2014 年 1 月 8 日 琉球新報社説 那覇市議会意見書 民主政治の真価

2014 年 1 月 8 日
琉球新報社説
那覇市議会意見書 民主政治の真価示した
米軍普天間飛行場の返還・移設問題で、那覇市議会は政府の名護市辺野古沿岸埋め立て
申請を承認した仲井真弘多知事に抗議する意見書を賛成多数で可決した。
知事判断に対する県内議会の異議申し立ては、これが初めてだ。県民の思いをくみ取っ
た市議会の良識ある行動として評価したい。
仲井真知事は昨年12月の県議会で「日米両政府に普天間の県外移設、早期返還の実現
を強く求めていく。県外で探さないと現実的にはならない」と答弁していた。
今回の承認と答弁は明らかに矛盾する。しかし知事は6日の記者会見で「(辺野古移設は)
実現可能性の問題で非常に厳しいと言ってきたが、反対したことはない」と弁明した。県
外移設公約は虚構だったと自白したに等しい。耳を疑った県民も多いだろう。
これとは対象的に、那覇市議会の取り組みは政治家としての矜(きょう)持(じ)を示
したといえる。昨年7月の那覇市議会議員選挙で当選した議員の大半が県外移設を公約に
掲げていた。意見書可決はまさに自身の公約を忠実に守り通したものだ。
市議会は、県内41市町村の全首長や議会議長、県議会議長らが連名で普天間の県内移
設断念を安倍晋三首相に要請した「建白書」に対するとして仲井真知事を指弾した。民主
的手続きを重んじるのは、議会人として至極当然だ。
しかし、あろうことか、自民党県連は市議会の同党所属議員に対し意見書に賛成しない
よう水面下で圧力を掛けた。可決後は賛成した議員の処分を検討している。
県外移設公約を事実上撤回して辺野古移設容認に転じた県連が、公約を死守した市議を
処分するのは倒錯した行動というほかない。
仲井真知事の埋め立て承認後に琉球新報社と沖縄テレビ放送が実施した緊急世論調査で
は知事承認への不支持が61・4%に上った。支持34・2%の倍近くだ。普天間飛行場
の県内移設への反対意見は73・5%に達した。
市議会の意見書は県民世論とも合致し、民主的正当性を有する。
意見書は、埋め立て承認で県外の人々に広まったであろう「沖縄県民は金で転ぶ」との
印象を払拭(ふっしょく)し、首相に対し「140万県民を代表して感謝する」と述べた
知事発言の欺瞞(ぎまん)性も突いた。民主政治の真価を示した歴史的決議として、高く
評価されるべきものだ。
2014 年 1 月 8 日
那覇市議会が抗議
沖縄タイムス社説
知事は政治的徳失った
政治家にとって最も大切なものは何か。ある政治家は「徳」だと言った。徳とは「まっ
とう」ということである。ごく普通の人に分かりやすい言葉で、政策や真意を説明し、納
得させることだ。
ところが、仲井真弘多知事は昨年末に米軍普天間飛行場移設に向けた辺野古埋め立てを
承認して以来、その対応は、まっとうさとはほど遠く、県民との溝は深まる一方だ。
仕事始めの6日、記者団の「いい正月を迎えられたか」という質問に「いい正月だった。
サンオイルを塗って日光浴をしたぐらい、いい天気の日があった」などと語る姿勢には、
県民に十分な説明責任を果たしていないという認識は感じられない。
そういう知事の言動に対しお膝元から強い抗議の意思が示された。
那覇市議会は6日、臨時議会を開き、辺野古の埋め立てを承認した知事に抗議し、辺野
古移設断念と基地負担軽減を求める意見書を賛成多数で可決した。欠席の1議員を除く3
8人中、賛成33人、反対5人だった。
同市議会の構成は議長を除き、与党が自民系15人、公明7人を含む25人。野党11
人、中立3人。翁長雄志市長を支える与党議員を含め、多数が辺野古移設反対の意思を示
した意味は大きい。
意見書では、知事が安倍晋三首相との会談で「140万県民を代表して感謝する」と発
言したことに対し「県民の思いと大きくかけ離れたもの」と批判した。多くの県民が同じ
思いだろう。知事は一体、誰を代表したというのか。
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意見書はさらに「埋め立て承認は(全41市町村長と議会議長らが署名し、県外移設を
求めた)建白書に反する」
「知事のこれまでの公約や県議会答弁と矛盾している」とし、あ
らためて県民へ説明することを求めた。
知事は、埋め立て承認表明会見や年明けの会見で、公約との整合性などを問われると、
「開
き直り」ともとれる強い調子で反論を繰り返しているが、その説明に納得する有権者はい
るだろうか。
私たちは昨年12月28日付の社説で、知事に辞職してあらためて県民に信を問え-と
主張した。知事は任期を全うすると言うが「言葉のまやかし」に終始する姿勢では、信頼
を失っていくばかりだ。
知事は名護市長選で移設推進候補の応援に意欲を見せている。右手に「辺野古移設推進」
、
左手に「県外移設」という二つの旗を掲げて応援するというのだろうか。
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昨年6月23日、沖縄全戦没者追悼式の平和宣言で知事は「普天間飛行場の県外移設、
日米地位協定の抜本的見直しを求める」と誓った。知事は2011年から宣言に県外移設
を盛り込んでいる。み霊の前で交わした約束は重い。知事はことし、どのような宣言を行
うつもりなのだろう。
辺野古の海が埋め立てられ普天間が移設されると半永久的に巨大な基地が維持される。
知事は9日の県議会臨時会で、埋め立て承認に関する考え方を説明する。県民誰もが分か
る「まっとう」な言葉で語らなければならない。