2009年度 環境基礎数学演習 試験問題

2009 年度 環境基礎数学演習 試験問題
以下の問にそれぞれ答えなさい。ただし分数についてはそのまま表し、小数に直さなくてよい。
【 問題 1 】
以下のデータから、Y = aX + bX 2 の形で最小二乗法による回帰を行ったときの、係数 a および b の値
をそれぞれ求めなさい。
Y X
2
−2
0
−1
1
1
2
2
【 問題 2 】
実験室から出す排水は、中和 (PH=7.0) することになっている。ある実験室から出た排水の PH を半年
間、月に 1 回ずつ計測したところ、次の表に示す値が得られた。
月 4月
5月
6月
7月
8月
9月
PH
8.1
7.2
7.8
7.0
7.4
7.5
このデータから、以下の手順に従って、排水が中和されているかどうかの検定を行う。
(1) 上の検定を行うために、帰無仮説と対立仮説をどう立て
るか、それぞれ記述しなさい。
(2) 標本平均 µ 、標本分散 s を、それぞれ計算しなさい。
(3) 上の結果より、検定のための T 値を求めなさい。
(4) t-分布関数の自由度はいくつにとればよいか。
(5) 上で求めた自由度の t-関数と T の値により、x > T の面
積 (右図のハッチ部分) を計算したところ、0.014 であった。
これより、p 値を求めなさい。
0
T
√
√
(6) 中和が正しく行われているかどうか、検定しなさい。 ( 5 = 2.236、 6 = 2.45 として計算しなさい)
【 問題 3 】
x>
= 0 で定義される関数 y(x) が、次の微分方程式を満たすとする。
dy
+ y2 = 0
dx
(1) 任意定数 C を含む一般解を求めなさい。
(2) (1) で求められた一般解のうち、y(0) = 1 を満たす解を、任意定数を決定して求めなさい。
【裏面にも問題があります】
【 問題 4 】
水溶液中の化学反応による生成量は、元となる化学物質のモル濃度に比例します。以下では、1 リット
ルの水溶液中の反応を考えることにします。この場合、化学物質の量はそのモル濃度に比例します。
¶
例題
³
化学反応
・A
*
) B において、
A → B の反応速度 (単位時間あたりのモル濃度の変化) は k、
A ← B の反応速度は、その 2 倍の 2k である、とする。
1 リットルの水溶液中の A、B の量 (=モル濃度) を、それぞれ [A]、[B] と書くと、これらはその化学
物質の量に一致する。これらの時間変化を表す (連立) 微分方程式は、以下のようになる。

d[A]


= −k[A] + 2k[B]

dt


 d[B] = k[A] − 2k[B]
dt
(∗)
十分時間がたって平衡に達したときの、A と B のモル濃度の比は、以下のようにして求められる。
平衡状態では、モル濃度の変化はないので、左辺は 0 である。したがって、
・0 = −k[A] + 2k[B] 移項して k を除して、
[A] = 2[B] したがってモル濃度の比 [A]:[B] は 2 : 1
µ
これを参考にして、次の問題 (1)、(2) を解きなさい。
(1) 化学反応
*
)B
* C において、
・B)
・A
A → B の反応速度は k、
A ← B の反応速度は 2k、
B → C の反応速度は k、
B ← C の反応速度は 2k である、とする。
このとき、(∗) に対応する、化学物質の時間変化を表す (連立) 微分方程式を書きなさい。その上で十分時
間がたって平衡に達したときの、A、B、C のモル濃度の比を求めなさい。
(2) 化学反応
*
)B
・B*
)C
・A*
) C において、
・A
A → B の反応速度は k、
A ← B の反応速度は 2k、
B → C の反応速度は k、
B ← C の反応速度は 2k、
A → C の反応速度は k、
A ← C の反応速度は 2k である、とする。
このとき、(∗) に対応する、化学物質の時間変化を表す (連立) 微分方程式を書きなさい。その上で十分時
間がたって平衡に達したときの、A、B、C のモル濃度の比を求めなさい。
´
2009 年度 環境基礎数学演習 試験問題解答
【 問題 1 の答】
(X · X) = 10、(X · X 2 ) = 0、(X 2 · X 2 ) = 34、(Y · X) = 1、(Y · X 2 ) = 17 より、正規方程式は、

 10 a − 0 b = 1
 0 a + 34 b = 17
これより、a =
1
1
、b =
10
2
【 問題 2 の答】
(1) 帰無仮説:排水は中性、すなわち PH= 7 である。
対立仮説:排水は中性でない、すなわち PH6= 7(酸性にもアルカリ性にもなる可能性があるので)。.
(2) µ = 7.5、s2 = 0.16 より s = 0.4
p
(3) T = (7.5 − 7) (6)/0.4 = 3.06
(4) 自由度は 5
(5) 両側検定なので、 p = 0.028
(6) 危険率 5%で帰無仮説棄却、すなわち中性でない。
危険率 1%では帰無仮説採択、すなわち中性である。
【 問題 3 の答】
(1) 移項して両辺を y2 で除して、 −
dy
= dx。 これは変数分離形だから両辺積分でき、
y2
1
1
= x +C すなわち、 y =
y
x +C
1
(2) x = 0 を代入して、 1 = → C = 1
C
したがって条件を満たす解は、 y =
1
x+1
【 問題 4 の答】
(1) 1 リットルの水溶液中の A、B、C の量 (=モル濃度) を、それぞれ [A]、[B]、[C] と書くと、これらは
その化学物質の量に一致する。これらの時間変化の式は、以下のようになる。

d[A]


= −k[A] + 2k[B]


dt



d[B]
= k[A] − 2k[B] + 2k[C] − k[B]

dt





 d[C] = k[B] − 2k[C]
dt
平衡状態の式は、左辺を 0 と置くことにより、次の連立方程式となる。


0 = −k[A] + 2k[B] · · · (2.1)




0 = k[A] − 2k[B] + 2k[C] − k[B] · · · (2.2)




0 = k[B] − 2k[C] · · · (2.3)
(2.1) 式より、(1) と同様に、[A]:[B] は 2 : 1。(2.2) 式より、[B]:[C] は 2 : 1 となるから、[A]:[C] は
4 : 1 となる。
したがってモル濃度の比 [A]:[B]:[C] は 4 : 2 : 1
(2) 同様に A、B、C の量 (=モル濃度) を、それぞれ [A]、
[B]、[C] と書くと、その量 (=モル濃度) の時間変化の連
立微分方程式は、以下のようになる。

d[A]


= −k[A] + 2k[B] − k[A] + 2k[C]


dt



d[B]
= k[A] − 2k[B] + 2k[C] − k[B]

dt





 d[C] = k[B] − 2k[C] + k[A] − 2k[C]
dt
また、平衡状態の式は、以下の連立方程式になる。


0 = −k[A] + 2k[B] − k[A] + 2k[C] · · · (3.1)




0 = k[A] − 2k[B] + 2k[C] − k[B] · · · (3.2)




 0 = k[B] − 2k[C] + k[A] − 2k[C] · · · (3.3)
Fig.0.1
(3.1) 式 より、[A]=[B]+[C]、これを (3.2) 式に代入すると、2[B]=3[C] となり、[B]:[C] は 3 : 2 とな
る。したがってモル濃度の比 [A]:[B]:[C] は 5 : 3 : 2
参考のため、[A]、[B]、[C] を同モル濃度から始めた場合の、変化を示したグラフを右に示す。