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第 14 話 ロマンポルノ男優 その3

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第 14 話
ロマンポルノ男優
その3
■懐かしい顔ぶれを揃えた『女帝』――83 年(前回から続く)
お盆興行『ダブルベッド』は大谷直子、石田えりがロマンポルノに登場した作品だが、
相手役として柄本明が『MR.ジレンマン 色情狂い』などとは違うシリアスな役柄で出
演し、前述のように岸部一徳も共演した。岸部はこの後もう 1 本『夕ぐれ族』にも出てい
る。
なお、劇中 TV ディレクターの岸部が作ったテレビドラマの中に、東宝のベテラン脇役・
藤木悠と『古都』(80 年/監督・市川崑)でこれが引退記念作の山口百恵が二役で演じる
双子姉妹の姉の幼なじみの青年役でデビューした北詰友樹が姿を見せている。また、後に
悪役系の脇役で売り出した飯島大介(83-88)が出演しており、ロマンポルノ末期までの
間に数本に出ている。
同時公開の高瀬春奈主演『武蔵野心中』では、高瀬が太宰治の愛人・山崎富栄を演じる
相手の太宰役で峰岸徹が 72 年の『哀愁のサーキット』以来の出演となる。
にっかつ 70 周年記念作品として作られた秋の文芸大作、吉行淳之介原作『暗室』(83
年/監督・浦山桐郎/出演・三浦真弓、木村理恵)では、清水紘治が主人公の小説家役に
起用された。子役出身の清水は、自由劇場、黒色テント劇場、青俳と舞台で大活躍する一
方、大島渚、実相寺昭雄、黒澤明などの作品で存在感を発揮していた。また、同様に若き
日から舞台、映画、テレビで活躍してきた寺田農が助演している。70 周年記念大作だけあ
って、他にも江角英明、殿山泰司、北見敏之、阿部雅彦などロマンポルノを支えてきた男
優が多数出演している。
■古巣に帰ってきた中尾彬~84 年
そして 84 年のお正月映画、早乙女愛主演の『女猫』は、『ミスターどん兵衛』(80 年)
で監督デビューした東映のスター山城新伍がメガホンを取ったことで、東映ゆかりの俳優
たちが大挙登場した。暴走族シリーズで活躍した岩城滉一が早乙女の相手役を務め、54 年
のデビューから 71 年まで 130 本以上の日活映画に出演した後東映でも悪役で名を売った
深江章喜が久々のホームグラウンドに舞い戻った。他にも東映勢は名和宏、片桐竜次が、
そして山城の弟分とも言えるコメディアンのせんだみつおも顔を出している。
同時公開の五月みどり主演『ファイナル・スキャンダル 奥様はお固いのがお好き』に
は、60 年代前半の人気刑事ドラマ「七人の刑事」で売り出した天田俊明が出演して当時テ
レビに齧り付いていた子どもだったロマンポルノ観客を驚かせた。
エロス大作や文芸ポルノが幅を利かせたこの時期、それ以外の作品に目を転じると、八
代亜紀の曲を主題歌にした歌謡ポルノ『ブルーレイン大阪』にニューアクション最後の傑
1
作『八月の濡れた砂』に主演した広瀬昌助がヒロインの恋人役で出演し、ニューアクショ
ンからのファンを喜ばせてくれた。
前年の『十階のモスキート』で新人賞を総ナメにして鮮烈なデビューを飾った崔洋一が
ロマンポルノに招かれた『性的犯罪』では、新劇出身で河原裕昌の名で活動した後改名し
て『潮吹き海女』(79 年/監督・白鳥信一/脚本・大工原正泰/主演・日向明子、飛鳥裕
子)以来ロマンポルノに河原さぶ(79-88)が初主演を果たす。その後も『人妻暴行マン
ション』に主演、
『母娘監禁 牝』ではヨコハマ映画祭助演男優賞を獲得するなど、最末期
の『ラスト・キャバレー』まで 80 年代のロマンポルノを支え続けた。
他に、
『ズームアップ 卒業写真』
(83 年/監督・川崎善広/脚本・荒井晴彦/主演・中
村れい子)に出た江藤漢(現・江藤漢斉 83-86)は、江藤潤《『祭りの準備』(75 年/監
督・黒木和雄)でデビューした江藤潤とは別人》の名でテレビや映画に顔を出していたが、
この作品でロマンポルノにも登場し、脇役で活躍した。
『トルコ行進曲 夢の城』は喜劇の名匠・瀬川昌治監督のロマンポルノ登場とあって、
ロックバンド
「モップス」
のヴォーカルから独り立ちして歌と芝居で売れた鈴木ヒロミツ、
子役出身で人気ロカビリー歌手から役者になった鈴木ヤスシという喜劇映画の常連役者が
並んだ。舞台、テレビ、映画で幅広く活動した勝部演之もロマンポルノ初出演したし、小
林稔侍も出演している。
『不純な関係』では、『人妻集団暴行致死事件』あたりから脇役で活躍し、『クライマッ
クス・レイプ 剥ぐ』
(79 年/監督・藤井克彦/脚本・斎藤信幸/主演・水島美奈子)な
どで主役格の役を演じていた酒井昭(78-84)が、3 人の女との関係を引きずる主人公の
男を好演した。続く『蘭の肉体』(84 年/監督・西村昭五郎/脚本・鹿水晶子/主演・小
田かおる)でも活躍し、その後の出演が途絶えたのが惜しまれる。
この『蘭の肉体』で酒井と一人の女を争う役を演じた中田譲治(80-85)は、『背徳夫
人の欲情』
(80 年/監督・林功/脚本・斎藤信幸/主演・志麻いづみ)から『高校教師 成
熟』まで 10 本近い作品で準主役級の立場で活動した。その後アニメの吹き替えなど声優
の世界に進み、そちらで大活躍している異色の元ロマンポルノ男優である。
『暗室』の興行的失敗で文芸ポルノ路線は下火になったものの、正月、GW、お盆の 3
大興行に勝負作をぶつけるという方策は変わらなかった。84 年の GW 作品は愛人バンク
という当時の最新風俗を扱った『夕ぐれ族』である。多様な女優、男優が入り乱れる「数
で勝負」式の賑やかな映画になった。
男優では、顔面模写などのユニークな芸で人気芸人になっていた竹中直人がピンク映画
『痴漢電車 下着検札』
(84 年/監督・滝田洋二郎)での怪演に続いてここでも弾ける。
コミックバンド「ドンキーカルテット」で売れ後独立した小野ヤスシ、フォーク歌手から
転じて『嗚呼!!花の応援団』シリーズなどで突き抜けた喜劇演技を見せたなぎら健壱、漫
才コンビ「のりお・よしお」の上方よしお、元アイドルグループ「フォーリーブズ」の青
2
山孝、そして内藤剛志と共に長崎俊一監督などの自主映画に出演していた諏訪太朗がロマ
ンポルノ初出演を果たした。蟹江敬三、岸部一徳、鶴田忍らも出ていて個性比べの感があ
った。
ちなみに同時公開の『美加マドカ 指を濡らす女』には内藤剛志をはじめ、上田耕一、
北見敏之、大江徹、丹古母鬼馬二、高橋明、庄司三郎がずらりと揃い、こちらはロマンポ
ルノ男優の競演である。
お盆興行の新藤恵美が名美を演じた『ルージュ』で村木を演じたのが火野正平である。
NHK 大河ドラマに抜擢されてすぐ映画でも主役を勝ち取り、その後は若手個性派俳優と
してメジャーの映画で目立つ存在だった。名美に惹かれるカメラマンに『ダブルベッド』
の劇中ドラマに出た北詰友樹、その相棒の記者に漫才コンビ「セント・ルイス」の星セン
ト、そして名美の夫には『軽井沢夫人』に続いて土屋嘉男が配されている。
同時公開の『双子座の女』には、62 年度日活ニューフェイスで日活青春映画などに出演
しテレビの売れっ子になってからはフリーで他社作品にも多く出ていた中尾彬が古巣に帰
ってきた。またここでも、せんだみつおや『性愛占星術 SEX味くらべ』以来 2 本目の
ロマンポルノ出演になるたこ八郎がゲスト出演している。
■ピンクの意地を発揮した螢雪次朗――85 年~86 年
85 年のお正月映画は伊藤咲子主演の『刺青 IREZUMI』。相手役に人気刑事ドラ
マ「太陽にほえろ」のロッキー刑事こと木之元亮が登場した。
お盆興行の『ラブホテル』は、売れっ子監督だった相米慎二がかつて契約助監督をして
いたロマンポルノの現場に戻ってきた作品であり、速水典子の名美に対し村木には『暗室』
に続き出演の寺田農。寺田はロマンポルノ最後の年の『うれしはずかし物語』にも出てい
る。
『翔んだカップル』(80 年)の尾美としのり、『ションベンライダー』(83 年)の伊武
雅刀、木之元亮、
『魚影の群れ』
(83 年)の佐藤浩市と、相米組出演者たちが特別出演で花
を添えている。
86 年お正月映画は天地真理主演の『魔性の香り』だった。『悪魔の部屋』に続き出演の
ジョニー大倉、
『エロスは甘き香り』以来の高橋長英とともに、戦後まもなく俳優になり各
社で多数の映画に出演、ことに日活ニューアクションの悪役で強烈な印象を残した青木義
朗の姿があったのは、先の広瀬昌助とはまた別の意味でニューアクションのファンにとっ
て感慨深いものがあった。脇役では、個性的な容貌で大森一樹作品の常連として知られる
斎藤洋介、後にテレビのワイドショーなどで人気リポーターとなった魁三太郎も出演して
いる。
86 年のゴールデンウィーク興行に出た、ピンキーこと今陽子主演『蕾の眺め』には佐藤
浩市が本格的に出演し、つかこうへい劇団出身で『蒲田行進曲』
(82 年/監督・深作欣二)
で脚光を浴びた平田満がロマンポルノに初出演する。新劇出身で映画、テレビに独特のキ
3
ャラクターを見せた草野大悟も初出演だ。大ベテラン加藤嘉も 74 年の『鍵』以来のロマ
ンポルノである。
同時公開の『部長の愛人 ピンクのストッキング』
(86 年/監督・上垣保朗/脚本・木
村智美)には、
「コント赤信号」の渡辺正行が出演している。
この秋の児島美ゆき主演『不倫』では、児島の不倫相手であるストリップの演出家役を
70 年代に過激な演劇運動を貫き「流山児★事務所」を旗揚げして公演プロデュースをして
いた流山児祥が演じた。また、児島の夫役にはワイドショーのリポーターで一躍有名にな
った新劇出身の山本耕一が出演している。
この時期、通常の作品では『花と蛇 地獄篇』に、大映の中堅俳優で倒産後は各社の作
品に出ていた平泉征が平泉成と改名したのを機会に登場し、続いて『オーガズム 真理子』
(85 年/監督・加藤文彦/脚本・桂千穂/出演・清里めぐみ、小川恵)と 2 本に出演して
いる。
『宇能鴻一郎の 桃さぐり』にはピンク映画の人気男優・螢雪次朗が顔を見せているが、
これはあくまで例外。螢は 80 年代のピンク映画を代表する男優として、ロマンポルノに
対するピンクの意地を発揮してきたのである。
■ピンクの意地を発揮した螢雪次朗――85 年~86 年
87 年に入ると、もはやエロス大作もあまり作られなくなってしまう。
その中で 87 年お盆興行の三原じゅん子主演『嵯峨野の宿』には、青春スターとして主
演作も多い金田賢一が出演した。50 年代半ばから東映の脇役で幾多の作品に顔を見せた小
田部通麿、テレビタレントで活躍していた稲川淳二もロマンポルノ初出演である。
『軽井沢
夫人』に続いて江原真二郎も出演した。
最後のエロス大作となった 88 年のお正月映画である中村晃子主演『待ち濡れた女』で
は、3 本目のロマンポルノ出演となる高橋長英が相手役を務め、80 年代のアイドル青春映
画に多く出ていた柄沢二郎が初出演した。
ロマンポルノには最後まで、男優たちの健闘があった。新顔も絶えなかった。
小劇場の俳優でピンクにも出ていた本田菊二郎(菊次朗とも名乗る)は、
『奥義快感 艶
(つや)
』
(87 年/監督・池田賢一/脚本・吉本昌弘/出演・小林ひとみ)
、
『母娘監禁 牝
<めす>』
、
『偏差値 H 倶楽部』
(87 年/監督・すずきじゅんいち/脚本・菅良幸/主演・
杉田かおり)と立て続けに 3 本出演したが、その後はピンク映画で 20 年にわたって活動
を続けた。
『母娘監禁 牝<めす>』では、森田芳光作品や伊丹十三作品の常連脇役だった加藤善
博が少女たちを操る不気味な男の役で存在感を示している。
『美味しい女たち』(87 年/監督・西村昭五郎/脚本・桂千穂/出演・雨野夕紀、南エ
ミ)には東宝の中堅俳優だった佐々木勝彦が登場した。また、ロックバンド「東京タワー
4
ズ」から黒沢清監督に見いだされて映画に入ってきた加藤賢崇も出演している。
『シンデレラ・エクスタシー 黒い瞳の誘惑』(88 年/監督・川崎善広/脚本・磯村一
路/出演・叶みづき、高樹陽子)ではハント敬士がデビューし、最終作『ラブゲームは終
わらない』にも出演した。
『猫のように』には、70 年代青春ドラマで人気を博した森川正太(現・章玄)が出た。
『BU・RA・Iの女』では、
『ひと夏の出来ごころ』
(84 年/監督・加藤文彦/脚本・
木村智美/出演・岡本かおり、高橋麻子)でデビューした後『ビー・バップ・ハイスクー
ル』シリーズで高校生役をやっていた小沢仁志が初主演を飾った。コンビを組む助演の安
藤一夫も、
『ロリータ妻 微熱』
(84 年/監督・黒沢直輔/脚本・斎藤智徳、白山完/出演・
山本奈津子、山口千枝)に出た後 2 本目のロマンポルノだった。この映画には、元プロレ
スラーでタレントのサンダー杉山も出演している。また、
『人妻集団暴行致死事件』以来に
なる室田日出男が暴力団組長役で顔を見せている。
同時公開の『ラスト・キャバレー』では、ヒロインの父親役で個性派脇役として当時注
目されていた大地康雄が出演している。ヒロインの相手役を務めた渡辺航はこのとき 21
歳になったばかり。おそらく最も若い世代のロマンポルノ男優だろう。
『天使のはらわた 赤い眩暈』は村木を演じた竹中直人の初主演作であり、2 本目のロ
マンポルノだ。また、後に映画にもよく出るようになるが当時は演劇中心だった大鷹明良
が出演している
そしてロマンポルノ最後の作品『ラブ・ゲームは終わらない』には丹波哲郎の丹波道場
の新人俳優・奈良坂篤が初主演した。最後のロマンポルノ男優である。上田耕一、阿部雅
彦、高橋明、影山英俊といったベテラン男優が脇を固め、最後を飾るにふさわしい陣容と
なったのである。
――――「成人映画の時代」の連載は今月で終了をいたします。
連載をまとめたものは今年光文社新書で発売の予定です。
ご愛読ありがとうございました。
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