1 2011 年 4 月 1 日の制度改正∼現地通貨為替リスクへ

e-NEXI 2011 年 4 月号
特集記事 現地通貨為替リスクへの対応強化について
2011 年 4 月 1 日の制度改正∼現地通貨為替リスクへの対応強化について∼
独立行政法人日本貿易保険
総務部経営企画グループ
1. 現地通貨建てファイナンスにおける為替リスクへの対応
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水道、交通、電力事業等はその収入のほとんどが現地通貨建てとなりますが、一般に事業規模
が大きくかつ資金償還期間が長いのみならず、新興国での事業には為替変動リスクも加わること
から、これらの事業資金は、これまでは主に日欧米銀によるハードカレンシー(日本円、米ドル、ユ
ーロ等)建ての融資により賄われてきました。
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一方、特に通貨危機を経験した新興国の事業者にとっては、為替変動リスクに晒されない現地
通貨建てファイナンスのニーズはもともと高かったのですが、その後も為替のミスマッチの問題は、長
らく根本的な解決には至っておりませんでした。
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しかし、新興国における資本蓄積が進むとともに、海外に進出した邦銀にも現地通貨の取り扱い
が認められるようになってくるなど、現地通貨建てファイナンスの拡大を可能にする環境が整備され
つつあります。NEXI といたしましても、かかる動きを支援すべく、現行の「外貨建て特約」の取り扱
いを拡充することで、現地通貨建てファイナンスにおける為替変動リスクへの対応を強化してまいり
ます。
2. 「外貨建て特約」とは
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保険契約時から保険金支払時までの外貨高・円安のリスクをカバーするものです。具体的な例
で説明してみましょう。銀行がタイの事業者に対してタイバーツ建てでの貸付を行い、NEXI と保険
契約を締結したときの為替レートが 1 タイバーツ(THB)=3 円だったのですが、不幸にして事業者
が支払不能に陥ってしまい、貸付金返済時の為替レートが THB1=4 円と外貨高・円安が進行
したとします。
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NEXI は、保険契約をすべて円建てで締結しています。したがって、通常であれば THB1=3 円で
換算した円貨額を保険金としてお支払いしますが、銀行にとっては、現地通貨で返済を受けこれ
を円に交換したときに比べ、円貨での受取額が目減りしてしまいます。銀行が外貨建て特約を締
結していれば、かかる場合にも THB1=4 円で換算した円貨額を保険金としてお支払いできます
ので、保険事故時の為替変動リスクを意識せずに現地通貨建てファイナンスに取り組むことができ
ます。
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逆に、保険金支払時の為替レートが THB1=2 円と外貨安・円高に振れたと仮定しますと、保険
事故が発生しなかったとしても、銀行が返済を受けられるのは THB1=2 円で換算された金額で
す。したがって、これを超える額を保険金としてお支払いすることはできませんので、念のためご注
意願います。
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図 1 外貨建て特約の仕組み
【返済時】
【保険契約時】
THB10億の貸付実行
l THB1=JPY3 → 30億円相当
海外借入人が返済不能に
l THB1=JPY4 → 40億円相当
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邦銀海外支店等
発
行
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保険証券
[30億円]
外貨建て特約
邦銀海外支店等
THB建て
貸付
保険金の
お支払い
[40億円]
返済
不能
海外借入人
THB建ての
収入が殆ど
海外借入人
円安が進んだとき、
外貨建て特約がなけ
れば、お支払いする
保険金額は30億円
(出典:NEXI 作成)
3. 対応強化の概要
(1)
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対象保険種
貿易一般保険(2 年以上案件)、貿易代金貸付保険(2 年以上案件)及び海外事業資金貸
付保険を対象とします。
(2)
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対象通貨
現行の米ドル(USD)及びユーロ(EUR)に加え、英ポンド(GBP)、カナダドル(CAD)、豪ドル
(AUD)、ニュージーランドドル(NZD)、シンガポールドル(SGD)、中国人民元(CNY)、韓国ウォン
(KRW)、香港ドル(HKD)、台湾ドル(TWD)、タイバーツ(THB)、インドネシアルピア(IDR)、ベト
ナムドン(VND)、フィリピンペソ(PHP)、マレーシアリンギット(MYR)、インドルピー(INR)、バーレー
ンディナール(BHD)、ブラジルレアル(BRL)及びロシアルーブル(RUB)(以上 18 通貨)を追加しま
す。
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(3)
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今後、必要に応じ、適宜対象通貨の拡大を検討します。
上限換算率
今次新たに対象に加える 18 通貨については、保険契約時から貸付金返済時に至るまでの最大
3 倍の外貨高・円安をカバーします。
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なお、現行の米ドル(USD)及びユーロ(EUR)については、現行通り同最大 2 倍の外貨高・円安
をカバーします。
(4)
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割増料率
海外事業資金貸付保険につきましては、為替変動リスクの存在を前提として、一律に 10%の割
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増料率を申し受けます。ただし、米ドル(USD)は従来通り割増料率を頂戴せず、ユーロ(EUR)
については従来の 27%の割増を廃止し、米ドルと同じ扱いとします。
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貿易一般保険(2 年以上案件)及び貿易代金貸付保険(2 年以上案件)については、我が国
企業の国際競争力の維持に配慮するとともに、OECD 輸出信用アレンジメントを踏まえ、全通貨
について割増料率を頂かないこととしました。
NEXI は、かかる制度改正により、パッケージ型インフラの海外展開等を対象とした民間金融機関の積極
的な取り組みを一層強力に支援してまいります。具体的な案件のご相談をお待ち申し上げております。
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