【14】 全地連「技術e-フォーラム2008」高知 市販デジタルカメラによる三次元計測とその活用例 ㈱開発工営社 ○新妻 重明 安藤 勧 河又 久雄 1. はじめに 近年,高分解能の市販デジタルスチルカメラが普及し ており,これらを用いた三次元写真計測技術が実用化さ れている。この技術は,自然斜面や構造物等の様々な計 測で用いられるが,危険で人の近づけない急斜面の調査 において特に有効となる。しかし,三次元写真計測の精 度は,解析写真の撮影環境や基準点の設定,解析方法に より大きく左右される。ここでは,三次元写真計測にお いて有効と思われる写真撮影位置やターゲットの形状お よび配置方法を紹介する。また,現場計測における活用 事例を紹介するとともに,計測精度ついても検証する。 2. 三次元写真計測の方法 三次元写真計測は,撮影した写真画像の平面座標を測 定し,対象物,レンズ,CCD を結ぶ光の幾何学条件を利 用して,対象物の空間的な位置,すなわち三次元座標を 求めるものである1)。 三次元写真計測の流れを以下に示すとともに,現場で の適応事例についても述べる。計測フローを図-1に示す。 <1. 撮影計画準備> ・対象物,撮影位置等の確認(形状,植生等の障害物) ・対応点,スケール配置(ターゲット,測量基準点等) 写真-1 十字型ターゲット(左)と円形ターゲット(右) (2) 写真撮影 写真の撮影枚数は,2枚でも解析は可能だが,枚数を増 やすことで精度が向上する2)。撮影角度は,左右だけでな く上下にも視差を確保することで精度の向上を図る。 (3) 画像解析 対象物の三次元座標を求めるには,実際の対象物の標 的と CCD 面に写された二次元画像上の標的(対応点) との関連付けを行い,内部標定要素,外部標定要素を算 出する必要がある1)。 内部標定要素は焦点距離や主点位置のずれ,レンズ歪 み等,個々のカメラが持つパラメータであり,事前に求 めることができる2)。一方,外部標定要素は計測時におけ るカメラの位置や姿勢等で,解析ごとに毎回算出する必 要がある。 <2. 写真撮影> ・角度を変えて2箇所以上の画像撮影 ・画像内に対応点 <3. 画像解析> ・対応点付け ・内部標定 (事前に実施可) ・外部標定要素 (解析ごとに算出) 内部標定要素,外部標定要素が決定されると,対象物 の相対三次元座標が求められる。これに測量座標や点間 距離,鉛直の基準等を入力することで,対応点の三次元 座標を求めることができる。 (4)結果出力 解析により求められた三次元座標は,サーフェイスを 作成して3D モデリング(図-2 右上)が可能となる。ま <4. 結果出力> ・3Dモデリング ・CADデータ出力等(等高線図・縦横断図作成,体積計算等) た,等高線図(図-2 右下),縦横断図(図-2 左下),点 群データ等を CAD データ等に出力できる。 図-1 三次元写真計測フロー (1) 撮影計画準備 写真を撮影する前には,対象物の形状や植生等の障害 物を把握した上で,写真の撮影位置を計画する。 配置するターゲットは対象物の状況や継続観測等に合 わせて選定する。対象物が植生や積雪に覆われる可能性 がある場合は,十字型ターゲットが有効である。 (写真-1 左)。この場合,ターゲットの一部が陰になっても交点が 見えれば点の抽出が可能となる。一方,障害物がない場 合は円形ターゲットを使用して,解析時に円の面積重心 を精度よく算出する方法が有効である(写真-1 右)。 図-2 計測結果出力例 全地連「技術e-フォーラム2008」高知 3. 現場計測における精度に関する検証 観測開始後1年間は,解析画像を2枚で計測を行なった 写真-2は2002年12月から2003年1月の間でダム湖岸斜 が,観測ごとや解析者ごとのバラツキが数 m にも及ぶこ 面に発生した風化岩地すべりで,発生当初からパイプ歪 とから,画像を4枚以上に変更した。結果,ターゲット間 計および地表伸縮計による観測を実施している。三次元 の距離でのバラツキが平均31~35mm(撮影距離約64m に 写真解析は2006年6月から行なっており,ターゲットを用 対して約0.05%),最大102mm(約0.14%)となった(図-4)。 いた移動岩塊の動態観測を実施している。表-1に三次元 写真計測の概要を示す。 2006年 写真-2 ダム湖岸の地すべり全景(赤丸はターゲット) 象 2008年 図-4 ターゲット間の距離のバラツキ 表-1 三次元写真計測の概要 対 2007年 2007年 ダム湖岸斜面に発生した風化岩地すべり (幅約50~60m,奥行き100m) 目 的 地すべりの移動岩槐の動態観測 観 測 開 始 日 2006年6月30日 解析画像を4枚以上用いた場合のターゲットの座標の バラツキは,Y(左右)方向および Z(鉛直)方向で,平 均18~38mm(約0.03~0.06%),最大45~117mm(約0.07 ~0.18%)なのに対して,X(奥行)方向では,平均61~ タ ー ゲ ッ ト 観測点3箇所、基準点3箇所 撮 影 位 置 ダム湖面のボート上、凍結した湖面上 146mm(約0.10~0.23%),最大161~454mm(約0.25~ 撮 0.71%)と大きくなる(図-5)。 影 距 離 約64m 観測に用いるターゲットは,冬季の積雪や樹木が多い こと等を考慮して,十字型ターゲットを採用した。ター ゲットは移動岩塊に3箇所,地すべり外側の不動地盤に3 箇所,計6箇所を設置した(図-3)。 解析における対応点付けはターゲット6点に加え,任意 一般的に三次元写真計測における誤差は,X(奥行) 方向に最も大きくなると言われているが1),当事例におい ても同様の結果が得られた。X(奥行)方向のバラツキ は,Y(左右)方向および Z(鉛直)方向のバラツキより も,約4倍程度大きい傾向を示す。 の14点で行なった。スケールとしてターゲット間の距離 (実測値)を用い,基準点3箇所の初期座標を決定した。 動態観測は,ターゲットの座標およびターゲット間の 距離について,初期値からの相対的な変化を見ることに より行なっている。同時に実施しているパイプ歪計およ び地表伸縮計の観測結果からは,地すべりに大きな変動 は認められないことから,ターゲットの移動はほぼない ものと推定して,計測の精度について検証する。 2007年 2008年 図-5 ターゲットの座標のバラツキ No.5(基準点) 《引用・参考文献》 No.3(観測点) 1) ㈳日本写真測量学会 動態計測研究会編:デジタル写真 No.1(基準点) No.2(観測点) No.6(基準点) 測量の理論と実践,343pp,2004.6. No.4(観測点) 2) 國井洋一,村井俊治:デジタルスチルカメラのキャリ ブレーションにおける最適状況の検討,写真測量とリ ターゲット 図-3 地すべり観測おけるターゲット位置図 モートセンシング,Vol47,No.1,pp.44-51,2008.3.
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