演題No3 ●LDLコレステロールが異常高値を示した1例 松嶋 和美1、杉内 博幸1、前田 香緒里3、西村 仁志2、池田 勝義2、安東 由喜雄3 1 3 熊本保健科学大学保健科学部 医学検査学科、2熊本大学医学部附属病院 中央検査部、 熊本大学大学院生命科学研究部 病態情報解析学分野 集めた。この際の分離は、溶離液として0.15 mol/l 【はじめに】 LDLコレステロール(LDL-C)の測定は、脂質 NaClと1mmol/l EDTA(pH 7.4)、流速0.5 代謝異常の解明や動脈硬化の予防・診断・治療に ml/min の条件で行った。次に、分離した各フラ 有用である。今回我々は、LDL-Cが1,000 mg/dlを クション溶液のTC、中性脂肪(TG)、リン脂質 越える異常高値を示し、測定法間で乖離が顕著で (PL)、遊離型コレステロール(FC)、アポリポ蛋 あった薬剤性肝障害の1例をHPLC分析にて経過 白、LDL-C、HDL-Cを測定し、解析を行った。 観察し知見を得たので報告する。 【結果】 超遠心で分離したLDL分画+HDL 分画をHPLC 【症例の経過】 48歳、男性。膠原病類縁疾患で免疫抑制剤、ス で解析した。その結果、LDL分画に、コレステロ テロイド投与後、黄疸が出現し、それに伴い各種 ールの2相性のピークが出現し、1つのピークは 酵素、脂質の上昇が見られた。 アポリポ蛋白Bを有し、健常人血清のLDL(比重 検査所見(2011年9月16日):総ビリルビン 1.019∼1.063)と粒子サイズが同じ位置であった。 (T-Bil)9.7 mg/dl、γ-GT 7165 U/l、ALP 2058 もう1つのピークはLDLよりも粒子サイズの大き U/L、ALT 347 U/l、AST 173 U/L、TC 1126 い位置に出現し、アポリポ蛋白Bを有しないでPL、 mg/dl、HDL-C 8 mg/dl、LDL-C 1187 mg/dl(積 FCが著しく増加していた(Lp-Xと判定)。次に、 水)、LDL-C 14 mg/dl(協和)で免疫抑制剤によ HPLCで分離した各溶離液中のLDL-Cを各直接法 る薬剤性肝障害が疑われ、免疫抑制剤が中断され で測定したところ、Lp-X分画に対する反応性は各 た。その後、これらの検査項目の経時変化を2011 LDL-C直接法間で著しく異なった。また、経時変 年11月までの約1ヶ月間観察した結果、各測定値 化でT-Bilの減少に伴い、LDL-Cも減少し、Lp-Xの はゆるやかに低下しLDL-Cの方法間差も解消され ピークも消失していった。それに伴いLDL-C直接 た。 法間での乖離も小さくなった。 【考察】 【方法】 LDL-Cが異常高値を示した検体を超遠心法にて HPLC等の分析所見から、本症例は薬剤性肝障 LDL分画+HDL分画(比重1.006以上)を分離し 害によってLp-Xが血清に出現したものであり、 た。さらにこのLDL分画+HDL分画を、ゲルろ過 TCおよびLDL-Cの高値の原因はLp-X-Cに由来す カ ラ ム ( Superose 6 10/300 GL : 米 GE るものであった。胆汁うっ滞症で動脈硬化の診断 Healthcare Bioscinence社)2本を装着したHPLC ToolとしてLDL-Cを測定することの有用性は低い (SC 8010 HPLC system:東ソー(株))に注入し が、Lp-Xは肝外性胆汁うっ滞の特異的な指標とも て、リポ蛋白の粒子サイズに基づいて分離し、そ 考えられており、測定結果の解釈には十分な注意 の溶離液を1分間隔でフラクションコレクターに が必要である。 52 生物試料分析 Vol.35 No.1 2012
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