「自ら変化し続ける」DNA ~ 変わらないもの「ベクトル」、変えるもの

「自ら変化し続ける」DNA
~ 変わらないもの「ベクトル」、変えるもの「スタイル」 ~
国内ファッション店舗の業界に於いて、長期的に生き残り発展してきたセレクトショップに「ビームス」があります。ビー
ムスが掲げ続けるコンセプトに「ベーシック&エキサイティング」というものがあります。
これは、店舗運営に於いても、変わらない「ベーシック」なものを土台に持ちつつ、同時に、常に自ら変え「エキサイティ
ング」である事を追求していく事と聞きました。
今月のレポートは、徒然に話題を移し、飛躍させ、そして一つのテーマに集約させていきたいと思います。
スタイル
先日、ロカビリーバンド、ストレイ・キャッツの1981年、デビュー時期のモントリオール公演の映像を観ました。80
年代はブームの一つとしてロカビリーがありました。当時のブームに乗ったバンドの一つで、今観るとパフォーマンスは厳
しいかなと思っていると、寧ろ上手く、又カッコ良さを感じました。やはりパフォーマンスも然る事ながら、レザーパンツ
とリーゼントに身を包んだメンバー3人は、ウッドベースと3点ドラムセットというシンプルな「スタイル」が印象的でし
た。トレンドが生まれる際には、そのスキル以上に、その時代の「スタイル」に乗るか、或は先駆ける事が重要です。その
後、バンドメンバーは、90年代ブライアン・セッザー・オーケストラとして復活するまで存在は消えていました。
第一線で息の長く活躍するアーティストを見てみると、
(あるレベルの「スキル」は前提としても)ベーシックには強力な「方
向性(ベクトル)」を持ちつつ、
「スタイル」は常にその時代の流れに乗せるか 先駆けるかして「変化」をさせています。
企業の存続に於いても、或は生物の進化に於いてさえ同様に、「変化」即ち「イノベーション」の重要性は共通しています。
ベクトル
戦国武将の寿命について考えてみました。その旗印には興味深いものがあります。「天下布武(武でもって天下を治める)」
を打ち出した信長は、自らの変化、節目に、敦盛の「人生50年」を謳い舞いました。そして天下を「武」でほぼ統一した
タイミングで、本能寺にて50歳直前で没します。「風林火山(孫子の兵法の一節)」の信玄は、戦国を生き抜く戦術の知恵
を掲げ、戦国一の武将といわれました。そして戦国が終わりに近づいたタイミングで没しました。最後に、
「欣求浄土(戦の
ない浄土を求める)
」を掲げた家康は、優に100年を越えて続いた戦乱の時代に終止符を打ち、太平の世を築きました。
ここで感じるのは、それぞれの哲学、即ち「ベクトル」がその武将の時代における役割、文字通り「寿命」までも決めてし
まうという事です。
世界中が通信ネットワークで一つに繋がった今、人々の感情に強力に働き掛けるメッセージである「音楽」が、人間の世界
で果たす「役割」には終わりがありません。「音楽(著作物)」に於いても、それを生み出し拡める産業として、その「資本
の循環」は絶やしてはなりません。著作物や知的財産は、関連産業として、
(グローバル市場に於いて自動車、家電等の組立
て産業が急速にコモディティ化し、人件費の安い東北アジアから東南アジア、インドへと、付加価値の小さいビジネスへと
シフトする中で)数少ない人間が差別化できる重要な付加価値の一つです。
当社が目指すところは、
「より良く著作物を生み出し続け、そのプロフィットを著作者に還元する仕組みの維持、発展」であ
り、そこに貢献する事です。
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配信ビジネス
当社のトライ・アンド・エラーの一つ、
「ポータル型」の次に来るビジネスモデルとして、先月のテーマに戻ります。
CD パッケージも「ポータル型」の音楽配信も、著作権保護を撤廃し無制限にコピーされ、無制限コピーが可能になるとい
う事は、適正な著作権利用の数量の「記録」が残らず権利者に利益還元できなくなり、著作権及び著作隣接権のビジネス構
造の崩壊をもたらすものです。
当社は、この「Non DRM」時代の音楽ビジネスのテストケースとして、アーティストとユーザー、
「one-to-one 型」の「ア
ーティスト・マルチプラットフォーム」を考えます。フォーワードロックを施したアプリによって、無制限のコピーにはブ
レーキが掛かり著作権は保護されます。
背景には「メジャー・アーティストのインディペンデント化」や「インディーズ・アーティストの受皿減少」があり、方向
性は「アーティスト主体」による事業再構築というテーマがあります。
「アーティスト・マルチプラットフォーム(「AMP」)」へのトライ
事業のスタート時期には、ビジネス上の立ち位置を明確化する必要があります。それは、既存プレイヤーであるマネジメン
ト・プロダクションやレーベルと住み分けした、補完関係のあるものを目指します。
イノベーション
当社の関るコンテンツ・ビジネスに於いても、アナログ盤から CD、そして通信インフラのキャリアポータルからスマート
フォンと流通インフラは目覚しく「変化」しています。今後も当社は、上述した「ベクトル」である「ライツ・マネジメント」
を意識しつつ、一人ひとりのスタッフは「常に変化し続ける」という「DNA」を自らの意識の中に刻み引き継いでいかなけ
ればいけません。
事業の「ベクトル」を中心に据えつつ、その「スタイル」に於いて、感覚的であり興味をそそる、多くの選択肢にチャレン
ジします。オプションは、潜在的に可能性あるものであれば、一つの選択肢に捉われず、又失敗や成功に捉われず、チャレ
ンジし続けなければなりません。
2012年も最終月となりましたが、これより、音楽産業 のみならず知的財産のビジネスに於いて、多くのチャレンジを待
っている新たな時代
の幕開けとなります。
以上
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