預金保険機構 仮訳 2013 年 5 月 <仮訳> 預金保険制度のための法的保護制度の確立に係るガイダンス 要旨 国際預金保険協会(International Association of Deposit Insurers: IADI)は、ガイダンス及 び国際協力を推進して、預金保険の実効性強化に貢献することを使命としている。その ために、預金保険に関する IADI の専門知識を世界と共有することを目指している。そ の活動の一環として、IADI は預金保険に関連する事項についてのガイダンスを提供す る調査プロジェクトを行っている。 これに関して、IADI は、2001 年 9 月の金融安定化フォーラムで策定された「実効性の ある預金保険制度設立に向けた指針」を承認したが、この指針の構造及び設計の特色と して「法的な免責が認められることは重要であり、職員は『善意』により行った行為に 対する訴訟への法的保護が受けられるべきである。職員に対する法的保護の欠如は、特 に問題銀行の早期発見、介入、閉鎖などに代表される職務などの任務を積極的に全うす る動機を低下させる恐れがある1。」と指摘された。 これをうけて、IADI のリサーチ・ガイダンス委員会では、2006 年 5 月 16 日のスイス・ バーゼルで行われた会合における助言に基づき、法的保護と免責問題に関する小委員会 2 を設立した。この小委員会の使命は、国際的な経験や IADI 加盟国で見られる実例から、 法的保護体制の適用を推進するために有益と思われる一般的なガイダンスを策定する ことにある。 A. 重要なコンセプト 本ペーパーを読むにあたり、以下のコンセプトが用いられている。 破綻処理3:破綻した、又は破綻しつつある銀行の整理計画は、責任を有するセ ーフティネット機関により策定され、預金保険者への費用負担を最低限にとど めつつ、通常は付保対象預金を全額払戻し又は保護するように設計される。預 国際預金保険協会:Guide for the Development of Effective Deposit Insurance Systems、 19 ページ参照。 2 法的保護と免責問題に関する小委員会は、アルゼンチン、コロンビア、メキシコ(議長) 、 ニカラグア、トルコ及びウルグアイの 6 か国からのメンバーによって構成されている。 3 国際預金保険協会:General Guidance for the Resolution of Bank Failures、8 ページ参 照。 1 1 預金保険機構 金保険者の付保預金の支払額は、破綻銀行の資産からの純回収額を上回ること が多いため、預金保険者には破綻処理に伴うコストが発生する。 法的保護4:預金保険者(組織) 、現在の職員及び元職員、管理職、幹部、法的 に委託された代理人を含む、銀行の破綻処理過程に関係する者が、任務を遂行 する上で、 「善意」により行った行為及び不作為に対する損害賠償やその手続き の影響から保護される法的な一連の仕組みを指す。法的保護は、法定の免責規 定、法律上の助言及び防御、補償方針も含む。 責務及び責任:本人又はその他の主体に対する補償又は、第三者にもたらした 損失や損害の賠償責任を指す5。 責任説明:各国での法的枠組みの範囲内で、銀行の破綻処理中又はそれが終了 した時点で、預金保険者、その従業員、幹部、意思決定機関の参加者、又は銀 行破綻処理に関与した特定の個人が、与えられた権限及び職権の行使を証明又 は正当化することによる、行為及び手続きを指す。 B. IADI の提案するガイダンス 以下のガイダンスは、本ペーパーの主な結論を要約し、預金保険制度に必要な法的 保護の枠組みを設立するための、IADI コア・プリンシプルの提案と補助的なガイダ ンスを示したものである。このガイダンスは、多様な制度や背景、構造等を網羅し ている。 コア・プリンシプル6:法的保護 預金保険者及びその職員は、その任務を遂行する上で、 「善意」により行った決定及 び行為に対する訴訟から保護されるべきである。しかし、職員は、説明責任を確保 するために、適切な利益相反規定及び行動規範に従うことが求められる。法的保護 は、法律及び行政手続きにおいて定義され、適切な条件の下で、免責対象者の法的 費用を負担するべきである。 補助的なガイダンスの要点 法的保護 法的保護(legal protection)及び法的防御(legal defense)という用語は同義語として 使用されている。 5 責務(liability)及び責任(responsibility)という用語もまた、同義語として使用されて いる。 6 「コア・プリンシプル」及び「補助的なガイダンスの要点」の定義については、別紙を参 照。 4 2 預金保険機構 1. 法的保護は法律又は規則で定められるべきである。 2. 目標や目的を達成するために、預金保険制度は法的保護の受益者を明確に定 めるべきである。 3. 法的保護の規定は、法律に従った権限を行使する上で、利用可能な能力に基 づき「善意」により行われ全て(民事上、行政上、又は刑事上)の行為又は 不作為に限定すべきであり、決定が行われた時点で存在した情報も考慮され なければならない。 4. 監督や監査権限から発生する請求に対する政府職員への法的保護は、預金保 険者が業務を行う環境で広く認められる方針や法的慣行において考慮され るべきである。 5. 破綻処理の過程で申し立てられた行為又は不作為に対する損害賠償やその 手続きからの法的保護は、役員や上級の職員に限定されず、法的な責任追及 や手続きの対象とされる、預金保険者、現在の職員及び元職員、管理職、幹 部、法的に委託された代理人を含む全ての該当者に広げられるべきである。 6. 非公的機関への法的保護も、法律に定められるべきであるが、その保護の特 定の条件については、破綻処理機関と実務を担当する契約業者との間の契約 上の合意の一部として締結することが可能である。この方が、双方にとって 柔軟性がある。 7. 法的保護を定める法律の規定は、法的保護の詳細に関して政策声明や命令の レベルで定期的な見直しが行われることを許容する程度に幅をもたせ、絶え ず修正が必要にならないようにすべきである。 8. 法的保護には、合理的な上限を設けつつも、最低限で弁護士やその他専門家 への支払い、弁護費用、保証状、その他保証料の支払いを含むべきである。 9. 法的保護は、必要条件をつけず、受益者に自動的に提供されるべきであるが、 個別の法的手続きの中で、受益者が法律に反する行為や悪意のある行為をと った場合には、費用負担を行った機関に対して、当該者が弁護費用やその他 費用負担を払い戻すことを免除するわけではない。 責任 1. あらゆる責任制度の主眼は、正当な規範に反する行いをすることを思いとど まらせることに置くべきである。 2. 法的保護の受益者は、法的保護条項によって、法的責任の範疇で行動するこ とから免責されるわけではない。 3. 当局は、自らの雇用に対応する義務・任務を遵守しない者を制裁する権限を 有するべきである。 3 預金保険機構 説明責任 1. 法的保護は、破綻処理に関与する全ての自然人・法人が然るべき監督機関や 社会に対して自らの判断を伝達してその正当性を証明すべく、明確な説明責 任がこれら全ての者に適用されるような環境と共存すべきである。 2. 破綻処理にかかわる者が説明責任を果たすことを確保するため、これらの者 には、適切な職務上の宣誓、利益相反規則、及び行動規範に従うことが求め られるべきである。また、セーフティネット機関自体も、自らの行動に責任 説明を果たすことが重要である。 預金保険機関により取扱われるべき事項に関連する全ての書類、情報及び記 録についての保秘に係る条項も整備される必要もある。 3. 破綻処理過程に関連する行為・判断に関して、有利・不利にかかわらず、事 実・証拠の探索を促進するよう、破綻処理過程に対する監視・監督が行われ ることが望ましい。 4
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