黒い川

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北海道の炭田地帯を流れる川は文字ど
おりと黒い川ミである。例えば幾春別川
用にはおろか.水田かんがし、にも使えな
の上流,三笠市には北炭,住友の四鉱が
1
. 芦別)[1.阿寒川,留萌川などは
幌向)1
みな洗炭汚水にまみれた黒い川である。
し、。美唄川,歌志内川,夕張川,空知川
あり.一日約 5,000 トンをこの川水で洗
炭しているが, そのうち 70 トンは微粉
では,その川水の汚れはどうかという
炭となって放流されているということで
と,昭和 36年 の 夕 張 川 水 質 調 査 結 果 を
あるから,幾春別川の水は人の顔もうっ
参考まで掲げる。
さないほど真っ黒である。勿論,上水道
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採水;夕張
調査
項目
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夕 張 川
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判瓜 2
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採 水 月 日 15
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水
夕 張 川
地点「一一一一一一一一一一 l
一一一一一
~語両工王水道取入口
│ 栗山町より下流清幌橋
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栗山町より上流 1
より同角田町土地
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│ 長沼町上水道取入ロ 1
1 改良区取水口
色│黒褐色│ク│ク│ク
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8 7.251 9.261 は 24││5.叫 υ71 9.26110.24
ク│ク
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懸垂物質 1 1
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ppml
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透視度c
m
l
∞
上表にみるように,夕張川中流地区の
水色は黒褐色を呈し,透視度(シリンダ
は平常 10ppm. で最大 25ppmとしてい
るから問題にならなし、ぐらい多量の懸垂
一透視計による測定値であって,数値が
物質〔炭ジンと泥土)が流れている黒い
小さいほど濁度が大きしうはl.Ocm~3. 5
川である。この川水は江別市の上手で石
c
mで,掴濁している。増水期はとくにこ
狩川に流入している。夕張川がこのよう
れがひどし、。水産用水の水質標準(水産
な様相を呈し続けているのは,その上流
庁 案 ) で は , 川 の 水 は 平 常 30c
m,最少
夕張市に炭鉱があるためである。
20c
m としているが,増水期にはこれが
石炭は掘出したままの状態では,粘土,
1
.0c
mになってしまう。川水の懸垂物質
も著量である。 60ppm~413 ppmを示し
これも増水期に多し、。これの川水の標準
その他の無機物質,いわゆる廃石を含有
し,粘度もまちまちであり,各種の消費
目的に対して使い易い状態となっていな
2
いので,山ではよく知られているよう
に,粘砕,簡 L、分,選別,混合などの手
段によって灰分,硫黄分,発熱量などの
品位や粘度を調整する選炭が必要となる
が,選炭の方法としては,石炭と廃石の
外観,破砕性,比重や電気的性質などの
物性の差を利用する手選,ジグ選炭,重
液選炭, レオ選炭,テープル選炭,空気
選炭ならびに電気選炭などの方法があ
る。これらの方法は大別して水を利用す
る湿式法と,そうでない乾式法があるが,
わが国で実施されている選炭方法のほと
んどは媒体として水を使う湿式選炭方法
である。この湿式選炭では 1 トンの石炭
を処理するのに普通 2~8 トンの水が使
用されているので,如何に多量の選炭廃
水が放出されているかがうかがわれる。
これらの選炭廃水は多量の微粉炭や粘土
などの有機,無機物の不溶性物質(多量
の懸濁性物質を含む)や水溶性無機物を
含み,これらを処理しないで公共水に放
流するならば,当然水質汚染問題を引き
起すであろう。この廃水が炭団地方の河
川を荒廃に導き,更にこの川のそそぐ、沿
海岸を埋めてゆくことは衆知のことであ
る。これらの懸濁粒子は極めて微細,あ
るいはコロイド状態を示すので,その沈
降には粘性抵抗が大きく,分離が極めて
難しい。これら懸濁物質の沈降急速度を
促進させるためには,重力,遠心力を利
用する機械的な方法と懸濁質に焼結薬品
を加えて懸濁粒子を凝集させる界面化学
的な方法などがあげられている。
観光北海道も一皮むけば塵芥だらけで
ある。中でも炭鉱近くの河川はズリ炭で
にごり,義理にも之山紫水明ミとはし、ぃ
難いが,これを見かねた巷の一法学士が
本業を投げうつこと一年半,比重差を利
用して泥と石炭と清水に分離する機械を
発明し話題をよんだ C 昭和 29年のこと
である。考案した人,栗田保輝氏は仕事
で各地をまわって.特に炭鉱付近の農家
が炭鉱から流出するズリ炭を含んだ川水
を田聞に引し、ているのを見,北海道が観
光地として売り出すならば,まず川水を
もとどうりの清流に返すべきだと思い立
ち,石炭や泥を選別する機械の研究に着
手したのだということである。当時,道
立工業試験場でこの装置の公開実験があ
り,筆者も見せてもらったのでその概略
を紹介するが,この装置はどこにもある
櫨過槽と変りない型であるが,櫨過の特
長とするととろは,ある一定の角度に配
列した分離機(鉄板を沢山ならべたも
の〉を石炭を含んだ真黒な濁水が通過す
るときに遠心分離の理に基づいて過流を
生じて水が互にぶつかり合う。その時に
粒子の大きい固形物から落下をはじめる
ということ,更にそこで落ちない徴粒子
は,次の段階である漏過室(根曲り竹を
沢山配列している〉の根曲り竹の聞を通
過することによって纏過される。根曲り
竹の表面に付着した石炭の極微粒子や泥
はこの漉過室を上下に動かして掃除する
さ菱美唄常盤台一号徴粉炭漏過を実見し
たが,粉炭を洗糠した真黒な水が本装置
を通過して排出される時は,即ち放流廃
水はやや着色した程度の水に色が落ちる
倍
ので,受水河川の水量が放流水量の 10
あれば色の点でも問題ではないであろう
ということになる。実験の結果,本装置
慮別に効
はその考案の目的である粉炭の i
果があることがわかったが,そのほかに
洗炭廃水よりの沈粉回収に,それに伴う
排水の浄化(黒色を落すことと,浮世毒物,
固形物を落すこと〉にも効果がある。
栗田氏の話では,素人も操作できるの
が便利なので,山元の会社あたりが造っ
てそなえれば川水をにごさずに済み,む
ざむぎ捨てていた粉炭も生きてくるとい
うことであった。
(道立僻化場調査課長〉