2. アダムとイブ

2.
アダムとイブ
畠山
拓
プロジ ェク トは「 極小の 地球」といえ た。宇宙 空間を 飛ぶ 宇宙船 は数
百光年先 の惑 星探索 に関す るプロ ジェ ク トなのだ った。星の光 線以外 の
外部からのエネルギー補給の無い状態を半永久的に保つ事が目標のひ
とつであ る。
太陽を はじ め幾つ かの惑 星のエ ネル ギ ーを補給 でき るから、地球の 環
境を維持 する 事はで きる 。何世 代か過 ぎ ていった 。乗組員 はひと りにな
っていた 。初 めから そうだ ったの かは 定 かでない 。
生 き て い る 人 間 は ひ と り だ っ た 。「 宇 宙 カ プ セ ル 」 は コ ン ピ ー タ ー で
完全にコ ント ロール され 、飛行 を続け て いる。人間 も睡眠 してい れば良
いのだけ れど、時々 覚醒し て、生 活する よう計画 され ていた 。半永 久的
な旅程で 人間 が何を 感じ、 何を思 考す る ものかを 知る ためだ 。
乗船し てい る人間 は男だ った 。限ら れ ていたが 、男以外 の同種 の生命
体を維持 する 余裕は 、宇 宙カプ セルに は あった 。過 去には 複数の 命が存
在したか も知 れない 。
新しい 人間 を誕生 させる 事はで きる 。クローン 技術 を使用 して 、男か
らもうひとりの人間が製造できる。細胞は骨の骨髄細胞が良い。途中、
性別は変 えら れる。 男性の 細胞か ら女 性 を生み出 す事 は可能 だった 。
遺伝子 を操 作する 事で 、男性 の好み の 女性を生 み出 す事が 可能だ 。美
しい女が 生ま れる。赤ん坊 で生ま れる。男との時 間を 考えれ ば、成 人が
相応しい 。女は成 人とし て生ま れた 。そ れまでは 急成 長する 養育器 の中
だ。
巨大な 卵形 の養育 器の蓋 が開く と、溶 液の中か ら 、ほぼ 成熟し た女が
現われた 。成 功した のだ。
男は喜 び、 興奮し て女に 話し掛 けた 。
「僕のた めに 、生ま れてき てくれ てあ り がとう」
女は反 射的 に眉を ひそめ た。
「私はあ なた のため に、生 まれて きた の ではない わ」
「君は私 に愛 される ために 生まれ てき た 。私の伴 侶と なるた めに」
「解らな いわ 、そん なこと は」
女は冷 静に 答えた 。覚 醒した ばかり だ ったから 、情況が 飲み込 めなか
ったのか もし れない 。
「君はそ のよ うに運 命付け られて いる 。 神の意志 なの だよ」
「それは 、あ なたの 神でし ょう」
聖書に はア ダムと イブの 喧嘩の 事は 記 されてい ない が 。これ が初め て
の争いで ある 。