スポーツ医・科学2014【PDF:2MB】

スポーツ医・科学
2014
Vol.25
スポーツ医・科学 Vol.25
Journal of Sports Medicine & Science Vol. 25
2015年5月 11 日 印刷
2015年5月 19 日 発行
発行者 熊 澤 雅 樹
発行所 公益財団法人 スポーツ医・科学研究所
〒470-2212 愛知県知多郡阿久比町大字卯坂
字浅間裏49番地の9
電 話(0569)48-7383(代表)
FAX(0569)48-0183
http://www.sorc.or.jp/
印刷所 株式会社 マ ル ワ
巻 頭 言
公益財団法人スポーツ医・科学研究所 所長代行 熊 澤 雅 樹
2020 年に東京でオリンピック・パラリンピックが開催されることが決まり、国内でのスポーツに
対する関心の高まりや、各種競技人口の増加が見込まれます。スポーツを行うことで体力増進、各種
疾病の予防が期待される一方で、個人の体力に見合っていない運動や長期間にわたる運動負荷による
障害の発生も危惧されます。そのような障害発生の予防としてスポーツ医科学の役割は大きく、その
一端として当所でランナーズセミナーやアンチエイジングセミナーを開催し好評をいただいておりま
す。
また昨年は、フィギュアスケート選手が頭部外傷の直後に試合に出場したり、高校野球で延長 50
回を投手一人が連日投げ切るという試合があり、けがをおしての強行出場や、体を酷使してスポーツ
を行うことを美徳とするような風潮が残存しているような気もします。選手の安全を第一とするよう
なルール作りなどが必要と感じました。
昨年は当所を長年にわたり牽引してこられた横江清司所長が退任され顧問として診療、後進の指導
にあたっています。四半世紀を経過して新体制を構築すべく当所のさらなる活性化を職員一同で行っ
ております。
さて今年度もスポーツ医・科学に 7 編の論文を掲載させていただきました。それぞれの論文の概要
について述べます。熊澤らは距骨骨軟骨損傷に対して観血的治療を行った症例を検討し短期的には治
療成績は改善しているが関節症性変化への進行等長期的な経過観察が必要と述べています。岡戸らは
一般市民ランナーのランニング障害について調査しています。半数以上がランニング障害を経験して
おり予防などの啓蒙活動が重要と述べています。当所でのセミナー活動は有効であると考えます。北
岡らは中学女子バスケットボール選手のストップ動作時の個人差について検討しています。膝関節屈
曲角度、下腿前傾角度ともに個人差が大きいことを示しています。外傷に対して危険な角度、安全な
角度を検討し外傷予防プログラムにつなげることが重要と考えます。佐藤らは野球の投球開始時の骨
盤後傾とワインドアップ期の骨盤後傾の関係について報告しています。投球開始時の姿勢の改善が後
の位相での姿勢改善につながる可能性を示しています。金村らは小中学生の腰椎分離症の患者を分析
し野球、サッカーに多く発生していると述べています。競技人口の多さもあり発生率などの検討も必
要と考えます。吉原らは足外がえし筋力の定量化を目的に研究を行っています。検者間の信頼性が高
く他の部位への応用も期待されます。秋葉らは膝前十字靭帯損傷患者の術前指導の効果を検討してい
ます。パンフレットを用いることで不安などを軽減した状態で手術に臨めたことが示されています。
今後も継続が必要な研究もあり、改善、再考すべき点もあろうかと思います。御一読の上忌憚なき
御意見をいただれば幸甚に存じます。
目 次
巻 頭 言
熊 澤 雅 樹
当施設における距骨骨軟骨損傷例の検討
熊 澤 雅 樹,横 江 清 司……… 1
亀 山 泰 一般市民ランナーを対象としたランニング障害に関する実態調査
岡 戸 敦 男,金 村 朋 直……… 5
小 林 寛 和,熊 澤 雅 樹
横 江 清 司 当研究所の利用者における腰椎分離症と診断された小・中学生に関する調査………………… 9
金 村 朋 直,岡 戸 敦 男
熊 澤 雅 樹 中学女子バスケットボール選手のストップ動作における個人差について
北 岡 さなえ,金 村 朋 直…… 13
岡 戸 敦 男 ハンドヘルドダイナモメーターを用いた足外がえし筋力の定量化
吉 原 圭 祐,岡 戸 敦 男…… 17
金 村 朋 直,佐 藤 真 樹
熊 澤 雅 樹,小 林 寛 和
投球動作のワインドアップ期の動的アライメントと投球開始時姿勢の関係
―投球開始時姿勢に関係する要因の検討を含めて―
佐 藤 真 樹,小 林 寛 和…… 21
金 村 朋 直,岡 戸 敦 男
膝前十字靱帯再建術を受ける患者の看護(術前指導パンフレットの作成から導入と評価) …… 25
秋 葉 和 子,榊 原 志 依
竹 内 朋 子,上 田 久美子
岡 崎 智 美,安 田 朋 子
1
スポーツ医・科学:Vol,25.2014
当施設における距骨骨軟骨損傷例の検討
Investigation of the osteochondral lesion of talus in our institute
熊澤 雅樹 1,横江 清司 1,亀山 泰 2
Masaki KUMAZAWA1, Kiyoshi YOKOE1, Yasushi KAMEYAMA2,
1
1
2
公益財団法人スポーツ医・科学研究所
InstituteofSportsMedicine&Science
井戸田整形外科 名駅スポーツクリニック
2
IdotaOrthopaedics&MeiekiSportsClini.
Abstract
ThetreatmentforOsteochondrallesion(OCL)oftalusisdecidedforthestateoftheepiphysis,stage,
area,andsizeoflesion.Inthisstudy,Weinvestigatedthemedicalrecordsofthepatientswhowere
treatedwitharthroscopicsurgeryforOCLoftalus.Subjectswere11patientsandanalysedaboutthe
ageatoperation,sex,pasthistoryoftheanklesprain,partofthelesion,operativemethodandankle/
hindfootscaleofJapaneseSocietyforSurgeryoftheFoot(JSSF).Werecognizedthepasthistoryofthe
anklesprainin9cases.Weperformedarthroscopicdrillinganddebridementin9casesandautologous
osteochondral transplantation in 2 cases. JSSF scale Improved from 72.2 to 84.5 after surgery. We
thoughtthatlong-termfollowupsuchastheprogresstoosteoarthritiswasnecessary.
:talus,osteochondrallesion,arthroscopicsurgery
:距骨 ,骨軟骨損傷 ,関節鏡視下手術
距骨骨軟骨損傷(osteochondrallesionoftalus 以下距
骨 OCL)に対する治療法は骨端線残存の有無,病期,
部位,病巣の大きさなどにより決められる.本研究は当
所で距骨 OCL に対して観血的治療を行った症例の予後
St ag eⅠ: sm all ar ea o f co m p r essed su b ch o n d r al b o n e
St ag eⅡ: p ar t i ally d et ach ed f r ag m en t
St ag eⅢ: co m p let ely d et ach ed f r ag m en t
等について検討することを目的とした.
St ag eⅣ: f r ag m en t lo o se i n j o i n t
平成元年6月から平成24年12月までに当所で治療した
距骨OCL25例のうち,関節鏡視下手術を施行した11例
を対象とした.男性6例,女性5例,左側8例,右側3例で
手術時平均年齢は16歳であった.調査項目としては手
術時年齢,性別,発生側,競技種目,競技歴,足関節
捻挫の既往,発生部位,脛骨下端の骨端線残存の有無,
(表1),NelsonらによるMRI
Berndt&HartyのX線分類1)
分類2,3)(表2),ICRS分類を用いた鏡視所見(表3),術式,
術後経過観察期間,競技復帰時期,また治療成績を術前,
G r ad
G r ad
G r ad
G r ad
e1:
e2:
e3:
e4:
2
術後に日本足の外科学会のankle/hindfoot scale(JSSF)
自家骨軟骨柱移植術が2例であった.11例中8例が平均
で評価した.
5.5か月で競技復帰可能であった.JSSFscaleは術前平均
72.2点が術後平均84.5点となっていた(表6).
代表的症例を供覧する.
St ag eⅠ:
St ag eⅡ:
9
(
3
St ag eⅢ:
5 )
3 )
(
2
2
(5
St ag eⅣ:
JSSF scale
19
5.5
(4
JSSF scale
8
(52
)
)
72.2
90)
84.5
(44
100)
手術時年齢は12 ~ 22歳で平均16歳,スポーツ種目で
はバスケットボールが3例,バレーボールが2例,卓球,
陸上,サッカー,クラシックバレエ,野球,テニスが各
14歳テニス部所属の女性.以前から右足関節痛を自覚
1例であった.足関節捻挫の既往は11例中9例に認められ
していたが運動は継続可能であった.平成24年9月に右
た(表4).発生部位としては距骨滑車内側が9例,外側,
足関節を捻挫後疼痛が増強したため近医整形外科を受診
中央が各1例であった.骨端線は11例中4例で残存してい
し距骨骨軟骨損傷と診断され当所を紹介受診した.今回
た.レントゲン分類ではStage1 が4例,Stage2 が1例,
の受傷以前にも足関節内反捻挫の既往があった.初診時
Stage3が5例,Stage4が1例であった.MRI分類では1例
現症では足関節の底屈可動域制限を認め,底背屈強制時
は不明であったがGrade2が4例,Grade3が5例,Grade4
に前方に痛みが出現,前方関節裂隙に圧痛を認めた.歩
が1例であった.術中の鏡視所見では1期が4例,Ⅱ期が3
行時に疼痛がありテニス練習は不可能な状態であった.
例,Ⅲ期が3例,Ⅳ期が1例であった(表5).
術前JSSFscaleは66点であった。
施行した手術方法は鏡視下掻爬,ドリリング術が9例,
初診時の単純レントゲン写真では距骨滑車内側に骨軟
骨片の遊離を認めBerndt&Harty分類stageⅣと判断,関
12~ 22
)
(
16
6
8
節症性変化も認めた(図1).MRI画像ではT2強調画像
)
5
にて骨軟骨片周囲の高信号帯を認め内側に遊離体を認め
3
Nelsonらの分類のGrade4と判断した(図2)
.
3
CT画像では距骨内に骨嚢胞を認め,骨軟骨片の遊離
2
も認めた.また母床に骨硬化像も認めた(図3).保存
1
2~ 12
)
(
5.2
9
2
9
1
1
4
St ag eⅠ 4
St ag eⅢ 5
B er n d t & H ar t y X
N elso n
M R I
IC R S
G r ad e1 0
G r ad e3 5
Ⅰ
Ⅲ
的治療での疼痛改善は困難と考え観血的治療を施行し
)
4
3
7
St ag eⅡ 1
St ag eⅣ 1
G r ad e2 4
G r ad e4 1
Ⅱ
Ⅳ
3
1
正面像
側面像
スポーツ医・科学:Vol,25,2014
3
術式の選択として新井らは病変部位や大きさ,軟骨の
状態,病変の安定性に加えて患者の年齢,活動性,ス
ポーツレベルも考慮すると述べている3).術式としては
母床掻爬術,骨穿孔術,整復固定術,骨軟骨柱移植術な
どが報告されている.熊井らは関節鏡視下骨穿孔術の適
T 1
T 2
T 2
応として骨形成能の高い若年者,新鮮例,早期復帰を希
望する選手,骨軟骨片の連続性が残存し安定性が良好な
症例などと述べている5).本研究では若年者が多く早期
復帰の希望が多かったため骨穿孔術を選択した症例が多
かった.治療成績として熊井らは骨穿孔術は臨床成績で
70%X線成績で60%に良好な結果が得られたと述べて
おり6),嶋らは骨軟骨片不安定例では再手術が必要にな
ることがあると述べている7).またGianniniらは経年的
に治療成績が低下したと述べている8).本研究ではJSSF
scaleは術前72.2点が84.5点に改善した.経過観察期間が
1年以下の症例が半数以上であり関節症性変化の進行な
ど長期的な経過観察が必要と考えられた.
1.当院で距骨骨軟骨損傷に対して観血的治療を行った
症例の予後等を検討した.
た.手術所見では距腿関節内に遊離体を認めこれを摘出
2.11 例中 8 例が競技復帰をはたしていた.
した.距骨滑車内側に軟骨欠損を認め経内果的および前
3.変形性関節症への進行などを含めて今後の長期的な
方から径1.2mm K-wireを用いてドリリングを施行した.
経過観察が必要と思われた.
後療法として術後2日目から足関節可動域訓練を開始、
術後8週で全荷重歩行を開始,術後5か月でジョギングを
開始し術後8か月の時点ではテニス部は時期的に引退し
ていたが体育の授業は参加可能で、日常生活での疼痛は
改善していた.術後JSSFscaleは79点であった.
1)Berndt & Harty M: Transchondral fractures
(osteochondritisdissecans)ofthetalus.JBoneJoint
SurgAm,41-A:988-1020,1959.
2)NelsonDW,etal:Osteochondritisdissecansofthe
talus and knee: prospective comparison of MR and
距骨OCLの発生部位として距骨滑車内側後方や外側
前方に多くみられるが滑車中央部にもまれにみられる.
発生要因としてBerndtらは足関節背屈内返し強制で距
骨滑車外側前方と外果内側関節面が衝突し,また底屈内
返し強制で滑車内側後方と脛骨天蓋面が衝突することで
1)
発生すると述べている .また桑田らは滑車中央部の病
変は足関節捻挫に伴い脛骨天蓋と衝突し発生すると述べ
4)
ている .本研究では病変は滑車内側が9例,外側,中
arthroscopicclassifications.JComputAssistTomogr,
14 ⑸ :804-808,1990.
3)新井賢一郎ほか:距骨骨軟骨損傷に対する関節鏡―
適応と限界―,関節外科,vol27;178-184,2008.
4)桑田卓ほか:距骨滑車中央部に発生した骨軟骨損傷
の 2 例,中四整会誌,14 ⑵ ;159-163,2002.
5)熊井司 : 距骨骨軟骨損傷の診断と治療,関節外科,
vol25;120-130,2006.
央が1例ずつであった.また11例中9例に足関節捻挫の既
6 Kumai T, et al: Arthroscopic drilling for the
往があり過去の報告と同様に外傷との関連が示唆され
treatment osteochondral lesion of the talus. J Bone
た.
jointSurg,81-A:1229-1235,1999.
4
7)嶋洋明ほか:距骨骨軟骨損傷に対する骨髄刺激療法.
整・災外 53:1471-1479,2010.
8)Gianninie S et al: Operative treatment of
osteochondral lesions of the talar dome; current
conceptsreview.FootAnkleInt25:168-175,2004.
スポーツ医・科学:Vol.25,2014
5
一般市民ランナーを対象としたランニング障害に関する実態調査
A survey of running injuries in amateur female runners
岡戸 敦男 1,金村 朋直 1,小林 寛和 2,熊澤 雅樹 1,横江 清司 1
Tsuruo OKADO1,Tomonao KANAMURA1,Hirokazu KOBAYASHI2,
Masaki KUMAZAWA1,and Kiyoshi YOKOE1
1
公益財団法人スポーツ医・科学研究所
1
InstituteofSportsMedicineandScience
2
日本福祉大学健康科学部
2
FacultyofHealthScience,NihonFukushiUniversity
Abstract
Thepurposeofthisstudywastoexaminethecauseoftherunninginjuries,andtopreventtherunning
injuries.
Eightyninefemaleamateurrunnerswereanalyzedonmotivation,mileage,frequency,partandpresent
historyofinjuries.
51peoplehadhistoriesofrunninginjurieswhichdiscontinuedthepracticemorethanaweek,38people
had no histories of that. Running injuries occured the most frequently in the knee joint. There were
significantdifferenceinrunninghistoryandmileagebetweenthecategoryofinjuryhistories.
:runninginjuries,amateurrunners,questionnairesurvey
:ランニング障害,一般市民ランナー,アンケート調査
発生要因について検討した.
2007年に開催された東京マラソン以降のランニングの
再ブームにより,大規模な都市型市民マラソンが各地で
開催されるようになり,ランニング人口は増加の一途を
対象は,2013年10月~ 2014年2月に開催した当所主催
たどっている.笹川スポーツ財団の調査では,2006年の
「ランナーズセミナー」に参加した女性89名とした.対
推計605万人から2010年には推計883万人に,2012年には
象者の年齢の内訳 は,20歳代7名(7.9%),30歳代32名
推計1,009万人に増加したと報告されている
1)2)3)
.一方
で,ランニング人口の増加により,ランニング初心者や
(36.0%),40歳代37名(41.6%),50歳代13名(14.6%)で
あった.
健康増進目的で始めたランナーのランニング障害の発生
が危惧される.
東京マラソン開催以降に実施された一般市民ランナー
を対象としたランニング障害に関する調査報告では,ラ
ンニング障害の受傷経験者は約80%
4)5)
と,非常に高い
調査は,アンケート用紙を使用して実施した.アンケー
トの項目は,1)ランニングを始めた動機,2)1週間
割合で発生している.フルマラソンへの参加機会が増し
以上練習を中止したランニング障害の経験の有無,3)
た一方で,多くのランナーにランニング障害が発生して
ランニング障害の部位(障害経験者のみ),4)年齢,5)
いるといえる.
ランニング歴,6)1週間あたりの走行距離(以下,走
そこで,本研究は一般市民ランナーのランニング障害
の予防に役立てることを目的に,一般市民ランナーを対
象に,ランニング障害に関する実態調査を実施し,障害
行距離),7)
1週間あたりの練習頻度(以下,練習頻度)
である.
4)~7)の項目については,1週間以上練習を中止
6
したランニング障害の経験有無で群分け(既往あり群,
2)1週間以上練習を中止したランニング障害の経験の
既往なし群)し,両群間で比較・検討した.統計学的分
有無:あり51名(57.3%),なし38名(42.7%)であっ
析には,Mann-Whitney’sUtestを用い,有意水準は5%
た(図2).
3)ランニング障害経験ありの51名の障害発生部位:膝
未満とした.
関節が最も多くて31名(60.8%),次いで足部・足関節
19名(37.3%),股関節10名(19.6%)などの順であっ
た(図3).
1)ランニングを始めた動機:健康のため48名(53.9%)
,
ダイエット25名(28.1%),友人の誘い13名(14.6%),
流行6名(6.7%)
,その他19名(21.3%)であった(図1)
.
「健康のため」と答えた48名に限ってみてみると,約
半数の26名(54.2%)がランニング障害を経験していた.
4)年齢:表1のように,既往あり群と既往なし群の差
が有意でなかった(p=0.280).
5)ランニング歴:表2のように,既往あり群と既往な
し群の差が有意であった(p<0.05).
6)走行距離:表3のように,既往あり群と既往なし群
の差が有意であった(p<0.05).
)
60
50
7)練習頻度:表4のように,既往あり群と既往なし群
n = 8 9
48
53.9% )
1 1 1
40
25
28 .1% )
30
13
14.6% )
20
10
19
21.3% )
6
6.7% )
20
30
40
50
p
n = 5 1
5
(9.8)
20
(39.2)
19
(37.3)
7
(13.7)
n = 3 8
2
(5.3)
12
(31.6)
18
(47.4)
6
(15.8)
0
n = 8 9
( )
6
38
42.7% )
51
57.3% )
1
3
5
%
p
5
n = 5 1
0
4
4
23
10
10
(0.0) (7.8) (7.8) (45.1) (19.6) (19.6)
n = 3 8
2
(5.3)
n = 8 9
.28 0
.026 *
2
2
9
16
7
(5.3) (23.7) (42.1) (18.4) (5.3)
:p < .0 5
( )
%
n = 8 9
10k m
)
31
60.8 % )
35
30
25
20
5
0
8 4
50k m
100k m
100k m
n = 5 1
0
21
9
1
19
(0.0) (41.2) (37.3) (17.6) (2.0)
1
(2.0)
n = 3 8
22
2
10
4
0
(5.3) (57.9) (26.3) (10.5) (0.0)
0
(0.0)
n = 8 9
:p < .0 5
p
.022 *
( )
%
19
37.3% )
15
10
n = 5 1
30k m
7
13.7% )
10
19.6% ) 8
7
15.7% )
13.7% )
1
2
3.9% )
2
3
4
7
n = 5 1
0
(0.0)
11
(21.6)
29
(56.9)
11
(21.6)
n = 3 8
2
(5.3)
10
(26.3)
23
(60.5)
3
(7.9)
n = 8 9
p
.074
( )
%
スポーツ医・科学:Vol,25,2014
7
の差が有意でなかった(p=0.074).「2~3日」と答え
ことが推測される.より良いランニングライフをおくる
た者に限ってみてみると,練習日が2日連続(例えば
ためには,効果的なランニング練習およびランニング障
土曜日・日曜日)で実施している者は、既往なし群で
害の予防策を実施することが必要であり,ランニング障
は23名中4名(17.4%)に対して、既往あり群では29名
害の予防に関する啓発活動の重要性があらためて確認さ
中19名(65.5%)であった.
れた.
一般市民ランナーを対象としたランニング障害に関す
1)笹川スポーツ財団:スポーツライフ・データ-スポー
る調査報告において,東京マラソンが開始した2007年
以前の報告では,ランニング障害の受傷経験者は約30%
6)
7)
(32%:54名/170名 ,35%:119名/340名 ,30.3%:71
8)
名/234名 )であったのに対し,2008年以降の報告では,
4)
5)
約80%(80.8%:38名/47名 ,76.0%:76名/100名 )に増
加している.大規模な都市型市民マラソン出場者を対象
ツライフに関する調査報告書:2006.
2)笹川スポーツ財団:スポーツライフ・データ-スポー
ツライフに関する調査報告書:2010.
3)笹川スポーツ財団:スポーツライフ・データ-スポー
ツライフに関する調査報告書:2012.
4)今井寛ほか:市民ランニングチームにおけるラン
とした我々の調査でも50.4%(122名/242名)のランナー
ニング障害の疫学調査.日本臨床スポーツ医学会誌,
が,1週間以上練習を中止したランニング障害の既往を
16(4):157,2008.
9)
有していた .今回の対象でもランニング障害の既往は
5)高尾憲司ほか:一般市民ランナーにおけるランニン
57.3%であり,健康のためにランニングを始めた対象に
グ傷害の実態-ランニングセミナーにおけるアンケー
おいても半数以上のランナーがランニング障害を経験し
ト調査より-.日本体力医学会第 27 回近畿地方会,
ていた.ランニングブームにより,気軽にフルマラソン
予稿集 :2013.
に参加できるようになった一方で,多くの市民ランナー
にランニング障害が発生している実態が確認された.
ランニング障害の部位では,膝関節が最も多く,過去
4)5)6)7)9)
の報告
と同様の結果であり,特に膝関節の障
6)村上秀孝ほか:一般市民ランナーにおける下肢の
ランニング障害-佐伯番匠健康マラソンにおけるアン
ケート調査より-.整形外科と災害外科,46 ⑷ : 12141216,1997.
害に対する予防策を講じる必要があると考える.効果的
7)樽本つぐみほか:一般市民男子ランナーにおける障
な予防策を講じるためには,障害部位の男女差について
害の実態-第 10 回加古川ハーフマラソン大会の実態
も今後検討が必要であると考える.
調査から-.日本体育学会大会号,50:398,1999.
今回の結果から,ランニング歴と走行距離において,
ランニング障害の既往あり群となし群に有意差がみられ
8)樽本つぐみほか:市民ハーフマラソン参加者のラン
ニング障害に関する検討.体力科学,50 ⑹ :988,2001.
た.今回の対象では,年齢,練習頻度よりもランニング
9)岡戸敦男ほか:名古屋ウィメンズマラソン出場者を
歴と走行距離が,ランニング障害の発生要因となり得る
対象としたランニング時間に関する実態調査.東海ス
ことが示唆された.ランニング歴において2群間に差が
ポーツ傷害研究会会誌,31:39-41,2013.
みられたことから,障害予防策はランニング歴の短い時
期から実施することが重要であると考える.
練習頻度では,2群間に差がみられなかったが,「2 ~
3日」と答えた者に限定してみてみると,練習を2日連続
で実施している者の割合は,既往なし群に対して,既往
あり群で高い傾向にあった.このことから,練習を2日
連続で実施している者は,十分な疲労回復ができていな
い状態で,翌日に練習を実施していることが考えられる.
練習日を設定する上で,考慮すべき事項と考える.
以上のことから,多くの一般市民ランナーは,1週間
以上練習を中止したランニング障害の既往を有している
8
スポーツ医・科学:Vol,25,2014
9
当研究所の利用者における腰椎分離症と診断された小・中学生に関する調査
The investigation about elementary school and junior highschool students who
diagnosed Lumbar spondylolysis in Institute of Sports Medicine and Science
金村 朋直,岡戸 敦男,熊澤 雅樹
Tomonao KANAMURA,Tsuruo OKADO,Masaki KUMAZAWA
公益財団法人スポーツ医・科学研究所
InstituteofSportsMedicineandScience
Abstract
Injuries occured in the period of elementary school and junior highschool students influences future
sportsactivity.Soitisimportanttopreventinjuriesintheseperiod.
Lumbar spondylolysis (LS) is a popular injury in the growing phase. It is needed to understand
characteristics of injuries to prevent them. So, to acquire the knowledge connected the prevention of
LS,WeinvestigatedaboutanathleticeventthatLSoccuredfrequentlyfromthedatebase.
Weinvestigatedthedateof25,298playerswhohadvisitedanddiagnosedsomeinjuriesforthedecade
fromApril,2003toMarch,2013.Inallplayers,thekneeinjurywastheleargestoneamongwholebody
parts.Andinelementaryschoolandjuniorhighschoolstudents,thekneeinjurywastheleargest,too.
Aboutathleticevent,baseballwasthelargestinallplayersandelementaryschoolandjuniorhighschool
students.
AndthetopfiveathleticeventsinelementaryschoolandjuniorhighschoolstudentswhodiagnosedLS
wasthesameasthosediagnosedotherinjuries.
:lumbarspondylolysis,elementaryschoolandjuniorhighschoolstudents,athleticevent
:腰椎分離症,小・中学生,競技
施している競技に関して調査を行った.
開設から26年が経過し,スポーツ,医療を取り巻く状
況は開設当時と比べて大きく変化している.当所の利用
者においても,小・中学生の利用者が増加するなどの変
化がみられる.
平成15年4月から平成25年3月までの10年間に当所を受
診した延べ25298人を対象に調査を実施した.
小,中学生の時期,いわゆる学童期に多く発生するス
ポーツ外傷として腰椎分離症やオスグッド・シュラッ
ター病などが挙げられる.これらの外傷・障害は,治療
に際して一定期間の安静加療が必要なだけでなく,後遺
症が残存する可能性もあり,将来のスポーツ活動にも影
当所を受診した利用者のデータベースをもとに,調査
1 ~ 3を実施した.
響を与えかねない.そのため,早期発見はもちろん予防
への取り組みが重要となる.
今回,最近10年間における当所の利用者の傾向につい
て調査した.それとあわせて,小,中学生に頻発する腰
調査1.全年代の利用者に関する調査
⑴ 外傷・障害発生部位
頭部・顔,頚部,胸部,腹部,背部,腰部,肩関節,
椎分離症について,その予防につなげる知見を得るため,
上腕部,肘関節,前腕部,手関節,手部,骨盤・股関
当所を受診して腰椎分離症と診断された小,中学生の実
節,大腿部,膝関節,下腿部,足関節,足部,その他
10
の18部位に分類した.
占 め た. 腰 部11.5%, 足 関 節10.9 %, 肩 関 節9.5%,
⑵ 実施競技
足部8.8%の順に多かった.
利用者の実施している競技について調査した.複
数の競技を実施している場合は,主に実施している
⑵ 実施競技(表 2)
野球が15.7%でもっとも多く,バスケットボール
が15.4%,陸上競技,ハンドボール,ラグビーの順
ものとした.
に多かった.
調査2.小・中学生の利用者に関する調査
調査2.小・中学生の利用者を対象とした調査
⑴ 外傷・障害発生部位
調査1.⑴と同様に18部位に分類した.
小・中学生の利用者は延べ6,645人であった.
⑴ 外傷・障害発生部位(表 3)
⑵ 実施競技
膝関節が26.2%でもっとも多く,肘関節15.8%,足
調査1.⑵と同様に調査した.
調査3.腰椎分離症と診断された利用者に関する調査
部13.1%,腰部12.9%,肩関節7.4%の順に多かった.
⑵ 実施競技(表 4)
⑴ 腰部外傷・障害に占める比率
小・中学生の利用者における腰部外傷のうち,腰
椎分離症が占める比率(腰椎分離症の人数/腰部外
野球がもっとも多く,サッカー,バスケットボー
ル,陸上競技,体操・新体操の順に多かった.
傷の人数×100[単位:%])を算出した.
⑵ 実施競技
腰椎分離症と診断された小・中学生の利用者が,
実施している競技について調査した.
調査1
⑴ 外傷・障害発生部位(表 1)
膝関節
肘関節
足部
腰部
肩関節
足関節
下腿部
骨盤・股関節
大腿部
手部
人数(人)
1,747
1,048
871
862
496
484
344
274
218
162
比率(%)
26.2
15.7
13.1
12.9
7.5
7.3
5.2
4.1
3.3
2.4
野球
サッカー
バスケットボール
陸上競技
体操・新体操
バレーボール
ハンドボール
テニス
水泳
バトミントン
人数(人)
2,213
1,006
888
561
284
256
236
229
171
109
比率(%)
33.2
15.1
13.3
8.4
4.3
3.8
3.5
3.4
2.6
1.6
膝関節が29.9%でもっとも多く,全体の約3割を
膝関節
腰部
足関節
足部
肘関節
下腿部
骨盤・股関節
大腿部
手部
頚部
人数(人)
7,575
2,917
2,710
2,218
1,945
1,555
968
794
749
497
比率(%)
29.9
11.5
9.5
8.8
7.7
6.2
3.8
3.1
3.0
2.0
調査3.腰椎分離症と診断された利用者を対象とした調査
野球
バスケットボール
陸上競技
ハンドボール
ラグビー
テニス
バレーボール
サッカー
ゴルフ・グランドゴルフ
ソフトボール
人数(人)
3,972
3,890
2,388
1,796
1,756
1,156
1,081
717
553
511
比率(%)
15.7
15.4
9.2
7.1
6.9
4.6
4.3
2.8
2.2
2.0
小・中学生の利用者のうち,延べ307人が腰椎分離
症と診断された.
⑴ 腰部外傷・障害に占める比率
腰部の外傷・障害と診断された小・中学生の利用
者は,延べ860人であった.腰椎分離症が腰部外傷・
障害に占める比率は,35.7%であった.
⑵ 実施競技(表5)
腰椎分離症に多い競技の上位5競技は,野球,サッ
カー,バスケットボール,陸上競技,体操・新体操で,
スポーツ医・科学:Vol,25,2014
小・中学生の利用者で多い競技と同じ結果となった.
11
テニス,水泳であったのに対し,腰椎分離症ではバレー
ボール,テニス,水泳,柔道,ハンドボールであった.
野球
サッカー
バスケットボール
陸上競技
体操・新体操
バレーボール
テニス
水泳
柔道
ハンドボール
人数(人)
85
54
33
32
20
17
10
10
9
8
比率(%)
27.7
17.6
10.7
10.4
6.5
5.5
3.3
3.3
2.9
2.6
当所の利用者に関して,腰椎分離症が多く発生する競
技は,小・中学生に多い実施競技とほぼ同じ傾向であり,
腰椎分離症に特徴的な競技はみられなかった.
腰椎分離症は,体幹伸展時に椎間関節に圧縮の応力が
繰り返し加わることで発生するものと考えられている
2)
.今回の調査において発生の多かった上位5競技にお
いて,このような応力が繰り返し強いられる動作が含ま
れているものと考える.
例えば,サッカーにおけるヘディングなどの体幹伸展,
体幹伸展位での回旋を強いられる動作や,新体操や器械
体操での腰椎前弯が増大した姿勢での動作などが挙げら
れる.その他,野球,バスケットボール,陸上競技にお
10年間の研究所利用者の傾向として,外傷部位につい
て,全年代の利用者では膝関節,腰部,足関節,肩関節,
足部の順に多かったのに対して,小・中学生の利用者に
限定すると,膝関節,肘関節,足部,腰部,肩関節の順
いても同様の応力が加わる動作が考えられるが,その詳
細についてはさらなる検討を要する.
今後は,腰椎分離症の発生に関係の深い動作や機能的
要因の特徴について検討を進めたい.
に多い結果となった.
小・中学生の利用者における外傷・障害発生部位に関
しては,上位5部位のうち4部位が全年代の利用者と共通
しており,傾向は,ほぼ同じであった.肘関節のみ小・
1)公益財団法人日本中学校体育連盟 HP 平成 26 年度
中学生において多かったのは,実施競技において,野球
加 盟 校 調 査 集 計 表(http://www18.ocn.ne.jp/~njpa/
がもっとも多かったことと関係したものと考える.
kamei.html)
また,実施競技においては,全年代では野球,バスケッ
2)西良 浩一:腰椎分離症の自然経過(パネルディス
トボール,陸上競技,ハンドボール,ラグビーの順に多
カッション 脊椎疾患の自然経過解明への挑戦)
.日本
かったのに対し,小・中学生の利用者に限定すると,野
整形外科学会雑誌88 ⑸ ,385-392,2014.
球,サッカー,バスケットボール,陸上競技,体操・新
体操の順に多かった.上位5競技のうち,野球,バスケッ
トボール,陸上競技が全年代と小・中学生で共通してい
た.これらの競技の利用者が共通して多かった理由とし
て,野球,陸上競技については競技人口が多いことが考
えられる.バスケットボールについては,中学生に関し
ては部活動で実施している人口が多いこと1),高校生以
上に関してはチーム単位での受診が多いことが,共通し
て上位に入った理由と考えられる.
小・中学生の利用者においてこのような傾向がある中
で,腰椎分離症についてみると,小・中学生における腰
部外傷・障害の35.7%と約1/3を占める結果となった.
腰椎分離症に多い競技の上位5競技は,野球,サッカー,
バスケットボール,陸上競技,体操・新体操と小・中学
生の利用者で多い競技とまったく同じ結果となった.上
位10競技まで広げても,6番目以下の競技が,全外傷・
障害ではソフトボール,バレーボール,ハンドボール,
12
スポーツ医・科学:Vol.25,2014
13
中学女子バスケットボール選手のストップ動作における個人差について
The individual difference between youth basketball players of
a stop-jump task
北岡さなえ,金村 朋直,岡戸 敦男
Sanae KITAOKA,Tomonao KANAMURA,Tsuruo OKADO
公益財団法人スポーツ医・科学研究所
InstituteofSportsMedicineandScience
Abstract
To establish better strategy for injury prevention, it is necessary to understand a characteristic of
subject.Thepurposeofthisstudywastoclearindividualdifferencebetweenyouthfemalebasketball
players of stop-jump task. We analyzed knee flexion angle, ankle dorsiflexion angle during initial foot
contact phase. It was significant difference between individual. It suggested that injury prevention
programshouldbeconsiderindividually.
:theindividualdifference,stop-jumptask,femaleyouthbasketballplayers
:個人差,ストップ動作,中学女子バスケットボール選手
1.4kg/m2,年齢12.6±0.5歳:平均±標準偏差)とした.
競技レベルは,地方大会出場レベルであった.
現在,外傷予防への関心は高まり,さまざまな外傷予
2)課題動作の撮影(図 1)
防プログラムが実施されている.日本バスケットボール
課題動作は,前方へのランニングからのストップ後,
協会はジュニア世代に特化した外傷予防プログラムを作
ジャンプシュートを行うまでの連続した動作とした.
成する
1)2)
など,対象に合わせた内容の実施が進められ
ている.
図1のようにゴールから20mの地点より前方へのラン
ニングを開始し,ストロボの合図後なるべく早くジャ
我々は,女子バスケットボール選手の膝前十字靱帯損
3)
ンプシュートを行うように指示した.ストップは,ス
傷受傷機転に関して,年代による違いを調査した .そ
トライドストップとした.解析の指標として左下肢の
の結果,社会人に比べ,中学生ではストップ動作時に膝
足尖,踵部,外果,腓骨頭,大腿骨外側上顆,大転子
前十字靱帯損傷が多く発生していることが明らかとなっ
に貼付した(図2).対象に課題動作を行わせ,側方よ
た.さらに中学生ではストップ時の動作解析において,
りデジタルビデオカメラ(casio社製,30コマ/秒)に
4)
関節角度変化量の標準偏差が大きい傾向がみられた .
そこで今回,外傷予防プログラムに活かす目的で,中
て撮影した.試行回数は5回とし,左脚でうまくストッ
プ動作を行った3回を採用した.
学女子バスケットボール選手のストップ動作の個人差に
↓
ついて検討した.
↓
20m
1)対象
対象は,測定時に下肢に整形外科的な問題がなく,
練習を実施している中学女子バスケットボール選手5
名( 身 長152.1±5.1cm, 体 重41.5±4.4kg,BMI17.9±
14
3)解 析
解析には,二次元動作解
析ソフトDARTFISH(ダー
1)最後の一歩の膝関節屈曲角度
トフィッシュ・ジャパン社
対 象5名 の 膝 関 節 屈 曲 角 度 の 平 均 は43.0±9.8度 で
製)を使用した.ストップ
あった.対象によって,有意な差がみられた(p<0.001).
を行う最後の一歩におけ
2)最後の一歩の下腿前傾角度
る,足部が地面に接地した
対象5名の下腿前傾角度の平均は-17.2±7.5度であっ
瞬間の関節角度を算出し
た.対象によって,有意な差がみられた(p<0.001).
た.解析項目を以下に示す.
⑴ 膝関節屈曲角度(図 3)
膝関節屈曲角度は,大転子,大腿骨外側上顆を通る
A
直線と腓骨頭,外果を通る直線のなす角度とした.
B
⑵ 下腿前傾角度(図 3)
C
下腿前傾角度は腓骨頭と外果を通る直線と,床から
D
の垂線のなす角度とした.進行方向への前方の角度を
E
正,後方への角度を負とした.
4)統計学的解析
57 .6 ±9 .5
-19 .3 ±9 .2
25.0±8 .6
-18 .6 ±9 .2
27 .2±14 .5
-23 .6 ±6 .0
53 .8 ±5.1
-21.4 ±6 .9
28 .2±2.8
-15.0±3 .2
4 3 .0±9 .8
-17 .2±7 .5
* p
0.001
中学生の動作の特徴について検討した過去の報告とし
て,女子バスケットボール選手の中学から高校までの継
続的な動作の変化をみた研究があり,中学生から高校生
にかけて,ジャンプ着地動作の膝外反角度に有意な差が
みられたとしている5).バスケットボール以外の中学生
の動作については,投球動作の解析が多く行われている
6)-8)
.定性的な投球動作観察の結果では,中学生は他の
年代に比べて動作の逸脱の程度や運動連鎖のパターンに
選手間のばらつきが多かったとしている8).
今回,中学女子バスケットボール選手におけるストッ
プ動作の個人差について検討した.その結果,膝関節屈
曲角度,下腿前傾角度は,対象間に有意な差があること
が明らかとなった.
対象によって,ストップ動作における接地時の膝関
文部科学省が実施している学校保健統計調査9)では,
節屈曲角度,下腿前傾角度に差があるか検討した.統
女子の成長に関して,身長は9 ~ 15歳頃に変化量が大き
計学的解析には一元配置分散分析を用いた.危険率
く,体重は10 ~ 18歳頃に変化量が大きくなると報告し
5%未満を有意とした.
ている.中学生はこのような身体構造の変化とともに,
関節可動域や筋力などの運動器機能も変化する時期であ
る.これらの変化の影響を受け,動作も大きく変化する
と考えられる.しかし,身体構造,運動器機能の変化が
開始する時期,変化量には個人差があるため,同じ年代
でも動作の個人差が大きくなると考える.
また,バスケットボールを開始する年齢も,小学生か
スポーツ医・科学:Vol,25,2014
ら開始する者もいれば,中学生から開始する者もいる.
競技を開始してから数年の動作の変化は大きいと考えら
れるため,中学生では経験年数の差も動作に影響するこ
とが予測される.
現在,成長期の外傷予防の内容として,成長期に生じ
る筋タイトネスの問題の改善や,体幹機能の改善などを
目的としたプログラムが実施されている.筋タイトネス
など,共通して改善が必要な項目もあるが,動作の特徴
に応じた個別のエクササイズプログラムの作成・実施,
注意点の指導を行うことが必要であると考える.
今後,個人差の詳細について検討を進め,パターン化
することでより効果的な外傷予防プログラム作成へとつ
なげていきたい.
1)津田清美他:膝前十字靱帯損傷 予防ビデオとその
ポイント.臨床スポーツ医学 25:120-126,2008.
2)清水結他:女子バスケットボール選手に対するリハ
ビリテーション.臨床スポーツ医学 26:793-801,2009.
3)北岡さなえ他:女子バスケットボール選手における
膝前十字靱帯損傷の受傷時状況―年齢区分による検討
―.日本臨床スポーツ医学会誌 18:127,2010.
4)北岡さなえ他:女子バスケットボール選手における
ストップ動作の年代による違い.スポーツ医・科学
24,9-11,2013.
5)大槻玲子他:成長期女子バスケットボール選手にお
ける膝前十字靱帯損傷リスクの評価.日本臨床スポー
ツ医学会誌 22,51-58,2014.
6)西野勝敏他:整形外科的メディカルチェックと投球
動作分析の 2 年間の追跡調査による成長期野球選手の
上肢障害メカニズムの検討.日本臨床スポーツ医学会
誌 19,582-590,2011.
7)宮下浩二他:成長期野球選手の投球障害予防を目的
とした投球動作の関節運動学的解析.日本臨床スポー
ツ医学会誌 20,49-55,2012.
8)遠藤康裕他:中学生野球選手を対象とした質的な
投球動作分析.日本臨床スポーツ医学会誌 22, 36-44,
2014.
9)文部科学省ホームページ 平成 26 年度学校保健統計
調査.
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/
hoken/kekka/k_detail/1354492.htm(参照 2015-1-28)
15
16
スポーツ医・科学:Vol.25,2014
17
ハンドヘルドダイナモメーターを用いた足外がえし筋力の定量化
Quantifying muscle strength of foot eversion with hand held dynamometer
吉原 圭祐1,岡戸 敦男1,金村 朋直1,佐藤 真樹1,熊澤 雅樹1,小林 寛和2
1
公益財団法人スポーツ医・科学研究所 2
日本福祉大学 健康科学部
Abstract
The purpose of this study was to discuss about a method of quantifying muscle strengthen for foot
eversion using hand-held dynamometers. 18 male high school students belonging to foot-ball club
participatedinthisstudy.Wemadethemankleeversionwhentheywereasittingandalateralposition
in order to measure their muscle strengthen of foot eversion, then calculated intra-rater reliability of
thisresult.Asaresult,usefulnessofthemethodoflateralpositionwasconfirmedsincewefoundahigh
intra-raterreliabilityatthelateralposition.
:footeversion,methodofmeasurement,intra-raterreliability
:足外がえし,測定方法,検者内信頼性
0.4歳,身長は170.4±5.2cm,体重は59.7±5.4kg,BMIは
20.6±1.7kg/m2(いずれも平均±標準偏差)であった.
外傷後の理学療法では,定期的な評価によって問題点
測定側は右下肢とした.
の抽出と,それらの改善程度を把握する.評価では各種
の機能に対して様々な検査・測定・テストが用いられる.
筋力の測定は,徒手筋力検査法(以下,MMT)が広
く用いられている.しかし,MMT の判定は検者の主観
筋力の測定は,MicroFET2(HOGGAN社製)を用い
に基づいたもので,その区分も大まかなものでしかな
て足関節底屈,距骨下関節回内,足部外転最終域におけ
い.経時的な変化を詳細に捉えるには定量化が望ましい.
る最大等尺性筋力を測定した.HHDの測定に習熟した
我々は MMT とは別に,ハンドヘルドダイナモメーター
理学療法士が,1)端座位法(図1): MMTに準じた方
(以下,HHD)を用いた各種筋力の定量化を試みてきた.
足部・足関節の筋力についても,HHD を用いた定量
化を行っている.特に足外がえし筋力は,足関節捻挫後
に低下が生じやすく,その詳細な把握が求められる.
HHD による定量化を継続して実施するためには,高
い再現性が前提となる.そのため,測定肢位や外力を加
える位置・方向には注意を要する.今回,足外がえし筋
力に関してより高い再現性で測定を行うための方法を検
討し,有用な結果が得られたため報告する.
法で,端坐位にて検者が下腿遠位を把持し,第5中足骨
底に対して足内がえし方向に力を加える方法1),2)側臥
対象は,測定時に下肢に疼痛や愁訴を有さない,サッ
位法(図2):側臥位にて下腿を台上に乗せ,検者が下腿
カー部に所属する男子高校生18名とした.年齢は17.4±
遠位を把持し,第5中足骨底に対して足内がえし方向に
18
ており,検者内信頼性に関して肩関節,股関節,足関節
の筋力などの報告が散見される 2-5).
本研究において,級内相関係数ICC(1.3)に関して,
側臥位法が端座位法と比べて高値であったことから,側
臥位法がより検者内信頼性が高いと言える.
端座位法では,検者が加える足内がえしを強制する力
側
は,図4のように股関節外旋を誘導してしまう可能性が
力を加える方法,の2つの方法で測定を行った.力を加
ある.足外がえし筋力を正確に測定するには,近位関節
える位置や方向は,MMTに準じた方法を参考にした.
の膝関節,股関節を固定しなければならない.しかし,
測定は図3に示すように,それぞれの方法を30秒間隔
下腿遠位のみの固定では近位の股関節を固定することが
で3回ずつ行い,3日間の間隔をあけて2度の測定を実施
難しく,足内がえし方向への外力が股関節外旋運動を生
した.測定方法の順序は無作為に決定した.なお,対象
じさせてしまうこととなる.そのため,足外がえし筋力
の測定への習熟度による誤差を減らすため,事前に別の
が十分にHHDに伝えられず,結果にばらつきが生じた
日程にて測定の練習を行った.
ものと考える.
再現性の検討として,各肢位3回ずつの平均値を,級
内 相 関 係 数(Intraclass Correlation Coefficient;ICC)
を用い,検者内信頼性ICC(1.3)をSPSS17.0にて算出した.
各方法における1回目,2回目の測定結果と検者内信頼
足内がえしを強制する力は,①のように足外がえしに対
抗する力となるが,②のように股関節外旋を誘導する力と
もなる.
性 ICC(1.3)を表1に示す.1回目の測定結果は,端座
一方,側臥位法では下腿を台上に乗せ,下腿遠位を把
位法では273.7±32.7N,側臥位法では310.0±53.2N,2回
持することで,股関節を内・外旋中間位でしっかり固定
目の測定結果は,端座位法では293.1±37.6N,側臥位法
できる.下腿全体が固定され,股関節の運動が生じにく
では304.3±52.0N であった.検者内信頼性 ICC(1.3)は,
い.その結果,足内がえし方向の力に対して,股関節内・
端座位法で0.717,側臥位法で0.901であった.
外旋運動が生じることなく,足外がえし筋力が測定でき
る.
(N)
273.7±32.7N
2
293.1±37.6N
310.0±53.2N
2
304.3±52.0N
これらのことから,端座位法に比べて側臥位法で高い
ICC
再現性が得られたものと考える.HHDを用いた継続し
0.717
た足外がえし筋力の測定に関して,側臥位法の有用性が
確認された.
0.901
1)HislopHJ,MontgomeryJ.新・徒手筋力検査法第 8
版.東京:協同医書;2008.242-244.
HHDによる筋力測定は様々な筋力に対して実施され
2)Andrews AW, Thomas MW,Bohannon RW.
スポーツ医・科学:Vol,25,2014
Normative Values for Isometric Muscle Force
Measurements Obtained With Hand-held
Dynamometers.PhysTher1996;76 ⑶ :248-259.
3)村井 健,綿谷美佐子,松本 尚ほか.座位におけ
るハンドヘルドダイナモメーターを用いた肩筋力測定
方法とその再現性.北海道理学療法士会誌 2008;25
巻 :37-41.
4)神谷晃央,名越央樹,竹井 仁.ハンドヘルドダイ
ナモメーターを使用した体幹固定筋力を反映する股関
節周囲筋力測定の信頼性.理学療法科学 2010;25 巻
2 号 :193-197.
5)松村将司,竹井 仁,市川和奈ほか.固定用ベルト
を用いたハンドヘルドダイナモメーターによる等尺性
筋力測定の検者内・間の信頼性-膝関節屈曲・足関節
背屈・底屈・外がえし・内がえしに対して-.日本保
健科学学会誌 2012;15 巻 1 号 :41-47.
19
20
スポーツ医・科学:Vol.25,2014
21
投球動作のワインドアップ期の動的アライメントと投球開始時姿勢の関係
-投球開始時姿勢に関係する要因の検討を含めて-
Dynamic alignment of the wind-up phase of baseball pitching, and the relation with
when beginning to pitch posture
- Including consideration of the factor related to the posture when beginning to pitch -
佐藤 真樹 1,小林 寛和 2,金村 朋直 1,岡戸 敦男 1
Masaki SATOU1,Hirokazu KOBAYASHI2,Tomonao KANAMURA1,Tsuruo OKADO1
1
公益財団法人スポーツ医・科学研究所
1
InstituteofSportsMedicineandScience
2
日本福祉大学健康科学部
2
FacultyofHealthScience,NihonFukushiUniversity
Abstract
Pelvicbackwardtiltinginawind-upphasehavebeenknownasabaddynamicalignment.Theposture
whenbeginningtopitchinfluencesonpelvicbackwardtilting.Thepurposeofthisstudywastoclear
the relation between the pelvic angle when beginning to pitch and the pelvic angle of the wind-up
phase,andfactorswhichhaveaninfluenceonthepelvicanglewhenbeginningtopitch.Thesignificant
correlationwasconfirmedbyaresultandthepelvicangleofthepitchstartingtimeandthewind-up
phase(r=0.52).Whenbeginningtopitch,thereweresignificantcorrelationwithaspinealignment(r = 0.65),
butitwasn'tconfirmedasthepelvicanglebetweenafunctionalfactor.Ourresultconfirmedthatthe
posturewhenbeginningtopitch,influencedonpelvicbackwardtiltinginawind-upphase.Itfoundthat
theupperparttrunkrelatedtoaspinealignmentandtheconfirmationofthescapularyfunctionwere
alsoimportant.
:wind-upphase,pelvicangle,whenbeginningtopitch
:ワインドアップ期,骨盤角度,投球開始時姿勢
の対応を要する.
本研究は,投球開始時の静的姿勢としての骨盤傾斜角
1)
投球動作では,肩関節最大外旋時 やボールリリース
度とワインドアップ期の骨盤傾斜角度の関係と,投球開
1,2)
始時の骨盤傾斜角度に関係する機能的要因の確認を目的
時
に肩関節・肘関節へのメカニカルストレスが強ま
るとされている.アーリーコッキング期からアクセラ
として実施した.
3)
レーション期における肘下がり や肩関節水平外転位で
のボールリリース4) のような動的アライメントの不良
は,肩や肘へのメカニカルストレスの増強につながり,
投球障害の発生要因ともなる.これらは,ワインドアッ
男子大学生20名を対象とした.年齢19.9±1.3歳,身長
プ期の動的アライメントの影響を受けることが多い.ワ
172.0±5.7cm,体重64.5±6.8㎏,Body Mass Index(以
インドアップ期における不良な動的アライメントの代表
下,BMI)21.8±1.7㎏ /m2(平均値±標準偏差)であった.
例として,骨盤後傾位を挙げることができる.理学療法
対象は全員右投げであり,高校時代に野球部に在籍して
においてはこのような動的アライメントへの働きかけも
いた者とした.
必要となり,また,動的アライメントに影響する要因へ
なお,投球時に身体各部位に症状がある者,投球動作
22
を制限し得る関節可動域制限がある者,BMIが25㎏ /m2
以上の者は対象から除外した.
2.代表値の決定
5球のうち,投球動作の非投球側下肢の離地から最大
挙上時までの足圧中心軌跡面積(図3)が最小の試技を
骨盤傾斜角度の代表値として採用した.
1.投球動作の撮影
約3m先の防球ネットに,5球の全力投球を行わせた
(図1).投球には軟式A球を使用した.解析に必要とな
る反射マーカーを35箇所に貼付した.3次元動作解析機
軌跡面積最大
器Nexus(VICON社製)にて撮影した.投球開始時の
軌跡面積最小
面
骨盤傾斜角度と脊柱角度,ワインドアップ期における非
投球側下肢最大挙上時の骨盤傾斜角度を測定した.骨盤
3.下肢・体幹の機能的要因の測定
傾斜角度は上前腸骨棘と上後腸骨棘を結ぶ線と上後腸骨
1)関節可動域
棘を通る水平な線のなす角度とし,脊柱角度は骨盤傾斜
股関節屈曲可動域とSLRの項目について,ゴニオ
角度と胸郭角度の差とした(図2).なお,骨盤傾斜角度
メーターを用いて1度単位で測定した.測定側は左と
はプラスを後傾,マイナスを前傾とし,脊柱角度はプラ
した.
スを屈曲,マイナスを伸展とした.投球時に歩行解析用
2)筋力
フォースプレートZebris FMDsystem(Zebris Medical
股関節屈曲・伸展筋力を筋力測定機器アイソフォー
GmbH社製)を用いて足圧中心軌跡面積を測定し,記録
スGT-300(オージー技研社製)を用いて,徒手筋力
した.
検査法に準じて等尺性筋力を測定した.測定回数は5
回とし,数値は最大値と最小値を除いた3回の平均値
の体重比(N/㎏)を採用した.測定側は,両側とした.
ット
3)体幹深部筋筋厚
体幹深部筋である腹横筋・多裂筋の筋機能の指標と
して各筋の筋厚を測定し,それぞれ両側を測定した.
超音波診断装置Xario SSA-660A(東芝メディカルシ
3m
ステムズ社製)のBモードを用いて測定し,プローブ
は腹横筋が3.5MHz,多裂筋が7.5MHzを使用した.測
定部位は,腹横筋は臍高位の前腋窩線から内側2.5cm,
多裂筋は第4腰椎棘突起から外側2cmの部位とした5)
(図4).
筋厚測定は安静時,収縮時に実施し,その筋厚変化
率を算出した.筋厚変化率は,収縮時と安静時の筋厚
度
の差を求め,安静時の筋厚で除し,100を乗じた値と
度
時
インド
ップ
スポーツ医・科学:Vol,25,2014
した.
23
3)統計学的解析結果
測定肢位は背臥位とし,安静時は腹横筋・多裂筋い
①投球開始時の骨盤傾斜角度とワインドアップ期の骨
ずれも安静呼気時に測定した.収縮時の口頭指示とし
盤傾斜角度の関係
て,腹横筋は「ズボンのゴムからおへそを離すように
投球開始時の骨盤傾斜角度とワインドアップ期の
6)
下腹部を引き込めてください.」 とし,多裂筋は「脊
骨盤傾斜角度の関係を図5に示す.両者には,有意
柱や骨盤を動かさないようにして,私の指の下で筋を
な正の相関がみられた(r=0.52).
7)
静かに膨らませるようにして下さい.」 とした.検
5
者内の信頼性を検討するため,同時刻に5回測定を行
0
い,測定値の級内相関係数(ICC1,1)を求めた.その
-10
結果,ICC(1,1)=腹横筋.666,多裂筋.630であった.
-5
-10
ICCが.900以上の信頼性を得るための測定回数につ
-15
8)
いて検討し ,腹横筋・多裂筋ともに5回の測定を行っ
た.
(度)
Spearman-Brownの公式により,同一被検者に対して,
0
10
20
3 0
-20
p>0.05
)
4.分 析
①投球開始時の骨盤傾斜角度とワインドアップ期の骨
.
盤傾斜角度の関係,②投球開始時の骨盤傾斜角度と各機
②投球開始時の骨盤傾斜角度と各機能的要因の関係
能的要因の関係,③投球開始時の骨盤傾斜角度と脊柱角
股関節屈曲・伸展筋力,股関節屈曲可動域,SLR,体
度の関係,について検討した.
幹深部筋筋厚の関係を表3に示す.各項目と投球開
統 計 学 的 解 析 に は,Pearson の 相 関 係 数 ま た は
Spearman 順位相関係数検定を用いた.有意水準は5%
始時の骨盤傾斜角度との間に有意な相関はみられな
かった.
未満とした.
.
0.27
SLR
-0.11
1)骨盤傾斜角度,脊柱角度の測定値(表 1)
0.39
投球開始時の骨盤傾斜角度は-7.6±5.4°,脊柱角度
0.27
0.27
は-14.9±6.2°であった.ワインドアップ期における
0.45
-0.07
0.04
骨盤傾斜角度は10.9±8.6°であった.
③投球開始時の骨盤傾斜角度と脊柱角度の関係
投球開始時の骨盤傾斜角度と脊柱角度との関係を図
-
-
6に示す.両者には,有意な正の相関がみられた(r
=0.65).
)
2)機能的要因の測定値
5
左股関節屈曲可動域,左SLR,股関節屈曲・伸展筋
0
力,体幹深部筋筋厚の測定結果を表2に示す.
-5
.
0
5
10
15
20
-10
125±8 .7
)
)
(度)
N /k g )
-15
7 7 .6 ±14 .8
)
3 .01±0.6
2.9 3 ±0.6
4 .6 3 ±0.8
4 .6 1±0.8
6 5.7 ±3 7 .6
6 6 .1±3 5.1
14 .7 ±7 .8
13 .5±8 .0
±
-20
)
)
p>0.01
25
24
投球障害に対する理学療法では,再発予防への配慮を
1)FleisigGS,etal:Kineticsofbaseballpitchingwith
含めて投球動作の問題とそれに関連する要因へのアプ
implications about injury mechanisms. Am J Sports
ローチが不可欠となる. 投球動作は,下肢,体幹,上
Med.23,233-239,1995.
9)
肢の密接な運動連鎖により構築されており ,ワインド
2)Werner SL, et al: Relationship between throwing
アップ期における骨盤後傾の増大といった動的アライメ
mechanics and shoulder distraction in professional
ントの問題が,後の位相に影響してしまうことが多い.
baseballpitchers.AmJSportsMsd.29,354-358,2001.
9)
10)
11)
宮下 ,能勢 ,岩堀
らは臨床的動作分析から,ワイ
ンドアップ期への対応の重要性を指摘している.
投球動作の不良に関係する要因の一つとして,静的姿
3)松尾知之:競技復帰のための投球フォーム.臨床ス
ポーツ医学.29,313-318,2012.
4)田中洋:肩の動きと機能に対するバイオメカニクス
勢の問題が挙げられる.投球開始時の姿勢,いわゆるセッ
からのアプローチ.Sportsmedicine.129,13-30,2012.
トポジションでの静的アライメントはワインドアップ期
5)太田恵,金岡恒治,他:慢性腰痛患者に対する運動
の動的アライメントにも影響すると考え,今回は,投球
療法が体幹筋筋厚に及ぼす影響.臨床整形外科.46,
開始時の骨盤傾斜角度にワインドアップ期の骨盤傾斜角
109-113,2011.
度が関係するという仮説のもと,
両者の関係を確認した.
今回の結果から,投球開始時の骨盤傾斜角度とワイン
ドアップ期の骨盤傾斜角度との間には有意な正の相関が
6)出間順子,大江厚,他:口頭指示の違いが腹横筋
エクササイズに与える影響.理学療法研究会・長野.
36,58-60,2007.
みられ,投球開始時に骨盤後傾が大きいと,ワインド
7)Hides J, et al: 局所的な分節コントロール,斎藤昭
アップ期においても骨盤後傾が大きくなる傾向が確認さ
彦(訳),腰痛に対するモーターコントロールアプロー
れた.これは,投球開始時の静的アライメントが,ワイ
チ-腰椎骨盤の安定性のための運動療法.医学書院,
ンドアップ期に移る際の左股関節屈曲時に骨盤後傾が補
176,2008.
正されることなく増大するためと考えられる.このこと
から,投球開始時の骨盤後傾増大が,ワインドアップ期
8)対馬栄輝:検者・検者内信頼性係数,SPSS で学ぶ
医療系データ解析.東京図書,193 - 214,2012.
における骨盤後傾増大につながる可能性が伺え,ワイン
9)宮下浩二:投球障害に対する競技現場でのリハビリ
ドアップ期に骨盤後傾位を呈する対象者への指導におい
テーションとリコンディショニングの実際.山口光國
て注視すべき項目の一つになると考える.
投球開始時の骨盤傾斜角度に影響を与える要因とし
て,一般的には下肢筋力,柔軟性,体幹機能が挙げられ
る.今回,投球開始時の骨盤傾斜角度と股関節可動域・
SLR・股関節筋力・体幹深部筋筋厚との関係をそれぞれ
確認したところ,すべての項目で明らかな相関はみられ
なかった.
また,投球開始時の骨盤傾斜角度と脊柱角度との間に
は正の相関がみられ,投球開始時に骨盤後傾が大きいと
脊柱屈曲位となることが確認された.脊柱屈曲の増大は,
肩甲骨アライメントにも影響を及ぼすことから,投球開
始時の静的アライメントも重要であると考える.
本研究から,投球開始時の骨盤傾斜角度がワインド
アップ期の骨盤傾斜角度にも関係するという結果が得ら
れたことから,投球障害を有する対象者のリハビリテー
ションを実施する際には,投球動作の指導に加え,日常
的に呈している姿勢についても指導をする必要性が示唆
された.
(編),投球障害のリハビリテーションとリコンディ
ショニング-リスクマネジメントに基づいたアプロー
チ-,文光堂,193-194,2010.
10)能勢康史:投球フォームのアプローチ-身体機能の
改善.TraningJournal.8,64 - 68,2007.
11)岩堀裕介,他:投球障害とその治療・予防.痛みと
臨床.7,364-383,2007.
スポーツ医・科学:Vol.25,2014
25
膝前十字靱帯再建術を受ける患者の看護
(術前指導パンフレットの作成から導入と評価)
秋葉 和子,榊原 志依,竹内 朋子,上田久美子,岡崎 智美,安田 朋子
Kazuko AKIBA,Yukie SAKAKIBARA, Tomoko TAKEUCHI,
Kumiko UEDA,Tomomi OKAZAKI,Tomoko YASUDA
公益財団法人スポーツ医・科学研究所
InstituteofSportsMedicineandScience
Abstract
Atourinstitutewefoundoutthatsomepatientswhohadtheanteriorcruciateligamentreconstruction
operation seem not to understand the condition of their knee and to worry about the postoperative
knee.Wethoughtthatweneedthepreoperativedirectionforthepatients.Wemadeaguidancebased
on the questionnaire about their knee. The guidance helps the patients to expect the conditions of
postoperativeknee,especiallyforaweekaftertheoperation.
:anteriorcruciateligamentreconstructionoperation,preoperativeguidance,pamphlet
:膝前十字靱帯再建術,術前指導,パンフレット
ための患者指導を開始した.
今回の研究は,パンフレットの作成からパンフレット
私たちはH17年度とH20年度の研究において,膝前十
字靱帯(以下ACL)再建術の術後に焦点をあて,術後
を用いた患者指導の効果について評価したのでここに報
告する.
経過の理解度を高めることを目的として,「ACL再建の
手術後~スポーツ復帰までの予定表」を作成し,患者指
「ACL
導を行い,評価・改善を行ってきた1)2).その結果,
再建の手術後~スポーツ復帰までの予定表」のパンフ
1)パンフレットの作成
レットを用いた指導効果がみられ,スポーツ復帰までの
1.アンケート調査
おおまかな経過は理解されるようになってきた.指導し
対象:H23 年度,当所において ACL 再建術を受けた
ていく中で,自分の膝そのものについてあまり理解して
患者 50 名(男性 19 名,女性 31 名)
いない発言や術後に自分の膝を見て驚き,不安を訴える
方法:手術後の創部の状態,腫れ,皮下出血の程度,
患者も多く,あやふやな理解のままリハビリテーション
実際の手術後の膝の写真など術前に知っておき
を行っている患者もみられた.
たいか,手術後から復帰までの予定はいつ知り
私たちは,ACL再建術を受ける患者の中には,術前
たいかについて,手術 1 ~ 2 週間前の術前検査
から手術に対するイメージ作りをする意識が少なく,リ
時にアンケート用紙(資料 1)を配布し入院時
ハビリテーションを怠ることや自己判断での競技復帰が
に回収した.
原因で,術後の再断裂などの問題を起こす人がいると考
2.パンフレット作成
えた.
アンケート結果に基づき,‘知りたい’と回答が多
そこで,術後の回復過程がスムーズにいくように援助
かった項目をピックアップし,一番膝に変化がみられ
する方法として,術前指導用のパンフレットを作成し,
る術後1週間の実際の写真を入れたパンフレットを作
手術に対するイメージ作りや,術前・術後の不安緩和の
成した(資料2).
26
2)術前指導
の
方法:H24 年度より当所において ACL 再建術を初め
て受ける患者に,手術 1 ~ 2 週間前の術前検査
時にパンフレットを用い術前指導を開始した.
備し,患者自身が選択した方をその日のうちに
貸し出しをした.
な
4
4
た
4
た
4
ら
パンフレットはカラーとモノクロの 2 種類を準
見てもらい回収した.希望者には入院当日まで
女 男
く
た
1
2
14
11
アンケート調査
対象:パンフレットを用い術前指導を行った患者,
H24 年 度 60 名( 男 性 25 名, 女 性 35 名 ) と
H26 度 30 名(男性 11 名,女性 19 名)
方法:H24 年度のアンケート調査では,パンフレッ
の
トの内容についての理解度,不安の有無,パン
フレットを見る時期・回数についてなどのアン
ケート用紙(資料 3)を入院時に患者本人が記
3
13
た
H26 年度のアンケート調査では,パンフレット
術後に対する不安が軽減できたかについて,手
3
ら
入し直ちに回収した.
を見て手術・術後のイメージができたか,手術・
女 男
1
な
た
く
2
2
た
術 1 ~ 2 週間前の術前検査時にアンケート用紙
(資料 4)を配布し,患者本人が記入し入院時
に回収した.手術後,実際自分の膝を見た時の
感想を聞いた.
の
1
な
パンフレット作成のためのアンケートでは,傷の大き
と回答した患者は,それぞれ傷の大きさや形36人(72%),
2
ら
さや形,腫れの程度,皮下出血の程度について,「詳し
く知りたい」,「出来れば知りたい」,「最低限知りたい」
女 男
く
た
4
た
4
1
た
12
1
3
腫れの程度36人(72%),皮下出血の程度34人(68%)
であった.14人(28%)~ 16人(32%)の患者は,「ど
ちらでもよい」,
「必要ない」という回答であった(図1,2,
3).傷の大きさや形については,男性の半数以上が「ど
ちらでもよい」,「必要ない」と回答していたのに対し,
女性は27人(87%)が「知りたい」という回答であった(図
1).実際の手術後の膝の写真は「見たい」と40人(80%)
実際の手術後の膝の写真
ら
1
が回答していたが,10人(20%)が「見たくない」と回
答していた(図4).装具の装着については,37人(74%)
の患者が「知りたい」と回答し,膝の中に入る金具の実
物を「見たい」と答えた患者は39人(78%)であった(図
5,6).
‘ACL再建の手術後~スポーツ復帰までの予定表’の
女 男
たくな
た
3
1
2
スポーツ医・科学:Vol,25,2014
27
内容の中で,もっと前から知っておきたかった事につい
の
て43人(86%)が「ない」という回答だった.知ってお
1
な
ら
女 男
3
や「退院後のスケジュール」,「フットケアの仕方」,「手
3
く
1
た
3
術後一週間程度の詳しい内容」であった(図7).
12
た
た
きたかった内容は,「術後のスポーツ復帰までの段階」
‘ACL再建の手術後~スポーツ復帰までの予定表’に
ついて,いつ説明してほしいかについては,「手術する
ことが決まってから」と答えた患者が23人(46%)
「
,ACL
4
損傷と診断された時(今後の治療について全くわからな
い時)」や「手術をするかどうか迷っている時」と答え
た患者が20人(40%)であった(図8).
これらの結果をふまえ作成したパンフレットを用いた
膝の
の実
女
術前指導後のアンケート(H24年度)では,傷の大きさ
男
や形は59人(98%),腫れの程度は54人(90%),皮下出
1
2
ら
たくな
血の程度は58人(96%)
,実際の術後の膝の写真は55人
(91%),術後の装具は53人(88%),実物のステープル
3
は54人(90%)が「よくわかった」と回答している.「不
た
2
14
安がなくなったあるいは少なくなった」という回答は,
傷の大きさや形は49人(81%),腫れの程度は48人(80%),
皮下出血の程度は47人(78%),実際の手術後の膝の写
真は51人(85%),術後の装具は52人(86%),実物のス
テープルは46人(76%)であ った( 図9,10,11,12,
っ
13,14).「パンフレットを見る時期と回数」について「よ
たかった
かった」と答えた患者は54人(90%)であった.パンフ
レットを貸し出した患者は13人(20%)であった.
1
また「手術や手術後のイメージができたか」,「手術や
手術後の不安が少しでも解消されたか」についてのアン
1
ケート(H26年度)では,いずれも29人(96%)が「は
い」と回答し,実際の自分の膝を見た時の感想では,
「パ
ンフレットを見ていたので心の準備が出来ていた」「パ
43
な
ンフレットの膝よりも自分の膝の方が腫れも皮下出血も
軽かった」「知らずにみていたらびっくりしたと思うけ
ど,全然びっくりしなかった」という回答が得られた(図
15,16).
術後の
か
1
1
調査の結果,約7割の患者が手術後の膝の状態を「知
3
手術
の
手術
手術
の
っ
か
か
23
から
13
っ
た
くわからな
りたい」と答え,約8割の患者が実際の手術後の写真や
2
手術
後
自分の膝の中に入っている金具について「知りたい」と
答えていることから,手術後の自分に起こるであろう状
況についての情報を求めていると考えられる.
傷の大きさや形について,男性の半数以上が知りたい
と思っていないが,9割近い女性が知りたいと思ってい
28
の
の
女 男
なった
なった
3
なくなった
1
よくわからなかった
1
なくなった
2
21
女 男
3
3
よくわからなかった
よくわかった
34
2
24
よくわかった
の実
女 男
なった
3
なくなった
よくわからなかった
2
21
3
3
よくわからなかった
よくわかった
22
の
手術
4
31
23
手術後の
たか
女 男
なった
3
なくなった
21
よくわかった
女 男
2
1
1
よくわからなかった
24
女 男
1
よくわかった
32
32
21
膝の
の
2
1
11
1
34
実際の手術後の膝の写真
女 男
よくわからなかった
よくわかった
手術
手術後の
たか
女 男
1
3
1
34
21
1
1
スポーツ医・科学:Vol,25,2014
29
る事は,身体に傷ができてしまうため,美容に対する男
に臨んでもらうことである4).Deutschは,手術に対す
女の心理的差異ではないかと考える.特に,衣服から露
る情緒的な準備が不十分であればあるほど,術後の経過
出する部位の傷跡であるため,自分自身のボディイメー
に好ましくない影響を及ぼす可能性が増大すると言って
ジの影響のほか,他の人が自分をどう受け止めるか不安
いる5).
をもたらす事もある5).この事から,女性の方が傷につ
いて事前に知りたいという欲求が強いと考える.
実際にパンフレットを用いた術前指導後のアンケート
そこで当所においても,適切な予期的心配の作業を患
者自身で行えるように,正しい情報を与えるための術前
指導用のパンフレットを作成し指導をした.その結果,
調査では,H24年度は約8割の患者が「よくわかった」,
「不
術後のイメージ作りができ,不安が少ない状態で手術に
安がなくなったあるいは少なくなった」と答え,H26年
臨めるようになったと考えられ,術前用パンフレットの
度は9割の患者が「手術後のイメージができた」「手術後
効果が高かったと評価できる.今後もこのような術前用
の不安が解消された」と答えており,これらの患者には
パンフレットを活用することにより,患者が主体的に治
手術に対するイメージ作りと不安の軽減ができたと考え
療に参加することができ,術後の自己管理能力を高め,
る.しかし反対に,H24年度で実際の膝の状態やステー
リハビリテーション意欲が増し,問題なく早期復帰につ
プルについて,「不安になった」と答えた患者も約2割と
ながる事を期待する.
高い数字を示している.もちろん,性格的なもので「怖
くて見たくない」と思う患者もいるのではないかと考え
ていたが,私たちが当初予想していた結果より多いこと
がわかった.術後の膝の写真は患者にとっては生々しい
1)山口由紀,加藤順子ほか:前十字靱帯再建術を受け
写真であり,中には術前に見ると,より不安を強くしか
る患者の看護(手術前から復帰までの指導パンフレッ
ねないと考え,恐怖心や不安感の対応策としてカラー写
トの作成,スポーツ医・科学,vol.18:29-35,2005.
真とモノクロ写真の2種類のパンフレットを作成した.
2)安田朋子,大和田久美子ほか:前十字靱帯再建術
患者本人に見ても大丈夫そうな方を選択してもらうこと
を受ける患者の看護(手術前から復帰までの指導パ
で,全員にパンフレットを用いた術前指導ができ,手術
ンフレットの評価),スポーツ医・科学,vol20: 29-39
後に自分の膝を見た後,
「驚かなかった」,
「予想通りだっ
2008.
た」,「パンフレットより軽かった」といった感想が得ら
れた.また,家人や学校の先生などにも説明したい,自
宅でゆっくり見たいという患者にはパンフレットを貸し
出した.実際にパンフレットを借し出した患者からは,
「見たい時に何度も見れて良かった」「悩んでいたことが
解消された」等の感想を得られた.これらのことから,
3)数間恵子・井上智子・横井郁子:手術患者の QOL
と看護,医学書院 :1999.
4)小島操子:手術患者の心理と支援 看護,MOOK10:
1984.
5)Deutsch, 金子仁郎改著:患者の心理,金原出版 :
1966.
事前に実際の不安に対する免疫効果が持て,現実により
6)日野原重明 / 総監修 藤末千鶴・執行フサヨ / 責任
よく対処できるようになると考え,特に変化の多い一週
編集:術前・術中・術後ケアマニュアル,学研 , ナー
間の急性期の詳しい経過・流れを手術前に知る事で術前
シングマニュアル 18:1986.
にシミュレーションしやすく,患者自身がイメージする
7)OPE ナーシング,Vol.9No.5,メディカ出版 :1994.
事ができ,驚きや恐怖心を最小限にし不安を軽減できた
8)坂本すが / 監修 小西敏郎・山元友子 / 編集:術
のではないかと評価できる.
前・術後標準看護マニュアル,メディカルフレンド社 :
2007.
手術が患者に及ぼす影響は,生体への侵襲のみならず,
不安や恐怖といった心理的反応をもたらす.術前オリエ
ンテーションや術前指導の目的は,手術前に手術に対す
る心理的準備にむけての予期的指導を行い,予測される
出来事が実際に危険になる前に予期的心配をさせて手術
プロ
才
国際レベル
全国レベル
性別は?
女
地方レベル
男
レクリエーション
2 出来れば知りたい
2 出来れば知りたい
2 出来れば知りたい
2 出来れば知りたい
6.膝の中に入る金具の実物
1 詳しく知りたい
見たい
3 最低限知りたい
見たい
3 最低限知りたい
3 最低限知りたい
3 最低限知りたい
5.ドンジョイや Cti2 など装具の装着について
傷口や腫れ・皮下出血の状態
4.実際の手術後の膝の写真
1 詳しく知りたい
3.皮下出血の程度
1 詳しく知りたい
2.腫れの程度
1 詳しく知りたい
1.傷の大きさや形
とはありますか?
見たくない
・
見たくない
4 どちらでもいい
・
4 どちらでもいい
4 どちらでもいい
4 どちらでもいい
5 必要ない
5 必要ない
5 必要ない
5 必要ない
③ 今回手術をしてみて、手術の内容について事前にもっと知っておきたかったことや見ておきたかったこ
② スポーツレベル
① 年齢は?
該当するところに記入および○をつけて下さい。
みなさまの意見をお聞かせ下さい。
手術前の不安をより最小限にしていただくために、術前のパンフレットの作成を考えております。
前十字靱帯再建術を受けた患者さまへ(資料1)
ある
願いします。
⑥ その他、手術前に知っておきたかったこと、不安だったことなどあれば、なんでも結構です。ご記入お
4.手術前検査の時(手術直前)
3.手術をすることが決まってから
2.手術をするかどうか迷っている時
1.前十字靱帯損傷と診断された時(今後の治療について全くわからない時)
⑤ ‘前十字靱帯再建の手術後~退院までの予定表’はいつ説明してほしかったですか?
ない
おきたかった内容はありますか?
④ 手術前にもらった‘前十字靱帯再建の手術後~退院までの予定表’の内容について、もっと前に知って
30
出
あ
(
の入
(
の
ー
いる
)
出
にも
)
の
出
が
(
の
の
くることがあります
き
間
り
がで
に
手術後1
手術後の
が
い所)
手術後
これらの
の れ
人 があります。
間
は
ま
まで
(
(資料2- )
ー
)
31
手術当日~1日目
・シャワーにはまだ入ることが出来ないので、
洗面所で洗髪し、ベッド上で身体を拭きます。
・手術の翌日の朝には体調がよければ、車いすで
食堂まで移動し食事をします。
・手術当日でも看護師の許可があれば、
一人でトイレに行くことが出来ます。
・移動手段は車いすになります。
・手術直後から常時(24時間)
ドンジョイ装具を装着します。
(資料2-2)
32
い
行が
の は
まります。
をはきまし
日目~
。
体調が ければ
で
が まります。
のベッドの上では、 の
ばしの 動を
ける
(CPM)が まります。
装具を け まま行いまし
。
手術後
れ
ット
の
・
ッ
の
ット
・
に
ージ)が
い
まります。
な 、体調が くない時は
シャワーに入れない事があります。
ドンジョイ装具の上に
ー を
シャワーに入る事が出来ます。
(
く
資料2- )
33
間
CTi2を け
きます。
の
がよければ、
をします。
のあと、ドンジョイ装具から
2に
手術後1
ります。
がよいと
イ
が
は
でドンジョイ装具に
ます。
後、 の
で
し
から
れれば、
まります。
(資料2- )
34
な
を
プロ
才
国際レベル
全国レベル
性別は?
女
地方レベル
男
6.
5.
不安は?
膝の中に入る金具の実物
不安は?
装具の装着について
不安は?
なし(
・
・
に不安になった)
あり(
・
・
・
に不安になった)
に不安になった)
あり(
に不安になった)
よくわからなかった
あり(
よくわからなかった
・
よくわからなかった
あり(
なくなった)
なくなった)
よくわかった
なくなった)
・
に不安になった)
よくわからなかった
あり(
よくわかった
なし(
よくわかった
なし(
・
・
よくわからなかった
あり( に不安になった)
よくわからなかった
なくなった)
なし(
なくなった)
・
不安は?
なし(
よくわかった
よくわかった
実際の手術後の膝の状態の
・
なし( なくなった) ・
よくわかった
)の程度
4.
あ
皮下出血(
不安は?
膝の腫れの程度
3.
2.
不安は?
傷の大きさや形
いましたか?
レクリエーション
今回手術をするにあたり、下記の内容について手術前にパンフレットを見てどう
1.
③
② スポーツレベル
① 年齢は?
)
っていただくために、手術前に写真入りのパン
、みなさまの意見をお聞かせ下さい。
いています。
該当するところに記入および○をつけて下さい。
パンフレットの
フレットを見て
手術や術後の不安を最小限にし、入院中、
前十字靱帯再建術を受ける患者さまへ
(資料
(
回)
その他、手術前に知っておきたいことや不安なこと
にみたかった
回見たかった
3.見たい時に
2.
1.1回でよい
?
?
)
)
)
あればなんでも結構です。ご記入お願いします。
は1回でよかったですか?
(いつ
写真入りのパンフレットを見る回
くてもよかった
3.もっと
⑥
く見たかった
2.もっと
はどうでしたか?
(いつ
写真入りのパンフレットを見る時
他にも知りたい内容はありましたか?
1.よかった
⑤
④
(資料
35
36
(資料 )
前十字靱帯再建術を受ける患者さまへ
手術や手術後の不安を最小限にし、入院中
の予定
を写真入りのパンフレットで見て
な
を
っていただくために、手術前に 手術後 1
いています。
パンフレットを見た後のみなさまの意見をお聞かせ下さい。
該当するところに記入および○をつけて下さい。
① 年齢は?
② スポーツレベル
③
才
プロ
性別は?
国際レベル
パンフレットを見て、手術や手術後のイ
男
全国レベル
女
地方レベル
レクリエーション
ージができましたか?
はい
いいえ
④
イ
ージできなかった
を
パンフレットを見て、手術や手術後の不安は
えて下さい。
しでも
されましたか?
はい
いいえ
されなかった
を
えて下さい。
ご
ありがとうご
いました。
スポーツ医・科学 Vol.25
Journal of Sports Medicine & Science Vol. 25
2015年5月 11 日 印刷
2015年5月 19 日 発行
発行者 熊 澤 雅 樹
発行所 公益財団法人 スポーツ医・科学研究所
〒470-2212 愛知県知多郡阿久比町大字卯坂
字浅間裏49番地の9
電 話(0569)48-7383(代表)
FAX(0569)48-0183
http://www.sorc.or.jp/
印刷所 株式会社 マ ル ワ
スポーツ医・科学
2014
Vol.25