知っておきたいメンテ技術 第 5 回 知っておきたいメンテ技術 2-4.錆を電気化学する -電子と電流- 鉄筋が腐食すると腐食電流が流れると言われています。どのようなメカニズムで腐 食電流が流れるのか説明します。まず、鉄筋表面の保護被膜が破壊されて鉄筋腐食が 開始することを第4回で説明しました。保護皮膜破壊後の錆の発生メカニズムを図- 5に示します。 酸素 ① 保護被膜が破壊されると、安定 していた「鉄-電子」が「鉄」 と「電子」に分離してしまいま す(腐食部)。 「鉄」はコンクリ - OH 化学反応 水 電子 ー ト 中 へ 移 動 し 、「 電 子 」 は 健 全部へ移動します。 ② 健全部では「電子」が移動して きたので余分に存在すること になります。 電子 イオン OH - 鉄 OH 化学反応 酸素 水 - 鉄 電子 鉄 健全部 図-5 - 鉄 電子 腐食部 鉄筋腐食のメカニズム ③ 余分に存在する「電子」は、仕方なくコンクリート中の「水」と「酸素」と反応し 「OH - 」を生成します。第2回で説明したコンクリートの細孔溶液中には「OH - 」 が存在しているので、ここでも「OH - 」が余分に存在することになります。 ④ 一方、腐食部ではコンクリート中に放出された「鉄」とコンクリート中に存在する 「OH - 」が反応して「鉄-OH - 」が生成します。細孔溶液中では「OH - 」が消費 されたために少ない状態にあります。 ⑤ 健全部では「OH - 」が余分にあり、腐食部では「OH - 」が少ない状態にあります。 余分な「OH - 」が少ない状態の腐食部に移動すれば釣り合いがとれるようになりま す。 ⑥ 生成した「鉄-OH - 」が「水」と「酸素」と反応し錆が生成します。 これが錆の発生メカニズムです。図-5をみると電子やイオンの移動(赤字、赤矢 印)と化学反応(青字、青矢印)が一連の錆発生メカニズムを構成していることがわ かります。これが、錆の発生メカニズムが電気化学反応によると言われる理由です。 一方、電流とは一定の時間、一定の面積を通過する電子やイオンの量を表していま す。図-5をみれば腐食部と健全部の間にはコンクリート中でイオンの移動が、鉄筋 中では電子の移動が観察されました。すなわち、腐食部と健全部との間で電流が流れ ていることがわかります。電流の流れは電子(マイナスに帯電)やマイナスイオンの 移動の方向と逆の方向となります。したがって、コンクリート中を腐食部から健全部 に向かって電流が流れていることになります。これが腐食電流と呼ばれるものです。 難易度 ★★★☆☆
© Copyright 2024 Paperzz