2010年 2月 見ざる言わざる聞かざるの教えの

人生の羅針盤
2010 年 2 月
豊かな人生を作る一言集
豊かな人生を作る一言集
[見ざる言わざる聞かざるの教え]
パソコンや携帯電話が普及し、日本中にネットワークが張り巡らされるようになりました。
これにより、仕事のやり方も大きく変わりました。文書、図面などの多くは、ネットワークで
送受され、保管もデータの形式で保管されます。このため、文書、図面の作成、品質確保、修
正、再利用、配信など非常に便利になりました。
ところが、便利といつも隣り合わせにあるのが危険です。ご多聞にもれず、最近、大きな問
題になっているのが情報漏洩問題です。貴重な情報は、ネットワークに接続された機器にデー
タで保管されています。もし、流出すればあっという間に大勢の人にその情報が伝わってしま
います。さらに情報は、物理的な物品とは違い、一度、流出すれば取り戻すというようなこと
はできません。
ネットワークなどを通じた情報漏洩問題とは、少し違うかもしれませんが、本来、話しては
ならないことを口にしてしまうことがあります。言葉を変えれば、表に出してはいけない自分
の心の情報を漏洩してしまう問題と言えるかもしれません。
口に出したことは、形もなければ一般には記録にも残りません。ところが、聞いた人のメモ
リには、
(その人個人の解釈で)確実に書き込まれており、外部から操作や抹消することはでき
ません。その人が、自分自身で消去しない限り、永久にそのメモリに保存されたままです。
筆者も、口に出してしまってから、言わなければよかったと後悔することがよくあります。
自分が言いたかったこととは違うこと、言ってはいけないと思っていたことなどを、無意識に
口に出してしまうことがあります。出してしまった後では、どうすることもできません。ひた
すら、時間が過ぎて忘れてもらうことを祈るしかありません。
このような失敗経験を積むうちに、何となく感じたことがあります。非礼な言動をしない、
機密とすべきことを話題としない、立場上言うべきことではないことを発言しないなどは、常
識的な心構えです。
(これができなければ、社会人としては・・・。
)
これに対して、組織や人への指摘、批判などは、扱いが難しくなります。なぜなら、これら
の中には、うまく活用すれば、教育的指導、建設的提案などに結び付くと思えるものもあるか
らです。
見識のある人ですが、採りようによっては、ダメ出し、説教としか思えない発言ばかりをし
ている人をたまに見かけます。適切と思える発言をしているのかもしれませんが、聞いている
人はそうは思いません。繰り返されると、雰囲気も暗くなり、周囲の人も少しずつ遠ざかるよ
うになります。良くしたいと思って発言しているのでしょうが、結果は、良くなるどころか自
分を孤立させるだけになってしまいます。
このような人に共通しているのは、最初に相手の悪い面、弱い面だけに目を向けていること
です。これらを発見し指摘をするのは、自分の存在を示すために最も簡単で有効な方法です。
ただし、結果は良い方向には向きません。
一方、どんな組織や人でも、必ず良い面、強い面があります。難しいことですが、何とかそ
れを見つけ出し、それを生かすこと、伸ばすことを考えた発言であれば、それは必ず相手の心
に届きます。
良好な関係を築く、効果的なコミュニケーションを行うための最初のステップは、相手の悪
い面、弱い面には目をつぶり、聞いても聞かないこととし、そのことについて発言もしない(見
ない、聞かない、言わない)ことのように思います。そして、相手の組織や人を好きになるこ
と、相手の立場に自分の身を置くことです。そうすれば、必ず良い面、強い面を見つけ出すこ
とができます。
筆者は中学時代、修学旅行で日光に行きました。そのとき、
東照宮にある「見ざる、言わざる、聞かざる」の彫刻を見学し
ました。有名と言われるわりには、それほど大きくもなく、あ
まり目立たないものでした。ガイドさんの説明では、古来の、
「悪いものは見ない、言わない、聞かないようにする」との教
えが込められているとのことです。当時は、そんなものかと思
っただけで、記憶の片隅に追いやっていました。
今、その彫刻を目にすれば、きっと、そこに込められた教えの深さを感じるような気がしま
す。
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代表 芳賀 知
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