日本で踊られるジャマイカのレゲエダンスから 021122Ｏ桑村真理子’ 【背景と目的】レゲエダンスとはジャマイカで生 まれたもので、奴隷からの解放を起源にもつ。今 でもジャマイカでは、日常的に踊られている。こ のダンスは女性が腰を振るなど、露出度が高く、 性行為を連想させるものである。 指導教具藤掛洋子 ことが出来る踊りであるといえる。そのため、女 性の間で人気を独得した． 日本では、２０００年になってブームが起こった。 2005年現在、女性を対象にレゲエダンスコンテス トが全国各地で行われている。ダンサーは１６歳か 今日、日本では､メディアなどを通じてこのダ ら３５歳ぐらいと幅広く、ＯＬや学生のほか、主婦 ンスを見る機会が増えてきた。特に女性達よって も多い。そのブームを支えている総合レゲエサイ 踊られている。 ト「ＯＮＥＡＮＤＧ」には、１日6,000人のアクセスが なぜこのダンスが日本で流行り、女性のレゲエ ダンサーが増えているのだろうか。本研究では、 あるという。 そんな中、レゲエダンスに対して、多くの男性 その要因を探り、日本女性がレゲエダンスに求め は「エロい、卑狼」「遊んでいそう」「ダンスじゃ るものを検証する。 なくストリップみたい」「自分の彼女がやってい 【方法】文献･資料･インターネットによる綱査、 たら嫌だ」と言っていた。一方、女性のレゲエダ クラブでの参与観察、女性のレゲエダンサーヘの ンサーは、レゲエダンスを踊る意味は、「女の魅力 インタビュー（フォーカスグループディスカッシ が出せる」「女しかできない特権」「女らしさをス ョンを採用｡）レゲエダンスについて男女８３人に トレートに表現できる」そして、始めたことによ アンケートを実施。男性ジャマイカ人へのインタ って「他の自分になれる」「自分に自信がもてる」 ビュー。 【結果及び考察】レゲエダンスは、ジャマイカの 「自分を変えてくれたもの」「自己表現の一種」と い回答した。 クラブでレゲエ音楽にあわせて女の子達が踊り始 また、男性ジャマイカ人は、レゲエダンスは自 めたものである。テンポはあまり速くないが、腰 己解放であり、人生を映し出すものだと主張する。 や体を震わせるのが特徴である。身体の柔軟性か 【結論】 ら生まれる足腰の振りが多い。そのため一見「エ 日本の男性は、レゲエダンスに対して、否定的 ロイ」という印象があるが、それだけでは済まさ な意見を述べた。それは性的なアピールに対して れない。アクロパティックで、華やかさやたくま の考えであるといえよう。女性＝貞淑、女性＝性 しさを現す踊りである。 の従属物というような価値規範があるからではな 卑狼で女性にとって侮辱的とされる洞やそれと いだろうか。しかし、日本の女性レゲエダンサー 密接に結びついたダンスの動きをもっとも熱烈に は、レゲエダンスを肯定的に捉えていた。そこに 支持しているのは、ジャマイカのダウンタウンに は、ジャマイカのレゲエダンスと１つの共通点が 暮らす労働者階級の女性たちである。彼女たちは あるように思われる。支配されるものが、解放へ このダンスを通し、アップタウンに住む中産階級 向かう道である。一見「エロい」と言われている が特権的に規定しようとするモラルについて、そ レゲエダンスであるが、日本女性のレゲエダンス の欺啼性を明らかにしている。また、ジェンダー は性の解放を読み取ることも可能であろう。 をめぐる保守的なイデオロギーから自身のセクシ レゲエダンスには決まりがなく、心のままに腿 ユアリティを解き放ち、祝福し､自己のものへと ることの出来るダンスである。そのため、自己ま 称回している(鈴木:2000)のである。 たは性の解放の手段として、日本女性を魅了して 日本でレゲエダンスが入ってきたのは1990年代 である。そこでレゲエヒップホップというジャン ルが誕生した。ヒップホップダンスは「いかつい」 という評判があるが、レゲエの振りも取り入れる ことによって、女らしさや滑らかさも同時に現す いると考えられる。 １ＭＨｒｉｋｏＫＵＷＡＭＵＲＡ
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