学力の確実な定着を目指した学習指導 ∼学習指導ヒント集1∼ 学力の確実な定着を目指した学習指導の実践は,数多く行われています。ここでは,「授業内容や方 法の工夫」に焦点を絞り,特徴的な実践例や,他教科でも応用できる実践例を紹介します。 1 学習課題の工夫の実践例 ① 資料の工夫の例(2つ以上の資料を比較することで思考力・判断力を身に付ける方法) ② 生活に密着した課題の例 (生活に密着した課題で,学習意欲を高め,知識を定着させる方法) 2 ① 教具の工夫の実践例 操作できる教具の例 (操作活動を取り入れて,学ぶ意欲を高め,思考力を身に付ける方法) ② 理解を助ける教具の例 (教具を工夫することで,計算力を身に付ける方法) ③ 視聴覚機器・コンピュータの利用の例 (視聴覚機器やコンピュータを用いて,学ぶ意欲を高め,判断力を身に付ける方法) 3 演習方法の工夫の実践例 ① フラッシュカード(カードを利用して,基礎的な知識を身に付ける方法) ② 百マス計算 (マス目を利用して,基礎的な知識を身に付ける方法) ③ 学習プリント (学習プリントを利用して,基礎的な知識を身に付ける方法) ④ ⑤ 対話方式 パズル (人に話すことで,基礎的な知識を身に付ける方法) (パズルを利用して,基礎的な知識を身に付ける方法) 授業内容や方法の工夫を行う際,以下の点に留意する必要があります。 留意点 1 自校の児童生徒の実態を把握し,定着させたい学力は何かを明確にする。その上 でどのような方法が自校の児童生徒に適しているかを考える。 2 取り入れたい方法が学校全体の教育課程に関係する場合には,全教員での話合い をもち,教育課程の工夫を行う。 3 実施したことについて,有効であったかどうかを検証する。実施の前に検証方法 を決めておくと良い。特に児童生徒の変容を見るためには,実施前と実施後で同じ 調査を行うことが一般的である。 さらに,留意点の3にあるような検証も含めて,実践の評価を行う必要があります。評価の観点とし て,以下のようなものが考えられます。 評価の観点 □ □ □ □ 児童生徒の実態に合った方法であったか。 学力を定着させるのに,有効な方法であったか。 授業での時間配分や支援等は適切であったか。 評価方法は適切であったか。 - 12 - 1 学習課題の工夫の実践例1 ① 資料の工夫の例 (2つ以上の資料を比較することで,思考力・判断力を身に付ける方法) 実践例1 中学校(国語科) 課題「次の2つの作文は,ある生徒が書いた作文Aと,それを直した作文Bです。先に書かれたも のはどちらでしょう。また,そう考えた理由を書きましょう。」(作文省略) 《課題となる作文の留意点》 ・誤字,脱字等の細かいまちがいや,文章表現の誤りで判断する内容ではなく,文章内容で判 断させる作文を作成する。 例 片方の作文は,内容を詳しく,長く書くようにする。 もう一つの作文は,内容を簡潔にまとめ,短く書くようにする。 《授業の展開例》 1 2つの作文を読み,学習シートに自分の考えを記入させる。 2 記入した考えを教師が見て,作文 A・B それぞれの代表を数名選出する。 3 代表者の意見を聞き,自分の考えを深めながら,全体で議論する。(ディベート方式等) 4 最後に自分の考えをもう一度まとめて書かせる。 * 生徒一人一人の考えが深まるように,教師が個別に適切な助言を与える。グループでの話合い を取り入れても良いが,生徒一人一人が自分の考えをもてるよう留意する。 実践例2 小学校6学年(社会科) 「明治維新をつくり上げた人々」 課題「A町にいた町人が,タイムマシンに乗って,X年後のA町へタイムスリップしてしまいまし た。町人はあまりの町の変化にびっくりしました。絵を見て,町人がびっくりしたと思う事 柄を書きましょう。」 * 文明開化前と後の2枚の絵(1863 年頃と 1874 年頃)の日本橋の風景を提示する。 * 2枚の絵は見比べることができるよう,大きく引き延ばしたり,OHP 等で拡大して提示すると よい。 《授業の展開例》 1 2枚の絵を見比べて気付いたことを,プリントに記入させる。 2 明治になって,人々の暮らしがどのように変わったかについて,意見を出し合う。 3 どうして,このような急激な変化が起こったかについて話し合う。 4 わかったことをまとめる。 ●他教科での活用 資料は文章や図等の目で見るものだけでなく,耳で聞くもの等も含まれます。 例 ・国語科(高等学校)・・・古典文学の現代の読み方と,書かれた時代の読み方を聞き比べ,当時の 発音と現在の発音の違いに気付かせる。 ・音楽科・・・グループごとの合奏の中間発表会を行い,各グループの合奏の優れている点から,自 分のグループの課題を考えさせる。 - 13 - 1 学習課題の工夫の実践例2 ② 生活に密着した課題の例 (生活に密着した課題で,学習意欲を高め,知識を定着させる方法) 実践例3 小学校3学年(算数科) 「重さ」 「われら重さ調査隊」 《授業時間について》 この授業は,モジュールの時間設定を活用し,7モジュール(15 分×7 =105 分間)で行ったもの。「重さ」についての学習のまとめ段階で,全 45 モジュールの内の, 30∼36 モジュールの内容である(下表参照)。 《授業の展開例》 1 地域のスーパーに出かけ,食品の重さに関する調査活動をさせる。 ① 50g,100g,500g,1kg の重さ(内容量)の食品を見つける。 ② 重さの表示がない食品は,どんなものか見つける。 ③ 重さを大切にしている食品は,どんなものか見つける。 2 ①②③を記録させる。 3 学校に戻り,調査結果をグループでまとめる(重さを大切にしている食品と,なぜ大切にして いるかについて,グループで話し合わせる)。 《参考》「重さ」単元の指導計画(概要) 小単元 1 *1モジュール・・・15分間 主な学習内容 モジュール 4M ハンガーてんびんを作り,身の回りのものの重さ比べをする。 3M ハンガーてんびんで重さを比べられないものの重さ比べをする。 3M 重さを表す単位(グラム・g)を知り,gを使って重さを表す。 4 3M はかりの目盛りの読み方を理解し,実際に重さをはかる。 5 3M 重さを表す単位(キログラム・kg)を知り,はかりを読み取る。 6 3M いろいろな重さのおもりを作る。 3M 重さの見当をつけて,適当なはかりを選んで重さをはかる。 2 3 7 8 重さの くらべ方 はかりの しくみと はかり方 4M 自分ではかりたいと思うものの重さをはかる。はかり方が難しいもの を探し,実際に重さをはかってみる(いろいろなはかりを準備)。 9 3M 正味,風袋,全体の重さの関係を知る。 10 7M 食品の重さに関心をもち,実際に調べる(実践例3)。 11 3M 調査活動で得た自分の意見を発表し合う。 3M 既習事項の確認をする。 3M ワークテスト 12 13 * たしかめ ハンガーてんびんは,各家庭にあるハンガーを利用して,児童が各自作成するてんびん ●他教科での活用 小学校ではよく取り入れられている方法ですが,生活に密着した課題を取り上げることは,学ぶ意味 を理解する上でも大変重要です。その課題を取り上げるときに,「実践例3」のように実際に体験させ るなど,場の設定等も工夫すると,より効果的なものになります。 例 ・社会科(中学校)・・・公民分野で,実生活にかかわりの深い出来事を考えさせる。 - 14 - 2 教具の工夫の実践例1 ① 操作できる教具の例 (操作活動を取り入れて,学ぶ意欲を高め,思考力を身に付ける方法) 実践例4 小学校5学年(算数科) 「分数のかけ算」 分数色板 5 課題「 × 3 の計算の仕方を考えよう。」 12 《色板のしくみ》(ここでは分数の計算で用いるが,図形の学習等でも用いることが可能) ・ 正六角形を「1」とする。 ・ 正六角形を2等分してできる台形が「2分の1」,6等分してできる正三角形が「6分の1」 というように,全部で6種類の色板を作る。(大きさによって違う色をつける) ・ 組み合わせることで,いろいろな大きさの分数を作ることができる。 1 1 2 1 3 1 4 1 6 1 12 《授業の展開例》 1 「12 分の5」を色板で作らせる。 2 5 ×3 12 3 できた形がいくつなのかを考えさせる。 4 どういう計算方法で答えが出るか,計算方法を考えさせる。 5 他の計算を,見つけた計算方法でやらせてみる(分からない時は,色板を使ってもよいことと なので,「12 分の5」を3つ集めるとどんな形になるか作らせてみる。 する)。 《色板の作成の仕方》 1 コンピュータソフトを用い,右の図のように,正六角形を分割する。 2 右の図を基本に,上の6種類の形を作る。それぞれ複数枚作成し, 同じ形のものに同じ色をつける。 3 マルチラベルシートに,カラー印刷する。 4 厚めの紙に3のマルチラベルシートを貼り,線に沿って切る。 5 一人分の色板を袋に入れて保管する。 * 教師用は大きめに作成し,マグネットシートに貼って,黒板にはれるようにする。 ●他教科での活用 「実践例4」のような色板を,他教科の授業で用いることは難しいかもしれませんが,一般に操作活 動を取り入れることは意欲を高めることにつながるようです。算数・数学科では操作活動をよく取り入 れますが,他教科でも取り入れることは可能です。 例 ・理科(中学校)・・・原子・分子モデルを操作することで,化学反応の仕組みを考える。 - 15 - 2 教具の工夫の実践例2 ② 理解を助ける教具の例 (教具を工夫することで,計算の仕方を理解させる方法) 実践例5 高等学校 理科(物理Ⅱ),工業(電気基礎),水産(電気通信理論) 代入ポケット(数式において,数を代入するときに用いる) 課題「磁気に関するクーロンの法則を用いて,2つの磁極間に働く力を求めよう。」 《代入ポケットの作り方と利用法》 数 を 書 い た カー ・ 厚紙で右図のようなポケット型のものを作る。 ドを準備する。 手前の紙は切り取って,四角い窓を作る。 10 ・ 奥の部分に文字を記入する。 ・ 裏面に板磁石を貼っておき,黒板に貼り付け 奥の紙は手 られるようにしておく。 前より長め ・ ポケットに入る大きさのカードに,指導に必 ・ 数式の中で,数を代入する文字の部分に貼り, 手前の紙には 代入した式が簡単にできるようにする。 窓を作り,奥の ・ 代入ポケットを貼った公式を,あらかじめ作っ 紙に文字を書 ておいてもよい。 く。 ・中・高等学校の数学や理科での利用が可能。 m1 = 4 µ Wb のN極と, m2 = 8µ Wb の 《磁気に関するクーロンの法則とは》 S極を,真空中で r = 4cm の距離におい た時,その間に働く力の大きさF[N] 「2つの磁力間に働く力は,2つの磁極の強さの 積に比例し,両磁極間の距離の2乗に反比例す を計算して求めなさい。 る。」 真空中においては次式になる。 《授業の展開例》 1 公式の確認をする。 2 代入ポケットを用いて公式に数を代入する。 F = 1 4 πµ × 0 = 6 . 33 × 10 * 4 m1 × m r2 µ にする。 要な数を書いたものを用意する。 例題 −6 F = 1 4 πµ × 0 m1 × m r2 2 [N ] この式を変形すると 2 4 × 10 − 6 × 8 × 10 × ( 4 × 10 − 2 ) 2 F = 6 . 33 × 10 4 × −6 m1 × m 2 [N ] r2 * この他に, 「静電気に関するクーロンの法則」 もある。 右のような接頭語を c ×10-2 m ×10-3 μ ×10-6 3 指数の法則に従って,計算をする。 用いる。 6 . 33 × 4 × 8 × 10 4 × 10 = 4 2 × 10 − 4 * −6 × 10 《指導の留意点》 理科で用いる法則や計算は,数学で扱うもの よりも複雑なものがあります。指導に当たって −6 は,以下の点に留意する必要があります。 ・ 接頭語と指数の法則等,計算の方法をどの 程度理解しているかを把握するために,レデ 実数部と指数部に分けて計算するようにする。 「代入ポケット」を移動すると,分かりやすい。 4 何題か練習問題を解く。 ィネステストを実施する。 ・ 実数の乗除,指数の乗除等,計算途中でミ スをしやすいので,計算の仕方を丁寧に説明 する(できれば教具を用いて)。 - 16 - 2 教具の工夫の実践例3 ③ 視聴覚機器・コンピュータの利用の例 (視聴覚機器やコンピュータを用いて,学ぶ意欲を高め,思考力を身に付ける方法) 実践例6 小学校(体育科) ビデオカメラで録画する 課題「跳び箱運動を,より上手にできるようにしよう」 《視聴覚機器の利用の仕方》 1 体育館に,スクリーン,ノートパソコン,プロジェクター,デジタルビデオカメラを準備す る(ビデオカメラとテレビでもよい)。できれば数組準備する。 2 児童の跳び箱運動の様子をカメラで録画し,録画したものを自由に見ることができるように する(児童に操作させてもよい)。 3 自分の演技を自分で見ることによって,自己の課題を見つけて練習を行わせる(模範演技や 他の人の演技も見れるようにしておくと,なおよい)。 * 安全上の問題に,十分配慮する必要があるので,できればTTで行うことが望ましい。 実践例7 中学校(英語科) 《国語科で行っている群読とは?》 テープに録音する 課題「群読をしよう」 国語科で行われている群読を英語科で取り入れ, スキットをグループで工夫して読む。 表現も入れて)で表す方法。 《授業の展開例》(数時間扱いになる) 1 何人かのグループを作り,ひとつの場面 や文章等を,声と音(場合によっては身体 生徒にイメージをもたせるために,教師が作成 ・ 読み方は感情を込め,一人で読んだり 何人かで読んだりして,喜びや悲しみ, した台本にしたがって,全員でスキットの群読を してみる。 2 課題となるスキットを何種類か用意し,グルー プごとに選択させる。 3 各グループで台本を作らせ,練習させる。 * その際,各グループに録音機能のついたカセッ トデッキとカセットテープを用意し,録音したも のを聞きながら修正できるようにさせる。 * 人物の役割を決めて読むだけでなく,国語科の ように台本を作らせ,読み方を工夫させる。 4 最後に全体の発表会を行う。 強調等を表現する。 ・ 効果音(「ザーザー」等,声で言って もよい)を入れたり,歌を入れたり,輪 唱のようにずらして話したり等,自分た ちでいろいろ工夫する。 ・ 群読を行う時には,グループ内でどの ように表現するかを話し合い,独自の台 本を作るのが一般的。 ・ 最後に発表会を行い,お互いのグルー プのよいところ等を評価し合う。 ●他教科での活用 現在はどの学校にもコンピュータが設置されています。インターネット上には,無料で使用できる学 習ソフトや実践例がたくさんあるので,それを利用して学習を進めることが可能です。パワーポイント 等を利用して,児童生徒に発表の工夫をさせることもよいでしょう。また以前から使われているOHP や,教科書やノート等を大きく拡大して見ることのできる実物投影機等,学習の目的に合わせて効果的 な機器を選択することが大切です。 例 ・数学科・・・グラフを描画するソフトを用い,グラフの特徴や書き方を見つけたり,グラフを書く こと,グラフから式を読み取ること等の演習に用いたりする。 - 17 - 3 演習方法の工夫の実践例1 ① フラッシュカード 実践例8 (カードを利用した演習方法) 中学校(国語科) 中学校英語科で一般的に使われているフラッシュカードを,国語科でも利用する。 《利用方法の例》 《英語科で用いている ・ 新出漢字や,読み方に注意が必要な漢字を書いたフラッシュカー フラッシュカードとは》 ドを見せ,読み方を答えさせる。 *裏に読み方を書いておき,読み方の方を掲示して,漢字テスト 手に持てるくらいの大き に使用してもよい。 さに切ったカードに単語 ・ 動詞を書いたフラッシュカードを見せ,活用の種類を答えさせる。 等を書き,次々にめくりな 「歩く」・・・五段活用,「着る」・・・上一段活用 等 がら生徒に読ませたり,意 ・ 単語を書いたフラッシュカードを見せ,品詞を答えさせる。 味を答えさせたりする。 「美しい」・・・形容詞,「ところで」・・・接続詞 等 ・ 作品名を書いたフラッシュカードを見せ,筆者や書かれた時代等を答えさせる。 「枕草子」・・・清少納言,平安時代 「方丈記」・・・鴨長明,鎌倉時代(1212 年∼「ひとにひとに」の方丈記,と覚える)等 実践例9 小学校2学年(算数科) 「九九を覚えよう」 九九の定着のために,フラッシュカードはよく用いられている。 《九九学習でのフラッシュカードの用い方》 ・ 順番に並べて「あがり九九」の練習に用いる。 (○×1,○×2,○×3,・・・の順に) ・ 逆に並べて「さがり九九」の練習に用いる。 (○×9,○×8,○×7,・・・の順に) ・ 順番をそろえずに「とび九九」の練習に用いる。 (順番はランダム) 《フラッシュカードの利用方法の例》 神経衰弱・・・フラッシュカードを小さめに何組か作り,普段からグループ内での練習に用いる。 そのカードを裏返して机の上に並べ,神経衰弱を行う。 ① カードをめくった人は,めくったカードに書かれている九九の式の答えを言う。 例 「2×4」のカードであれば,「にしがはち」と言う。 ② 同じ答えになるカードは,対として認める。 例 「1×6」と対になるのは「2×3」「3×2」「6×1」 ③ 「5×5」が1枚余ったら終わり。カードの多い人が勝ち。 ●他教科での活用 フラッシュカードは,単純に答えられるものが適しています。一斉に答えさせることも,個人個人に 答えさせることもでき,短時間での復習等に取り入れると便利です。教科によってはカードの大きさや 色等を工夫することで,応用範囲が広がるでしょう。 例 ・数学科・・・計算のきまり(正負の数の乗法における符号のきまり等),公式(乗法公式等),図形 の定理等。 ・社会科・・・年号と出来事,改革とそれを行った人,地名と特産物,県名と県庁所在地等。 ・理 科・・・元素記号や化学式と名称,消化器官と消化酵素等。 - 18 - 3 演習方法の工夫の実践例2 ② 百マス計算 (マス目を利用した演習方法) 実践例 10 中学校1学年(数学科) 「正負の数」 百マス計算 小学校で一般的に行われている百マス計算 ( 月 を,中学校でも利用する。 5 (右の例は, 「正負の数」の加法) 日) 氏名( -2 11 -7 ) 4 -1 3 9 -6 -8 2 -5 《百マス計算のやり方》 1 11マス×11マスの枠を作る。 -3 2 左端の1列と最上段に,ランダムに数 -9 7 を入れる。 3 時間を計って,一斉に取り組ませる。 10 4 左上のマスから,1段ずつ順番に取り -4 8 組ませる。 5 「正負の数」(加法) 慣れてきたら,数字を生徒に決めさせ 1 ても良い。 -6 かかった時間( 得 点 ( * 単純な計算のきまりを習得させるのが目的。 計算途中を書かなければならない問題には, 適さない。 分 秒) /100 問) 実践例 11 国語科 漢字の練習に百マス計算の方法を利用したやり方。 《漢字練習のやり方》 1 6×6のマスを作る。 2 左端の1列に,50 音の好きな行を入れ 漢字練習( 月 日) 氏名( ) あ い き く ん る。 最上段はマス目がたくさん埋まるよう さ 朝 再 先 草 三 なものを選んで入れる(慣れてきたら, し 足 石 式 串 新 す 明日 水 好き 空く 寸 せ 汗 成 席 癖 専 そ 阿蘇 磯 基礎 即 損 問 25問) 3 自分で考えさせてもよい)。 4 時間を計って,一斉に取り組ませる。 5 「し」と「き」のぶつかるマスには, 「し き」もしくは「きし」という読みの漢字 を入れる(音読み・訓読み,どちらでも可)。 ( 6 解答は教師が行う。もしくは児童生徒 に辞書をひかせてもよい。 / ●他教科での活用 百マス計算は,単純な計算の力をつけるだけでなく,集中力も高める方法です。同じように,簡単に 答えが書け,集中すればより短時間でできるような課題の演習に適しています。フラッシュカード同様, 授業の最初に毎時間取り入れる等,繰り返すことで,一層効果が上がる方法です。 例 ・国語科・・・動詞の活用形。右端1列に「活用形」,最上段に「動詞」(この場合は縦列が6マス)。 - 19 - 3 演習方法の工夫の実践例3 ③ 学習プリント(コース別) (コース別学習プリントを利用した演習方法) 実践例 12 中学校2学年(数学) 「連立方程式」 《コース別学習プリントの用い方》 一斉授業の中で個々が演習をするときに用いるもの。用い方はいろいろあるが,一般的なもの は以下のとおり。 1 生徒に自分でやりたいコースを選ばせる。確認問題で何問正解したかで,自動的にコース を決める方法もある(下の「学習プリント」参照)。 2 選んだコースが終わったら,各自で採点する(採点用のプリントをコース別に用意してお き,終わった生徒が取りに来て自己採点したり,解答コーナーを設けて解答を掲示しておい たり,教師が一人一人丸をつけたり,等の方法がある)。 3 プリントが終わっても時間が余る生徒には,別に演習問題を用意しておく(授業で用いて いる問題集等)。 学習プリント「連立方程式」 【確認問題】次の計算をしなさい。 2 x + y = 7 (1) 3x − y = 3 4 x − 3 y = −10 (2) 4 x + 5 y = 6 氏名 【ステップ1】次の空欄にあてはまる記号や数 を入れなさい。 2 x + 5 y = 12 2 x + 3 y = 8 問題 (3)・・・以下問題省略 コース分けをするための確認問題を 2 x + 5 y = 12 ・・・① 数問のせます。正解数によって,進む 2x + 3y = 8 ・・・② コースが決まります。 = この例示はすべてのコースを1枚 にしていますが,別プリントにする ③を□に代入 →ステップ2へ →ステップ3へ − 6 x + y = −7 − 6 x + 5 y = 13 (1) * 以下,問題省略 【ステップ3】次の計算をしなさい。 ここは,その時間 のねらいが達成 − 5 x + 2 y = 9 − 3 y − 5 x = −26 (1) できるような段 階の問題を解く コースです。 するコース です。 2 x +□×□=□ 2 x +□=□ 2 x =□ x =□ x =□ ,y =□ 正解数0∼1→ステップ1へ 【ステップ2】次の計算をしなさい。 に戻ってや り方を確認 = 方が利用しやすいと思います。 正解数2∼ 全問正解 ・・・③ ここは,基本 * 以下,問題省略 ここは,発展的な問 題を解くコースで す。 ●他教科での活用 算数・数学科ではどの単元でも利用が可能ですが,自分で学習するということができる年齢になって から取り入れるとよいと思います。繰り返し書いて,定着させたいような内容のものに適しています。 ・ 理科・・・計算を伴う分野(電流等)や,法則に従って繰り返し練習する必要のある分野(磁力等)。 - 20 - 3 演習方法の工夫の実践例4 ④ 対話方式 (人に話すことで,基礎的な知識を身に付ける方法) 実践例 13 中学校(英語科) 《英語科で用いられる対話方式の例》 ・ 2人組になり,基本構文に従って一人が質問したことにもう一人が答える。その後,役割を 交替して行う。 ・ 質問文と答え方を一斉に練習した後,自由に立ち歩いてできるだけたくさんの人と会話す る。 ・ いろいろなキーワードを記入したカードをランダムに配り,英語で自由に会話しながら,目 的のキーワードを持っている人を探す。(下の例示参照) 課題「私は名探偵ホームズ 配布カード例 である。犯人は2人いる。 犯人の手がかりは次のと ① London おり。手がかりを頼りに ② 28 犯人を見つけてくれ。」 ③ Nancy 犯人1 《授業の展開例》 1 基本構文を全体で練習する。 2 左の例のようなカードを人数分作成 し,全生徒に配布する(全員に違うカー ドを渡す)。 3 全員が席を立って自由に歩き回り,全 ①出身地はロンドン ① Tokyo 体で練習した構文を用いて相手に質問 ②年齢は28歳 ② 28 ③ Tom し,犯人役のカードを持った人を探す。 ③名前はナンシー 答える人も英語で答える(犯人を見つけ 犯人2 ても,他の人には言わずに,時間内は会 ①出身地は東京 ②年齢は35歳 ③名前はマイケル ① London ② 35 ③ Nancy 話を続ける) 。 4 犯人に該当するカードが配布された生 徒は,自分が犯人だということは口外せ ずに,もう一人の犯人を探す。 実践例 14 中学校(数学科)「平行と合同」 課題「三角形の内角の和が180度になる理由を説明せよ」 《授業の展開例》 1 個々で考える(補助線をどこに引くか,それにより等しい 角がどこにできたか,三角形の内角の和が180度であるのは なぜか,という手順で) 。 * 考え方がわからない生徒には,補助線の入ったヒントカード を用いる。 2 ペアを組み,お互いに自分の考えを相手に説明する。 3 全体で解答を何種類か確認した後,自分が最もよいと感じた 方法について,お互いに順序立てて相手に説明する。 《数学科における説明の意義》 数学は,結果や答えだけでな く,それを導き出すまでの過程 が大切な教科。自分の考えを順 序立てて書いたり,筋道を立て て他人に説明したりすること で,知識が定着するだけでな く,論理的な思考力を育成する ことができる。 ●他教科での活用 ・国語科・・・「あるもの」について,おおまかなヒントから,徐々に絞り込んだヒントを出していき, 「あるもの」が何かをできるだけ早く当てさせる。類推する力を身に付けさせる方法。 (例 「いちご」・・・ヒント1「食べられるもの」,ヒント2「赤いもの」,ヒント3「くだもの」等) - 21 - 3 演習方法の工夫の実践例5 ⑤ パズル (パズルを利用して,基礎的な知識を身に付ける方法) 実践例 15 小学校(社会科) シークパズル パズルを用いて,ゲーム感覚で知識の定着を図る。単元のまとめとして,生徒にパズルを作成させ, お互いに解き合ってもよい。 《シークパズルの作成方法》 1 マス目の大きさを決める (例では5×5)。 2 単元に関連する語句の文 字を,枠内の縦・横・なな めに並ぶように配置する。 3 あ ら く ひ か け づ で い た ち よ ち ざ な 1 し の ぶ な が か け ん ち り 2 1と4の人物が活躍した ○○○桃山時代 本能寺の変を起こした ○○○光秀 4 天下統一を成し遂げた 豊臣○○○○ 5 * 本能寺の変で命を落とした 織田○○○○ 3 2で配置した語句のヒン トを考える。 語句のヒント 4の人物が行った政策 ○○○と○○○○○ 取り組ませるときは,語句の解答欄を作っておくとよい。 実践例 16 中学校1学年(数学科) 「空間図形」 立体○×パズル ○ 3次元の○×パズルを用いて,空間における直線の位置 関係(平行や垂直等)の感覚を養う方法。 ○ ○ × ○ ○ ○ × × 《立体○×パズルのルール》 1 2人組を作り,ジャンケンで先攻を決める。 2 先攻が○,後攻が×を, 「たて」 「横」 「ななめ」に3 つずつ並ぶように,変わりばんこにマス目に書いてい ○ × × × ○ ○ ○ × く。 ○ 3 お互いに 13 個ずつ書いたら(1マス余る),蛍光マ ○ ーカーで3つ並んでいるところをチェックする × (右図参照) 。 × × × 4 より多く,3つ並べた方が勝ち(見落としてチェッ クできなかったら,得点にならない)。 * 右の例は○が5,×が4で,○の勝ち。 ●他教科での活用 ・ 英語科・・・単語のシークパズルや立体クロスワードパズル ・ 国語科・・・熟語や文学作品等の,漢字のシークパズルや立体クロスワードパズル ・ 社会科・・・県の特産品のシークパズルや立体クロスワードパズル - 22 - × × ○
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