情報番号:20062451 テーマ:買わせる心理学その6−お客様の信頼を得るポイント 編著者:(株)ビジネスラポール 鈴木丈織 ◆ お客様の警戒心を解く心理テクニックの1∼お客様の信頼を得るポイント 1.お客様の警戒心を知る お客様に会うチャンスを得ても、契約にたどり着くまでにはさらに高いハー ドルが待ち構えています。そのハードルが低くなれば、または、なくなればセ ールスもずいぶんやりやすくなるでしょう。高いハードルとは、お客様の持っ ている警戒心のことです。そのお客様心理を知り、警戒心を解きほぐしてお客 様の信頼を得ることがセールスの必勝法なのです。 お客様心理を考えてみましょう。見ず知らずの人に声をかけられたら、だれ でも警戒します。ましてその相手が何かを売ろうとしている人、自分にお金を 払わせようとしているセールスパーソンと分かれば、よりいっそう身構えるで しょう。 お客様が「身構える心理」には、次の 4 つの基本パターンがあります。 ① 騙されるのではないか ② 押しつけられるのではないか ③ 時間がもったいない ④ うるさい つまり、セールスパーソンは、お客様のこの4つの心理を解きほぐしていか なければならないわけです。 4 つの基本パターンに共通しているのは、お客様が「受け身」であることで す。これは、けっして居心地のよい状況ではありません。基本的に、人は「受 け身」にはなりたくないものだからです。 「話すのが苦手」という人は多くいますが、「話を聞く」ほうがもっと苦痛 なのです。しかも、それが自分に実害をもたらしかねない話だったとしたら、 なおさらのことです。 だから、聞かされる、やらされるのではなく、自分の意思でやりたいです。 モノを買うにしても、人に勧められたからではなく、自分で買うと決めたのだ と思いたい。時間にしても、相手に束縛されるのではなく、相手のために「つ くってあげた」と思いたいのです。 この意識が持てると人は相手に対して親近感を抱きます。反対に、そう思え なければ、相手に疑いを持つようになります。それが警戒心につながり、やが *この情報の無断コピーを禁じます。 (株)経営ソフトリサーチ・レファレンス事業部 1 て無気力・無関心につながっていきます。 つまり、親近感と警戒心は表裏一体。親近感が増えれば警戒心が消え、警戒 心が増えれば親近感は減るわけです。この関係は、ぜひ覚えておきましょう。 2.騙されやすいタイプと騙されにくいタイプ お客様の警戒心を解く方法を考えましょう。それには前述の4つの心理につ いて、もう少し分析が必要です。 まず、人が「騙されるのではないか」と思うのは、うまい事ばかり言う話を 聞かされたとき。「甘い話にはウラがある」とだれでもが思ってしまいます。 絶対にウソだろう、と瞬間的に感じてしまうのです。それでもいわゆる悪徳商 法は後を絶ちません。慎重に警戒しているにもかかわらず、すっかり騙されて しまう人がいるのです。 相手は明らかにお客様を騙す巧妙なウソをついています。それには、大きく 2つのパターンがあります。 1つは、真実を 1、2割だけ混ぜてウソをつくパターン。もう1つは、最初 に明らかなウソをつき、相手が「ウソだろう?」と見破った後で、「今のはウ ソ。実は∼」とさらに大きなウソをつくパターンです。 中途半端なウソには騙されませんが、ある部分が真実だったり、スケールの 大きなウソだったりすると意外とあっさり騙される、という人の心理に、巧妙 に漬け込んできます。第三者から見れば、騙されるほうが不思議だと思っても、 安物の壺が数百万円といった値段で売れたりするわけです。 実は、「自分はそんなものは買わない」「自分は絶対に騙されない」と思っ ている人ほど、騙されやすいのです。その頑固さが、逆に柔軟な判断力を失わ せているからです。つまり、視野狭窄に陥りがちなため、わずかな真実ですべ てが真実と思い込んだり、自分の判断基準を超える大きなウソをウソと見抜け なくなったりするのです。 しかも、頑固さは「一度信じると疑うことをしなくなる」というところにも 表れます。「ウソだ」という固定概念が崩れると、「真実だ」という固定概念 しか残らなくなるからです。たとえば、小さな約束が何回か守られるだけで、 その人に対する警戒心が解け、大きなウソに気づかなくなります。きわめて単 純な図式が成り立つのです。 ドイツの精神医学者クレッチマーは、人間の気質を体型別に分類しています。 それに当てはめると、やせ型の人は神経質で疑り深く、かえって騙されやすい タイプです。また太った人は社交的で明るく、騙されるというより騙してもら いたい気質があります。こういう人は、逆に騙されにくいかもしれません。 また、概して無口な人は警戒心が強く、むしろ騙されやすいタイプ。逆にお しゃべりな人は、相手の言うことを信じやすいのですが、考えもコロコロ変わ るので騙されにくいといえるでしょう。あくまでも一般論ですが、お客様を知 る上で、参考になります。 *この情報の無断コピーを禁じます。 (株)経営ソフトリサーチ・レファレンス事業部 2 セールスパーソンの立場からいえば、騙されやすい人は一見疑り深いようで すが、懇切丁寧に説明していけば強い味方になってくれる可能性があるという ことです。 騙されやすい人、騙されにくい人 タイ プ やせ型 一般的な気質の傾向 内 閉 的 である一 方 、理 想 主 義 的 な考 え方 に陥 りやすいのが特 徴 。生 真 面 目 でユーモアを解 さず劣 等 意 識 には過 剰 に反 応 しやすい。 神 経 質 で疑 り深 い。 騙 されやすい! 筋肉質 几 帳 面 で凝 り性 ・感 情 的 な起 伏 に乏 し く 、 物 事 に 動 じ ない。 保 守 的 で 礼 儀 を重 んじる。 騙 されにくい! 肥満型 非 常 に社 交 的 である反 面 、気 分 の起 伏 が激 し いお天 気 屋 。 考 え 方 は現 実 的 で、 直 感 的 に判 断 する 傾 向 が強 い。 騙 してもら いたいが、騙 されにくい! 3.お客様の信頼を得る心理テクニック 「騙されるのではないか」というお客様心理に対しては、警戒心を覆すよう な心理テクニックが有効です。それには「データ」を示すことです。 扱っている商品の実績を数字で示すのは、セールスの常套手段です。客観的 なデータをウソでない証明としてアピールするのです。発売からどれくらい販 売されているのか、どのようなお客様が買っているのか、どのようなメリット があるのかなど、グラフや図を使って視覚に訴える工夫が必要でしょう。 さらに、類似の他社商品と比較するのも効果的です。例えば、住宅販売のセ ールスなら、地震対策が大きな比較ポイントになるでしょう。特に先の耐震偽 装マンション問題の影響で、お客様にとって非常に関心の高いテーマになって いるはずです。 そこで、マンションか一戸建てかを迷っているお客様には「一戸建てなら耐 震偽装はあり得ません。心配ご無用です」と一戸建てのメリットを強調します。 *この情報の無断コピーを禁じます。 (株)経営ソフトリサーチ・レファレンス事業部 3 基準値を大きく下回ったマンションの新聞記事などを持参すれば、より説得力 が増すでしょう。 住宅の地震対策には、免震、耐震、制震があります。工法との関係もあり専 門的にこれらがどう違うのか、お客様にはよくわかりません。そこで、お客様 に分かる言葉で、それぞれを説明しつつ、自社物件のメリットをアピールして いけばよいのです。 例えば免震なら、地震の衝撃を 10 分の 1 に緩和します。一方、制震は 5 分 の 1 です。自社物件が免震の場合は、この部分の数字を強調できます。 しかし、免震は価格が 200 万円ほど上乗せされる上、建設するのに 1 メート ルほど余計に土地を空けておく必要があります。土地の面積が同じなら、その 分だけ家が小さくなるわけです。一方、制震のコストは 20 万円ほどで済み、 土地もそれほど必要ありません。自社物件が制震なら、この部分を強調すれば いいでしょう。 ただし、双方のデメリットをしっかり話すことも重要です。最初に述べたよ うに、「よいこと尽くし」ではかえって怪しまれます。プラス面もマイナス面 も披露した上で、お客様に判断してもらうことが大切なのです。 4.「将来予測」でお客様を説得する きちんとした根拠を前提とした、未来に対する予測をお客様に提示できれば、 非常に説得力のあるデータになります。 例えば、先の住宅の例でいえば、地震の発生を示す統計です。 「このあたりは過去何年おきに大きな地震が起きている」 「だから、あと数年のうちに起きる可能性が高い」 「ちなみに、前回の地震では○○戸の家屋が倒壊した」 「だから、今のうちにしっかり対策を立てておく必要がある」 などです。新聞や雑誌の記事、インターネットなどから白書など出典の確か なデータを利用すると、より真実味が増します。 あるいは、自社や商品の「成長予想図」として、売上予測やシェア予想を信 憑性のある根拠とともにグラフに描いて説明するのです。 もっとも、地震の予測にしても商品の売れ行きにしても、100%証拠のある データとは言えません。真実ではないかもしれません。しかし、先のことはだ れにもわかりません。肝心なのは根拠であり、しっかりしたものの見方です。 デタラメではない、しっかりとしたデータの裏づけを取るために、材料集めと、 説得力のある説明の努力は欠かせないものです。 (執筆者) (株)ビジネスラポール 心理学博士 代表取締役 鈴木丈織 掲載内容の無断転載を禁じます。 *この情報の無断コピーを禁じます。 (株)経営ソフトリサーチ・レファレンス事業部 4
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