事前課題 2:話し方の要素 - Lions Clubs International

事前課題2:話し方の要素
目的:
単に人前に立ってプレゼンテーションを行うだけでは、効果的な研修とは言えません。しか
し、研修のメッセージを伝える上で、プレゼンテーションのスキルは極めて重要です。この
事前課題では、優れた講師に不可欠なスキルとして、以下を含む話し方の要素を取り上げま
す。
 目の動きと視線
 声音、速度、口調
 身振りと姿勢
 適切な言葉遣い
作業
以下を熟読し、効果的な話し方の各要素について考察を深めてください。研究会ではその他
の関連資料も配布され、他の参加者と協力して各要素に関する発表を行います。
要素1:目の動きと視線
聴衆を前に話している時、自分の目が何を語っているかを考えてみたことがありますか?
端的に言えば、率直で有効なコミュニケーションを実現するには、強く視線を交えることが
不可欠です。視線を適切に用いることは、聴き手との関係を築く最も有効な方法の一つであ
り、さまざまな側面で効果的な伝達を支援します。
視線はコミュニケーションの手がかり
1対1で会っているのに、相手と視線を交えずに話している様子を想像してみてくださ
い。自分の視線が宙をさまよっているのに、相手と効果的なコミュニケーションがとれ
るでしょうか?
真のコミュニケーションは、相手の目を見ない限り、つまり相手と視線を交えない限り
成立しません。それは、多くの聴衆に向かって話す場合にも同様です。
視線は信頼を生む
誰かに信頼され、同意してもらいたいなら、相手の目を見て話す必要があります。自分
と視線を交わそうとしない人物から、例えば車の購入など、高価な買い物をしようと思
うでしょうか。これとまったく同様に、多くの聴衆を説得しようとする時にも、純粋な
信頼が不可欠なのです。
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視線は主導権の維持に役立つ
皆さんは、聴衆の注意を逃したくはないはずです。視線が適切に注がれなければ、彼ら
は自分の世界に入り込んでしまいます。そればかりか、それを口実に私語を始め、他の
人々の邪魔をし、話し手から注意をそらそうとするでしょう。
視線は緊張の克服に役立つ
一度に1人ずつ聴衆に視線を合わせると、すべての聴衆に向き合うことから瞬時に解放
され(聴衆がたとえ2人であったとしても)、1対1の対話を続けることができます。
このことは、聴衆と心を通わせるのみならず、自分の不安を克服する上でも有効です。
心を落ち着かせる方法の一つとして、聴衆を偶然そこに座っている個人と考え、その1
人に視線を合わせて話しかけるとよいでしょう。
視線は相手に安心感を与える
適切な視線は、それが向けられた相手にも効果を及ぼします。皆さんの視線に引き込ま
れた相手は、自分に直接話しかけているのだと感じるでしょう。効果的なプレゼンテー
ションにおいては、聴衆の多くが「あの人は私だけに話しかけているのだ」と感じ続け
ているはずです。
研修における適切な目の使い方:
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聴衆を見つめる - 誰もいない壁、床、天井、あるいは聴衆の頭上を越えては
るか遠くを見つめても、何の効果もありません。皆さんの視線を受けるべき
人々は、目の前の室内にいるのです。
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焦点を限定しない ‐ わずかな人々、悪くすると1人の個人ばかりを見ている
と、相手は「なぜ自分だけを凝視しているのか」といぶかしく思うもしれませ
ん。当然ながら、他の聴衆も不審に感じ始めるでしょう。これでは、信頼を築
くことはできません。それどころか、気の毒にも視線を一身に集めることにな
った相手はおびえてしまい、逆効果を生むことにもなりかねません。
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一度に1人の相手を見つめる ‐ 聴衆の人数が少ない場合には、まとまった考
えを述べ終わるまで、視線を動かすことは待ちましょう。自然な区切りが来た
時に、別の誰かに視線を移して話を続けます。視線は列から列へ規則的に動か
すのではなく、無作為に向けるとよいでしょう。
聴衆の数が多い時には、まず部屋の後方に座っている誰かに、少し長めに視線
を合わせます。これは聴衆を引き込む優れたテクニックであり、後方にいるそ
の他の人々と心を通わせる上でも有効です。皆さんの声も、自然に部屋全体に
届くことになるはずです。
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基本を忘れずに ‐ 感じの良い自然な表情を心がけましょう。プレゼンテーシ
ョンの前には、繰り返し練習を行います。練習に付き合ってくれる友人が集ま
らなければ、聴衆の姿を想像しながら練習するとよいでしょう。
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この要素について、研究会で表明したいその他のご意見がありますか?
要素2:声音、速度、口調
速度の速いスピーチは細かい活字のようなもので、真剣に取り合ってはもらえません。聴き
手への配慮を怠ると、彼らは耳を貸さなくなってしまいます。話し手は、聴衆にとって分か
りやすく、負担とならない話し方をするべきです。
問題は速度だけではありません。実際のところ、速度そのものが原因となることは少ないの
です。注意すべきは一定の速度であり、遅いか速いかを問わず同じ速度で話す人々は、聴き
手を苛立たせる傾向があります。彼らは独特の単調さ(同じ速度)で聴衆を退屈させるばか
りか、スピーチの持つ自然な身体的効果を失わせてしまいます。
スピーチは身体から発せられるものであり、話し手はそのことを忘れてはなりません。それ
は頭脳のみならず、腹部、咽喉、舌、唇の筋肉を駆使して行われます。言葉は文字通り思考
を体現し、発想、意見、論理を身体という船に乗せて旅立たせようとするものです。
しかしスピーチが伝えるものは、言葉や論理ばかりではありません。身体から発せられる声
の響きは、聴き手の身体に感覚を呼び起こします。ご存知の通り、音の力は気分や感情をも
たらします。黒板をこするチョーク、開かれるドアのきしみ、夜に松の木を揺らす風の音を
思い出してください。音楽のみならず、さまざまな音には私たちを深く揺り動かす力がある
のです。皆さんの声も、効果的に使えば同じ力を発揮することになるでしょう。
皆さんが常に同じ速度でスピーチをしているとしたら、さまざまな方法で抑揚をつける必要
があります。スピーチの最も自然な区切りは、息をつく時の小休止です。句読点のない文章
は、難解で読みにくいものでしょう。区切りのないスピーチも、やはり不明瞭で聴きづらい
ものなのです。それは聴き手に苦痛を感じさせますが、原因は速度そのものだけではありま
せん。絶え間ない音の連続は聴き手に休息を与えず、話し手の思考の流れを落ち着いて吟味
する機会を奪ってしまいます。
言葉を区切るには:
聴き手の目を見ながら話しましょう。反応によって自分の話が理解されているかを確
認できるため、話の速度は遅くなります。また、聴衆とのつながりが生まれることで、
的確な言葉を選ぶこともできるでしょう。
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頻繁に息をつきましょう。声に込める力が高まり、次第に冷静になっていくのが分か
るはずです。文章を最後まで言い切れるよう、声の力を維持する十分な空気を確保し
ます。
言葉の間に区切りを入れ、聴き手に話の内容を飲み込む機会を与えます。話し手が深
く規則的に呼吸をしていると、その話は聞きやすく、理解しやすいものとなります。
要素3:身振りと姿勢
身振りには注意が必要です。話し手は通常、無意識に言葉によらないメッセージを伝えてい
ます。話し手がビデオに映った自分を見ると、身体が自分の意図とはまったく違ったメッセ
ージを発していたことを知り、少なからず驚くことがあるものです。例えば、口では「イエ
ス」と言いながら、実際には首を横に振っている人さえいるのです。
効果的な身振りはメッセージの伝達を支援し、話し手を強く印象付けます。聴衆は、身振り
が活発で力強い話し手に、最も大きく反応するものです。メッセージの伝達を促す有意義な
身振りであれば、聴き手も歓迎するはずです。メッセージに込めた意味が適切に反映された
時、身振りは最大の効果を発揮します。
単なる言葉であれば、誰にでも発することができます。それを聴き手に真剣に受けとめても
らうには、話し手の個人的な熱意が不可欠です。話の内容を大切にする話し手は、全身を駆
使してメッセージを伝えようとするものです。その身振りは、部屋全体を圧倒するほどの迫
力に満ちています。このような話し手は、まるでメッセージと相手との距離を縮めようとす
るかのように、聴衆に向かって全身を乗り出してきます。彼らの顔には熱意があふれ、視線
は常に聴衆の目を求めて注がれます。
効果的な身体言語としては、手振り、姿勢、表情などが上げられます。
手振り
自分の手を活用しましょう。手は腰やポケットに納めるものではなく、胸や背中で
組むものでもありません。要点を強調し、感情を表現し、緊張を和らげ、聴衆を引
き込むために使いましょう。
「短い」や「長い」などの形状を表現する手振りなら、誰もが思い付くでしょう。
しかし、多くの聴衆を前にした時、日常的な手振りはあまりにも小さく、弱々しく
映るものです。
話し手は、部屋の大きさに合わせて手振りを変える必要があります。手首や肘では
なく肩から動かせば、手振りの効果は大きく高まるでしょう。肩からの手振りは遠
くまで伝わり、話し手が発散するエネルギーを高め、特に力の入っている上半身の
緊張を解きほぐす効果があります。
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姿勢
姿勢は、聴衆に話し手の喜び、不安、自信、気後れを語ります。体重を両足にか
け、わずかに前傾しながらも安定した姿勢は、話し手が真剣に聴き手と向き合って
いることを示します。片方に傾いた締まりのない姿勢は、聴き手に無関心であるこ
との表れです。
手振りを使わない時には、手は身体の脇に静かに置くべきです。手振りを終える度
に脇に戻すようにすれば、聴き手に安心感を与えます。身振りの間の静けさは、効
果を増幅させることにもつながります。もちろん、盛んに身振りを続けてもかまい
ませんが、静止によって区切りをつけることを忘れてはなりません。貧乏ゆすりな
ど、絶え間のない動きは聴き手を悩ませ、集中力を失わせてしまいます。
表情
目、口、顔の筋肉の動きは、聴き手とのつながりを深めます。残念ながら通常の場
合、話し手は多くの聴衆を相手にしている重圧から表情を失ってしまいます。その
顔は石像のように険しく、唇は真一文字に結ばれています。
話し始めるその瞬間から、表情を解き放とうではありませんか。例えば、聴衆に挨
拶しながら笑顔を見せるのです!終始笑顔をふりまく必要はありませんが、少なく
とも然るべき瞬間はあるでしょう。一貫して厳粛な雰囲気が求められるような場合
は、それほど多くはないはずです。
成功の秘訣はコミュニケーションにあり、身振りはそれを左右します。したがって、私たち
は適切な身振りを身に付けるべきです。スピーチの効果を最大限に高めるため、手振り、姿
勢、表情の使い方を練習してください。
要素4:適切な言葉遣い
相手を知らなければ、その心を動かすことはできません。対照的に、相手を十分に理解して
いれば、受け入れてもらえる可能性の最も高い方法でメッセージを表現することができるで
しょう。話し手の目的が情報を伝達することのみならず、聴衆を説得することにあるのなら、
その重要性はさらに高まるはずです。
説得とは、人々を納得させて何らかの行動に導くことです。そのためには、聴衆がすでに持
っている心的態度や信念に変革をもたらすか、あるいは強化しなければなりません。 つま
りプレゼンテーションの前に、聴衆を徹底的に理解する必要があるのです。
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話し手は何を知るべきか?
例えば経験、教育、職歴、年齢、性別、民族的背景、文化的相違など、聴衆の反応には無数
の要素が影響を及ぼします。
聴衆は共通の関心を抱いているでしょうか?互いにどのような関係にあるでしょうか?話し
手に対する反応を左右するような出来事を、最近経験しているでしょうか?
聴衆は話し手に何を期待しているでしょうか?話し手が実行できないような、過剰な期待を
抱いてはいませんか?彼らの期待は現実的でしょうか?その期待に応えることができるよう、
準備は万全に整っていますか?
以上の質問は、準備の段階で考慮すべき事柄の一部に過ぎません。話し手は、思い付く限り
の事項をすべて自問しなければならないでしょう。
聴衆は何を知っているか?
話し手は、聴衆の知識レベルに合わせて話をしなければなりません。したがって、聴衆の予
備知識を明確に把握することが大切です。そうすれば、彼らにとって新しい情報を加えて、
プレゼンテーションを組み立てることができるでしょう。
例えば、聴衆が特定分野の専門知識に精通している場合には、不要な予備知識の説明に時間
を費やしてはなりません。むしろ、彼らの知識を出発点として話を始めるべきです。どんな
情報を追加すれば、メッセージに対する聴衆の理解が高まるかを考えましょう。
同様に、聴衆が話題についてほとんど知らない場合には、その点に配慮して、不足している
知識を補うべきです。
その場合、補足すべきは自分が提供できる情報ではなく、聴衆が必要としている情報です。
必要であれば、プレゼンテーションの後にプリントを配布するとよいでしょう。
聴衆は関心を持ってくれるか?
話題に対する聴衆の興味を考慮しましょう。話し手のメッセージは、彼らの優先順位のどこ
に位置付けられるでしょうか?彼らはどの程度の関心を持ってくれるでしょうか?
聴衆の関心が高ければ、話し手は即座に主題に入ることができます。逆に関心が低ければ、
その前に彼らの興味を高めなければなりません。例えば、特に興味深い話や重大な情報をき
っかけとして、全員の注意を喚起する必要があるはずです。
聴衆は、どのような考え方、先入観、興味、懸念を抱いているでしょうか?これらの要素は、
メッセージの受け止め方を左右します。彼らは話題や話し手に対して、強い意見や感情を抱
いているでしょうか?話し手が触れざるを得ない事柄に対して、固い信念を持っているでし
ょうか?反応を左右しそうな自負心や価値観は、どの程度のものでしょうか?
聴衆は、話し手の主張に対して好意的、または敵対的な反応を示す傾向にありますか?
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聴き手が話題やメッセージを肯定的にとらえているなら、主に自分の意見を強調し、利点を
列挙することに力を注ぐとよいでしょう。
聴衆が否定的な考えを抱いている場合には、異なった方法が必要です。反論を予測し、対応
を考えておくべきでしょう。聴衆に多くを求めるわけにはいきません。このような場合には、
意見の異なる部分に入る前に、同意してもらえそうな部分から始めることです。あるいは、
反論に耳を傾けることから始め、その後で自分の立場を説明するとよいでしょう。
肯定・否定の別を問わず、聴き手に強い感情を喚起させるものは何かを考えることは、話し
手にとって不可欠な手順です。最終的に、全員の興味を満たすことは不可能と結論せざるを
得ないかもしれません。しかし少なくとも、聴衆の関心を踏まえ、それに対する認識と配慮
を示すことにより、有利な立場を確保することができるでしょう。
ためらわず質問すること
聴き手に関する質問は、話し手が彼らに配慮し、その興味や関心に応えようとしていること
の表れです。質問を発した話し手は、聴衆についてどれほどの予備知識が得られるかを知っ
て、驚くことが多いものです。
会議の主宰者や後援者、同じ聴衆を相手にした経験者など、情報源はさまざまに存在します。
特に、聴衆として参加する人々に質問してみるべきです。当然ながら、聴衆と定期的に接触
している場合には、作業はずっと容易になるでしょう。
次回のプレゼンテーションを立案する際には、聴衆に対する理解を深め、それに基づき計画
を立てることを忘れないでください。彼らにとって最も重要な問題は何でしょうか?どんな
方法を用いれば、自分の目指す方向に彼らを導くことができるでしょうか?焦点は常にそこ
にあります。
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