日時:平成 20 年5月 10 日(土)12:30~16:21 場所:新居浜市民文化センター 中ホール 概要:佐渡金銀山を有する佐渡市、石見銀山を有する大田市、別子銅山を有する新居浜市の首長が 一堂に会し、これら産業遺産を生かしたまちづくりについて議論する。2年前に佐渡、昨年 石見で開催し、今回の新居浜市開催で一巡を終える。約300名の市民参加。大田ロータリ ークラブなど、他の2市からの参加、来賓者あり。 12:35~13:31 3市のビデオ上映 ○佐渡相川金銀山遺跡 ・鉱石1トンに対して5グラムの金。 ・ 「大立竪坑」 ドイツ人のアーノルドレイノルの設計によ る洋式建物。5.5m×2.5mの断面を持つ垂直運搬用の穴。 最初は人力や馬による引き上げ、その後蒸気機関へ。中にはアメリカ製の圧縮機が据え付けら れており、国内に現存する最古の圧縮機。 ・平成元年に採掘中止。 ・ 「南沢疎水坑」 同時に6箇所より掘り進み、その測量の誤差は 60 センチメートルしかなかっ た。 ・ 「機械工場」 鉱山を安定的に操業するために、使用する機械の補修を自前で出来るよう機械工 場を有していた。機械加工、工作機械にも優秀な技術、設備を有している。戦前の機械がほと んどで、全て貴重な産業遺産。 ・ 「アーチ橋」 明治時代に作られたアーチ橋で現存するものは少なく、当時の技術を知る貴重な 遺産。 ・「佐渡奉行所」 昭和12年に全焼、平成12年に役所の復元。 ○石見銀山 ・400年に渡り採掘。精錬用の水、燃料としての木材があり、鉱山として発展していった。 ・ 「鉱山、鉱山町」 、 「港、港町」 、 「街道」と、全体システムが残っており、文化的景観を形成して いるのが石見銀山。 ・15世紀にアジアが西欧と貿易するにあたって銀の必要性が高まり、石見より銀を輸出した。 ・おびただしい数の坑道と平坦地。 「灰吹法」による精錬の証として鉄製の鍋が出土。坑道や精錬 所と住まいが一体となった建物跡。生活用品と共に西洋の贅沢品が出土する。 - 1 - ・今でも二つの時代の採掘方法を見ることが出来る。 ・ 「公的管理」 燃料としての森林の管理 最小の環境への影響となるよう当時から配慮していた。 ・1923年に休山。その後大きな開発が無かったので、多くの遺産が当時の面影を残している。 ・銀山にまつわる多くのイベントを実施し、地元の子ども達による清掃活動、草刈の実施。 ・2007年7月、 「世界遺産」に登録。 ○新居浜南高校 総合学科による、別子銅山の紹介映像の作成と情報発信 ・本物の資料に触れる、大人の人達が真剣に対応してくれることに、シッカリとやらねば自分達 の古里が消滅してしまうのではとの危機感 → 真剣な取組に。 ・インターネット博覧会に、高校としては初の登録。コロンビア大学の目にとまり、海外との交 流にもつながっている。 ・別子銅山の環境問題 先人がどう取り組み、問題解決してきたか。 ・インターネットだけではなかなか多くの人達に知られない、広がっていかないことから、愛媛 大学と共にガイドブック「別子銅山88箇所ガイドブック」を作成。 ・国立博物館の教授の声かけで、ものづくりシンポジウム「江戸のものづくり」で発表。 ・外に出て行き、自分達の活動を伝えていく → 小中学校とのワークショップ。100名を越 える小学生と1泊2日。 ・子ども達が、次の世代に引き継いでいきたい、いけるよう、 「観光ボランティアガイド」をした いと、石見銀山へ2週間勉強に。ガイドを通じていろいろな発見があった。 ・学習を通じて、人と人、心と心のふれあいマインドとなっている。 ・9年間の取組を集大成し、e-ラーニングなどとしてまとめ上げていく。 ・ 「まちづくり学習」 生徒たちが自主的に取り組む活動へと変わってきた。このままでは文化や 歴史が消滅してしまうのではとの危機感 → アーカイブス ・新たな連携、交流へと発展させたい。 ・体験者の大切さ、現地の大切さ、ガイドの大切さ、若い人に伝える大切さ。体験者の居る今し か出来ない、今、しないと消滅してしまう。 13:35~13:39 開催市長あいさつ 佐々木龍新居浜市長 ・平成19年には市制70周年を記念し銅山のことを編纂した。市民に も(銅山ことは)浸透してきている。 ・しかし、他の地域の取組については知らない。 ・このサミットを新居浜のまちづくりに活かしていきたい。 - 2 - 13:39~13:42 来賓祝辞 石丸周象四国運輸局長 ・産業遺産を活用し、地域の振興を図らねばならない。 ・これからの観光づくりは「競争」と「連携」がキーワード。固有のま ちづくりと情報発信で「競争」し、金・銀・銅山のもと「連携」させ。 ・銅のサミットを堂々と成功させていただきたい。 13:42~13:45 来賓祝辞 加戸県知事 代理 高浜副知事 ・産業遺産の保存に取り組まれていることに感謝。 ・地域資源の魅力をいかに活かすかが重要。国内屈指の金・銀・銅山の 3市の皆さんが一堂に会し、連携し議論することの意味は大きい。先 人の努力と英知の結晶である貴重な遺産を活かし、地域づくりに取り 組まれますように。 13:48~14:41 基調講演「金・銀・銅の日本史」 国立文化財機構 村上隆 ・歴史材料科学、博物館科学が専門で、日本における金属利用の権威。 ・3回目を迎えるサミットで自分が基調講演をするとは、本サミットの提唱者として思いもしな かった。 ・ 「金・銀・銅の日本史」なる本を2007年7月に出版した。今日の演題はこの本から取った。 ・石見銀山の世界遺産登録の要因ともなった世界地図 大航海時代の世界地図に、 「石見」 「佐渡」 の地名と、 「石見銀山」の明記があり、その当時から石見銀山は世界に知られていた。日本は 金銀のある国として認知されていた。 ・ 「金属の一生」 鉱石 → 金属 → 「地球」から金属を得る技術 第一の技術 合金 → 金工品 → 伝世品、出土品 金属から「モノ」を得る技術 略奪、戦争? 第二の技術 第三の技術 ・ 「産業遺産」 書物に記されていないものを発掘調査で調べる。木製の水路、木製の貯水槽など。 ・内からだけでなく、外からの目でどう活かしていくか、地域作りしていくか。 14:52~16:19 パネルディスかション「鉱山遺跡を未来に活かす」 新居浜市長:このサミットのおかげで、2市長や市民の方々とも仲よく、また2市を訪れること が出来た。これからもネットワークを大切にしていきたい。 佐渡市長:4年前に10町村の合併。今治の12町村に次ぐ10町村の合併。 「対等合併」 。 - 3 - 4~5年前には拉致問題で「曽我ひとみ」が帰ってきたことで有名。ひとみは役場の施設で 准看護婦の仕事、ジェンキンスは近所のみやげ屋でジェンキンス煎餅を売っている。娘は専門 学校へ行き、姉は今年旅館へ勤めはじめ、妹は学校がもう一年。観光客はジェンキンスに会い に来ている。 「佐渡金山」 最初は「砂金山」でスタート 1,500 年代後半に、石見銀山の技術が入り、 400 年近くの間掘り続けてきた。今は観光客用の新たな坑道の公開などしている。 大田市長:石見銀山は産業革命以前の遺跡で古い。別子銅山は産業革命 後の新しい技術の産業遺産。化学、機械、建設、林業と、わが国の近 代化に貢献した非常にスケールの大きなところであると感じた。 世界遺産登録となったが、受け入れ態勢はまだまだ。別子銅山で勉 強させていただく。 村上:鉱山という共通のベースを持ちながら、どうまちづくりに活かそ うとしているのかアピールを。 佐渡市長:今あるものの大半は佐渡金山に由来するもの。4百年近い歴 史の中で佐渡の人達がいろいろな影響を受けてきた。 世界有数の金山として「ゴールドラッシュ」 。当時、一二をあらそう町が形成され、米の価 格は本土の2~3倍、食糧不足、燃料不足が生じた。佐渡に能舞台が31~32ある。農家の だんな周が楽しむゆとりが佐渡にはあった。明治時代には産出量が減り、近代化はなされず、 人口減、厳しい悲哀。戦後の離島ブーム。120万人の観光客は60万人へと半減。以前は団 体旅行だったものが個人旅行へと変わり対応が出来ていない。 環境にやさしいまちづくり 景観条例、環境条例を制定。文化庁との調整が必要だが文化庁 には金が無く、国交省のまちなみ交付金により慎重にまちづくり。金山と町並みを復元しよう としている。 村上:石見銀山は世界遺産に登録で、来客数が増えているのでは・・・ 大田市長:昨年7月に登録。下から二つ目のランクだったものが、2階級特進の「本登録」とな り注目されている。石見は山間の小さな町で観光客が集中できず、離れた所に駐車場を設けパ ーク&ライド。観光バスは予約制としてコントロールに務めているが、予約無しの観光バスが 来る。 静かだった石見の町に、大量のバス、一般カー、騒音、排ガス。地元からは「バスの便数を 減らしてくれ」の声。 - 4 - 石見銀山は「歩く観光、ゆったり滞在してもらう観光」に切り替えた。歩いていただいても、 最も奥の施設への入り込み客数も減らず、歩いてもらったことで観光客の反応も良い。しかし、 高齢者、障害者の方への対応は必要。400年前の世界へタイムトリップしていただきたい。 「本物」であること、手掘りの坑道、山も、町も、街道や港、港町、銀生産のシステムが豊 かな自然の中に溶け込んでいる「オンリーワン」の魅力。 手を加えず、 「野外博物館」的に守り、活かしていく。 村上:単なる鉱山遺跡というだけでなく、近代化以前、産業革命以前のそれぞれの役割など、ア ピールに心がけていることは・・・ 新居浜市長:特徴は「マイントピア別子」を建設し3セクでやってい ること、新居浜市としての方向性。マイントピア別子には今日も多 くの客に来てもらっているが、何度も来ている人からは「坑道も変 わり映えしないし、 佐渡や石見と違って現物でない」 とも声もある。 別子村と合併しひとつの親新居浜市となったことで取り組める ようになった。 ひとつひとつの構造物を文科省の有形文化財として認めてもらい、 自分達自身も(我が古里のすばらしさに)気付き、自分達の町に誇 りを持て、来訪された方に説明できる。そのためにも文化財の調査 と、その構造物の所有者との調整をシッカリやる。 「山根グランドの 石積み」を見るのにお金は要らない。 「観光」であり「学びの場」であることが別子の特徴である。 村上:奥の深いものをいかに半日の観光の中で伝えていくのか、様々な工夫があるのでは? 施 設を見られるものは少なく、その奥、その裏に脈々と流れているものがあるのが鉱山遺跡だろ うが、苦労されていること、工夫されていることは。 「学ぶ」ということで、見るだけの「観光」ではないところで・・・ 佐渡市長:別子に来て思ったのは、鉱山業は日本の近代化において大きな力を持っていた。住友 鉱山が力をつけ、各界を代表するような企業が育っていることを感じる。これに比べて佐渡を 見ると、貴金属を採掘し、ピークは江戸時代に終わってしまい、また、砂金時代を見せるゴー ルドパークなど、新居浜市とは違うかな。 自分達の佐渡ヶ島を、先人達がどう生きてきたかを示す文化財かな。鉱山を通じて、先人達 がどう佐渡で生きてきたかをたどる観光施設と考えている。 「歴史をつなぐ」 奈良、平安の時代~江戸、明治に近代化を図った、これが人間の生きてき - 5 - た軌跡であると、これを結び付けて見せていきたい。 太田市長:コアゾーンだけで442ヘクタール、これにバッファゾーンの3,663ヘクタール を加えたものが世界遺産エリアとして登録されている。平成8年から本格的に調査を初めて1 2年、442ヘクタールのうち1ヘクタールほどしか発掘調査が出来ていない。全てを調査す るには何百年とかかる。調査のあり方、テーマを決めてやることも必要、学術的なことだけで なく、興味を持たれるテーマを設けて調査することも大切かな。 三瓶には自然館があり地質学から石見銀山形成の説明も出来る。サテライト施設を設けて理 解へとつなげていきたい。施設は「野外博物館」として。 是非とも「石見銀山学」を立ち上げたい。 村上:質の高い情報発信を求められる時代。今までは(3市別々に)個別に行われてきたが、せ っかくのサミット、いかに連携していくか。古い時代には船を使って海や水路の時代。今は堀 を埋めモータリゼーションの時代。太田市と佐渡を行き来するには東京に出て新幹線。当時は 北前舟で海のルート。3市の地元には全て港を持っていて交流があった。金銀銅の3市は海の 道での交流は? 佐渡市長:船大工の納屋から出てきた図面に基づき、国産材を使って造 船した。山から降ろすのに5千万円、船を係留する施設や格納する施 設も必要。船を何度も使うことで船が痛むが、傷むことで船の修理の 必要性が生まれ、修理の技術、造船の技術の伝承がなされる。 太田市長:昨年9月、神戸港から豪華客船の日本丸が「世界遺産めぐり」 を行った。神戸港→瀬戸内海→宮島→屋久島→石見銀山 そういった 旅行商品が試みとして実施された。そういう商品が、金銀銅の連携か ら生み出せる。 新居浜市長:海、港、新居浜の歴史であり、それから発展してきた。竹浜塩田、北海道にしか無 いアッケシ、北海道との交流の証であり、新居浜の塩が船で運ばれていたはず。 金銀銅としてのネットワーク、我々も考えるし、売り込んでいくことも必要。観光、学習の 場、交流の場、様々なチャンネルの交流をしていくべき。 村上:いろんな多角的な目で見て連携していくべきと思う。大田ロータリークラブの方々とのス タートがあり、本日も多くの方に来てもらっているが、ロータリークラブは全国のネットワー クであり、いろいろな形での交流、いろいろ教えてもらえることもある。学生さん、若い人達 - 6 - を入れて地域を愛していく土壌を作っていかないと都会に出て行ってしまう。継続していくこ との、継続させることへのお考えは・・・ 新居浜市長:金婚式、銀婚式、銅婚式で3市を回るとか。3市でその他の2市も含めた情報発信 をするとか、3箇所を回るとホテルの割引があるとか、3市でやるほかにも金銀銅山は全国に ありますし。 佐渡市長:ただ3市だけでなく枠を広げることは面白いが、手当たり次第にやるのは(いかがな ものか) 。3市のつながりを大切にしていきたい。 市民の皆様も地元や他市を見ていただき、地域の違い産業の違いを実感していただきたい。 お互いをめぐり合い知り合っていただきたい。 太田市長:これで3回目、金銀銅サミットのひとつの締め括り。今後も何らかの形で連携してい きたい。続けていって欲しい。 ICチップを内蔵した金、銀、銅の小判を作り、施設利用に活用、国に要望しているところ。 新居浜市長:自分の町には「何もない」 「面白くない」と言われるが、新居浜市にしかないオンリ ーワンがある。 「民間(企業)の町」 殿様が居たわけでなく、民間の力で出来上がってきた 町が新居浜の特徴。 新居浜では環境への取組も早く、煙害、100万本の植林など。対応を間違っていたら今の 新居浜は無かったかもしれない。 我が町を知っていただく「新居浜検定」をスタート。我が新居浜を知り、まわりの人にも新 居浜を説明出来るように。また、他の市を見、知ってもらうことで違いを知ってもらいたい。 村上:直ちに効果、成果を見出すのは難しく、連携、次のステップへの 入口にこのサミットがなれば。このサミットは宣言の無いサミット、 友好を第一とするサミット、場を作るサミット。 116:19~16:21 閉会あいさつ 新居浜市副市長 石川勝行 ・先人の偉業を後世へ伝えることの大切さ。 ・互いに連携を深め、未来につながるまちづくりを進めてまいります。 ― 以上 ― - 7 -
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