再開発ビル活性化ネットワーク 2 月研修会 1.

再開発ビル活性化ネットワーク
2 月研修会
日時:平成 24 年 2 月 13 日(月)14:00∼16:30
場所:大阪府商工会館会議室
テーマ:「PPS スキームと再生可能エネルギーによる事業モデル」
講師:㈱日本プレミアム
代表取締役社長
柳沼
紀之
氏
テーマ:「SC 運営の効率化∼テナント統合管理システム」
㈱イースト(NPO 法人準会員)
西日本事業部営業グループ
井上
元治 氏
(文中敬称略)
1. 開
会
前田(副理事長/司会):
定刻になりましたので、ただ今から研修会を開催させていただきます。
皆様方におかれましては大変お忙しいところ、ご出席を賜りまして誠にありがとうございます。厚
く御礼申し上げます。私は研修会の進行を担当いたします前田です。よろしくお願いいたします。
はじめに、理事長の藤山正道からご挨拶申し上げます。
2. 理事長挨拶
藤山(理事長):
皆さん、こんにちは。本日は今年初めての研修会です。是非、実りある研修会にし
ていただきたいと思います。
日頃から NPO の活動にご理解をいただきまして、本当にありがとうございます。この場をお借
りして厚く御礼申し上げます。
昨年から、欧州のソブリン問題に始まり、為替、金利、株、デフレ問題、これらは全部リンクし
ていますが、我々の経営の外側にあってどうすることもできないこれらの外部環境が非常に不安定
になっています。そして、これはこれから先も大きく不透明な時代が続くと、私は確信しています。
このような不透明な状況の中で、今、我々に必要なのは、自分たちの内部をきちんとすることで
す。自分たちが向かう方向をしっかり持っていなければ、外部環境が変わるたびに、対処主義で対
応しなければならなくなり、外部に振り回されてどこを向いているのかわからなくなってしまいま
す。さらに、次に外部環境が変わった時に、修正する基軸がなければ変化に対応できません。
多くの再開発ビルは、特にこのような状況に陥りやすいのではないかと懸念しています。特に、
商業施設は住宅やオフィスとは違います。まず、消費者の変化に対応しなければなりませんし、関
西は大阪の梅田の状況を見ていただくと、激しく戦っていることがおわかりいただけると思います。
商業施設が競争力を失ってしまうとどうなるのか、多くの商店街を見ればその結論は明白です。
そういう中で、再開発ビルには管理会社だけではなく、管理組合等、それぞれの主体があります
ので、なかなか思うようには行かないかも知れませんが、主導権を持って全体を引っ張っていくこ
とができるのは管理会社ではないかと、常日頃から思っています。もちろん、過去のしがらみや束
縛のようなものがあるかも知れませんし、管理会社としては痛みを伴うかも知れませんが、是非、
それを取り払って、まず、商業施設としての自助努力をしていただきたいと思います。自助努力を
せずに、行政が何とかしてくれるのではないか、あるいは、他から何とかしてもらえるのではない
かという意識が強くなると、そのこと自体が競争力を失ってしまう大きな原因になってしまいます。
「何としても、今の内部を変えていく」という自助努力をしてから支援を受けるようにしなければ
なりません。
-1-
我々NPO も自助努力に対して支援をさせていただきます。自助努力の意欲のないところに対して
は支援のしようがありませんので、意欲のある施設を対象に、我々は積極的に支援をするというこ
とを頭に置いていただきたいと思います。
そのような考えの下、本日は二つのテーマで研修を行います。我々は 2 年半ほど前に「創造的コ
ストダウン」という大きなテーマを掲げ、以来、外部の方にいろいろとご講演をお願いしてきまし
たが、本日の研修テーマの一つは、話題の渦中にある電気料金の問題です。電気事業そのものを根
本的な問題も含めてお話しいただけると思います。また、課題となっている再開発ビルの商業のシ
ステムについては、考え方において管理会社の皆様方とは部分的に乖離があると思われますので、
そこをどのように乗り越えるのか、是非、本日の研修を聴いていただきながら、乗り越える方法を
考えていただきたいと思います。それぞれの再開発ごとに違いがあると思いますが、本日の研修内
容を取り入れて、また、それを取り入れるために、どのような障害を取り除けばよいかということ
を考えていただければ、実りのある研修会につながるのではないかと思います。是非、そのような
つもりで、本日の研修を有意義なものとしていただければと思います。
前田(司会):
始まる前に資料確認をさせていただきます。(資料確認)
それでは、ただ今から始めさせていただきます。
本日は「PPS スキームと再生可能エネルギーによる事業モデル」というテーマで、株式会社日本
プレミアム代表取締役 柳沼紀之様よりお話いただきます。よろしくお願いします。
3. 研
修
■テーマ①「PPS スキームと再生可能エネルギーによる事業モデル」
株式会社日本プレミアム
代表取締役
柳沼
紀之
氏
●はじめに
皆さん、こんにちは。今年初めての大事な研修会の第 1 号にお招きいただき、本当にありがとう
ございます。私は今朝 6 時過ぎに仙台を出て、新幹線を乗り継いでこちらまで来ました。大阪はも
う少し暖かいと思って薄手のコートで来ましたが、仙台よりも寒いのではないかと思うぐらい今日
は寒いようです。私の家は仙台ですが、通常、仕事をしているのは東京で、あとは大阪の営業所等々
にお世話になっています。
今、理事長から「いろいろな外部環境の変化がある」というお話がありましたが、当社はまさに
その渦中にあり、理事長が言われるとおり、そのような環境の変化に対応できるような会社づくり
をしなければならないと考えて、今、準備をしています。
昨年の 3 月 11 日の午後、私は仙台市の先の栗原市で、ミネラルウォーターの工場建設の打ち合
わせをしていていましたが、それが終わった時にあの震災が起こりました。震度 7 という震災でし
た。皆さんも阪神淡路大震災に遭われたと思いますが、私も人生の中で初めて震度 7 というものを
味わいました。普通なら 1 時間ぐらいで帰宅できるのですが、バスを乗り継いで 6∼7 時間かかっ
たと思います。まちの中は「このようになってしまうのか」と驚くほどに変わり果ててしまい、そ
の時は仕事よりも地域の方が大事でしたので、職場から 10 日間ほど離れて仙台に缶詰めになって、
いろいろとさせてもらいました。
もちろん停電にもなりましたし、我々が電気を提供している先もすべて停電していました。
「電気
は大事だ」と思いながらも、「多少、電気がないぐらいでは死なない」という思いもありました。3
∼4 日は電気がなくても何とでもなると腹をくくれば、今、話題になっている分散電源や送電もこ
だわる必要はないと思うようになりました。
-2-
●PPS の仕組みと現状
<電力会社と電力の自由化>
そこで、本日の話ですが、今話題の PPS という言葉を聞いたことはあるでしょうか。電力の自由
化という言葉を聞かれた方は半分ぐらいおられるようですが、当社は PPS の立ち上げの支援、販売
の支援等をしていました。PPS とは、端的に言うと電力の小売事業になります。電力の自由化で、
PPS、つまり電力の小売をすると、すべてではありませんが、大体の顧客が 3%∼5%、多いところ
では 10%程度は安くなります。
電力自由化に至るまでの経緯を見ますと、ガス事業の自由化は電力より数年先に起きましたが、
ガス事業が自由化になった時は、各電力会社とガス会社は非常に仲良くやっていました。ところが、
電力が自由化になった途端にエネルギー戦争が起こり、ガス会社と電力会社は泥沼の戦いを展開し
ています。
‹
電力会社(電気事業者)
今、電力事業者として、国で認められているのは、一般電気事業者、卸電気事業者、独立発電事
業者、特定電気事業者、特定規模電気事業者の五つです。
一般電気事業者は、関西電力や中部電力等がこれに当たります。
卸電気事業者は、国策会社の J-POWER 以外は認められません。
それから、我々が自由化になる前に自由化になったのが独立発電事業者(IPP)です。これは発電し
たものを電力会社に売ることができるという、発電の自由化です。
そして、ほぼ同じ時期に特定電気事業者ができました。これはあるエリアの中だけで発電と送電
をするという事業者です。尼崎ユーティリティーサービスや諏訪エネルギーサービス、最近では、
MビルによるRエネルギーサービスがMビルの近くのビルに電力を提供しています。また、Mビル
に関しては、Mビルが持っているのは1箇所だけではないので、「PPS で対応してほしい」という
相談も受けています。しかし、残念ながら、我々は今回の震災で売るべき電力を全部売り尽くしま
した。毎日、5∼6 件は「PPS に切り替えたい」という相談がありますが、売るべき電力が今はな
いという状況です。
そして、我々の PPS が特定規模電気事業者になります。
一般に小売しているのが、一般電気事業者と特定規模電気事業者で、これが皆さん方の自由化の
対象になります。
よく問題になるのが発送電分離です。発電と送電の分離をすべきだという話ですが、電気事業者
は発電と送電だけをしているのではありません。発電と送電と小売をしているので、この三つを分
離しないと何の意味もありません。マスコミはそれについて言及していません。
電気事業者はこのような括りになっています。
重要なのは、特定規模電気事業者(PPS)は参入障壁がそれほど高くないということです。7 月 1
日から電力の全量買取制が始まりますが、買い取れるのは一般事業者だけではなく、PPS も再生可
能エネルギーの買取ができるという法律になっていますので、ここにビジネスチャンスがあるので
はないかと考えて我々もユーザーにも提案しています。
‹
自由化の経緯
自由化の経緯としては、まず 1995 年に独立発電事業者が自由化になり、電力の自由化に向けた
動きが出てきました。
2000 年には、2,000kW 以上の特別高圧受電に対して PPS の小売りが認められました。電気は
50kW 以上の送電受電を受けているところが高圧受電とされ、尚且つ、2,000kW 以上は特別高圧受
-3-
電として料金体系が変わります。その料金体系も定額ではなく、交渉によって値段が決められます。
そのような顧客に対して、PPS が小売を行っても構わないということが 2000 年に始まりました。
それから、2003 年、2004 年、2005 年と、電力の取引所の開設等、一般の企業が小売に参入しや
すい環境がつくられ、その間に電力の小売の基準が 2,000kW から 500kW、50kW と下がっていま
す。
このように、2005 年に電力の取引所ができて一般に小売の営業が活発になりましたが、東日本大
震災によって、電力制度の見直しが大幅に変わると思われることと、前述のように、電力会社と同
様、我々も電源がかなり不足しているという状態に至っています。
2011 年に再生可能エネルギー特別措置法が成立しましたが、これは前倒しで成立したという経緯
があります。
<PPS の電力供給の仕組み>
我々が電力の小売を始めた頃は、
「そんな上手い話があるものか。設備投資もしないで、なぜ電気
代が下がるのか」
「おまえら詐欺師だ。そんな眉唾な話はない」と言われましたが、最初に契約をし
てくれたところ、今契約をしているところはほとんどが大きな企業で、特にメーカー系、工場系は
コストダウンに関して非常に真剣でした。
本日は都市開発のビル管理の方々が集まられていますが、正直なところ「商業施設関係は電気管
理やコストに関して考え方が粗い」というのが 3.11 までの我々の認識でした。「電気料金が 3%下
がる」と言うと、製造業の人は目の色を変えて、本気になって調べてくれますが、商業施設の方は
「我々は電力会社で構わない」
「3%ぐらいなら下がらなくても構わない」と言われていました。そ
れでも、前述の森ビルや三菱関係のところは、PPS として我々と取り組んでくれたという経緯があ
ります。
PPS の仕組みを説明しますと、電力会社も発電していますが、我々も発電所を持つか、電気を調
達しています。皆さんが思っているよりも発電設備はたくさんあり、製鉄工場、アルミ関係、製紙
会社等は自家発電設備を当社の何倍も持っています。100 万 kW、200 万 kW のレベルで持ってい
ますので、我々はそのようなところの余剰電力を買い取って、電力会社の発電ネットワークに接続
します。そして、一般家庭に我々の電気は送られませんが、我々の契約先には電気が行くようにな
っています。
これは電力会社と我々が託送約款に基づく託送契約を締結して、送電を使わせてもらっているわ
けですが、
「万一、我々の電気が足りなければ電力会社が補給をするし、我々の電気が余れば、我々
の電気を電力会社が買い取る」という契約になっています。これは今の技術ではそうせざるを得ま
せん。つまり、電線には当社の電気も、電力会社の電気も、いろいろなところの電気が流れていま
す。需要家がスイッチを入れると勝手に電気が点いてしまうので、電力会社も「そちらの電気が不
足しても入れない」ということは技術的にできないのです。そこで、メーターで処理をすることに
なっています。例えば、我々の発電所から送電網に 100kW 入れたとして、需要家が 100kW 使って
くれれば OK ですが、120kW 使うと、20kW 分は電力会社の電気を補給したことになります。そこ
でメーターだけで精算させてもらっています。
<電気料金削減>
「では、どうして安くなるのか」とよく聞かれますが、これにはいくつかの理由があります。
‹
不等率・需要家の組み合わせ
どこでもそうですが、皆さんの管理している建物も電気使用のデマンドがあります。これは年間
のどこかの 30 分間で最も電気を使った値がデマンドになります。つまり、普通は 100kW しか使わ
-4-
ないのに、例えば、ある日の 12 時∼12 時 30 分の間に 2,000kW 使ったとすると、基本契約は最大
デマンド値の 2,000kW になってしまいます。そうなると、電力会社も、我々も、それに合わせて
発電能力も送電能力も持たなければなりません。普段は 100kW しか使わない顧客だから 100kW の
設備でよいというわけにはいきません。突然 2,000kW に上げられてしまうと 2,000kW 送電しなけ
ればならないので、2,000kW の設備を持たなければならないのです。
そうなると、顧客一人ひとりを考えた場合、使用量が最大デマンド値に満たない分が発電設備、
送電設備の無駄になります。
そこで、いろいろな顧客を組み合わせます。そうすると、無駄な部分は少なくなります。例えば、
多くのところが 8 月にピーク、つまりデマンドが上がりますが、それに対して、8 月に上がらない
事業所があります。例えば大学です。大学は 8 月が夏休みなのでデマンドが上がりません。したが
って、我々としては、大学と一般企業を組み合わせるのは価値があります。他には夏は使わずに冬
しか使わない場所としてスキー場があります。このようなものをいろいろと組み合わせて、できる
だけ平準化していくわけです。
これを我々が顧客に説明すると、
「それなら電力会社もできるのではないか。なぜ、そうしないの
か」と質問されますが、それは、電力会社が顧客を選べないからです。電力会社は、申し込まれる
と必ず送電しなければなりません。それに対して、我々は顧客を選べます。毎日のように問い合わ
せがきても、売るものがないので断る場合もありますし、見積書を高くして受注しないようにする
こともありますし、極端に断る場合もあります。このように、我々は顧客とエリアを選べるように
なっています。
‹
購入形態の合理化
PPS が安くなるもう一つの理由は、発電所を選べるということです。今までの形態で皆さんが一
般電力会社から電気を買う場合、大阪なら関西電力、名古屋なら中部電力というように買う電力会
社が決まっていますし、決まった単価でしか入れられません。
ところが、我々はいろいろな発電施設と契約できます。そのエリアに合った発電施設、発電シス
テムを選んで顧客に届けることができるわけです。イオンも一部 PPS を使っていて、四国の電源を
東北に供給していると聞いています。
PPS が電気料金を削減できるのは、この二つが表立った理由ですが、もう一つ、実は一番の理由
として、電力会社と我々の管理コストの違いがあります。これが本音です。電力会社は総括原価方
式なので、原価をかければかけるほど儲かる仕組みになっています。我々は従業員の給料を削って
でも安くしないと料金が下がらないという状況にあります。つまり、管理コストを低くすることで
安くしているというのが実態です。
<PPS に関するルール>
次に、PPS に関するルールを紹介します。前述のように、PPS を行うための参入障壁は本当に低
いのですが、必ず求められるものがあります。実は、これを求められるとなかなかできないという
約束事です。
‹
託送(接続・振替)契約
まず、託送契約です。接続供給は高圧、特別高圧が対象で、30 分同時同量(インバランス)と、電
力のバックアップがあることが約束事となっています。
振替供給は、例えば、関西の電源を東京へ送ろうとすると、関西電力の送電網、中部電力の送電
網、東京電力の送電網の三つの使って送ることになります。これが振替供給の形です。我々が今、
関西地区に送っている電気は岩国から送っていますので、中国電力、関西電力の送電網を使ってい
-5-
ます。中部地区に関しては、それに中部電力が入るという供給の仕方をしています。
禁止事項としては、送配電部門が託送業務を通じて知り得た情報の目的外利用の禁止、送配電部
門と発電・販売内部との内部相互補助の禁止がありますが、先程述べた「小売も分離しなければな
らない」というのはまさにここです。これについてはマスコミも何も言っていません。これは中部
電力が一番激しいのですが、顧客が電気の購入先を我々のところに切り替える手続きをしようとす
ると、いろいろな邪魔が入ります。これは、本来は禁止されている内部での情報共有をしているか
らできることです。我々は電気の排出届けを託送部門に出しますが、顧客に対しては営業部門が行
くということで、まさにルール外のことをしているのが今の電力会社です。これは、自由化に対す
る拒否反応があるからだろうと思われます。
また、経営的なこと、あるいは財務的なこと以上に、参入障壁で一番問題なのが、接続供給の中
にある 30 分同時同量(インバランス)です。これは、顧客が使う電気を 30 分単位ですべて見るもの
で、例えば、30 分間に 100kWh の電気を使うとすると、我々は 30 分単位で 100kWh の電気を送
らなければならないということになります。これが結果で送ることができれば問題はないのですが、
前日の 12 時までだったか、翌日の需要予測を 30 分単位で、顧客ごとに出さなければなりません。
「この顧客は 12 時∼12 時 30 分まで○○kW、12 時 30 分∼13 時まで△△kW 使う」というように
予測して出さなければならないのです。そして、この予測を 3%以内に収めればペナルティは発生
しませんが、3%を超えて発電量が多ければ、その分は無料で電力会社に供給しなければなりませ
んし、少なくて電力会社から電気を供給してもらうと、30 円∼40 円の電気を買うことになってし
まいます。ですから、このリスクを背負えるのか、背負えないのか、需要予測を立てられるのか、
立てられないのか、これが本当の意味での PPS の参入障壁と言えます。
‹
PPS 対象受電区分
次に、PPS 対象受電区分は、前述のように特別高圧と高圧になっています。
以前からも出ていましたし、国会等でも出ているように、2015 年までにこれを一般家庭に自由化
しようということであり、前倒しして、もう少し手前で自由化しようという話も出ているようです。
‹
燃料調整費
もう一つは燃料調整費です。電力料金を見てもらうと、必ず燃料調整費が書かれています。為替
レートや原油相場の変動によるリスクを電気料金に入れるのが燃料調整費です。
今回の震災絡みで、東京電力が 17%電気料金を値上げするというのは、この燃料調整費ではなく
て、燃料価格の改定ですので、実は大きな意味を持っています。燃料調整費というのはあくまでも
調整費ですが、電気料金の価格そのものを変えるというのは、大きなインパクトを持っていると思
います。
<電力需要区分・電力市場の概要>
以上の説明をまとめますと、高圧と特別高圧は購入する電気料金の単価もかなり違うと思います。
それから、特別高圧の顧客に売る時は安くできますが、電力会社に払う託送料も、高圧で送る時
の託送料と特別高圧で送る時の託送料とは大分違っていて、高圧は 1kW 当たり 4 円 20 銭ぐらい、
特別高圧は 1 円 20 銭∼30 銭ぐらいの価格になるので、特別高圧はその差額分だけ間違いなく安く
なります。PPS の仕組みはこのようになっています。
●再生可能エネルギーの全量買取制度
次に、今話題になっている再生可能エネルギーの制度について確認したいと思います。
全量買取制は、法律では今年の 7 月 1 日からと決まっていますが、どういう訳かまだ委員会がで
きていないので、「本当にできるのか」と懸念しています。
-6-
この制度は今に始まったものではなく、電気業界の中には、電力会社は再生可能エネルギーを必
ず何%か持たなければならないという RPS 制度があります。我々のグループの風力発電も、東京
電力へ電力を売る時には必ず RPS が 5∼6 円付いています。したがって、今回のバイオマス発電等、
再生可能エネルギーの買取が 20 円程度という話が出ていますが、本音としては、特別値上がりし
たという感覚はありません。例えば、今、電力を 12 円程度で売っていて、RPS で 6 円付けると 18
円ですから、それほど高い数字ではないと言えます。もしバイオマス発電をつくったとすると、国
からの補助金が今は 50%ぐらい出るので、それを差し引くと、20 円で買い取っても大したことは
ないと感じています。
‹
再生可能エネルギー全量買取制度の仕組み
それには、まず、買取制度の仕組みを理解していただければと思います。
「再生可能エネルギーによる発電を事業として実施される方」は太陽光、風力、地熱、中小水力、
バイオマスが対象になります。我々も、3 月から一部バイオマス発電所をつくる準備をしています
が、バイオマスにもいろいろあります。例えば、今度、静岡の方でやるのが間伐材などの木を燃や
すものです。それから、被災地からは瓦礫を燃やす発電所をつくってほしいという要請が来ていま
す。あとはバイオディーゼルです。ディーゼル化してディーゼルエンジンの発電をしようというこ
とです。このようなものが再生可能エネルギーとして認められるわけであり、太陽光は買取価格が
40 円前後、その他は 20 円前後ではないかと思います。
再生可能エネルギーによる電気を買い取るのは、一般電力会社と特定規模電気事業者(PPS)です。
この売電された電気を需要家へ売ります。そして需要家からは、電気料金と合わせて賦課金(サーチ
ャージ) をいただきます。今も皆さんの方には太陽光発電の分のサーチャージが付いているはずで
すが、それがもう少し大きくなるということです。
この集めたサーチャージを、電力会社は費用負担調整機関に一度納めます。この調整機関から今
度は買取価格の費用が交付金として入ります。この交付金が、今 10∼12 円ではないかという話に
なっています。つまり、電力会社がバイオマス発電の電気を 20 円で買ったとして、交付金が 10 円
あると、実際の電力の調達は 10 円でできることになります。
「それほど買うと電力会社は大変だろ
う」と皆さんは思うかも知れませんが、実は電力会社は儲かる仕組みになっているのです。
これは国が定めた 15 年を想定して、固定価格で買取をするようになっています。
また、費用負担調整機関がサーチャージを集めた分で電力会社に負担するわけではありません。
交付は国の特別会計から出される予定になっています。例えば、石炭石油開発○○金というような
特別会計があるので、そちらから費用負担が回っていくという構造になっています。
●再生可能エネルギーによる発電の比較
<電源別発電コスト(発電コスト試算比較∼今後の方向性)>
次に、電源別のコストについて説明します。
‹
ベース電源
今まで話題になっていた原子力は、バックアップ経費をみるともっと上がると思われます。今の
ところは 5∼6 円という計算になっていますが、20∼30 円と見なければならないということです。
石炭火力も 5∼7 円です。風力は何とも言えません。つまり、全く風任せだからです。例えば、
東京からこちらへ来る時にスズキ自動車の風力発電の施設がありますが、回っているところを見た
ことがありません。あのようなものはコストが無限大に高くついているのではないかと思います。
あとは地熱発電、小水力発電です。
この原子力から小水力発電まではベース電源と言われるものです。ベース電源とは、人間による
-7-
発電の調節ができない電源で、例えば、原子力は一度起こすとそのままになります。石炭火力も、
一見自由に調節できそうですが、石炭を起こしたり、止めたりするのは大変な作業になので、基本
的にはこれも動かしたままになります。風力は先程言ったように風任せで、地熱は 24 時間定量の
電気を発電します。小水力も流れに任せるままです。
‹
ミドル電源
それに対してミドル電源は、ある程度調節が利くものです。これは LNG(液化天然ガス)の火力発
電や、ダムで行う大規模水力発電です。バイオマス発電もありますが、前述のように木質やバイオ
ディーゼル等、いろいろあるので、発電単価は幅広くなるのが現状です。コジェネは自家発電など
で使っている分です。
‹
ピーク電源
そして、ピーク電源は、使い勝手が良いように少し電気が足りない時に、すぐに起こせるもので
す。太陽光がここに入っているのは、バッテリーを付けることでピーク対応ができるのではないか
と考えられているためです。
ちなみに、原子力発電は今後どうなるのかわかりませんが、地熱発電は非常に有力です。ただ、
地熱発電の施設整備は 1kW 当たり約 80 万円かかります。太陽光で、今約 40 万円、今度、静岡で
やろうとしているのは 35 万円ですが、基本的には 40 万円程度かかります。
バイオマス発電は、木質バイオマス発電が 1kW 当たり 40 万円で、最後に提案したいと思ってい
る我々のバイオマスは 135,000 円ほどでできるという電源構成になっています。
‹
発電システム導入の基準
そこで、どのような発電システムを導入するのかというと、その判断基準はまずコストです。コ
ストは絶対に大事です。安いコストでないと使えなくなるので、発電コストを考えなければなりま
せん。
しかし、発電コストが安くても、安定発電ができなければ困ります。例えば、風力発電が安くで
きたとしても、安定していなければダメだということです。
そして、最近、マスコミも言わなくなったのが環境です。この三つの視点で、バランスをどのよ
うに取るかということになると思います。
風力発電については、日本では洋上発電はよいと思いますが、陸上になると不安定な要素が多い
と言わざるを得ません。南欧などのように偏西風が吹いていると安定した発電ができますが、日本
のように季節風の吹くところでは非常に読みにくい電源になります。
<太陽光発電の系統への悪影響>
ベース電源とその問題点についてもう少し説明したいと思いますが、ベース電源は 24 時間発電
するもので、原子力発電、水力発電等になります。火力発電はミドルになりますが、この辺りがベ
ースとなります。
今まで夜間電力が安かったのは原子力発電があったからです。原子力が勝手に電気をつくってく
れるので夜間電力が安くなっていたわけです。つまり、電力が余っている時間に水をダムの上の貯
水池に揚げて、電気が足りなくなれば落とすという揚水発電を行っていたわけであり、これは原子
力があったからこそできる話であり、原子力がなくなると、この揚水発電は本来の意味を成さなく
なります。マスコミもこの揚水発電を計算に入れて発表したりするので、非常に紛らわしくなりま
す。
太陽光発電は、余った部分をどのように蓄えるか、どのように調整するかという課題を解決した
上で、ピーク対応の電源になるのではないかと考えられています。
-8-
●当社の事業モデル G-Bio 発電システム
<背景と目的>
今、電源が非常に不足しているので、電源をつくらなければならない状況になっていますが、そ
の中で、先程、理事長が言われたように、外部環境の変化に耐えられるようにしなければなりませ
ん。そこで、我々は自前の発電所を持つのが一番良いだろうと考えています。今までは、自前の発
電所の他に市場から調達するという考え方をしていましたが、基本は自前の発電を考えています。
今、基本設計の段階で、3 月か 4 月に着工する予定で進めています。そして、今年の 7 月から再生
可能エネルギーの全量買取制度がスタートしますので、それに合わせて発電事業も立ち上げようと
思っています。
自前の発電所に踏み切った理由は、一つには、メンテナンスも含めたコストの問題があります。
これは絶対的です。投資もそれなりになるので、投資リスク、事業リスクをいかに低く抑えるのか
ということです。
確かに、全量買取制度は、その収益を当てにはしていますが、買取制度がなくても、我々のシス
テムであれば十分にビジネスとして成り立ちます。ただ、買取制度でその単価でビジネスをすれば
さらに収益が上がって早めに投資回収ができます。そのようなことから、我々は G-Bio Power
Station に取り組み始めるところです。
<従来の PPS 事業との比較>
全量買取制度を使った時と今までの PPS との違いを比較してみますと、従来の PPS 事業の発電
所のコストは、ガス発電などで 11 円∼12 円/kWh かかりますので、それを PPS を通して需要家へ
は 13 円∼14 円+託送料の 16 円∼17 円でお届けしていました。
それに対して、今回、全量買取に合わせて、我々が G-Bio 発電と PPS で進めようとしているス
キームは、まず、発電事業会社を別会社としてつくり、PPS 事業会社も別になります。先程、バイ
オディーゼルが 20 円ぐらいの買取価格ではないかという話が出ましたが、ここでは 19 円にしてい
ます。これは、全量買取制度の金額は消費税込み金額で出ていますので、ここでは税抜きで 19 円
にしています。
それで、20 円で PPS が買い取って、仮に費用負担調整機関から 10 円いただくと、実質 9 円で
PPS 事業会社は電力を調達したことになります。これを需要家に 12∼17 円+託送料金で利用して
いただきます。ここで、発電事業会社と PPS 事業会社は別法人であることが必要になります。
また、我々は 1 ユニットで 9,600kW の出電能力を持ったバイオディーゼル発電システムを導入
しようと考えています。9,600kW の発電所を持つと、先程のデマンドの組み合わせを上手く使うこ
とで発電量の 2∼3 倍の 24,000kW くらいまでの契約が可能になると考えています。その場合の PPS
単独の売上は 12 億円程度で、PPS 単独の売上総利益は 3 億円程度です。これは営業部門を無視し
ていますが、この程度の規模であれば 3∼4 人いれば運営が可能です。
発電会社の投資回収は、全量買取制があると、キャッシュフローベースで 3.75 年で回収できるも
のと計算しています。そして、PPS との組み合わせであれば 3 年以下で回収できることになります。
先程述べたように、PPS は設備投資がほとんどなく、財務的な縛りもほとんどありません。ただ、
発電会社から電気を買おうと思った時に「与信がなければ保証金を積んでほしい」という話が出ま
すが、必要なのはそのくらいです。
<G-Bio 発電システムの特徴>
ここからは当社の宣伝になりますが、
「G-Bio 発電システム」は、植物から生成される新エコ燃料
を用い、小出力高性能ディーゼル発電機を十数台同時に動かして発電します。つまり、よく道路工
-9-
事などで使われている発電機がありますが、あれを 9,600kW を発電するために 1 ヶ所の発電所に
つき 15 台入れます。
「格好の悪い発電所」と言う人もいるように、本当に見た目は不細工な発電所
ですが、実際は細かく運転できて、メンテナンス、点検も非常にフレキシブルにできます。
もう一つの特徴は、1 ヶ所で 9,600kW を発電しなくてもよいシステムになっているということで
す。送電する時も 2,000kW が一つの目安になっていて、2,000kW 以下であればどこの地域でもほ
ぼ送電線に付けることができます。2,000kW を超えると、鉄塔がなければ付かないと思っていただ
いてよいと思います。良い場所があったら、先程の 15 台を 3 台ずつにばらして 1,920kW の発電所
にすることができます。
そのように、細かな発電機をたくさん付けることで、運転の稼働率も上げて、場所も選ばないと
いう仕組みになっています。
次に、投資資金のコストパフォーマンスについては、木質系バイオマス発電の設備のイニシャル
コストは 1kW あたり 40 万円くらいかかりますが、我々のグループで言えば岩国で行っている施設
は 13 万円くらいです。
それから、ディーゼル発電機出力 640kW タイプを使っていますが、これは大きさ的にもメンテ
ナンスが非常に容易です。
また、植物性の新エコ燃料を使用することで、軽油の 50%以上のコスト削減が可能です。しかも、
植物から生成されるので、これは地球環境の保護に貢献できる新エネルギーです。そして、再生可
能エネルギーとして固定価格買取制度の対象になっています。
排熱の活用については、確実にできるかどうかは、周りにお湯や熱を使う施設があればというこ
とです。施設がなければ排熱対策として、コンバインドサイクル発電により出力アップを図ります
し、また、蒸気・温水を作り、近隣の工場や病院、公共施設等に提供することで、熱効率を最大限
に高めます。
コンバインドサイクル発電というのは、三菱重工あたりは当たり前のようにやっていますが、
640kW タイプの発電機にはコンバインドというのはありません。我々はここから熱を取り出して、
蒸気を作って、蒸気タービンで発電をしようというのが、コンバインドサイクル発電です。我々は
このような形で進めています。
ある一定規模のお客様、「PPS の電気を何とかしてくれ」というお客様といろいろと協議をして
います。例えば、グループで契約電力 44,000kW という商業施設が、「PPS で何とか対応してくれ
ないか」という話をした時に、このシステムの話をして、「自社 PPS をされてはどうか」という話
をしました。そうすると、PPS 業者から買うよりもさらに安く調達できるということで、そのよう
な対応も案内させてもらっています。
行政関係も、今、静岡の 3 市で、このシステムと太陽光と木質をセットして、行政施設に電気を
提供しようしています。行政の施設を避難施設という形にして、万が一災害があっても必ず守れる
仕組みをつくることということで、避難施設の送電網を中部電力と協議中です。
これはそれほど難しいことではなくて、開閉器、つまりブレーカーを、確実にここを守れる開閉
器にしてもらって、避難設備に必ず電気がいくようにすればよいわけです。それを電力会社がして
くれるかどうかだけの問題です。
そういう意味では、皆さんのところも万が一の時は避難設備として利用されると思いますので、
そのような対応も考えておかれるとよいかと思います。我々のグループで仙台にあるさくら野百貨
店は、被災した時にやはり停電し、自家発電があったので多少は持ちましたが、それもすぐにダメ
になりました。しかし、駅前の百貨店だったので、帰宅難民が押し寄せました。もちろん、皆受け
- 10 -
入れて、地下にあった食品や売り物の寝具をすべて被災者や避難してきた人に提供しました。皆さ
んも、日頃から、万が一災害があった時の対応を考えておかれた方がよいと思います。そして、電
気もその対応の中の一つだということを、忘れないでいただきたいと思います。
●質疑応答
前田(司会):
ありがとうございました。それではただ今から質問時間に入りたいと思います。
<全量買取制度による電気料金の値上げについて>
松村(西宮都市管理):
再生可能エネルギーの全量買取制度がこの 7 月から始まるということで、当
社も関電から料金が値上がりするという話を聞きました。どのくらい値上がりするかは未定という
ことですが、どの程度なのかが全くわからないので、24 年度からの管理組合の電気代の単価が設定
できないという状況です。どの程度の値上げになるのか、ご存知であれば教えていただきたいと思
います。
柳沼:
申し訳ありませんが、全くわかりません。今回、「東京電力が 17%の値上げ要求」とマスコ
ミから出ていましたが、あれは、総括原価方式を採用すると、あの社長が言ったように「権利であ
る。義務である」という話になってしまいますが、総括原価方式の中には今回の原発の処理代も入
っているわけです。
では、関西電力は原発の処理代は関係ないのかというと、費用負担は関電の方にも来ているので、
関電がそれをどのように総括原価方式の中に組み入れるのかということが問題になります。そのた
め、東京電力と大差ない値上げになる可能性は高いと思います。ただし、500kW 以上の契約電力の
需要家は協議制なっていますので、すべて受け入れる必要はありません。東京電力もそうですが、
「こんなものは受け入れられない」というのが、当然、あるべきだと思います。
前田(司会):
他にございませんか。
<非常時の自家発電システムの活用について>
大島(事務局):
再開発ビルには、概ね、非常時のための自家発電が入っていますが、幸い、稼動し
ていない状況です。発電システムの中で、あの自家発電を活用することは難しいことなのでしょう
か。
柳沼:
今までは、自家発電の電気を自分が使って、余った電気を売ることはできませんでしたが、
法制度がまもなく変わって、売ることができるようになると思います。ただ、コスト的には、普通
の売買では合わないと思います。
多分、皆さんの持っている発電設備は重油か、軽油焚きだと思いますが、発電コストは燃料代の
1/4 程度と見ておけばよいので、例えば、軽油は、今 120 円/ℓ くらいですから、25∼30 円かか
ってしまい、全く合わなくなります。
ただ、電力取引市場に電気を供給できる契約さえすれば、今なら合うかも知れません。つまり、
今、電力市場は、先月は 32∼33 円という単価が付いていたので、そのような単価の時に市場に売
ることができれば合うかも知れないということです。そのためには、市場に電気を卸せる契約をし
ておかなければなりません。普通の電力会社に売ったのでは合わないと思います。
前田(司会):他にありませんか。
<具体的な電気料金削減策について>
溝入(長岡京都市開発): 本日の話は難しくて、なかなか全部は理解できないのですが、例えば、今、
高圧受電している再開発ビルを管理している立場から、本日の話を応用して、関西で御社のような
事業者を見つけて、ビル全体の電力コストを下げるというようなことはすぐにできるのでしょうか。
柳沼: 私の提案としては、せっかくグループでこのような勉強会があるなら、有志で PPS 事業者を
- 11 -
一つつくってはどうかと思います。発電設備は 13 億円ぐらいかかりますが、グループの中でいろ
いろ合わせて 24,000kW 程度までの電気は賄えます。そうすると、発電の収益は数億円上がると思
いますが、それを無視して電気料金の削減だけを考えても、先程、粗利が 3 億円と出ましたが、そ
れにプラス 3%ぐらいのコストダウンになるので、全体で 3 億 5 千万円ぐらいのコストダウンにな
るのではないかと思います。
発電所をつくるにはそれなりのお金がかかりますが、PPS をするのはさほどお金はかかりません。
かかるのは、要求された場合に支払う電力会社への保証金と発電所側へ払う補助金ですが、グルー
プで取り組むのであれば、発電会社に保証金を支払う必要がないので、PPS だけを考えた場合、発
電所側の電気を使わないということであれば 2,000∼3,000 万円あれば十分できるのではないかと
思います。
ただ、先程も述べたように、電源を持っているところが電気を簡単に売ってくれないので、自分
のところで発電所を持たないと、それができなくなってしまいます。費用的には 1 万 kW くらいの
発電は 13 億円強くらいでできますし、期間的には計画してから半年後くらいから送電開始という
イメージだと思います。
いずれにしても、電気は、今後しばらく増えることはないと思っていただいてよいと思います。
原発が次々に止まっていきます。原発が止まった分、電力会社は送電線を超伝導に張り替えること
でいくらかでも補おうとしていますが、今年の夏も電気は全く足りないと思います。
溝入(長岡京都市開発):
ただ、我々のようなビルを管理している会社は、電力会社の出資を仰いで
いる会社が多いのですが、その場合、電力会社と対立関係になるのでしょうか。
柳沼: 正直に言いますと、対立関係になります。ただし、今、我々が「PPS をやります」と言うと、
それに対して、電力会社は表立っては絶対に反対できません。今まではマスコミなども経済的支援
を電力会社から受けていますし、政治家もそうですし、あらゆるところで電力会社のお金が動いて
いるので、表立って批判はできませんでした。ただ、東京電力などは、今後、それが期待できない
ので、マスコミが叩き始めましたが、電力会社が思い切り何かに反発するということはできません。
前田(司会):ありがとうございました。他にございませんか。
<電気料金値上げに関する協議について>
藤山(理事長):
二つ質問があります。一つは、500kWh 以上は協議制になっているということです
が、協議が整わなかった場合はどうなるのでしょうか。専決事項なのでしょうか。
柳沼:
電力会社は、協議が整わなくても必ず供給しなければならない義務がありますので、協議が
まとまるまでの間、電力会社の請求が来ると思いますが、契約時期まで遡って値段を戻すことがで
きると思います。
藤山(理事長):
柳沼:
協議が整わなくて、支払をしなくても供給は止められないのですか。
協議前の金額は払わなければなりません。そして、協議がまとまった段階で戻してもらう形
になります。
<発電設備のリースの可能性について>
藤山(理事長):もう一つは、PPS の発電設備が 13 億円強ということで、例えば、関電が出資している、
していないの問題はあると思いますが、これをリースで設備を整備して、3 年半で回収予定で、そ
れぞれのビルが「間違いなく支払う」という契約をすれば、リース会社は回収の可能性は高いと思
います。管理会社の中でイニシャルコストを負担して設備をつくるのは難しいと思いますので、そ
れをリースに換えて、日常の支払いをしていくことは可能性でしょうか。
柳沼:
可能性としては十分あります。我々が仙台でつくるのも、発電機そのものはリースにしよう
- 12 -
と思っています。自分のところで負担するのは建物、その他プラント関係で 4 億円ぐらいではない
かと思います。そのうち 50∼60%は融資が付きますので、あとはプロパーという話になりますが、
今、不動産投資関係が非常に鈍っていて、REIT 関係からは我々の方に投資したいという話もいく
つか来ています。
前田(司会):ありがとうございました。他に質問がなければこれで柳沼様の講演を終わりたいと思い
ます。柳沼様には感謝の意を込めて拍手をお贈りしたいと思います。ありがとうございました。
それでは引き続き、株式会社イーストの井上元治様より、
「SC 運営の効率化∼テナント統合管理
システム」をテーマにお話いただきます。井上様、よろしくお願いいたします。
■テーマ②「SC 運営の効率化∼テナント統合管理システム」
株式会社イースト(NPO 法人準会員)
井上
元治
氏
●はじめに
株式会社イーストの井上です。本日はよろしくお願いいたします。このような場をいただきまし
て、誠にありがとうございます。
冒頭に藤山理事長からお話がありましたが、外部環境の変化が激しいのは、皆さんもご存知のと
おりかと思います。例えば、昨年、3 月 11 日に震災があり、その後の外部環境については、起こっ
てしまったことはどうしようもないので、それにどう対応していくかということが大事だと思いま
す。
その中で、特筆すべきは日産の回復です。日産はどこよりも早く業績が回復しています。震災が
あったにも関わらず、3 ヶ月∼4 ヶ月ほどで昨年の同月の売上以上の成績を上げています。
日産が他の自動車メーカーと何が違ったのかというと、内部環境で自力をつけていたということ
です。元々、日産は業績がダウンして、外部からカルロス・ゴーン氏を呼んで、V 字回復した自動
車メーカーですが、一旦、業績が落ちた時に、いろいろな改革を行った中の一つとして、まず企業
の中の会議体を変えようと動いていたのです。一番大きな変化は、社員の意見を出させるために、
会議に上席が参加しないようにしたことです。要するに、一旦、上役の方は引いて、現場を一番よ
く知っている人がアイデアを出して、その最終判断をするのが上役という会議体に変えたわけです。
それで、今回、震災があった時に、どの会社も対策本部をすぐに設置したと思いますが、そこま
での動きは、多分、皆一緒だと思います。しかし、その後、日産が違っていたのは、いろいろな部
署が連携して情報を共有していったという点です。車をデザインする部署、パーツを組み立てる部
署、商品の在庫管理をする部署、ネジなどの部品を業者からかき集める部署など多岐にわたる部署
を縦の情報共有ではなく、部署間をまたいで情報共有させることを日産の社員の方々は行ったので
す。ですから、震災が起こった時に、逸早く横並びで情報共有ができたので、業績回復がすぐにで
きたのです。他のメーカーは 3∼4 ヶ月経った頃にはまだ−50%とか、−40%という状況でしたが、
その中で、日産だけは回復していたということです。
このように、外部環境の変化に素早く対応するには、先に内部環境をつくって、自力をつけてお
くことが大切だと思います。その内部環境をつくるというところで、我々から一つ紹介させていた
だければというのが、本日の話になります。
「SC 運営の効率化∼テナント統合管理システム」というテーマで、システムと言うとわかりに
くい話のように思われるかもしれませんが、本日、私は、
「我々のシステムがこんなに便利で、こん
- 13 -
なにすごい」という話をするつもりはありません。それよりも、現状、我々の知っているショッピ
ングセンターがどのような運営をしているのかというところをメインに話をさせていただこうと思
っています。
●イーストの紹介
‹
会社概要
まず、我々の会社を紹介させていただきます。
わが社は株式会社イーストと言いますが、従業員は約 400 名で、所在地は、本社が東京赤坂にあ
り、大阪オフィスが北区の曽根崎新地、それから福岡と上海の 4 拠点を構えています。お客様はす
べて商業施設で、一般の企業等々とはお取引がなく、商業施設のみに特化した会社です。
皆様のお手元にわが社のパンフレットをお配りしていますが、本日はすべてをお話できませんの
で、その中の一部を説明させていただきます。
また、大阪オフィスは 1 月末に移転しましたが、パンフレットが古いままの住所になっています
ので、最後に私の名刺を付けております。
‹
業務概要
次に、我々がどのような事業をしているのか、業務の概要を説明いたします。
「弊社は流通業に特化したシステムソリューションカンパニー」と書いていますが、主な業務は
商業施設の運用面のサポートです。
一つ目は「システム」で、本日、紹介します「売上管理・分析システム」がありますが、内容に
ついては後ほど説明します。その他、従業員管理、テナント管理、入退館管理、リーシング管理の
システムを柱の一つとして持っています。
二つ目は「アウトソーシング」で、売上管理業務、賃料計算請求業務、顧客管理、庶務業務、イ
ンフォメーション、契約管理業務等、人を手配する業務を一つの柱にしており、得意な分野です。
三つ目は「販売促進」で、WEB 構築運営管理、各種販促ツール作成支援、印刷・ノベルティ作
成を行っています。商業施設の中で、例えばフロアガイド等を作られる施設も多いので、そういう
印刷物などから WEB、ホームページも我々の方でお手伝いしています。
四つ目は「コンサルティング」で、運用コンサルテーション、CS 推進事業リサーチ、従業員研
修等、施設からのニーズが高いサービスを付けています。
このように、商業施設の運営組織および運営手法を最適化するのが、我々のミッションです。
‹
その他含む導入実績
実績としては、全国に多数の事例があります。大阪では阿倍野にある Q
s モールとも取り引き
しています。個々の事例の説明は省略しますが、すべて商業施設と取引きをしている会社であると
いうことだけでもわかっていただければ、いろいろ相談等々ができるのではないかと思います。
●施設運営及び管理から見た再開発ビル活性化
それでは、本論に入りたいと思います。
我々も再開発ビル活性化ネットワークの準会員ですが、再開発ビルを活性化するためにはいろい
ろな課題があると思います。その中の一つが「空き床問題」であり、二つ目が「コストの削減」、三
つ目が「施設運営及び管理」です。今回、私は 3 番目の「施設運営及び管理」についてお話しいた
しますが、施設運営を効率化させることによって、「空き床問題」「コストの削減」等、再開発ビル
としての問題に注力していただきたいという話です。
<SC 運営の管理業務とは>
まず、ショッピングセンター(以下 SC)運営の管理業務についてお話しますが、これは商業施設の
- 14 -
管理運営と考えていただいて結構です。
商業施設の運営管理業務には「総務・経理」
「販売促進」
「施設安全管理」
「営業管理」があります。
「総務・経理」は、例えば、契約書や売上管理の規則等、その他、テナントの事務局等を行いま
す。
「販売促進」は経常的な販促もあれば、特別販促、いわゆるイベントなどの販促等を管理します。
「施設安全管理」は施設全体のメンテナンスや、環境・衛生管理等を行います。
「営業管理」は〈企画/情報管理〉〈テナント管理〉〈売上管理・分析〉〈従業員管理〉〈顧客サー
ビス〉を行います。
〈企画/情報管理〉はテナントの企画や入居のリーシング、マーケティングの企
画・調査、それから DM やチラシの作成等を行います。〈テナント管理〉はテナントの日々の管理
や指導等が含まれます。〈売上管理・分析〉は本日説明する部分です。〈従業員管理〉はテナントの
入退店があった場合に、従業員が入れ替わる場合の管理で、施設に出入りしているスタッフに関す
る管理を行います。〈顧客サービス〉はインフォメーションや駐車場のサービス、拾得物の管理等、
商業施設の運営に当たって、顧客に関わる部分の管理です。
当然、コスト削減については皆さんもお考えだと思いますが、これは再開発ビルだけではなく、
我々が関わっている様々な商業施設のすべてが抱える課題です。ローコストオペレーション化を図
る SC は増加傾向で、どこへ行っても「コストを削減したい」という話を聞きます。運営室もコス
ト削減に際して人が少なくなり、少ない人員で運営を回していくために 1 人当たりの業務量が増加
傾向にあります。そこで、我々は業務効率の話をさせていただいているというのが近年の状況です。
<SC の売上管理>
SC の売上管理については、現状の会員の皆様の運用とは違うところがあるかもしれませんが、
ここ 10 年ほど、他の SC がどのようなことをしているかという認識で聞いていただければと思いま
す。
‹
日次処理
まず、日次処理(毎日の作業)は、商業施設に入っているテナントが、パソコン、または CAT 端末
というクレジットを切る機械から毎日の売上をデータで送ります。
また、データとは別にテナントが日報を書きます。閉店後にレジを締めると長いレシートが出て
きます。そこに売上やクレジットの売上、掛売りなど全部入っていますので、そのレシートと、ギ
フト券など日々の売上に関係するものを日報袋に入れて、手書きで日報に売上を書きます。そして、
それを毎日、運営室の方へ送り届けます。
運営室側は、日報袋に入っている手書きの日報と、パソコンや CAT 端末から飛んで来たデータ
を受け取り、データと手書きの日報を見て、売上に間違いがないかという精査を毎日行います。
精査した中でいろいろな修正が発生します。例えば、クレジットはクレジットの伝票を切ります
が、サイン漏れがあった場合や、データと手書きの日報の売上が違う場合等、そのようなところを
精査して 1 日の売上を確定します。
確定した売上を施設全体の売上として、貼り出しているところもあります。これが毎日の流れで
す。
‹
月次処理
次に月次処理は、15 日と月末の月 2 回の作業がありますが、施設によっては月 1 回、月末にしか
処理していないところもあります。
まず、末日でも 1 日の売上を確定しなければならないので、日々の売上を確定し、その後、電気
代、水道代等の水光熱費や、ロッカーの使用代、駐車場の利用代金等、月によって変動するデータ
- 15 -
を作成します。日々のデータと変動のデータを掛け合わせて、賃料、経費の精査を行います。それ
から、テナントの家賃を計算して請求書を作成し、テナントに送ります。
それから、各種分析資料を作成します。これは月で締めた後に、1 ヶ月の売上が昨年と比べてど
うだったのかという昨対比や、どのテナントが一番売上を上げているかという順位表、どのテナン
トがどのくらいの坪効率で売上を上げているか等の分析を行っています。
これらが日々、SC で行われている業務になります。
●再開発ビルの課題とシステム化するメリット
次に、再開発ビルの課題とシステム化するメリットについて話したいと思います。
<現状の課題>
課題については、いろいろな運用があるので、必ず皆様がここに当てはまるとは思っていません
が、お聞きした中でピックアップしています。
‹
業務の属人化
一つ目の課題は、業務の属人化です。
テナントへの家賃請求は、固定のところもあるし、テナントの売上に応じて歩合賃料のところも
ありますが、最近では歩合賃料のテナントがほとんどです。それにより、家賃請求をする場合、テ
ナントによっていろいろな契約状態があるので、手計算で行うのがなかなか難しい状況です。され
ているとすれば、恐らく Excel で事前にテナントの契約状況を登録しておいて、売上を入れると計
算されるという形のところが多いと想定しています。それに加えて、諸経費も Excel で計算して最
終的に賃料を出します。このようなことを行っています。
このように、契約情報、売上、諸経費を全て手で Excel に打ち込むという形で家賃計算をしてい
ると、その業務は担当者にしかわからない状況になってしまいます。そのため、異動や退職等で担
当者が代わるとたちまち対応できなくなるという事態が懸念されます。これが一つ目の課題です。
‹
目は売上管理をしていない
二つ目は、売上管理をしていないという課題です。売上管理は、ここ 10 年くらいの施設ではほ
とんど行われていますが、実際には売上管理をしていない施設もあると聞いています。したがって、
施設としての売上自体が把握できていないので、テナントがどのような状況なのかが掴みにくいと
思われます。
もちろん、一言でテナントと言っても、地権者もおられると思うので、地権者に売上報告をして
欲しいという話もなかなか難しいという現状は認識しています。そのため、施設としての売上が把
握できていないという現状があるようです。
‹
分析ができない
三つ目の課題は、分析ができないということです。2 番目の課題に挙げているように売上管理を
していないと、日々のデータがないので、一つのビルとしての売上が把握できません。そうなると、
昨年の売上との比較ができませんし、売上、客数、経費等のどこに問題があるのか、施設としての
状況が把握しにくくなってしまいます。
前述のように Excel で管理していると、担当者以外は対応できなくなり、あとは手作業になりま
すが、毎日毎日の売上を全部手で入力すると、特に歩合のテナントがいるところでは、業務のボリ
ュームが膨大になってしまうと想定されます。
それから、例えば、空き床にテナントが入りにくいという状況はどの施設も同じですが、施設と
しての問題点が把握できていないし、以前に入っていたテナントの売上も把握できていないという
状態では、テナントの誘致に対して、どのようなテナントが必要で、どのような条件が必要かとい
- 16 -
うことも把握できないというのが、現状の課題ではないかと思われます。
何度も言いますが、皆様の運用がここに当てはまるとは思っていません。あくまでも今まで伺っ
た中から取り上げています。施設それぞれの運用があると思うので、そこはまたヒアリングをさせ
ていただければ、どこに課題があるかというお話もできるかと思います。
<システム化するメリット>
そこで、システム化するメリットについて説明したいと思います。
‹
業務の平準化
一つ目は、業務の平準化です。今まで行っていた手作業をシステム化することによって、すべて
自動的にできます。売上を入れさえすれば、歩合計算はボタン一つでできるので、担当者が代わっ
ても誰でも対応できるようになるということです。
‹
業務低減
二つ目は、業務の低減です。最近は歩合賃料でしかテナントが入りにくい状況だと思いますが、
システム化すると複雑な計算が必要なくなるので、今までの業務がかなり低減されます。
‹
施設としての状況把握
三つ目は、施設としての状況把握です。毎日の売上データと家賃計算を毎日行うので、各テナン
トの売上状況がわかります。それにより、施設全体の売上も把握できます。
このように、歩合賃料のテナントが大半を占めている現状に対して、システム化することで歩合
計算が必要となる処理業務が軽減されます。そして、毎日のテナントの売上を把握することによっ
て、空き床にどのようなテナントを入れるべきか、また、以前のテナントの売上を確認することで、
新しいテナントに対する条件も事前に把握できます。そのように、テナントへの交渉材料にも使う
ことができます。
やはり、一番のメリットは業務を効率化させることであり、コスト削減や空き床の問題、いかに
集客するかという販促面の問題等、そういう他の問題点に注力することができます。そのために業
務を効率化することがメリットです。
●SC システムの動向
<SC システムの動向>
ここで、SC システムの動向についてお話したいと思います。
‹
POS レジ方式
1980 年代は、百貴店、スーパーセンターの全盛期でしたが、当時はテナントが固定賃料で、運営
側は毎月同じ賃料を請求する形だったので、運営室側からテナントに対してレジを貸す POS レジ
方式が主流でした。
‹
売上報告方式(サーバー設置型)
時代が変わって 10 年後になると、テナントの自社レジが普及してきました。これはユニクロな
どのナショナルチェーンで多店舗展開するところが増えて、テナント側がいろいろな店舗を自分た
ちで管理したいので、自分たちでレジを持ち込むという流れに変わってきたわけです。
そのため、今まで POS レジ方式で売上を確認できていた施設側は、テナントから売上報告をさ
せなければならなくなりました。これが 1990 年代です。その売上報告方式はサーバー設置型で、
システムを構築する時に施設の中にサーバーを置いて、そのシステムを利用するという形でした。
この頃から、テナントも毎月の売上が変動するので固定賃料が払えないというところが出てきて、
固定賃料に加えて歩合賃料になるところが増え始めました。
‹
売上報告方式(ASP 型のシェア拡大)
- 17 -
そして、2003 年頃、ネット環境の普及によって、また新たなシステムが登場します。皆さんは、
今、仕事でパソコンを使うことが多いと思いますが、10 年ほど前は、インターネットを使う時は、
ダイヤルアップで電話回線を使っていました。そこから、ISDN という電話とインターネットの両
方が使えるものが登場し、ADSL という、今までの電話回線ではなくて別の回線を使うものが増え
て、近年は光ファイバーになっています。そのようにインターネットを使う外部環境が整備されて
きたことにより、今までサーバーを設置していたものが、ASP 型という、今までの使い方とは違う
使い方をするようになってきました。これはインターネットを使うスピードが上がったことによっ
て提供できるサービスの仕組みです。
<ASP とは?>
従来のサーバー設置型のシステムを使っていた施設の場合は、施設の中に日々の売上をデータに
して溜めていくサーバーを入れる必要がありましたが、サーバーは温度に弱く、熱くなると故障す
るという性質があるので、空調の管理やメンテナンスが必要でした。また、サーバーは 5 年経つと
買い替えなければならないものが発生するので、買い替えの費用がかかりますし、データも移行し
なければなりませんでした。
そこで、登場したのが ASP のシステムです。例えば、イーストのサービスで紹介しますと、サ
ーバーが要らなくなって、全部インターネットを使う環境の中で利用できる仕組みが ASP です。
したがって、サーバーの管理、メンテナンス、買い替え等は、全部イーストの方で行います。
このように、単純に ASP とは何かといった時は、サーバーを外に出せるサービスと思っていた
だければ、少しわかりやすいのではないかと思います。
●売上管理システム(MallPro)
ここからは、イーストのシステムでどのようなことができるかをご紹介します。
<売上管理システム(MallPro)の沿革>
まず、売上管理システムで、イーストでは MallPro と呼んでいますが、この沿革を簡単に紹介い
たします。
2000 年頃に、インターネットを利用した商業施設向けの売上管理システム及び遠隔型売上管理サ
ービスを開発しました。イーストがこのシステムを開発するに当たっては、前段でシステムの他に
もいろいろなサービスを展開していると紹介したように、売上管理業務については、人が施設の中
に入って、日次処理、月次処理を代行するサービスを提供していました。そのようにいろいろな会
社のシステムを見てきた経験から、どうすれば一番業務の効率化ができて、使う人にとって一番良
いものができるかということを考えてつくったものがイーストのシステムです。つまり、使う側に
立ったシステムだと思っていただければと思います。
それから、2003 年に、業界初の商業施設専門グループウェアを開発しました。これも最後に説明
しますが、単純に売上管理をするだけではなく、せっかく使うのであれば、売上管理だけに使うの
はもったいないということで、いろいろ施設の問題点を聞いた中でつくったものです。
そして、2004 年に、ショッピングモールの運営ツールの ASP 展開を開始し、MallPro と商標登
録しました。
2010 年度には MallPro のバージョンアップを開始しています。ASP は、毎月利用料がかかりま
すが、施設の悩みを聞いて、現状のシステムに何が足りないかを考えて、悩みの多い順に機能を追
加しているということです。
<MallPro とは?>
MallPro とは、クラウド型商業施設管理アプリケーションで、ASP、つまりインターネットを使
- 18 -
ってできる仕組みと考えてください。したがって、インターネットに接続できるパソコンがあれば、
すぐに利用できるシステムです。例えば、Excel や Word も Office ソフトを中にインストールしな
ければなりませんが、そういうものがなくても、単純にインターネットにつながれば利用できると
いう仕組みです。
<ASP のセキュリティー>
サーバーを施設の中に置くと、自分たちで毎日の売上データを持つことになりますが、ASP サー
ビスはデータを外に出す形になります。
一昔前までは、データを外に出すことをどの会社も非常に怖がっていましたが、近年、特に震災
後は、データを中で抱えていると、何かあった場合、例えば震災で施設が潰れてしまうとデータは
全部消えてしまいます。また、少し前にソニーでデータの流出問題がありましたが、そのように内
部で持っていると、どこで、誰が何をするかわからない危険性があるということで、今はデータを
外部のセキュリティーを保ってくれるところに預けることが主流になってきています。
‹
サーバー管理
特徴としては、まず、サーバー管理については入出管理をしています。サーバーの中に入るため
には、必ず事前に「どのような人が入るのか」ということを申請しておかなければ入ることができ
ないようにしています。
また、警備員も巡回していますし、24 時間、365 日、サーバーを管理できるようにしています。
‹
データ管理
二つ目はデータ管理ですが、毎日の売上データについて、何かあった場合のために、必ず毎日バ
ックアップしてデータを保存しています。例えば、昨日のデータが間違っていたので戻したいとい
うようなことがあった時にもすぐに対応できるようにしています。
‹
施設管理
三つ目は施設管理で、湿度、温度のコントロールをしていますし、耐震性も新耐性基準の検査に
合格しているところにサーバーを入れています。
<MallPro の特徴>
MallPro の特徴を紹介しますと、まず、クレジット集計センター・警送会社・分析システム等の
連携実績が豊富です。警送会社は、一旦、テナントの売上を預かる仕組みをとる施設が多いので、
その場合に連携しています。あとは分析システムですが、いろいろな会社があるので、そういった
ところとの連携も豊富だということです。
それから、前述のように、定期的にバージョンアップをしています。
また、時代の流れで、スマートフォンやタブレット PC へも対応しています。システム会社とし
てはこの時代の流れに乗り遅れるわけにはいかないので、このようなことも行っています。
<MallPro の機能の案内>
MallPro の機能には、売上管理・分析機能、届出申請・管理機能、スケジュール管理機能、メッ
セージ機能、アンケート機能等、大きく五つの機能があります。
‹
売上管理機能
売上管理機能は、前述のような施設の毎日の売上管理を、システムで全部対応できると思ってい
ただければ結構です。
当然、テナントから売上を預かっている場合は、返還金に対する返還明細書も出せますし、預か
り金をしていないところはテナントに請求書を発行します。そういうものが出せるようになってい
ます。
- 19 -
‹
売上分析機能
売上分析の機能もいくつかあります。本日は説明しませんが、テナントの状況分析や、施設の分
析を行うことで、どこに問題があるかということを把握できます。
●グループウェア(MallPro)
次に、グループウェアを紹介します。
‹
届出申請・管理機能
施設の中でテナントと運営室とで、例えば、
「このような事業者が入る」と手書きの申請書を書い
て運営室に届けているケースが非常に多いのですが、せっかくインターネットを使うのだから、そ
ういうところに電子申請を使おうという機能です。
近年、中の人数を少なくして回すテナントが増えており、手書きの申請書を出していると、店を
離れることができないので嫌がる傾向があります。そこで、このような電子申請をすると、テナン
トの方も接客時間を延ばせるので、利用していただいています。
‹
スケジュール管理機能
スケジュール管理機能は、施設全体のスケジュールを、テナント皆で共有するものです。
‹
メッセージ機能
メッセージ機能は、メールのような機能だと思っていただければよいと思います。
‹
アンケート機能
アンケート機能は、セールの時期や、毎月行われる店長会の日程もアンケートをすることができ
るという機能です。
‹
その他便利機能
その他便利機能として、出勤報告機能、連絡メール機能、リビジョン管理機能等があります。
●MallPro のバージョンアップ実績と今後の予定
続いて、MallPro のバージョンアップ実績と今後の予定を紹介します。
システムは日が経つことにどうしても古くなっていきます、例えば、Windows も昔は Windows98
でしたが、今は Windows7、来年には 8 になるというように次々に変わっていきます。システムも
同じで、10 年前に使っていたシステムと現状のシステムとを比べると、機能が次々に変わっていく
傾向にあります。それに対応するために、我々はバージョンアップで機能を追加しています。
したがって、これから使うものと比べると、10 年後のシステムは機能が多くなっていると思いま
す。このように、機能が次々に追加されていくものだと思っていただければ結構です。
<参考価格>
最後に参考価格を書いています。
まず、システムを入れる場合は、初回だけ導入費用が発生します。これはテナントの契約情報や
施設の分類などの情報をシステムに入力するためにかかる費用です。店舗数によって作業量が違う
ので、初期導入費用も店舗数によって異なります。
月額費用は、30 店舗までが 8 万円、31∼70 店舗で 9 万円、71∼100 店舗で 10 万円となってい
ます。
現在の業務と比較しますと、施設によって業務の効率がどれだけできるかにもよりますが、例え
ば、毎日、売上管理をしている方がいて、その人件費が月に 20 万円とすると、1 年で 240 万円か
かります。それをシステム化すると、今までかかっていた業務がかなり軽減されるので、売上管理
にかかる人件費だけでみると半分ほどになります。したがって、システムにかかる利用料が 60 店
舗・月々9 万円で計算した場合、売上管理にかかる人件費だけを見ると下がることがわかります。
- 20 -
実際、担当者は業務が軽減されますが、単に楽になったというだけではなくて、楽になったこと
で、コスト削減、空き床問題等に注力していただくことが、我々が提供したいところです。
<導入スケジュールと実績>
‹
導入スケジュール
導入スケジュールとしては、最長で 4 ヶ月程度いただければ十分に導入できます。最短では 2 ヶ
月ぐらいで導入している施設もあります。
‹
導入実績
導入実績として、我々の提供するシステムをご理解いただいて導入されている企業は多数ありま
すので、後程、ご覧いただければと思います。
●最後に
今回、SC 運営の効率化に特化した内容を説明させていただきましたが、これはあくまでもイー
ストの事業の一部分です。冒頭に四つの大きな柱をご紹介しましたが、それ以外にも、いろいろな
事業を行っています。例えば、最近では、なかなか売上の上がらないある施設からの相談を受けて、
イーストが直営で飲食事業を立ち上げています。したがって、施設の運営で困っていることを相談
していただければ、商材に関わらず、
「どのような部分で力になれるのか」という話をさせていただ
けると思います。
我々はいろいろな商材を作っていますが、すべて施設の方からの相談を受けて、それを解決する
中で商材を作ってきたような会社ですので、何かご相談があれば、いつでもお気軽に声をかけてい
ただければと思います。本日は、どうもありがとうございました。
●質疑応答
前田(司会):
それでは質問の時間に入らせていただきます。
<顧客の属性について>
前田(司会):
私から質問させていただきます。定量的な分析はよくわかりましたが、顧客の属性は
このような中では出てこないのでしょうか。
井上:
属性までは取っていません。
前田(司会):
井上:
例えば、カードシステムとの連携などはできないのでしょうか。
連携することは可能ですが、我々のシステムが売上を管理をするというものですから、カー
ドということになると、例えば、ポイントカードといった専門のシステムがあります。そういった
ところは我々も知っていますが、データをどこまで連携するのか、というのが非常に難しいので、
今のところは売上管理という観点でのシステムにしています。
前田(司会):
ありがとうございます。他にご質問はございませんか。
他に質問がなければこれで終わりたいと思います。お礼の拍手をお贈りしたいと思います。どう
もありがとうございました。
●追加情報
柳沼:
先程言い忘れましたが、先程紹介した全量買取制度で、我々は太陽光発電にも注目していま
す。そこで、皆様方は商業施設を管理されているということですので、是非、皆様方の施設の屋根
が空いていましたら、一声掛けていただければと思います。我々が太陽光パネルを設置するなり、
一緒に事業を進めるなりして、何らかの収益になるのではないかと思いますので、よろしくお願い
いたします。
4.その他
●報告:
新長田音楽プロジェクト
- 21 -
大島(事務局):
それでは NPO の方から報告いたします。レジュメの P6 をご覧ください。
ホームページやメールマガジンで発信させていただいていますが、今、NPO では新長田のまちづ
くりのお手伝いをしています。しかし、新長田の再開発ビルの活性化については、商業施設の空き
床を物販店で埋めることがなかなか難しく、非常に我々も苦労しました。その中で、長田が「音楽
のまち」を標榜して、震災以後のまちづくりを進めていることから、物販ではなく、例えば、音楽
スタジオや、カラオケ、それに関するスタジオなど、音楽を通して床需要を生み出すようなお手伝
いができないかと考えています。そして、将来的には新長田、あるいは、長田のまちから若い人た
ちがメジャーになっていくという、そういうストーリーが描けないかと思っています。
これを「新長田音楽プロジェクト」として、新長田音楽のまちづくりを提案させていただき、い
ろいろと議論させていただきました。そのように音楽のまちづくりの関係を進める中で、東京の松
本一起さんという作詞家とネットワークの中でご縁があり、その方に新長田のまちづくりの企画を
一緒に検討していただくという機会がありました。それが昨年の夏前頃だったと思いますが、その
ような話を進めている中で、3.11 の被災後ということもあり、1 月 17 日が神戸の大震災の 17 周年
に向けて、被災した新長田の皆さんから東北の方に応援歌を作ってはどうか、オリジナルソングを
作ってそれを被災地に届けてはどうかというアイデアが出ました。現在、その企画を進めており、
新長田に住んでいる皆さん、お年寄りから子どもまで 117 名の合唱団を募って、その合唱した模様
を CD にレコーディングして東北に届けようという企画です。
P6 は、昨年のクリスマスの 12 月 25 日に、117 人の合唱団のうちの半分ぐらいに新長田のスタ
ジオに集まっていただいて、合唱とレコーディングを行った模様を神戸新聞に取り上げていただい
た記事です。
12 月 25 日と 1 月 15 日の 2 回に分けて合唱の練習を行い、その場に松本一起先生に来ていただ
いて、歌唱指導をしていただいた後、録音をしました。歌については上手、下手に関係なく、元気
よく歌って東北の方を応援しようということでした。
そして、1 月 17 日の阪神淡路大震災の 17 周年の時に、新長田でも追悼のイベントがありました
ので、平日で全員が揃うということはありませんでしたが、70 名以上の方に集まっていただいて、
追悼行事の中で歌をお披露目させていただきました。
P7 がそのレコーディングの風景です。
P8 の上も練習風景です。下は「1.17 KOBE に灯りを in ながた」というイベントに参加をして、
合唱した様子です。
オリジナルソングのタイトルは「帰り道の途中」ですが、新長田もまだ復興の途中、つまり、帰
り道の途中なので、そのような趣旨の歌詞となっています。新長田も復興途中ですが、東北よりは
少し先輩なので、一緒に復興に向けて歩いていきましょうという内容の歌詞です。P9 に歌詞を付け
ていますので、後程、読んでいただければと思います。
CD は 2 月の終わり頃に完成する予定であり、それを 3 月 11 日の東日本の震災の日に東北へ届け
ようと思っています。また、3 月 25 日に、117 名の皆さんにもう一度集まっていただいて、完成し
た CD をお渡しするという記念の行事も予定しています。
皆さんが合唱した CD はまだ出来上がっていませんが、皆さんが合唱する練習用の CD をパソコ
ンに入れていますので、
「帰り道の途中」という歌詞を見ていただきながら、聴いていただければと
思います。
―【帰り道の途中】
作:松本一起
家も空も幸せも崩された
- 22 -
CD 演奏―
だけどわたしたちは心を崩さなかった
頑張ってとか元気でいてとか
言われるたびに涙かくして泣いたけど
帰らない人たちを待ちながら
青空の向こうの世界に約束した
ここにいた者しか分からない
もう一度ここにたどりつくんだと
必ず必ず
帰り道の途中
あきらめた時は静かに眠ればいい
やがて目覚め勇気に生まれ変わり
新しい未来がそこにある
新長田から大声でこの歌をうたおう
東日本の人たちに届いて欲しいから
守りたい人たちに守られて
誰だって一人で強くはなれないから
少しだけ先輩なんだから
微笑んだわたしたちを見て欲しい
ゆっくりゆっくり
帰り道の途中
懐かしい顔に出逢うと泣いてしまう
まにあわせの笑顔が温かくて
信じあうことって嬉しいね
新長田から大声でこの歌をうたおう
東日本の人たちの見本になれるよう
帰り道の途中
あきらめた時は静かに眠ればいい
やがて目覚め勇気に生まれ変わり
新しい未来がそこにある
新長田から大声でこの歌をうたおう
東日本の人たちに届いて欲しいから
帰り道の途中
懐かしい顔に出逢うと泣いてしまう
まにあわせの笑顔が温かくて
信じあうことって嬉しいね
- 23 -
新長田から大声でこの歌をうたおう
東日本の人たちの見本になれるよう
新長田から大声でこの歌をうたおう
東日本の人たちに届いて欲しいから
大島(事務局):
前田(司会):
このようなオリジナルソングを製作中ですので、ご報告させていただきます。
それでは、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
以
- 24 -
上