[446]春宵一刻値 千金 成語・ことわざ雑記(44)

上野先生と歩こう
中国語遊歩道
『中国のことばと文化Ⅱ』
あたい
[446]春宵一刻 値 千金
成語・ことわざ雑記(44)
(173)“春雨贵如油”
あたい
夏至の頃の雨は確かに「 値 千金」ですが,それ以上にありがたいのが春の雨。
〇“春雨贵如油”
chūnyǔ guì rú yóu
華北一帯では農事にとってもっとも大切な春の種まきの時期に雨が降らず,日照りが続くことが多
いようです。ですから,春の雨は油と同じくらい貴重であるというのです。“贵如油”は“贵似油”
(guì sì yóu)とも。
chūn bù zhòng,qiū bù shōu
〇“春不种,秋不收”
ま
当たり前のことですが,春に種をまかなければ,秋の収穫は望めません。蒔かぬ種は生えぬ。努力
しないで好い結果は得られない。
(174)元祖「値千金」
春宵一刻値千金,
しゅんしょういっ こく あたいせん きん
春 宵 一刻 値 千金,
はな
せい こう あ
花有淸香月有陰。
花に清香有り
歌管樓臺聲細細,
歌管
鞦韆院落夜沈沈。
か か ん
しゅうせん
鞦韆
ろうだい
かげ あ
こえ さいさい
楼台
声細細,
いんらく
院落
と う ば
つき
月に陰有り。
よる ちんちん
夜沈沈。
そしょく
ご存じ東坡の号で知られる北宋の蘇軾の「春夜」詩です。ここにも「値千金」が出てきました。元
祖「値千金」といったところでしょうか。
別に難しい詩ではありません。後半の二句は歌や管弦でにぎわっていた楼台も次第に静まりはじめ,
中庭のぶらんこも乗る人がなく,夜はしんしんとふけていく,くらいの意味でしょう。
(175)蘇軾の詩句が起源?
ピンイン
ついでに,上の詩の簡体字と拼音も記しておきましょう。題名の“春夜”は Chūnyè,作者の“苏
轼”は Sū shì,号の“东坡”は Dōngpō です。
春宵一刻值千金,
Chūn xiāo yī kè zhí qiān jīn,
花有清香月有阴。
huā yǒu qīng xiāng yuè yǒu yīn.
歌管楼台声细细,
Gē guǎn lóu tái shēng xì xì,
秋千院落夜沉沉。
qiū qiān yuàn luò yè chén chén.
ところで,上にこの詩が「値千金」の元祖かと記しましたが,或いは「春宵一刻値千金」またはこ
れに類したことわざ的なものがあって,それを蘇東坡が詩中に取り込んだとも考えられそうです。
(176)誰にとって「値千金」?
蘇東坡の詩句が起源かどうかはともかく,「春宵一刻値千金」は今日もことわざ的によく使われて
いるようです。
近刊の温端政主編《俗语大词典》(商務印書館,2015 年 6 月)も,この句を諺語として収めていま
す。その解説が面白いので,原文を引いておきましょう。
指男女欢会或新婚之夜十分宝贵,不可虚度。
あいびき
よい
逢引中の男女や新婚夫婦にとって春の宵はまさに値千金,無駄に,無為にと言うべきか(笑),“不
可虚度”為すこと無く過ごすことを戒めているというのです。
2016/4/1
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