「安全な経管栄養を目指して」

医療法人 耕仁会 職員研修会
「安全な経管栄養を目指して」
伝達研修
平成25年1月30日
訪問看護ステーション やまのて
谷藤 伸恵
研修内容
題:「安全な経管栄養を目指して」
○テーマ:①経腸栄養法の基礎
(手技・管理・栄養剤)
②胃瘻の造設と交換
胃瘻トラブルとその対応
○講師:町立長沼病院 院長 倉 敏郎先生
清田病院 副院長 松村博士先生
○日時:10月27日(土) 14時から16時
12月1日(土) 14時から16時
Ⅰ.栄養管理の手段
1、経口栄養法
2、静脈栄養―消化管機能がない
(1)末梢静脈栄養:短期
(2)中心静脈栄養:長期
デメリット・感染、高価、専門的技術
腸管の委縮(腸管免疫機能低下)
3、経腸(経管)栄養法―消化器機能がある
(1)経鼻胃管栄養:短期
デメリット・嚥下性肺炎の誘発、詰まりやすい
鼻・食道潰瘍、嚥下リハビリの障害、事故抜去 (2)経胃瘻栄養:長期(4週間以上)
生命予後が1か月以上、PEGに耐えられる全身状態
禁忌:出血傾向、咽頭・食道狭窄、腹壁を接近できない(胃手術、肝腫 大)、腹水、肥満
(3)経空腸栄養:長期
Ⅱ.経胃瘻栄養の適応と倫理
経腸栄養のアクセス・ツールの1つ
不足した身体機能を補うための装具
年齢による差別(区別)を行ってはいけない
すべての疾患は年齢や基礎疾患・障害にかかわらず平等に医
療・介護を受ける権利がある
Ⅲ.胃瘻の種類
「バルン・ボタン型」 :1∼2か月毎交換
「バルン・チューブ型」 :バルーンの破損の可能性
1∼2週間毎に注射用蒸留水を入れ替え
「バンパー・ボタン型」 :4∼6か月毎交換
「バンパー・チューブ型」:事故抜去しにくい
瘻孔損傷の危険性
Ⅳ.経腸栄養法の手順
1、手洗い・消毒
2、経腸栄養の中止を考える徴候
・意識レベルの低下・38度以上の発熱
・酸素飽和度の低下 90%以下
・各消化器症状(嘔吐、腹痛、下痢、血便など)
・胃瘻部からの胃内容物の大量の漏れ
3、注入直前
(1)患者さんの準備
・排便の有無・姿勢(座位か30度以上のギャッジアップ)
・口腔ケア・喀痰の吸引
・胃内の空気を抜く
・胃瘻周囲の皮膚の観察
・胃瘻を回して確認
4、注入中
(1)栄養剤の注入速度 初回100ml/時 標準200∼400ml/時
(2)観察点
・滴下数・腹部膨満・嘔気・嘔吐
体位のずれ・事故抜去
5、注入後
(1)水道水20CC でフラッシュ
チューブ型なら食酢を注入
(2)観察点
・下痢・嘔吐・腹満・動悸・冷汗
(3)洗浄・乾燥
Ⅴ.胃瘻に関連した合併症
(1)留置したチューブに関連したもの
①局所圧迫壊死(バンパー埋没症候群)
○症状―・カテーテルの回転不良、栄養剤の漏れ、滴下不良
・胃瘻刺入部の炎症所見の増悪
・胃瘻カテーテルの回転不可能・流動食の注入障害 ・刺入部の疼痛の自覚 ・タール便
○予防策−・栄養投与の際の観察
・ストッパーの締め付けを緩めにしておく
・ボタン型の場合、皮下脂肪増加によりきつく なることがある。
・ストッパーを回転させる
②創部感染
○症状−排膿、発赤、腫脹、硬結、疼痛
○予防―口腔ケア、胃酸分泌抑制剤をひかえる、血流循環
③チューブ逸脱 ④胃排出機能低下・イレウス
⑤胃潰瘍 ⑥幽門閉塞 (2)経腸栄養剤投与に関連したもの
①嘔吐・胃食道逆流・誤嚥
予防ー注入速度を遅くする・体位(座位)
口腔ケア・栄養剤の半固形化
消化管運動亢進薬・減圧
②栄養剤の漏れ
予防ー注入前に栄養剤を抜く・栄養剤の半固形化
上体のギャッジアップし前屈・注入速度の減速
下剤・消化管蠕動改善剤の投与
③下痢・食欲不振
予防ー急速注入や大量注入しない・脱水補正
等張性栄養剤・マグネシュウムの中止
乳酸菌製剤・微量元素・食物繊維の投与
④ボーンバルブ症候群(バルーンによる十二指腸閉塞)
○症状
・イレウス症状・カテーテルの体表の長さが急に短くなる
○対策
・外部ストッパーが移動しないようにする
・位置を毎日確認し記録・CTや内視鏡で確認
・バルンの固定水を抜き、カテーテルを胃内に戻す
・バンパー型カテーテルへの変更を検討
⑤事故抜去
患者自身が抜く、介護動作で抜ける、自然抜去(劣化)
○予防
ボタン型カテーテルの選択、胃壁固定
○早期の対応(2∼3週間まで)
直ちに医師へ連絡
○慢性期の対応
・バルーン式は抜けたカテーテルを入れてみる
・細いチューブを挿入し、翌日病院へ行く