ロボットベンチャー

ロボットベンチャー それぞれの道
2000 年ごろ、複数のロボットベンチャーが創業した。当時、世の中ではソニーの 4 足歩行ロボット「AIBO」やホンダの 2 足
歩行ロボット「ASIMO」などの影響もあって大きなロボットブームが起きていた。従来型の産業用ロボットではない、いわゆる
「次世代サービスロボット」が今後の「新産業分野」として大きく成長すると多くの人が期待したのである。
それから、多くのプロトタイプロボットが作られて実証実験された「愛知万博(愛・地球博)
」や、リーマンショックによる世界
同時不況を経て、10 年が経過した。ロボットベンチャー各社はこの 10 年間のあいだ、それぞれ独自のロボットを発表し続け、
徐々に異なるカラーをもつようになってきた。創業からほぼ 10 年を経たいま、どんな状況で何を模索しているのか話を聴いた。
森山 和道(サイエンスライター)
「ロボットベンチャー」から「ロボッ
トカーベンチャー」へ ZMP
ら。だからうちのユーザーも部品メーカー
がどんどん広がるでしょうね。予算も市場
が多いんです」
も全然違いますし」
車輪で動き回るロボットスピーカー
たとえば、センシングによる自律移動や
既に施設内での移動やちょっとした資材
「miuro」や 家 庭 用 二 足 歩 行 ロ ボ ッ ト
障害物回避、落下防止などロボットでは当
の運搬などに使いたいという引き合いもあ
「nuvo」を展開した株式会社ゼットエム
たり前のことをやろうとしても意外と既存
る。ただまだ開発して一年程度なので、ま
ピー(ZMP、設立:2001 年 1 月 30 日)
の自動車の改造では難しいのだ。つまり
だまだこれからだという。
はいま、自動車の電動化、すなわち電気自
ZMP では、EV の部品メーカーに対して、
動車(EV)向けのソリューションに注力し
中身がいじれるカーロボティクス・プラッ
い。ロボティクスの積み重ねで付加価値を
ている。代表取締役社長の谷口恒氏は「収
トフォームを提供しようとしているわけ
付け加えたい」と何度も強調した。例えば
益は今が一番いい」と語る。
だ。
自動で走ったり、対話するロボットカー
谷口氏は「もっとロボットらしくした
だ。意外とそういうことができるメーカー
「今はチャンスです。自動車の電動化ソ
部品メーカーといっても自動車部品メー
リューション、すなわち EV 業界は一時期
カーは、規模も大きい。テストコースも
のロボットと似てるところがある。若く
持っているし、潤沢な予算も、高い問題意
「電気自動車は電池とモーターとイン
は少ないのかもしれない。
識や技術もある。そういう人たちが自由に
バーターがあればできるんです。誰でもで
ロボットビジネスの経験があるため、ど
開発中の部品をつけたり、将来どんな技術
きる。でも自動化となると、そこそこ自動
ういうふうにやれば成功するか、コツも見
が必要になりそうか検討するためのプラッ
車の技術がないとできない。けっこうハー
えているという。
トフォームが ZMP のカービジネスの中
ドルも高いんですよ。ラジコンと違って車
核だ。谷口氏も「かなり引き合いがありま
ではステアリング設計や強度設計がないと
す」と自信を見せる。
できませんから」
て、いろんな人が入ってるんです」
たとえば、これまでのロボット開発の経
験を活かして「ロボットという付加価値」
自動車の自動化ハンドルのモジュールだ
を EV につけることができるのも大きな
三つ目のベンチャーの勝ち目は、ニッ
メリットだ。
「ロボット」+「EV」はかなり
チな EV だ。普通の自動車をやろうとして
キャッチーだという。
も、大企業にはかなわない。そこで高齢
「アイデア次第で、いままでできてない
者・福祉用、あるいは都市での近距離移動
ことができちゃうんですよ。例えばどのく
に使うコミューターなどだ。上述のとおり
らいで止まったらいいのかチューニングし
一つ目は高電圧高電流のハーネス、ケー
ZMP が主にやろうとしているのは開発環
たいでしょう。それはメーカーの車を買っ
ブルなど部品関係を手がけること。これは
境の提供だが、機会があれば福祉用自動車
てきてもできない。でもうちの車を買って
まず定石だろう。
を作ってもいいと考えているという。
くれば、オープンライブラリですからソフ
谷口氏によればベンチャーが EV を手が
ける場合、
「勝ち目」は 3 つある。
けでも売れると踏んでいる。
トウェア次第なんです。ハンドルを切る、
二つ目は周辺ビジネスである。自動車を
EV の世界はロボットより楽な面もある
EV に移行する時にはシミュレーションや
そうだ。たとえばロボットだと 1msec 単
ブレーキをかけるといってもいろんなかけ
分析/開発のためのプラットフォーム環境
位の世界だが、EV ならば 100msec 程度
かたがある。クルマだと回生ブレーキがき
が必要になる。ソフトウェア・ハードウェ
のフレームレートで十分だし、ロボットと
く。起電力もマイナスでかえってくるんで
ア両面において、開発のための周辺環境を
違って自動車は道路を走ると決まっている
すよ。ラジコンモーターだと弱電ですが、
提供するのだ。これが、今の ZMP が主に
し、認識すべき物体も道路標識など限定し
車はパワーエレクトロニクスだから違う領
手がけている領域だ。
ているというわけだ。
域になります。ドライブ制御も福祉車両は
「たとえば自動車メーカーは実車も持っ
これからは全面的に「カー」のみに移行
G がかからないようにかけるとか、人に
てますから実験ができるんですが、部品
するのだろうか。こう聞くと、ロボットと
あわせて自動学習させたりとか。それはロ
メーカーはできないんです。電気自動車を
カーロボティクスの間には共通点が多い、
ボットが得意な領域ですから」
買って来てセンサーを入れようとしても搭
と谷口氏は答えた。
「カーは車輪型ロボッ
特に、既存の自動車の感覚でやってない
載マイコンの中はブラックボックスですか
トですから。ただ、ビジネスとしてはカー
人が面白いものを作ると思う、ともともと
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