2014 年 3 月 27 日 ストラテジストコラム(第 185 号)-日銀を見ず、景気を見よ- 大和住銀投信投資顧問 経済調査部長 門司 総一郎 最近の日本の株式市場では日本銀行に市場参加者の注目が集中しており、上がっても下がっても日銀のせい。今 年に入ってからの下落も「ウクライナ情勢や中国の理財商品への懸念」といいながらも、他市場以上の日本株の下 落が大きい点については「追加緩和が先送りされたため」との解説が大勢です。 これが間違っているとはいいませんが、そもそもリーマン・ショック以前の株式市場を見る際の常識は「1 に景 気、2 に業績」で金融政策は 3 番目ぐらいでした。そこで、今回のストラテジストコラムは足元の日本株について、 景気の状況と比較しながら検討してみます。 TOPIXと景気後退局面( 週次) 1800 1600 1400 景気後退局面 TOPIX 1200 1000 800 600 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 出所:Thomson Reuters、直近の景気の谷を2012年11月としているが、これは当社推定による 2011年 2012年 2013年 2014年 日本の景気は 2012 年 4 月を山に後退局面入りしていましたが、12 年 11 月頃に谷をつけて景気後退から脱却した 模様です。2012 年央以降ボックス圏で推移していた TOPIX は、11 月から上昇に転じましたが、当時は「自民党政権 に交代することにより、日銀の追加緩和観測への圧力が強まることを期待した」との解説がなされました。しかし、 上の図を見る限りでは素直に「景気後退が終わったから株価が上がった」という方が正しそうです。 鉱工業生産指数とTOPIX(月次) 日本の実質GDP成長率( 四半期、前期比年率) 110 1400 5% 4% 100 1200 当社予想 3% 2% 90 1000 80 800 1% 0% -1% 鉱工業生産指数(左) 実質GDP -3% TOPIX(右) 70 2009年 2010年 2011年 出所:Thomson Reuters -2% 600 2012年 2013年 2014年 -4% Q1 12 Q1 13 Q1 14 Q1 15 出所:内閣府、大和住銀投信投資顧問、四半期は暦年ベース 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したものです。 情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点における当社の判断に基づくも ので、今後予告なしに変更されることがあります。投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。 1 常に景気で株式市場の動きを説明できる訳ではありません。例えば 2009 年の秋以降は鉱工業生産指数が上昇し ているにもかかわらず TOPIX は下落しましたが、これは 2009 年 9 月に誕生した民主党政権が八ッ場ダム建設や普天 間基地の移設に関して迷走、政治が機能不全に陥ったことが原因です。 逆に 2012 年 11 月から翌年 5 月にかけては鉱工業生産指数以上に TOPX が大きく上昇した形になっていますが、 これは金融政策だけでなく、景気対策や環太平洋経済連携協定(TPP)参加表明、アルジェリアでのテロへの対応など も含めた包括的な「安倍政権はよくやっている」との評価が景気の回復以上に株価を押し上げたためです。 足元の日本株の不振も景気の観点から説明できます。当社では 2014 年 1-3 月の GDP は消費税率引上げ前の駆け 込み需要の効果で前期比年率 3.1%の高い伸びを見込んでいますが、4-6 月はその反動で▲3.1%と予想しています。 この場合、今年に入ってからの TOPIX の下落は 4-6 月の景気の落ち込みを織り込むものと解釈できます。 しかし当社は 7-9 月には日本経済はプラス成長に復帰、その後も成長率は徐々に高まっていくと予想しています。 この見通しが正しければ、TOPIX は早ければ 4 月初めにでも上昇に転じるでしょう。実際、消費税が導入された 1989 年と税率が引き上げられた 1997 年のいずれにおいても、税率引き上げ前の 1-3 月の TOPIX は軟調ですが、3 月末な いしは 4 月初めを境に上昇に転じています。 消費税導入前後のTopi x の推移( 日次) 消費税率引上げ前後のTopi x の推移( 日次) 2800 1600 2700 Topix 1550 Topix 1500 2600 1450 2500 1400 2400 2300 89年1月 出所:Bloomberg 1350 89年4月 89年7月 1300 97年1月 出所:Bloomberg 97年4月 97年7月 以上を踏まえて、今後日本株が上昇するかどうかについて注目すべきは、日銀でなく消費税率引上げ後の景気の 動向であり、7-9 月から持ち直すとの想定の下に株価は上昇すると予想しています。想定に反して 7-9 月も低迷が 続けば、追加緩和があっても日本株は上昇しないとの見方です。 以上 参考文献 ストラテジストコラム第 149 号「 『覚悟の』解散・総選挙」(中編、2012 年 11 月 20 日) 、同第 176 号「消費税と景気/株式市場」 (2013 年 9 月 30 日) 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したものです。 情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点における当社の判断に基づくも ので、今後予告なしに変更されることがあります。投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。 2
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