現代たばこ事情 第9回「成人識別たばこ自販機」

産業医学担当相談員
森 島 真
第9回 成人識別たばこ自販機
たばこを自動販売機で買うときに成人であることを証明するICカード(タスポ)が、
今年の夏までに全国で導入されるそうだ。このカードは、所定の手続きにより申込者が
成人であることを審査した上で、日本たばこ協会が発行し、自販機にかざさないとたば
こが買えない仕組みだ。
日本たばこ協会は、たばこを買った未成年者の7割以上が自販機で買っているため、カ
ード導入の効果は高いとみている。しかし、禁煙推進関係者の多くは、効果を疑問視し
ている。なぜなら、おとながカードを譲渡したり貸借したりすれば、簡単にたばこが買
えるからだ。実際には、面倒な手続きを嫌ったおとなたちが、コンビニなどに流れるだ
けだろう。そのコンビニでも、レジでの年齢確認を徹底するとはいうが、接客指導が行
き届いているため、未成年者へのたばこ販売は行わないという店内放送を流すだけで、
たばこを買う人に年齢を聞くようなことはほとんどない。コンビニでたばこを買ったと
いう未成年に話を聞くと、制服でも着ていない限り、年齢など聞かれないという返事が
帰ってくる。
現在、たばこ自販機は全国に50万台以上あり、コンビニは3万軒以上ある。ICカード
の導入がたばこの売上にどれだけ影響するかはわからないが、自販機でたばこが買いに
くくなっても、未成年者が困らないだけのコンビニがあるのだ。たばこ会社がコンビニ
での販売促進に力を入れていることは、店頭を見れば一目瞭然である。コンビニにとっ
ても、たばこの販売は魅力があるようで、よく目立つ場所にたばこを置き、たばこ会社
とタイアップした販売企画を繰り返している。
成人喫煙者の大部分は、未成年の時から喫煙しているという。未成年者はニコチン依
存症になりやすいこともわかっているので、たばこ会社としては、未成年のうちに喫煙
を始めてもらわないと困るというのが本音だと思う。
本当に未成年者の喫煙をなくすつもりならば、店頭でも身分証明を義務付けるべきだ
が、たばこの流通を管轄する財務省はそれをやらない。たばこの税収と国民の健康を天
秤にかけて、税収を取るということなのだろう。
最後に、たばこの箱に書かれている、こんな白々しい警告文を紹介しておこう。「未成
年者の喫煙は、健康に対する悪影響やたばこへの依存をより強めます。周りの人から勧
められても決して吸ってはいけません。」
おおるり 20