スマートウェイ本格運用に向けて 浜田 誠也 Seiya Hamada プロジェクト推進部 部長 わが国では、これまで先進的な ITS 技術を用いて多様なサービスを組み込んだ次世代の道路 「SMARTWAY」 の推進に取り組んでいる。 国土交通省国土技術政策総合研究所の近年の取り組みとしては、 ITS 技術を用いた次世代道路サービス提供システムの官民共同研究と成果発表の場である「スマートウ ェイ公開実験」や「SMARTWAY2007 デモ」を実施し、内外の方々に広く公開したことである。 2009 年 4 月からのスマートウェイの本格運用を目指すなか、当機構はその活動を支援しており、その 実現に向けた取り組み概要を紹介する。 1.はじめに スマートウェイは、国土交通省が関係企業や 団体と連携して推進しており、その取り組みと して、官民共同で開発した新しい ITS 車載器を 2004年 スマートウェイ推進会議 提言「ITS、セカンドステージへ」 2005年 官民共同研究開始(23社参加) 2006年 スマートウェイ公開実験 DEMO2006 2007年 車載器の規格・仕様の策定(JEITA) 使った情報提供の実用化を行っている。 2004 年 8 月のスマートウェイ推進会議より 「ITS、 セカンドステージへ」 の提言を受け、 2005 年には国と民間企業 23 社とで共同研究を 開始し、2006 年 2 月には、つくば市にある国土 技術政策総合研究所のテストコースにおいて、 首都高速道路における実証実験(30社参加) スマートウェイ2007デモ(31社参加) 公開実験デモ 2006 を実施し、成果を披露した。 2007 年 5 月は、国、首都高速道路及び民間企 図−1 検討経緯 業 31 社が参加し、首都高速道路で実証実験を行った。 この実験結果を踏まえ、サービスの改善を施したものを、スマートウェイ 2007 デモで公開した。 検討経緯を図−1に示す。 本稿では、2009 年 4 月からのスマートウェイの本格運用に向け、DSRC応用サービスの概要、スマ ートウェイ 2007 デモで実施した内容及び 2008 年 2 月に実施する試行運用の評価内容について紹介する。 2.5.8GHz-DSRC のサービスの特徴 スマートウェイにおいては、5.8GHz-DSRC による以下の特徴を持ったサービスを実現する。 ①大容量通信 大容量通信により、音声や静止画など、より分かりやすい情報が提供可能になる。図−2にイメー ジを示す。 図−2 音声及び静止画提供イメージ ②狭域性・即時性 渋滞末尾や合流車の接近を瞬時かつ確実に提供し、安全性が向上する。図−3にイメージを示す。 図−3 渋滞末尾及び合流車接近に関する情報提供イメージ ③双方向通信 情報提供のみならず、車両からのプローブ情報を収集することにより、高精度な道路交通情報の把 握・提供が可能になる。図−4にイメージを示す。 走行履歴等 図−4 プローブ情報収集イメージ ④通信方式の統一 1つの車載器でETC、VICS、安全サービスなど多様なサービスが利用可能になる。図−5に イメージを示す。 カーナビ 新型ETC車載器 図−5 車載器イメージ 3.DSRC応用サービスを実現するシステム構成 DSRC応用サービスを実現するシステムは、車両に搭載するITS車載器、ITS車載器と 5.8GHz-DSRC で通信する路側機及び路側機とネットワーク接続されたサーバー、処理装置で構成され る。システム構成図を図−6に示す。 また、路車間の無線区間インタフェースの階層イメージを図−7に示す。 サーバー、処理装置 路側機 ITS 車載器 センターサーバー 個別アプリ ケーション カーナビ ネット ワーク 管理サーバー クレジット決済 処理装置 基本API セキュリティ (DSRC-SPF) etc. 基本API 5.8GHzDSRC DSRC 通信機能 セキュリティ (DSRC-SPF) DSRC 通信機能 クレジット IC カード サーバー、 処理装置 ITS 対応機能 路側機 図−6 DSRC応用サービスの全体システム構成図 図−7 路車間の無線区間インタフェースの階層イメージ ITS 車載器 4.ITS車載器の概要 (1) ITS車載器の機能要件 ① 道路上における情報提供サービス等については、5.8GHz-DSRC の変調方式として、より通信容量 の大きい QPSK 変調方式を採用する。 ② 車両が走行中、もしくは徐行状態でのサービスではプッシュ型情報配信アプリを利用し、車両 停止中のサービスではプッシュ型情報配信アプリ、もしくは IP 接続を利用する。 ③ 個人情報保護に配慮し、起点周辺のデータを蓄積しない仕組みや、個人の意思によりアップリ ンクを停止できる機能を具備する。 ④クレジットカード決済の際には、利用者の意思確認が必要とする。 (意思確認の手段については 限定しない。 ) ⑤ ITS 車載器に搭載する標準セキュリティとしては DSRC-SPF を推奨する。 (2) ITS車載器の種類 ITS車載器の種類としては、カーナビ部を備えたナビ連携型、DSRC部のみで構成された発 話型がある。機器イメージ及び提供サービス一覧を図−8に示す。 図−8 ナビ連携型及び発話型の機器イメージ及び提供サービス一覧 (3) DSRC部の機能 ① 車載器では AID=18 を通じて、IP 接続及び非 IP 接続が可能とする。 ② IP 接続については、PPP 接続方式を推奨することとし、Ether 接続方式についてはオプションと して利用可能とする。 (4) カーナビ部の機能 ① 静止画像については JPEG、GIF、PNG、BMP 形式、動画は MPEG4 形式を採用する。 ② 音声については TTS、MP4、ADPCM 形式を採用する。 ③ 上記のフォーマットを採用する前提として、カーナビの画面の解像度は WVGA(800×480)とし、 一般的なブラウザを搭載する。 (5) 多目的 IC カードに関する技術資料 ① 既存 ETC 車載器で用いている ISO/IEC7816 に準拠し、これに規定されていない部分については 新たに追加する。 (車載器の供給電圧等) ② ITS車載器で IC カード型汎用クレジットカード決済を行う場合には、EMVカード仕様に準 拠する。 (EMV 認定の取得については路側の対応が必要) 5.5.8GHz-DSRC を応用したITSサービス 5.8GHz-DSRC を応用したITSサービスとしては、安全運転支援情報等の情報提供サービス、道の 駅等における情報接続サービス、駐車場等での決済サービスなどがある。 各サービスの内容を図−9に示す。 情報提供サービス 安 安全 全運 運転 転支 支援 援情 情報 報提 提供 供 道 道路 路交 交通 通情 情報 報提 提供 供 特 特車 車・危 ・危険 険物 物車 車両 両管 管理 理 バ バス スロ ロケ ケシ シス ステ テム ム 優 先 展 開 を 期 待 す る サ ー ビ ス 順 次 展 開 を 期 待 す る サ ー ビ ス ETCを 核 に 様 々 な 自 動 車 利 用 シ ー ンに、安全・安心・快適・便利を提 供 す る DSRC応 用 サ ービ ス の発 展 的 展開へ 情報接続サービス 道 道の の駅 駅に にお おけ ける る情 情報 報接 接続 続 SA・PAに SA・PAにお おけ ける る情 情報 報接 接続 続 情 情報 報ダ ダウ ウン ンロ ロー ードド 広 広告 告配 配信 信 DSRC応用サービス DS RC応用サービス ETC 決済サービス ETC その他サービス 駐 駐車 車場 場料 料金 金決 決済 済 車 車上 上オ オン ンラ ライ イン ンシ ショッ ョッピ ピン ング グ ガ ガソ ソリン リ ンス スタ タン ンド決 ド決済 済 施 施設 設入 入出 出門 門管 管理 理 ドラ ド ライ イブ ブス スル ルー ー決 決済 済 ※ ETCに つ い て は 、従 来 通 り 、 道 路 事 業 者 及 び ORSEに て 運 用 ・管 理 を 行 う 。 カ カー ーフ フェ ェリー リ ー決 決済 済 月 月極 極駐 駐車 車場 場出 出入 入庫 庫管 管理 理 各 各種 種顧 顧客 客管 管理 理 図−9 DSRCを応用したITSサービス 現在 2.5GHz 帯電波ビーコンから VICS 情報として、道路交通情報が提供されている。 今後は 5.8GHz-DSRC の応用サービスにより、VICS の高度化が図られる。2.5GHz 帯電波ビーコンとの 比較を図−10に示す。 図−10 2.5GHz 帯電波ビーコンと 5.8GHz-DSRC の比較 6.スマートウェイ2007デモ (1) 概要 期 間 :2007 年 10 月 14 日(日)∼17 日(水)【14 日(日)はプレ公開日】 会 場 :東京国際フォーラム、首都高速道路、丸ノ内鍛冶橋駐車場 主 催 :国土交通省、国土交通省国土技術政策総合研究所、首都高速株式会社 参加人数 :4 日間の合計で 約 1,650 人、うち体験乗車参加人数は約 670 人、海外からの参加 者は約 50 人、報道機関は 35 社。 (2) 体験乗車 体験乗車コースを図−11に示す。 図−11 体験乗車コース (3) 体験サービス 体験乗車において提供したサービスを図−12に示す。 ・ 前方障害物情報提供 ⑤位置情報の提供(電子標識) この先渋滞 追突注意 ・見通しの悪いカーブ先の停止車両や渋滞を、カ ・ランプ入口等で位置情報とともに、簡単な標識 ーブへの進入前に画像や音声で注意喚起する。 情報を提供する。 ⑥駐車場料金決済 ②前方状況情報提供 この先約1km外 苑入口付近の現 在の状況です 駐車料金は ○○円です ・トンネルや渋滞頻度の高い箇所の道路状況など ・クレジットカードで、駐車場での料金決済がで き、入出庫がキャッシュレスでスムーズになる。 を画像や音声で伝達し、注意喚起する。 ③合流支援 ⑦インターネット接続 左から合流車 注意 ・合流してくる車両の存在を、合流部の手前で、 ・PA 等に駐車中、インターネットに接続可能と 画像や音声で情報提供する。 する。 ④デジタル地図連携の情報提供 この先、急カーブで の事故多し注意 ・カーナビ内蔵のデジタル地図の情報をもとに、 走行速度に応じて画像や音声で注意喚起する。 図−12 体験乗車提供サービス (4) アンケート結果 今回体験されたサービス全体の評価 アンケート集計結果では、全体評価として約 89% (n=444) が肯定的な意見であった。特に、合流支援、前方障 役立たない(魅 力がない), 0.9% あまり役立たな い(あまり魅力 がない), 2.3% 害物情報提供、駐車場料金決済に対する評価が高か った。また、自由意見では「音声の案内はドライバ どちらともいえ ない, 7.4% ーに分かりやすい。 」 「画像表示だけでは脇見を誘発 する。 」 など、 音声による情報提供の評価がよかった。 アンケート結果を図−13に示す。 どちらかといえ ば役立つ(どち らかといえば魅 力がある), 48.2% 役立つ(魅力 がある), 41.2% 無回答=67 図−13 アンケート結果 7.試行運用評価 試行運用では、 「システム機能検証」 、 「システム有効性検証(車両挙動) 」 、 「システム有効性検証(ド ライバー意見) 」の3つの観点から検証する。 ① システム機能検証 路側機、車載器それぞれにおける収集・処理・提供機能が、要件どおり動作するかを検証する。 ② システム有効性検証(車両挙動) 情報を受けたドライバーが、期待する行動を十分に取り得ることができるかを検証する。 [主な評価指標] 急ブレーキ・急ハンドル等の有無等 ③ システム有効性検証(ドライバー意見車両挙動) システムの目指す効果をドライバーが実感できるかを検証する。 [主な評価指標] 効果の実感度合、支払意志、情報提供の有効性、今後の利用意向等 8.今後の展開 首都高での試行運用、三大都市 圏での公道実験を踏まえ、2009 年 4 月からは本格的な ITS 社会の 実現を目指しているところである。 2009 年 4 月から三大都市圏にお いて本格運用が開始となり、次の ステップとして全国に展開し、サ ービスの充実を図っていくことに なる。 展開シナリオを図−14に示す。 図−14 今後の展開シナリオ 9.おわりに 国土交通省では、スマートウェイ推進会議の提言をもとに、2005 年に規格・仕様の策定を行い、2007 年に次世代道路システム提供サービスの公道実験および試行運用を開始し、本格的な ITS 社会を目指 すこととしている。当機構においても、今後のETC施策を含めた DSRC の普及促進および国土交通 省の施策に貢献すべきことを熱望し、今後とも業務を進めていく所存である。
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