気になる言葉:みそ汁は、食べる?吸う?啜る?飲む? —『NHK気になる

気になる言葉
になる言葉:
言葉:みそ汁
みそ汁は、食べる?
べる?吸う?啜る?飲む?
—『NHK
NHK気
を紹介する
NHK気になることば—
になることば—調べてナットク
べてナットク意外
ナットク意外な
意外な発見!
発見!—』を
紹介する
汪昭伶
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はじめに
最近、書店へ行くたびに、気がづくのは、日本語の教材が多彩で、豊富にな
ってきたことです。それで、学習者や教育者にとって、選択肢が多くなって、
楽しく勉強することができると思います。でも、どの本を手にしてみても、動
詞の部分はごく基本的な日常活動から導入されています。例えば、起きますや
行きます、食べますなどがあります。
でも、気になるのは、たいていの本は「食べます」と「飲みます」を紹介す
る「課」で、「みそ汁」をその「課」の単語として、取り入れていないことで
あります。
筆者は授業の中で、「食べます」と「飲みます」を紹介するとき、できるだ
け、わかりやすいねらいでもあって、敢えて「歯」を使って、歯で噛むかどう
かを基準にして、
「食べます」と「飲みます」を使い分けています。それから、
例を挙げて、代入練習を行います。
次は、代入練習の例を紹介します。
筆者は黒板に「~を 食べます。~を 飲みます。
」と書いておきます。
そして、(パン)を提示します。
学習者:パンを 食べます。
筆者 :(スープ)を提示します。
学習者:スープを 飲みます。
・
・
・
筆者 :(みそ汁)を提示します。
学習者:みそ汁を飲みます。
または、みそ汁を食べます。
「みそ汁」は飲みますか、食べますか。NHKが出版した『NHK
NHK気
NHK気になる
ことば—
べてナットク
ナットク意外
意外な
発見!
(以下:
『気になることば』と称する)
ことば
—調べて
ナットク
意外
な発見
!—』
の内容の一部を紹介して、適当な答えを見つけて行きたいと考えます。
1 お椀物のいただき方
かつて、イギリスのサッチャー氏が首相として、東京で出席したサミットの
晩餐会で、日本料理を担当した料理人の後継者である田村 暉昭氏が書いた料
1
理本の内容を照らして、
「みそ汁」や「お吸い物」のいただき方を紹介します。
「まず、お椀のふたをあけ、お椀を両手で持って汁を一口いただきます
いただきます①。
いただきます
それからお箸で椀種(お椀の中心の魚介類の具)
、椀づま(添えの野菜の具)
をいただく
いただく②わけですが、…」
(参考文献 2 P.154)
いただく
「お吸い物は汁と具を交互に、しかもお膳に戻さず一度にいただく
いただく③のが礼
いただく
儀、といわれます」(参考文献 2 P156)
「いただく」は「食べます」と「飲みます」の謙遜語であります。上述の引
用文の中から、①の「いただく」は「飲みます」の意味で、②のは「食べます」
の意味で、③のはどちらも意味していることがうかがわれます。
さて、「みそ汁」は飲みますか、食べますか。日本料理の達人が書いた内容
から、どちらでも使えることが分かると思われます。
2
正しいお味噌汁をいただく四動作(?)
人々はよりいい人間関係を築くために、円滑なコミュニケーションは欠かせ
ないと思います。筆者が授業のとき、いつも心掛けて、単に言葉や文字通りに
説明することではなく、できるだけ、語感も含めて紹介することに注意を払っ
ています。
例えば、ロールプレイで
A:わたしは来週世界旅行に行きます。
B:①そうですか。(いいですね。
)
②そうですか。↗(?)
イントネーションによって、聞き手が受け取ったニュアンスを学習者と一緒
に考えたり、話し合ったりしています。会話の中で、話者がどんな意味合いで
話しているのですか。そして、聞き手にどんな気持ちが伝わされているのです
か。とっても大事なことだと思います。
また、私たちが普段、大規模な調査を行うのに、無理なことが多いと思われ
ます。でも、NHKなら、信憑性が高く、参考にあたる価値が多いと思います。
そのゆえ、NHKが出版した『気になることば』の内容を引用して、「おみ
と汁」のいただき
いただき方を紹介して、それぞれの表現を吟味していくと考えます。
いただき
「
『現代日本語方言大辞典』を見ると、全国には『食べる』『飲む』『吸う』
『啜る』という言い方があるようです。
『みそ汁を食べる』…和歌山の一部、山口、香川、愛媛など。
『みそ汁を吸う』……秋田や山形など東北や、三重や滋賀
滋賀などの関西、佐賀・
滋賀
熊本・大分などの九州、他にも千葉、石川、高知など。
2
『みそ汁を啜る』……青森の八戸、茨城、埼玉の一部、滋賀
滋賀の
滋賀の一部など。
一部
『みそ汁を飲む』……全国的に使われる。
」
(参考文献 2 の P.175)
上述の引用文から、うかがわれるのは、どの動詞を使うのか、
「地域によっ
ての特徴はあまり見られないようです」
(参考文献 1 の P.175)
。例えば、同じ
滋賀でも、『みそ汁を吸う』と『みそ汁を啜る』を使って、表現する人々がい
ます。
「では、それぞれの言葉について考えて見ましょう。
」
「『みそ汁を食
食べる』
」
べる と言うと、具がたくさん入っている感じがしますよね。
「『飲
飲む』は、『噛まずに喉に流し込む』こと。
『条件を飲む』と言うと、条
件をそのまま受け入れるという意味になります。」
「『吸
吸 う 』は、『口または鼻を通して引き
入れる』
『口をすぼめるようにして取り入れ
る』ことですから、静かに引き込む感じで
すね。空気、指、ストローも『吸う』ので、
必ずしも喉より奥に入るとは限らないのが
『飲む』との違いです。
」
(出所:参考文献 1 のP.174)
「
『啜
啜る』は、音を立てて引き込むこと。音
がポイントです。ものを吸うときの音の擬
態語という説があります。
『啜』の右側のつ
くりには、
『短い切れ切れの物を連ねる』と
いう意味があり、少しずつ飲んだり舐めた
りすることをいっています。みそ汁やそば
はズズズッと音を立てて啜りますよね」
「同じ液体を口に入れる動作も、微妙な
違いによって表現する言葉が違ってくるの
ですね。
」
(参考文献 1 の P176.)
さて、みそ汁は、「食べる」?「吸う」?「啜る」?「飲む」?どの表現で
も使えると思われますが、スープはどうでしょうか。「音を立てて食べるとマ
ナー違反になりますので」
「スープは『食べる』
『飲む』を使いますね」。
(参考
文献 1 の P.176)要するに、どの動詞を使うのはスープの中に、具が入ってい
るかどうかということだと考えられます。
また、「お吸い物」ついては、お椀の中に「お汁」だけではなく、具もたく
さん入れているので、
『食べる』と『飲む』を交互に使えばいいと思われます。
今度、
「おみそ汁を食べませんか。」と聞かれたら、相手が使った動詞を察し
て、喜んで、山や海の幸がたくさん入っているのではないかと楽しみにしなが
3
ら、いただきましょう。
3
おわりに—語感の重要性
時々、日本人の本音が分からないと聞いたことがありませんか。それは、日
本人ではないわたしたちの声です。それは文化の違いとお互いに違う価値観を
持っていると言わざるをえないと考えられます。しかし、常に、心の中で同じ
ことばでも、何回も振りかえて考えてみれば、なんとなく分かるというときも
あるのではないかと思われる。
また、ことばについて、NHKのアナウンサー梅津正樹氏が『気になること
ば』のまえがきに書いた内容を借りて、まとめたいと思います。
「ことばは生き物です。ことばは時代と共に変わるといわれます」「ことば
に関する意見や疑問が寄せられます…どうやら…ことばの規範を求めている
のですね」。(参考文献 1 の P.13)
「日本人は、文化として『察し合う』ことを重んじてきました。会話でいう
もありますか、少ない言葉数と遠回しな表現から、お互いに察し合ってきたの
です。それが上品であり礼儀に適っているとされるのです。察し合うことがで
きたのは、コミュニケーションの場が極めて限られていたからだと言えないで
しょうか。お互いにほぼ同じ価値観を持ち、ことばに関しては同じ認識を持っ
ている人々の集合体の場だったのではないでしょうか。
」
(参考文献 1 の P.14)
最後に、飲み物に関する問題をもう一つ吟味しましょう。会社や学校に訪ね
てきた人に「飲み物はいかがですか。」と聞いたら、相手に「コーヒーでいい」
と返事されたら、どんな気持ちでいられるのでしょうか。やはり「コーヒーが
いい」と返事してもらいたいですね。助詞「で」と「が」だけの違いで、人は
どんな思いをさせられいるのか。考えてみましょう。
參考文獻:
1. NHKアナウンス室 『NHK気になることば—調べてナットク意外な
発見!—』 東京書籍株式会社 2008 年 12 月 29 日
2. 田村 暉昭 『“日本料理完全手冊”吃法、樂趣、禮儀』漢思有限公司
中華民國 86 年 6 月 1 日
作者簡介
汪昭伶。
汪昭伶。日本立命館大學大學院經營學研究科修士、
日本立命館大學大學院經營學研究科修士、同大學院博士課程修了。
同大學院博士課程修了。現任銘
傳大學應用
傳大學應用日語系、龍華科技大學應
龍華科技大學應用外語系、文化大學推廣教育部、
文化大學推廣教育部、海山高中講師
海山高中講師。
講師。教
授日文及日本企業組織
授日文及日本企業組織管理
日本企業組織管理及台日
管理及台日貿易
及台日貿易關係
貿易關係。
關係。專攻企業經營、
專攻企業經營、會計學。
會計學。
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