(10月18日)「裁判員制度」

2012 年 10 月 18 日ロイヤリング講義
講師:弁護士 東浦 光利 先生
「裁判員制度」
I. はじめに
1. 自己紹介
私は、大阪で弁護士をやっております、東浦光利と申します。今日のテーマは裁判
員制度ですが、裁判員制度を説明するにあたって、通常の刑事裁判がどういったもの
なのか、そして通常の刑事裁判と裁判員裁判はどう違うのかを話していきたいと思い
ます。
まず、自己紹介がてら私の弁護士の業務について話をしたいと思います。
講演会や授業などで一番多い質問は、「先生は民事事件専門か刑事事件専門か?」です
が、ほとんどは民事事件をやっています。
私は刑事事件を好きですが、担当している刑事事件は常時抱えている事件が約10
0件ある中で4~5件です。
ちなみに、100件中6割くらいが交通事故の事件です。残りはいろいろで、建物
明け渡しや債権回収などの一般民事事件、遺産分割や離婚といった家事事件です。
交通事故の事件が多いのは保険会社の顧問をやっている関係です。
刑事事件がなぜ好きかと言われると、弁護士らしい仕事だからですね。刑事事件を
専門で取り扱う特殊な事務所を除き、常時4~5件の刑事事件を持っているのは、大
阪の弁護士の中では多い方と思います。
ところで、私は阪大では経済学部でした。法学部には縁がなかったのですが、今は
弁護士という仕事柄、このように法学部の皆さんの前で話す機会をいただいて、私自
身も楽しくお話をさせていただいています。
2.
導入
仕事の雰囲気を皆さんにわかってほしいので、ここで家事事件、離婚の事件を一つ
紹介したいと思います。
例えば、奥さん側に立って、浮気性で借金をする旦那と離婚しようとする事件があ
ります。まず初めは交渉をしますが、まとまらない場合、家事調停を行います。それ
でも解決しなければ離婚の訴訟、つまり裁判をします。家事調停では、家庭裁判所で
調停委員という年配の男性と女性が裁判官のような形で二人の間に入って、当事者の
言い分を聞き、このよう条件で離婚をすればいいのではという提案を行います。
印象に残っている事件のお話をしましょう。その事件は夫婦がまだ別居していない
1
状態で家事調停中でした。離婚調停中ですからお互い感情的になっています。
あるとき奥さんが電話をかけてきて私にこう言うのです。
「先生、旦那が夜に帰ってきたら、冷蔵庫を開けて勝手にうちの卵を使ってご飯を
食べてます。リビングでドテーッと寝そべっているし。どうしましょう。
」
奥さんは、旦那が浮気性で借金をしているために離婚調停にもなっているのに、偉
そうに寝そべっていることや勝手に卵ご飯を食べていることも怒っていました。
私もさすがに「卵ごはんくらい食べさせてあげたらいいんじゃない?」と答えまし
た(笑)
。
笑い話みたいですが、弁護士として活動していると、これくらい人の感情がぶつか
る場面に立ち会うということです。そして、代理人として当該案件を扱う以上、その
感情をぶつけられる立場にいます。それはある意味すごくしんどいことです。ただ、
依頼者がそれくらい感情的になるのはなぜかを考え、その言いたいことを汲み取り、
調停や裁判の中で主張に変えるのです。弁護士に依頼する人は差し迫った状況にある
人も多い。代理人である以上、その人の感情をしっかり受け止めたうえで、それを主
張に変え、証拠集めをして、裁判や調停で解決に向かうように仕事をするのが大事で
あると思います。私は普段からそういったことを心がけています。
刑事裁判の例で考えても、逮捕され身柄を拘束されているのですから差し迫ってい
る状況の最たるものです。被告人が言っていることをしっかり汲み取り、その人の言
い分をきちんと裁判で伝えるということが大事です。それはやはり責任が重く大変で
すが、やりがいもあります。
II. 通常の刑事裁判の仕組み
では、通常の刑事裁判の仕組みについてお話します。
刑事裁判とは、罪を犯したと疑われて裁判にかけられている人(=被告人)の罪を、
証拠に基づいて裁判所が有罪か無罪か、有罪としてどのような刑にするかを判断する
手続です。
1.
登場人物の役割
登場人物は裁判官、検察官、被告人、弁護人、証人などです。弁護士は、刑事裁判
では弁護人と呼ばれます。検察官は、裁判において被告人の罪を証明し、処罰を求め
ます。弁護人は、被告人の利益を守るため、被告人にとって有利な事情を証明・主張
します。裁判官は、弁護人・検察官の主張立証をみて、被告人が罪を犯したかどうか、
罪を犯した場合どのような刑にするかを判断するという役割を担います。
ちなみに、裁判の傍聴に行ったことのある人。
(手を挙げさせる)
結構いますね。見たことのある人は法廷のイメージもつくと思います。
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大阪では傍聴席からみて、正面が裁判官、左手に検察官、右手に弁護人がいます。
2.
裁判手続きの大まかな流れ
おおまかな手続きについてもう少し具体的に説明していきます。裁判所が人定質問
を行い、黙秘権の告知をした後、検察官が法廷で起訴状を読み上げ、裁判所に対して、
どのような犯罪について審理を求めるかを明らかにします。
人定質問は、裁判官が、被告人として出廷した人が当該刑事裁判の対象となってい
る被告人か確認する手続です。氏名・住所・本籍・職業等を尋ねます。
そして黙秘権の告知をした後、検察官は、被告人が犯したと疑われる事実について
記載された起訴状を読み上げます。
その後、被告人と弁護人が、起訴状に書かれている事実について意見を述べます。
たとえば「間違いありません」、「そのようなことはやっていません」、「大体間違
いありませんがこの部分については違います」などと言います。
検察官は、これから裁判でどのような事実を証明するか述べて裁判所に審理を求め
ます。これを冒頭陳述と言います。被告人の経歴や罪を犯すに至った経緯、どのよう
にして罪を犯したのか、罪を犯す前、犯した後の行動など、これから証明するいろい
ろな事実を述べます。
その後、提出された証拠書類や証拠物の取り調べなどを行い、その中で検察官と弁
護人が攻防し、証拠調べの結果を踏まえて最後に検察官が論告で求刑〇年・弁護人が
弁論で有利な事情を説明し、無罪とか執行猶予とかを求めます。
III. 「認め」事件と「否認」事件
それでは、通常の裁判の殺人事件を例に挙げて説明しましょう。
検察官は、被告人が殺人をどこでいつ行ったかということを読み上げます。このよ
うに裁判で焦点となる事実を記載したものが起訴状です。
その起訴状について被告人がその事実が間違いでないかを応えます。その後弁護人
が意見を述べます。被告人の態度は大きく2つで、検察官が主張する事実関係は認め
るけれども刑を軽くしてほしいという「認め」事件と、検察官の主張する事実はやっ
てないと主張して無罪を求める「否認」事件です。
1.
「認め」事件
被告人が被害者を殺したことは間違いないが、被告人にもやむをえなかった事情、
有利な事情があるから減刑して欲しい。
この場合、刑を軽くするように争います。
一例として、有名な事件ですので皆さんの中にも知っている方もおられるでしょう
が、昔の事件で、娘が父を殺したが、娘は幼いころから性的虐待を受けていた事件が
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あります。当時は尊属殺人があり、そのままでは執行猶予がつけられなかったところ、
尊属殺人の量刑を憲法違反として、情状を考慮し、刑を軽くして執行猶予がつけられ
たという事件がありました。
ところで、被告人が殺したということを認めても、すべて情状事件というわけでは
ありません。
たとえば正当防衛の事案があります。確かに被告人が被害者をナイフで刺して殺し
たことは間違いないけれども、被害者が先にナイフで襲ってきたからやむなく刺した
場合には、殺したことは認めるけども正当防衛なので無罪という争い方になります。
他に責任能力ということも問題となります。被告人が被害者を殺したことは間違い
ないけれども、薬で頭がもうろうとしていて責任能力がないから無罪だ等、争うこと
もあります。
これらは起訴状記載の事実は認めているだけで、実質は否認事件ということになる
でしょう。
2.
「否認」事件
典型的な否認事件は、罪を認めていない事件、例えば人違いなどです。最近ニュー
スで話題ですが、メールなりすまし事件がありました。裁判の中でなりすましが判明
すれば無罪になったでしょうけれども、何件かは最近までなりすましがわからなかっ
たため、そのまま処罰されたことがあったそうですが、恐ろしいことですね。そうい
うことにならないように、弁護人としては目を光らさなければならないでしょう。
殺人の例を挙げてみましょう。A 君がナイフで B 君を刺したとの目撃者がいて、そ
れを検察官が証拠として挙げています。その際、我々弁護人は目撃者を反対尋問しま
す。
「どのような状況で見ましたか。明るさはどうでしたか。本当に刺したのは A 君で
したか。
」などです。目撃者を徹底的に尋問していき、目撃者の証言がいい加減なもの
とわかったら、目撃証言という有力な証拠が落ちることになります。もちろんこれだ
けで無罪というわけにもいかないのですが、例えばアリバイがあるとか、そうでなく
ても他の証拠も合わせて有罪にできる証拠が足りないといえるなら無罪となります。
IV. 弁護士の弁護活動―ひったくり事件の紹介
「認め」事件で一つ、ひったくりの事件を紹介しましょう。皆さんと同じ大学生が
原付バイクに乗って通行中の女性を中心にハンドバッグ等をひったくりした事件です。
彼はひったくりを30~40件繰り返していました。
裁判は先ほど話した流れで進行します。検察官が起訴状を読み上げます。罪は認め
ているので「認め」事件です。被告人は正当防衛でも責任能力の争いもないので、情
状を主張して量刑として何年が妥当か、執行猶予がつくかを争います。その際に、実
際の弁護人の活動としてどのようなことがあるのかを今から説明します。
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たとえば皆さん、大学生のひったくり事件では、有利な情状を主張するのにどうい
った事情があると思いますか。ちなみに、A 君は大学3年生、母がいます。被害者のう
ち起訴されているのは11人分です。
一番有利な情状になるのは、被害者に弁償をし、示談することです。弁護人は、被
害者と示談することを目指します。
具体的には、各被害者と連絡をとります。いきなりだと被害者の方も驚かれるので、
まずは手紙で A 君の弁護人であることと一度お会いしたい旨を伝えます。示談書を被
害者と交わすことによって、一つの弁償ができた、民事上解決したという意味になり
ます。嘆願書にもサインしてもらいます。被害者が許しているということは、裁判所
も刑を軽くする事情として考慮します。
当然、示談に応じない被害者もいるし、嘆願書にサインしない人もいます。結局、
この事件では示談書は9人、嘆願書は3人が書いてくれました。示談・嘆願は簡単に
してもらえるものではないのですが、これが無理でも被害弁償だけすることもありま
す。取ったお金を返したことは有利な情状になります。示談・嘆願・被害弁償を対被
害者との間で行ったことを有利な情状資料として出します。
ちなみに、彼の事件の中で「若い子ですし、もういいですよ。被害弁償もいらない
ので、本当にまじめに生きると約束してくれるのであれば嘆願書サインします」と言
ってくれた被害者のおばあちゃんもいました。
話は前後しますが、盗ったお金は結構な金額になっていました。盗ったもの全部弁
償することもできませんでした。1円もお金を持っていないことも事件だってありま
す。その場合は、例えば被害額100万円で50万円しか用意できなければ、その5
0万円を人数と被害額で公平に分配することや、他の被害者の了承を得てある一人に
多く払うこともあります。
次に反省ということがあります。例えば、ひったくりして何が悪かったかを被告人
本人と話し合います。一つは、当然ですが人の財産を盗ったことです。でも、その盗
った鞄には携帯や写真、カード、家の鍵など他の物も入っています。もしひったくり
にあった女性で一人暮らしとかであれば、家の鍵取られたら怖いと思いますよね。そ
のような恐怖心をひったくりで人に植えつけたのです。被害者にいつ家に侵入される
かもしれないと怖い思いもさせたのです。ある年配の被害女性は、携帯電話には孫の
生まれたときからの写真がたくさん入っていたと嘆きます。被告人のひったくりは、
単にお金を奪ったというだけではなく、被害者の思い出も盗んだのです。
A 君は何が悪かったのかということを知り、反省したので社会的に更生できるという
ことを弁護人が主張します。
A 君は大学生なので、大学にも話を聞きます。A 君は退学でした。ただ、退学してい
なかったら有利な情状として、まだ学生でこれから就活というところで刑務所なんて
入ると彼の人生は終わりだ、余計に犯罪に走るかもしれないから軽くしてくれ、執行
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猶予を付けてくれと言います。退学した場合は、退学して社会的な制裁は受けている
から罪を軽くしてくれと言います。
裁判では、親に証人として立ってもらいます。親には子供である被告人の良いとこ
ろ、悪いところ、親との関係はどうだったのか、親として今後どういう監督をしてい
くか、親自身も反省をしているとのことを裁判所の面前で語ってもらいます。これは
素直な子であればこたえます。それは次の更生につながります。反省を促し、更生し
てもらって二度と犯罪に手を出さないようにしてもらうということも弁護人の仕事で
す。
皆さんの中には弁護士は悪い奴の味方をしていると思っている人もいるかも知れま
せんが、それは違います。何でもかんでもクロをシロにするのが我々の仕事ではなく、
クロはクロで、相応な罰を受けてもらいます。それを適正な罰にするのが我々の仕事
です。そして、もっと大事なことは、彼が刑事裁判という手続を経る中で、示談した
ときの被害者の話や親がどれだけ心配したか等をわかってもらい、罪を償わせ、本当
に反省してもらって社会的に更生してもらうことなのです。私はこのようなことを念
頭に置いて弁護士として活動しています。
結果として A 君は1審では執行猶予無しの3年の実刑になりました。ひったくりは
一歩間違えれば、被害者を倒して怪我をさせるかもしれないという危険な犯罪なので
す。大阪では特にひったくりの罰は厳しいです。なお、控訴審ではさらなる情状事情
が考慮され、執行猶予になりました。
V. 裁判における具体的な活動
レジュメに戻りたいと思います。
1.
裁判における検察官の具体的な活動
起訴状朗読、冒頭陳述等の冒頭手続から始まり、裁判官に対し、いろいろな書類や
証人の取り調べを申請して、被告人が罪を犯したことや犯罪の悪質性、被害者が受け
た被害の大きさなどを証明します。
2.
裁判における弁護人の具体的な活動
被告人にとって有利な証拠(人・書面など)を探し、裁判所に提出します。アリバ
イの証言などです。また、被告人が更生できるよう、今後被告人を監督してくれる人
(親・子・雇用主など)を裁判所に連れてきて、被告人の更生にどのように協力して
もらえるのかなど裁判所で証言してもらいます。更に、被害者がいる犯罪の場合、被
害者に対して被害弁償をする手続きをしたり、被告人と被害者の間の示談をまとめた
りします。
6
3.
裁判における裁判官の具体的な活動
人定質問から始まり、審理計画を立て、裁判が円滑に進行するように訴訟指揮をし
ます。そして、裁判の進行を行い、検察官・弁護人の主張・証拠を見て判決を下しま
す。
人定質問とは、裁判官が被告人に対し、名前や住所、職業などを尋ねます。万が一他
の人の犯罪について裁くことがあってはならないので、人定質問は重要です。
4.
三者共通の活動
これもすでに述べたとおり、被告人が犯罪事実を認めている事件では、被告人に対
し、自分が犯した罪をきちんと認識させ、反省を促し、今後罪を犯さず生活していけ
るようにするためにはどうすればよいのか考えさせるということです。
例えば A さんは 20 歳から 50 年近くスリを繰り返し、刑務所を行ったり来たりして
いました。そのようなスリ職人に対して私もできる限りのことをしますが、若僧の弁
護士の言葉で A さんを更生させるのは厳しいとは思いましたが、それでもその人の刑
として妥当なところに落とすようにしました。
VI. 裁判員制度
1.
制度概要
刑事裁判に国民を参加させ、事実認定(有罪か否か)や量刑について裁判官と一緒
に判断させる制度です。開始時期は平成21年5月21日です。
対象事件は、殺人、強盗致傷、現住建造物への放火など重い犯罪です。裁判に参加
するメンバーは通常、裁判官3人、裁判員6人、補助裁判員2名です。裁判員になっ
たことのある人はいますか?(誰も手が上がらない)まだいないですね。
2.
裁判員を選ぶ方法
まず、次の年の裁判員を選ぶため、秋頃に選挙人名簿から無作為に候補者名簿に載
せる人を選びます。その時点で裁判員になるのかは不明です。12月頃に、裁判所か
ら裁判員候補者に名簿に載せられたことが通知されます。調査票というものが送られ
てきますが、裁判員候補者が調査票に回答した内容をもとに調査が行われ、裁判員に
なれない理由や、辞退理由があって、その理由が認められれば裁判所に行く必要はあ
りません。
私が行った裁判員裁判はでは、70人くらいが裁判員候補者として裁判所に呼ばれ
ていました。
裁判員裁判の初日の午前中に選考手続が行われます。裁判員候補者は、裁判官、検察
官、弁護人の面接を受けます。この面接で、当日になって改めて辞退理由があるか、
被告人や僕との利害関係がないかなどの質問をされます。弁護士、検察官、裁判官が
7
この人は裁判員から外そうという人を5人ずつ選んで外すことができ、検察官の方も
僕と同じ方を外していました。
3.
拘束期間
3~5日が一般的です。しかし、事件によっては長期化しています。
4.
裁判員にならなくて済む場合
こちらはレジュメを確認しておいてください。ただ、実施前に司法関係者の間では、
一般市民は裁判員になることを嫌がると思っていましたが、私が裁判員裁判を担当す
る中での個人の感想として前向きに捉えてくれている人が多いと感じています。最近
は積極的に質問をされる方が多く、的確な質問をされる方もいます。
5.
審理・評議
そのような審議を経て、
裁判官・裁判員が評議において全員で議論する。評議には我々
も入ることはできません。
6.
公判前整理手続き
公判前整理手続きとは、裁判の前の手続きという意味で、裁判員裁判において、裁
判員が判断しやすいように、裁判が行われる前に法曹三者で主張を整理し、証拠を厳
選する制度です。
昔は証拠のほとんどを書面のやり取りで行っていましたが、そうすると裁判員が膨
大な資料を全部読まなければならなくなります。そこで、必要な部分に抜粋して証拠
づくりをしていきます。そしてそれにより、本体の裁判をスムーズに行えるようにす
ることができます。最近は裁判員裁判でない通常の刑事事件でも公判前整理手続が実
施されています。
また、弁護人の冒頭陳述が行われます。起訴状は事実だけですが、弁護人の冒頭陳
述とは、弁護人がこういう経緯でこういう内容でというようにストーリーとしてこれ
から証明しようとする事実を読み上げます。これまで通常の刑事事件では弁護人は冒
頭陳述を行っていませんでした。
膨大な書類から必要な部分を抜粋して争点を明らかにするための書面が、検察官の
言うところの証明予定事実記載書面で、弁護人のいうところの予定主張記載書面です。
裁判ではこういうことを主張する予定ですということを書面で明らかにします。
裁判員裁判と通常の刑事裁判との違いは、裁判員、期間、対象もありますが、何よ
りも公判前整理手続というものが挙げられます。裁判員裁判では公判前整理手続は必
須ですし、最近では通常の事件でも公判前整理手続が実施されています。
以上
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