全文情報 - 労働委員会関係 命令・裁判例データベース

広島、平6不 7 -2、 平 11.7.14
命
令
書
申立人
ジェーアール 西日本労 働組合
申立人
ジェーアール 西日本労 働組合広島地 方本部
申立人
X1
申立人
X2
被申立人
西日本旅客鉄 道株式会 社
主
1
文
被申立人 は、申立 人X 2に対し て、次の 措置を講じな ければな らい。
⑴
申立人X 2に対す る平成6年 10月28日付けの30日間の出勤停止 処分がな
かったものと して取り 扱うこと。
⑵
申立人X 2に対し て、同処分が なかった とすれば受け るはずで あった賃
金及び期末手 当の額と 既支給額の差 額相当 額 を支払うこと 。ただし 、本命
令交付の日ま での分に ついては、半 額を控除 して支払うこ と。
2
被申立人 は、本命 令交付後 、速やか に申 立人組合及び 申立人地 本に対して、
下記の文書を 交付しな ければならな い。
記
当社が、 貴組合に 所属する組合 員X 2に 対して、平成 6年 12月2日付け
で中国交通事 業株式会 社に出向発令 したこと は、不当労 働行為で あ ると広
島県地方労働 委員会に おいて認定さ れました 。
今後は、 このよう な行為を繰り 返さない ようにいたし ます。
平成
年
月
日
ジェーアール 西日本労 働組合
中央執行委 員長
X 48殿
ジェーアール 西日本労 働組合広島地 方本部
執行委員長
X49殿
西日本旅客鉄 道株式会 社
代表取締役 社長
3
Y 14
印
申立人ら のその余 の申立ては、 棄却する 。
理
第1
由
申立人 らの請求 する救済内容
申立人ら が請求す る救済内容の 趣旨は、 次のとおりで ある。
1
被申立人 は、平成 6年9月 28日付けで申 立人組合員X 1に対し て行った
- 1 -
減 給 処 分 、 同 月 27日 付 け で 同 X 3 及 び 同 X 4 に 対 し て 行 っ た 各 戒 告 処 分 、
同月29日付けで同X5 に対して行っ た戒告処 分、同月 30日付けで同 X6に
対して行った 戒告処分 、同月 27日付けで同 X 7に対して行 った訓告 処分並
びに同月29日付けで同 X8に対して 行った訓 告処分をいず れも取り 消さな
ければならな い。
2
被申立人 は、平成 6年 10月28日付けで申 立人X2に対 して行っ た出勤停
止処分を取り消し、処 分がなかったものとして取り扱わなければならない。
3
被申立人 は、平成 5年 12月8日付けで申 立人組合員X 6に対し て、同月
9日付けで同X 4に対 して発令され た 広島運 転所への各配 転命令を 取り消
し、これらの者を下 関 運転所運転士 として原 職復帰させなければならない。
4
被申立人 は、平成 6年2月23日付けで申 立人組合員X 9に対し て、同月
24日付けで同 X 10に対して、同月26日付けで 同X 11に対して、同月 27日付
けで同X12、同X 13、同X14に対して発令さ れた広島運転 所への各 配転命
令を取り消し 、これら の者を下関運 転所運転 士として原職 復帰させ なけれ
ばならない。
5
被申立人 は、申立 人組合の組合 員に対す る運転士登用 において 差別的不
利益取扱いを 行ったこ とを認め、これ を謝罪 し、今後このよ うな行 為を繰
り返さないこ とを約束 しなければな らない。
6
被申立人 は、申立 人X1に対し て、本件 減給処分によ り減額 さ れた賃金
8,230円を支払わ なけ ればならない 。
7
被申立人 は、申立 人X2に対し て、本件 出勤停止処分 により減 額された
賃金1,277,587円を支 払わなければ ならない 。
8
被申立人 は、本件 命令書写し交 付の日か ら3日以内に 、申立人 組合及び
申立人地本に 対して 、前記1から7 までに掲 げる項目及び 申立人X 2に対
する本件出向 命令に係 る陳謝文を交 付すると ともに、これ を掲示し なけれ
ばならない。
第2
認定し た事実
1
当事者
⑴
申立人
ア
申立人ジ ェーアー ル西日本労働 組合(略 称西労。以下「申 立人 組合」
と い う 。) は 、 被 申 立 人 西 日 本 旅 客 鉄 道 株 式 会 社 及 び そ の 関 連 会 社 の
社員等で組織 する労働 組合であり 、所属 する 組合員( 以下「申立人 組
合員」という 。) の数 は、平成6年 12月の本 件申立て時で 約 3,100人で
ある。申 立 人 組合 には 、地方組 織として 、申 立人ジェーア ール西日 本
労働組合広島 地方本部 (以下「申立人地本」 という。)、近畿 地方本 部
等8の地方本 部がある 。また、申立人組 合に は 35歳以下の 組合員で 組
織する青年婦 人部(以 下「青婦部」 という 。)がある。
なお、申立 人組合 は、全日本鉄道 労働組 合総連合会(以 下「J R総
連」という 。)に 加盟 している。
イ
申立人地 本は、被 申立人西日本 旅客鉄道 株式会社広島 支社管内 の申
- 2 -
立人組合員で 構成する 申立人組合の 下部組織 であり、平成 6年 12月の
本件申立て時 の組合員 数は約 800人である。
申立人地 本には 、広島支部及び 山口支部 があり、広島支部 には 広島
運転所分会等 9の分会 があり、山 口支部に は 下関運転所分 会、徳 山 運
転区分会、岩 国運転区 分会等9の分 会がある 。
ウ
申立人X 1は、被 申立人の社員 で、平成 6年 12月の本件申立て 時に
は広島運転所 所属の主 任運転士とし て勤務し 、同年8 月当時は 申立 人
地 本 広 島 運 転 所 分 会 ( 以 下 「 広 島 運 転 所 分 会 」 と い う 。) 分 会 長 で あ
った。
エ
申立人X 2 は、被 申立人の社員 で、平成 6年 12月の本件申立て 時に
は徳山運転区 所属の主 任運転士とし て勤務し 、同年 10月当時は 申立 人
地 本 徳 山 運 転 区 分 会 ( 以 下 「 徳 山 運 転 区 分 会 」 と い う 。) 分 会 長 で あ
った。
⑵
被申立人
被申立人 は、昭和 62年4月1日、 日本国 有鉄道改革法 に基づき 、日本
国 有 鉄 道 ( 以 下 「 国 鉄 」 と い う 。) が 経 営 し て い た 旅 客 鉄 道 事 業 等 の う
ち本州の西日 本地域に おける旅客鉄道 事業等 を承継して設立 された 法人
であり、肩書 地に本社 を置き、その 社員数は 平成6年 12月の本件申 立て
時で約48,000人である 。
また、本件 申立て 時には、広島支 社、米 子支社、岡山支 社、神 戸支社、
大 阪 支 社 等 10の 支 社 を 置 き 、 広 島 支 社 の 現 業 機 関 と し て 、 三 次 鉄 道 部 、
可部鉄道部、山口鉄道部、宇部新川鉄道部、広島運転所、下関運転所、
徳山運転区、 岩国運転 区等を置いて いた。
2
申立て前 後の労使 関係
⑴
申立人組 合結成の 経緯
ア
国鉄のい わゆる分 割民営化の過 程におい て、国鉄の関 係労働組 合が
再編される中 で、昭和 62年3月14日、西日本 旅客鉄道労働 組合(後 に、
西日本旅客鉄 道産業労 働組合となる 。以 下併 せて「西 労組 」という 。)
が結成され、 JR総連 に加盟した。
イ
平 成 2 年 ( 以 下 特 に 年 号 の 記 載 が な い 場 合 は 、 平 成 と す る 。) 6 月
19日、J R総連の 第5 回定期大会に おいてス トライキ権の 確立及び 委
譲に関する論 議が提起 され、西労組 内で賛否 が対立した。
ウ
2年10月29日から同年11月1日まで、東 日本旅客鉄道 株式会社 等が
開催した国際 鉄道安全 会議、J R総連が 主催 した国際鉄道 安全労組 会
議が開催され 、西労 組 側は両会議と も参加し たが、西労 組のZ1 委 員
長はいずれも 欠席した 。また、被申 立人側は いずれの会議 にも出席 し
なかった。
エ
3年2月19日、西 労組第9 回提 起中央委 員会で、Z 1 委員長は 、
「J
R総連との断 絶」発言 を行った。
オ
西労組組 合員のう ち、運転士(主任運 転 士及び運転士 をいう。 以下
- 3 -
同じ。)を中 心とした 、「JR総 連との断 絶」に批判的であ った組合 員
等 約 4,300人 は 、 西 労 組 を 脱 退 し 、 3 年 5 月 23日 申 立 人 組 合 を 結 成 し
た。また、こ れに伴っ て、申立人地 本が同年 6月6日結成 された。
カ
3年7月 、西 労組 はJR総連を 脱退し 、その後日本鉄 道労働組 合連
合会(略称J R連合) に加盟した。
キ
被申立人 は、その 他に国鉄労働 組合西日 本本部(以下 「国労」 とい
う。)、全国鉄 動力車労 働組合西日本 地方本部(以下「全動 労」とい う)
等の労働組合 が存在す る。
⑵
新乗務員 勤務制度 とブルトレ指 名ストに 伴う労使関係
ア
4年9月21日、被 申立人は各労 働組合に 対して、労働 時間の見 直し
及び運転士1 人乗務の 場合の1継続 乗務キロ の延伸等を主 な内容と し
た勤務制度( 以下「新 乗務員勤務制 度」とい う。)を 提案した 。
労働時間 の見直し とは、従来労働 時間と して扱われて きた待合 せ時
間の制度を廃 止するな どというもの であり、 運転士1人乗 務の場合 の
1継続乗務キ ロの延伸 とは、運 転士1人 が連 続して乗務す る距離の 上
限を従来の220キロメ ートルから 245キロメ ートルに延伸 するとい うも
の で 、 こ れ に 伴 い 、 223.4キ ロ メ ー ト ル で あ る 広 島 駅 と 下 関 駅 の 間 の
寝台特急に乗 務する運 転士がこれま での2人 から1人にな るもので あ
る。
イ
新乗務員 勤務制度 の提案後 、申立人 組合 及び被申立人 は、4年 12月
7 日 ま で の 間 、 延 べ 9 回 の 団 体 交 渉 ( 以 下 「 団 交 」 と い う 。) を 行 っ
たが、申 立人組合 は新 乗務員勤務制 度が労働 強化につなが るとして 反
対したため合 意に至ら なかった。
ウ
4年11月、申立人 組合はストラ イキ権行 使についての 批准投票 を行
い、ストライ キ権を確 立した。
エ
申立人組 合は、4 年 12月8日か ら同月 11日までの間、96時間ス トラ
イキを実施し た。
オ
4年12月、被 申立 人は5年3月 のダイヤ 改訂を各労働 組合に 、提案
したが、申立人 組合及 び申立人地本( 以下「 申立人組合ら」 という 。)
は、新乗務 員勤務制 度 が前提となっ ているも のであるため 、この 提 案
に応じなかっ た。
カ
この間、被 申立人 における最大 の労働組 合であり社員 の過半数 で組
織する西労組 と被申立 人は、新乗務 員勤務制 度については 4年 12月4
日に、5 年3月の ダイ ヤ改訂につい ては同年 2月 24日にいずれも合 意
した。
また、国 労と被 申 立人は、新乗 務員勤務 制度及び同年 3月のダ イヤ
改訂について 同年2月 23日に合意し 、全動 労 と被申立人は 、新乗 務 員
勤務制度につ いては同 年3月 18日、同年3月 のダイヤ改訂 について は
同年2月24日にいずれ も合意した。
キ
5年2月 8日 、被 申立人は 、申立人 組合 に対して新乗 務員勤務 制度
- 4 -
を盛り込んだ 就業規則 の変更を通知 し、同年 3月 18日から同就業規 則
を適用すると ともに、 同年3月のダ イヤ改訂 を実施した。
ク
申立人組 合は、5 年3月2日の 第5回中 央委員会にお いてスト ライ
キ方針を決定 し、同 月 12日被申立人 に対して 、各地方本 部に おけ る 波
状ストライキ 及び指名 ストライキを 実施する 旨の争議予告 通知を行 っ
た。指名ス トライキ は 、下関運転 所におい て 下関駅と広島 駅の間の 列
車等に1人乗 務する申 立人組合員運 転士に対 するもの(以 下「ブル ト
レ 指 名 ス ト 」 と い う 。) で 、 同 月 18日 以 降 当 分 の 間 実 施 す る こ と と さ
れた。
ブルトレ 指名スト は予告どおり 実施され 、同時に 申立人組 合は 、同
日に近畿地方 本部で行 ったストライ キを皮切 りに、各 地方本部 で波 状
ストライキを 実施し、 申立人地本は 同月 25日広島運転所等 で 12時間ス
トライキを実 施した。
ケ
ブルトレ 指名スト は、5年5月 12日に開 催された申立 人組合の 第6
回定期中央本 部大会に おいて、同年9月 30日 で有効期限切 れとなる 労
働協約の改訂 交渉まで 続行すること が決定さ れ、結局 、同年8 月 11日
までの147日間にわた り続行された 。
コ
広 島 支 社 ( 以 下 「 支 社 」 と い う 。) は 、 ブ ル ト レ 指 名 ス ト 期 間 中 、
申 立 人 組 合 以 外 の 労 働 組 合 ( 以 下 「 他 労 組 」 と い う 。) に 所 属 す る 運
転士、支社課 員、助役 等を代替運転 士に充て ることにより 、ブルト レ
指名ストに対 応した。
サ
申立人地 本は、ブ ルトレ指名スト の実施 に際して、その一環と して、
新乗務員勤務 制度の実 施後列車が正 常に 運行 されているか否かの確 認
や被申立人のブ ルトレ 指名スト対抗策 を監視 するなどの監視活 動と 称
する行動、申 立人組合 を脱退した運 転士に対 するブルトレ 指名スト ヘ
の協力要請や 申立人組 合への復帰を 呼びかけ るなどの説得 活動と称 す
る行動( 以下併せ て「 申立人組合員 の行動 」という。)を 実施した 。
「申
立人組合員の 行動」は 、勤務時間外の 申立人組 合員により実施された 。
シ
5年4月 9日に新 下関駅新幹線 上りプラ ットホーム上 において 、ブ
ルトレ指名ス トの代替 運転士に「 申立人組 合 員の行動」を行った 申 立
人組合員7人 のうちX 4(以下「X4 」とい う 。)、X 6(以 下「X 6」
と い う 。) ら 4 人 に 対 し て 、 支 社 は 同 年 5 月 19日 付 け で 訓 告 処 分 ( 以
下「X4らの 各訓告処 分」という 。)を 発令 した。
ス
5年5月17日に広 島駅4番プラット ホー ム上から広島運 転所運 転分
所入口通路ま でにおい て、ブルト レ指名ス ト の代替運転士 に「申 立 人
組合員の行動 」を行っ た申立人組合 員 10人のうちX5(以 下「X5 」
と い う 。) ら 5 人 に 対 し て 、 支 社 は 同 年 7 月 29日 か ら 同 月 31日 付 け で
訓告処分(以 下「X5 らの各訓告処 分」とい う。)を 発令した 。
セ
5年8月 4日にX 4らの各訓告 処分に係 る不当労働行 為救済 を 求め
る申立てが 、同年 11月 15日にX5ら の各訓告 処分に係る不 当労働行 為
- 5 -
救済を求める 申立てが 当地労委にな された。
ソ
10年3月11日、当地労委におい て、X4 らの各訓告処 分及びX 5ら
の各訓告処分 に係る不 当労働行為救 済を求め る申立てに対 して 、申 立
人らの請求を 認容する 命令が決定さ れ、同 月 24日、申立 人ら及び 被 申
立人に命令書 の写しが 交付された。
⑶
岩国運転 区設置時 における事前 通知書交 付前の労使関 係
ア
6年8月 当時、広 島運転所は、主 として 山陽本線(徳山 ~岡山 間)、
呉線及び芸備 線の一部 列車の運転に 従事する 運転士関 係と 車両(電 車
及びディーゼ ル車 )を 保守管理する 検修関係 の業務を主体 とする支 社
の運転関係の 現業機関 であり、このうち 運転 士関係者は運 転分所に 勤
務していた 。運転 分所 はJR広島駅 の北側に 位置する3階 建ての庁 舎
で、1階には所 長室、 事務室及び業 間訓練室 が、2階には指 導・運 転
当 直 室 ( 乗 務 員 の 出 退 勤 、 点 呼 等 の 実 施 箇 所 )、 乗 務 員 室 、 運 転 科 長
室及びパソコ ン室が 、3階には乗務 員休憩室 、乗務員 ロッカー 室( 更
衣 室 ) 及 び 会 議 室 が あ っ た 。 2 階 の 床 面 積 は 約 207平 方 メ ー ト ル で 、
運転科長室と パソコン 室は部屋が区 切られて いたが、指 導・運転当 直
室と乗務 員とはカウンターで仕切られているだけの構造 となっていた。
乗務員室は2 階全体の 面積中約 30パーセント を占め、同室 には3つ の
テーブルと各 テーブル に椅子が置い てあった 。また 、指導・運 転当 直
室は2階全体 の面積の 約 40パーセン トを占め 、同室に は全部で 20前 後
の机があり 、交番 担当 や助役等の執 務場所と なっていた 。当時 、広 島
運転所全体の 社員数は 約 410人で、こ のうち 運転所の社員 数は約 240人
( 運 転 士 約 220人 ) お り 、 運 転 士 点 呼 回 数 1 日 約 330回 ( 自 区 所 約 260
回、他区所約 70回)を 実施する業務 量を持ち 、支社の運転 業 務関係 で
は最も大きな 職場だっ た。
イ
6年3月 、広島運 転所における 実乗務率 は 50.9パーセント、本 務キ
ロ は 188.2キ ロ メ ー ト ル で あ っ た 。 実 乗 務 率 と は 、 運 転 士 の 総 労 働 時
間中に占める実際にハンドルを握っている時間の割合をいう。また、
本務キロとは 、運転士 が実際に運転 した区間 の合計距離を キロメー ト
ルで表したも のである 。
ウ
6年4月 5日、支 社は、会社・組合間 相 互の意志疎通 を図るた め事
業計画等に関する 事項 等比較的広範 囲に話合 いをする場である経営 協
議会において 、岩国に 乗務員基地を 設置する 計画を提示し た。
エ
6年4月11日、支 社は申立人地 本に対し て、岩国運転 区の設置 につ
いて同年8月 のダイヤ 改正時期を目 途とする ことを提案し た。
オ
6年4月18日から 同月 21日までの4日間 、広島運転所分 会は同 分会
所属の全乗務 員に対し て、岩国 運転区設 置に 関する1回目 の非番者 集
会を開催した 。
カ
6年5月 2日及び 同月9日、申立 人地本 と支社は経営 協議会小 委員
会 ( 以 下 「 経 小 」 と い う 。) に お い て 、 岩 国 運 転 区 設 置 に つ い て 協 議
- 6 -
した。この中 で支社は 、岩国運転区 設置の目 的は、広島都 市圏輸送 の
充実、広 島駅での 乗務 員の乗継ぎを なくすな ど乗務員運用 の効率化 等
であることを 説明した 。
キ
6 年 5 月 14日 、 申 立 人 地 本 は 闘 争 委 員 会 に お い て 、「 岩 国 運 転 区 設
置に伴う労働 強化、J R西労破壊、 強権的職 場支配を許す な!」と の
スローガンを 掲げ、一 方的な選別に よる不当 配転、西労破 壊に反対 す
るなどとする 闘争を開 始した。
ク
6年5月23日から 同月 26日までの4日間 、広島運 転所分会 は 、職場
討議資料を基 に2回目 の非番者集会 を開催し た。
ケ
6年6月 、申立人 地本は支社に 対して、 転勤希望調査 をすべき だと
申し入れたが 拒否され たため、広島運転 所分 会は同分会の 申立人組 合
員に岩国運転 区への転 勤希望調査を 実施した 。
コ
6年6月 6日 、申 立人地本は 、岩国 運転 区の設置目的 は現行の 広島
運転所のまま でも達成 できるとして 、支 社に 現行体制での 組合案行 路
表を提出した 。
サ
西労組と 被申立人 は6年6月 17日に、国 労と被申立人 は同年7 月5
日に、全動 労と被申 立 人は同月6日 に、岩 国 運転区設置に ついて大 筋
で合意した。
シ
6 年 6 月 27日 、 申 立 人 地 本 と 支 社 は 団 交 を 実 施 し た が 、 そ の 中 で 、
支社は岩国へ の転勤の 希望調査は実 施しない と回答した。
ス
6年6月27日及び 同月 29日、広島運転所 分会は岩国運 転区転勤 希望
者の非番者集 会を開催 した。
セ
6年7月 中旬頃 、広島運転所分 会は広島 運転所Y1運 転科長( 以下
「 Y 1 運 転 科 長 」 と い う 。) に 岩 国 運 転 区 へ の 申 立 人 組 合 員 の 転 勤 希
望者名簿を渡 そうとし たが、同科長 は受け取 らなかった。
ソ
6年7月25日 、申 立人地本と支 社は 、岩 国運転区設置 等につい て団
交を行った。 この団交 を含めそれま で計8回 の団交及び経 小を行っ て
きたが、合意 には達し ていなかった 。この席 上、支社は岩 国運転区 の
設置について は 今後被 申立人の責任 で実施す る旨通知し、 この団交 が
最終団交とな った。な お、遅くと も同年6 月 27日の第3回 団交の時 点
では、申立 人組合 ら は 、岩国運転 区の設置 と ダイヤ改正に ついて同 年
8月20日付けとなるこ とを把握して いた。
タ
被申立人 は、年2 回実施の個人 面談を基 に、家族状況 や通勤状 況を
考慮し、運転 士の年齢 や等級のバラ ンス、運 転資格等業務 執行体制 を
勘案し、岩国運転 区へ の配転者を広 島運転所 、徳山運 転区 、可部鉄 道
部から人選し た。なお 、個人面談で は時期的 に岩国運転区 への転勤 の
話はできなかった 。ま た、その他 転勤の希 望 を聴くことはしな かっ た。
チ
6年8月 3日、申 立人地本は 、
「『 8月ダ イヤ改正・岩国 運転区 設置』
の一方強行実 施に断固 抗議する総決 起集会」 を開催した。
ツ
6年8月 3日から 同月4日にか けて 、広 島運転所分会 は、広島 運転
- 7 -
所管理者等10人の家族 宛に「お宅の ご主人達 が不当労働行 為を行っ て
いるのでやめ させてく ださい」とい う内容の 葉書を送付し た。
テ
6年8月 5日、Y 1運転科長は、 広島運 転所分会書記 長X8( 以下
「 X 8 」 と い う 。) か ら 広 島 運 転 所 分 会 闘 争 委 員 会 発 行 の 「 岩 国 運 転
区(可部鉄道 部)転勤 に伴う抗議を 含めた注 意事項」と題 するチラ シ
を入手し、広 島運転所 Y2所長(以 下「Y2 所長」という 。)、支社 に
報告した。このチラ シ には、岩国 運転区へ の 転勤を希望し ていない 人
が事前通知書(辞令)をもらった場合には簡易苦情申告をすること、
できれば交付 後に年休 取得を要求す ること等 が記載されて いた。
3
本件抗議 行動及び X 1らの本件 各処分に ついて
⑴
6年8月 8日の 13時過ぎから岩 国運転区 への配転を中 心とした 事前通
知書の交付が 始まり、 18時過ぎまで に被交付 運転士6人中 4人が受 取を
拒否した。こ のため、 Y 2所長は、 支社へこ の旨を報告し た。この 時の
交付体制は 、乗務 員室 での終了点呼 後の運転 士に交付を通 告して 、運転
科長室で事前 通知書を 交付するとい うもので 、従前からの 方法と同 一で
あった。なお 、 事前通 知書は、申立 人組合及 び被申立人間 の労働協 約に
おいて、効力 発生日の 7日前までに 交付され ることになっ ていた。
⑵
6年8月8 日 19時30分頃からは支 社課員 の援助を受けて 乗務員 室へ広
島運転所管理 者側が出 向き、被交付運 転士を 取り囲んで事 前通知書 を手
交 す る 体 制 ( 以 下 「 対 面 制 止 体 制 」 と い う 。) に 変 更 し た 。 対 面 制 止 体
制での交付に おいては 、同日は、広島運転 所 管理者Y2所 長外2人 、支
社課員3人の 計6人、 同月9日は、 当初広島 運転所管理者 Y2所長 外2
人、支社課員8 人の計 11人、13時頃から同月 10日には、広島 運転所 管理
者Y2所長外 2人が概 ね乗務員室に 出向いた 。
⑶
乗 務 員 室 に は 、 6 年 8 月 8 日 に は 12~ 13人 、 同 月 9 日 に は 6 ~ 14人 、
同月10日には10~13人、同月11日には5~9 人の申立人組 合役員ら がい
た。乗務員室 内にいた 申立人組合役 員らは概 ね勤務時間外 であった 。
⑷
広島運転 所におい て事前通知書 の受取を 拒否した者は 、6年 8 月8日
に6人、同月9 日に2 人 、同月10日に1人の 計9人 いた。こ のうち 、同
月8日は対面 制止体制 後2人が受取 拒否をし た。
⑸
6年8月 9日から は、被申立人 は被交付 運転士の終了 点呼前に 原則と
して乗務員室 で事前通 知書を交付す る体制に 変更した。
⑹
事前通知書交付時には、乗務員室は騒然として、混乱状態であった。
この際に、申立 人組合 約員は、「な んでやる んか」「管理 者は不当 労働行
為をしている 」「支社 課員は帰れ 」「科長室 に行くことは ない。乗 務員室
で受け取れ 」「こ こで 渡してもらえ 」等の発 言をした 。
⑺
乗務員室 が騒然と なり業務に支 障を及ぼ すため、Y2 所長の指 示によ
りY3指導総 括助役が「業務で ない人は 退出 してください 」等 の退 出命
令を就業規則 第9条に 基づいて通告 した 。退 出命令の回数 は、6年 8月
8日が3回、 同月9日 が7回、同月 10月が6 回、同月 11日が1回で あっ
- 8 -
た 。 な お 、 就 業 規 則 第 9 条 に は 、「 社 員 は 、 終 業 時 刻 後 速 や か に 退 出 し
なければなら ない。… 」と規定さ れている 。また、就業 規則第 23条には 、
「社員は、会社が許 可 した場合のほか 、勤務 時間中に又は会 社施設 内で、
組合活動を行 ってはな らない」と規 定されて いる。
⑻
支社側は 、次のよ うな事実を現 認した。
ア
6年8月 8日 、14時20分頃 、Y4指 導助 役が終了点呼 後のX 15運転
士に対して 、運転 科長 室で事前通知 書の交付 があることを 通告した 際
に、X4が「 転勤の理 由を説明しろ 」と、X 8が「所長が ここへ来 て
話せ、ここへ 来て、皆 の前で説明し てくれ。 転勤の理由を 言わない の
なら、行かな くても良 い」と発言し、それに 呼応して申立 人組合員 X7
( 以 下 「 X 7 と い う 。) が 「 行 く こ と は な い ぞ 。 こ こ で 所 長 の 話 を 聞
いて、ここで渡してもらえ」などと発言したため騒然となり、結局、
同運転士には 事前通知 書が手交され なかった 。このため 、電話 で広 島
駅と業務打合 せ中であ ったY5運転 当直助役 は、一時打合 せを中断 し
た。
イ
6年8月 8日、 16時50分頃、当日 の勤務 が休日だった X5が、 被申
立人が申立人 組合のビ ラは誹謗中傷 だという ことで撤去す るのに 、他
労組のビラは内 容がで たらめであったと して も撤去しないこ とに抗 議
す る た め 、「 で た ら め を 言 う や つ は 処 分 せ ー 」 と 言 っ て 、 全 動 労 の 組
合情報紙を運 転科長室 に投げ込んだ 。
ウ
6年8月 8日、 17時15分頃、Y4 指導助 役が終了点呼 後のX 16、運
転士に対して 、運転科 長室で事前通 知書の交 付があること を通知し た
際 に 、 X 8 は 、「 行 く こ と は な い 、 乗 務 員 室 で 受 け 取 れ 」 な ど と 怒 鳴
り、結局、同 運転士へ の手交は出来 なかった 。
エ
6年8月 8日、 19時30分頃、X17運転士 の退庁点呼終 了後、乗 務員
室に出向いていた 支社 課員を含めたY2 所長 ら6 人が事前通 知書の 手
交を通告した 。X 17運転士が対面制 止体制で はなく運転科 長室で受 け
取る旨の意思 表示をし たので、Y2 所長とと もに運転科長 室に行こ う
と し た 際 に 、 X 4 が 同 所 長 に 対 し て 、「 お い っ 、 コ ラ ッ 、 勤 務 時 間 外
の者を連れて 行くのは 強制連行では ないか」 などと発言し た。
オ
6年8月 8日、19時50分頃、退庁 点呼を 終えた申立人 X1(以 下「X1
分会長」という 。)が点 呼カウンター 端付近で Y2所長らに 対して 、
「管
理 者 が 不 当 労 働 行 為 を し て い る 」「 希 望 し て い な い 者 を 何 故 転 勤 さ せ
る の か 」「 お ま え ら ー 、 一 人 ず つ 誰 が 誰 の 所 へ 行 っ た の か 言 っ て や ろ
う か 」「 お ま え ら ー の や っ て い る こ と は 全 部 分 か っ て い る 。 訴 え て や
る、今、準備 をしてい る」等と大声 で喚いた 。
カ
6年8月 8日、 19時55分頃、Y2 所長は X1分会長に 対して、 同月
3日から同月4日にか けて広島運転所 分会が 広島運転所管 理者等 10人
の家族宛への葉書を出したことに対する厳重注意書を読み上げた後、
手 交 し よ う と し た が 、 X 1 分 会 長 は 、「 何 が 中 傷 ・ 誹 謗 か 、 説 明 し て
- 9 -
み い 」「 ど こ が 中 傷 ・ 誹 謗 か 具 体 的 に 言 う て み い や 、 お 前 ら は 不 当 労
働行為をあれ だけやっ ておいて、ど こが中傷 ・誹謗か、わ しらは読 め
ん け ん 、 読 ん で く れ 」「 こ こ に い る 助 役 ら 皆 や っ と ろ う が 、 Y 4 ら 何
か、Y6 も事務助 役も じゃ ー、今まとめ るけ え、その うち不当 労働 行
為で訴えてや るよ 」、「 わしら ーは組 合活動内 で不正な事は 何も悪い こ
とはしとらん 、お前ら はひどいこと をしとる じゃないか。 こんなも ん
は 受 け 取 れ ん 」「 今 後 、 助 役 の 家 を 一 人 ひ と り 回 る け ん 。 O B ま で 使
って何じゃー 、OBの 人が頼まれた と言うと る。家族の中 にもJR は
こんなにひど い会社か 、と嘆い ている者 もあ るんで。あんたら ー、皆
うらまれるど 」と言っ て受け取らな かった。 この時、乗務 員室にい た
申立人組合役 員ら 13人ぐらいがこの 付近に集 まり騒然とな った。こ の
ため、近くで 業務をし ていた交番担 当は、そ の場を離れた 。
キ
6年8月 8日 、21時10分頃から のX 18、X19運転士に 対する事 前通
知書の交付の 際に、X 1分会長、X 8、X4 、X6は支社 課員に対 し
て 、「 支 社 は 何 し に 来 た 」「 お 前 ら は 帰 れ 」「 今 日 は 事 前 通 知 は せ ん と
言ったろうが 」と の罵 声を浴びせた 。両 運転 士は、運 転科長室 での 交
付を希望した ので、事 前通知書は同 室で手交 された。
ク
6年8月 8日 、22時頃、X 20運転士 に対 する辞令の交 付が初め て対
面制止体制で 行われよ うとした際に 、X 1分 会長は同運転 士を取り 囲
ん だ 支 社 課 員 等 に 対 し て 、「 何 を し ょ う る ん か 」 と 発 言 し た 。 こ の 直
後、X6 はカメラ のフ ラッシュをた き、写真 を撮った 。周りの 申立 人
組合役員らが 口々に発 言し、X 20運転士が「 私は岩国を希 望してい な
い か ら ね 。 絶 対 に 貰 わ ん ど 」 と 発 言 す る と 、「 よ し 」「 よ し 」「 よ し 」
と周りの多数 の申立人 組合役員らが 発言する とともに拍手 をし、さ ら
に X 1 分 会 長 は 、「 何 か ( 運 転 ) 科 長 、 希 望 し て い な い 。 ど う い う こ
となんか、えっ、不 当 労働行為で暴 露するぞ 。街宣(車)を停める ぞ」
「大嘘づきは 勤労課( 支社の労務担 当課)の 人間ではな い か。大嘘 つ
き の 言 う こ と を 聞 く 必 要 は な い 。 大 嘘 つ き は 帰 り な 」「 何 が う る さ い
だ 、 何 も し ゃ べ っ て い な い の に 、 そ っ ち の 方 が う る さ い 」「 わ し が 黙
っているのに 、静かに しなさいとは どういう ことか。俺は ずっと黙 っ
ていた。静か にしなさ いとはどうい うことや 」等と大声で 怒鳴り、 さ
らに加えて、 X1分会 長はY 7事務 助役に対 して「おまえ 、やった ん
なら正直に言 うてみい や」等の 発言をし 、結 局、X 20運転士に は事 前
通知書が手交 されなか った。
ケ
6年8月 8日、 22時10分過ぎ頃、 X 21運転士の退庁点 呼後、乗 務員
室に出向いて いた支社 課員を含 めた Y2所長 ら6人が対面 制止体制 で
事前通知書を 読もうと したが、同運転士 はそ れを避けるよ うに乗務 員
室を退出しし たため、 手交できなか った。こ の際に、X4 が、持っ て
いたテープレ コーダを 支社勤労課Y 8課長代 理の口付近に 近づけた の
で、同課長代 理が「や めなさい」と 注意した がやめなかっ た。
- 10 -
コ
6 年 8 月 9 日 、 8 時 過 ぎ 頃 、 X 22運 転 士 へ の 事 前 通 知 書 手 交 時 に 、
広 島 運 転 所 管 理 者 側 の 対 面 制 止 体 制 を 見 た X 1 分 会 長 は 、「 何 か 、 こ
の 体 制 は 何 か 、 支 社 は 何 か 」「 何 で 支 社 を い れ る ん か 」 と 発 言 し 、 支
社 課 員 に カ メ ラ を 向 け て 制 止 さ れ る と X 1 分 会 長 は 、「 何 で や 、 や か
ましい、異常だ 」
「つ まらんものを 受け取る ことはないぞ」と発言 し、
さらにX1分 会長は、 支社課員等に 対して「 何か、お前ら 帰れ」等 と
怒鳴るなどし た。結局 、X 22運転士には事前 通知書が手交 されなか っ
た。
サ
6年8月9日 、8 時 50分過ぎ頃 、X 23運 転士への事前通 知書手 交後、
X 1 分 会 長 は Y 7 事 務 助 役 に 対 し て 、「 こ ら っ 、 事 務 助 役 、 苦 情 処 理
の書類を一緒 に出せと 言うとろうが 」「何が そうは、いかんか 」「 明日
から仕事をせ んいうて 書け」等大声 で怒鳴っ た。
シ
6年8月9日、9時頃、Y3指導総括助役が乗務員室まで出向き、
当 日 2 回 目 の 退 出 命 令 を 通 告 し た 際 に 、 X 1 分 会 長 は 、「 何 を 言 い よ
るんか、何回で も言え 」と発言した。この た め、乗務員室内 にいた 申
立人組合員は 、この命 令を無視した 。
ス
6年8月 9 日 、9 時45分頃 、Y3指 導総 括助役が乗務 員室まで 出向
き 、 当 日 3 回 目 の 退 出 命 令 を 通 告 し た 際 に 、 X 1 分 会 長 が 、「 つ ま ら
ん役をおおせ つかって 、分かった、分かっ た 」と発言したた め、乗 務
員室内にいた 9人程度 の申立人組合 役員らは 退出しなかっ た。
セ
6年8月 9日、 10時15分過ぎ頃 、直前に 出勤していた X5は、 次の
事前通知書の 手交のた め乗務員 室に出 向いて 来た支社課員を 含めた 広
島 運 転 所 管 理 者 側 の 体 制 を 見 て 、「 ど う し た ん な あ ー 、 お い 。 運 転 所
じゃない者が 一杯おる じゃないか出 せ ーや 。あんたら ー運 転所じゃ ー
ないじゃろー が出ーや 。あんた ら ー仕事 じゃ ないだろうが 出ていけ ー
や。責任者は 誰か。気 分が悪い。ち ょっと年 休をくれ。X 7、名前 を
書 け や 。( 支 社 課 員 は ) 外 へ 出 ― や 。 気 分 が 悪 ー て 点 呼 を 受 け る 気 が
せんわ。新聞社 に電話 せ ーや」と発言 し、こ れをX7が「会 社は責 任
を持ってやる と言って いたが、これ が会社の 態度か」と受 けた後、X1
分 会 長 が 「 点 呼 が で き ん 、 外 へ 出 て く れ 」「 新 聞 社 に 電 話 し て く れ 」
と加勢して、 さらにX 5が「点呼が 出来ん。 乗務員が大事 ではない の
か」と、X1 分会長が「あ ー、支社 の馬鹿が 。管理能力が ない 」と X5
が「こげぇー なんじゃ 仕事ができん じゃない か。わしゃ ー 点呼を受 け
んでー、列車 を遅らせ るで ー、みん な外へ出 ーや」と続け たため、Y2
所長は「点呼 は十分受 けられます」 と言った が、X5は「 わしが受 け
られんと言う とるじゃ 。こんなに 一 杯出きて 気分が悪うて 点呼を受 け
る気がせんわ」などの 発言をした 。こ のため 、乗務員室は騒 然とし た。
ソ
6年8月 9日、 11時過ぎ、運転分 所の玄 関付近で 、支社 Y9人 事課
長 ( 以 下 「 Y 9 人 事 課 長 」 と い う 。) と 申 立 人 地 本 X 24書 記 長 ( 以 下
「X24書記長」という 。)が事 前通知書 の交 付に関して会 話をした 。
- 11 -
タ
6年8月 9日 、14時20分頃 、乗務の ため 乗務員室 を出 た西労組 所属
のZ2主任運 転士と申 立人組合員X 3(以下 「X3」とい う。)、X 6
らが出会い、X 3が「 お前は岩国に 行かんの か。西鉄労(西労組 の 別
称)が決めた んじゃろ ーが」と発言 したとこ ろ、Z2主任 運転士が「お
前には関係が あるか」 と言ったので 、X3、 X6が「勝負 しようか 」
などと言い返した。この口論に気付いたY1運転科長らが仲裁して、
Z2主任運転 士は運転 分所を出た。
チ
6年8月10日 、16時頃、Y 2所長ら 3人 が対面制止体 制でX 25運転
士へ事前通知 書を手交 しよう とした 際に、X 3、X5ら が同所長 に 近
づいてきたた め、Y 1 運転科長がこ れを制止 した。Y2 所長はX 25運
転士に対して 、事 前通 知書を 手交し ようと繰 り返したが 、X5 が「 受
け取るな 」と発言 した ため、同 運転士は 同所 長の前から逃 げて 、手 交
できなかった 。
⑼
6 年 8 月 12日 、 10時 10分 頃 、 申 立 人 組 合 所 属 の X 26運 転 士 に 対 し て 、
平穏に事前通 知書の交 付が行われた 。
⑽
6年8月 8日 から 同月 12日の間、広島 運 転所において 合計 54人の運転
士 に 対 す る 事 前 通 知 書 の 交 付 が 行 わ れ 、 結 局 、 53人 に 対 し て 交 付 さ れ 、
1人に対して は保留と なった。
⑾
広島運転 所分会発 行の「不当労働 行為撤 廃速報№9」の 中に「 …分会
は今後も希望 者以外の 事前通知には 抗議の取 り組みは展開 するが、今後
の取り組みと しては岩 国にJR西労 の旗を高 く掲げる体制 にも着手 しま
す。…」とい う記載内 容があった。
⑿
6年8月15日、支 社は申立人地 本に対し て、同月8日か らの一 連の行
動 ( 以 下 「 本 件 抗 議 行 動 」 と い う 。) に 対 す る 猛 省 及 び 同 地 本 の 下 部 組
織に対する指 導を要請 し、本件抗議 行動に対 して厳正に対 処する考 えで
ある旨の文書 を出した 。
⒀
6年8月20日、ダ イヤ改正とと もに、岩 国運転区が設 置された 。要員
は、区長1人、助 役6 人、事務係1人、 運転 士 70人、検修職 7人の 合計
85人であった。 こ の際 に、広島運転所 の運転 士は 44人が異動し、う ち申
立人組合員は43人であ った。申 立人組合 員の うち、何 らかの組 合役 員経
験者は2人で あった。
⒁
このダイ ヤ改正に より、広島駅 で運転士 の乗継ぎがな い列車が 16本か
ら49本になっ た。なお 、運転士が乗 り継ぐ場 合には、乗務 前後に 35分の
準備時間があ った。ま た、運転の始発 となる 所や駅に行く ため、運 転士
が 他 の 列 車 に 乗 せ て も ら う 便 乗 列 車 の 本 数 が 14本 か ら 3 本 に 減 少 し た 。
⒂
岩 国 運 転 区 設 置 後 に お け る 広 島 運 転 所 の 実 乗 務 率 は 52.0パ ー セ ン ト 、
本 務 キ ロ は 198.9キ ロ メ ー ト ル 、 岩 国 運 転 区 に お け る 実 務 率 は 53.4パ ー
セント、本務 キロは 198.4キロメートル であ った。
⒃
被申立人 は、支社 の賞罰審査委 員会にお いて、現場にい た広島 運転所
管連者、支社課員 計 15人の現認書を 総合して 処分事実を認 定し 、被 処分
- 12 -
者及びその処 分内容を 決定した 。被処分 者及 び処分内容は 、 X 1分 会長
が減給2分の1・1日、X5、X3、X4、X6の4人が戒告、X8、
X7の2人が 訓告で、 合計7人が処 分(以下 「X1らの本 件各処分 」と
い う 。) さ れ た 。 な お 、 6 年 8 月 8 日 か ら 同 月 11日 の 間 に 現 認 さ れ て い
た申立人組合 役員は 17人であり、申 立人地本 X 27委員長、 X 24書記長ら
も現認されて いたが処 分はされなか った。
⒄
X1らの 本件各処 分の決定の際 に、被処 分者への事情 聴取、弁 明の機
会の付与はな されてい ない。
⒅
減給処分 の処分理 由は、岩国 運転区設 置 に伴う関係社 員に対す る事前
通知書手交の 際に 、上 司の再三にわ たる退 室 命令に従わず 、上 司等 に暴
言を吐き、また、他 の 社員を教唆扇 動し、正 常な業務遂行 を集団で 妨害
する行為を行 い、職務 上の規律を乱 し、社員 として著しく 不都合な 行為
を 行 っ た こ と が 、 就 業 規 則 第 146条 第 1 号 の 「 法 令 、 会 社 の 諸 規 程 等 に
違反した場合 」、第2 号の「上長の業 務命令 に服従しなか った場合 」、第
3号の「職務上 の規律 を乱した場合 」、第 11号の「他人を教 唆扇動 して、
上記の各号に 掲げる行 為をさせた場 合」及び 第 12号の「その他 著し く不
都合な行為を 行った場 合」に該当する ものと された。また、X1 分 会長
は6回の退室 命令に従 わなかっ たと 現認され ていた。なお、X1分 会長
の本件減給処 分は6年 9月 28日付けで発令さ れた。
⒆
戒 告 処 分 の 処 分 理 由 は 、 減 給 処 分 の 処 分 理 由 の う ち 、「 他 の 社 員 を 教
唆 扇 動 し 」 た と い う 理 由 が な く 、 就 業 規 則 第 146条 第 11号 の 適 用 が 除 か
れた。また、 X5は5 回、X3及び X6はそ れぞれ8回、 X4は6 回の
退室命令に従 わなかっ たと現認され ていた 。なお、X 3及びX 4の 本件
各戒告処分は 6年9月 27日付けで、 X5の本 件戒告処分は 同月 29日付け
で、X6の本 件戒告処 分は同月 30日付けで発 令された。
⒇
訓告処分 の処分理 由は、戒告処 分の理由 の うち、退室 命令に関 して「再
三わたる」と いう文言 が除かれて単 に「上司 の退室命令に 従わず」 とさ
れたもので、就業規則 の適用条項は 戒告処分 と同じであっ た。また 、X8
及びX7はそれぞれ3回の退室命令に従わなかったと現認されていた。
なお、X7の本 件訓告 処分は、6年9 月 27日付けで、X8の 本件訓 告処
分は同月29日付けで発 令された。
(21)
6年10月3日 、申立人地本は 支社に対 して、X1 らの本件 各 処分につ
いて撤回等の 申入れを 行った。
(22)
6年10月7日、 申立人地本岩 国運転区 分会が結成さ れた。
(23)
6年12月15日、本 件不当労働行 為救済を 求める申立て が当地労 委にな
された。
4
徳山運転 区X2分 会長に対する 本件出勤 停止処分及び 本件出向 命令につ
いて
⑴
6年9月 当時、徳 山運転区はY 10区長が 責任者であり、 その下 にY 11
首席助役がお り、その 下に事務助役 、指導総 括助役、運転 総括助役 等が
- 13 -
いた。
⑵
申 立 人 X 2 ( 以 下 「 X 2 分 会 長 」 と い う 。) は 、 昭 和 62年 4 月 の 西 日
本旅客鉄道株 式会社の 発足後から徳 山運転区 の運転士であ り、6年 9月
当時は運転士 で、52歳 であった。運 転歴は国 鉄時代を含める と 30年弱で、
その間無事故 であり、 運転 競技会で の、ある いは無事故で の表彰歴 があ
った。また 、申立 人組合 結成と同時に徳 山運転 区分会の分会 長であっ た。
⑶
Z 3 指 導 担 当 運 転 士 ( 以 下 「 Z 3 指 導 担 当 」 と い う 。) は 、 5 年 7 月
以 降 徳 山 運 転 区 の 指 導 担 当 運 転 士 ( 以 下 「 指 導 担 当 」 と い う 。) で 、 32
歳であった。
⑷
就業規則 上の命令 系統では、運 転士の上 に主任運転士 がおり、 等級の
上でも主任運 転士の方 が高位であっ たが、実 務上において は指導担 当が
運転士、主任運 転士を 問わず指導す る立場で 、上司に当たっ ていた 。徳
山運転区にお いては、 指導担当は5 人おり、 Z3指導担当 に次いで 若い
指導担当は37歳ぐらい であった。こ のうち、 Z3指導担当 を含む4 人が
西労組の組合 員で、残 り1人が申立 人組合員 であった。
⑸
6年春、X 2分会 長は、1日目は 17時07分に出勤し、2 日目の 16時13
分 に 退 勤 す る と い う 2 日 に ま た が る 業 務 で あ る 607行 路 に つ い て 、 運 転
士にとってきつ い行路 であるので改善 して欲 しい旨を分会 長として Y 10
区長に話した 。
⑹
6年9月17日及び 同月 25日、岩国駅か ら 徳山駅の間に ある南岩 国駅 -
藤生駅間で線 路上にス ロープ状に束 ねた鉄板 を置くという 列車妨害 があ
った。X2分 会長は、 徳山運転区の 管理者 に 事実を確認し たが不明 であ
ったため、徳山 駅の鉄 道警察隊で確 認し、乗 務員を代表し てY 10、区長
に乗務員への 周知と現 場付近の徐行 を提案し た。Y 10区長は支社に 上申
するとして提 案を受け 入れたが、支 社はX 2 分会長の提案 を採用し なか
った。X2分会 長は、 乗務員に周知 する必要 があるとして、 組合情 報板
に列車妨害に ついて掲 示した。
⑺
6年9月25日、Z 3指導担当は 、社員提 案制度である マイオピ ニオン
の原稿用紙を 乗務前の 書類整理をし ていたX 2分会長の机 の上に黙 って
ぽんと置いた 。
⑻
6年9月26日、X 2分会長は、当 日の乗 務後Y 10区長にZ3指 導担当
がマイオピニ オンの原 稿用紙を投げ て渡した として抗議し たところ 、助
役からよく制度 の趣旨 を話して渡すよ うに指 導していた同区 長は、
「 あ、
それは何じゃ ったのう 」の発言した 。その後 、Y 10区長は、再度助 役 に
同旨の指導を した。
⑼
6年9月26日、Y 11首席助役は 、同月 17日及び同月25日の列車 妨害に
ついて、X2 分会長に 「お前があお っている 」と発言した 。
⑽
6年9月30日、X 2分会長は、乗 務前に Y 11首席助役 や居合わ せた指
導担当に対し て、指導 添乗の際に西 労組所属 の数人の指導 担当が申 立人
組合所属の運 転士に支 社の運動会の 参加を呼 びかけ、それを 機会に 脱退
- 14 -
工作をしている として 、また 、マイオピ ニオン の用紙の件で 抗議をし た。
このとき、Z3指導担当は、指導添乗業務に従事していて不在であり、
当日の業務終 了後同僚 にこのことを 聞いた。
⑾
指導添乗とは、指導担当が列車に添乗し、運転士の基本動作の指導、
チェック等を 行うこと である。指導担当 が指 導添乗すると きには 、氏名
を名乗り、添乗 の目的 を言って乗車 すること になっている( 以下「 指導
添 乗 の 原 則 」 と い う 。)。 ま た 、 指 導 を 受 け る 運 転 士 は 、 列 車 名 、 所 属 、
氏名、運転状 況等を報 告する ことに なってい る(以下「添 乗報告」 とい
う。)。
⑿
6 年 9 月 30日 、 607行 路 に 乗 務 し た X 2 分 会 長 の 最 後 の 運 転 列 車 は 、
10月1日14時19分発の2453Mで、同 乗の車掌 は下関車掌区 のZ4車 掌で
あった。同列 車は、岩 国駅始発、徳 山駅終着 で、途中の田 布施駅か らの
停車は、岩田 、島田、 光、下松、櫛 ヶ浜、終 点徳山駅であ る。
⒀
6年10月1日、田 布施駅でZ3 指導担当 が指導添乗の ためX2 分会長
の運転する2453Mに添乗する際に、 同指導担 当は「お願い しま ー す 」と
言って添乗し ようとし た。それ に対して 、X 2分会長は指 導添乗の 原 則
を無視してい るとして 、むっとして「や めて くれ」と言った が、Z 3指
導担当は添乗 した。
⒁
田布施駅 発車後、 X2分会長は Z3指導 担当に対して 、マイオ ピニオ
ンの用紙を配 ったこと 、運動会 の参加の 件に ついて抗議し た。これ に対
して、Z3指導担当は「マイオピニオンの用紙は上司の命令で配った、
運動会のこと はやって いない」と答 えたが、 X2分会長は 同指導担 当の
態度に、また 、むっと した。
⒂
岩田駅に 着いたと きに、X2分 会長はZ 3指導担当の カバンを 持って
運転室と客室 の間の客 室扉を開けて 「添乗を やめてくれ、 降りてく れ」
と同指導担当 に言った が、同指導担 当はすぐ 「やめてくれ 、降りな い」
と言ってカバ ンを取り 返し元の席に 戻った。このやり取り 等で列車 は岩
田駅を2分遅 発した 。このとき 、Z 4車 掌は ドアを閉めて も列車が 出発
しないので、 X2分会 長に連絡をと った。こ の際のX2分 会長の返 答に
ついて、Z 4車掌は 車 掌乗務報告で「指導 が 降りるので少 し待って くれ」
と言ったと、 Z3指導 担当は事実確 認報告書 で「気にくわ ん指導が 乗っ
ておる。降り ろという のに降りんの だ」と言 ったと報告し た。
⒃
岩田駅発 車後、X 2分会長はZ 3指導担 当に「次の駅 で降ろす からの
う」と言った が、同指 導担当は黙っ ていた。
⒄
島田駅に 着いて、 X2分会長は Z3指導 担当に「降り てくれ」 と言っ
たが、同指導 担当は「 降りない」と 言った。
⒅
櫛ヶ浜駅 を発車し た時、X2分 会長はZ 3指導担当に 「徳山駅 に着い
て車両入替え があるの で、最後まで乗 って指 導しろよ」と言 ったが 、同
指導担当は黙 っていた 。
⒆
Z3指導 担当は、 終着の徳山駅 まで添乗 を続けた。Z3 指導担 当が徳
- 15 -
山駅到着後、 降りよう とした際に、 X2分会 長は「降りな いと言う たじ
ゃないか。ここにおれ」と言ったが、同指導担当は「私の添乗行路は、
ここまでで、 入区作業 はつい ていな い」と言 って降りた。
⒇
運転士は 運転中の 基本動作を定 められて いるが、Z 3指導担 当 の添乗
中、X2分会長 は基本 動作をあまり 行わなか った。一方、Z3指 導 担当
は、その点に ついて気 がついていた が指導を しなかった。
(21)
列車の遅れにより乗客からの苦情等影響があったとの報告はなかっ
た。)
(22)
16時13分頃の終 了点呼時 、X2分 会長 は、Y 12運転当直 助役 に「異状
なし」と報告し た。な お、動力車乗務 員作業 標準には、終了 点呼時 、乗
務中にあった 異常を動 力車乗務員乗 務表に記 入して報告す ることに なっ
ている。また 、被申立 人が提起した 同表の記 載例である乙 第7号証 の2
では、報告は15秒ごと になっていた 。
(23)
徳山駅の遅 着について、X2分会長は30秒以内であったため報告せず、
Z4車掌は30秒、Z3 指導担当は1 分と報告(以下Z 3指導担 当の 田布
施 駅 で の 添 乗 か ら 徳 山 駅 到 着 後 の 報 告 ま で を 「 本 件 事 件 」 と い う 。) し
た。このうち、 Z4車 掌は、車掌乗 務報告で 「運転関係」の 欄には 「異
状 な し 」 と 記 入 し 、「 特 記 事 項 」 の 欄 で 磐 田 駅 の 2 分 の 遅 発 と 徳 山 駅 の
30秒の遅着を 記入した 。列車の遅れ は、一般 的には「運転 関係 」 の 欄に
書くのが普通 である。 なお、X2分会 長は、 点呼の際に、 30秒単位 で報
告しても良い と指導担 当助役から聞 いている と証言した 。また 、甲 第 47
号証の広島地 本の「ぎ ょうむだより 」では、 ワンマン列車 の2分遅 れま
では、列車指令 から運 転士に対する 問い合わ せ はしない旨 の回答を 支社
が行ったこと が記載さ れている 。このこ とに ついて、申立人組 合員 X 28
( 以 下 「 X 28」 と い う 。) は 、 列 車 の 2 分 ぐ ら い の 遅 れ は 許 容 範 囲 で あ
り、特別詮索 して聞く ことはしない と被申立 人が回答した ものと理 解し
ていると証言 した。
(24)
16時30分頃、Y 11首席助役は、Z3指 導担 当からの 報告を受 けて、同
指導担当との トラブル についてX2 分会長と 話をした。
(25)
21時50分頃、Y 12運転当直助役 は、X2 分会長に電話 して岩田 駅の遅
発の時間を確 認した。 X2分会長は 「1分ぐ らいではなか った」と 言っ
た。
(26)
6年10月2日朝 、Y 11首席助役は 、X 2分会長の自 宅に列車 の遅れの
時 間 に つ い て 電 話 を し た 。 X 2 分 会 長 は 、 起 き が け だ っ た の で 、「 こ ん
な朝早くから 電話する な」と言った 。
(27)
列車の遅延は事故 として扱われるが、事 故は大きなものから責 任事故、
反省事故Ⅰ 、反省 事故 Ⅱと三つに区 分されて おり、列 車の遅延 事故 単独
の 場 合 は 、 30分 以 上 の 遅 れ が 責 任 事 故 、 10分 以 上 の 遅 れ が 反 省 事 故 Ⅰ 、
それに至らな い場合が 反省事故Ⅱで あり 、X 2分会長の場 合は 、反 省事
故Ⅱに該当す るもので あった。被申 立人側の Y 13証人は、 反省事故 Ⅰで
- 16 -
訓告に、責任 事故で戒 告になるのが 一般的で 、反省事故Ⅱ で処分を 下さ
れた例は記憶 にないと 証言した。
(28)
6年10月6日 、Y 10区長はX 2分会長 に対して 、当分の 間、日勤勤務
に就くよう指 定をした 。日勤勤 務の指定 は、一般的に業間 訓練等の 運転
士の教育をす る、安全 衛生委員会等 の各種委 員会 に参加さ せる、Q C・
マイオピニオ ン等の発 表会に参加さ せる、又 は事実関係の 把握をす ると
きなどに行う 。X2分 会長の日勤勤 務の指定 の理由は、本 件事件に より
列車を遅延させ たとい う運転事故を 起こした ことと指導担当 の業務 を妨
害したことで の事情聴 取と運転の基 本等の再 訓練の必要が あったた めと
されている。な お、Y 10区長は、反省 事故 Ⅱ のケースで日 勤勤務を 指定
した経験はな いと証言 した。
(29)
X2分 会長は、6年 10月30日まで日勤勤 務を指定され、事 情聴 取の外、
業間訓練室等 に一人で 置かれ、運転 取扱心得 を熟読したり 、事故情 報 を
基にしてその 原因や対 策を考えるよ う指示さ れた。事 情聴取は 、同 月 12
日に終了して いた。
(30)
Y10区長は、徳山 駅遅着の時間 等につい て、Z3指導担 当、Z 4車掌、
X2分会長の 報告等の 食い違いを確 認しなか った。
(31)
6年10月11日、支 社は申立人地 本に対し て、同年8月 8日以降 の岩国
運転区設置時 における 事前通知書の 交付に際 しての申立人 組合役員 らの
抗議行動に対 する職場 秩序維持の要 請文を出 したが、同時 に本件事 件に
ついて申立人 組合の分 会長の行動と して遺憾 の意を表した 。
(32)
6年10月14日、X2分 会長は Y 11首席助役に「 話をしよ う」と言って
同主席助役に 向かって 椅子を滑らせ たが、そ の椅子が同主 席助役に 当た
りそうになっ た。なお 、Y 10区長は、同区 長 の陳述書であ る乙第 27号証
に記載された 同日を含 めた日勤勤務 中のX2 分会長とY 11首席助役 のや
りとりは、同 首席助役 が自分で書い たものを 同区長が書き 写したも ので
あると証言し た。その 中で、Y 11首席助役は 、X2分会 長に対して 、
「待
機 し ろ 」「 直 ち に 行 け 」「 ど け い う た ら ど け 」「 指 示 に 従 え 」「( 仕 事 を )
やれ」等の発 言をして いるとともに 、椅子を 滑らせたこと を「滑ら すよ
うに投げた」 と表現し ている。また 、X2分 会長のY 11首席助役と のや
りとりが上司 の業務指 示違反等であ るとして 、後記本件出 勤停止処 分の
事由の一つと なってい る。
(33)
支社は 、賞罰 審査 委員会で本件 事件等一 連のX2分会 長の行為 をZ 3
指導担当の事実確認報告書、助役等の現認書等を基にして事実認定し、
暴力事件、飲 酒事件、 無断欠勤、一 般刑事事 件等過去の出 勤停止 30日の
処分を参考に 、X 2分 会長に対する 出勤停止 30日の処分を 決定した 。処
分事由は、指導 添乗拒 否、業務指示に 対する 違反、運転事故( 列車 遅延)、
虚 偽 の 報 告 、 上 司 へ の 暴 言 等 で 、 就 業 規 則 第 146条 第 1 号 の 「 法 令 、 会
社 の 諸 規 程 等 に 違 反 し た 場 合 」、 第 2 号 の 「 上 長 の 業 務 命 令 に 服 従 し な
かった場合 」、第3 号 の「職務上の規 律を乱 した場合 」、第8号 の 「懲戒
- 17 -
さ れ る べ き 事 実 を 故 意 に 隠 し た 場 合 」、 第 12号 の 「 そ の 他 著 し く 不 都 合
な行為を行っ た場合」 に該当するも のとされ た。なお、出 勤停止処 分は
懲戒解雇、論 旨解雇に 次いで重い懲 戒処分で あり、出勤停 止処分の 中で
も30日の処分 が最も重 い処分である 。
(34)
6年10月28日、X 2分会長は、Y 10区長から同月31日から同年 11月29
日 ま で の 出 勤 停 止 処 分 ( 以 下 「 本 件 出 勤 停 止 処 分 」 と い う 。) の 通 告 を
受けた。
(35)
支社は 、X2分 会 長を運転士業 務に従事 させることは 当面不可 能 と判
断し、出向さ せる方針 を出した。そ の際に、 X2分会長に 出向の打 診は
行わなかった 。
(36)
支社は 、定年 前 の高齢者運転 士を出向 させていた 。本件 事件 当時、徳
山運転区には X2分会 長より年輩の 運転士が 10数人いた。
(37)
6年11月30日、X 2分会長は、区長室で Y 10区長から 出向の通 告を受
けた。
(38)
6年12月2日 、X2分会長は 、Y 10区 長から中国交 通事業株 式会社へ
の出向の事前 通知書を 手交(以下「 本件出向 命令」という 。) され た。
(39)
6年12月15日、本 件不当労働行 為救済を 求める申立て が当地労 委にな
された。
(40)
6年12月16日、X 2分会長は、中国交通 事業株式会社 岩国事業 所に出
向(以下「本件出向」という。)し た。出向 先でのX2分 会長の業 務は、
同日から7年 4月 10日までの間は岩 国駅のト イレ清掃、待 合室のモ ップ
掛け・清掃、 ゴミ缶の ゴミ収集等で あった。 同年4月 11日以降は列 車の
行き先表示案 内板の交 換、遺失物の 列車内の 捜索、中小企 業の事務 所の
ワックス掛け 等の業務 に従事し た。な お、本 件出向により、 X2分 会長
は、分会長の 役職を退 いた。
(41)
X2分 会長の出 向後の給与は 、徳山運 転区に勤務し ていたと きより少
なくとも約2 万円、多 いときには約 6万円減 少した。
(42)
6年12月20日、ダイヤ改正に より 607行路は廃止さ れた。
(43)
7年10月、徳山 運 転区は、徳山 地域鉄道 部徳山乗務員 センター に組織
改正された。
(44)
8年3 月、X 28は 、Y11首席助役が昇格 して徳山乗務 員センタ ー所長
のときに、同 センター に転入してき た申立人 組合らに対し て、X 28らを
「膿(うみ)だ」と 称 したというこ とを聞い た。同年4月 30日、X 28は、
このことを山口地方法 務局徳山支局において人権擁護委員 会に相談 した。
(45)
9年12月16日、X 2分会長は、徳山地域 鉄道部の主任 運転士と して列
車の運転業務 に復帰し た。
5
X4ら及 びX9ら の本件各配転 命令並び に本件登用に ついて
⑴
元年度か ら、被申 立人は、各支 社間の要 員の不均衡対 策、かつ 社員の
資質向上の目 的で、各 支社の営業関 係社員を 近畿圏の駅に 2年間配 置さ
せる社内出向 を開始し た。
- 18 -
⑵
2年度から 、被 申 立人は、高齢運転 士の 大量退職の時 期に備え るため、
い ろ い ろ な 職 場 の 社 員 か ら の 募 集 ( 以 下 「 特 例 募 集 」 と い う 。) で 運 転
資格者の養成 を始めた 。なお 、運転士 になる ための正規の ルートは 車掌
を経験した者 からの募 集によるもの である。
⑶
4年度末 頃までに は、支社管 内で特例 募 集により 20人の運転有 資格者
が誕生した。こ の内訳 は、電車 14人、ディー ゼル車6人で、 資格取 得年
月別では3年 4月ディ ーゼル車2人 、同 年8 月電車8人 、4年 1月 電車
2人、同年3 月ディー ゼル車4人、 同年7月 電車2人、5 年4月電 車2
人であった。支 社は、 この 20人について正規 のルートに従 い、当面 車掌
の業務を行わ せた。 ま た、この 20人の所属労 働組合は、申 立人組合 員が
19人、西労組 の組合員 が1人であっ た。
⑷
5年3月 頃、広島 市に所在する 広島高速 交通株式会社( 以下「 広島高
速 」 と い う 。) か ら 被 申 立 人 に 対 し て 、 ベ テ ラ ン の 運 転 士 15人 程 度 の 出
向要請があっ た。
⑸
5年3月18日、ブ ルトレ指名ス トが開始 された。申立人 地本下 関運転
所 分 会 ( 以 下 「 下 関 運 転 所 分 会 」 と い う 。) は ブ ル ト レ 指 名 ス ト を 中 心
的に行い、また、同分 会青婦部は下 関駅にお ける「申立人組 合員の 行動」
を担っていた 。
⑹
5年3月 のダイヤ 改訂の時点で 、支社 全 体では約 60人の運転士 が過員
の状態であったが 、う ち約 40人については、在来線の車掌 区に約 25人が、
新幹線の車掌 区に約 15人が充てられ、残り約 20人の過員は その大半 が下
関運転所にお けるもの であった。
⑺
5 年 4 月 時 点 で 、 下 関 運 転 所 は 123人 の 運 転 士 が お り 、 申 立 人 組 合 員
が 112人 、 西 労 組 の 組 合 員 が 11人 い た 。 ま た 、 17人 の 運 転 士 が 過 員 の 状
態であった。
⑻
支社の広 島高速へ の出向募集に 対して 、下関運転所分 会では下 関運転
所で過員の状 態が生じ ているとの認 識のもと 、 17人が希望を出 した 。17
人の中には、 X9、X 11、X12、X29(以下 そ れぞれ「X 9」、「X 11」、
「 X 12」、「 X 29」 と い う 。) の 4 人 が 含 ま れ て い た 。 こ の 出 向 は 3 年 間
で元職場に戻 られるが 、転勤の場合は 戻られ るかどうかは 分からな い状
態であった 。なお 、この 出向募集には 年齢要件 は記載されてい なかっ た。
⑼
5年5月 から、被 申立人は、支社 管内の 運転区所等に おける助 役は高
齢者が多いこ とから、 特例募集とは 別に、将 来の助役等の 人材確保 のた
め支社課員等 の運転資 格者の養成を 始めた 。なお、養 成を受け た支 社課
員等は、ほと んど西労 組の組合員で あった。
⑽
5年6月、 被申立 人がブルトレ 指名スト 対策と して、下 関運転 所所管
の行路を別の運 転区所 等に振り替える ことを 内容とする行路 移管を 実施
したことなどにより、下関運転所の運転士は37人の過員の状態となった。
一方、この 時点で 、広島 運転所の運転 士は若干 名の欠員の状態 であっ た。
⑾
5年6月 時点で、 下関運転所の 運転士は 、 121人中108人が申立 人組合
- 19 -
員で、こ のうち約 20人 が青婦部員で あり 、さ らにそのうち 約 15人が同音
婦部の役員で あった。
⑿
5年7月 9日、い ずれも申立人 組合員で あるX 30、X31(以下「X 31」
と い う 。) 及 び X 32の 3 人 の 運 転 士 が 下 関 運 転 所 か ら 広 島 運 転 所 に 配 転
(以下「X30らの各配 転」という 。)さ れ た 。
⒀
支社では 、X 30らの各配転につ いて、広 島運転所の乗 務行路の 約 87パ
ーセントが運転 できる として電気機関 車及び 電車の運転資 格を持っ た運
転士で、経験を 積ませ るとして年齢 が若く運 転士経験の浅 い運転士 の中
から、家庭状況 等が転 勤に耐えうる 運転士と いうことを基 準として 人選
した。
⒁
5年8月 4日、X 30らの各配転 に係る不 当労働行為救 済を求め る申立
てが当地労委 になされ た。
⒂
5年8月11日、ブ ルトレ指名ス トが終了 した。
⒃
5年9月 、運用 改 正により行路 移管され て いた行路の 一部が下 関運転
所に返される などした ため、下 関運転所 は、 18人の運転士 が過員の 状態
となった。
⒄
5 年 10月 、 支 社 は 、 広 島 車 掌 区 の 17人 の 車 掌 を 駅 業 務 に 従 事 さ せ た 。
これは、5年度が 社内 出向の交替時 期で 、支 社においては それまで の約
240人から約270人へと約30人出向枠 が増員さ れることにな り、交替 時期
の5年9月か ら同年 10月と6年1月 から同年 2月は駅業務 の要員が 厳し
くなることに よるもの であった。こ の 17人のうち4人は、 特例募集 によ
る運転士登用 待ちの運 転有資格者で あった。
⒅
5年12月1日、下 関運転所 にお いて実際 に運転業務に 従事する 運転士
は105人で、その うち 94人が申立人組合 員で あった。
⒆
5年12月時点で、 下関運転所で は、 17人の運転士が過 員の状態 であっ
た。一方、広 島運転所 では、同年 11月の運転 士の死亡、運 転士の助 役へ
の昇格による三 次鉄道 部及び可部鉄 道部への 助勤等で4人の 運転士 が欠
員の状態であ った。こ のため、支社で は、広 島運転所から 三次鉄道 部及
び可部鉄道部 に各1人 ずつ 30代の運転士を、下関運転所か ら広島運 転所
に2人の運転 士を配転 することとし た。なお 、助勤とは、運 転士の 場合、
長期の病休者 が出た場 合等 に元の運 転区所等 に籍を置いたまま 他の 運転
区所等に手伝 いに行く ことをいう。
⒇
支社では 、この配 転ついては、 広島運転 所の乗務行路 の約 90パーセン
トが運転でき るとして 電気機関車及 び電車が あるいは電気 機関車、電車
及びディーゼ ル機関車 の運転資格を 持った運 転士で、経験 を積ませ ると
して年齢が若 く運転士 経験の浅い運 転士の中 から、家庭状 況等が転 勤に
耐えうる運転 士という ことを基準と してX4 、X6の2人 (以下「 X4
ら 」 と い う 。) を 選 考 し た 。 当 時 、 下 関 運 転 所 に は 、 電 車 単 種 の 運 転 資
格を持つ20代から 30代の運転士とし て、Z5 、X 33、X34、X35、X 36、
X37、X38、X 39らが いたが、選考さ れなか った。その他、 30代の 運転
- 20 -
士として、Z 6、Z7 、X 40、X41、X42、X43、X44、X45らがいた
が 、 配 転 の 基 準 に 合 わ な い た め 選 考 さ れ な か っ た 。 X 4ら は 申 立 人 組 合
員 で あ り 、 X 4は 下 関 運 転 所 分 会 の 青 婦 部 長 、 X 6は 同 副 部 長 で あ っ た 。
なお、Z 5、Z6 、Z 7は西労組の組 合員であ りX 33、X34、X35、X 36、
X37、X40、X 41、X42らは申立人 組合員で あった。
(21)
X4は 、31歳で 電気機関車及 び電車の 運転資格を持 っており 、基 準の
運転資格を持つ運転士では三番目に若く、運転士経験は一番浅かった。
X4は次男であったが、独身で母親と下関市内の借家に同居していた。
母親は、喘息 で週1回 通院していた が、発作 を起こすこと もあった 。な
お、支社は、X4の 事 情については、 産業医 の意見を聞い て支障の 有無
を検討し、配 転に際し て、新幹線通 勤等いく つかの選択の 余地があ ると
判断した。
(22)
X6は 、31歳で電 気機関車及び 電車の運 転資格持って おり、基 準の運
転資格を持つ 運転士で は二番目に若 く、運転 士経験はX 4 、と 同様 一番
浅かった。X 6は、妻 子(幼児)及び 母 親と 同居していた 。母親は 、糖
尿病が持病で 、時々低 血糖で倒れる ことがあ った。なお、 支社は、 X6
の事情につい ては 、配 転に際して 、新幹 線通 勤等いくつか の選択の 余地
があると判断 した。
(23)
支社は 、X6に 対 して5年 12月8日付け で、X4に対 して同月 9日付
けで下関運転 所から広 島運転所への 配転の事 前通知書を交 付(以下「 X4
ら の 本 件 各 配 転 命 令 」 と い う 。) し た 。 同 月 17日 、 X 4 ら は 、 下 関 運 転
所から広島運 転所に転 勤した。
(24)
X4ら の配転前 の下関運転所 分会青婦 部の役員は、部長1人 、副部長
2 人 、 書 記 長 1 人 、 常 任 委 員 7 人 ( X 31の 配 転 前 は 8 人 )、 会 計 監 査 1
人であった 。X4 の後 任は残った副 部長が昇 格し、X 6の後任 は常 任委
員の1人が昇 格した。 なお、後任の 部長は6 年7月大阪へ 広域出向 した
ため、X4が 配転にな る前の部長在 任当時の 会計監査が後 任の部長 とな
った。
(25)
6年2 月頃、運転 資格者として 要請して いた支社課員 等が運転 資格を
取得した 。( 19審P14)
(26)
6年3 月1日 、広島運転所か ら 11人、可部鉄道部か ら2人 、下関運転
所から3人の 運転士が 広島高速に出 向になっ た。支社はこの 出向を 高齢
者対策として 実施する ことにし 、出 向運転士 の選考におい て、通勤 等を
勘案して広島 地区居住 の 50代の高齢 者運転士 を対象とし、不 足人数 を下
関運転所から 出向させ たが、申立人組 合ら及 び申立人組合 員はこの 基準
を知らなかっ た。これ により、広島 運転所は 10人の欠員、 下関運転 所は
14人の過員の 状態とな った。な お、下 関運転 所から出向し た運転士 は出
向 を 希 望 し た 17人 の う ち の 3 人 で 、 い ず れ も 50代 で あ り 、 X 9 、 X 11、
X12、X29は、出向に ならなかった 。
(27)
6年 3月時点 で、下関運転所 の運転士 は114人で申立人組 合員 が93人、
- 21 -
西労組の組合 員が 21人であった 。このう ち、 40代で実際に 運転業務 に携
わ る 運 転 士 は 、 申 立 人 組 合 員 が 33人 、 西 労 組 の 組 合 員 が 2 人 で あ っ た 。
また、30代の運転士は 、申立人組合 員が 34人、西労組の組 合員が3 人で
あった。
(28)
6年3 月の段階 で、特例募 集による運 転士登用待ち の運転有 資格者 20
人は、広島車掌 区に 16人、下関車掌区 に4人 が所属してい た。広島 車掌
区に所属して いた 16人のうち4人は、駅への 兼務運用によ り駅業務 に従
事していた。
(29)
支社は 、広島運 転 所の 10人の欠員の状態 を解消するた め、過員 の状態
の下関運転所 から7人 の運転 士の配 転を計画 した。それで もなお不 足す
る3人につい て、支社 は、駅業務、車 掌業務 の人員が不足 していた ため、
特例募集によ る運転士 登用待ちの有 資格者を すぐには登用 できない こと
から、運転有資 格者と して養成して いた支社 課員等を一時 的な欠員 対策
として臨時的 に運転士 業務に従事さ せること とした。
(30)
支社で はこの配 転について 、運転資格 についてはX 4らの本 件各配転
命令と同じ理 由で電気 機関車及び電 車かある いは電気機関 車、電車 及び
ディーゼル機 関車の運 転資格を持っ た運転士 で、年齢につ いてはこ れら
の運転資格を 持ってい る運転士 の広 島運転所 と下関運転所 の年齢構 成を
比較し、両運転 所の運 転士の年齢構 成のバラ ンスをとるた めに 40代の運
転士の中から 、家庭状 況等が転勤に 耐えうる 運転士という ことを基 準と
してX9、X12、X10(以下「X10」という 。)、 X 13(以下「X 13」と
いう。)、X 14(以下「 X 14」という 。)、X 29、X11の7人(以下「 X9
ら 」 と い う 。) を 選 考 し た 。 X 9 ら は 40代 の 運 転 士 で 、 電 気 機 関 車 、 電
車及びディー ゼル機関 車の運転資格 を持って おり、かつ全員 が申立 人組
合員であり 、X 9 は申 立人地本山口 支部委員 長、X 12は下関運 転所 分 会
乗務員分科会事務次長であった。支社は、X9らの家庭事情について、
病弱の同居者 がいる場 合には、当人以 外に介 護する者がい ること等 の状
況を確認して いた。ま た、単身赴任と なる場 合には、別居手 当等の 措置
を講じていた 。
(31)
X9は 、配転前 は 下関市内の被 申立人の 社宅に、共稼 ぎの妻及 び子供
2人(1人は中 学3年 生)と居住して いた。 70歳を超える 母親が山 口県
豊浦郡豊浦町 に居住し 、足の具 合が悪い ため 通院していた 。X 9は 持家
ではなかった ため、配 転当初は単身 赴任して 広島市内の被 申立人の 寮に
入った。
(32)
X 12は 、 下 関 市 内 の 自 宅 に 共 稼 ぎ の 妻 及 び 子 供 2 人 と 居 住 し て い た 。
自宅を3年6 月に新築 し、住宅 ローンの 返済 中であった 。妻は 自律 神経
失調症が持病 で腰痛等 年1回程度症 状が現れ ていたので、 X 12はなるべ
く一緒にいる よう心が けており、個 人面談に おいてもその 旨を説明 して
いた。配転後 は新幹線 通勤をした。
(33)
X10は、豊浦郡豊 北町の実家 に両親 、妻 及び子供 3人と居住していた。
- 22 -
兼業農家で主 にX 10と妻が米を作っ ていた。 父親は 77歳で病弱、母 親は
69歳で、子供は 中学3 年生、小学6年 生、同 3年生の3人 であった 。父
親は4年に倒れ 3か月 入院したが 、その時は 母親が付き添 った。X 10は、
家庭の事情を 個人面談 の時に説明し ていた。 X 10は、持家で はなく 、通
勤時間も2時 間を超え ることになる ため 、新 幹線通勤が認 められず 、配
転後広島市内 の被申立 人の寮に単身 赴任した 。
(34)
X13は、下関市 内 の自宅に妻及 び子供1 人と居住して いた。母 親は病
弱であり、弟夫 婦と居 住していた。X 13は、 出向経験はな かった。 配転
後な新幹線通 勤をした 。
(35)
X14は、下関 市 内の借家に妻 と同居し ていた。妻は、喘息が 持病 で通
院していた。 母親は別 居していたが 、病弱で 毎日通院 して いた。持 家で
ないため、配 転後は単 身赴任した。
(36)
X29は、下関 市 内の自宅に母 親、妻及 び子供3人と 居住して いた。母
親は、2年半 前、右足 大腿骨骨折で 手術歴が あり、少し足 が不自由 であ
った。長男が高 校3年 生で 受験を控 えていた 。X 29は、家庭状況 か ら配
転ではダメー ジが大き いと考え 、広島高 速に 出向希望を出 していた 。配
転後は新幹線 通勤をし た。
(37)
X11は、下関 市 内の自宅に両 親、妻及 び子供2人と 居住して いた。母
親は病弱で、 子供は進 学を控えてい た。また 、住宅ローン を返済し てい
た。配転後は 新幹線通 勤をし た。
(38)
広島運 転所で、X 4は6年3月 から7年 12月まで電気 機関車・電車組
におり、X6 も6年3 月から 8年3 月までと 同年8月から 9年9月 ま で
同組にいたこ とがあっ た。
(39)
支社は、6 年2月 23日付けでX 9に対し て、同月 24日付けでX10、X29
に 対 し て 、 同 月 26日 付 け で X 11に 対 し て 、 同 月 27日 付 け で X 12、 X 13、
X14、に 対して 、下関 運転所から広 島運転所 への配転の事 前通知書 を交
付 ( 以 下 「 X 9 ら の 本 件 各 配 転 命 令 」 と い う 。) し た 。 同 年 3 月 7 日 、
X9らは下関 運転所か ら広島運転所 に転勤し た。
(40)
6年3 月7日 、下関運転所か ら山口鉄 道部へX 46、X47が、宇部新川
鉄道部へX33が配転さ れた。X 46、X47及び X33の3人(以下「 X 46ら」
という。)は全員 申立 人組合員であ り、X 46は下関運転所 分会副分 会長、
X47は申立人 地本執行 委員、X 33は下関運転 所分会青婦部 常任委員 であ
った。
(41)
6年4 月 26日に開催の経小で 、申立 人 地本と支社は 、特例 募 集による
運 転 士 登 用 待 ち の 運 転 有 資 格 者 の 登 用 ( 以 下 「 本 件 登 用 」 と い う 。) に
ついて協議し た。この 中で、申 立人地本 側は 翌 27日付けの 登用を運 転有
資格者の資格 取 得の順 番を無視した 登用であ るとして抗議 したが、支社
側は駅及び車 掌の要員 の関係でやむ を得ない こと、年度内に は全員 登用
する予定であること、今後こういうケースはあり得ることを説明したが、
物別れに終わ った。
- 23 -
(42)
6年4 月 27日、支 社は、特例募 集による 運転士登用待 ちの運転 有資格
者20人のうち、車掌を していた電車 の運転資 格を持つ 11人を運転士 に登
用した。この11人の資 格取得年月別 の内訳は 、3年8月5人、4 年 1月
2人、同年7 月2人、 5年4月2人 であった 。
(43)
6年4 月時点で 、下関運転所に は 99人の運転士がおり 、申立人 組合員
が77人、西労 組の組合 員が 22人いた。
(44)
6年6 月時点で 、支社で は、車 掌が8 人の過員の状 態であっ たが、夏
季の多客輸送 、臨時列 車等のため、 その8人 に車掌の業務 をさせる こと
が必要であっ た。
(45)
6年7 月、X 9 は、下関 市内にマ ンシ ョンを購入し 、自 宅か らの新幹
線通勤に切り 換えた。
(46)
6年9 月 26日、支 社は、特例募 集による 運転士登用待 ちの運転 有資格
者9人のうち車 掌をし ていた ディーゼル 車の 運転資格を持 つ5人を 運転
士に登用した 。この5 人の資格取得 年月別の 内訳は、3年 4月2人 、 4
年3月3人で あった 。この結果 、特例募 集に よる運転士登 用待ちの 運転
有資格者は、 駅業務に 従事していた 4人だけ になった。
(47)
6年12月3日 、被申立人は 、ダイ ヤ改 正を実施し 、駅の 効率 化を図る
ことにより駅 の人員を 削減した。ま た、ブル ートレインを 廃止する など
して車掌の人 員も削減 した。
(48)
6年12月15日、支 社は、駅業務 をしてい た 17人の車掌 を車掌業 務に復
帰させ、残っ ていた運 転士登用待ち の運転有 資格者3人を 運転士と して
登用した。こ の3人の 資格取得月別 の内訳は 、電車の運転 資格を持 つ3
年8月の2人、ディー ゼル車の運転資格 を持 つ4年3月の1人であった。
また、残る1 人は、6 年 12月末での 退職の意 思表示をした ため、登 用さ
れなかった。 なお、発 令行為となる 運転士登 用の事前通知 書は、少 なく
とも7日前に はこの3 人に交付され ていた。
(49)
6年12月15日、本 件不当労働行 為救済を 求める申立て が当地労 委にな
された。
(50)
7年4 月時点で 、下関運転所に は 98人の運転士がおり 、申立人 組合員
が63人、西労 組の組合 員が 35人いた。
(51)
7年10月、三原 、徳山、下関に地域 鉄 道部が設置さ れ、下関 運転所は
下関地域鉄道 部下関運 転派出に組織 改正され た。
(52)
8年 1月 、X10は、下関地 域鉄道部 下関 運転派出に助勤になったため、
豊北町の実家 から通勤 できるように なった。
(53)
8年2 月、X 13、X14及びX29は、下関 地域鉄道部下 関運転派 出に助
勤になった。
(54)
8年3 月、下関 地 域鉄道部下関 運転派出 が下関地域鉄 道部下関 乗務員
センターに統 合され、 運転士の要員 が 10人増となった。
(55)
8年 4月 、X29は、下関地 域鉄道部 下関 乗務員センター に配転 された。
(56)
10年2月22日から同月 24日付けで 、X 4、X6 は、他 の申立 人組合員
- 24 -
3人と広島車 掌 区兼務 、広島 車掌区 在勤を命 じられ、同年 3月2日 から
車掌業務に従 事した。
(57)
10年3月11日、当 地労委におい て、X 30らの各配転に 係る不当 労働行
為救済を求め る申立て に対して、申立 人らの 請求を棄却す る命令が 決定
さ れ 、 同 月 24日 、 申 立 人 ら 及 び 被 申 立 人 に 命 令 書 の 写 し が 交 付 さ れ た 。
第3
判
1
断
本件抗議 行動及び X1らの本件 各処分に ついて
⑴
申立人の 主張
ア
申立人地 本は、不 合理な施策で ある岩国 運転区の新設 による労 働強
化、岩国運転 区への不 当配転と配転 を口実に した申 立人組 合破壊な ど
に反対して本 件抗議行 動を実施した 。被申立 人は、これを 敵視し、 そ
の報復として 、参 加し た申立人組合 の中心的 役員に対して X1らの 本
件各処分を行 ったもの である。X 1らの本 件 各処分は、明らかに 組 合
活動への支配 介入、組 合役員への不 利益扱い である。
イ
被申立人 は、広島 運転所から岩 国運転区 への配転に際 して 、申 立人
組合の活動家 を意図的 に除外し 、被申立 人に 都合の良い運 転士を配 転
させて、従来 から続け ている脱退 慫 慂を狙お うと するもの である。
ウ
申立人組 合は 、6 年8月7日以 降予想さ れる配転命令(事 前通 知書
の交付)に 対しては 転 勤希望者につ いてはこ れに応じ、そうでな い 場
合は抗議行動を行うとともに簡易苦情処理の申告をすることとした。
このため、広 島運転所 分会は、同分 会役員を 乗務員室に配 置し、ま ず
簡易苦情処理 の申告は 翌日までに会 社に提出 しなければな らないた め
書き方が分からない組合員に対して記載方法等を指導することとし、
さらに不当な 配転につ いては現場管 理者に理 由を質しなが ら抗議を す
ることとした のである 。X1らの本 件各処分 は、このよう な組合と し
て当然取り組 むべき活 動の中で、同 月8日か ら同月 11日にかけて行 わ
れた抗議行動 をもって 処 分事由とさ れたもの である。
エ
本 件 抗 議 行 動 に つ い て は 、 被 申 立 人 は 、「 上 司 の 再 三 の 退 出 命 令 を
無視した、上 司に暴言 を吐いて正常 な業務を 妨害した、職 場の規律 を
乱した」等々と説 明し ているが 、次のと おり 事実は異なり 、退 出命 令
が出されていなかったり、暴言を吐いたような事実は認められない。
本件抗議行動 は、業務 妨害や職場規 律の 紊乱 を指摘される ものでは な
く、組合活動 ・争議行 為としては正 当な範囲 内のものであ った。
(ア) X1分会 長につい ては、「 事前通知 書の 受取拒否を教 唆扇動し た」
として処分 されてい る が、このよ うな 事実 は ない。そも そも広島運
転所分会は 、事前通 知 書の受取拒 否の方針 や 指示を一切 出していな
い。
(イ) X1分会長ら申 立 人組合役員 が、暴言 を 吐き、上司 の退出命 令 に
応じなかっ たとされ る 処分事由に ついても 、 不当労働行 為の存在を
具体的に指 摘し直ち に 中止をする よう要求 し たもめや不 当な配転に
- 25 -
ついて抗議 をしたも の 、さらには 支社課員 が 動員された ことによっ
てかえって 混乱が生 じ ることから 支社課員 を 引き上げる よう要求し
たものに外な らない。
X4、X3、X7及 びX8 につい ては 、
「 科 長室へ行くこ とはない 。
乗務員室で 受け取れ 」 などと発言 した もの で 、そもそも 勤務を終了
した社員の拘束時間 後 の手交 について抗議 しているものに外 ならず、
しかも乗務員 室では受 け取ることを 明言して いるものであ る。
X4、 X6及び X 8らが、支 社課員に 対 して、帰る ように要 求 し
たのは、支 社課員が 20人以上も動 員され、 異 常な状況の 中で交付行
為が行おう とされて い ることにつ いて抗議 の 意思表示を したもので
ある。
なお、X 6及びX 3らが、対立 関係にあ る労働組合に 所属する Z2
主任運転士 に対して 行 った言動に ついては 、 現実には同 主任運転士
の業務には何 らの影響 を与えている ものでも ない。
(ウ) 上記(イ)のような 状況の中で 、申立人 組 合員が抗議を 行うのは 当然
のことであ り、この よ うな正当な 組合活動 の ため、会社 施設内に一
定時間とど まること が 退出命令違 反となら な いことはい うまでもな
い。
(エ) 6年8月9日午 前 11時頃、X24書記長 が Y9人事課 長との間 で 混
乱を収拾す るための 協 議を行って いる事実 が 存在し、こ の協議によ
って支社課 員が引き 上 げられ、事 前通知書 の 交付が徐々 に行われ、
申立人組合 役員らの 数 も減少し、 会社側の 退 出命令も出 されず、混
乱した事態の 収拾が実 現した。
オ
X1らの 本件各処 分の手続きに つい ては 、被申立人は被 処分者 の事
情聴取を行わず、各人 の具体的行為を特 定することを全くしていない。
⑵
被申立人 の主張
ア
X1らの 本件各処 分については 、被 申立 人は証拠によ って 、被 処分
者らの行為を 具体的、 客観的に事実 確認した うえ、公正適 正に行っ た
ものである。X1らの本件各処分が被処分者らの行為の態様、程度、
結果等を考え ると重き に失していな いことは 明白で、認定 事実のよ う
な行為をする 社員は就 業規則に違反 した社員 として、処分 されるの は
当然の事理で あり、被 処分者らが申 立人組合 の役員等であ ったこと と
は全く関係が なく、決 して 同組合の 中心的役 員を狙いうち したもの で
はない。
イ
岩国運転 区への運 転士の配転は、転出側 である広島運 転所等と 転入
側である岩国 運転区双 方の業務執行 体制を勘 案し人選したものであり、
また、社員の 配転につ いて、被申立 人と労働 組合が相談し て行うよ う
になっている わけでは なく、被申 立人とし て は、業務上 の必要性 に 基
づき、社 員の能力 、適 性等を総合的 に勘案し ながら、社員の能 力の 有
効活用の観点 から実施 しているもの である。
- 26 -
ウ
X1分会 長ら被処 分者は、6年8月 8日 から同月 11日の間に 、岩国
運転区設置に 伴う関係 社員に対する 事前通知 書 交付の際に 、上 司の 退
出命令に従わ ず、上 司 等に暴言を吐 き、正 常 な業務遂行を 集団で妨 害
する行為を行 い、職 務 上の規律を乱 し、社 員 として著しく 不都合な 行
為を行ったも ので、特 にX1分会長、 X5、 X4、X 6及び X3は 上
司の退出命令 に再三に わたり従わず 、さらに X1分会長は 他の社員 を
教唆扇動して それらの 行為をさせた もので 、これらの行為 が就業規 則
第 146条 第 1 号 、 第 2 号 、 第 3 号 及 び 第 12号 に 、 X 1 分 会 長 に つ い て
はさらに同条 第 11号に各々該当する ことが明 らかで、過去 の事例等 を
総合的に判断 し、賞 罰 審査委員会で 審議の結 果、X1分 会 長は同 規 則
第 147条 第 1 項 第 4 号 に よ り 減 給 、 X 5 、 X 4 、 X 6 及 び X 3 は 同 項
第5号により 戒告 、X 7及びX8は 同条第2 項により訓告 という処 分
を決定したも のである 。
エ
X1らの 本件各処 分の手続につ いては、懲戒処分に先 立って被 処分
者から事情聴 取をしな ければ処分で きないも のではないう え、X1 ら
の本件各処分 における 事実認定は 、広島 運転 所の管理者や 支社課員 等
の現認書に基 づき、同 人等から事情 聴取をし て行ったもの で、被 処 分
者らの行為等 が明白で あったから 、手続的 に 違法・不当との主張 は 全
く理由がない 。
⑶
当委員会 の判断
ア
職場内で の組合活 動は、使用者 の許諾が なければでき るもので はな
く、許諾 なくして行われた組合活 動は一般 に違法といわざるを得ない。
しかしながら 、このよ うな違法とさ れるべき 組合活動であ っても、 こ
れに対して懲 戒処分が なされ、それ が不当労 働行為に該当 するかど う
かが問われて いるとき には、許諾を 得ていな いということ の外に、 そ
の組合活動の 必要性 、態様、その 組合活動 が 与える悪影響 の程度等 諸
般の事情を総 合的に勘 案 して、当該 組合活動 が正当なもの かどうか を
みるべきであ る。
イ
以上のよ うな観点 から、本件抗 議行動が 正当な組合活 動かどう かを
判断する。
(ア) 申立人組合らの 主 張によると 、広島運 転 所分会は岩 国運転区 へ の
配転を希望 しない者 に 事前通知書 が交付さ れ ようとした 場合に、申
立人組合役 員が簡易 苦 情得処理の 申告の記 載 方法の指導 と不当な配
転に対して 理由を質 し ながら抗議 をするた め に本件抗議 行動を行っ
ており、そ の目的が 違 法なものと はいえな い が、前記第 2の2の ⑶
のキ、ソ及 びテ並び に 同3の ⑴の とおり、 申 立人組合ら は岩国運転
区の設置そ のものに は 反対してい ないこと 、 岩国運転区 の開設が差
し迫り、事 前通知書 の 交付は開設 日の少な く とも7日前 には被配転
者に交付す る必要が あ り、この時 点で抗議 行 動をしても 変更 になる
可能性はな かったこ と などを考え 併せると 、 理由を質し ながら抗議
- 27 -
をする行為 が中心的 な ものとなる ことは明 ら かであり、 その意味に
おいては目 的自体に 限 度を超える 危険性が 内 在しており 、あえてそ
の危険を冒 してまで 本 件抗議行動 をしなけ れ ばならない 直接的な必
要性があった かどうか には、若干の 疑問があ る。
(イ) 前記第2の3の ⑴ 、⑵、⑶、 ⑹及び⑻ の とおり、事 前通知書 の 交
付は過去に おいては 運 転科長室に おいて実 施 されていた のに、終了
点呼後の勤 務時間外 の 交付である ことを主 張 することに よって、申
立人組合の 役員らが 5 人から 14人待機して い る乗務員室 において被
申立人に事 前通知書 を 交付させる ことによ り 、申立人組 合役員らの
発言や行動 がし やす く なり、乗務 員室内が 騒 然となった ことが認め
られる。申 立人組合 ら は、簡易苦 情処理の 申 告の書き方 が分からな
い組合員に 対して記 載 方法等を指 導するた め 待機したも のであると
主張するが 、それな ら ば事前通知 書交付後 、 組合事務所 で指導する
など穏やか に処理で き る方法は外 にもあり 、 申立人組合 役員らが常
時5人から 14人も張 り 付く必要は ない。抗 議 することが 目的である
ならば、申 立人組合 員 らが1、2 人いれば 良 いことで、 やはり多人
数がいる必要 性はない ものである。
また、 前記第2 の 2の ⑶のア 及び同3 の ⑺のとおり 、管理者 側 も
騒然とした 状態にな っ た場合、乗 務員室と 一 体となって いる指導・
運転当直室 で交番担 当 や助役等が 執務して い るのである から、職場
の秩序を守 るため、 生 じた混乱を 収拾し、 さ らには今後 予測される
混乱を防ぐ ために、 乗 務員室内に いる社員 に 退出命令を 出すことは
必要な措置 で、申立 人 組合役員ら がそれを 無 視して会社 施設内にと
どまることは 退出命令 違反となるも のである 。
したが って、そ の 態様におい て、本件 抗 議行動は問 題があっ た と
いうしかない 。
(ウ) 前記第2の3の ⑷ 、⑻及び⑽ のとおり 、 結局は、期 日までに は 全
員に対して 交付は終 わ ったものの 、本件抗 議 行動により 事前通知書
の受取拒否 者が9人 も 出たことが 認められ る 。この場合 、一見自発
的に事前通 知書の受 取 拒否をして いるとみ ら れる場合で あっても、
結果的に申 立人組合 役 員らの言動 により被 交 付者が受取 を拒否せざ
るを得ない 状況を作 っ ていたと考 えられる 。 前記同2の ⑶のソ並び
に同3の⑶ 及び⑺の と おり、本件 抗議行動 は 、既に6年 8月 20日に
おける岩国 運転区の 設 置とそれに 伴うダ イ ヤ 改正が決ま っている同
月8日から 同月 11日に かけての事 前通知書 の 交付に対す るものであ
り、仮に受 取拒否が 続 いて期限内 に同書の 交 付が終わら なかった場
合には、被 申立人の 業 務に重大な 影響が出 る ことは明ら かである。
事実、本件 抗議行動 に より、辞令 交付の業 務 に支障が生 じており、
また、前記 同 ⑻のア 及 びカのとお り、運転 当 直助役や交 番担当の通
常の業務に も支障が 生 じたことが 認められ る ため、本件 抗議行動が
- 28 -
被申立人に 与えた業 務 への悪影響 の度合い は 大きかった ものといえ
る。
以上の ようにみ て くると、本 件抗議行 動 は、総体と しては、 正 当
な組合活動で あるとは いいがたい。
ウ
次に、本 件抗議行 動におけるX 1分会長 ら被処分者各 人の言動 につ
いてみてみる と、
(ア) X1分会 長につい ては、前記第 2の3の ⑻のオ、カ、キ、ク、コ、
サ、シ、ス 及びセ並 び に同 ⒅のと おり、6 年 8月8日 19時50分頃広
島運転所管 理者らを 「 訴えてやる 」等と大 声 で喚いたこ と、同日 19
時55分頃広島運転所 管 理者等の家 族宛の葉 書 に対する厳 重注意の際
に、「こ んなもの は受 けとれん 」「今後 、助 役の家を 一 人ひとり 回 る
けん」等と 発言した た め、乗務員 室にいた 申 立人組合役 員ら 13人ぐ
らいがX1 分会 長の 付 近に集まり 騒然とな っ たこと、同 日 21日10分
頃X18運転士等に対する事前通知書 交付の際 に、
「 支社は何 しに来た」
「お前らは 帰れ」等 と 罵声を浴び せたこと 、 同日 22時頃X20運転士
に対する事 前通知書 交 付の際に、 支社課員 に 対して「何 をしょうる
んか」との X1分会 長 の発言に端 を発して 周 りの申立人 組合役員ら
が口々に発 言し、同 運 転士が「私 は岩国を 希 望していな いからね。
絶対に貰わん ど」と 発 言したこと 、それを 聞 いて「よし 」
「 よし 」
「よ
し」と周 りの申 立人組 合役員らが発言するとともに拍手 をしたこと、
さらにX1分 会長が「 何か、
(運転 )科長、希望していな い。ど う い
うことなん か、えっ 、 不当労働行 為で暴露 す るぞ。街宣 (車)を停
めるぞ」等 と発言し 、 結局、X 20運転士に 対 しては事前 通知書が交
付されなか ったこと 、 同月9日8 時過ぎ頃 X 22運転士に 対する事前
通知書交付 の際に 、「 何でや、や かましい 、 異常だ」「つまら んも の
を受け取る ことはな い ぞ」等と発 言したた め 、結局、同 運転士に対
しては事前通知書が交 付されなかったこと、同日8時 50分過ぎ頃X23
運転士に対す る事前通 知書交付の際 に、
「こ らっ、事務 助役、苦情 処
理の書類を 一緒に出 せ と言うとろ うが 」、「 明 日から仕事 をせんとい
うて書け」等大 声で怒 鳴ったこと、同 日9時 頃Y3指導総 括助役の 、
当日2回目の 退出命令 通告の際に 、
「何を 言 いよるんか、何回でも 言
え」と発言 したため 、 乗務員室内 にいた申 立 人組合役員 らはこの命
令を無視し たこと、 同 日9時 45分頃Y3指 導 総括助役の 当日3回目
の退出命令通 告の際に 、
「つ まらん役 を仰せ つかって、分かった 、分
かった」と 発言した た め、乗務員 室内にい た 9人程度の 申立人組合
役員らは退 出しなか っ たこと及び 同日 10時15分過ぎ頃支 社課員を含
めた広島運 転所管理 者 側の体制を 見たX5 の 発言に加勢 して「新聞
社に電話して ぐれ 」
「 あ ー、支 社の馬鹿 が。管理能力がな い」等と 発
言したこと並 びに6回 の退出命令 に従 わなかったことが認 められる。
(イ) X5については 、 前記第2の 3の ⑻の イ 、セ及びチ 並びに同 ⒆ の
- 29 -
とおり、6年 8月8日 16時50分頃「でたらめ を言うやつは 処分せ ー 」
と言って全 動労の組 合 情報誌を運 転科長室 に 投げ込んだ こと、同月
9日10時15分過ぎ頃 支 社課員を含 めた広島 運 転所管理者 側の体制を
見て「どう したんな あ ー、おい。 運転所じ ゃ ない者が一 杯おるじゃ
ないか出せ ーや。… 責 任者は誰か 。…気分 が 悪くて点呼 を受ける気
がせんわ。新聞社に電 話せ ーや 」
「こげ え ー なんじゃ仕事 ができん じ
ゃないか。 わしゃ ー 点 呼を受けん で ー、列 車 を遅らせる で ー 、みん
な外へ出ー や」等と 発 言したこと 及び同月 10日16時頃X25運転士に
対する事前通 知書手交 の際に、
「受け取 るな」と発言したこ と並びに
5回の退出命 令に従わ なかったこと が認めら れる。
(ウ) X6については 、 前記第2の 3の ⑻の キ 、ク及びタ 並びに同 ⒆ の
とおり、6 年8月8 日 21時10分頃X18運転士 等に対する 事前通知書
交付の際に「支社 は何 しに来た 」
「お 前らは 帰れ」等 との罵声 を浴 び
せたこと、 同日 22時頃 X20運転士に対する 事 前通知書交 付の際に、
X1分会長 の発言時 に 同運転士を 取り囲ん だ 支社課員等 に対してカ
メラのフラ ッシュを た き写真を撮 ったこと 及 び同月9日 14時 20分頃
乗務前の西 労組所属 の Z2主任運 転士に対 し て「勝負し ようか」等
と発言した こと並び に 8回の退出 命令に従 わ なかったこ とが認めら
れる。
(エ) X3については 、 前記第2の 3の ⑻の タ 及びチ並び に同 ⒆ の と お
り、6年8 月9日 14時 20分頃乗務 前の西労 組 所属のZ2 主任運転士
に対して「お 前は岩国 に行かんのか 。西鉄労 が決めたんじ ゃろ ーが 」
「勝負しよ うか」等 と 発言したこ と及 び同 月 10日16時頃のX 25運転
士に対する 事前通知 書 交付の際に 、同書を 手 交しようと するY2所
長にX5ら とともに 近 づいて行っ たためY 1 運転科長に 制止された
が、結局、 X5の「 受 け取るな」 との発言 に より同運転 手が逃げて
手交できな かったこ と 並びに8回 の退出命 令 に従わなか ったことが
認められる。
(オ) X4については 、 前記第2の 3の ⑻の ア 、エ、キ及 びケ並び に 同
⒆のとおり 、6年8 月 8日 14時20分頃X15運 転士に対す る事前通知
書手交の際に 、
「転勤 の理由を説明 しろ」等 と発言したこ と、同 日 19
時30分頃X 17運転士に 対する 事前通 知書手交 の際に、
「おいっ 、コラ
ッ、勤務時 間外の者 を 連れて行く のは強制 連 行ではない か」等と発
言したこと 、同日 21時 10分過ぎ頃 X 18運転士 等に対する 事前通知書
交付の際に 、「支 社は 何しに来た 」「お 前ら は帰れ」等 との罵声 を 浴
びせたこと 及び同日 22時10分過ぎ頃X21運転 士に対する 事前通知書
交付の際に 、X4が 持 っていたテ ープレコ ー ダーを支社 課員の口付
近に近づけ 注意して も やめなかっ たこと並 び に6回の退 出命令に従
わなかったこ とが認め られる。
(カ) X8については 、 前記第2の 3の ⑻の ア 、ウ及びキ 並びに同 ⒇ の
- 30 -
とおり、6 年8月8 日 14時20分頃X15運転士 に対する事 前通知書手
交の際に 、
「所 長がこ こへ来て話せ 、こ こへ 来て、皆 の前で説 明し て
くれ。転勤 の理由を 言 わないのな ら、行か な くても良い 」等と発言
したこと、 同日 17時15分頃X16運転士に対 す る事前通知 書手交の際
に、
「 行くこと はない 、乗務員 室で受け 取れ 」等と怒 鳴ったこ と及 び
同日21時10分頃X18運転士等に対す る事前通 知書交付の際 に、
「 支社
は何しに来た 」
「お 前 らは帰れ」等 と罵声を 浴びせたこと 並びに3 回
の退出命令に 従わなか ったことが認 められる 。
(キ) X7については 、 前記 第2の 3の ⑻の ア 及びセ並び に同 ⒇ の と お
り、6年8 月8日 14時 20分頃X15運転士に 対 する事前通 知書手交の
際に、X 4、X8の発 言に呼応して 、
「行く ことはないぞ 、こ こで 所
長の話を聞 いて、こ こ で渡しても らえ」等 と 発言したこ と及び同月
9日10時15分過ぎ頃 支 社課員を含 めた広島 運 転所管理者 側の体制を
見た出勤直 後のX5 が 「どうした んなあ ー 、 おい。運転 所じゃない
者が一杯お るじゃな い か出せ ーや 。…責任 者 は誰か。… 気分が悪 ー
て点呼を受 ける気が せ んわ。新聞 社に電話 せ ーや」等と 発言したこ
とを受けて 、
「会社 は 責任をもって やると言 っ ていたが、これが会 社
の態度か」 と発言す る などし、乗 務員室内 が 騒然となっ たこと並び
に3回の退出 命令に従 わなかったこ とが認め られる。
エ
以上のよ うなX1 分会長ら被処 分者の言 動は、前記第 2の3の ⑺の
とおり、組合 活動は許 可を得なけれ ばならな いという就業 規則など に
違反し、再三 にわたる 退出命令に従 わず、辞 令交付や電話 の対応な ど
業務妨害や行き過ぎた言動が発生しており、会社の諸規程に違反し、
上長の業務命 令に従わ ず、企業秩序 及び職務 上の規律を乱 し、著し く
不都合な行為 を行った ものである。
オ
前記第2 の3の ⒅ 、⒆及び⒇の とお り、 被申立人は、 X1分会 長ら
被 処 分 者 の 行 為 を 就 業 規 則 第 146条 第 1 号 「 法 令 、 会 社 の 諸 規 程 等 に
違反した場合 」、第2 号「上長 の業務命 令に 服従しなかっ た場合 」、第
3 号 「 職 務 上 の 規 律 を 乱 し た 場 合 」、 第 12号 「 そ の 他 著 し く 不 都 合 な
行為を行った 場合」に 該当するとし て、懲戒 処分を行った ことが認 め
られる。なお、X1 分 会長に対して は、別に 同条第 11号の「他人を 教
唆扇動して 、上記の 各 号に掲げる行 為をさせ た場合」と いう処分 理 由
が付加されて いる。
カ
こうして みてくる と、X1分会長 ら被処 分者の言動が 就業規則 違反
であるとして 、退出命 令を受けた回 数の多い X5、X3、 X4、X 6
の4人が戒告、少ないX8、X7の2人が訓告処分を受けたことは、
不当であると はいえな い。
ま た 、 X 1 分 会 長 に つ い て は 、「 他 の 社 員 を 教 唆 扇 動 し た 」 と い う
事由が付加さ れ、減給 処分を受けて いるが、 X1分会長は 、前述ウ の
(ア)の と お り 、 6 年 8 月 9 日 8 時 過 ぎ 頃 X 22運 転 士 に 対 す る 事 前 通 知
- 31 -
書 交 付 の 際 に 、「 つ ま ら ん も の を 受 け 取 る こ と は な い ぞ 」 等 と 発 言 し
たため、結局 、同運転 士に対しては 事前通知 書が交付され なかった こ
と、同日9時 頃Y3指 導総括助役の 当日2回 目の退出命令 通告の際 に、
「何を言いよ るんか、 何回でも言え 」と発言 したため、乗 務員室内 に
いた申立人組 合役員ら はこの命令を 無視した ことなどが認 められ 、闘
争に取り組ん だ分会の 責任者たる分 会長であ るが、このよ うな状況 の
中でその場を 鎮めよ う とする行為に 出た様子 は全くなく 、本件 抗議 行
動の指導者と して率先 して行動して いること が窺えること 、また 、結
果的にそうい う騒然と した状態の中 で、受取 拒否した者が 9人いた こ
とは前記第2 の1の ⑴ のウ、同2の ⑶のテ並 びに同3の ⑻ 及び ⑾の と
おりであり、X1分会 長の発言や態度が騒 然 とした状態に拍車を掛 け、
教唆扇動行為 があ った とみなされてもやむ を 得ない状況であ ったと 認
められる。
キ
なお、申立 人組合 らは、その他、次 のよ うに主張する ので、こ の点
について判断 する。
(ア) 申立人組合らは 、 X 24書記長がY9人 事 課長との間 で混乱収 拾 の
協議を行っ て事前通 知 書の交付と 受取は徐 々 に実行でき たと主張し
ているが 、前記第 2の 3の ⑶、⑷、⑺ 並びに ⑻のソ及びチ のとおり 、
6年8月9 日 11時過ぎ のX 24書記長とY9 人 事課長との 会話後も乗
務員室にい る申立人 組 合役員らの 数は減っ て いないこと 、会話後1
日経過した 同月 10日16時頃にも受 取拒否者 が いたこと、 会 社の退出
命令も出さ れている こ とからみる と、事態 収 拾の協議が できたとい
う申立人組合 らの主張 は認めがたい 。
(イ) 申立人組合らは 、 処分手続に ついても 妥 当でないと 主張して い る
が、これについ ては、前 記第2の3の ⒃及び⒅ から⒇までの とおり、
被申立人は 支社の賞 罰 審査委員会 において 、 現場にいた 15人の広島
運転所管理 者及び支 社 課員の現認 書を総合 し て事実を認 定して処分
を決定して おり、事 情 聴取や弁明 の機会の 付 与をするこ とが望まし
いが、それを もって不 当とはいえな い。
(ウ) 申立人組合らは 、 申立人組合 の中心的 役 員を狙いう ちした も の で
あると主張す るが、申 立人組合らの 主張に沿 う疎明はない 。
ク
以上によ り、被申 立人の行った X1らの 本件各処分は 不当なも ので
はなく、組 合活動へ の 支配介入、申立人組 合 役員に対する 不利益取 扱
いとは認めら れず、不 当労働行為に は該当し ない。
2
徳山運転 区X2分 会長に対する 本件出勤 停止処分及び 本件出向 命令につ
いて
⑴
申立人の 主張
ア
本件出勤 停止処分 は、X2分会 長に対す る不当かつ差 別的な不 利益
取扱いであり 、本件出 向命令は、何 ら合理性 の認められな い不当な 不
利益取扱いに 外ならず 、このことは 申立人組 合の中心的役 員を選 別 的
- 32 -
に処分、出向 させるも ので、申立人 組合の、 組合活動に対 する 支配 介
入行為である 。
イ
本件出勤 停止処分 は、暴力事件 のみが前 例とされてい る 30日間の出
勤停止処分で 妥当性を 欠く不当なも のであり 、被申立人が あえて処 分
を発令したのは、X2分会長が徳 山運転区 分 会の分会長 の地位 にあり、
申立人地本の 中心的な 活動家である ことから 、申立人組合 の活動を 嫌
悪する被申立人が報復的恣意的に処分権を濫用行使したものである。
本件出勤 停止処分 の事由は、次 のとおり 不当なもので ある。
(ア) X2分会 長の言動 よりもZ 3指 導担当が 指導添乗 の原 則を守ら な
かったことが 問題とさ れるべきで、 その他に 同指導担当が マイオピ
ニオンの原稿 用紙をX 2分会長に投 げ渡した こと、西労組 所属の指
導担当が添乗 の機会に 申立人組合か らの脱退 工作を行って いる事実
が存在し、添 乗中止の 要求はZ 3指 導担当の 責任である。
加えて、 申立人組 合らはX2分 会長が前 日からの長時 間の勤務 で
疲労しており 、直近に 列車妨害があ ったので 安全運転に集 中する必
要があったこ とからZ 3指導担当が 横にいれ ば正常な運転 ができな
いと判断し、 添乗中止 を求めたもの である。
また 、結局は 添乗 を受け入れて おり 、運 転中の基本動 作の問題 は、
一部行わなか った事実 は認められる が、それ は列車の回復 運転のた
め手が離せな かったか らで、さほど 重大な動 作の過怠では ない。
(イ) 列車の遅 れの報告 については、 2分程度 の遅れ、終点 への 30秒程
度の遅着は事 故扱いし ないこととさ れており 、 しかも本件 事件の遅
着による影響 は全く生 じておらず、 虚偽報告 を行ったこと は全く認
められない。
(ウ) X2分会 長の日勤 勤務中の勤務 態度も問 題とされてい るが、む し
ろ上司である Y 11首席助役の申立人 組合員に 対して異常な 敵愾心を
示す態度こそ が問題で あり、このよ うな上 司 に対して椅子 を滑らせ
たことは責め られるべ き事柄ではな い。
ウ
本件出向 命令は業 務上の必要性 も合理性 も認められな いもので 、報
復的恣意的な 人事権の 行使であり、 申立人組 合に対するみ せしめと し
て申立人組合 員に動揺 を与えようと する支配 介入行為であ る。
本件出向 命令は、 次のとおり不 当なもの である。
(ア) X2分会 長には本 件出勤停止処 分事由の ような乗務員 の適格性 が
否定されるよ うな事実 はない。
(イ) 徳山運転区には X 2分会長よ り外に出 向 に適当な運 転士が存 在 し
ていた。
(ウ) 本件出向により 、 X2分会長 は乗務手 当 が なくなる など収入 の 減
少を強いられ たもので 、被った不利 益性は著 しい。
⑵
被申立人 の主張
ア
被申立人 は、X2 分会長の非違 行為を厳 正に認定し 、就業 規則 に照
- 33 -
らし、厳正 かつ公平 に 本件出勤停止 処分を行 ったものであ り、報 復 的
恣意的に処分権を行使したといわれるべき理由はなく、したがって、
同処分に基づ いて賃金 が減額された のは当然 の事理である から 、申 立
人らの減額賃金の 返還 申立ても本件出 勤停止 処分の取消申 立てと同 様、
次のとおり理 由がない 。
(ア) 運転士が指導担 当 の添乗を拒 否したこ と は前代未聞 の不祥事 で 、
これにより 列車の遅 延 、遅発を生 ぜしめた こ とは大変責 任の重い事
態であり、 多数のお 客 様の生命・ 財産を預 か り、安全・ 正確な輸送
を使命とする 当社とし ては到底容認 できない 。
(イ) 本件事件の事実 関 係の調査や 本人の再 教 育のために 日勤勤務 を 指
定し、事実 を確認す る とともに反 省を求め た が、X2分 会長は反省
するどころ か、上司 に 椅子を投げ て威嚇し た り暴言を吐 くなどとい
う始末であっ た。
(ウ) X2分会長の処 分 事由は明白 であり、 X 2分会長の 行った指 導 添
乗拒否、添 乗業務の 妨 害、列車運 転に関す る 基本動作の 欠如、終了
点呼におけ る虚偽の 報 告、列車を 遅れさせ た こと等を全 く意に介し
ていないこ と及びこ れ らの行為に ついて全 く 反省の態度 を示さず、
さらに上司 の業務指 示 に従わず、 暴言を吐 き 、威嚇する 行為は、就
業規則第146条第1号 の「法令、 会社の諸 規 程等に違反 した場合 」、
第2号の「 上長の業 務 命令に服従し なかった 場合」、第3号 の「職 務
上の規律を乱 した場合 」、第8号 の「懲戒 され るべき事実を 故意に隠
した場合」及 び第 12号の「その他著 しく不都 合な行為を行 った場合 」
に該当する ことは明 ら かで、この ような行 為 をなす社員 は、就業規
則に違反し た社員と し て、処分さ れるのは 当 然のことで あるから 、
申立人組合ら の主張は 理由がなく、 失当であ る。
イ
X2分会 長に対す る本件出向命 令に係る 申立ても次の とおり理 由が
なく、申立人 らの主張 は失当である 。
(ア) 被申立人は、本 件 出向命令に ついては 、 本件出勤停 止処分に 係 る
X2分会長 の行為が 社 員としてあ るまじき 行 為であるこ とは勿論の
こと、列車 運行の基 盤 を脅かすも ので、多 く のお客様の 生命や財産
を預かる運 転従事員 と してこのま ま従事さ せ ることは当 面不可能と
判断し、X 2分会長 の 今後の活用 方等を考 慮 して出向さ せるのが相
当と判断した ものであ る。
(イ) 本件出向命令の 発 令に際し て は、X2 分 会長に対し てあらか じ め
説明を行った 。
(ウ) 被申立人は、全 社 的に余剰人 員対策を 継 続しており 、これに 伴 う
配転等が発 生せざる を 得ない状況 にあり、 出 向者の交替 等出向の要
請は毎日のよ うにあっ た事情も考慮 したもの である。
⑶
当委員会 の判断
ア
X2分会 長に対す る本件出勤停 止処分に ついて
- 34 -
(ア) 前記第2 の4の1 (33)のとおり、X2分会 長に対する本 件出勤停 止
処分の事由 は、6年 10月1日列車 乗務に際 し 、指導担当 の指導添乗
を拒否し、 添乗業務 を 妨害し基本 動作の励 行 について幾 多の業務指
示を無視し 、これに 起 因す る列車 遅延を生 ぜ しめたこと 、更に、当
直報告に際 して列車 遅 延等を報告 しなかっ た こと、上司 への暴言等
であったこと が認めら れる。
本件事件 について は、前記 第2の4 の ⒀ 、⒂、⒃、⒄ 、(22)及び(23)
のとおり、 田布施駅 で Z3指導担 当が指導 添 乗のためX 2分会長の
運転する列 車に添乗 し たこと、添 乗したと き にX2分会 長がZ3指
導担当に対 して「や め てくれ」と 言ったこ と 、岩田駅に 着いたとき
にX2分会 長がZ3 指 導担当のカ バンを持 っ て客室扉を 開けて「降
りてくれ」 と言った こ と、Z3指 導担当の や り取りで岩 田駅を2分
遅発したこ と、 岩田 駅 を発車して からX2 分 会長がZ3 指導担当に
「次の駅で 降ろすか ら のう」と言 ったこと 、 島田駅でも X2分会長
はZ3指導 担当に対 し て「降りて くれ」と 言 ったこと、 最終的に終
着駅の徳山駅に30秒程 度遅着したこと、徳山 駅での終了点呼時にX2
分会長が「異 状なし」 と報告したこ とが認め られる。
(イ) 申立人組合らも 、 これらのこ とは認め た うえで、数 点主張し て い
るので、この 点につい て判断する。
a
指導添乗 拒否は、 マイオピニオ ン原稿用 紙の件に関す るZ 3指
導担当の元々 の態度や 同指導担当が 指導添乗 の原則を遵守 してい
ないこと等に 原 因があ ると主張して いる。
前記第2 の4の ⑺ 、⑻、⑽及び ⒁のとお り、マイオピ ニオンの
原稿用紙につ いてのや り取りは業務 上でのト ラブルである がX2
分会長とZ3 指導担当 の個人的な関 係であり 、それを指導 添乗の
業務にまで持 ち込んだ のはX2分会 長である こと、既にこ のトラ
ブ ル に つ い て は X 2 分 会 長 か ら Y 10区 長 に 抗 議 済 み で あ る こ と 、
脱退工作については申立人組合と他労 組との関係であり、特にZ3
指導担当個人 の事由で はないことか ら、この ことをもって 添乗中
止の言動を行 って良い ことにはなら ないとい うべきである 。
また、前 記第2 の 4の⑾及び⒀ のとおり 、Z3指導担 当が「お
願いしま ーす 」とだけ 述べて添乗し ていると しても、X2 分会長
は同指導担当 が指導担 当であること を知って いたこと、X 2分会
長もZ3 指導 担当に添 乗報告をしな かったこ とが認められ る。こ
の点、申立人 組合らは 、Z3指導担 当が指導 添乗の原則を 守らな
かったと主張 している が、そうだか らといっ てX2分会長 も添乗
報告をしなく ても良い ことにはなら ないとい うべきであり 、さら
に、そのこと をもって 「やめてくれ 」とか「 降りろ」とか 言うこ
とができるこ とにはな らず、まず、 同指導担 当に対して何 の目的
の添乗かを確 かめたり 、指導添乗の 原則が守 られていない ことを
- 35 -
指摘すれば良 いことで ある。また、 終了点呼 等のときにそ ういう
問題があった ことを報 告、指摘すれ ば良いこ とであって、 指導担
当の指導添乗 を拒絶す るが如き言動 を採るこ とは許される べきで
はない。
b
加えて申 立人組合 らは、X2分 会長は長 時間勤務によ る疲労や
直近の列車妨害による安全運転への神経集中の阻害となるため、
添乗中止を求 めたものであると主 張している。前記第 2の4の ⑸、
⑹、⑿及び (42)のとおり 、確かに当 該乗務行 路 は2日にまた がる行
路で拘束時間 も長く、 その後のダイ ヤ 改正で 廃止された経 緯をみ
れば問題があ る行路で あったことは 推認でき るし、直近に 列車妨
害があったこ とは認め られる。しか し、前述 のとおり、Z 3指導
担当との個人 的感情を 指導添乗の業 務に持ち 込んだのはX 2分会
長自身であっ て、それ により業務が できない ことを主張す ること
は妥当ではな い。
c
次に申立 人組合ら は、X2分会 長は結局 、添乗を受け 入れてい
るとか、運転 に際し基 本動作を怠っ たのは回 復運転に努め た結果
であり、さほど重大な動作の過怠ともいえないと主張している。
しかし、X2分会長が添乗を受け入れるのは当然のことであり、
回復運転に努 めること がすぐに基本 動作がで きないことに つなが
るとまでは判 断しがた い。
d
さらに申 立人組合 らは、途中駅 での遅れ や終点の遅着 について
の報告も虚偽 ではない と主張してい る。ま ず 、前記第2 の4の (23)
のとおり、徳 山駅遅着 については、 どの程度 遅れたのかに ついて
争いがある。
これにつ いては、 被申立人はZ 3指導担 当の報告のと おり1分
の遅れである と主張し 、申立人組合 らはX2 分会長の証言 、Z4
車掌の報告の とおり 30秒以内である と主張し 食い違いがあ る。こ
の点、本件事 件の直接 の当事者でな いZ 4車 掌が30秒の遅着 と報
告しておりX 2分会長 の証言と一致 している こと、Z4車 掌が虚
偽の報告をす ることは 考えにくく、 虚偽の報 告であったと の被申
立人側の主 張もないことから、遅着 は30秒であったと認められる。
そうする と、X2 分会長が途中 駅での2 分程度の遅れ や 30秒の
遅着を報告す べき義務 があったかど うかが問 題となる。規 程とは
別に途中駅で の2分程 度の遅れ、終 着駅での 30秒以内の遅 着は報
告をしなくて も良いと いう運用をし ていたと の申立人組合 らの主
張がある。現 に、前記 第2の4の (23)のとおり 、Z4車掌の 報告は
列車の遅れに ついて本 来記入さ れる べき「 運 転関係」の 欄には「異
状 な し 」 と 記 入 し て い る の に 、「 特 記 事 項 」 の 欄 に 改 め て 遅 れ を
記入しており 、この記 入は後から指 摘されて 記入された形 跡が窺
われ、主張の ような運 用がなされて いた可能 性もある。
- 36 -
この点、 申立人組 合らは2分の 遅れは報 告しない扱い であると
主張している が、前記 第2の4の (23)のとおり 、それは 列車が遅れ
た場合に遅れ の理由を 聞く列車指令 からの問 い合わせにつ いて2
分以内の遅れであれば理由は聞かないという趣旨のものであって、
点呼の際の報 告とは無 関係である。 しかもワ ンマン線区の 取扱い
であるので、本件事件には該当しないことが明白である。また、
前記同(22)のとおり、列 車乗務員は乗 務中の異 常の有無を動 力車乗
務員乗務表に 記入し終 了点呼を受け る制度に なっており、 列車の
遅れは15秒単位毎に途 中駅でも到着 駅でも記 入している例 がある
ことが認めら れる。さ らに、前記同 (23)のとお り、X2分会 長の証
言によると同 乗務表は 少なくとも 30秒単位で は報告するこ とを認
めており、そ うであれ ば途中駅での 2分の遅 れについては 報告す
る義務があっ たといわ ざるを得ない 。
次に、 30秒以内の 遅着について は報告し なくても良い 運用をし
ていたことが窺われないでもないことは前述のとおりであるが、
それ以上のこ とについ て疎明がなさ れたとは 認めがたい。
以上のこ とから、 X2分会長は 途中駅の 遅れも徳山駅 への遅着
も報告義務が あったに もかかわらず 報告しな かったものと 認めざ
るを得ない。
(ウ) ところで、被申 立 人は、本件 事件後も X 2分会長は 業務指示 に 従
わなかったな どと主張 している。
a
前記第2 の4の (28)及び(29)のとおり、X2 分会長は6年 10月1日
の本件事件後 、同月6 日から日勤勤 務に指定 され、業間訓 練室で
本件事件の事 情聴取を 受け、運転取 扱心得の 熟 読、事故情 報を基
にその原因や 対策の考 慮等を指示さ れたこと が認められる 。日勤
勤務の指定は、いろい ろの場合があ ることは 前記同 (28)のとおりで
あるが、X2 分会長に 対する指定は 本件事件 により列車を 遅延さ
せたこと、す なわち運 転事故を起こ したこと と指導担当の 業務を
妨害したこと が理由で あり、事情聴 取と運転 の基本等の再 訓練の
ためであるこ とが認め られる。
しかし、 事情聴取 は ともかくと して運転 等の基本の再 訓練につ
いては、本件 事件を起 こしたことに よる乗務 停止の意味合 いがあ
ることは否定 できない うえに、事情 聴取が終 わった6年 10月12日
から同月 30日まで指定 を継続したこ と、運転 の基本等の再 訓練と
いいながら指 導担当 や上司等が同席のうえ指 導したわけではなく、
単に運転取扱 心得の熟 読、事故対策 等の考慮 を当人に任せ たまま
にしており、 X2分会 長が休憩のた め席を立 つこと等を指 示違反
として記録で きるよう に場を設定し たと採ら れてもあなが ち不合
理だとは思え ないよう な状況である ことが認 められる。
b
また 、前記第 2の 4の (32)のとおり 、日勤 勤務中のX2 分会長の
- 37 -
Y11首席助役 とのやり とりが上司の 業務指示 違反等である として
処分事由の一 つにされ ているが、 こ のやりと りは同首席助 役が自
分で書いたも のをY 10区長が書き写 したもの であることが 認めら
れる。これ によると Y 11首席助役は「待機 し ろ」
「 直ちに行 け」
「ど
け い う た ら ど け 」「 指 示 に 従 え 」「( 仕 事 を ) や れ 」 等 の 非 常 に 強
い口調で発言 している ことが認めら れる。ま た、前記同 ⑹ 及び⑼
のとおり、本 件事件の 直近に列車妨 害があっ たときにY 11首席助
役 が X 2 分 会 長 に 対 し て 、「 お 前 が あ お っ て い る 」 と 発 言 し た こ
とが認められ る。
さらに 、前記第 2 の4の (44)のとおり、Y 11首席助役は 徳山乗務
員センター所 長となっ た後の8年3 月、同 セ ンター転入の 申立人
組合員に対し て、徳山 で活動してい たX 28らを「膿(うみ )だ」
と称したとし て、X 28が山口地方法 務局徳山 支局において 人権擁
護委員会に相 談したこ とが認められ る。
これらの 点を考え 併せるとY 11首席助役 はX2分会長 ひいては
申立人組合を 嫌悪して いたことが窺 える。そ うであれば、 X2分
会 長 の 日 勤 勤 務 時 に お け る Y 11首 席 助 役 の 非 常 に 強 い 口 調 に は 、
上司の発言と して適切 さを欠くもの であった ことが窺われ 、X2
分会長を挑発 する発言 である要素も あると考 えられるため 、X2
分会長の口調 が荒くな ったことすべ てがX 2 分会長の責任 である
とはいいがた い面もあ ると判断する 。
c
加えて、 被申立人 の主張による と、日勤 勤務中、Y 11首席助役
に対して、椅 子を投げ て威嚇したこ とも処分 事由の一つに なって
いることが認 められる 。確かに 、前記第 2の 4の (32)のとおり 、X 2
分会長が椅子 を滑らせ てY 11首席助役に当た りそうになっ たこと
は認められる が、実際 は、X2分会 長が同首 席助役を椅子 に座ら
せてじっくり 話をし よ うとしたもの と考えら れ、同首席助 役との
やりとりで多 少力が入 って当たりそ うになっ たことはあり 得ると
しても、それ を「投げ て」と空中を 投げ 飛ば したと受け取 れる主
張をしていることは、被申立人の意図を感じさせる部分もある。
しかも 、前記第 2 の4の (33)のとおり、本 件出勤停止処 分の事実
認定はZ3指 導担当の 事実確認報告 書を中心 にしているこ とが認
められるが 、前記同 (30)のとおり、Y 10区長は Z4車掌やX 2分会
長の報告等と の食い違 いについて、 確認して いないことが 認めら
れる。
(エ) このようにみて く ると、X2 分会長の 行 為は懲戒事 由に当た る こ
とは認めら れるが、 前 述のとおり 、遅れの 報 告について は規程とは
別に運用し ていたこ と が窺われな いでもな い こと、日 勤 勤務の際に
部屋に一人 で放置し た ことは指示 違反を記 録 するための 措置と考え
られないこ ともない こ と、日勤勤 務中の言 動 もY 11首席助役の発言
- 38 -
がX2分会長を挑 発させる要素が感じられること、日勤 勤務中のY 11
首席助役の態 度は勘案 されていない こと、椅 子を滑らせた ことを「 投
げて」と主 張してい る こと、徳山 運転区で は 区長の次の 地位である
Y11首席助役 がX2分 会長に対して 、
「お 前 があおってい る」と発 言
しているこ と、さら に 本件事件の 関係者の 報 告等の食い 違いを確認
せずに処分 している こ と、前記第 2の2の ⑵ 並びに同4 の ⑵ 、⑸、
⑹、⑻、⒀ 及 び(31)のと おり、X2分 会長が申 立人組合結成 以来徳山
運転区分会 の分会長 で あったこと 、申立人 組 合が乗務員 勤務制度の
改定に関し 被申立人 と 対立関係に あったこ と 、X2分会 長が行路の
改善の要求 をY 10区長 に話したこ と、列車 妨 害があった ときにX2
分会長が乗 務員を代 表 してY 10区長に対策 を 提案してい ること、支
社はその提 案を採用 し なかったこ と、Y 10区 長がマイオ ピニオンの
用紙の件で Z3指導 担 当とX2分 会長との 間 にいざこざ があったこ
とを知って いるにも か かわらずそ の数日後 に 同指導担当 に指導添乗
を命じてい ること、 申 立人地本 宛 の支社か ら の要請文に おいて本件
事件のX2 分会長の 言 動を個人の 行動とし て ではなく、 分会長の行
動として遺 憾の意を 表 しており、 支社は申 立 人組合員で あることを
強く意識し ているこ と 等を勘案す れば、本 件 事件を奇貨 としてX2
分会長に過重な不 利益 処分を課する意思があったものと認められる。
(オ) そ の こ と は 、 前 記 第 2 の 4 の ⒇ 、 (21)、 (27)、 (28)、 (29)、 (33)及 び (34)の
とおり、Z 3指導担 当 も指導添乗 業務を完 全 に遂行して いないこと
が確認され ているに も かかわらず 何らその 点 を斟酌して いる様子が
窺えないこ と、列 車 の 遅れによる 乗客等へ の 影響があっ たことは認
められない こと、既 に 日勤勤務の 指定によ る 長期の乗務 停止の措置
が取られて おり、こ れ は事実上の 制裁であ っ て 一種の不 利益処分と
考えられ得 ること、 そ の日勤勤務 の指定終 了 後すぐ引き 続いてさら
に出勤停止 30日の処 分 がなされた もので、 か かる 30日の処分例は暴
力事件、飲 酒事件、 無 断欠勤、一 般刑事事 件 等であり本 件事件とは
性質が違う ものであ る こと、X2 分会長の 起 こした事故 の種類は事
故としては 一番程度 の 軽い反省事 故Ⅱであ り 、これによ り日勤勤務
の指定をし た例は経 験 がないと被 申立人側 の Y 10証人が証言してい
るだけでな く、これ に より処分を 課された 例 は記憶にな いと被申立
人側のY13証人も証 言 しているこ と、さら に 加えて、 30日の出勤停
止処分は懲 戒解雇、 論 旨解雇に次 いで重い 懲 戒処分であ り、出勤停
止処分の中 でも 30日の 処分が最も 重い処分 で あることか らも過重な
処分であった ことが認 められるもの である。
(カ) 以上のように、 X 2分会長の 本件事件 に 係る一連の 言動は就 業 規
則違反に該 当する非 違 行為ではあ るが、X 2 分会長に対 する本件出
勤停止処分 は解雇に 次 いで重い処 分であり 、 非違行為に 比して不当
に過重な処 分である 事 は明白で、 このこと は 被申立人が 懲戒処分に
- 39 -
名を借りて 長年徳山 運 転区分会の 指導者と し て活動して きたX2分
会長を不利 益に扱う と ともに、こ れにより 徳 山運転区分 会の弱体化
を図り、ひ いては申 立 人組合の運 営に支配 介 入する労働 組合法第7
条第1号及び 第3号に 該当する不当 労働行為 である。
イ
X2分会 長の本件 出向命令につ いて
(ア) 本 件 出 向 命 令 は 、 前 述 ア の (オ)並 び に 前 記 第 2 の 4 の (37)及 び (38)の
とおり、日 勤勤務の 長 期指定及び 本件出勤 停 止処分とい う、いわば
二重の不利益 処分の直 後に発令され ているこ とが認められ る。
(イ) 前記第2 の4の ⑵ 及び(36)のとおり、X 2 分会長が出向 した年齢 は
52歳であり 、一般に 高 齢者として 出向を命 じ られる年齢 には到達し
ておらず、 X2分会 長 よりも高齢 の運転士 が 10数人いた ことが認め
られ、被申 立人側も こ の点につい ては反論 し ていない。 そうであれ
ば、いくら 被申立人 に 余剰人員が あり、業 務 運営上出向 は必要不可
欠であった としても 、 出向先の業 務が駅の ト イレ清掃や ゴミ缶のゴ
ミ収集が含 まれてい る だけに、X 2分会長 よ りも出向適 任者が 10数
人いたこと を考慮す る と、本件出 向命令も 不 利益処分と 判断でき、
日勤勤務の 指定、本 件 出勤停止処 分と一連 の 処分である ことが窺わ
れる。
(ウ) しかも、前 記第2 の4の ⑵及び(40)のとお り、X2分会長 が長年 無
事故の運転 士であり 表 彰歴もある こと、本 件 出向により 分会長の職
を辞めざるを 得なかっ たこと、前記同 (41)のと おり、本件出向 により
徳山運転区 で勤務し て いたときよ り少なく と も約2万円 給与が減少
したこと、 被申立人 が 主張してい るとおり 、 本件出勤停 止処分と同
一の理由で 運転士と し てこのまま 従事させ る ことは当面 不可能と判
断され出向 させられ た ことを考え 併せれば 、 本件事件等 による懲戒
処分の効果 を確認す る ことな く、 出勤停止 処 分が終了し た直後に本
件出向を命 令した被 申 立人の態度 は問題があるということができる。
すなわ ち、本件 出 向命令は三 重の不利 益 処分に当た るといわ ざ る
を得ない。
(エ) 以上のことから 、 本件出向命 令は、本 件 出勤停止処 分と同様 に 不
当労働行為 意思があ っ たものと判 断でき、 労 働組合法第 7条第1号
及び第3号に 該当する 不当労働行為 である。
3
X4らの 本件各配 転命令につい て
⑴
申立人の 主張
ア
X4らの 本件各配 転命令は 、何ら合 理性 がなく、下関運転 所分 会青
婦部の部長及び副部長という中心的役員を選別的に配転したもので、
申立人組合の 組合活動 に対する支配 介入であ ると同時に、 X4らへ の
不利益取扱い である。
イ
X4らの 本件各配 転命令は、西 労組の組 合員で転勤に 特別障害 のな
い社員がいた にもかか わらず命じら れたもの で、6年3月 にもX 46ら
- 40 -
下関運転所分 会の中心 的役員3人を 配転させ るなど同分会 の弱体化 を
狙ったものに 外ならな い。
ウ
X4らの 本件各配 転命令は 、過去の 出向 ・配転経験者は下 関運 転所
に残るという 従来の慣 行や、かねて から被申 立人が熟知し ていた次 の
ような個人的 事情を一 切無視したも のであっ た。
(ア) X4は、 喘息に苦 しむ母親 と同 居すべき 事情があった 。
(イ) X6は、 糖尿病の 母親と妻子を 抱え、転 勤が困難であ った。
エ
X4らの 本件各配 転命令は 、手続に おい ても、配 転につき 申立 人地
本及び下関運 転所分会 と労使間の協議 のうえ で発令していたという 取
扱いに反して 、一方的 に強行された ものであ る。
⑵
被申立人 の主張
ア
X4らの 本件各配 転命令は、被申 立人の 広島運転所及 び下関運 転所
の労働力の適 正な配置 、業務上 の能率増 進や 労働者の能力 開発等企 業
の合理的運営 に寄与す るため、業務上の 必要 性の見地から 合理的に 判
断して行ったもので 、申立人らの主 張・非難 は理由がなく失 当であ る 。
イ
X4らの 本件各配 転命令の場合、他鉄道 部の欠員に伴 う広島運 転所
からの補充 、広島地 区 を中心とした 広島高速 への出向、それぞれ に 対
する下関運転 所からの 補充を社内出 向の拡大 に伴う駅 ・車 掌の要員 や
職種間相互の 需給状況 を見極めなが ら実施し たもので、あえて駅・ 車
掌区にいる運 転有資格 者社員の運転 士登用を 抑えて実施し たもので は
ない。
ウ
X4らの 本件各配 転命令の人選 について は、広島運転所 及び下 関運
転所の状況を 勘案し 、電気機関車及 び電車か あるいは電気 機関車 、電
車及びディー ゼル機関 車の運転資格 を持つ、 年齢の若い運 転士経験 の
浅い運転士を 次のよう な家庭状況を 考慮して 適正に人選し て発令し た
ものである。
(ア) X4については 、 勤務形態上 母親の介 護 も不可能と はいえず 、 転
勤に当たっ ては、単 身 赴任、家族 での転居 な どいくつか 選択の余地
があり、著し く不都合 が生じること はない。
(イ) X6については 、 母親の介護 の問題は X 4社員と同 様の理由 で 著
しく不都合が 生じるこ とはない。
エ
被申立人 は、配転 について労働 組合と事 前に協議等を するとい う手
続を採ってき たことは 一切なく 、これが 慣行 になっていた という事 実
もない。
また、過 去の出向 等の経歴があ るから配 転させること が難しい とい
うことにもな らない。
なお、下関 運転所 の内勤及び車 掌兼務を 除く運転士は 5年 12月1日
現 在 105人 の う ち 94人 が 申 立 人 組 合 員 で あ り ( チ ェ ッ ク オ フ に よ り 調
査 )、 申 立 人 組 合 員 が 人 選 の 対 象 者 と な る 可 能 性 は 十 分 あ る も の で 、
あえて申立人 組合員を 意図的に人選 したもの ではない。
- 41 -
⑶
当委員会 の判断
ア
X 4 ら の 本 件 各 配 転 命 令 に つ い て は 、 前 記 第 2 の 5 の ⒆ 、 ⒇ 、 (21)、
(22)及び(23)のとおり、5 年 12月の時点 で下関運 転所では 17人の運転士 が
過員の状態で あったこ と 、広島 運転所で は逆 に可部鉄道部 及び三次 鉄
道部への助勤 等で4人 の運転士が欠 員の状態 であったこと 、このた め
支社は広島運 転所から 30代の運転士を 各1人 ずつ可部鉄道部 及び三 次
鉄道部に配転 させ 、下 関運転所から 2人の運 転士を広島運 転所に配 転
させることと したこと 、下関運 転所から の配 転に際しては 広島運転 所
の乗務行路を 勘案して 電気機関車及 び電車あ るいは電気機 関車 、電 車
及びディーゼ ル機関車 の運転資格を 持った、 年齢が若く運 転士経験 の
浅い運転手の 中から家 庭状況を勘案 してX 4 らを選考したこと 及び 支
社はX4らに 事前通知 書を交付して その 発令 どおりX 4ら は転勤し た
ことが認めら れる。
これらの 点から判 断すると、配 転を決定 する際に、運 転 資格 に つい
ては幅広い運 用ができ る運転有資格 者を 、年 齢については 広島運転 所
から同時期に 配転され た 30代の運転 士の後任 という観点か ら同年代 を
選考したとい うことが いえる。また 、前記第 2の5の ⒅の とおり 、下
関 運 転 所 で は 12月 時 点 で 実 際 に 運 転 業 務 に 従 事 す る 運 転 士 105人 中 94
人が申立人組 合員であ り、広島 運転所へ の配 転の対象者と して申立 人
組合員が選考 される確 率が高くなる ことは明 らかであるし、前記 同 (38)
のとおりX4 らは 2人 とも広島運転 所に配転 された後、電 気機関車 ・
電車組に入っ て おり、 電気機関車の 運転資格 を併せ持つ者 を基準に し
たことは、被 申立人の 主張のとおり 理由があ ったものとい うことが で
きる。さら に、前記 同 (21)及び(22)のとおり、X4らには各 々一定の 事情
があることが 認められ るが、X 4の事情 につ いては産業医 の意見を 聞
いて支障の有 無を検討 し、配転 に際して 新幹 線通勤等いく つかの選 択
の余地がある と判断し 、X6に ついても 同様 にいくつかの 選択の余 地
があると判断 して決定 しており、被 申立人は X4らの事情 を考慮し た
うえで配転命 令を出し たということ ができる 。
そうであ れば、業 務上の必要性 の見地か ら合理的に判 断して配 転を
行ったものという被申 立人の主張には合理性 があるものと認められる。
イ
一方、申立人組合らは、X4らの本件各配転命令は合理性のない、
不当なもので あると次 のように主張 している ので、こ の点につ いて 判
断する。
(ア) 申立人組合らは 、 X4らの本 件各配転 命 令を出す際 に事前に 労 使
間で協議を 行ってい な いと主張し ている。 し かし、従前 において労
使間で事前の 協議があ ったとの具体 的な 疎明 はなされてい ない。
(イ) 申立人組合らは 、 下関運転所 分 会青婦 部 の部長、副 部長を配 転 さ
せていると いうこと を 主張してい る。実際 に 、X4は下 関運転所分
会の青婦部 長であり 、 X6は同副 部長であ り 、2人とも 同 青 婦部に
- 42 -
おいては中 心的役員 で あることが 認められ る 。しかし、 前記第2の
1の⑴のア のとおり 、 下関運転所 分会青婦 部 は同分会の 35歳以下の
組合員で組 織された 同 分会の一部 組織に過 ぎ ず、分会と しての責任
を担ってい る分会長 等 三役のよう な同分会 の 中心的役員 とまではい
えない。ま た、前記 同 5の ⑸のと おり、ブ ル トレ指名ス トは下関運
転所を中心 に行われ 、 下関運転所 での「申 立 人組合員の 行動」は下
関運転所分 会青婦部 が 中心に取り 組んだこ と も認められ る。したが
って、ブ ルトレ指 名ス ト続行中の配 転であれ ば、下関 運転所で の「 申
立人組合員 の行動」 を 行っていた 下関運転 所 分会青婦部 の部長、副
部長が一度 にいなく な れば直ちに 「申立人 組 合員の行動 」に、ひい
てはブルト レ指名ス ト に影響が出 ることが 予 想されない こともない
が、同ス トは、前記同 ⒂のとおり 、既に 5年 8月には終了 している 。
確かに 、被申立 人 が下関運転 所分会青 婦 部の部長、 副部長を 一 度
に配転した ことにつ い てブルトレ 指名スト に 対する報復 ではないか
との疑念も ぬぐい去 る こと はでき ないが、 こ の主張が認 められるた
めには、X 4らの配 転 により組合 活動等へ の 影響が出た こと等を申
立人側が疎 明する必 要 がある。し かるに申 立 人組合らに よって、下
関運転所分 会青婦部 の 申立人地本 や下関運 転 所分会にお ける位置付
け、同青婦 部のブル ト レ指名スト を含めた 具 体的活動内 容、X4ら
の配転によ る同地本 、 同分会及び 同青婦部 に 対する影響 等について
疎明がなされ たとはい いがたい 。前記第 2の 5の (24)のとおり 、下関
運転所分会青 婦部には 部長1人、副部 長2人、書記長1人等 役員 12、
13人がいた ことが認 め られ、X4 らが配転 に なっ た後は 、部長、副
部長職は補 充されて お り、X4ら の配転に よ って同青婦 部の活動に
影響があっ たことは 窺 われない。 したがっ て 、この配転 が選別的か
どうかは、 配転に係 る 他の事情に より判断 す るしかない が、前述ア
のとおり、 被申立人 の 主張に合理 性が認め ら れる反面、 申立人組合
らのこの点に 関する疎 明はなされて いない。
(ウ) 申立人組合らは 、 X4らの配 転が、過 去 の出向歴や 配転歴が あ る
者は下関運 転所から の 異動はない という慣 行 に反するも のであるこ
とを主張し ているが 、 申立人側の 証人は、 申 立人組合結 成前の別労
働組合の経 験を伝聞 に よって証 言 している に 過ぎないの であり、こ
のような取 扱いがあ っ たかどうか 、また、 そ れが慣行と なっていた
かどうかの疎 明がなさ れたとはいい がたい。
(エ) 申立人組合らは 、 X4ら以外 に転勤に 特 別の支障が ない西労 組 の
組合員がい たことを 主 張し、具体 的には西 労 組のZ 5ら の名前を挙
げている。 しかし、 Z 5らの運転 資格は、 前 記第2の5 の ⒇ のとお
り、この基 準に該当 し ておらず、 外に申立 人 組合らの主 張に沿う疎
明がなされた とはいい がたい。
(オ) 申立人組合らは 、 6年3月に も下関運 転 所のX 46ら申立人地 本 の
- 43 -
役員に対す る配転命 令 が出された が、 これ も 下関運転所 分会の弱体
化を狙った 選別的配 転 であると主 張してい る 。確かに、 前記第2の
5の(40)のとおり、6年 3月 にX46ら申立人組 合員が配 転されたこと、
それらの者 が申立人 地 本等の何ら かの役員 で あったこと は認められ
るが、これ らの配転 が 選別的なも のであっ た との疎明は なされてい
ない。
ウ
以上のと おり、X 4らの本件各 配転命令 は、業務上の 必要性 は 認め
られ、人選の基 準や具 体的人選についても不 当なところは認 められず、
手続などにつ いても格 別問題とすべ き事実は 認められない ので、こ れ
を不当労働行 為とする 申立人組合ら の主張 は 採用しがたい 。
4
X9らの 本件各配 転命令につい て
⑴
申立人の 主張
ア
X9らの本件各配転命令は、何ら合理的な選別の基準も示されず、
また、従来 の慣行を 無 視したもので あり、下 関運転所分会 の役員や 中
堅活動家、組合員を 選 別的に配転し たもので 、申立人組 合に対す る 支
配介入行為で あるとと もに、X 9らに対 する 人事権を濫用 した不利 益
扱いである。
イ
X9らの 本件各配 転命令は、次 のとおり 必要性も合理 性も認め られ
ないもので、 明らかに 不当なもので ある。
(ア) 広島高速への出 向 は、元々、 下関運転 所 分会の運転 士 17人が希 望
を出してい たにもか か わらず3人 しか認め ず 、大半を広 島運転所か
ら出向させた ため広島 運転所の要員 不足が生 じたものであ る。
しかも 、支社内 に は、運転士 登用待ち の 運転有資格 者が当時 で も
7人以上い たことか ら 、これらの 者を登用 し 、広島運転 所に配転す
れば、同所の 要員不足 は容易に解消 されるも のであった。
したが って、被 申 立 人は、下 関運転所 か らの運転士 の配転を 実 現
するため、 あえて広 島 運転所の要 員不足を 生 ぜしめたも のと考える
外はない。
(イ) X9らの本件各 配 転命令は、 X4らの 本 件各配転命 令と同じ く 、
手続におい ても労使 協 議 を行わな い一方的 な ものであり 、X9らは
いずれも40歳代で、 一 般的にも家 庭の事情 に より転勤が 困難な世代
に属するも のである が 、実際にも 次のよう な X9らの個 人的な事情
は全く考慮 されず、 申 立人組合に 対して、 組 合を脱退し なければ容
赦なく配転さ せる姿勢 を示したもの と考える 外はない。
a
X12については 、自宅を新築し て間がな く、妻に 持病があ った 。
b
X10については、 長男で病弱・ 高齢な老 父母と妻及び 子供3人
と同居する兼 業農家で あり、自宅か ら広島運 転所へ通勤す るとな
ると約2時間 半かかる ため、かねて から下関 運転所の管理 者 に対
して転勤でき ない旨を 常々訴えてい た。
c
X13については、 国鉄時代に出 向してい ないことを配 転の理由
- 44 -
の一つにされ た。
d
X14については、 病弱な母親と 妻を抱え ていた。
e
X 29に つ い て は 、 足 の 不 自 由 な 母 親 と 妻 及 び 子 供 3 人 が い た 。
f
X11については、 老父母と3人 の子供が いた。
(ウ) 下関運転所の運 転 士の中には 他労組に 属 する者で、 かつX9 ら に
比して広島 運転所へ の 転勤が容易 な運転士 が 存在したの に、申立人
組合の組合 員のみを 選 別したもの で、合理 的 に選別する となれば、
申立人組合の組 合員のみが配転の対象となるのはあまりにも不自然 、
不合理であ る。特に 、 X4らの本 件各配転 命 令について は「若年の
運転士の転 勤が必要 」 であったと 主張して お きながら、 わずか3か
月後には、 40代の「 中 堅の運転士 が必要」 で あったなど と全く 説得
力のない不合 理な理由 を挙げている 。
⑵
被申立人 の主張
ア
X9らの 本件各配 転命令は、被申 立人の 広島運転所及 び下関運 転所
の労働力の適 正な配置 、業務上 の能率増 進や 労働者の能力 開発等企 業
の合理的運営 に寄与す るため、業務上の 必要 性の見地から 合理的に 判
断して行ったもので 、申立人らの主 張・非難 は理由がなく失 当であ る 。
イ
X8らの 本件各配 転命令の場合、他鉄道 部の欠員に伴 う広島運 転所
からの補充 、広島地 区 を中心とした 広島高速 への出向、それぞれ に 対
する下関運転 所からの 補充を社内出 向の拡大 に伴う駅・車 掌の要員 や
職種間相互の 需給状況 を見極めなが ら実施し たもので、あえて駅・ 車
掌区にいる運 転有資格 者社員の運転 士登用を 抑えて実施し たもので は
ない。
ウ
X9らの 本件各配 転命令の人選 について は、運転資格は X4ら と同
じ基準であり 、年 齢は 広島運転所及 び下関運 転所の年齢構 成から熟 練
度の高い指導 的立場の 40代の運転士 を次のよ うな家庭状況 を考慮し て
適正に人選し て発令し たものである 。
(ア) X9につい ては 、 別居中の母 親に対す る 介護、妻の 仕事、子 供 の
高校進学は それほど 大 きな制約と なるわけ で はなく、転 勤に当たっ
ては単身赴 任、家族 で の転居など いくつか 選 択の余地が あり、著し
く不都合が生 じること はない。
(イ) X10については 、 父親の介護 、子供の 進 学は専業主 婦の妻で 対 応
可能であり 、単身赴 任 になっても 手当等の 措 置を講じて いるので、
経済的負担 により転 勤 不可能には ならず、 実 態としても 単身赴任は
多く実施され ている。
(ウ) X29については 、 母親の介護 、子供の 進 学 は専業主 婦の妻で 対 応
可能であり 、「持 家」 であるので新 幹線通勤 も可能である 。
(エ) X13については 、 母親の介護 は専業主 婦 の妻と弟夫 婦で対応 可 能
であり、「持家」 であ るので新幹 線 通勤も可 能である。
(オ) X14については 、 母親の介護 は妻で対 応 可能であり 、単身赴 任 に
- 45 -
なっても手 当等の措 置 を講じてい るので、 経 済的負担に より転勤不
可能にはなら ない。
(カ) X11については 、 母親の介護 は父親又 は 妻で対応可 能であり 、 子
供の進学 、住宅ロ ーン の返済は誰に も予想さ れることで 、
「 持家 」で
あるので新幹 線通勤も 可能である。
(キ) X12については 、 妻の病気は 妻自身が 勤 めているこ と、 住宅 ロ ー
ンの返済は誰 にも予想 されることで 、
「持 家」であるので新 幹線通勤
も可能である 。
エ
被申立人 は、配転 について労働 組合と事 前に協議等を するとい う手
続を採ってき たことは 一切なく 、これが 慣行 になっていた という事 実
もない。
また、過 去の出向 等の経歴があ るから配 転させること が難しい とい
うことにもな らない。
なお、下関 運転所 の内勤及び車 掌兼務を 除く運転士は 5年 12月1日
現 在 105人 の う ち 94人 が 申 立 人 組 合 員 で あ り ( チ ェ ッ ク オ フ に よ り 調
査 )、 申 立 人 組 合 員 が 人 選 の 対 象 者 と な る 可 能 性 は 十 分 あ る も の で 、
あえて申立人 組合員を 意図的に人選 したもの ではない。
⑶
当委員会 の判断
ア
X9らの 本件各配 転命令につい ては、前 記第2の5の ⑷、(26)から(37)
まで及び(39)のとおり、5年3月頃広 島市に所 在する広島高 速から出 向
要請があった こと、6 年3月1日に 支社は広 島高速への出 向を主と し
て広島地区在 住の 50代の高齢者運転 士を対象 に実施したこ と、この 出
向により広島 運転所は 10人の欠員、 下関運転 所は 14人の過員の状態 と
なったこと、 6年3月 時点で車掌及 び駅業務 に従事しなが ら運転 士 へ
の登用を待っ ていた特 例募集による 運転士登 用待ちの運転 有資格者 が
20人いたこと 、こ の 20人については 、駅 業務 、車掌 業 務の要員 が不 足
していたため 、支社が それら有資格 者を運転 士に登用でき なかった こ
と 、 6 年 3 月 時 点 で 下 関 運 転 所 の 運 転 士 114人 中 約 82パ ー セ ン ト に 当
たる93人が申立人組合 員であったこ と、この うち実際に運 転業務に 携
わる運転士は 40代では 35人中約94パーセント に当たる 33人が申立人 組
合員で、30代では 37人 中約92パーセントに当 たる 34人が申立人組合 員
であったこと 、支社は 広島運転所の 欠員の状 態を解消 する ため過員 の
状態の下関運 転所から 7人の運転士 の配転を 計画したこと 、人 選の 基
準としては、 広島運転 所の乗務行路 を勘案し て電気機関車 及び電車 あ
るいは電気機 関車 、電 車及びディー ゼル機関 車の運転資格 を持った 運
転士の中で 、広島 運転 所及び下関運 転所の年 齢構成のバラ ンスを考 慮
して40代の運転士の中 から家庭状況 を勘案し てX9らを選 考したこ と
及び支社はX9ら に事 前通知書を交 付してそ の発令どおりX9 らは 転
勤したことが 認められ る。
これらの 点からみ ると、支 社は、各方面 の要員需給を 総合的に 判断
- 46 -
し下関運転所 からの配 転を計画した こ と、配 転を決定する 際に、運 転
資格について は幅広い 運用ができる 運転有資 格者を選考し 、年齢に つ
いては広島運 転所及び 下関運転所の 年齢構成 のバランスが 崩れてい る
ため、そのバ ランスを 補正できるよ う 40代の運転士を選考 したとい う
ことができ、 被申立人 の主張には理 由があっ たものという ことがで き
る。さらに前記 第2の 5の (30)から(37)までのとおり、X9ら には各 々事
情があること 、個人面 談で家庭の事 情を説明 した者がいた ことが認 め
られるが 、支社は 病弱 の同居者がい る場合に は当人以外に 介護する 者
がいたなどの 状況を把 握しており 、特に 同居 者がそれ以上 に重大な 病
状にあり、介護に人手を要するという事情も窺われないこと、進学、
住宅ローン返 済、単身 赴任等はサラ リーマン には特殊な事 情ではな い
こと、単 身赴任の 場合 に手当等の措 置を採っ ていたことな どから支 社
はX9らの事 情を考慮 したうえで配 転命令を 出したものと いうこと が
できる。
イ
一方、申 立人組合 らは、X9ら の本件各 配転命令は何 ら合理性 のな
い、不当なも のである と次のように 主張して いるので、そ の点につ い
て判断する。
(ア) 申立人組合らは 、 X9らの本 件各配転 命 令を出す際 に事前に 労 使
間で協議を 行ってい な い ことを主 張してい る 。しかし、 従前におい
て労使間で 事前の協 議 があったこ とについ て は具体的な 疎明はなさ
れていない。
(イ) 申立人組合らは 、 申立人組合 の役員、 中 堅活動家、 組合員を 選 別
的に配転し たもので あ ることを主 張してい る 。この点に ついては、
前記第2の5 の (30)のとおり、X9 ら7人の う ち2人は申立 人組合で
何らかの役 員を務め て いたことが 認められ る 。しかし、 いうところ
の中堅活動 家が具 体的 に何を指 すのか明らかにされておらず、か つ、
誰が中堅活 動家、組 合 員に該当す るのかは 一 切明らかに されていな
い。確かに 7人全員 が 申立人 組合 員である こ とに、被申 立人の意図
が全く感じ られない わ けではない が、申立 人 組合員が選 考される可
能性が大き いことは 前 述アのとお りである 。 その場合に 役員が1、
2人含まれ ることは 一 般的に考え られるこ と であり、そ れが選別的
なものとい えるかど う かは判然と しないの で 、この主張 も採用しが
たい。
(ウ) 申立人組合らは 、 下関運転所 からの配 転 を実現する ため、あ え て
広島運転所 の要員不 足 を生じさせ たことを 主 張している 。確かに、
前記第2の5 の ⑻及び (26)のとおり、支 社は広 島高速への出 向募集の
際に年齢要 件を記入 し ていなかっ たため下 関 運転所分会 の 17人の出
向希望者の うち、 50代 の3人しか 出向でき な かったなど 被申立人に
配慮に欠け る部分は あ ったにして も、支社 の 出向基準に 格別不当な
ところは認 められな い 。また、運 転士の登 用 についても 、資格取得
- 47 -
後登用まで の期間が 制 度化されて いたり、 慣 例化されて いればとも
かく、この ことにつ い ての疎明は なく、ま た 2年度から 始められた
特例募集に よる運転 士 の登用はま だ実施さ れ ていない時 点でのこと
で、意図的に抑えたものかどうかは判然としないというべきである。
さらに、被 申立人が 主 張するよう に、駅業 務 や車掌業務 のことを考
慮する必要 性もある こ とは明らか であり、 広 島車掌所等 で運転士登
用を待って いる者を 登 用しても被 申立人の 業 務に支障が 生じないこ
とが疎明さ れたとも い いがたいの で、あえ て 広島運転所 の要員不足
を生じさせた という主 張は認められ ない。
(エ) 申立人組合らは 、 X4らの配 転につい て は 30代を基準にし、 3 か
月後のX9 らの配転 に ついては 40代を基準 に しているこ とを挙げて
いる。しかし、前記第 2の5の ⑷、⒆、(26)及び(29)のとおり、X4ら
の場合は運 転士の死 亡 、助役への 昇格など に より生じた 4人の欠員
状態のうち の2人の 補 充であり、 急を 要す る 要素も窺わ れるととも
に、広島運 転所から 三 次鉄道部及 び可部鉄 道 部へ1人ず つ 30代の運
転士が配転 されたこ と を考慮した 結果であ る のに対して 、X9らの
場合は以前 から要請 さ れていた広 島高速へ の 出向による 欠員状態の
補充で、人 数も多く な ることもあ り、ある 程 度計画性を 持って実行
する必要が あったも の と 認められ る。支社 は 、前述アの とおり、広
島運転所及 び下関運 転 所の年齢バ ランスを 考 慮した結果 、X9らを
人選してお り、X4 ら と事情を異 にすると 考 えられるの で、配転の
年齢基準が 異なるこ と だけをもっ て不合理 で あり、不当 であるとい
うことはでき ず、この 主張は認めが たい。
(オ) 申立人組合らは 、 西労組の組 合員にX 9 らより転勤 が容易な 運 転
士が存在したのに、申 立人組合員 のみを選 別 したことを挙げている。
確かに、前記第 2の5 の (30)のとおり、X9 ら は全員申立人 組合員で
あることが 認められ る が、前述ア のとおり 、 下関運転所 の運転士の
所属労働組合 は圧倒的 に申立人組合 が多く、40代が基準であっても、
30代が基準 であって も 申立人組合 員が選考 さ れる可能性 は大きい。
また、申立 人組合らが 挙げているZ 6、Z7 、Z5 ら は 、前 記 同 ( 20)
のとおり、配転 の基準 を充たさな い ので、こ の主張も採用 できない 。
ウ
以上のと おり、X 9らの本件各 配転命令 は、業務上の 必要性が 認め
られ、人選の基 準や具 体的人選についても不 当なところは認 められず、
手続などにつ いても格 別問題とすべ き事実は 認められない ので、こ れ
を不当労働行 為とする 申立人組合ら の主張は 採用しがたい 。
5
本件登用 について
⑴
申立人の 主張
ア
本件運転 有資格者 の運転士登用 の問題は 、結局は本件申 立ての 審問
中に全員登用 されたも のの、申立人 組合員の 資格取得の順 番による の
でなく、資格取得 の遅 い者を先に登 用すると いう恣意的意 図的な差 別
- 48 -
的人事運用に よって申 立人組合員を 動揺させ 、申立人 組合から の脱 退
を促すもので 、申立人 組合を破壊し ようとす る被申立人の 人事運用 ・
労働組合対策 の一つに 外ならず、明 らかに不 当労働行為と 認められ る
ものである。
イ
5年から 、申 立人 地本は、運転有資 格者 である申立人 組合員の 運転
士登用を申し 入れてき たが、支社は 、終始抽 象的であいま いな回答 を
するのみであ った。従 来、被申立人に おいて は、運転士登用 は、原 則
として資格取 得の順番 に行われてい たが 、6 年4月に意図 的にこの 順
番を無視した 。
ウ
被申立人 は申立人 組合の結成以 降、申立 人組合に対 す る様々な 差別
的取扱いを行 っ ている が、特に昇 進昇格試 験 においては 、他労組 の 組
合員と比して 著しい不 平等・差別的 扱いを平 然と繰り返し ている。
⑵
被申立人 の主張
ア
運転士の 登用につ いては、被申立 人が駅 、車掌業務、運転士 の 需給
状況と旅客輸 送の変動 等その時々の 業務の遂 行状況に対応 し、円滑 な
業務運営を行 うため、 総合的に勘案 して決定 していくもの で、これ は
企業としては 当然のこ とであり、元 々、資格 を取得した順 番に登用 を
行わなければ ならない という定めは ない。申 立人らの主張 は失当で あ
る。
イ
5年度は 、駅 社員 の社内出向の 拡大 、運 転士の広島高 速への出 向等
要員需給の変 化が必至 であったため 、運 転士 の登用は社内 出向の交 替
終了後で、兼務発令 し ていた車掌が 元の職場 に復帰して駅・車掌 の 要
員需給が落ち 着く6年 4月以降が相 当である と判断し、山 陽本線に お
い て か な り の 運 用 枠 を 持 っ て い る 電 車 の 運 転 有 資 格 者 11人 に つ い て 、
6 年 4 月 27日 付 け で 運 転 士 登 用 を 実 施 し た 。 残 り の 9 人 に つ い て は 、
そのうち5人 を同年9 月 26日付け 、残り 3人 を同年 12月15日付けで 登
用した。なお 、1人は 退職した。
ウ
支社課員 等の運転 士登用は、支社 におけ る運転士の要 員需給の 中長
期展望に立っ たとき、 運転士の大量 退職時代 を迎え、運転 士に多く の
欠員が予想さ れること 、運転関係 区所等の 助 役の年齢が特 に高く 、将
来的に助役等 に運用す るのに相応し い人材を 確保しておく 必要があ る
ことを考慮し て、5 年 5月から実施 したもの であり、広 島高速へ の 出
向等に伴う一 時的な欠 員対策のため 、運転 士 として、臨 時に活用 を 図
ったもので、 彼らを優 先的かつ固定 的継続的 に登用したと いうもの で
はない。
⑶
当委員会 の判断
ア
本件登用 について は、前記第2 の5の ⑵ 、⑶、⒄、(29)、(41)、(42)、(46)、
(47)及び(48)のとお り 、4 年度末頃まで には支社 管内で特例募 集による 20
人の運転有資 格者が誕 生したこと 、6年3 月 の段階では駅 業務、車 掌
業務の人員が 不足して いたため、こ の 20人を運転士に登用 できなか っ
- 49 -
たこと、同年 4月 26日の経小で資格 取得の順 番によって登 用されな い
ことについて 、支 社は 要員の関係で やむを得 ないことや年 度内には 全
員登用する予 定である こと等を説明 したこと 、最後に 残った4 人は 全
員駅業務に従 事してい たこと、支社 はダイヤ 改正をして駅 及び車掌 の
人員を削減し たうえで 、同年 12月15日に退職 の意思表示を した1人 を
除く残る3人 を運転士 に登用したこ とが認め られる。
これらの 点をから すると、被申立 人は駅 業務や車掌業 務の要員 状況
をみながら、 登用の時 期を考慮して いたと考 えられ、駅業 務に従事 し
ていた4人を 除いては 、運転資格の 車種毎で みると順番に 登用して い
ることが認め られ、結 局、車種毎 に業務を 勘 案しながら運 転士への 登
用を実施した 合理的な もの というこ とができ る。また 、駅業務 に従 事
していた者に ついては 、ダイヤ 改正によ り駅 の効率化を図 って駅業 務
に従事する人員が削減されたことにより、運転士に登用されており、
それまでは駅業 務に従 事していた者を 他の業 務に就 かせること は困 難
なものであっ たと推認 され、これら の者の運 転士登用が遅 れたこと に
ついては、理 由があっ たものと認め られる。 加えて、支社 は経小に お
いて運転士登 用待ちの 運転有資格者 について 、6年度中に 全員登用 す
ることを説明 し、その とおり全員登 用してお り、不当な点 は認めら れ
ない。また、 資格取得 順の登用が制 度化され ておれば格別 、そのよ う
な疎明はない 。
イ
一方、申立 人組合 らは、申立人組 合結成 以降、被申立人 が申立 人組
合員に対する様々な不平等、差別的扱いを繰り返しているというが、
具体的な事実の主張はない。この点、運転士の登用についてみると、
前記第2の5 の ⑶、⑼ 、(29)及び(42)のとおり 、特例募集によ る運転有 資
格者より後に運転 資格 を取得した支社課 員等 の運転有資格 者を先に 運
転士に登用し たこと、 支社課員等は ほとんど の者が西労組 の組合員 で
あることが認 められる 。支社は、前記同 (26)及び(29)のとおり、広島高 速
への出向によ り生じた 広島運転所の 欠員の状 態を是正する ため 、下 関
運転所、駅及 び車掌業 務の要員状況 を検討し て、それでも なお3人 が
不足するので 、支社課 員等を一時的 な欠員対 策として臨時 に運転士 と
して登用して おり、こ れは被申立人 の業 務運 営上必要で、 やむを得 な
い措置であっ たものと 認められ、このこと を もって、直 ちに申立 人 組
合員に対する 差別的取 扱いであると いうこと はできない。
ウ
以上のよ うに、本 件登用は、業 務状況を 勘案しながら 、支社内 にお
ける要員需給 や円滑な 業務運営を行 うことを 考えて実施し たもので あ
るという被申 立人の主 張には合理性 が認めら れ、これ により申 立人 組
合員を動揺さ せること によって脱退 を促すこ とにはならな いし、ひ い
ては申立人組 合を破壊 する被申立人 の人事運 用・労働組合 対策の一 つ
であるともい えないか ら、不当労働 行為とは 認められない 。
第4
救済の 方法及び 法律上の根拠
- 50 -
X2分会長 に対する 本件出勤停止 処分は不 当労働行為で あるので 、 本件出
勤停止処分を 取り消し 、処分がなか ったもの として取り扱 い、バッ クペイを
命じるのを相 当とする が、本件出勤停 止処分 は過重な処分 であるが 故に不当
労働行為を認 定したも のであり、X 2分会長 に懲戒事由が あること は前述の
とおりである 。このた め、今後の労 使関係を 考慮して、バ ックペイ の額の算
定に当たり、 本命令交 付の日までの 分につい ては、半額を 控除する ことを相
当とする。
また、X 2分会長 に 対する本件出 向命令に 関しては、前記第2 の 4の (45)の
とおり、X2 分会長が 9年 12月16日に原職相 当職に復帰し たため、 10年2月
3日付けで申 立人らは 請求する救済 内容の変 更をし、陳謝 文の掲示 と手交を
求める救済申 立てのみ となるが、こ れについ ては、主文の 救済内容 をもって
相当であると 判断する 。
以上の事実 認定及び 判断に基づき 、当委員 会は、労働組 合法第 27条及び労働
委員会規則第43条の規 程により、主 文のとお り命令する。
平成11年7月14日
広島県地方労 働委員会
会長
- 51 -
山口
高明
㊞