【特別支援教育】 算数科における 授業のユニバーサルデザイン ~「にし

えたり友達の考えをつないだりしながら学び合
【特別支援教育】
う。全員の力で全員がめあてを達成し,評価問
算数科における
題では「分かった!」「できた!」と全員が声を
授業のユニバーサルデザイン
~「にしせんスタンダード」~
発し,正解する。
(3)「にしせんスタンダード」のユニバーサル
デザイン
大仙市立西仙北小学校
1
櫻田
武
はじめに
①
本人に合った学習スタイルで
ア
単元の全体計画の提示
・単元の第1時には,単元計画を配付し,児童
本校は今年度,「新学習指導要領の趣旨を踏ま
は全時の主要問題をノートに書く活動を行う。
えた学力向上等の方策に関する調査研究」の文
単元全体でどんな学習をするのか大まかな流
部科学省指定を受け,算数科を中心に授業改善
れが分かり期待感をもてる。
を行ってきた。算数科を中心に開発した「にし
・児童が予習することによって正解できるよう
せんスタンダード」は,思考力・表現力の向上
に評価問題を事前に配付する。
を目指すものであるが,発達障害の有無や学力
イ
の優劣を問わず,みんなにとって「分かる・で
・言葉⇔式,言葉⇔図,式⇔図など,順序にそ
きる・楽しい」授業のユニバーサルデザインで
って説明させたり全体が一目見て分かるよう
もある。
に説明させたりする。
2
実践の概要
聴覚的・視覚的に分かる工夫
・全学級に配備されている大型テレビを利用し,
(1) 「にしせんスタンダード」の概要
実物投影器でノートを映したり,フラッシュ
思考力・表現力を高めるためのあきた型算数
型教材で変化が見えるようにする。
の改良型である。思考と表現は一体と考え,思
ウ 「つなぎタイム1」(集団思考1)
考力を高めるために子どもたちが表現する頻度
・本時の第1問題について,児童は教室内を自
を高めている。言葉や数式,数直線,図など表
由に立ち歩きながら,自分の認知スタイルに
現方法を多様化するとともに,集団思考「つな
合う友達や自分の分からない部分,自信のな
ぎタイム」を「課題解決」と「めあて達成」の
い部分を分かりやすく説明してくれる友達を
2段階に分け,表現場面も多様化しているのが
見付け,考え合い・聞き合い・教え合う。教
特徴である。
える児童も,友達に説明することや友達の質
問に答えることによって理解がより確実にな
っていく。
エ
「つなぎタイム2」(集団思考2)
・本時のめあて達成(原理・原則のまとめ)の
ために,児童たちはグループで言葉をつない
だり,クラス全員で言葉をつないだりしてま
とめの文を作る。そして評価問題の全員正解
を目指して,適用問題を聞き合い教え合う。
【つなぎタイム1~「こうすればどう?」~】
(2) 「にしせんスタンダード」授業イメージ
「みんなで分かって
みんなができて
オ
「めあて」と「まとめ」の整合性
・「めあて」の文末を「~は?」にし,
「まとめ」
みんな
とのつながりを明確にする。
Happy!」を合い言葉に,全ての子どもたちが「こ
②
刺激量の調整
うすればどう?」と友達と一緒に考え,
「なぜ?」
ア
視覚・聴覚刺激の調整
と友達に問いを発し,「わけは……」と友達に答
・学習に集中できるように,黒板まわりの掲示
物は取るか最小限にとどめる。黒板内にも余
・「勉強が好きだ」の質問に「強くそう思う・そ
計な情報は書いたり貼ったりしない。
・前面の戸棚は中が見えないようにする。
う思う」と答えている。(5人)
・「算数が好きだ」の質問に「大好き・好き」と
・水槽は廊下に置く。
イ
答えるようになった。(4人)
動きを取り入れた活動
○自己肯定感の向上
・好奇心の旺盛さや活動力を生かすため,課題
・「自分にはよいところがある」の質問に「あて
解決のための教室内の自由な立ち歩きを認め,
はまる・どちらかというとあてはまる」と答
場所や相手を自由に決めてよいことにする。
えている。(6人)
③
構造化の工夫
○関わるの力の向上
ア
時間の構造化
・「友達との間で話し合う活動をよく行ってい
・所要時間,残り時間が視覚で意識できるよう
る」の質問に「あてはまる・どちらかという
に全クラスに「タイムタイマー」を配備する。
イ
単元の構造化
とあてはまる」と答えている。(4人)
・「ふだんの授業では,友達と一緒に考えるのが
・単元のゴールと全体像が分かりやすいように,
好きだ」の質問に「あてはまる・どちらかと
単元の全体計画を配付する。児童は単元全て
いうとあてはまる」と答えている。(6人)
の主要問題を第1時にノートに書きながら,
●友達と関わることに興味をもつことが難しい
学習のおおまかな流れとゴールをつかむ。
ウ
児童や自分の解き方に強いこだわりをもつ児
45分間のパターン化
童にとっての学び合いを充実したものにする
・45分のゴールが分かりやすいように,また,
気持ちの切り替えがうまくできるように45分
●読み書き計算が苦手な児童と,学習から他の
間をパターン化する。
ことに興味が移りやすい児童の家庭学習の継
「問題」→「子どもとつくるめあて」→
続していく必要がある。
「自力思考(2分間)」→「つなぎタイム1
(集団思考1)」→「つなぎタイム2(集団
エ
必要がある。
4
おわりに
「にしせんスタンダード」は,
「学び合い」
「思
思考2)→「子どもとつくるまとめ」→
考力・表現力」「分かる」について教師たちが何
「適用問題・評価問題」→「ふりかえり」
回も議論と授業検証を重ねた上の,現在の最善
板書とノートの構造化
策である。ここには,ユニバーサルデザインの
・分かりやすく見やすいように,板書とノート
「全ての人は,違ったやり方で必ずできる」と
が対応するよう計画する。一目でポイントが
いう考えと重なるものがある。今後も私たちは
つかめるように「めあて」は青で「まとめ」
知恵を結集して,「みんなでみんなが分かる,で
は赤で囲む。ノートは45分間でA4見開き2
きる,楽しい授業」を目指していく。
ページ使うようにする。
3
成果と課題( ○成果
●課題)
※通常の学級で個別の指導計画を作成して
いる4~6年の児童6名を対象
○思考力・表現力の向上
・「めあて」や「まとめ」が一人で記述でき,論
理的説明力が向上している。
・友達の多様な考えに触れて思考力が向上して
いる。
・人前でも物おじせず話す力が向上している。
○学習意欲の向上
みんなが分かる授業のために・・
指導主事
大沢
貴子
「みんなが分かる,できる」を目指した,通
常の学級での取組である。特別な支援ではな
くみんなにとって分かる支援,この視点がと
ても大事であり,ゴールに結び付くための様
々な支援の実践例は大変参考になる。