平成28年度 卒業論文「ミャンマー産植物抽出エキスの末 梢神経障害

平成28年度 卒業論文「ミャンマー産植物抽出エキスの末
梢神経障害抑制作用」
愛知学院大学薬学部医療薬学科
生体有機化学講座
10A084 須田 麻莉
2014年にがんで死亡した人数において、臓器別の死亡者数で上位に入ってい
る大腸がんは、比較的生存率の高いがんである。化学療法の標準治療として
FOLFOX療法、XELOX療法などがあるが、そのどちらの治療に用いられている
オキサリプラチン(L-OHP)は、高頻度の末梢神経障害が生じ、治療途中での
休薬や投与中止を余儀なくされている。効果的な予防策や治療はなく、対症療
法としてガバペンチン、プレカバリン、オキシコドン、デュロキセチン、漢方
製剤などが投与されている。中でも近年注目されているのが、牛車腎気丸、芍
薬甘草湯、桂枝加朮附湯、ブシ末などの漢方製剤の投与である。ミャンマー連
邦共和国は長い間、国政が不安定で、そこに産する植物の学術的調査も不十分
であり、天然物由来の医薬品のシード採索研究の原料としての有用性が考えら
れる。本研究では、そこで採集された植物の抽出エキス(ミャンマーエキス)
を用いて、末梢神経障害の治療薬となりうる物質の探索を行った。
L-OHP 非存在下でミャンマーエキス (No. 1~100)の神経伸長作用について、
スクリーニングを行った結果、伸長度、細胞数ともに 70%以上を示した検体が、
4 検体(No. 26、95、96、100)みられた。しかし、ミャンマーエキス、生薬エキス
ともに伸長度は、L-OHP 添加コントロールとの有意な差が見られなかった。
Boerhavia chinensis (No. 26)にはフラボノイドの一種である fisetin やテルペン、
Plumeria obtuse (No. 95) 、 Plumeria rubra (No. 96) に は イ リ ド イ ド 配 糖 体 の
geniposide 及びそのアグリコンである genipin、Gardenia erythroclada (No. 100)の
類縁植物であるオオヤエクチナシ( Gardenia jasminoides )の葉の成分である 6b‐
hydroxygeniposide、6b‐methoxygeniposide がそれぞれ含まれている可能性があり、
それらが本研究においても神経伸長作用を示す要因となったと考えられる。
今後は、ミャンマー産植物抽出エキスに含有する神経保護活性を有する新規
化合物の探索、究明により、L-OHP の神経障害を克服し、より治療効果の高い
レジメンの開発を期待したい。