第7章 磁気羅針儀 地球は大きな磁石であり、古くは中国において、磁気を帯びた鉄片を水に浮か せて、指南車として、方位を知る道具として使われていた。時代を経て、ヨー ロッパに渡り、ルネッサンスの頃に航海用の磁気羅針盤として開発された。その 後、航空機用に開発された磁気羅針儀(Magnetic Compass)には直読式と遠隔 指示とがあり、直読式について述べる。この方式は船舶用とは異なる仕組みであ り、動的誤差という特有の性質を有している。直読式は小型機で定針儀(後述) と併用して用いており、それ以外の航空機においてはジャイロシンコンパス(後 述)が用いられている。 7-1 地磁気 巨大な永久磁石である地球の表面には磁場が出来ている。磁気の両極は自転軸 である北極と南極には存在せず、対称にもなっておらず、磁極の北の極はカナ ダのハドソン湾 70°N 95°W に、他の極は 72°S 155°E にあり、移動している。 地表面の磁力線は南北方向を指しており、磁気の赤道では磁力線は水平であるが、 それ以外では水平ではなく、地表面との傾きは場所によって異なり、磁極に近づ くとともに傾きを増していき、両磁極で最大となる。 図において、ある地点における地磁 気のベクトルの水平成分(水平分力) が磁気子午線であり、その地を通る子 午線との交角を偏差(Variation)と いう。また、水平分力とベクトルとの なす角を伏角または傾差(Dip)とい う。その地を通る子午線の北を真北 (True North)というのに対して、磁 石の北を磁北(Magnetic North)と いう。 79
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