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が不可能な場合(NH)MLPM モデル
38
第 4 章 数値実験
100%
90%
80%
最適投資比率
70%
TOPIX
SP500_FH
SLRI
NikkoCBPI
NikkoBPI
NCREIF_FH
GSBI_FH
60%
50%
40%
30%
20%
10%
13.50
13.04
12.58
12.12
11.66
11.20
10.74
10.28
9.82
9.36
8.90
8.44
7.98
7.52
7.06
6.60
6.14
5.68
5.22
0%
収益率(%)
図 4-21 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が可能な場合(FH)MLPM モデル
100%
90%
80%
TOPIX
SP500_FH
NikkoCBPI
NikkoBPI
GSBI_FH
60%
50%
40%
30%
20%
10%
13.50
13.04
12.58
12.12
11.66
11.20
10.74
10.28
9.82
9.36
8.90
8.44
7.98
7.52
7.06
6.60
6.14
5.68
0%
5.22
最適投資比率
70%
収益率(%)
図 4-22 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が不可能な場合(FH)MLPM モデル
39
第 4 章 数値実験
100%
90%
80%
SP500_NH
NCREIF_NH
GSBI_NH
TOPIX
SP500_FH
SLRI
NikkoCBPI
NikkoBPI
NCREIF_FH
GSBI_FH
最適投資比率
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
15.86
15.30
14.74
14.18
13.62
13.06
12.50
11.94
11.38
10.82
10.26
9.70
9.14
8.58
8.02
7.46
6.90
6.34
5.78
5.22
0%
収益率(%)
図 4-23 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が可能な場合(OH)MLPM モデル
100%
90%
80%
SP500_NH
GSBI_NH
TOPIX
SP500_FH
NikkoCBPI
NikkoBPI
GSBI_FH
60%
50%
40%
30%
20%
10%
15.86
15.30
14.74
14.18
13.62
13.06
12.50
11.94
11.38
10.82
10.26
9.70
9.14
8.58
8.02
7.46
6.90
6.34
5.78
0%
5.22
最適投資比率
70%
収益率(%)
図 4-24 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が不可能な場合(OH)MLPM モデル
40
第 4 章 数値実験
(図 4-19)
、(図 4-20)より、ヘッジ無しの場合には、要求期待収益率が 6.22%∼8.78%の水
準においては米国不動産(NCREIF_NH)にある程度、配分されている。しかし、その他の水
準では、不動産は全く組み入れられてはいない。このことが、
(図 4-8)にある効率的フロンテ
ィアがあまり移動していない原因である。また要求期待収益率が低い水準では、日本債券
( NikkoBPI ) が 高 い 配分 比 率 を 、要 求 期 待 収益 率 が 11.00% 水 準 付 近で は 日 本 転換 社 債
(NikkoCBPI)が高い配分比率を、要求期待収益率が高い水準では米国株式(SP500_NH)が高
い配分比率を保っているなど、平均・分散モデルで得られて最適資産配分比率とほぼ同様であ
る。
(図 4-21)
、(図 4-22)より、フルヘッジの場合には、要求期待収益率が 5.22%∼10.78%の
水準において米国不動産(NCREIF_FH)に配分されている。このことが、(図 4-9)にある効
率的フロンティアを左上に押し上げる結果につながっている。そして、不動産に投資が不可能
な場合に最適ポートフォリオを構成していた日本株式(TOPIX)および米国債券(GSBI_FH)
は、不動産に投資が可能な場合は、どの要求期待収益率水準においても最適ポートフォリオを
構成することは無くなった。また要求期待収益率が低い水準では、日本債券(NikkoBPI)が高
い配分比率を、要求期待収益率が高い水準では米国株式(SP500_FH)が高い配分比率を保っ
ている。これは米国不動産(NCREIF_FH)を除けばヘッジ無しの場合と似たポートフォリオ構
成である。
(図 4-23)
、(図 4-24)より、最適ヘッジの場合には、要求期待収益率が 5.22%∼10.78%の
水準において米国不動産(NCREIF_NH)に配分されている。このことが、(図 4-10)にある効
率的フロンティアを左上に押し上げる結果につながっている。そしてフルヘッジの場合と同様
に、不動産に投資が不可能な場合に最適ポートフォリオを構成していた日本株式(TOPIX)お
よび米国債券(GSBI_FH)は、不動産に投資が可能な場合は、どの要求期待収益率水準におい
ても最適ポートフォリオを構成することは無くなった。また要求期待収益率が低い水準では日
本債券(NikkoBPI)が高い配分比率を、要求期待収益率が高い水準では、米国株式(SP500_FH)
が高い配分比率を保っている。これは米国不動産(NCREIF_FH)を除けばヘッジ無しの場合お
よびフルヘッジの場合と似たポートフォリオ構成である。
41
第 4 章 数値実験
4-3 数値実験-(II)
4-3-1 数値実験-(II)のデータセット
数値実験-(II)では、{日本株式、日本債券、日本転換社債、日本不動産}の 4 資産に投資が可
能な場合と、{日本株式、日本債券、日本転換社債}の 3 資産に投資が可能な場合について比較
分析する。なお各資産のベンチマークとして、
(表 4-1)にあるインデックスを用いた。
各インデックスはそれぞれの資産クラス市場全体の動向を表す投資収益指標である。データ
入手期間の関係から 1985∼1999 年のヒストリカル・データ(年次収益率)を用いて分析をお
こなった。まずは各資産の年次収益率の推移を示す。
60
TOPIX
NikkoBPI
NikkoCBPI
SLRI
20
0
19
85
19
86
19
87
19
88
19
89
19
90
19
91
19
92
19
93
19
94
19
95
19
96
19
97
19
98
19
99
収益率 (%)
40
-20
-40
期間
図 4-25 年次収益率(1985-1999)
また各資産の基本統計量および相関係数は次の通りである(表 4-7)(表 4-8)。
表 4-7 基本統計量(1985-1999)
TOPIX
期待収益率
標準偏差
歪度
尖度
最大値
最小値
7.47
26.71
0.30
-0.06
58.44
-39.83
NikkoBPI
NikkoCBPI SLRI
6.33
8.56
6.87
4.73
14.64
21.93
-0.25
-0.50
1.02
-1.03
1.75
-0.04
12.85
34.84
53.13
-1.51
-27.04
-15.29
42
第 4 章 数値実験
表 4-8 相関係数(1985-1999)
TOPIX
TOPIX
NikkoBPI
NikkoCBPI
SLRI
NikkoBPI
1.00
0.08
0.86
0.41
NikkoCBPI
1.00
0.35
0.02
SLRI
1.00
0.28
1.00
(表 4-7)より、最も標準偏差が小さい資産は日本債券(NikkoBPI)であり、最も期待収益
率が高い日本転換社債(NikkoBPI)である。(表 4-8)より、日本不動産(SLRI)と最も高い
相関解がみられる資産は日本株式(TOPIX)であり、逆に最も低い相関関係がみられるのは日
本債券(NikkoBPI)であった。リスク・リターン特性をプロットする。
10.00
NikkoCBPI
TOPIX
7.50
期待収益率(%)
NikkoBPI
SLRI
5.00
2.50
0.00
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
30.00
リスク(標準偏差)
図 4-26 リスク・リターン特性(1985-1999)
43
第 4 章 数値実験
4-3-2 数値実験-(II)の条件設定
使用モデル
平均・分散モデル(MV)
平均・下方部分積率モデル(2 次)(MLPM)
パラメータ
目標収益率(MLPM モデル)
・ポートフォリオの期待収益率
要求期待収益率
・6.36%∼8.56% 0.02%刻み
4-3-3 MV モデルによる効率的フロンティアおよび最適解
平均・分散モデルによって求められた効率的フロンティアを(図 4-27)に描く。
10.00
不動産資産に投資が可能な場合
7.50
期待収益率(%)
不動産資産に投資が不可能な場合
5.00
2.50
0.00
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
30.00
リスク(標準偏差)
図 4-27 効率的フロンティア MV モデル(数値実験-(II))
(図 4-27)より、不動産に投資が可能でも、あまり効率的フロンティアは移動していない。
44
第 4 章 数値実験
100%
90%
80%
最適投資比率
70%
60%
TOPIX
SLRI
NikkoCBPI
NikkoBPI
50%
40%
30%
20%
10%
8.52
8.40
8.28
8.16
8.04
7.92
7.80
7.68
7.56
7.44
7.32
7.20
7.08
6.96
6.84
6.72
6.60
6.48
6.36
0%
収益率(%)
図 4-28 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が可能な場合
100%
90%
80%
60%
TOPIX
NikkoCBPI
NikkoBPI
50%
40%
30%
20%
10%
8.52
8.40
8.28
8.16
8.04
7.92
7.80
7.68
7.56
7.44
7.32
7.20
7.08
6.96
6.84
6.72
6.60
6.48
0%
6.36
最適投資比率
70%
収益率(%)
図 4-29 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が不可能な場合
45
第 4 章 数値実験
(図 4-28)、(図 4-29)より要求期待収益率が 6.36%∼7.38%の水準においては日本不動産
(SLRI)がほんの少し、配分されている。しかし、その他の水準では、不動産は全く組み入れ
られてはいない。このことが、(図 4-27)にある効率的フロンティアがあまり移動していない
原因である。また要求期待収益率が低い水準では日本債券(NikkoBPI)が高い配分比率を、要
求期待収益率が高い水準では日本転換社債(NikkoBPI)が高い配分比率を保っている。
4-3-4 MLPM モデルによる効率的フロンティアおよび最適解
平均・下方部分積率モデルによって求められた効率的フロンティアを(図 4-16)に描く。
10.00
不動産資産に投資が可能な場合
7.50
期待収益率(%)
不動産資産に投資が不可能な場合
5.00
2.50
0.00
0.00
20.00
40.00
60.00
80.00
100.00
120.00
リスク(LPM)
図 4-30 効率的フロンティア MLPM モデル(数値実験-(II))
(図 4-30)より、不動産に投資が可能は、わずかに効率的フロンティアは移動している。
46
第 4 章 数値実験
100%
90%
80%
最適投資比率
70%
60%
TOPIX
SLRI
NikkoCBPI
NikkoBPI
50%
40%
30%
20%
10%
8.52
8.40
8.28
8.16
8.04
7.92
7.80
7.68
7.56
7.44
7.32
7.20
7.08
6.96
6.84
6.72
6.60
6.48
6.36
0%
収益率(%)
図 4-31 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が可能な場合 MLPM モデル
100%
90%
80%
最適投資比率
70%
60%
TOPIX
NikkoCBPI
NikkoBPI
50%
40%
30%
20%
10%
8.52
8.40
8.28
8.16
8.04
7.92
7.80
7.68
7.56
7.44
7.32
7.20
7.08
6.96
6.84
6.72
6.60
6.48
6.36
0%
収益率(%)
図 4-32 最適投資比率の推移
不動産資産に投資が不可能な場合 MLPM モデル
47
第 4 章 数値実験
(図 4-31)、(図 4-32)より要求期待収益率が 6.36%∼8.54%の広い範囲において日本不動産
(SLRI)に、配分されている。このことが、(図 4-30)にある効率的フロンティアを左上に押
し上げる結果につながっている。また平均・モデルで得られた最適資産配分比率と同様に、要
求期待収益率が低い水準では債券が高い配分比率を、要求期待収益率が高い水準では転換社債
が高い配分比率を保っている。
48
第 5 章 結論および今後の課題
第5章 結論および今後の課題
49
第 5 章 結論および今後の課題
5-1 結論および今後の課題
本論文では、1996 年に日本で初めて公表された不動産インデックス(住生総研不動産インデ
ックス)のデータを不動産資産の利回りとして用いて、機関投資家にとって代表的な投資対象
である株式・債券と資産特性の比較をおこなった。その結果、日本の不動産資産は日本債券と
低い相関関係を持つことが確認できた。また、米国の不動産資産も米国債券と低い相関関係を
持つことが確認できた。さらに、日本の不動産資産と米国の不動産資産との間に高い相関関係
があることも確認できた。しかしこの関係は、為替レートを考慮しない場合であって、実際の
為替レートを適用すると、あまり高い相関関係はみられなかった。しかし為替をフルにヘッジ
した場合には、高い相関関係がみられた。
平均・分散モデルを用いて、最適ポートフォリオを構築し、不動産資産に投資が可能な場合
と、不可能な場合との違いについて分析をおこなった。その結果、期待収益率水準が低い場合
において、不動産資産をポートフォリオに組入れることが可能な場合、効率的フロンティアを
左上に押し上げ、投資家は分散投資効果を得ることが確認できた。また平均・下方部分積率モ
デルを用いて最適ポートフォリオの構築も試みたが、結果は平均・分散モデルと違いはあまり
なかった。
しかし今回の数値実験では、インデックスが公表されてから期間があまり経っていないため
に、限られた期間のデータしか入手できなかった。よって、今後の課題としてデータを追加し
た場合の数値実験の結果を分析することが挙げられる。
50
参考文献
[1] J.L.Pagliari Jr., J.R.Webb, J.J.Del Casino[1995]“Applying MPT to Institutional Real Estate
Portfolios : The Good, The Bad and Uncertain”, Journal of Real Estate Portfolio Management,
Vol.1, No.1, p.88-97
[2] 山田和利[1998]”アセットクラスとしての不動産投資と収益率”, 証券アナリストジャー
ナル, Vol.36, No.12, p.29-40
[3] 住友生命総合研究所[1999]”1999 年 住生総研不動産インデックス(第 7 回)”, 住友生
命総合研究所
[4] 枇々木規雄[2001]「金融工学と最適化」, 朝倉書店
[5] 松村徹、篠原二三夫、岡正規[1999]「不動産証券化入門」, シグマベイスキャピタル
[6] 不動産シンジケーション協議会[2001]「不動産証券化ハンドブック 2001」, 不動産シン
ジケーション協議会
[7] 片山さつき[1998]「SPC 法とは何か」, 日経 BP 社
「国際証券投資 基礎と応用」,
[8] ブルーノ・ソニック, 住友信託銀行/NTT データ通信訳[1991]
東洋経済新報社
51
謝辞
本論文の作成にあたり、数多くの貴重な助言を下さり、ご指導をして下さった慶應義塾大学
理工学部管理工学科の枇々木規雄専任講師には、深く感謝するとともに、心より御礼を申し上
げます。
ならびに、慶應義塾大学理工学部管理工学科の福川忠昭教授にも、本研究に対し数々の貴重
な助言を頂き、大変感謝しております。
さらに、共に研究を行い、様々な議論を交わした枇々木研究室修士課程 2 年の石田晃敬君、
楠多加成君、高城圭輔君、中安浩君、にも深く感謝しております。
また、枇々木研究室修士課程 1 年の大木秀一郎、大嵩崎裕資、藤木貴久、堀内映をはじめ、
萩原章君やおよび同研究室学部 4 年生の後輩達にも、様々な援助をしてくれたことに対して感
謝するとともに、今後の活躍を期待しています。
最後に、いつも暖かく見守っていてくれた家族に対し、感謝の意を述べたいと思います。
慶應義塾大学大学院 理工学研究科 開放環境科学専攻
菊地 睦
52