第4回専門部会 - 東京都青少年・治安対策本部

第27期東京都青少年問題協議会
第4回専門部会
平成19年6月25日(月)
東京都庁第一本庁舎 33 階特別会議室 N6
午後6時00分開会
○青山青少年課長
お待たせいたしました。本日はご多忙の中、夜間にもかかわらず、青
少年問題協議会第4回専門部会にご出席いただきまことにありがとうございます。定刻と
なりましたので、ただいまから専門部会を開催させていただきます。
前田部会長、議事進行の方よろしくお願い申し上げます。
○前田部会長
本日の議事の意見聴取に入らせていただきたいと思います。
これまで当専門部会では、宮台委員から「過剰流動性への適応がもたらす諸問題」、篠崎
委員から「経済環境、雇用環境の変化とニート、フリーター支援策との関連について」、小
島委員から「早期離職問題から考える若年者就労」、前回、斎藤医師からは「ひきこもりの
発生要因と長期化のメカニズム」について貴重な発表をいただきましたが、今回は、ご自
身も現在、5 人の子育てをしておられながら、子どものセルフケア教育に取り組んでおられ
る日本誕生学協会代表の大葉委員から「若年出産と児童虐待∼現状と課題∼」という題で
お話をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○大葉委員 大葉です。本日はよろしくお願いいたします。本日は「若年出産と児童虐待」
ということで、現状の報告をさせていただきたいと思います。
本日は総論という形で、出されている数字と現場とのギャップ、課題で、一般的に言わ
れている課題と、そこでは追いきれない現状もご報告をさせていただきたいと思います。
論文は、虐待関連は古いものが多く、今、新しい調査がどんどん進行している状態です。
若年出産も 1985 年以前ですとなかなかデータがなくて、最近の問題として捉えられている
ものが多いということで、きょうは、数値のご報告から見えてくることをご説明させてい
ただきたいと思います。
出生数の年次推移と母の年齢ということですが、2002 年からの数字をここに書かせてい
ただいています。古い数字がなくて申しわけございません。古い数字でいいますと、1975
年(昭和 50 年)ですと、出生全体が 190 万 1,440 人あった中で、14 歳以下の出産は、昭和
50 年の段階では 9 人でした。それが 2006 年ですと、41 人が 14 歳以下の出産となってお
ります。15 歳から 19 歳の出産は 1975 年(昭和 50 年)の段階では、1 万 5,990 人で、15 歳
から 19 歳ですと、近い年度でも 5,000 人ぐらいの前後はしょっちゅう見られますが、14
歳以下の出産が現代は非常に増えているシビアな現状でございます。1985 年(昭和 60 年)
はどうなっているかといいますと、全体数が 143 万 1,577 人だったんですが、その当時 14
歳以下の出産が 23 人でした。15 歳から 19 歳は 1 万 7,854 人ということで、現代とさほど
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差はない状態が昭和 60 年ぐらいから始まっております。
これが現代の日本の数値ですが、海外と比べますと、海外は宗教的な背景で人工妊娠中
絶ができなかったり、妊娠をしたら必ず産むという支援が社会でなされるシステムであっ
たり、ドイツとかアメリカとか国々によって違います。日本の場合は 10 代の出産数は、海
外から見ますと、先進国の中では少ない方に位置しております。
10 代の妊娠と出産はふえているかということですが、95 年度と 2003 年度で比較すると、
10 代の出産数は、1,000 人中 3.9 から 5.8 へということで増加をしています。特に 14 歳以
下が、昨年度は「14 歳の母」というテレビドラマの影響もございまして、中学生が妊娠を
すると人工妊娠中絶をしたがらない現状が生じていると、産婦人科医にヒアリングしまし
た。少女漫画とか月刊誌や週刊誌でも最近取り沙汰されておりますが、小学生の漫画メデ
ィアが性行為を日常的に扱う経緯があり、今は若年の中でも、特に 10 代前半の妊娠や出産
が増加している傾向が全国的にございます。
1955 年度、かなり前ですが、10 代出産率は 5.9 で、このころは男女雇用機会均等法もな
く、女性は結婚とか出産が永久就職と言われた時代で、合計特殊出生率も 5 人とか 4 人、3
人とあった時代ですと、10 代の出産も 5.9 だったんですが、現在はそちらの方と同じ、2003
年度は 5.8 ということで、40 年前と同じ状態になっているということです。
性交渉開始年齢が低下しておりまして、1984 年、23 年前ですと、高校 3 年生男子は 22%
が性交経験があったんですが、2005 年ですと 35.7%で、1.6 倍になっております。高校 3
年生の女子は 3.6 倍という数字になっておりまして、性交経験率は何を意味するかといいま
すと、実際には望まぬ妊娠の率の向上と、性感染症への罹患も、これと正比例関係でふえ
ております。
日本は先進諸国の中でも、一度の性行為で 50%の感染率がありますクラミジア感染症と
いう性行為感染症が今、猛威をふるっております。ヨーロッパ地域に比べますと 10 倍、テ
ィーンエージャーの感染者数が多いという現状がございます。
高校 1 年生の女子に関しましては、1984 年は 4.9%ほどが性交経験があるというデータ
が出ているんですが、現在では 2.9 倍になりまして、高校 1 年生ですと 15 歳、16 歳ですが、
14.6%が性交経験があるということです。これは財団法人性の健康医学財団の資料からの出
典といたしました。
性交渉開始年齢が低下しますと妊娠リスクが高まるということで、妊娠をすると、出産
をしようかしまいか悩んでいるうちに中絶ができなくなってしまって出産に至った、そこ
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で、望んでいない妊娠であったことから虐待につながっていくリスクがございます。
10 代の人工妊娠中絶の実数は今どうなっているかと申しますと、20 歳未満の人工妊娠中
絶が、2003 年ですと 4 万 475 人ということです。そのうち 15 歳未満が 483 人おります。
15 歳未満といいますと中学生以下でございます。この数は世界に誇る多さでございます。
2005 年は少し減りまして、20 歳未満の人工妊娠中絶は 1 万人近く減りまして、15 歳未満
は 308 人で、180 人ほど減っております。
人工妊娠中絶も、ちょっと古い年度のご報告をさせていただきますと、1989 年ですと 46
万 6,876 件で、総数も多かったんです。このとき厚生省のデータには、20 歳未満という表
記しかなく、この時点で 2 万 9,675 件の人工妊娠中絶が 20 歳未満で起こりましたので、20
歳未満では 3 万件ぐらいというのは、89 年ぐらいからここ 20 年から 10 年の間、変わって
いないという数字です。
人工妊娠中絶が一番多い年齢が 19 歳です。20 歳以下の層でも、19 歳が一番多くなって
おります。年代別でいいますと、20 歳から 24 歳の層が、全年齢の中でも人工妊娠中絶率が
一番高い層ですが、19 歳というのは、日本人の初めての性交渉の経験率が高くなる年齢で
あり、避妊についての知識や意識がしっかりない為、人工妊娠中絶率が最も高くなってお
ります。
人工妊娠中絶が下がらない経過の中には、性の商品化情報、週刊誌や月刊誌や漫画など
いろいろなメディアの、性を商品化した情報流通が非常に増加したという経緯があります。
先日、私の子どもが行っております渋谷区立の中学校で開催された、代々木警察署の青少
年課の専門の方による保護者の啓発講座では、30 年前に比べますと、性の商品化情報とい
いますか、心とか人間関係が介在していない性の情報は、情報量が 30 年前の 600 倍になっ
ているという報告を、代々木警察署の青少年課の方から、私たち区立中学校の保護者たち
は受けました。現代では、その子どもたちを 600 倍の力を出して守らなくてはいけない時
代でもあるということが言えると思います。
10 代の人工妊娠中絶の全体の中での割合ですが、中絶総数に占める 10 代の割合の推移は、
89 年は全体の 6%が 10 代でした。青少年といいますと、20 歳、21 歳、22 歳ぐらいまで、
学生でしたら、もちろんそこに含んだ方がよいのですが、10 代でいいますと全体の 6%で
あったのが、2005 年ですと、全体の 10%が 10 代の人工妊娠中絶ということで、望まぬ妊
娠、計画外の妊娠ということになっております。全体の 1 割強が 10 代の人工妊娠中絶であ
るというのが日本の特徴です。
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日本の特徴をもう一例申し上げますと、10 代の人工妊娠中絶が非常に高いということと、
40 代が非常に高いのが日本の特徴でもあります。私ども、誕生学協会という活動で、小学
校 4 年生の教室に赤ちゃんを連れて行ったり、おなかの大きい妊婦さんを連れて行ったり
という活動をしているのですが、そこでは、これから 40 代になる方々と、10 代に入ってい
く子どもたちがセットでいるということで、家族の絆を強めたり、基本的なセックスのた
めの知識を、これから 10 代前半の親子関係をがんばりましょうということでお伝えしてい
ます。
2005 年度では、1,000 人の 19 歳に対して 17.2 の割合で人工妊娠中絶がありました。18
歳は 1,000 人中 12.5 の割合で人工妊娠中絶があるという状態で、望まぬ妊娠が頻繁に起き
ている、特にティーンエージャーに起きています。
国内で差がある中絶率ということで、日本医療政策機構という特定非営利活動法人がこ
のたび出したデータでは、全国で比べますと、10 代の人工妊娠中絶率は南北で多く、中心
部で低い傾向があるという報告がされています。東京都は全国で 42 位ということで、10
代の中絶数は少ない方に位置しております。諸外国に比べますと高いのですが、日本国内
では低いランクになっております。1 位が鳥取県で 2 位が北海道ということです。ほかの県
のデータもありますが、ここでは割愛します。46 位が奈良県、47 位が山梨県ということで、
中間部は少ないという報告がなされています。
エリアで分けますと、都市都会、中間地域、地方郊外という分類をしますと、地方郊外
は妊娠リスクが高い。望まぬ妊娠が多い。望まぬ妊娠の結果、人工妊娠中絶を決断しない
場合は、望まぬ妊娠後の出産でリスクが高くなります。先日も高校生が学校で赤ちゃんを
産んで、トイレで溺死をさせてしまったり、家で子どもを産んで、母親に、子どもの泣き
声で出産がばれるのを避けようと、男児の頭を殴って殺すという事件がありました。中間
地域よりも地方郊外が多いという報告がなされています。
その要因ですが、地方郊外は一人一つ、広い部屋が持てるということであったり、母屋
と離れがあって、親が、10 代の子どもが性行為をしているのを発見しにくい要因もありま
す。街中にも、パチンコ屋さんの駐車場にとめるとか、大人の目の行き届かないところで
性交渉が成立する場の環境がいっぱいあるという報告がされています。
相手の人数や性交渉の頻度、期間、避妊法の失敗率、性交渉の場所、家族の性の意識な
どで比較しますと、地方郊外が高いという結果が出ました。かといって東京が安心できる
ということではなく、全体で取り組むべき問題だと思っております。
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アメリカでは中絶が許されていない州もあり、妊娠したら出産をするということで、大
学などにも託児室があったりしますので、10 代の出産が 14%という数字になっています。
都内 3 区でヒアリングをして参りました。名称をご報告しても構わないと思いますが、
保健センターの子ども家庭支援センターの係長の先生方と、保健師の皆様にヒアリングを
して参りました。
都内 3 区で比較しますと、出産と中絶とどれぐらいの割合かですが、日本全国で総数で
いいますと、全体の中絶数は 30 万件あったわけですが、そのうち 10 代は 3 万件という数
字が報告されているんですが、都内ですと、中絶数と出産数が同数になっております。
若年の出産数ですが、T 区では、全体の出生が 1,458 人あったのに対し、15 歳から 19 歳
での出産が 18 人でした、20 歳から 24 歳が 131 人で、成人しますと、定職を持っていなく
ても、相手に定職がなくてもグンと出産率が上がります。2005 年は、T 区は豊島区です。1
年間に生まれる赤ちゃんの数は 1,460 人で、そのうち 15 歳から 19 歳は 10 人、全体の 0.7%、
20 歳から 24 歳が、全体の 8.5%で 124 人ということですね。こちらの区は 8%から 9%ぐ
らいが 20 歳から 24 歳、1.2%から 0.7%ぐらいが 15 歳ということで、24 歳以下の出産が 1
割を占める状態になっています。
若年の人工妊娠中絶数ですが、総中絶数が 1,138 人に対し、20 歳未満が 113 人、20 歳か
ら 24 歳になりますと 418 人と中絶数が報告されています。2005 年ですと、20 歳から 24
歳ですと 608 人ほどで、総中絶数の中で、20 歳から 24 歳の占める率は非常に高くなって
おります。
人工妊娠中絶数ですが、近年までは区の方も公表していなかったのですが、このたび、
平成 16 年から、北海道の釧路市が市民の方々に公表して、保護者の意識を啓発して、学校
を訪問し、地域全体で 10 代の望まぬ妊娠を防ごうと地域活動をした結果、10 代の出生率を
下げる、人工妊娠中絶率も下げることができました結果、今、各市区町村の保健センター
としましては、10 代の人工妊娠中絶数や出生数を出していこうという方向にあります。
N 区は中野区です。総出生数 2,300 人中、10 代の出産は 10 人、0.4%ですので、豊島区
に比べますと半数となっています。S 区は杉並区ですが、3,415 人中、10 代の出産は 15 人
ということで、こちらも 0.4%ですので、豊島区と杉並区と中野区は非常に近いと思います。
山手線でもすぐですよね。近いんですが、市区町村によっては、いろいろな要因がありま
す。親御さんたちがどのようなライフスタイルであるかとか、就学援助金をいただいてい
るような生活保護世帯が多いとか、例えば区民住宅が多い地域とか、いろいろな家庭の状
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況があります。近い区でも、これだけ 10 代の出産の差があるという現状があります。
ちなみに長野県の駒ヶ根市、年間 300 人が生まれる人口 3 万人の都市があります。こち
らが、次世代育成支援法が成立いたしましてから、子ども課ということで、児童福祉課と
保育課と教育委員会をひとまとめの窓口にいたしました。年間 300 人、総出生数があるん
ですが、そのうち 10 代は 6 人ということで、非常に高い 10 代出産が起こっていますので、
東京の何倍もの率で、地方の都市は 10 代の出産が多くなっております。
若年出産の未成熟な現状ということで、どういった方が責任なく虐待して殺してしまっ
たり、児童相談所に行って、子どもが児童養護施設に引き取られていくという経過になら
ないようにするためには、無責任な出産をしてしまうよりは、産める時期が来るまでとい
う対策を願う親が多いのが現状です。子どもは産みたい。
「14 歳の母」というドラマもあり
ましたし、少女漫画では、10 代の出産を題材にした漫画が非常に増えておりますので、そ
ういったメディアの影響で、妊娠したら産みたいという 10 代が増えています。
そこで、どんなことが出産の決断の動機になっているかということですが、未成熟な現
状としましては、妊娠の仕組み、知識がないうちに性交渉をして、「まだ子どもなので妊娠
しないと思った」と産婦人科の窓口で言う子が 10 代では非常に多いと言われています。
性教育と言われる、性感染症防止教育であったり、避妊教育であったり、体の発達の教
育であったりというのが今、全国的に模索中で、難しい時期に入っていると思いますので、
親から聞けなければ、地域の中で聞けなければ、妊娠の仕組みや、正しい知識を得る機会
がないのが現在のティーンエージャーです。そちらの知識がないうちに、性交渉だけは持
てるということだったり、さみしいからとか、温かいからということで望んで、性交渉開
始年齢が早くなっております。
思春期学会では、性交渉開始年齢が早いグループの子どもたちのことを、城づくりをす
る、自分の居場所づくりをするために、子ども時代を自宅で子どもらしく過ごせなかった、
精神的虐待がずっと続いているような状況で、重要他者を親に求めず、ほかに求めるとい
うことです。肌と肌が触れ合ったりということで、疑似家族のような存在を急いで求める
ということで、子どもの居場所づくり、城づくりとしての性交渉開始年齢の低年齢化が起
きているという報告が出ています。子どもなので妊娠しないと思ったと、妊娠したときだ
け言うんですね。
10 代が、産みたいと思う動機がメディアなどでいっぱいあるわけですが、親が産ませた
くないということで、親は、妊娠発覚後に中絶を提案するというのが一般的な動きとして
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あります。子どもの方が産みたい、親は産ませたくないというところで葛藤がありますの
で、中絶できない時期まで子どもが待って、何も伝えずに初診を受けるケースが多いです。
保健センターで虐待リスクとして扱う場合には、妊娠週数の遅い時期に妊娠届があった 10
代を虐待リスクとしてスクリーニングしているという現状があります。
中絶できない時期といいますと、12 週を過ぎますと入院して手術が必要になりますが、
22 週からは死産扱いになりますので、人工流産ができなくなりますので出産をしなくては
いけなくなります。この時期まで何とか親から逃げれば、仕方がないから産みなさいと言
われるのではないかという現状で、親に言わないというのが虐待リスクにそのままつなが
るという経過があります。親にばれるのを恐れ、言えないまま秘密出産というのが、先日
報道されていました、高校のトイレでの出産や、自宅の 2 階での出産、そのまま産声がば
れるのを防ぐために嬰児を殺すというような状態が起きています。
もっとひどいケースもあります。早産をすればいいということで、階段からわざと飛び
下りておなかを打ったり、相手も誰かわからず、産みたくないけれども、人工妊娠中絶が
できない時期になっている子を、保健センターでフォローを始めました。産む産まないで
ずっと悩んでいたんですが、産まなくてはいけない時期になったので、保健センターの常
勤の職員がフォローしていたところ、結局出産した例がありました。産んだ後、お乳をあ
げていて、母乳をあげますとフロラクチンというホルモンが分泌されますので、かわいい
と思うためにも有効であるホルモンですが、母乳をあげているうちにかわいくなったから
育ててみますということになって、児童相談所や乳児院では預からないことになったんで
す。そうしましたら、故意かどうかは不明ですが、残念ながら生後 2 カ月の時点で、気が
ついたらお布団がかぶさって死んでしまっていたということで事故扱いになったんですが、
赤ちゃんが窒息死をしてしまったという経過の報告を、このたびヒアリングした区で受け
ました。都内の区です。
虐待ということで、直接手をかけたということで報告されていなくても、お布団をかけ
てしまって、窒息死という事故で報告されている例もあったということが現状ではありま
す。ですから、ずっと葛藤している。望んで妊娠という例が非常に少ないのが若年出産の
特徴ですので、葛藤したまま、産めばいいのかというものでもなく、産まないと決断する
までにもベストタイミングが必要で、そのあたりの支援が、体制としてないのが現状です。
産みたい 10 代もふえています。恋愛相手独占のための出産動機もあるということで、一
時期、顔を真っ黒に塗ったヤマンバさんとかガングロさんがいっぱいいましたが、16 歳ぐ
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らいで赤ちゃんを産んで、顔を真っ黒に塗りながら、ベビーカーで赤ちゃんをお散歩に連
れて行っているお母さんたちに、出産をしたいと思ったのはどうしてですかとヒアリング
をしたレポートが、ある月刊誌に載っていました。「私が彼の真剣な相手だということを周
りに見せるために出産を選んだ」「周りの女性たちが、自分の恋愛相手に対してあきらめが
つくように、自分が相手の子どもを産むことを決意した」というような未成熟な動機で出
産が行われているという現状もあります。支援がないまま、無介助分娩、無届け、これが
一番、虐待のリスクです。
保健センターとしましても、妊娠届が、遅くても出れば、スクリーニングして、そのま
まフォロー体制に入れる。児童相談所とかいろいろなところ、地域と連携して、虐待のた
めの支援要員と連携が始まるんですが、無届けのまま、一回も妊婦検診に行かないまま自
宅で産む、学校で産む例も後を絶たない現状がございます。
若年出産と虐待リスクということで、あるパターンがございまして、今、厚生労働省の
研究事業が進んでいる中で出てきているアイデアとしましては、若年妊娠をした若い世代
が親にきちんと報告ができるようなアサーション・トレーニングであったり、カウンセリ
ングのトレーニングであるような専門組織も必要であろうという研究がなされています。
親に言えるか言えないかで、その後生まれてきた子どもの未来というものが非常に関係し
てくるわけです。10 代の時期にセーフセックスができないとか、望まぬ妊娠をしてしまっ
た、1 回 2 回避妊の失敗という例も多いんですが、親に言えないような親子関係である。出
産をしても親に言えないという親子関係があるというのが、若年出産の背景にはございま
すので、そのリスクを防ぐためには 3 パターンの見方をしていくと、リスク大、小が分け
やすいかなと思って、このようなフローチャートをつくってきました。
妊娠を確認後、妊娠検査薬が今、700 円ぐらいで、月経が遅れて 1 週間目あたりに尿検査
でわかるキットが売られております。こちらは 20 年ぐらい前から発売が行われておりまし
て、それ以前ですと、産婦人科に行かないと、月経が停止していること以外は妊娠の兆候
はわからなかったんですが、現在では尿検査薬が、700 円ほどで薬局で入手できますので、
そちらで 10 代の若年の方々や 20 代前半の方々はチェックをします。そこで、絶対産めな
いということで、もう相手との関係が終わったとか、出産が怖い、育てていく自信がない、
産んでも虐待してしまいそうだということで中絶の決断をしたグループはそこまでという
ことですね。虐待のリスクが生じないですね。
出産をした場合、未婚のまま、相手と入籍をしないまま、親の養子縁組として親の子ど
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もとして入籍をして育てる。高校生なり中学生なりが出産したら、その保護者の戸籍に入
れて妹として育てる、弟として育てる場合があって、親がしっかり介入する場合があるそ
うです。杉並区の子ども家庭支援センターの方も言っていました。そうしますと、親がし
っかりと育児にかかわる場合はリスクが少なくなります。
未成年同士、若年出産をする夫婦となるということで、親から自立して就職をした場合、
親が非介入で若年の夫婦が育児をしていくケースでは、夫の協力があるとリスクは少ない
ということがございます。母親となった若い女性が、子どもから少し距離をおけることが、
リスクを少なくするのに非常に有効だという研究報告は、厚生労働省の研究レポートでた
くさん上がっておりますので、今、各市町村では母親グループをつくって、子どもの託児
をしておいてあげて、同じ若年出産同士のグループの中でピア・カウンセリングをしたり
仲間づくりをしたり、育児の勉強会をしたりということが行われています。
夫の協力なしで孤立無援で育児をした場合、リスクが中から大になります。親から自立
すればよいというものでもなく、新生児のころや乳幼児のころに虐待がないとしましても、
児童虐待として、25%ほどは小学生ですから、長きにわたって精神的虐待が続く。
「おまえ
なんか何で生まれてきたんだ」とか、「おまえなんか産まなきゃよかった」ということが、
赤ちゃんの時代に乳児虐待はなくても、幼児虐待や児童虐待として、長きにわたって少し
ずつ続くケースはございますので、リスクが小とは言い切れない部分がございます。
妊娠を確認後、親に秘密でいく場合、親に言わないまま中絶をする。親に報告をして中
絶をする方々も増えてはきているといいますが、親に報告をして中絶をする場合は、親が、
こんなはずじゃなかった、うちの子に限ってということで、最後まで親の方が取り乱して
いるという現状が報告されています。これは産婦人科クリニックから報告があります。
妊娠を確認後、親に秘密で中絶をする場合は、仲間内とか相手とかからカンパでお金を
集めて中絶をします。この場合、虐待のリスクはなくなる。
妊婦検診に通院をする場合、現在では病院が、若年の妊婦たちに対して直接的なかかわ
りを持っているのがほぼないというのが、現状報告で、厚生労働研究レポートでも、ほぼ
ないことが明らかになったというのが、平成 16 年の研究報告で上がっています。今、大急
ぎでマニュアルがつくられているところです。病院が行政に連絡をしてくるケースは近年
増えていると、杉並区でも報告がありました。それが今までなかったのです。病院が、10
代の妊婦さんだなと思っても、産婦人科病院は産後 1 週間で退院いたします。産後 1 カ月
目に乳児検診に来て以降、かかわりがなくなりますので、赤ちゃんが虐待死するケースは 4
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カ月までが一番多いんですが、産婦人科の介入は生後 1 カ月までですので、きちんと定期
検診を受けようという意思がない場合には、退院しますとそのままかかわりがなくなりま
すので、病院と地域の連携も、きちんとしたシステム化ということでつくられるべき課題
です。
その出産を病院が行政に連絡をした場合はリスクが中レベルになります。妊娠届を出さ
ない場合、リスクが一番大きいんですね。行政が把握できないので、現在、行政は、リス
クグループに対しては生後 1 か月以内、1 か月から 3 か月以内に乳幼児検診ということで、
助産師の皆さんが、乳児が生まれた家庭に対して新生児訪問ということで、おうちを訪問
して、おうちの状態がどうか、パートナーの方の就労状況がどうかとか、生活の状態がど
うか、精神的な状態がどうか、産後うつの兆候がないかというような新生児訪問という事
業を行っています。しかし 10 代が妊娠届を出さない場合、行政が把握できないですし、妊
娠届を出さない例も数%はあるということです。この場合、無介助出産をしていることが
ありますので、戸籍がない可能性もあります。こうなると、戸籍がないこの子はいなくて
も同じかというような、虐待をしてしまう可能性が大になります。
妊娠届を出さなくて、妊娠確認のために受診をしない場合、病院も知らないという場合、
妊娠の無介助出産、無介助健診といいますか、妊娠中に一回も検診を受けないケースです
とリスクが本当に高くなります。自己流の中絶、自己流で早産を起こそうと、階段から落
ちておなかを打つとか、熱いお湯の中に入るとか、産むに産めない、おろすにおろせない
となった 10 代は行き場を失っておりますので、自己流で早産や中絶を試みます。産後、殺
害の試みも、届けていないし、戸籍もないし、この子はいてもいなくても誰もわからない
んじゃないかということで殺害が起こりやすいです。リスクが大です。突然、入院による
出産も後を絶たないんですが、準備不足やストレスによって、こちらもリスクが大です。
せめて両親学級に出たり、妊娠中から、10 代の同じリスクを分かち合える人間関係を、仲
間のピアサポートで受けられた場合はリスクが少なくなります。自宅や学校での出産、事
故発生率の増加ということでリスクが大きくなります。妊娠届を出さない場合、行政が把
握できず、虐待死が最も多いという報告が上がっています。
虐待相談増加の推移ですが、虐待相談の処理件数は平成 10 年(1998 年)以降激増していま
す。いろいろと法律が整ったこととか、虐待という言葉が一般的に社会認知されたことも
ありまして、周囲からの報告とか、本人からの相談も増えています。これって虐待でしょ
うかとか、うっ積してしまって仕方がないんですけれどもという報告もあるということで、
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1990 年では 1,101 件だった児童相談所への虐待相談が、2004 年ですと 3 万 3,408 件と、
倍増どころではない、30 倍に増えている現状がございます。
虐待の現状ですが、14 年度から 16 年度ですと、虐待の種類はこの四つが代表的なもので、
身体的虐待で暴力、こちらは全体の報告の中での 44%から 46%、保護の怠慢・拒否、ごは
んをつくらない、食事を与えない、着替えをさせない、入浴させないなどのネグレクトが
全体の 36%、性的虐待になりますと、被虐待児は中学生、小学生になります。幼児ですと
非常に少ないんですね。こちらが全体の 3.1%から 3.5%。家庭内にいる場合は、父親から
娘への性的虐待、小学生、中学生に対する性的虐待が非常に多く報告をされています。
ただ、家庭外に隔離された場合、児童相談所が介入し、児童養護施設に預けられて保護
された子どもたちも施設内で、男子の施設内で、このたび施設に勤務する人からもヒアリ
ングをしたんですが、施設内で小学校 5∼6 年生の男子が、4∼5 歳の男子に性行為をさせて
いるというような例もあり、男子同士での性的虐待が負の連鎖を起こしているということ
が起きています。そういった子どもたちは家庭内から保護されてきたわけで、家庭で保護
される寸前、どういう状況だったかといいますと、親の性行為を見させられていたという
ような報告が上がっているそうです。そして、自分が施設に入ってきたときに、4∼5 歳の
ころに、5∼6 年生の、性行動を開始するような、性的に発達を始めた学年のお兄さんたち
に性行為を、オーラルなものとか、いろいろ強要された経験があって、自分が性的な発達
を遂げた年齢になりますとまた繰り返していくという非常に暗い報告をこのたび受けまし
て、家庭内から出れば、保護されれば性的虐待がないのかというと、そうではない場合も、
そこで新たな虐待の連鎖があるというショッキングな報告を受けました。
心理的虐待が 12.8%から 15.6%で、こちらは高校生からもたくさんの報告があります。
身体的虐待は 2∼3 歳児が非常に多かったり、保育園であざが見つかった、小児科が、殴ら
れた傷を見つけたという場合が多いんですが、性的虐待、心理的虐待になりますと、中学
生、高校生からも報告があるということです。虐待者は実母が 6 割、実父が 2 割、実父以
外の父、内縁の夫とか交際相手が 6 割から 7 割、実母以外の母であったり、そのほかの人
物、男性、女性限らず、性的虐待が親戚の男性からという例もあったりします。被虐待児
の年齢が 0 歳から 3 歳が 20%前後、3 歳から学童が 26 から 29、30%未満ぐらい、小学生
が、身体的虐待、性的虐待、精神的虐待ということで、小学生が非常に多いですね。乳幼
児虐待が、若年出産とのことで、メインはそちらのご報告なのですが、全体像としてはこ
んな分布図になっております。
11
虐待死ですが、非常にショッキングです。平成 16 年に虐待死した 58 人の子どものうち 0
歳児が 24 人でした。全体の約 4 割が、虐待死の場合は 0 歳児でした。58 人のうち約 8 割
が 4 歳未満でした。死に至る虐待は 4 歳未満が 8 割であるということです。0 歳児 24 人の
うち、生後 4 カ月未満、一番産後うつが出るときでもあります。マタニティブルーズとい
うのは産後 2∼3 日目、わけもなく、ホルモンの分泌のバランスで涙がポロポロ出るという
のがあるんですが、産後 6 週間目ぐらいから、大体 4 カ月から 6 カ月の間に産後うつが発
症してくる率があります。現在の厚生労働省の報告では 13.4%から、12.8%が 2005 年の産
後うつの現状です。成人の、若年の出産でなくても、産後うつが全体の 13%ですので、若
年で望まぬ妊娠であったらなおさらのことと思います。生後 1 カ月未満の死亡が 8 名です
ので、虐待死の 58 名のうち、生後 1 カ月未満で 8 名が死に至っている現状です。8 名中 7
名が妊娠届を出していない出産でした。無介助出産ですね。自宅とかいろんな施設で産み、
直後から数日の間に殺害しているという報告があります。
虐待する親の動機ですが、よく聞かれるものだと思います。養育拒否、ネグレクトとか、
面倒くさいとか、育てる気がない、妊娠するつもりはなかった、望んだ妊娠ではなかった
というのが非常に高いです。10 代で望んだ妊娠だった率は、虐待のレポートですとゼロに
近いです。虐待をしている方々の中で、望んだ妊娠でしたか、望まない妊娠でしたかとい
うレポートになりますので、虐待をしていたグループからは、10 代は、望まなかったとい
う声しか上がらない仕組みです。酒乱や優越性誇示、八つ当たり、憂さ晴らし、嫉妬、恨
み、夫が娘だけをかわいがるということで、娘を虐待するというような幼児性に富んだも
のもございます。
人格障害による虐待もございまして、産後うつによる虐待もございます。若年だけでな
く、高年初産婦さんからの虐待の報告も少なくありません。あとは双子とか早産が虐待リ
スクとして、産婦人科領域では若年出産も虐待リスクですが、双子の場合、三つ子の場合、
不妊治療の結果、ホルモンバランスが崩れているという経過もあるかもしれません。若年
だけではない、うつの場合もございます。
親の共通点は、親が子ども時代に親から愛されて保護された経験がない。わが子に対し
て不正確な認知、この子は私が産んでやったとか、いなくてもいいんだと不正確な認知を
している。家庭内にストレスがある。特に経済面ですね。貧困家庭で困窮している状態で
す。不就労な状態があります。体罰を適切なしつけの手段と見ている。これはしつけだと
いう認識で行われているということです。
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母親が子どもを見る場合、1973 年のナーシングトゥデー、母性看護学のクランセン博士
の「母親のエネルギー」という論文の中にあった図ですが、母親が子どもに無条件にエネ
ルギーを注ぐには、家族のサポート、専門家のケアの介入なしには絶対成立しないんです。
人というのは、たった一人で、未来の人間を 20 年間、一人の責任で育てることは精神的に
も困難ですので、このようなことが基本的に、エネルギーの循環は必要です。尊敬と理解、
サポートやケアの水路が途絶えてしまっていれば、若年に限らず虐待のリスクはある。無
償の愛を注げずに、条件つきの愛になる。泣きやむならごはんをあげよう、泣くんだった
ら叩くというような条件つきの愛になってしまうことがあります。
現在の行政の対策が、従来型の子ども家庭センター、先駆型、小規模型ということで、
お配りさせていただきました A4 の書類で、子ども家庭支援センターの事業の概要というこ
とで、中野区からいただきましたが、都の方から、子ども家庭支援センター事業のあっせ
んといいますか、こちらの発展のために取り組みがたくさんあるとのことでした。こちら
は説明は割愛させていただきます。
地方都市では、先ほどの駒ヶ根市のように、子ども課として窓口が一つになって、継続
的に深くかかわっていこうという試みが増えております。都内では、中野区は直接伺って
ヒアリングしてきたんですが、子ども総合相談窓口を開設し、母子手帳から、児童手当の
交付から、予防接種の申し込みから、保育園の申し込みから全部、窓口が一つになってお
りまして、どのような夫婦関係のご家庭か、どのような就業状況か、子どもの状態がどう
か、保育園に入れる時期をもっと早くして、母親と子どもを隔離してあげた方が虐待のリ
スクを防げるのではないかということを一つの窓口で把握をするというルートをつくって
いるということでした。教育委員会は別ですが、妊娠届が出れば、ここでほとんど、虐待
を未然に防ぐために特別な支援の体制が早めにできるということでした。
保健所の対策の具体例としましては、先ほどお伝えしました釧路市が斬新な活動をいた
しまして、保健所が、10 代の高校生、中学生の保護者たちを啓発し、高校、中学を全校回
り、学校の先生方と共同で生命の学習をし、沐浴の練習を男子高校生にさせるということ
で、生命誕生から、性感染症防止や避妊教育まで徹底的に行うことをしているそうです。
2002 年の段階では 27.9、1,000 人のうち 27 人が中絶の経験があるという数字を、2 年間で
20 人に減らしたということです。現在も中学で週 1 回計 10 時間、生命誕生から性感染症
防止教育まで取り組んでいるというのが釧路市で、今、釧路市の例が、全国の市区町村の
保健センターに好影響になって、活動が始まっています。
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産科施設の対策ですが、皆様もご存じのとおり、産科医が非常に減少しておりまして、
50%以上が 51 歳以上という現状がございます。産婦人科の医局に入局する学生が非常に減
っておりまして、医師免許を取られる方、年間 8,000 人いるんですが、産婦人科は 300 名
のみしか入ってもらえず、そのうち 6 割が婦人科志望の方々ですので、産科医が非常に減
少しているのが問題でありまして、少ない医師でたくさんの出産をとり上げていくので、
10 代の方々の心のケアや、生活支援や、就労支援や、産後の支援までは手が回らないのが
現状です。特別な専門家が必要である、継続的にかかわる専門家が必要であるという報告
や研究が今なされています。2004 年あたりから、10 代の妊娠出産支援マニュアルが配布さ
れ始めました。人工妊娠中絶実施前後における心のケアに関する指導マニュアルも作成さ
れましたので、スタートしたばかりというのが全国的な現状でございます。
出産施設は 6 種類、日本はあるんですが、その中でも、やさしい出産が行われるように
していくのが大切であるということで、A3 の資料に、WHO 世界保健機関が 1986 年に出
しました、過剰医療介入は女性の心を傷つけて産後うつの要因にもなりますし、母乳が出
にくくなったり、必要以上にハサミを入れたりお薬を入れたりする出産ですと、その後の
産後の女性の精神が不安定になったり、自己肯定感が低くなったりするので、本来の生理
的な出産力を高めようというガイドラインが出ております。85 年に勧告が出まして、96 年
に適正な産科ケアのガイドラインが WHO から出ましたので、どういったものかをこちら
に参考資料としてお配りしました。10 代も、アメリカのシカゴですと 10 代の出産が多いん
ですが、「ドゥーラシステム」を設けておりまして、シカゴシティは、妊娠中から 10 代の
妊婦さんたちを集めて、ドゥーラという、出産中にずっとつき添うサポートシステムがあ
ります。実際の親がサポートしてくれなかったりする人たちなので、出産中もずっとつき
合って、産後もずっと訪問するドゥーラシステムというサポートが始まっております。10
代でも帝王切開率を高めずに、自然分娩をさせよう、母乳がよく出るようにしようという
試みが始まっています。
「胎児を出してあげればいい」というケアではなく、心をきちんと
ケアして母として少しずつ母親化していくためにも、自然分娩や母乳育児の支援は大事で
あるという意向が WHO の方にあるということです。
若年出産の虐待防止策としてですが、私の方でいろいろな資料からまとめました。
まずは望まぬ妊娠の予防が第一です。予防教育の充実化です。今は各市区町村の保健セ
ンター主導が一番多い例として見受けられますが、こちらも学校教育の方できちんとした
連携が必要だと思います。
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保護者たちの啓発、地域での連携ということで、いままで保健センターのネットワーク
や、中学校の養護教諭のネットワークはあったのですが、保護者たちのネットワークがい
つの時代でも不在でした。中学校は 3 年間しか通学しませんし、高校も 3 年間しか通学い
たしませんので、私たち誕生学協会で、保護者のネットワークをつくろうということで、
助産師や保健師の皆様、学校の教員の皆様と連携をして、親たちの勉強会などを定期開催
していくような非営利法人を立ち上げております。
妊婦検診、出産準備教育、両親学級は増加していますが、10 代向けの両親学級だったり
出産準備教育が特に行われておらず、20 代、30 代の妊婦さんたちと混合なので、自分だけ
が強い不安があるということも報告できない現場があるという報告があります。このあた
りも、保健センターの方で若年出産クラスをつくるなどしたら虐待を未然に防ぐことがで
きるかと思います。
妊娠して、産むという決断をしている若年妊婦に対しては、妊娠中からのかかわりが不
可欠です。産科施設に求めても、医療介入で忙しいので無理です。精神的支援などは、出
産の医療の人たちに求めても無理です。助産師、専門職の継続ケアシステムの確立が求め
られています。今、潜在助産師と言われる育児中のため夜勤ができずに、出産の分娩介助
ができない助産師たちが、地域にたくさん登録しています。母乳育児支援で新生児訪問を
したり、そういった登録制の助産師の皆様を活用して、もっと長きにわたって若年妊娠・
出産の継続支援ということもできるのではないか。10 代で親御さんになった若者を長きに
わたって、子どもが小学生になったときも精神的虐待をしないようにするため必要です。
親が温かい子ども時代を経験していない場合は、若くして親になった人のその親がわりと
して、マザーリングマザーとして、ファザーリングファザーとして継続的にかかわる体制
がどうしても欲しいというのが、このたびヒアリングした中野区の係長の方もおっしゃっ
ていました。
良質の出産体験の提供は、WHO の推奨するガイドラインに添うことが大切だと思います。
乳児の虐待防止、育児支援、DV 支援ということ、産後うつになるということもあります。
産後のケアは、産後うつの防止とともに児童虐待、長きにわたって精神的虐待になるのを
防ぐ。経済的な自立支援、就労支援、ピアサポートで、10 代の若年出産の方々は、就労支
援があるともっと虐待リスクが減るであろうという研究報告が多くなされています。
今お伝えしたことが、N 区と S 区は産婦人科施設の連携を強化したいということで、各
施設から要望をいただいてまいりました。
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長くなりましたが、私の報告は以上とさせていただきます。ご静聴ありがとうございま
した。
○前田部会長
どうもありがとうございました。ご質問を受けながら、いままでのご議論
になるべくつなげてご意見を伺ってまいりたいと思いますが、非社会化にもちろんつなが
りますし、非常にショッキングなデータといいますか、いろいろなお話を伺えたわけです
が、今のご説明で質問とか、わかりにくいところとかございますでしょうか。どの委員か
らでもよろしいんですが。
私も犯罪の関係から、10 代の中絶の数字はずっと追っかけていますが、ここのところ急
速に減ってきているんですよね。これは何か原因みたいなものというのは、我々はよくわ
からないんですが、少年の非行の減ったのと、全体の犯罪も減っているんですが、その流
れと、ある意味で非常にパラレルな感じで 10 代の中絶が減っているということですが、産
科とか、そういう世界で、最近の動きについて分析したものはあるんですかね。
○大葉委員 緊急避妊ピルの普及が始まりまして、妊娠の可能性がある性行為の後 72 時間
以内に服用しますと、受精卵の着床を防ぐことができます。中用量ピルの投与が実際には
進められている現状がありまして、中絶以前に、受精卵の着床を防ぐ中用量ピルの普及も、
中絶率低下の要素という報告があります。
○前田部会長
ピークが 2002 年で、3、4、5 と減ってきているんですが、ピルを使うよう
になったのは 2002 年ごろからということですね。
○大葉委員
日本でのピルが解禁してからの正しい年度は忘れました。中用量ピルという
のはふだんから服用しておくピルとは違いまして、コンドームが破けてしまったとか、無
理やり性交されてしまったという場合に、若年の方以外にもいろいろいらっしゃった場合
に処方されるものです。そういうケアが始まっているという知識が普及している経過もあ
ると。家族計画協会の北村邦夫先生からの報告を受けたことがございます。
○前田部会長
ありがとうございました。ほかにご質問とかご意見とか、いかがでしょう
か。
○加藤副会長
ありがとうございました。虐待のことはよくわかったんですが、報告して
いただいたような 10 代の親の虐待ということのほかに、非常に規範意識の強い親たちによ
る虐待が多いと聞くわけですが、そこら辺との関係はどういうふうなんでしょうか。
○大葉委員
きょうは若年の出産とのかかわりということで、育児疲れであったり育児ス
トレスであったりとしたのですが、若年に関係なく、虐待の中で多いのは、「よい育児をし
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なくてはならない」というストレスによる、“母親の生まじめさ”からくるような精神的な
圧迫感とか、高圧的になっているという状況の報告も非常に多いです。
○加藤副会長
虐待者の中に、実母とかいろいろあったんですが、基本的には、報告され
た中に、そのことも含まれているということですね。
○大葉委員 はい。
○加藤副会長
それはかなりな数になると聞いているんですが、虐待依存症というんでし
ょうか、虐待しないではいられない、本人自身は虐待するつもりはないし、虐待が悪いと
いうことも承知していながら、どうしても虐待してしまう。そこら辺は 10 代の母親という
よりも、むしろ 30 代、40 代の母親。
○大葉委員
高齢出産の場合は二極分化しておりまして、産後うつになるタイプと、待ち
に待った子どもだといってかわいがって、順調に母親化していくタイプとあるんですが、
虐待が多いのも 20 歳から 25 歳ぐらいのグループ、25 歳から 29 歳までのグループと万遍
なくあると報告されています。特に母親の性質的なものという報告が多いので、年齢要因
だけには限らないです。
10 代で出産しているケースの中でも、非常にうまくいっているケースも多くあるという
報告を受けておりまして、中野区でも杉並区でも 10 代の出産が年間 10 人から 15 人いるん
ですが、親御さん世代がしっかりかかわってきているので、せっかく授かった生命だから
育てようということで、むしろ虐待は少ないという報告がありました。10 代で出産を決断
しているグループは覚悟が決まっているという部分がありますので、精神的に弱くなって
きたら親のサポートが入って、子どもと離れる時間を獲得できたり、そういうことが可能
になっている報告が多かったです。
○加藤副会長
○西村委員
ありがとうございました。
質問というよりも感想になりますが、この種の調査は極めて難しく、なかな
か聞けないご報告で、数字に裏づけされた分析がなされ、最後に適切なご提言をされてお
り、非常に感心いたしました。
犯罪もそうですが、若年者の妊娠も減少しているとのことは、いろいろな対策が進んで
いることで、大変心強く思いますが、さりながら、やっぱり多い割合で、放置できない問
題であります。
韓国に行きますと、儒教的なものもあり、日本の若者の状況をフリーセックスみたいな
言い方をする人があり、大変恥ずかしい思いをすることがあるんですが、考えてみると、
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残念なことですが、こういう状況になるのも当然な面があります。
いろんな状況がこういうものを生んでいるわけで、前回の話があったように、親子のコ
ミュニケーションの欠如と無関心。雑誌やテレビや漫画でこれでもか、これでもかで、露
骨な刺激的な表現が繰り返され、インターネットの出会い系サイトなんかでは、このよう
な行為が遊び感覚で進んでいますし、若年者、特に若い女子学生が、金になる、商品にな
るということで、あの人もこの人もやっているのかと、罪の意識がなくなってきておりま
す。
また、生命の問題や感染症の知識が欠如しており、若い人が夢中になれるものがなく、
健全な遊び場がないことなど、いろいろな要因が、この状況を生んできたと思います。
最後のご提言にあったように、いろいろなところで、いろいろな努力を着実に積み重ね
ていく以外には対策はないように感じました。ご報告を大変感心して聞かせていただき、
ありがとうございました。
○篠崎委員 いろいろと示唆に富んだ話をどうもありがとうございました。10 代の早い妊
娠が、その後、社会的に排除される存在になり得るという点において、この部会にとって
役に立つ話だったと思います。
私は専門外ですので、かなり基本的なことを、大葉委員と前田部会長にもお伺いしたい
んですが、10 代の妊娠とか中絶の有無ということと、青少年の犯罪との関連についてです
が、全く知らないので教えていただきたいんですが、日本においては、中絶率とか 10 代妊
娠率と、若年の犯罪率との間に、正の関係でも負の関係でもいいんですが、関係みたいな
ものがあるんでしょうか。すごい基本的なことですが、教えていただければ。
○大葉委員
犯罪との関係はよくわからないんですが、大人の社会の投影図が、子どもた
ちがまねていく社会だと思っていますので、いじめもそうだと思いますし、日本の場合は
40 代の避妊がおろそかにされていて、40 代の望まぬ妊娠が多いということもいろいろ影響
していると思います。日本は、家族計画協会の報告によりますと、全ての日本人女性です
と、17%の大人が中絶経験がある、そのうち 33%が 2 回以上経験があるという報告が厚生
労働研究で上がってきています。
その中でも、15 歳から 49 歳までの調査をした中で、いままで望まぬ妊娠もしたことがな
いし、結婚相手と順調に性的関係を結べているし、虐待の芽も出なかったという、セーフ
セックスができていて、育児も順調にできていてという方々にヒアリングをしたところ、
ある特徴が一緒だったと結果が出ています。それはどういうことかというと、10 代のとき
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に、自分が反抗期のときでも「親がしょっちゅう話しかけてきていた」という記憶がある
人たちは、望まぬ妊娠をもちろんしたことがないんですが、その方々は性行動開始年齢が
有意に遅い、18 歳以上であるということと、性行動を開始したときに、最初からきちんと
避妊を実行したというところと、交際相手と性行為に入るまでが、有意に 3 カ月以上の交
際期間を経てから性行為に入っていったというのが、望まぬ妊娠をも避けることができる、
セーフセックスをしてセルフケアができる世代の家庭生活の特徴であるというデータが出
ています。これから見える犯罪率との関係性からすると、親がしょっちゅう家で、
「お帰り。
おなかすいた?」とか、思春期で「別に」しか言わないような時期でもしょっちゅう話し
かけていたということがデータで明らかになりました。私も参加させていただいた研究会
がありまして、平成 15 年の厚生労働研究で、
「親子のコミュニケーションスキル向上に関
する研究」がありました。親子がたくさん話をすればセーフセックスが可能になっていく
ということで、それがもしかしたら、子どもが非行に走ろうかというときにも歯止めにな
っているのかもしれないという関連性は今、ご質問を受けて思い出しました。このあたり
しかわかりませんが。
○前田部会長
妊娠中絶と少年少女の犯罪ということですが、純粋に科学的な立証という
ことではないんですが、推定されるのは、10 代の妊娠中絶率は 1975 年まで横ばいなんで
すね。そこから上がり出してきて、90 年代から急速に増加していく。大人の妊娠中絶に対
して割合が 10 分の 1 ぐらいだったんですね。それが今、全平均と 10 代の平均値が同じに
なった。それが一番ピークの 2002 年なんですね。
ということは、20 代もいれば、女性というときに、出産可能年齢の平均値ですが、30 代、
40 代もまぜたとき、10 代のほうがある意味では高いというか、ものすごい勢いで増えてい
たのが、3∼4 年前から落ち出した。驚異的なカーブを切っているんですが、それと一番近
いグラフは犯罪率、特に少女の犯罪率、少女はずっと横ばいだったのが、ある時期から、
少年犯罪の中でも、少女は増え出すのが遅れるんです。いろんなデータで、これは感覚的
な、数学的な分析じゃなくて、増加の時期と重なり合いがあって、ある程度の相関がある
と推定されるという程度ですね。
性犯罪とかではなくて、少女犯罪の一番多いのは窃盗であり、ちょっと落ちて恐喝とか
になってくるんですが、推定されるのは、男の子が非行に走るのに、女の子は抑えてきた、
何となく社会的な抑圧とか規範意識みたいなのがあって、女の子らしさというのがあった
んですが、だんだんそういう呪縛が取れていって、まだ男対女の比率は男の方が多いわけ
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ですが、男性に近づいてきた。ある意味で男女共同社会のあらわれでもあると思いますが、
その中で妊娠中絶の割合の増加は、少女の中の規範の溶解みたいなものと無関係ではない
のかなと思っています。ただ、統計学的に完全に証明されているということではないとい
うことです。
○篠崎委員 前田部会長と大葉委員のお話はこういうふうに解釈してよろしいんですか。
例えば犯罪に走りやすい家庭環境にいることと、10 代で妊娠しやすい家庭環境にいると
いうことはある意味同じことであって、それがあたかも関係があるように見える、10 代の
妊娠と少年犯罪との間に関係があるように見える原因になっていて、根っこのところにあ
るのは家庭の環境だという解釈でよろしいですか。
○前田部会長
そこも証明は難しいと思いますが、妊娠しやすいような家庭の子が犯罪を
犯しやすいということもあるかもしれないけど、それを取っ払ってもっとマクロで考えた
ときに、社会的な規範みたいなもの、規範というのは家庭を通して入ってくるから家庭が
一番大きいのかもしれないんですが、そういうものの崩壊というのは大きいと思います。
それと同じなのは、少年非行にとって家庭が決定的で、少年院に入る率は、母子家庭は
普通の家庭の 5.5 倍、父子家庭は普通の家庭の 11 倍、そういう家庭に育つからというので
はなくて、母子家庭の方が経済的に劣悪であるとか、社会的に虐げられているとか、父子
家庭であればしつけが行き届かない。いろいろな問題の総合した結果、そうなると思いま
すが、だから母子家庭が悪いと言ったら大変なことになるし、父子家庭だって立派に育っ
ているお子さんもいらっしゃるわけで、そこはもちろん注意しなきゃいけないんですが、
そういう因果のいろいろな組み合わせの中で、アウトプットとして、高い非行率が出てく
るということはあると思います。
どこにどういう力で働きかけるのが一番いいのかというのは非常に難しい問題で、母子
家庭を経済的に安定するように、福祉を充実させれば母子家庭の犯罪率が減るというのは
もちろんそうですね。ただ、そうならないような社会規範をつくっていくことも大事だと
か、いろいろなことがあって、まさに今回の問題も、10 代で妊娠すると虐待があったり、
それがまた非行化につながっていく因子になっていくだろうということは推定できるけれ
ども、どこをどう抑えていけばいいかというのは非常に難しいところだと思います。
○加藤副会長
大葉委員への質問も含めてですが、一般的に言うと、虐待をも含めて肉体
的な体罰があったときには、社会に対して敵意を持つと考えられているわけですね。
そうすると、虐待は増加している。現実に 33 倍かどうかは別として、報告だけですから、
20
おそらく実態としても虐待は増えているだろう。それに対して少年犯罪の方は減っている。
○前田部会長
一時期増えて。
○加藤副会長
増えたんだけど、虐待が急増したのに比べれば。
○前田部会長
まだ上がっていないわけですね。じゃ、トレンドが違います。
○加藤副会長
トレンドが違いますよね。いままで言われてきた、虐待とか肉体的な体罰
が社会的敵意をもたらし犯罪につながらないかと解釈すると違ってくるんじゃないかと思
います。
トレンドが、犯罪と虐待とが違うんですが、虐待されたところの敵意としては生じてい
るんだけれども、それが社会に向かない。もっと言えば外に向かない。自分の方に向いて
しまう。そうすると、小学生の 1 割がうつだとか、中学生のうつが増加しているとか、少
年たちの犯罪率は減っているけれども、心理的病の方が増えている。敵意が社会に向かな
いで、自分の方に向いていると解釈すると、虐待は増加しているけれども、少年犯罪率は
それほど増えていないということの説明はできるし、おそらくそうではないかと思うわけ
です。したがって、望まぬ妊娠の予防が具体的にどういう施策が考えられるかということ
を伺いたいんですが、かなり難しいことだと思います。
非常に抽象的な言い方ですが、出典が、どの本とどの調査というのがわからないんです
が、アメリカで性のことを勉強していたとき、避妊具を持ち歩いている若い女性と、持ち
歩いていない学生の自己評価の調査があったんですね。避妊の準備を常にしている女性の
方が自己評価が低い。セックスに対して、自己評価の高い方は対象がはっきりしている。
したがって望まない妊娠は起きない。ところが、自己評価の低い場合には対象無差別です
から、望まぬ妊娠が起きるんだということで、望まぬ妊娠の予防は非常に大切で、抽象的
には、それぞれの女性が自己評価を高めると言えるんですが、具体的に行政がどういうこ
とをやったらいいかとなるとちょっと難しいんですが、そこら辺で具体的なことがあるも
のでしょうか。
○大葉委員
例えば高校で行われている、望まぬ妊娠の防止の教育などはいろいろなパタ
ーンがございまして、助産師が学校を訪問して、コミュニケーションに関して、こういう
ふうにされたら嫌ですよねとか、女性と男性の性の発達段階が違ったり、求めるものも違
ったりしますので、助産師が、男子の性欲のことを女子に説明したり、女子が体を求めら
れるような交際になっていくときに、本当に自分の人生を大事に思ってくれているからで
はなくて、はけ口的なルートもあるのかというような説明を大人から受けたことがある女
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子と、受けたことがない女子では、セクシャリティの構築が全く変わってくると思うんで
すね。
私も自分の子どもたちが、5 学年分おりまして、いろいろな家庭のお子さんたちがクラス
メートにいらっしゃるんですが、きちんと伝える親のグループと、全く何も伝えないで、
夜もお酒を出すような経営をされているようなご家庭だったりすると、夜も家庭にだれも
いなくて、お嬢さんたちがさみしいから、先ほど先生がおっしゃったような不特定多数で
すよね、だれかが自分を誘ってくれたら、その人とそうなるかもしれなくてということで
避妊具を持ち歩いている現状を聞いたりします。女子と男子では、教育は全く別のものが
必要であろうし、親が支援体制であるかないかによっても違うプログラムを提供しなくて
はいけないです。どなたも、中絶がしたくて妊娠をする人はゼロなので、避妊を本人はし
ているつもり、でも、失敗してしまっているというのが現状なんですね。「一度中絶してみ
たくて妊娠しよう」という人は 0 人なので、正しい避妊の方法を知らないということもあ
りますし、避妊具を使わないということでも、外で出せば妊娠をしないんだとまじめに思
い込んでいる女子学生もまだいっぱいいますので、その認識に合わせて、地域性や家庭環
境の違いに合わせてということで、多種多様な地域ごとに高校生の妊娠防止教育は行われ
ていると思います。
うちの娘は都内の都立高校に行っているんですが、男性の先生がいらして、女子と男子
と一緒の教室で、「きょう、こんな性教育があったよ」と報告を受けたんですが、長野県の
ものであったり、釧路市のものとは全く違うものでありますので、今、コンセンサスがな
いのが現状ですので、各地域ごとに、どういうものがどういった経過を出せたかを持ち寄
ってコンセンサスをつくっていけば、もっと減らすことができるのではないかと思います。
○加藤副会長
人工妊娠中絶は増えていないけれども、性の低年齢化は進行しているとい
うことだと、性教育がそれなりに成功していると考えていいんでしょうかね。
○大葉委員
性教育も今すごく差がありまして、全くやっていない学校と、すごく熱心な
養護の先生がいれば、その子どもたちはすごく熱心な授業を聞けるのが現状でございます
ので、学校ごとに違う、地域ごとに違うのが現状であるかと思いますので、中絶数が多い
地域は、その子どもたちが、そういった学校環境の集団教育の中で、どのようなプログラ
ムの受講経験があるかないかということはデータで解析できると思うんですね。そのあた
りは取り組んでみる価値は非常にあるかと思います。
地域性とか、親の就業の体制とか、専業主婦が多い地域とか、10 代でも、昼間にボーイ
22
フレンドと家に帰って来ても二人きりになる場がないとか、いろいろな要因があるかとは
思います。増加率は減っているかもしれないんですが、全体の妊娠数は常に同じ方向にあ
ります。緊急避妊ピルのネットワークが産婦人科医の中で組まれたことによって、だれも
が中絶したくて妊娠を望む人はいないので、避妊をしたつもりだったけど失敗に終わって
いるということで、急いで産婦人科に行った場合に、着床を防ぐ緊急避妊ピルを処方され
ることで中絶が減っているのかもしれないと思っています。実際に妊娠リスクが減ってい
ることと直結してみてとれるかどうかは、今はまだわからないなと思っています。性行為
があって妊娠をしていないのか、性行為自体をしていないのかということがまだわからな
いというのが現状です。厚生労働研究の中にはないですね。
○加藤副会長
非社会性との関係でいうと、虐待されている子どもは反社会的になると考
えた方がいいかと思います。
26 期の青少年協議会が少年院のことをやったとき、少年院関係の視察をさせていただい
たんですが、そこでいろいろな施設、学園に伺ったときに聞いた話で、ここに来ている方
で虐待の経験があるのはどのぐらいですかと伺ったら、半数以上は虐待を経験していると。
虐待されることと犯罪とが、その施設で見る限り関係しているように思うんですが、非
社会性の問題として、この問題を考えるときには、むしろ虐待よりも性の低年齢化という
ことの方が問題だと思うんです。
どのぐらい性の低年齢化が進んでいるかというのは、先ほどのを見ますと、かなりの勢
いでふえていますね。だから、高校 3 年生の女性の性体験が増えているんじゃなくて、ど
のぐらいまで低年齢化しているかというような数字はあるんですか。
○大葉委員
14 歳以下の中絶の数の増加は数字で出ています。14 歳以下が妊娠に至るほど
の性交回数が多いということもあろうかと思いますし、経験率ということでは、中学 3 年
生の経験率までは、性の健康医学財団が出しておりますが、1980 年代でしたら全くなかっ
た層が経験をしているということですね。
小学校高学年の子どもたちが読むコミックが、近親相姦が扱われていたり、学校内の体
育館で性行為をするとか、初めて入った知識が常識化するというのは大人でもよくひっか
かってしまう部分だと思いますが、子どもたちにとって初めて出会う性に関する知識が、
最初から心と心のコミュニケーションなどは不在のものであったりすることで、こういう
ものなのかと。性のエネルギーが高まってきて、9 歳から性腺刺激ホルモンの分泌が始まり
ますのは、昔だったら 15 歳で平均初産年齢があったころというので、世界平均で 9 歳から、
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女性は排卵が始まるための準備が始まり、男性は精子が製造されということで、9 歳からア
ンドロゲンとかテストステロンとかエストロゲンの分泌が始まるわけですね。そういうと
きに体の変化を解説してくる親のサポートがあったか、大人の教師の皆さんでもサポート
があったかないかというのと捉え方が全然変わってきてしまうので、10 代の低年齢化のと
ころも、今、経験していますかと言っても、「しています」というデータはとれないと思い
ます。実際に出ている実数は、14 歳以下の中絶の数の増加です。
あとは 12 歳の出産のレポートなどが、インターネット上の研究報告の中にもありました
し、私も仕事柄、産婦人科医のネットワークが多くあるんですが、11 歳、12 歳の出産もご
ざいます。親が気がつかない。どうして臨月までいって、腹囲が 80 センチから 90 センチ
ぐらいになるまでおなかが膨らむのに気がつかないのかなと思いますが、無関心なんだと
思います。小学 6 年生の出産も、日本では実際には、そんなにすごい数ではないですが、
あるんですね。14 歳以下の出産が年間 40∼50 件あります。
○加藤副会長
ありがとうございました。
○前田部会長
ほかの委員の方、いかがでしょうか。何かご意見があれば。
非社会化という意味では、性の低年齢化というのは重要だと思うんですね。我々はどう
しても中絶の方にいっちゃうんですが、低年齢化で、厚労省の場合でも、中絶の方は問題
だけど、低年齢化するのは仕方ないことだから、いかに避妊教育をするかという方向の議
論は多いんですが、性交渉の低年齢化が、非社会化という意味でどういう問題をもたらす
かですね。
○内山委員 性交の開始は遅らせるべきだというのが最近、欧米でも結構指摘されていて、
早すぎるのはよくないんだ、なるべく遅らせようという形で、性教育はかなり熱心に、な
るべく早くから行った方がいいんだと。
広義の性教育は、人間がいかにして生きるべきであるとか、セックスをするかしないか
という自己決定をいつ自分がするべきかということを考えさせるわけですね。
東京都の教育委員会では、性教育のマニュアルをつくってやっているはずだと思います
が、そういうのがもうちょっと大きな声で言われるようにならないのかなと感じておりま
す。
○前田部会長
○内山委員
いろんなところでやっているはずですね。東京でもやっていますよね。
ええ。ただ、非常に過激な性教育がたまたま一例出てくると強烈にマスコミ
でバッシングされたりするので、全体的にはあまり望まれていないんだという風潮が学校
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の先生の間にあると聞いたことがありますが。
○増田委員 全体から感じることですが、私たちも PTA で、助産婦さんを迎えての研修会
にも、先ほど大葉委員がおっしゃった、人が人としての人権というか、お父さんとお母さ
んが愛し合ってあなたが生まれたことが本当に喜びだったんだ、生命が誕生したときにど
れだけの感動があったかということを子どもたちに伝えることによって、性ということが、
世の中に流れている常識ではないんだということに認識が変わっていくんだということを
保護者が聞いたときに、これはやっていかなきゃいけない、伝えていかなきゃいけないと
いう機運が高まりました。
性交渉が早くなる原因の一つに、さみしいとか、居場所探しとか、やさしさを感じると
か、低年齢化の中に、そういうものを求めていく状況が社会の中にでき上がってくる。例
えばコミックだったりテレビの番組だったりするような状況があるんじゃないかと感じま
すが、逆に、人と人との生き方の中で人を認めていく、あなたが大事だから、それはしな
い、そこまでは待つとか、そういうふうな環境なり、大人もそういうふうに考え方が変わ
っていくことによって、社会の流れ、子どもたちもそういう姿を見ていくことができるだ
ろうと思います。
育児は精神的支援が必須とあるように、人は一人で生きていけないんだというところで、
男性と女性が助け合っていく、そういう姿も必要なんだということを、私は保護者の立場
ですから、そういう家庭環境にできないけれども、これが大事なんだということを伝えて
いく、事あるごとにそういうことを語り続けていったり、地域でも、そういうことが大事
なんだということを語っていけるような社会づくりというか、それをつくづく思わされま
す。
暴走族が出たときも、自分を見てくれよと言って車を走らせて、こちらを見てほしいと
いう人のさみしさがあったりすると思うんです。出方が違うけれども、こういう形で心の
問題が出てくるんだろうというのを、この数字を見ていても、いろいろな報告を見ていて
もとても感じますので、そこのところを何とか政策的にできないかなと思わされました。
○前田部会長
○村松委員
ありがとうございました。村松委員、よろしいですか。
若年出産は児童虐待のハイリスクというのはおそらくそうだろうなと思いま
すが、今後の対策を考えていく上で一つ参考になるのは、若年出産してもうまくいってい
るケースがかなり多いというお話を伺ったんですが、そこはどのようにしてうまくいって
いるのかということをリサーチしていただくことも大事かなと思います。
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もう一つは、早期の妊娠でどういうことが起きているかというと、コミュニケーション
のスキルが性以外にないというところ、そこの基本的な取り組みといいましょうか、人と
親しくなるのにセックス以外にない、その悲しさみたいなものをどのように心理教育して
いくのかということが重要かなと考えております。
質問というよりは感想ですが。
○前田部会長
どうもありがとうございました。まだまだ話は尽きないとは思いますが、
非社会化の中で、きょう具体的にお話しいただいた、若いころからの性交渉の問題、それ
につながる児童虐待の問題、重要な非社会化のポイントだと思います。
先ほど申し上げた、少年院に入るような非行少年の典型的なパターンとか、中絶と少女
の犯罪率がと言いますが、そういういわば伝統的なもののほかに、非社会化の角度から見
ると、宮台委員がご指摘になったような過剰流動性から起こってくるような現象で、複合
的といいますか、決して一つではないと思います。
そういう中で、どういう問題について、この研究会として、特に非社会化を解きほぐし
ていけるか。あらゆる社会で起きているいろいろな問題を一まとめにしてというのは無理
ですので、次回あたりに、そこの解きほぐしの作業を加藤先生にお話をいただいて、今ま
でに非常に貴重な、今日の話も含めて、現在の問題点が出てきていますので、もちろん全
部糸ではつながっているんですが、今後、この会をどうつなげていくかということを、ぜ
ひ次回あたりに先生に整理をしていただくというか、ご発言いただければと思いますが、
よろしいでしょうか。
○加藤副会長
はい。
○西村委員 きょうは、家族の役割がテーマでありまして、加藤先生は青少年問題の中で、
特に家族、親子関係が大切と、先生が書かれたいくつかの本で随分力説されておられます。
私も読ませてもらいましたが、特に「子どもと心の通う親、なぜかスレ違う親」
、これは
2001 年に出された本ですが、その中でも、未成熟な親が大量に出現していて、親子の役割
が逆転しており、多くの問題発生の原因になっているとの、素晴らしい分析とご提言があ
りました。この問題の解決には、社会も、学校も、行政も、家族も、そして本人も、連携
して取り組むことが重要ですが、中でもキーは「家族」だろうと思います。
そういう点で、加藤先生にはぜひ、どこかの機会に一度、家族の問題、青少年問題にか
かわる家族の役割、問題と対策について、お話を聞く機会があれば、大変ありがたいと希
望を申し上げたいと思います。
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○前田部会長
どうもありがとうございました。それも含めてお願いしたいと思います。
次回の予定を。
○青山青少年課長
次回の専門部会ですが、8 月 2 日、木曜日の午後 3 時から予定をしてお
ります。今お話がありましたように、これまでの意見聴取の総括という形で、加藤部会長
から、若者の非社会性、反社会性ということについてご発表いただければと考えておりま
す。
○前田部会長
それでは第4回専門部会をこれで閉じさせていただきたいと思います。ど
うもありがとうございました。
午後7時41分閉会
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