アメリカシロヒトリについて (1)アメリカシロヒトリの特徴と習性 ○アメリカシロヒトリとは(通称:アメシロ) ヒトリガ科。成虫は長さ約 1cm で全体に白っぽい色をしています。卵は葉裏に 数百粒の固まりで産み、孵化した幼虫は吐いた糸で薄網状の巣を作り、その中で 群生して食害します。この時期は葉肉だけを食べるので被害葉は白くかすり状に なります。その後分散し単独で葉を食べるようになりますが、この時期には葉脈 も食べるので、被害樹は丸坊主になることもあります。老熟幼虫は長さ約3cm で、 各節の背面と側面に小さなコブがあり、そこから白く長い毛が生えています。雑 食性が極めて強く、被害樹種は百数十種に上るようです。 ○アメシロの発生時期 通常、年2回発生します。 ・6月上旬~7月中旬(1化期) 8月上旬~9月中旬(2化期) ※気象条件等により発生時期がずれることがあります。 ○発生サイクル(通常) 1化期 2化期 6月 1 1 三 日 頃 日 頃 産 卵 巣 に 群 生 一 ~ 二 齢 幼 虫 巣虫防除期 7月 十 四 日 頃 三 十 日 頃 分 散 す る 三 ~ 七 齢 幼 虫 薬剤防除期 8月 四 日 頃 十 五 日 頃 二 十 日 頃 蛹 化 羽 化 産 卵 巣 に 群 生 9月 一 二 日 頃 一 三 日 頃 二 七 日 頃 一 ~ 二 齢 幼 虫 分 散 す る 三 ~ 七 齢 幼 虫 巣虫防除期 薬剤防除期 二 日 頃 七 日 頃 蛹 化 羽 化 (2)巣虫防除 卵からふ化した幼虫は網状の巣を作って群生します。 最も効果的な防除法は、この時期に枝切りバサミなどで枝を切り落とし、幼虫 を踏み潰すことです。もしくは枝を袋が破れないように燃やすごみ袋に入れ、幼 虫が這い出ないように口をきっちり閉め、燃やすごみとして出して下さい。これ を巣虫防除と言っています。 アメシロは2週間ほどで巣から出て分散してしまい、葉を食べ尽くしてしまい ます。ですから、巣虫防除は非常に重要です。早期発見、早期捕殺をお願いいた します。なお相談室に捕殺用の高枝切鋏を多少準備しております。ご希望の町内 会等には貸出いたしますのでお申し出ください。 (3)薬剤防除の際の注意点 防除はあくまでも巣虫防除を基本としますが、発見が遅れたり、高所で巣虫防 除ができなかったりしたなど、幼虫が巣から出て分散し、捕殺による駆除効果が 得られない場合、薬剤による防除を行います。 しかしながら、薬剤が農薬である以上、人体への影響が全くないものとはいえ ません。 このことから、薬剤の使用に当たっては以下の項目を守っていただき、適正か つ効果的な防除に努めていただきますようお願いいたします。 ① 防除は必要最低限に 相談室で配布する薬剤は、予防効果はありませんので、被害のない樹木に散 布しても効果はありません。必要以上の散布は効果がないだけでなく、人や動 物などの健康への影響が心配されますので控えましょう。 ② 農薬のラベルをよく読んで使いましょう 薬剤の散布前に必ずラベルをよく読み、正しい方法で使いましょう。自動車 に散布液がかかると変色する恐れがありますし、河川や池等に流入すると水生 動植物に影響を及ぼすので注意しましょう。 ③希釈倍率を守りましょう 配布する薬剤は、希釈倍率を守って使用して下さい。また、使用した薬剤の 空き容器は、よく水ですすいでからお返し下さい。すすいだ水は防除液として 使用して下さい。 ④防除前に事前に周知を 薬剤散布をする時は、事前に周辺の方々に散布する目的や日時等を周知して 下さい。必要以上の散布は効果が無いだけでなく、人や動物などの健康への影 響が心配されますので控えましょう。 ⑤時間・風向き・風の強さに注意を 散布を計画するときは、時間帯を(特に子どもの通学時間帯などに当たらな いよう)考慮して下さい。また散布する前に、天候・風向き・風の強さなどを 確認し、散布に向かないような場合(雨天時や風のある時)は日程をずらすな どして下さい。 ⑥散布後は樹木に触らないように 散布してからしばらくの間は樹木にむやみに触らないように注意を喚起して 下さい。 ⑦防除の時は安全な服装で 散布するときは、防護マスクや不浸透性防除衣(雨合羽等)、ゴム手袋等を身 に着けて作業して下さい。作業後はすぐに手足、顔などを石鹸等でよく洗い、 うがいをし、着替えるようにして下さい。また、作業時に着ていた服や手ぬぐ い等は他のものと分けて洗濯して下さい。 ⑧作業は安全・確実に 作業に当たっては、余裕を持って安全・確実な操作を行っていただき、事故 のないようにしましょう。 ⑨記録を保管しましょう 農薬を使用した年月日、場所や対象植物、使用した農薬の使用量又は希釈率を 記録し、保管して下さい。 <参考> その他の樹木害虫 ●例 1:モンクロシャチホコ シャチホコガ科。サクラ、ウメ、リンゴ、ナシなどバラ科樹木を加害します。果 樹の害虫としても有名ですが、公園や庭のサクラに異常発生して騒がれることが あります。 7~8月に成虫の蛾が羽化して、葉裏に数十粒の卵をかたまりで産み付けます。 幼虫の体色は、最初は赤褐色ですが、老熟すると黒色になり黄白色の長毛が生じ て5cm くらいの体長になります。幼虫は頭と尾を背側に反らせて静止することか ら、フナガタムシとかシリアゲムシと呼ばれることもあります。幼虫は群生して 葉を食べます。9月になると幼虫が大きくなって活発に葉を食べるので食害が目 立つようになります。10 月になると地上に下りて、浅い土中にもぐり繭を作って 蛹で越冬します。1年に1回の発生です。 この虫が大発生するとサクラの樹下に大量の糞が落ちるのですぐにわかります。 また、台風などで幼虫が大量に落下して不快害虫とされることもありますが、人 体には無害です。サクラに対する食害は秋が中心なので、木の成長にはそれほど 悪影響を与えませんが、花芽も食べられてしまうので、翌年の開花に悪影響を与 えることがあるようです。 ●例2:オビカレハ カレハガ科。サクラやウメの枝の股のところに、テントのように糸を張って群 がっている毛虫がよく見られます。これがオビカレハというガの幼虫で、そうし た習性からテンマクケムシまたはウメケムシとも呼ばれています。年1回春に発 生し、卵で越冬し、幼虫は3~4月の発芽前に孵化します。幼虫の成長にともな ってテントの規模も大きくなりますが、やがて集団生活を解消して単独で行動す るようになります。老熟幼虫は体長 60mm 内外に達し、5~6月に食樹の葉や付近 の石塀などに黄色のマユを作ってサナギになります。2週間くらいで成虫が羽化 し、食樹の細枝に卵を指輪上に生みつけます。食性の範囲は広く、サクラやウメ のほか、モモ、リンゴ、ヤナギ、バラなども加害し、一般家庭の庭でも普通に見 られます。カレハガ科の仲間にはマツカレハのように有毒の種類もありますが、 この毛虫は無毒で、毛も柔らかく安全です。ただ、たくさん群がっている光景が 歓迎されず、刺さない毛虫のなかでは格別に嫌われている毛虫です。
© Copyright 2024 Paperzz