7.20_2012 NL56 第 56 号 特定非営利活動法人 発行人:W.キッペス 発行所:臨床パストラル教育研究センター 〒158-0095 東京都世田谷区瀬田 1-28-2 TEL 03-3700-3425 FAX 03-3700-3427 e-mail:[email protected] http://pastoralcare.jp 2012. 7.20 現 実 を生 きること ウァルデマール・キッペス 「現実について考えること」と 「現実を生きること」の違い 作成する際、いつものようにはコンピュー ターは動きませんでした。それに対するわ たしの「どうしよう」 「困った」 「イライラ 本年6月に開催された、当センター「第 する」というリアクションによって、望ま 15 回 全国大会 in 鹿児島」は有意義なも ない状況をスムーズには受容出来ないと のであり、大会運営も大変円滑に進みまし いう事実を身近に体験させられました。 た。 大会そのものは計画通りでありなが ドイツから講演のために来日したグロ らも、そこでの講演の内容は人生が計画通 ネマイアー氏は、講演において様々な人間 りには行かない現実を取り扱い、いわば好 のドラマを取り上げました。ところが、大 まざる人生を生きるために論じ合いまし 会3日後“帰国予定チケット”が予定の日 た。「(2011 年東日本)大震災に直面した 付ではなく、その日になっていることに気 (福島県立医科大学)医師の叫び~医療の づき、大変困り慌てました。そのことによ 限界~」 「心を支えるターミナルケア」 「臨 って8日間というわずかな滞在のうちの 床のアート~最後まで人間らしく~」の各 1日がチケット確認のために費やされて 講演は、わたしたち人間にとって好ましく しまいました。さらに2日間の東京滞在中、 ない状況を生きる/生きられるドラマに 電車内を流れる「人身事故」の案内とそれ 焦点をあててくれました。天災や人災、必 によるダイヤの乱れによって、ここでも厳 ず訪れる人生の最期(ホスピス)、アフリ しい現実を体験させられたのです。 カのエイズや貧困、経済の課題をも抱えた ちなみにグロネマイアー氏自身が、何の 人生の最期のステージである「死」など。 問題もない人生を送っているのではなく、 現実の人生は大会のようにプログラム 思う通りにならない現実を生きています。 通りには行きません。例えば、この記事を 現在 30 歳になる一人息子が生まれた時に 1 7.20_2012 NL56 茎、次に穂、そしてその穂には豊かな実が できる。」(マルコ 4:26-28) 「この子は話すことも、歩くこともできな い」という診断を受けました。幸いに歩く ことも話すこともできるようになり、現在、 娘が就職活動を始めたことは「人が土に種 ある資格を取る最終段階に入っています。 を蒔いて…まず茎、次に穂」であったのです。 息子の行動は非常に遅いが、笑うこと、笑 現実を生きるための内面的要素 わせることは得意であり、グロネマイアー 思う通りにならない人生を生きるには 氏は息子からゆっくり行動することを学 「心・霊・魂」の機能や力を意識し、それ んだと言います。 を育成し結集する必要があります。以下に 人生が思う通りにならないのは例外的 そのための要素をいくつか取り扱います。 なことではありません。ある母親のことで す。授かった子どもは重いハンディーをも ・感謝する生活 って生まれてきました。時間が経てば元気 感謝は“自分の命、人生、能力、自然な になると期待しましたが、5 年経っても、 どは自分の所有物ではなく与えられてい 10 年経っても・・もうすでに 30 年以上経 るもの”という考え方を持つことが基礎と ちましたが子供の状況は変わらず、母親や なります。自分の存在や、存在そのものは ヘルパーなしでは生きられません。母親に 他力から頂いたものだと認め、その信条を とっては日々の闘いです。この 30 数年間、 生きることです。だが五体満足であったり、 子供のために尽くし工夫してきたこの母 生活できる条件が揃っていたりすると、自 親に対するケアはどうすれば良いでしょ 然を含むすべては自分の支配下にあるも う。母親の努力を具体的に評価することで のだと考えがちです。ところが病気や生活 あり(例:子供にすてきな服を着せること) 、 基盤など、今まで安心を与えてくれていた 母親の気持ちに、 「分かります」とは簡単 ホームが急に揺れ始めると、自分のものと に言わないことでありましょう。 もう一人の母親。18 年前に発病した娘 が今初めて自発的に就職活動を始めまし た。学校を卒業した後、乗っていなかった 自転車に挑戦し、面接も受けましたが、だ めでした。だが母親として大きな喜びと力 を得ました。苦労してきたにも関わらず、 この母親の話し方は明るく、聞いている 人々は誰もこの母親が長年苦労してきた ことを想像できないでしょう。母親の希望 と力になったのは聖書の 1 節でした。 「人 が土に種を蒔いて、夜昼、寝起きしている うちに、種は芽を出して成長するが、どう してそうなるのか、その人は知らない。土 はひとりでに実を結ばせるのであり、まず して捉えていた現実はそうではないのだ と、目覚めるのは当然でありましょう。 呼吸できることをはじめとして、食べら れることや寝られること、家族やホームが あること、国籍や平和などは自分に与えら れている事柄であり、それらの事柄をプレ ゼントだと捉えることは感謝のベースに なるものです。逆に何もかも自分の所有物 だという考え方は感謝する心を育む機会 を自らが潰していることになります。 空っぽの手のひらを差し出して「頂きま す」の動作、合掌、お辞儀などは人間が絶 えず頂いている存在であることを示して くれます。日々の命をはじめ、置かれた状 2 7.20_2012 NL56 況や健康などは基本的に与えられている っては意味のある生き生きしたものでし 要素であり、存在そのものが与えられてい ょう。初めてコンピューターで印刷をした るものなのです。 時も手元で打ち込んだ文字が離れた場所 日常生活の中で固定され、安定している にあるプリンターから出てきたことに非 と思いがちなもの(例:建物、健康など) 常に驚き感動しました。 が実際は自分の一方的な思いこみである 日常の生活の中には多くの不思議が潜 ことを意識する必要があります。 んでおり、それを発見し味わうことは内面 感謝する生活には「すべての出来事に何 性を育むきっかけとなります。 かの意味がある」という信念が手助けにな ・信頼 ります。また、この信念自体も与えられて 天災、人災に限らず人生において絶対安 いる要素であることを言い添えます。 全や安定がないことは自分自身でも分か “当たり前は当たり前ではない”という り、また日々のマスメディアを通しても把 心構えは、 「感謝」を生きるためのベース 握できます。健康状態の移り変わり、良い になります。 とされる健康法、薬物療法も時によって変 ・不思議がる心 化し、確実なものはありません。それにも 長年日本に居住しているわたしにとっ 関わらずその状況を生きるための知性と て、誰かが文字を書いている姿を観察する 理性をもち、積極的に生きられる心の力を たびに驚かされます。わたしから見て「ご 持つことは生きることに含まれる意味を ちゃごちゃに見える文字」の中には意味が 信頼することでもあります。信頼そのもの あり、これを通して意思の伝達ができます。 はでき上がったものではなく、日々の生活 このことはわたしにいつも不思議な感覚 の中で築き、強めていくものです。人生を を起こさせます。ちなみにアルファベット 保障するもの(支え)は自分自身、思想家 (A B C)には、漢字のように意味や概念 (孔子、マルクスなど)、運、超自然者 が含まれていないので漢字と比べれば寂 (神)・・など人それぞれですが、それら しい印象を与えます。 自分が信じているものが実際の生活の移 原始的な生活を送っているある民族の り変わりの中で、いざというときに自分の ことを思い出します。一人の宣教師がその 真の支えになるか/なったかを明確にす 民族と共に暮らすようになり、彼らの言葉 るとよいでしょう。(例:震災直後は隣近 を自分に分かるよう書き留めました。そこ 所との支え合いが力になったが、それは時 に新たなもう一人の宣教師が訪れ、仲間が 間とともに薄れ、その後は金銭や物質的要 書き留めた紙を見ることによって、この宣 素に移り変わりやすい。 ) 教師も彼らの言葉を使うことができまし ・Do it yourself た。文字を持たない彼らにとって文字によ マスメディアをはじめとして、読み物や る伝達は不思議であったことでしょう。 教科書は、現実を他者の目で見て、他者が ちなみに音符も音楽が得意ではない者 選択し、推薦した事柄であり、それらは他 にとってはただの記号ですが、音楽家にと 3 7.20_2012 NL56 者の言葉/他者の得意な手段で伝達され “Do it yourself”とは自分の能力に応じ たものであることを忘れてはならないで て、できるだけ自分のことを自分で考え、 しょう。人生を成し遂げるためには、自分 自分のことに責任をもって成し遂げよう の目で見て、自分の耳で聴き、自分の頭で と努力することです。それは生きた共同体 考え、信教と理性に基づく信念と目標を自 となり、互いを大切にし合う世界の実現に ら持つことが大切です。小学校低学年まで 向けた動きに繋がります。* に受けた行動教育は、次第に価値観教育へ ・静けさ と移り変わったと推測します。自分のこと 厳しい現実を生きるには“自己と共に居 を自分で考えない者は「オウムのように真 るとき”“自己を反省するとき”が不可欠 似事をする」人です。 わたしの親の教育指導は以下の通りでした。 です。日々の勤めをまじめに、熱心に果た しても、自分と共に居るときがなければ自 分のコアを失いがちです(例:働き蜂、会 子どもが、先生の 社人間)。 1.目をよく見て 2.話をよく聞く、だけではなく 現在、わたし個人の問題は、つけっぱな 3.聞いたことを理解できるように努力し しの携帯とインターネットです。携帯が鳴 4.自分の考えや判断を持てるようにさ るのを待つこと(通話やメール)、インタ せること ーネットで参考資料を探しながら横道に また、自分の考え(発見したこと)を発 逸れ、定期的にニュースを見ることが日常 達させ、実現した後には、それらに対する となり、内面的な静けさやその大切な時間 自他の評価が大切です。周りからのフィー を損なう。自分を失えば、残るものもな ドバックを認め、バランスを取りつつ、そ い!のだが。 の中で自分が出来たこと、自分の良さを自 らが発見し、自分をポジティブに評価する 力を育むことを忘れてはなりません。 最後に ・変化に富む多様な現実を生きるには、他者の目や意見より、自分の目と判断を、 ・不安よりも信頼、 ・外観を見るより ときに応じて不・思議がる心の目を味わうこと、 ・他人や社会に任せるより“do it yourself” 。 ・不平においてもなお感謝する努力を、 ・自然の乱用・乱伐・公害よりも ECO、節電や節水に努力する、 ~~ 敬天愛人 ~~ * ウァルデマール・キッペス「心の力を活かすスピリ チュアルケア」弓箭書院 4 2012 年 11-12 頁参照 7.20_2012 NL56 「チャプレンとしての私」~『それいけアンパンマン』にみる物語~ 打本 子どもに大人気のアンパンマンをご存知 でしょうか。悪役バイキンマンと戦う正義の 味方で、元気いっぱいの明るいキャラクター です。最近のアニメで登場するアンパンマン は太陽のように明るくみんなを照らすヒー ローですが、初めて絵本になったアンパンマ ンは、死にそうな人を助ける暗闇に光る星の ようでした。 1975 年、出版された『それいけアンパン マン』は、次のような物語です。アンパンマ ンは、おなかをすかせて死にそうになってい るサルの声を聞き、駆けつけます。サルにア ンパンでできた自分の顔をさしだします。そ のせいで思うように飛べず、サルを背負い転 げ落ちてしまいます。その先がたまたま柔ら かな草原で二人は助かり、アンパンマンはサ ルを山へ送りとどけます。そこで、アンパン マンは他のサルに顔を狙われ追いかけられ、 逃げる途中で怪獣に食べられてしまいます。 怪獣は甘いものが嫌いだったので、アンパン マンを吐き出します。吐き出されたアンパン マンは、パン工場にもどり新しい顔をもらい、 また死にそうな人を助けに行きます。 アンパンマンは、遭難したサルを助けたに もかかわらず、サルの集団に襲われ、おまけ に怪獣に食べられてしまう、それでも新しい 顔をもらったアンパンマンは、また死にそう な人を助けに行くというお話なのです。幼い 頃、この絵本を読んで、人のために良いこと をしても報われないアンパンマンの物語に、 せつなく、やるせない気持ちになった記憶が あります。 原稿のご依頼をいただいて、スピリチュア ルケアやチャプレンについて考えていたと き、このアンパンマンの姿を思い出し、数十 年ぶりに読み返してみました。 子供向けの絵本の中で、「死」という言葉 が3回もでてきます。「死にそうになってい る声が聞こえる」「死にそうな時にいつでも 僕の名前を呼んで」「死ぬほどおなかがすい 5 未来(うちもと みくる)* ている人でなくちゃ、僕の顔は食べさせられ ない」アンパンマンの言う「死」とは、そし てアンパンマンが目指す人を助けることと は、どんなことなのでしょうか。 現代の救急医療の現場で医療者は、自らの 身の安全を確保して救助に向かいます。アン パンマンが確実に死にそうな人を助けるな らば、自分の顔を差し出さず、体力を残した ままサルを背負って飛び立つ方が安全だと 考えられます。しかし、アンパンマンは「僕 の顔を食べてもいいよ」と自分の身を差し出 すのです。作者のやなせたかしさんは、戦時 中、兵役につきひもじい思いをした経験があ るそうです。本当に正義があるなら、食糧が 分配されるべきだと思っていたそうです。や なせさんにとって、死にそうな人に食べさせ るということは、最優先される何よりのケア であり、正義だったのでしょう。 そういった作者の思いからずれるかもし れませんが、この絵本を私なりに味わいたい と思います。アンパンマンの言う「死」とは、 肉体の死だけを指しているのではなく、スピ リチュアルな側面をも含んだ全人的ないの ちの死を指しているのではないかと思うの です。身の安全のために、すぐに山から下り るのではなく、アンパンマンはまずサルに顔 を食べさせました。サルが満腹になったこと は、体が回復したことだけではなく、ひもじ いという気持ちが癒されたということです。 体に栄養が足りないだけではなく、精神的に も乾ききっていたサルの身を満腹にさせ、心 に満足感を与えたのだと思うのです。この物 語でアンパンマンは、こころ、精神性、スピ リチュアリティの大切さと全人的な救いを 私に教えてくれているような気がします。 あとがきには次のように書かれています。 「アンパンマンは自分の顔を食べさせるこ とによっていろんな人を助けます。その時、 アンパンマンはなくなりますが、アンパンマ ンのいのちは、食べさせることによって生き 7.20_2012 NL56 るのです。だから、アンパンマンは何度でも 生き返ってきます」 「アンパンマンのいのちは、食べさせるこ とによって生きる」とはどういう意味でしょ うか。これは、アンパンマンがいのちを与え 続けることのきる理由でしょう。一つに、ア ンパンマンの顔がアンパンでできているこ とから、アンパンマンは、食べられるために 存在しているということです。アンパンマン の生きる意味は食べられること、人を助ける ことにあるのです。 もう一つには、アンパンマンの顔を作って くれるパン工場とジャムおじさんの存在で す。顔がなくなってしまっては、アンパンマ ンがどんなに死にそうな人のところへ行き たいと思っても叶いません。アンパンマンが いのちを与え続けられるのは、パン工場とジ ャムおじさんのサポートがあるからなので す。いのちを与え続け自らが生かされるアン パンマンの姿は、今の私が理想とするチャプ レンの姿です。 では、チャプレンが自らのいのち、スピリ チュアリティを用いてケアし続けるのはな ぜでしょうか。私は仏教徒ですので、その教 えに基づいてなぜ私が苦しむ人の傍らにあ りつづけるのか、改めて考えてみたいと思い ます。釈尊の出家の理由は、苦しみを解決し たいと思ったからです。私自身の経験からも 苦とは、悟りの道の始まりなのです。チャプ レンとしての私は、暗闇になり道が見えなく なった登山者に、それまで歩んでこられた道 程を聞き苦労をねぎらい、暗闇の中で不安な 気持ち、苦しみを共にする存在なのだと思い ます。 それまでの苦労をねぎらうことは簡単な ことではありません。苦しみもがく人の傍ら にいると、私のスピリチュアリティが揺さぶ られます。その人と同じ大きさの苦しみでは なくても、揺さぶられて一緒に苦しみを味わ います。その人の力やその人に働きかけてい る仏を信じ、祈るようにその場が変化してい くことを待っています。苦しみは苦しみのま まではない、救いが必ずあると教えてくれる 仏の存在があるから、私は揺さぶられながら もその場に居続けることができるのだと思 います。相手と一緒に私のスピリチュアリテ ィが揺さぶられ、相手と共鳴する瞬間に、そ の場が少しずつ変化しはじめます。その瞬間 が私に与えられた至極のひと時です。その一 瞬は永遠にも思える時であり、仏が私と共に いてくださることを感じるひと時なのです。 私にとって仏の存在は大きいのですが、ア ンパンマンにパン工場とジャムおじさんが いるように、チャプレンにも支えてくれる仲 間や成長させてくれるケアの場が必要です。 私は、同じ病院で働くスタッフ、同じ訓練を 受けた専門職の朋、自分を振り返る場をもっ ています。アンパンマンの顔が腐っていては 食べられないように、チャプレンも生身の人 間である限り、ケアが必要でしょう。 絵本を作者の思惑とは別の次元で勝手な 解釈をしましたが、これがこの絵本と私の間 におこった物語です。このように絵本として できあがった物語は、読み手の中で新たな物 語を生みます。私は、現場で患者さん、家族 と話した物語を記録として残すようにして います。記録された私と患者さんの間におこ った物語は、読み手である個々の医療スタッ フ、そしてチームの中で新たな物語となりま す。時には私の予想できない物語になること もあります。それも人間で構成されるこの社 会のダイナミックなはたらき、仏のご縁なの かもしれないと最近、思うところです。 つたない文章を最後までお付き合いいた だき、ありがとうございました。読んでいた だいたみなさんのスピリチュアリティにふ れ、新たな物語が生まれたらうれしいです。 * 打本未来:石井記念愛染園愛染橋病院にてチャプレンとして常勤している。臨床スピリチュアルケア協会運営委員として、 スピリチュアルケア専門職養成に携わる。愛知医科大学大学院・神戸大学・龍谷大学・同朋大学にて、非常勤講師としてスピリ チュアルケア論を担当している。著書に『死と愛:いのちへの深い理解を求めて』(共著)『仏教社会福祉の可能性』(共著)『ス ピリチュアルケアを語る第三集』(共著)。 6 7.20_2012 NL56 人格障害者へのスピリチュアルケアの困難さ 臨床パストラル・カウンセラー 高橋 佳代子 この人に良心があるのか・・・と、驚くような人がおります。人の善意を巧 みに歪曲し、自分の利益に目敏く、平気で嘘を重ね、身近な人を裏切ることに 痛むことなく、相手の身になることができず、人を傷つけても自責の念がなく、 自分を省みることもない。何より、一方的に喚きたてるばかりで人の話を聴こ うとしない、会話が成立しない・・・そういう人が、人格障害と診断されてい るとは限りません。仮に診断されても、有効な治療法がなく、家族や周囲の人 のご苦労は計り知れません。結婚した後に、配偶者がそうであったと気づく場 合さえあります。 私自身そのような養父母に育てられ、大人になってからは仕事で、そのよう な方に関わったことがあります。現在はセラピストとして、 「家族や周囲の人」 の側の苦しみに寄り添わせて頂いております。 <関わる人へのケア> った。これ以上は無理)』という結論に至 る場合もありますが、『別れてそれで自分 が幸せとは言えない。どんな形でも一緒に いることに意味があるように深いところ で感じる。』とおっしゃる方も少なくあり ません。 人格障害の方への対応は、こちらが「影 響されないこと」だと私は思います。過剰 な要求を拒否する場合でも、言葉で伝えよ うとすれば「からまれる(怒鳴られる)」 場合、無言で流すのが一番です。家族は一 緒にいるだけで著しく疲弊します。ご家族 には、 「一緒にいるだけで十分助けになっ ている」ことを伝え、日々の労苦をねぎら い、「独りになれる場と時間」を確保する ことを勧めます。 (ヘッドホンの使用や、 お気に入りの喫茶店などの隠れ家を見つ けるよう提案することもある) それでも、足音が聞こえるだけで動悸が したり、体が震えるようになったら、一緒 に暮らすには限界がきているといえます ので、ご意向に沿って、医師など第三者の 支援を借りて物理的に距離をおき、その後 のことを模索します。あくまでも本心に耳 を傾け、時間をかけて寄り添わせて頂きま す。『もう、いいよ(できることは全てや 私を操作しようとする人は、無理難題を 主張し、従わなければ私の悪口を吹聴し、 どんなに「皆に」悪口を言われているかを 私に知らせ、「従わないとこうなる」とば かりに脅迫的に操作してきます。私は、 「そ んなことをしても無駄だよ」というメッセ ージを無言で送りたいので、無視します。 相手にそのメッセージを送れるのは、私以 外にいないのです。無視といっても、生活 に困らない最小限の保証をしながら、コミ ュニケーションの面では「言わせっぱな し」にさせて反応しません。私の体験から 言えることは、次のことです。 7 7.20_2012 NL56 しようとせずとも自然な心持でいら れるには、「わかってくれている人」 の存在が必要不可欠です。スピリチュ アルケア・カウンセラーは、聴かせて くださる方の想いを我がことのよう に感じ、支持します。 ③ 無力を知ること⇒自分の努力ではど うにも ならないことがあると 認め、 『祈りを添えて、大いなるものに委ね る』ことが、無力な私の対応です。 ① 無視する自分に苦しまないこと⇒無 視している自分を責めなくていい。無 視する(黙って流す)行為にも、それ 以外の手段では伝えられない意味 (愛)がある。また、相手に害されな い(=害させない)で自己を健全に保 護することも愛です。 ② 他者に悪く思われることを恐れない こと⇒自分の正しさを証明しようと しなくてもよい。ただし、自分を証明 <ご本人へのケア> 念に蝕まれた「地獄」の姿も持ち合わせて いる、どうしようもないこの私だけれど、 願わくは、このまま認めて、嫌われながら でも相手にしてほしかったかもしれません。 人格が障害されていると思しき方への スピリチュアルケアは、生きているうちに は困難で、死後、天上で初めて自らの行い を振り返って知ることがあるだろうと信 じます。(死ななければ分からない人もい る)そういう意味で、 「死」もまた希望だ と思います。 やがて関わる人の痛みが癒え、相手と 「適度な距離をとる」余裕ができれば、電 話は無理にしても、たまには贈り物や絵葉 書などを送ることも、「あなたのコントロ ールは受けないよ」と態度で示すひとつの 行為ではないでしょうか。 『大いなるものに委ねる』際の『祈りを 添えて』とは、たとえ今生ではないとして も、いつの日か真実に目覚める機会がある と信じ、絶対者に委ねるのです。その方が 目覚めて、良心をもって生きる姿を思い描 き、そうなると信じて絶対者に渡します。 他人であれば接触を断つことができま すが、同居の家族であれば、食事を提供す るなどの必要最小限のコミュニケーショ ンは断つことができないでしょう。一つ屋 根の下で完全に無視し続けるならば、それ 自体、既に操作され、害されていることだ からです。 魂に輪廻転生があるなら、人は平等に、 ありとあらゆる境遇を生きるように仕組 まれているといいますから、過去生に、他 ならぬ私が人格障害者で、多くの人に迷惑 をかけたかもしれません。もしそうであっ たなら、疎まれながらも私は他人にどうし てほしかったでしょう。 何を言われても平気でいられるように なるまでには、数々の執着を手放すことに なり、それは関わるこちら側が「成熟へ向 かうプロセス」を生きることです。 仏教では、人の心は絶えずコロコロと六 道輪廻するといいます。争いの心に占領さ れた「修羅」の姿も、欲に支配された「餓 鬼」の姿も、無知なる「畜生」の姿も、邪 8 7.20_2012 NL56 /|/|/|/|/|/|/|/|/|/|/|/|/|/|/|/|/ 2012年 5 月期 -資格認定と更新-(敬称略) ◎ 臨床パストラル・カウンセラー 認定者 村松 由美子 中室 アヤ子 伊藤 実希子 村松さん ○臨床パストラル・ケアワーカー 認定者 水浦 ふじ子 中室さん 水浦さん 伊藤さん ◎ 臨床パストラル・カウンセラー 認定更新者 小林 テイ子 針谷 宏子 大河 アキコ 宇根 節 ○ 臨床パストラル・ケアワーカー 認定更新者 浅井 明子 /|/|/|/|/|/|/|/|/|/|/|/|/|/|/|/|/ 「それでも人生に『のさり』と言う」 スピリチュアルケア勉強会 ~熊本の方言: 「のさり」について~ 北九州ブロックスピリチュアルケア研究会(イエズスの聖心病院にて) 臨床パストラル・カウンセラー 加藤 理人 1.はじめに ゲスト訪問でスピリチュアルなキーワードに気付くことはスピリチュアルケアにおいて重 要です。 「のさり」は熊本の方言です。この「のさり」には様々な意味があり、熊本のスピリ チュアルなキーワードだと思いました。 2.熊本の方言“のさり”の意味 1)意味 「分け前がある」、 「ありつく」、 「思いがけず何かをもらう」 、 「幸運に恵まれ る」、 「恵み」など。 2)熊本県民の特徴:肥沃で生産力の高い風土に恵まれ、新しいものを取り入れる必要が なかったため、伝統的・保守的な志向が強く残した土地柄 9 7.20_2012 NL56 3.生活における“のさり” 1)ライフステージ毎の使われ方 ライフステージ 「のさり」使用の変化 学童期 ・ごはんにのさった ・思いがけずプレゼントをもらって、 「のさった」 青年期 ・彼氏にのさった ・先生にのさった ・仕事にのさった 成人前期 ・夫にのさった ・よか嫁さんにのさった ・子どもにのさった 成人中期 ・嫁・姑の関係など苦しい時に「これは私ののさりだけん」 成人後期 ・家族の不幸・自分自身の不幸を「私ののさり」 2)思い通りにならない現実、変えられない現実を受容する“のさり” ・例えば障がい児が生まれた家族で「のさり」が表出されるまでには、家族一人ひとり の様々な葛藤がある。 ・「我が家ののさり(我が家に授かった)」と最初に表現するのは、母親からではなく、 多くは夫や祖父母。 ・夫や祖父母が「のさり」と表出する過程には、障がい児の成長や地域の人々の障がい に対するものの見方が影響している。 ・重要他者である夫や祖父母が「のさり(授かり)」と表現することで、障がい児を産ん だことに責任を感じていた母親が、自分をゆるし癒されると受け止めていた。 4.“のさり”による態度価値への転換 現実を受容すること、現実と共に生きること、において、 “のさり“は V.E.フランクルが述 べる態度価値(人生の中で起きてくる現実問題に対し、自分がどのような態度や行動をとる のか)への転換において、大きな役割を果たしていると考えられる。 “のさり”を使用す る文化圏である熊本県民において、 “のさり”という方言はスピリチュアルキーワードとなっ ている。 まとめ 臨床パストラル教育研究センターは、スピリチュアルケアの提供を保障する日本の社会の 実現を目指しています。それは、 「臨床の場」 、 「教育の場」、 「研究の場」においてスピリチュ アルケアを提供することです。今回は、 「臨床の場」でお聴きした「のさり」という方言を「研 究の場」で深めることができました。熊本には、 「のさり」という言葉と共に現実を生きてい るゲストがいます。他の地域にも独特なスピリチュアルなキーワードがあると思います。誌 上で掲載していただくと大きな学びになります。ぜひ、教えてください。 10 7.20_2012 NL56 ある患者訪問で感じたこと 臨床パストラル・カウンセラー 大島とし江 臨床パストラル・カウンセラーの資格を頂 いてから1年、訪問看護師として医師 会で働いています。訪問看護と言うと高齢者 や機能低下の患者さんと思われるでしょうが、 近年では癌の末期を自宅で過ごす患者さん が増えています。通院しながら抗がん剤を続 ける方、病院と連携しながら疼痛コントロール し自宅で過ごす方、医療は行わず家族に囲 まれて最後を迎える方など様々です。 訪問では医療的な処置が済むと患者さん やご家族の話し相手として過ごす時間が多く、 ある時は笑い、ある時は涙をこらえ、ある時は 雑談に交えながら、生きてきた中でその人が 大事にしてきた体験を話して下さいます。一 緒に笑ったり、涙ぐんだりしますが、「自分の 心の痛みと向きあう準備が出来つつあるのか な?」とお話をお聞きしながら思っています。 ある訪問の時のお話です。 昔 500 円札がありました(今の貨幣価値で は 5,000 円くらいでしょうか)。 〇さんはある日お布団が大安売りをしてい るところに出会いました。 その値段は 500 円、お財布の中にはちょうど 500 円札が入っていました、買おうかどうしよう か迷いながら。家に帰って 500 円札を体の上 に乗せてみました。体は少しも温かくならない と気がつき、そのお金を持ってお蒲団を買い に行ったそうです。その夜、体はとっても暖か く幸せでした。その時、「お金は持っていても 体は温かくならない、お金は使って価値が出 る」そう思ったそうです。 今、病気になって現金は大切だと思うそうで す。タクシーに乗って指輪を出しても受け取 ってはくれません、病院の支払いも宝石や衣 類を受け取ってはくれません。品物は現金の 代わりにはならないのです。そうすると「お金 である事が価値がある」と感じるのだそうで す。 今一番の悩みは、バブルの時代に建てた 家に買い手がつかず困っています。3 人の子 供たちは独立しているのですが、長女は離婚 し、次女は独身、長男に子供はできませんで した。これから先、3 人の子供たちがお金の 事で争い仲違いして欲しくないので、亡くな る前にお金の始末をつけておきたいと思うの だそうですが、末期癌の今、家の売買をする ような元気はありません。できる事は何かと考 え尽くした〇さんの答えは、貴重な体験をお 子さんたちに伝える事でした、そして、「みん なを(子供たち)を大切に思っている」とお話 をすることを決められました。 患者さんは命の先を見据えて答えを出し て行きますから、決して間違うことはありませ ん、むしろ私が考えるよりずっと純粋で真剣 で愛情に満ちています。 私の出来る事は、患者さんの話に耳を傾 ける事と、自分の気持ちに向き合えるように 問いかける事、そして最後に私(第三者)が 見ている世界をお伝えしています。なぜなら、 お話をお聴きしながら私が気づかされるほう が何倍も多いからです。気づかされた事柄を 伝え、成長させて頂いた感謝を伝え、心から のありがとうのことばを伝えています。 今はこれが精一杯、でも患者さんに支えら れ なが らス ピ リ チ ャ ル ケ アの 従 事 者 と し て 日々成長しています。 11 7.20_2012 NL56 スピリチュアルケアの勉強室 15 ロンドンオリンピック チャプレン ウァルデマール・キッペス 今年の 7 月 27 日はロンドンオリンピッ を裏付けてくれます(例:“聖なる火”を クの開催日です。古代、オリンピックは参 燃やすこと)。 加者が自分たちの武勇, 勇敢, 剛勇をオ ロンドンオリンピック選手村には「宗教 リンポス山に住まわれると信じた神々(ギ センター religious center」が設けられ、 リシャ神話)の頭、ゼウス神に捧げた礼拝 各競技場に「祈る間」が設けられています。 でした。近代オリンピックは、人類が共に 「宗教センター」の中にはユダヤ教、キリ 生きる、言わばオリンピックを平和のため スト教、イスラム教、仏教とヒンドゥー教 の手段として再起動させたものだと言え の特別な礼拝室があります。さらにオリン ます。ちなみにもう一つの理 ピックと同時に始まるイスラ 由は、フランスの若者がアメ ム教のラマダン断食期間中、 リカやドイツの若者と比べて 選手には特別な配慮をしてい 身体的にもスピリチュアルな ます(食堂の 24 時間営業お 面でも弱いと思われ、彼らを よび"断食を終えたときの食 強めるためという動機が含ま 事パック break-a-fast" food れていたということです。 packs) 。選手達の信教のニー スポーツは単純な身体の力 ズに答えるために(イギリス 比べではありません。訓練に にある宗教団体の中で一番大 よる技術の向上、絶えず学ぶ きな9つの団体から)193 人 姿勢、意志、目標、忍耐、知識、心・霊・ のチャプレンが任命されています。 チャ 魂を磨くフェアプレイの信念が必要とさ プレンは選手だけではなく、役員や観客の れます。1935 年に、近代的オリンピック スピリチュアルなニーズに対しても提供 の創立者であるクーベルタン男爵 Baron されます。 2010 年、カナダ冬期オリン Pierre de Coubertin は、"The first essential ピックで、グルジア(Georgia 共和国)のリ characteristic of the modern Olympics is that, ュージュ選手の事故死に際して、チャプレ like the Olympics of ancient Greece, they ンの活躍は好評でした。また、1924 年の constitute a religion." (古代のオリンピック パリオリンピックでは、キリスト信者のイ と同様に近代的なオリンピックの第一の ギリス人 Eric Liddell が日曜日の 100m 特徴は、宗教が構成要素となることです) 競技に参加することを拒否したことは信 と述べています。 近代オリンピックの儀 仰の重要性を物語っています(映画 式、シンボル、セレモニーはこうしたこと “Chariots of Fire”- 写真)。 12 7.20_2012 NL56 スピリチュアルケアの的確な援助者の教室 訪問記録の実例 会話記録(G:ゲスト、H:ホスト、K:看護師) (Gに出会う前に、お茶っこサロンを実施す る仮設にGさんが居るのでよろしくと△さんよ り伝言を頼まれていた。また、△さんより娘さ んが流されたことを聞いていた。サロンにGさ んが来たので) 1H:「○○さんですね。喫茶店をしていた△さ んが、今日、ここのお茶っこに行ったら、会 えるからよろしくと話していました」 1G:「ああ、そうなの(態度が急にしたしくな る)・・・△さんは、私の店でアルバイトをし ていたんだよー・・。あの震災の日には、娘 が喫茶店で丁度世話になっていたんだよ」 2H:「そうでした・・・(沈黙後に、思い切って 話題を向ける)その・・娘さん、流されたん ですね」 2G:「(抵抗もなく)そうなの、地震が来た時 には、○○寺に私を逃がしてさ・・『あそこ まで、早く逃げろ!』って、大きな声でしゃ べっていてね・・それで私はなんとか、そこ まで歩いていってね。腰が曲がっているし 痛いもんだから、ゆっくりしか歩けないけ ど・・娘も一緒にそこまで避難したんだけど、 そこから戻ったんだよ、娘は・・(アイコンタ クト)・・」 3H:「(アイコンタクト)・・・戻ったんだ娘さん」 3G:「そうなのさ・・・何か必要な物でも、取り に行こうとしたんだろうね・・・<悲しい顔に なる>」 4H:「(アイコンタクト)・・・(沈黙)」 4G:「・・・(しばらく間)娘もさ、大変だったん だよ・・・」 5H:「大変だったんだ・・・(話しを促すように 沈黙)」 5G:「苦労したのさ・・・結婚もね、したけど、 相手がね・・・でも、仕方ないさね。それも 13 運だろうから・・でも、相手 にだいぶ苦労かけれられ てね。いろいろあるさね、 夫婦と言っても。・・・でも、 頭は良かったんだよ」 6H:「そう・・・頭の良い娘さん だったんだね(Gの嬉しそうな思いが伝わ る)」 6G:「そうさ(自慢げに)・・・ものずごくあたま、 切れるしさ。私も店で働いていたけどさ、 娘が殆どをしていたね。父親ゆずりだった んだよ・・・その父親もね、死んでしまって さ・・・」 7H:「ご主人も死んでしまったんだ?(ご主人 の死についてGの何かを感じる)」 7G:「そう・・・主人は交通事故で、数年前に ね。頭蓋骨骨折・・・自転車で走っていて車 にはねられたんだよ、後ろからさ・・・。それ で全く動けなくなってしまってね・・最後死 んでしまうまでは、ずっとつきっきりでね、 大変だったよ。」 8H:「大変だったんだね・・それでも死ぬまで の時間を看病していたんだ」 8G:「そう。大変だった・・・でもさ、私は、検事 さんに、車を運転していた人のことをどうこ うしようとは思わなかったから、早いこと手 続きを済ませるようにおねがいしたのさ。 検事さんが、こんなに早く解決するなんて って驚いていたくらいだよ・・」 9H:「どうして、早く済ませるようにお願いした の?」 9G:「だって、車を運転していた人は、若い子 でさ・・。内の主人もそれは、頭が良かった し、いろいろ出きる人だったけど、そうなっ てしまったんだから、そりゃ仕方ないでし 7.20_2012 NL56 ど、でも、ほんと良く出来た子でね・・・父親 ゆずりだったな・・・だから、そんな子が流 されてしまうなんてね。考えてもしなかっ た・・震災直前には、7万円のランドセルを 孫に送ったんだよ・・・それも、見ないでい ってしまって・・・ほんとうにかわいそうなこ とをしたよ」 14H:「うん・・かわいそう・・・<寂しさも感じて くる>・・そんな娘さんがいなくなって、穴が あいたように感じる」 14G:「そうなの、ぽっかり穴が開いた感じだ よ・・・(沈黙)・・・寂しいね・・・、仕方ないこ とだよ、こればっかりは・・・」 15H:「(沈黙)・・・寂しいね<『仕方ない』の 中に、受け止めるには時間がかかるという 感じ受けるものの、その思いをどう受け止 めたらいいのか分らない>・・・」 15G:「もう仕方ないよ・・こればっかりは、しか たない」 16H:「そう(間)、・・・仕方ないと思うんだ」 16G:「うん・・・(沈黙)・・・」 17H:「<仕方ないけど、どうにか仕方ないか ら、抜けれられるインパワーマントとは無 いか考えるが分らない>・・・(沈黙)・・・」 17G:「・・・(しばらく間)・・・ああ、今日は沢山 話したし、よかった・・・今日はもうお暇する かな・・」 18H:「はい。話してくださり、ありがとうござい ました」 ょ・・・でも、その子にはこれからが待って いるさ。そう思うと、早いところ終わらしてし まったほうが良いでしょ。」 10H:「そうなんだね・・その子のこれからのこ とを考えたからなんだね」 10G:「そうさ・・・その方が、主人だって、あの 世で喜んでいると思うね・・」 11H:「うん・・・そうか・・○○さんは、そうやっ て相手のことを考えたんだ」 11G:「そう。・・・でもさ、そんな主人と似てい たんだよね、娘も。昔から・・なんでも出き る子でさ・・<悲しい顔をされる>・・店だっ て、一人でいろいろきりもりしていてさ・・・ <お店の話しをしばらくされる>・・・せっか く、いろいろ出来るしさ、頭もさ良かったの にさ・・」 12H:「(しばらく沈黙)・・娘さんの命、(しばら く味わって)もったいない感じがしている」 12G:「・・・そうなんだよ。そう、もったいない んだよ・・・。あの子、小学校の同窓会を企 画していたの・・・だーれもしないのよ、そ の企画。結局、何かと大変になってしまう んでしょ、そういう企画って・・だから、だー れもやりたがらないし、何時も娘がやるこ とになっていてね・・<この後も、一生懸命 の娘さんの頑張りを説明される>」 13H:「<娘を認めてあげたいというGの気持 ちも伝わる>・・そんなに、よく出来た娘さ んだったんですね」 13G:「そうなのよ・・自分で言うのもなんだけ ▼訪問記録に対する▼ ~~ キッペス 先生からのコメント ~~ えてよかった。 (Gに出会う前に、お茶っこサロンを実施する仮設 にGさんが居るのでよろしくと△さんより伝言を頼ま れていた。また、△さんより娘さんが流されたことを 聞いていた。サロンにGさんが来たので) 1H:「○○さんですね。喫茶店をしていた△さんが、 今日、ここのお茶っこに行ったら、会えるからよろ しくと話していました」 1G:「ああ、そうなの(態度が急にしたしくなる)・・・△ さんは、私の店でアルバイトをしていたんだよー・・。 あの震災の日には、娘が喫茶店で丁度世話にな っていたんだよ」 2H:「そうでした・・・(沈黙後に、思い切って話題を向 ける)その・・娘さん、流されたんですね」 H が G さんについての情報を正直に G に伝 14 7.20_2012 NL56 H は辛い話題に入る勇気をもっていた。 の無言に対する気付く度合いは高い。 2G:「(抵抗もなく)そうなの、地震が来た時には、○ ○寺に私を逃がしてさ・・『あそこまで、早く逃げ ろ!』って、大きな声でしゃべっていてね・・それで 私はなんとか、そこまで歩いていってね。腰が曲 がっているし痛いもんだから、ゆっくりしか歩けな いけど・・娘も一緒にそこまで避難したんだけど、 そこから戻ったんだよ、娘は・・(アイコンタクト)・・」 3H:「(アイコンタクト)・・・戻ったんだ 娘さん」 7G:「そう・・・主人は交通事故で、数年前にね。頭蓋 骨骨折・・・自転車で走っていて車にはねられたん だよ、後ろからさ・・・。それで全く動けなくなってし まってね・・最後死んでしまうまでは、ずっとつきっ きりでね、大変だったよ。」 8H:「大変だったんだね・・それでも死ぬまでの時間 を看病していたんだ」 G はご主人を最後まで大切にされたことは Gの心の良さを物語っている。H はそれをフィ ードバックとして言い添えるとよい。「ご主人 を大切にしてくださったお方ですね」のよう に。 H がアイコンタクトをもち、変えられない辛い 現実を話題として続けたことは勇気の現れ。 3G:「そうなのさ・・・何か必要な物でも、取りに行こう としたんだろうね・・・<悲しい顔になる>」 4H:「(アイコンタクト)・・・(沈黙)」 4G:「・・・(しばらく間)娘もさ、大変だったんだよ・・・」 5H:「大変だったんだ・・・(話しを促すように沈黙)」 8G:「そう。大変だった・・・でもさ、私は、検事さんに、 車を運転していた人のことをどうこうしようとは思 わなかったから、早いこと手続きを済ませるように おねがいしたのさ。検事さんが、こんなに早く解決 するなんてって驚いていたくらいだよ・・」 9H:「どうして、早く済ませるようにお願いしたの?」 H が G に辛い話題を続けるために与えた 余裕(沈黙)は、Hの感受性のレベルの高い ことを示す。 H は「どうして」と言わずに、ただ「早く済ま せるようにお願いしたのですね」と反応したら、 Gは自由に話を続けただろう。あるいはGは それ以上内容に入らなかったかもしれない。 5G:「苦労したのさ・・・結婚もね、したけど、相手が ね・・・でも、仕方ないさね。それも運だろうから・・ でも、相手にだいぶ苦労かけれられてね。いろい ろあるさね、夫婦と言っても。・・・でも、頭は良かっ たんだよ」 6H:「そう・・・頭の良い娘さんだったんだね(Gの嬉し そうな思いが伝わる)」 9G:「だって、車を運転していた人は、若い子でさ・・。 内の主人もそれは、頭が良かったし、いろいろ出 きる人だったけど、そうなってしまったんだから、そ りゃ仕方ないでしょ・・・でも、その子にはこれから が待っているさ。そう思うと、早いところ終わらして しまったほうが良いでしょ。」 10H:「そうなんだね・・その子のこれからのことを考 えたからなんだね」 Hが「運」を取りあげ、そして娘の内面性 (苦労を耐え忍ぶ心のパワー=心の次元)に 触れ、頭よりも心が大切であることを指摘し たなら、Gの今後の生き方にパワーになった のではないか。「頭の良さ(知的次元)」より 「心の(スピリチュアルな)次元」に焦点を合 わせたら。 「G は心のあるお方ですね」と、H がフィー ドバックしたら G は自分の心の力の評価がで き、今後の人生のエンパワーメントになった と思われる。 6G:「そうさ(自慢げに)・・・ものずごくあたま、切れる しさ。私も店で働いていたけどさ、娘が殆どをして いたね。父親ゆずりだったんだよ・・・その父親も ね、死んでしまってさ・・・」 7H:「ご主人も死んでしまったんだ?(ご主人の死に ついてGの何かを感じる)」 10G:「そうさ・・・その方が、主人だって、あの世で喜 んでいると思うね・・」 11H:「うん・・・そうか・・○○さんは、そうやって相手 のことを考えたんだ」 HがGの辛い話題を逃げずに取りあげ、G Hが G へ「相手のことを考えた」というフィ 15 7.20_2012 NL56 ードバックは有効だった。さらに「お母さん (G)は今の日本においては宝物であり、今の 状況を生きられる豊かな心をもっています ね。」「自分よりも他者の将来と有益さを希望 することは何より現代社会で大切なことでし ょう。」「G は心のあるお方。現代はこうした人 は少ない」のように。 また、「あの世」を信じ ていることも強調したらよかった。「人は生き 続けるのですね。旅立っても絆はあります ね」のように。 H は G の内面的な状況を「穴があいた」と いう表現で的確にキャッチした。 14G:「そうなの、ぽっかり穴が開いた感じだよ・・・ (沈黙)・・・寂しいね・・・、仕方ないことだよ、これ ばっかりは・・・」 15H:「(沈黙)・・・寂しいね <『仕方ない』の中に、 受け止めるには時間がかかるという感じ受けるも のの、その思いをどう受け止めたらいいのか分ら ない>・・・」 H の G への配慮(沈黙)は有益であった。 分からないことであれば、しゃべらないほうが よいからである。 このとき、G が今までに言 った「運」とか「あの世」の概念を思い出し、 「お母さん、今、娘とご主人にどういうふうに 関わっているのですか」のように問いかける こともできた。それによって G は“今を生きる” ことに、ヒントの一つや援助を見つけたかもし れない。 11G:「そう。・・・でもさ、そんな主人と似ていたんだよ ね、娘も。昔から・・なんでも出きる子でさ・・<悲し い顔をされる>・・店だって、一人でいろいろきりも りしていてさ・・・<お店の話しをしばらくされる >・・・せっかく、いろいろ出来るしさ、頭もさ良かっ たのにさ・・」 12H:「(しばらく沈黙)・・娘さんの命、(しばらく味わっ て)もったいない感じがしている」 H が娘の「頭」だけではなく、娘の「命=娘そ のもの」をフィードバックしたのは有益だった。 15G:「もう仕方ないよ・・こればっかりは、しかたない」 16H:「そう(間)、・・・仕方ないと思うんだ」 仕方ないと思うんだ 12G:「 ・ ・・ そうなんだよ。そう、もったいないん だ よ・・・。あの子、小学校の同窓会を企画していた の・・・だーれもしないのよ、その企画。結局、何か と大変になってしまうんでしょ、そういう企画って・・ だから、だーれもやりたがらないし、何時も娘がや ることになっていてね・・<この後も、一生懸命の 娘さんの頑張りを説明される>」 13H:「<娘を認めてあげたいというGの気持ちも伝 わる>・・そんなに、よく出来た娘さんだったんで すね」 このとき H は、娘の心のよさ、積極性、他 者のために奉仕すること、いわば心の次元 を強調したらよかった。 13G:「そうなのよ・・自分で言うのもなんだけど、でも、 ほんと良く出来た子でね・・・ 父親ゆずりだった な・・・だから、そんな子が流されてしまうなんてね。 考えてもしなかった・・震災直前には、7万円のラ ンドセルを孫に送ったんだよ・・・それも、見ないで いってしまって・・・ほんとうにかわいそうなことをし たよ」 14H:「うん・・かわいそう・・・<寂しさも感じてくる >・・そんな娘さんがいなくなって、穴があいたよう に感じる」 16 H は 15H のところで推薦した「運」や「あの 世」の概念を提供したなら、娘とご主人との 新しいコミュニケーションを探し、今のお二人 の状況について考え始めることになり、盲目 的、運命論的な「仕方がない」は出なかった のではないだろうか。いわば現在の自分の 変えられない惨めな状況に、少しの光が入っ てくることで、その状況を生きられるヒントを 得たかもしれない。例:「やっぱり主人と娘に 再会するまで、この二人の分までやり遂げな いと…。」 「二人にお土産をもっていかない と・・・」のような気付きを得たかもしれない。 言い換えれば G が提供した「運」や「あの 世」はネガティブなものではなく、チャレンジ の元として違った目でみたかもしれない。 16G:「うん・・・(沈黙)・・・」 17H:「<仕方ないけど、どうにか仕方ないから、抜け られるエンパワーメントとは無いか考えるが分らな い>・・・(沈黙)・・・」 7.20_2012 NL56 18H:「はい。話してくださり、ありがとうございました」 前の会話と同様に、H はやはり今生きるヒ ントを見つけ、それによって希望が湧いてくる 可能性があることを意識するとよい。折角の 出会いが盲目な運命論的「仕方がない」で終 わらないように。 H は「話してくださり、ありがとうございまし た」だけでなく、「G のことを考えます。あの世 のご主人と娘によろしく」と言い加えればどう だろうか。 17G:「・・・(しばらく間)・・・ああ、今日は沢山話した し、よかった・・・今日はもうお暇するかな・・」 ~~ Sr.泉 キリ江 先生からのコメント ~~ パストラルケアはGのいのちを活かす 為の関わりであり、会話、傾聴はその為の 手段だと考えている。その視点でこの記録 を読ませていただき、コメントする。いの ちが活きいきしていないこと、それが痛み と言えるのだから。 この会話記録から、Gの最大の痛みは、 震災によって娘が流されたことである。流 されたことを受け入れる過程としてこの 記録を見た時、「仕方がない」という受け 入れの結果が得られた。それは、大きな成 果(スピリチュアル)だったと言える。そ こに至るまでには、娘のことについて充分 に語らせる必要があった。その語りが、G 3以下のGのことばとなって、娘の追体験 物語になっていると思われる。 いのちに力を与えるには、いのちの芽を 感じ取る感性が必要である。それを反復、 確認という形で返す。それが刺激となっ て、いのちの芽が成長する。そのいのちの 芽を観て、成長させることば(刺激)がキ ーワードということが出来る。このケース では、“娘”“かしこい”“もったいない” “もう仕方がない”ということばであろう と考える。 このような考えの中で、GとHの関わり をみることにする。 Ⅰ.出会う前にΔより、娘さんが流され たことを聞いていた。この情報は大切であ 17 る。一期一会を大切に、短時間のうちに核 心に触れるため、大変役立っている。 Ⅱ.1H:この入り方は、この場の雰囲 気(今)からとてもよい。又、Δのことば を伝えている、「よろしく」と。これは、 ΔのGに対する温かい思いやりのメッセ ージになっている。1Gの“態度が急にし たしくなる”、GにとってはΔさんありが とうの思いになり、Gのいのちが動き始め ることになった。 2H:“思い切って”の思い切りはよか った。モタモタしないで中心部に入ること になった。もし“これは早かった”と感じ たら、Hは別の入り方を考えたであろう。 Hの、客観的にそして確実にGを観ている 知的感性はすばらしい。 3H:“戻ったんだ娘さん”の反復は実 に良い。その前にアイコンタクトがあった ことも、これはHの驚きと“そうだったの かー”の共感的となり、そのことがGに 次々と当時の状況を物語らせることにな っているのだ。 4H:アイコンタクトは実に良い。Hが Gの側にいて、共感的一致の様子が伝わっ てくる。共に真剣勝負なのだ。HがGの心 の動きに、必死に添おうとしている。 5H:“大変だったんだー”HはGの心 の動きをよく捉えている。確かに話しを促 したのだ。 7.20_2012 NL56 6H:“頭の良い娘さん”娘を評価して いる。娘から目をそらさない応答が良かっ た(娘の結婚とかに入る可能性もあるのだ から)。Gの喜び(娘を語る)はGの心の 活きいきさであり、受け入れへの動きとも 言える。娘を語る喜びの延長として“父親 もね”とGの心がひとまわり大きくなって いる。Gの心の成長とも言えるだろう。 7H:Gの心から離れないHの姿を見る。 Hは疲れるだろう。どこまでも一つになろ うとGの心の動きをおっているのだから …。 8H:HがGの心をおっている、“大変 だったんだね”と。 9H:“どうして?”の質問はHの中の 疑問を明らかにし、次のステップに踏み込 む為としてよかった。結果は、Gの価値観 を確認することになった。 10H:Gの価値観を評価し、味わってい るように思える。一つのゆとり、遊びの部 分のようで、それも又必要である。 11H:“そうやって相手のことを考えた んだ”と、Gの行動を肯定している。それ は、Gを活気付け、娘をも評価したことに なる。 12H:“沈黙”効果的沈黙である。高価 なものを失ったのだから…。“もったいな い”これは共感的一致の姿と言えよう。“も ったいない”のことばは的確であった。 13H:“よく出来た娘さん”と同意を示 すことは適切である。 14H:“娘さんがいなくなって、穴があ いたように感じる”HがGの心の様を表現 したものである。それも的確であった。そ の結果、G14は自分で結論を出した。それ は、会話の流れの中で育てられた心の決算 だと言える。そして、“仕方がないよ、こ ればっかりは…”は、Gの心の決断であり、 強さを感じさせる。そこまで、Gは成長し た。 15H:“寂しいね”は、共感を示してい るが、Hの疲れが出ているようでもある。 15GにおいてGがHを慰めているようで ある。二度も繰り返し、力強いことばで。 16H:“そう(間)”の中に、互いに良 かった、ほっとした、の空気の流れを感じ る。 17H:“…沈黙…”の後に、「そこまで意 思表示させる力、それは娘さん、ご主人の魂 が働いているのではないでしょうか」と返し てみてはどうだったのかと考えた。 Ⅲ.感想 今回の会話記録を通して感じることは、 ①Hの無駄のない運び方に感心する。“打 てば響く”の印象を受けた。それは、Hが 集中力を発揮することにより、結果、的確 なキーワードが反復して現れている。それ によってGは、活きた水に入れられた魚の ように泳ぎ、自分を表現し、 “仕方がない、 受け入れる以外”と力強く意思表示をする ことが出来た。②アイコンタクトは、見え ない心の交流であることを再認識した。③ Hの集中力が功を奏しているのであるが、 最後にはやり遂げた満足と共にHの疲れ が出ている印象をうけたが、逆にGは活気 づいている。Hの疲れから、訪問時間にも 限界があることを感じる。 素晴らしい会話記録に接することがで きた。感謝。 心のケアは、日常の自己の 心のケアに左右される Waldemar Kippes 18 7.20_2012 NL56 研 修 会 感 想 東京 東京寮院 2012 年 5 月 8 日 ~12 日 科目Ⅰ:人間関係とコミュニケーション 除け者、変人あつかいされる事もあるが、 それでも自分の信念をつらぬく事など諭 して下さり、自分の中で氷がとけた音がし ました。 傾聴は道である。日常の生活の中で良い 聞き手であれば病室でも 良き聞き手で、傾聴の大 切さを、実例をもって話 して下さいました。 今は人生のスタートラ インに立った思いです。 講師の先生を通して伝え られる言葉には聖霊の息 吹を感じる5日間でした。 これから自分自身を見つ めなおし共に生き、人の痛みに寄り添い、 共にいることが大切だと学びました。あり がとうございました。 (T.K. ) 初日は緊張と不安の入り交じった気持 を整理する間もなく授業にあずかりまし た。講師の先生が、臨床パストラルケアの 創設者である神父さまのお姿に接した時 は、びっくりしました。先生は全身全霊の 力をこめて諭すように 大切なポイントは繰り 返し、くりかえし教えて 頂き、私なりに少しは理 解することができまし た。共に生きる事の大切 さ。人間関係とコミュニ ケーションの重要さ。当 たり前があたり前でな い現状。どれもこれもスピリチュアルケア が根底に流れていないと解決はむつかし い事を確認させて頂いた5日間でした。 自分を自分で変えることの大切さ、自分 が自分を生きる事に戦い。時には他者から 東京 聖母病院 2012 年 5 月 21 日 ~25 日 科目Ⅵ:哲学的人間論 スピリチュアルケアの基本は、ありのま まのその方とともに歩んでいくところに あると思う。だから、相 手を操作したりするの ではなく、相手を中心に することが求められる のであると思う。 「ありのままでよい」 ということ、すなわち 「変わらなくてもよい」ということ、実は そのことによって私たちは変えられ、人間 的に成長するのであると思った。 このこ とは自分自身についても同じく言えるこ とであると思う。 いままで私は研修を 受けて 訪問記録の検 討 会を行い、そして病室訪 問し、「変わらなければ いけない」という姿勢で 相手と お話しをして い た。 しかし、相手に「変わらなくてもよ い」といいながら、自分が「変わらなけれ 19 7.20_2012 NL56 ばいけない」と思うのは、大きな矛盾であ る。 いままでの人生、成長、自己の哲学、 神様からいただいた賜物によって「変わら ない」ありのままの自分で話をすればよい ということに気づかされた。 ヒントは講 師の言葉にある。講師は「訪問記録と訪問 は別のものです。訪問はそれ自体で完結し ていて、素晴らしいものなのです」と言う。 私は訪問の一つ一つが変わることのな い、その時精一杯の、ありのままの自分と 相手による素晴らしい出来事であると思 東京 う。 だからそれを変えることは全く必要 ないのだ。ただ、次に訪問するにあたり、 訪問記録検討会でありのままの自分はど のようであったかを、客観的に見ていく必 要はあると思う。 もしかすると悪いくせ もあるかもしれない。 しかし大切なこと は自分の意識ではなく、もっと大切なもの、 目には見えない「命の源」に身を委ねてみ ることであると思う。 そこにスピリチュ アルケアの核、成長の基盤があるように思 えた。 (I.M.) ニコラバレ・サンパウロ 2012 年 6 月 3 日 ~5 日 科目Ⅱ:価値観の明確化 私は大切ですと書いたカードを机の上 に置き、それを見ての講話はとても感じる ものがあり、しっかりと自分が自分を大切 にすること、自分の価値観は自分が生き貫 くことの大切さ、そこには強さがいること、 それは自分の価値観を知り、それに生き、 どのような他者からの批判があろうとも しっかりと価値観を揺る ぎなく生きることの大切 さを気づかせて頂きまし た。 価値観の作業(ウエイ ト)でグループの方々と 共に話し合ったその中に、 このウエイトはこうでは ないかと言われた時、い や私はここですとはっき りと迷いなく 自分の価値観としっかり とつかみとれたような気がしました。これ から講義の内容と教科書をてらしあいな がら、復習を深めて行きたいと思います。 いろいろとありがとうございました。皆様 方のご活躍をお祈り致します。 (T.K. ) ************************** 20 価値観が多様化の中で、自らが生きてい く上で選択することの難しさがある。 も う一方地球が危ない中、人類は生き残るた めに地球温暖化、人口問題、資源エネルギ ー(原発の再稼動)等、どうすべきかを急 いでしないと人間は生き残れないかもしれ ない。これらを考えていくにはひとりひと りが自らの持つ上での価 値観を明確にすることが 大切。私にとっても、人生 の後半は自分に与えられ たものを生かして、人との 関わりを持ち続けたい、こ のことを人生の目標とし たい。 将来の不安はエネルギ ーを使い果たしてしまう、 それよりも今を生きることが大切であるこ とを自分自身に言い聞かせていきたい。 人生はどのようにしても過ごせていくが、 その意義を考えた時に与えられた命が生き 生きすることを学んだ。今後は日々を過ご していくのに価値観の明確化を自分のもの にしていくための課題を自分に課すること になる。 (I.S. ) 7.20_2012 NL56 傾聴講習会感想 仙台 クライスビル「あったかこころねっと」 第Ⅳ回 2012 年4月 22 日 ~25 日 ・自分自身を見つめ直す良い機会であり、 傾聴の心を考える時間です。毎回いろん な人達と出会い、いろんな考え方、捉え 方に刺激を受けていま す。講義とワークの組 み合わせがとても良か ったので次回もこのよ うな形式を!(K.H) ・現在の私にとって、と ても助けになりました。 (O.M) ・回を追うごとに見えてくるものがある。 自分ではすでに判っていると思ってい た自身の性格や傾向を見直す機会を頂 いたと思う。 (T.Y) ・毎回参加した後、自分の内面が調整され ているように感じ嬉しくなり、また受け るたびに自分の内面も変化しているの を感じ驚いています。そ のことに気付けたこと が喜びになりました。 (O.H) ・回を重ねるごとに私の 中にある問題が明確に なって来ています。その 問題(スピリチュアル) をどうして行くのか私自身に委ねられ ています。毎回、自分自身の「思い」が どこから来ているものかを分かること ができる。繰り返し受講することで少し ずつ分からせて頂いている。(O.T) ************************************************************ 第Ⅴ回 2012 年 6 月 23 日 ~26 日 ・話し手、聴き手としての心構え、深く聴 くこと、態度、姿勢など反省すること多く、 まだまだ学ばなくてはならないことが発 見できた。 (K.H) ・自分の話の聴き方を振 り返る視点を色々得る ことができました。 (A.G) ・自分の話ができ、自分 の心の中の気づかなか ったことを引き出せた。 (S.K) ・スピリットを対象としていることの価値 について理解を一つ増やすことができ、 「不思議がる心」換言す れば神秘探求心が刺激を 受けました。傾聴・カウ ンセリング・スピリチュ アルケアの違いを知りま した。 (M.K) ・今とても心に掛かって いることについて聴いて 頂き、この場に一緒にいる方々からフィー ドバックを頂いて大きな気づきを得まし た。(O.H) ・傾聴は難しいことですが勉強なさってい る方が多いこと、熱心であることに刺激を 受けた(F.M) 21 <傾聴講習会感想 続き> 7.20_2012 NL56 東京 東京療院 2012年4月7日 ・見る次元として4つの視点を教えて頂き ましたが、ほとんどが肉眼で捉えている ことに過ぎず、何故そこにあるのかとい う意味や何のためにあるのかまで考え ていませんでした。ましてや、いのちや 内在するエネルギーを見るという目に 映らないものの見方に ついては、ほとんど意識 していませんでした。ア イコンタクトには言葉 では伝えられない意志 の強弱が現されている ように思え、思いを理解 する上において、とても 大切なことであることが良く分かりま した。毎回の講座に参加する中で、学ぶ ことよりも生きること、自らの価値観や 存在を明確にする点を確認して頂ける ことがとても力になっています。 (H.T) チュアルまでの見方をしているのか、現 時点での自分の状況も分かりました。ア イコンタクトもやってみて自分の心の 状態によって相手の受け取る思いが変 わってくるのだと学べました。 (J.A) ・個人の存在そのものに迫れば迫る程、逆 に自分というものの存在 感がハッキリとしてきた ように思います。今まで の自分は自分というもの の存在感をあまり表に強 く出さないように意識的 に薄めていたように思い ます。それはネガティブ な意味ではなく、個人の個性や特長を認 め他者との協調性を保ちながら、個人の 力では困難なことを複数の力によって 進めるチーム力を発揮するためです。 「私」という個人のスピリチュアルな領 域の成長がもっともっと必要なのだと いうことを分からせて頂けた。 (T.S) ・音を聴き取る訓練では普段聴くことのな い自分の中の動きを感じ取ることがで き、みる訓練では肉眼だけでなくスピリ 福 島 2012年4月26日 し軽くなったとともに、自分したいこと や人生の目的など大事な部分は、より迷 いの中といった感じになりました。 ・「傾聴とは自分の内面的な声を聴くこと から始まります」と言うことが印象に残 りました。聴くことで共に生き歩んでい るのだと心にとめて明 日からも仕事頑張ろう と思いました。 ・日常でいかに他人の言 葉を理解して聴いていな いか、傾聴する大切さを 改めて感じました。 ・「無力を生きる力」と言 うテーマ、とても良かっ たと思う。「傾聴は自分 自身の内面の声を聴く」 と言うことに納得しました。 ・前回も聞きましたが、 理解できそうで、すごく 難しいと感じています。 すごく頭が混乱しているのですが整理 ができたら、どこかでハッとする瞬間が 来るのだと自分自身に期待しています。 ・僕も傾聴を主題とした仕事をさせてもら っていますが、先生の話を聞いて心が少 22 7.20_2012 NL56 一日研修会 感想 ★南関東ブロック 難しくて理解できないことも多々あり ましたが、自分のことに照らし合わせて良 く理解できました。持っている物を活か す・・健康・・良く理解 できました。 ************** 私は全ての感覚を研 ぎ澄まし、分からないこ とは勉強し、自分自身を 知り、正直に、出会った 人々を愛する。そうなることが願いです。 ************** 参加して良かった。スピリチュアルケア についてはまだ理解しきれませんが、勉強 2012 年 5 月 13 日 を続けたい。今日参加したことで他の方の お話や先生から沢山学ぶことが出来まし た。ありがとうございます。 ************** 心理的な痛みとスピ リチュアルな 痛みの違 いがなかなか 区別でき ずにいましたが、少し理 解できた気がします。人 間の根本的な ことであ りながら問題視されていない社会の意識 を変えていけるよう動いていきたいと思 います。 新 会 員 名 簿 新 B 会員 敬称略 杉岡 良彦 阿部 郁子 鳥飼 真喜子 池坂 明美 谷山 洋三 大友 真由美 聖テレジア会パストラルケアセンター 伊藤 巧 林 理江 寄 付 者 萬里小路 公子(1) 上原 博之(3) 松本 晃子(5) 藤井 昭子(3) 村松 雅子 福田 みどり 敬称略 柴田 イツ子(3) 西出 悦子(3) 梶 美恵子(10) 若杉 吉田 弘行・公美子(3) 馬場 由記恵(3) 藤野 古上 惠子(10) 中村 押川 春美(3) 関本 藤瀬 邦子(3) 宗像 石川 百合恵(3) 高松 科目Ⅰ受講者有志(1.2) 章子(3) 了(3) 克久(3) 浩平(3) 享子(23) 惠子(3) 岩間 由紀子(3) 小木曽 優子(3) 中島 上坂 出口 福岩 吉澤 保壽(3) 佑子(3) 洋子(1) きり子(3) 明孝(3) 森田 和代(3) 小山 照子(3) 野田 千恵子(3) 針谷 章二郎(3) 小林 テイ子(3) 荻原 敏子(3) 津島 惠子(3) 松田 哲裕(3) 緒方 眞理子(3) 前手 由美子(5) 宮原 久枝(3) 田中 優子(3) 仲西 千晶(3) 南関東一日研修参加者(2.5) ※ 2012 年 7 月 17 日現在 23 ( ) 内単位:千円 伊藤 実希子(3) 石田 了久(3) 飯田 針谷 馬場 井口 美穂子(3) 宏子(3) 輝彦(3) 瑞江(10) 井口 塩瀬 安元 岡田 加代子(20) 静江(1) 眞理枝(3) 巳佳(10) 7.20_2012 NL56 新刊のご紹介 2冊 心と魂の叫びに応えて スピリチュアルケア講演集 6 (2008 年~2011 年度全国大会講演集) スピリチュアルケアに携わる人・これからスピリチ ュアルケアを学ぶ人に「必読の本」 注文先 〒158-0095 東京都世田谷区瀬田 1-28-3 ISBN978-4-915948-65-7 定価 (本体 2,000 円)+税 A5 判 218 頁 TEL 03-3700-2425 / FAX 0.-3700-3427 特定非営利活動法人 臨床パストラル教育研究センター 東京事務所、または、 センターホームページ:http://pastoralcare.jp/book.html からご注文下さい。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ■ウァルデマール・キッペス著 ― 本物の顔は相手を癒してくれるでしょう ― “ 心の教育” を起点にした本物のケアをすべての方へ 心を活かす内面的なパワー、いわば“スピリット”を発見し、 それを活動させるヒントとして書き留め、編纂した一冊 A5 判/並製/ 244 頁 定価:本体 2,300 円+税 ISBN978-4-900354-98-2 ご注文は センター久留米事務所 TEL 0942-31-4836 / FAX 0942-31-4835 または、 お近くの書店、AMAZONブックストアでご注文下さい。 ~~ 編集後記 ~~ 今号は紙面がかなり充実したものとなったのではないかと思う。 キッペス先生の巻頭記事に続いて、チャプレンの打本氏から「スピリチュ アリティ」に関する極めて興味深い内容の原稿を頂いた。平易な言葉でわ かり易く説かれている。さらに、読者から二つの投稿文を頂いたが、 「人格 障害者へのスピリチュアルケア」という難問に対して、高橋氏はご自分の体験を通しなが ら築いたある考え方を提示されているし、加藤氏の報告も「方言にみる(聴く)スピリチ ュアリティ」ということで興味深い。さらに「勉強室」では時宜を得て「オリンピック」 という場における「宗教」の問題を解説して頂いている。皆様が本誌を手にされる頃は真 夏の暑さに悲鳴を上げているころでしょうか。あるいは「オリンピック」や「高校野球」 をテレビでご覧になっている頃かも知れませんが、どうぞ夏バテにならないように気を付 けて充実した夏を過ごされますように願っております。 (文責:吉田 彪) 本誌「スピリチュアルケア」の発行費用の一部は 中外製薬株式会社からのご寄付によるものです。 24
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