OSNA 法 ユーザーレポート Vol. 5 Centre Oscar Lambret 乳癌のリンパ節転移診断に OSNA 法をご利用頂いているご施設からの OSNA 法の運用方法、ご感想などをご紹介させていただきます。 フランス、ノール県リールにあるオスカー・ランブレ・センター(Centre Oscar Lambret)は 20 か所あるフランス 国内のがんセンターの1つで、乳がんの最も重要な治療拠点の1つです。オスカー・ランブレ・センターでは、センチ ネルリンパ節の検査にいち早く OSNA 法を導入し、成功を収めています。このたび、OSNA 法実践に当たっての臨床的 および病院組織に対する利点をはじめ、これまでの経験を教えて戴きました。ご施設での OSNA 法運用の全体像が見え るよう、病理医や外科医の方だけではなく、検査室のマネージャーや技師の方にもお話をうかがいました。 Dr. Yves-Marie ROBIN 病理学部門長 1 Q:Robin 先生、先生の部門における活動状 況について教えてください。 A:私たちは年間 1,000 例の新規乳がん患者を扱い、そ のうち 500 ∼ 600 例についてセンチネルリンパ節の検査 を実施しています。私たちのチームは臨床医5名、技師 11 名、秘書3名で構成されています。 の「ツールセット」に重要な進歩をもたらしました。以 前、古典的な病理学的検査と OSNA 法を比較する短期 の試験を実施したところ、その性能が非常に優れている ことが分かったので、OSNA 法をルーチン使用するこ とにしました。 病理医が術中にリンパ節の全体像を把握できること は、偽陰性を避けるためにとても役立ちます。 また、OSNA 法では遅滞なく結果を出すことができ るため、アジュバント療法をより早く開始することがで 2 Q:なぜ、センチネルリンパ節に OSNA 法と いう分子解析を利用することを決められ たのですか。 A:OSNA 法は、センチネルリンパ節分析と乳がん患 者の治療管理の両方にとって、争う余地のない技術進歩 きるだけでなく、患者の待機リストを短くし、治療でき る患者数を増やすことができます。 革新的な検査法を提供することは私たちの施設の目標 の1つになっています。これは患者にとっての施設の イメージを良くするだけでなく、私たちのチームに参加 したいと思っている新しい病理医や他の臨床医にとって も魅力になります。 の象徴であると、私は考えています。これは乳がん治療 USER REPORT Dr. Marie-Christine BARANZELLI 乳腺担当病理医 1 Q:Baranzelli 先生、OSNA 法導入の理由に ついて、Robin 先生のお答えに何か付け 加えられることはありますか。 A:一言で言うと、OSNA 法は先端技術であり、その技 ロセスは全体を通じて一刻を争うものであり、参加者の 一人一人がこれを認識し、深刻に受け止めている必要が あります。私たちが OSNA 法を導入してからは、臨床医、 技師、コーディネーター間のコミュニケーションが向上 し、各自が互いの仕事とニーズを理解するようになりま した。 術を私たちの検査に導入したいと思ったということです。 2 4 Q:OSNA 法の主な利点は何だとお考えですか。 Q:先生の検査室ではどのプロトコルを利用さ れていますか、またその理由は何ですか。 A: センチネルリンパ節の検査結果は、患者の予後予 A:私たちは OSNA 法にセンチネルリンパ節組織のほぼ 測と治療方針の決定にとって大変重要です。 全体を使用し、中間の小さな切片だけを従来の組織学的検 古典的な病理学で私たちが以前に検査できていたリン 査のために残すことにしました。その理由は OSNA 法の結 パ節の量は、今日の分子生物学的方法に比べるとはるか 果を確認するためではなく、組織学的評価でないと検出で に少ないものでした。私たちは今、センチネルリンパ節 きない他の病変を見逃さないようにするためです。 のほぼ全体を検査しているので、その結果は以前より信 私たちは OSNA 法をとても信頼しています。導入し て以来、この検査で失敗したことや無効結果が得られた 頼できるものになっています。 また別の非常に重要な点として検査方法の標準化があ ことは一度もありません。 ります。分子的方法がなければ、リンパ節の検査結果の 解釈はとてもばらつきの大きいものとなり、病院や国に よる違いがはるかに大きくなってしまいます。OSNA 法はこのばらつきの問題をすべて解決してくれて、病理 医は以前よりも自信を持って結果を出せるようになって います。 5 Q:どうすれば OSNA 法による乳がん検査を 向上させることができるでしょうか。 A: 一刻を争うと申し上げたとおり、検査時間が1分 でも2分でも縮まることはとても重要な意味を持ちま 3 Q:先生にとって、OSNA 法をうまく導入す るために最も重要なことは何ですか。 す。統合された患者報告シートもあれば助かりますし、 検査室の認定条件への適合性も高まるでしょう。 A:何よりも先ず、モチベーションがとても大切です。 この検査の利点だけでなく、集学的コミュニケーション が極めて重要であることを全員が理解していなければな りません。外科医にとっても病理医にとっても、このプ USER REPORT Ms. Chantal PENNEL 検査室マネージャー 1 2 Q:Pennel さん、OSNA 法の導入を成功さ せるために鍵となる要因は何だと思われ ますか。 Q:OSNA 法の導入当初、検査室ではどんな ことが起こりましたか。導入はうまくい きましたか。 A:私たちが OSNA 法を成功させるために取り組んで A:とてもうまくいきました。 きたことをいくつかお話ししたいと思います。 実際面から説明すると、機器を受け取ったときに4 まず第一に、機器の設置場所を慎重に考慮しました。 人の技師がトレーニングを始め、彼らは2週間の習熟 必要なスペースはそれほど大きくありませんでしたが、 期間を経て OSNA 法のルーチン実施を始められるよう 技師が最良の条件下で検査を実施できることが私にとっ になりました。そして1か月後には、すべてのセンチ ての優先事項でした。 ネルリンパ節分析に OSNA 法を実施できるようになり もう1つの重要点は組織化でした。技師のみんなに始 めからずっと関わってもらったのですが、このことは、 ました。 2か月後には、もう1人の技師が訓練を行いました。 彼らの責任感とモチベーションを確立する上でも重要で 要求された OSNA 法をすべてきちんと処理できる一方 あったことが後になって分かりました。 で、訓練済みの人員が多すぎて一人あたりの実施検査 私たちはたくさんの検査を抱えていますので、いつで 数が少なくなり、技能レベルを維持できないというこ もすぐに OSNA 法を実施できる技師を確保しておく必 とにならないよう、仕事量と技師数の完璧なバランス 要があります。そのため、技師のスケジュール管理はと を見つける必要がありました。 ても重要です。 導入当初は私たちの全員が時間を投資しなければな 外科医に最高レベルの検査サービスと満足感を提供で りませんでしたが、その結果、作業の流れとコミュニ きるよう、私たちは手術室スタッフとのディスカッショ ケーションを最適化し、より良い患者ケアを提供しな ンも開始しました。その際は、多くの専門分野との連携 がら、自分たちの生活を楽なものにすることができま を基本としました。 した。 USER REPORT Ms. Hélène MONTENACH OSNA 法測定技師 1 3 Q:OSNA 導入期について、どのように感じ られましたか。 Q:職業上、あなたにとって OSNA 法はどん な変化をもたらしましたか。 A: 同僚の中で私を含む何人かは、すでに分子生物学 A: 私にとって、革新的技術を日々の業務で利用でき の経験を持っていました。そのことが多分役に立ったの ることは本当に刺激的です。これはルーチンワークへの でしょうが、たとえ経験がなかったとしても、訓練およ 付加価値になっています。同僚も私も、この検査を実施 び学習曲線はとても急速で容易でした。2週間で、満足 できるようになったことで高く評価されているように感 できる技能レベルと許容できる検査時間に到達すること じています。私たちは皆、新しい技術について学び、そ ができました。 の検査のバックグラウンドを理解することに興味を持っ もちろん OSNA 法に要する時間は以前に使っていた ています。 術中検査に比べると長くなっていますが、全体的な仕事 量は実際十分にこなせる程度ですし、何より決定的な結 さらに私たちは、病理医や外科医とのコミュニケー 果を術中に提供できるようになったことをとても誇りに ションが増したこと、より良い患者ケアの提供における 思っています。 役割が大きくなったことで、全体的な患者管理に以前よ り深く参画できていると実感しています。 2 Q:技術的な面から言うと、OSNA 法は複雑 ですか。 A:いいえ、まったく問題ありません。 手作業の段階がそれほど多くなく、自動化とコント ロールのレベルから、私たちは OSNA 法をとても信頼 できるものだと考えています。プロセス全体が理解しや すく、技術的にも扱いやすいものになっています。 必 要 な ス ペ ー ス と 機 器 も そ れ ほ ど 大 き く な い た め、 OSNA 法の導入は簡単だったという印象です。 外科との連携には細心の注意を払わなければなりませ んが、すでに私たちは OSNA 法をとても素早く実施で きるよう最適化できています。私たちは、リンパ節が届 いた時刻、検査を開始した時刻、そして結果を知らせた 時刻のすべてを詳細に記録しています。私たちはこの情 報のすべてを同僚同士で比較し合い、一貫したサービス レベルの確保に努めています。 USER REPORT Dr. Jean-Louis HOUPEAU 乳腺外科医 1 Q:なぜ先生の患者に OSNA 法を実施しよう と決められたのですか。 A:私たちのセンターにおける術中迅速診断の感度は、 しており、患者 1 人あたり最大 3 個とするようにしてい ます。OSNA 法導入後、切除するセンチネルリンパ節 は患者 1 人あたり平均 1.8 個となっています。 第二に、私たちは現在リンパ節組織をほとんど全て 約 55%程度と見積もられていました。分子生物学的方 OSNA 法で分析しており、非常に高感度な検査結果が 法の妥当性がセンチネルリンパ節検査について確認され 得られるため、初回の手術で実施される腋窩郭清の数は たとき、私たちはすぐに、これが術中分析の感度を本当 増加しています。 に高める解決策になってくれると考えました。信頼でき 問題となるのは、同日にセンチネルリンパ節生検を多 る術中検査を行えることは、私たちの患者にとって多大 く実施し、複数の陽性例が検出された場合、手術室のス な利益になるからです。患者に再手術が必要になったこ ケジュールが遅れてしまうことです。 とを説明するのは私たちにとって常に厳しい瞬間です そのため私たちは手術室スケジュールに重大な遅れが し、決定的な術後結果を待つ時間というのは本当にスト 生じないように、週間を通じてセンチネルリンパ節生検 レスになります。また、外科医の観点から言うと、二度 をバランス良く分布させることに努めています。 目の腋窩切開は問題を生じさせるおそれがあります。患 者によっては、麻酔のリスクが高まったり、副作用がよ り強く出たりすることがあるからです。 最後に、最も重要な点は、私たちは当然、第一に患者 志向でいる必要があり、最良のケアを提供できるように 適応しなければならない事だと考えます。 2 Q:OSNA 法によって毎日の仕事はどのよう に変わりましたか。 A:OSNA 法の導入後、手術室のスケジュールを変更 制約と利益のバランスを取ることがもちろん重要で、 たとえ自分たち自身を技術に適応させなければならなく なったとしても、私たちは過去に戻りたいとは思わない はずです。 しました。 私たちの施設では、多くの乳腺手術を実施しているた め、全ての手術室と外科医をうまく配置した手術室プロ グラムを編成しなければなりません。 このスケジュールは以下の2点に依存する可能性があ るため、私たちは慎重にセンチネルリンパ節生検の週間 スケジュールを組み立てています。 第一に OSNA 法は、リンパ節の数によっては以前の 病理検査より若干時間を要します。そのため、私たちの 施設では術中に切除するセンチネルリンパ節の数を制限 USER REPORT 3 Q:先生にとって OSNA 法提供の一番の利点 は何ですか。 した。この点で、OSNA 法は本当の付加価値を持って います。 外科医の私たちにとっては、術後に患者のところに A: もちろん、患者にとって、二度目の手術を回避で 行ってセンチネルリンパ節分析の結果を知らせるときの きることです。これがこの方法の最も肯定的な点です。 緊張感が小さくなること、そして二度目の手術が必要な 化学療法が必要な患者にとっては、治療を早く開始でき いことを患者に再保証できることです。 ることも重要です。実際、以前は多くの患者が二度目の 腋窩切開のために長い時間を待たなければなりませんで OSNA 法は私たち医療従事者と患者に、より大きな 「Peace of mind(心の平穏)」を与えてくれます。 Ms. Hélène MONTENACH と検査室のスタッフ 左から Mr. Chistophe ROSEY, Ms. Hélène MONTENACH, Ms. Ingrid BEILLARD Centre Oscar Lambret の概要 所 在 地 3, rue Frédéric Combemale BP 307-59020 Lille, France TEL: +33-3-20 29 5959 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