海外安全対策情報(2014年7~9月) 1.社会・治安情勢 (1)社会情勢 7月22日(火),大統領選挙の公式結果発表がありジョコ・ウィドド(ジョコ ウィ)側が7,100万票(53.15%),プラボウォ側が6,300万票(46.85%)を得て約 800万票差でジョコウィ側が勝利。その後,プラボウォ側が憲法裁判所への異議申 し立てを行い,8月21日,憲法裁判所は,7月9日に実施された大統領選挙の公 式結果に対するプラボウォ陣営による不服申し立てについて全面棄却の判決を下 した。これによりジョコウィ=ユスフ・カッラ組の当選は確定となり,10月20 日に正副大統領に就任予定。 (2)治安情勢 治安情勢では,比較的安定した推移を見せている。大統領選の7月22日にはデ モ等はあったが,治安上大きな問題は発生しなかった。8月21日の大統領選に関 する憲法裁判決当日には憲法裁判所前で大規模デモが発生したが,警察が放水,催 涙ガスの発射等の措置を執りデモを封じ込め,数名の負傷者が出たものの大きな混 乱には及ばなかった。4月の議会総選挙からは半年近い期間であったが,治安面で は順調に経過している。 イスラム過激派による反社会的行為等についても特段の事件は発生していない。 支持者間の衝突についても,ジョグジャカルタにおいて,大統領選に関連し,ジョ コウィ陣営とプラボウォ陣営の支持者間での小競り合いが発生したほかは,特段の 事件はない。 他方,インドネシアに限らず世界中で注目を浴びているイスラム過激派のISI Sがある。インドネシアにおいても当地の治安に大きく影響するのではないかと政 権,宗教界も非常に懸念しており,すでにインドネシア人過激派の50人以上がイ ラクやシリアへ渡り,ISISに合流しているのではないかと言われており,現地入り したインドネシア人らしき人物がインドネシア語でメッセージを発している動画 がインターネット上で公開されている。インドネシアに元々いるイスラム過激派も ISISへの支持派と反支持派に分かれて内部で対立しているという状況もある。ISIS はイスラムの原理主義的な側面を持っており,政府は,インドネシアの国家原則で あるパンチャシラ,「多様性の中の統一」に大きく抵触すると述べている。特に警 察や軍は徹底的に検挙するという立場であり,実際に連日支持者グループが検挙さ れてきている。またインドネシアの宗教界も,その考え方や実際の行動の危険性を 指摘しておりISISは受け入れられないと表明している。現在まで,ISISの支持者が インドネシア国内ではテロを起こしておらず,現時点で治安上の大きな懸念はない が,シリアやイラクへ渡ったインドネシア人がテロリストとしての訓練を積んで戻 ってくるのではないかと懸念されている。今後,支持者が拡大していく可能性もあ るため,ISISのインドネシアへの浸透については引き続き注視していく必要がある。 8月,ジョグジャカルタのボロブドゥール遺跡の破壊予告がフェイスブック上に 書き込まれ,警察が捜査を行っているが,当局は具体的脅威はなく,実行可能性は 低いものとみており,同遺跡に監視カメラを設置する措置を執ったものの,観光等 に特段の影響はない模様。 10月から来年度の最低賃金引上げや燃料補助金廃止に関するデモが行われる おそれがある。事前に情報を入手した場合はそういった危険を孕む場所に近づかな いこと,万一遭遇した場合は,速やかにその場を離れるように。 2.一般犯罪・凶悪犯罪 (1)警官に車を止められ,身分証を持っていないという理由で罰金を取られたケ ースがあったことにつき,ジャカルタ警視庁担当に問うたところ,現場での罰金要 求は正当な職務手続ではない由。他方,車を止めた警官が偽の警官である可能性も あることから,刃物や銃で所持して脅迫してくるようであれば,身の安全を最優先 に行動することをお願いしたい。可能な限り,罰金を要求する警官の名前や,NI P(警官ID番号)等を確認して通報してほしい。本来は,身分証不携帯の場合, 自宅等に警官と共に向かい,身分確認を行うのが正当な職務方法とのこと。 (2)8月8日(金)深夜1時ごろ,コタ地区のホテルからタクシー乗車したとこ ろ,途中で警察官と思われる男性に止められた。パスポート不携帯であったことか ら,刑務所へ行くか,高額の罰金を支払うか,それともここで示談とするかと言わ れ,示談にしようと話をすすめたが所持金80万ルピアでは足りないと脅かされ, 付近のコンビニに連れて行かれATMから約4万円程度の現金を引き出すことに 至った。被害に遭った男性は,警察官の身分がわかるようなバイクのナンバープレ ートの写真を撮影していた。今後の対策としては,まずパスポートは携帯しておく こと,タクシー乗車の際は登録番号やナンバープレートを携帯電話などで撮影して おくこと,ぼんやりと乗るのではなく道中に何があるかなど注意を払うこと,携帯 電話等でインターネットが使える状態にしておくこと,可能であればシルバーバー ドタクシーを利用すること等が挙げられる。 (3)9月6日に在留邦人も多く利用しているジャカルタ市内のモール・ガンダリ アシティモールにて発砲事件が発生。同エリアには日本人も比較的多く住んでいる。 3.保健・健康関連 西アフリカ地域,ギニア,リベリア,シエラレオネなどにおいてエボラ出血熱が 流行している。致死率が9割以上であり「死の病気」としてセンセーショナルに取 り上げられているが,流行している地域は基本的に衛生事情が悪く医療環境が整っ ていない。また,感染した患者を隔離する方法や感染に対するケアができていない 点が1番の問題である。それと比べるとインドネシアの医療はある程度の医療は確 立されており,私立の病院では隔離などの対応可能と想定される。したがって,西 アフリカのような状況はインドネシアでは起きないだろう。また,感染については, 飛沫感染などはなく,死体に触る,病人に接触することで起こる体液による感染と 言われており,通常の生活で感染する可能性は極めて低いと考えられる。 4.その他 インドネシア入国時のアライバルビザの手数料が25米ドルから35米ドルに 値上げがなされた。5月28日付で大統領令による決定がなされ,6月3日に国会 により承認がなされた後,1か月後に施工された由。値上げ実施の当初は,旅券の スタンプ欄に貼付されるシールが25ドルという表示のままで,手書きで35ドル と変更している状況であった。
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