環境基礎実験

環境基礎実験
2005.11.19(土)
水・土壌系
環境システム学科
1年 必修
担当者:岩見,宮脇,伊藤,大島
5-1 透視度
試料の透明の程度を表す方法の一つ。
採取現場で極めて簡単な操作で測定できる特徴がある。
比較的透明の程度の低い水に適用し、採取した水について試験する。
水の透明の程度を表す方法には、透視度のほかに、
・比較的濁りの少ない水に対しては濁りの程度を示す濁度
・湖沼、海洋などに対しては白色円板(透明度板、セッキー板)を用いる透明度
の試験がある。
測定方法
透視度計に試料を入れて上部から透視し、底部に置いた標識板(左
図)の二重十字がはじめて明らかに識別できるときの水層の高さをは
かり、10mmを1度として表す。
透視度計の目盛は、底部から50mmまでは5mm目盛になっており、測
定では目測によって1mmまで読み取る。
標識板
50mm以上は10mm目盛になっており、目測によって2mmまで読み取る。
1
《備考》
○試料採取にバケツなどを用いた場合は、透視度計に移す前に懸濁物が沈
降する心配があるため、よく混合しながら透視度計に入れる。
○懸濁物の多い試料の場合には、これが透視度計の底部に沈積することが
あり、誤差の原因となるので注意し、すばやく測定を行う。
○同じ照度でも光源の違いによって彩度が異なる場合は、透視度が変わる。
測定は原則として直射日光を避け、昼光とする。夜間の場合はあらかじめ適
当な照明方法を検討しておく。
○懸濁物の種類が同一であれば、透視度と懸濁物の量とは逆相関をもつこ
とが知られている。しかし、その関係は懸濁物の粒子の形、大きさなどによっ
て異なるから普遍的なものではなく、透視度から直ちに懸濁物の量を求める
ことはできない。
5-2 濁度
濁度とは水の濁りの程度を表す。
粘土のように微細な不溶性物質が混入した水は、入射した光が散乱して濁っ
て見える。この濁りの程度を一定粒度のカオリン(白陶土)懸濁液置き換えて
定量的に表したもの。
測定には濁度用比色管や分光光度計が用いられる。
単位は、カオリン標準液と比較して測定する場合には、度(カオリン)、ホルマ
ジン標準液と比較して測定する場合には、度(ホルマジン)とする。
濃度1mg/Lを濁度1度とする。
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濁度の測定方法
1.比濁法(視覚濁度)
試料の濁りを肉眼によって、1~10度の段階的に調整したカオリン標準液と比
較して求める。
※測定範囲 1~10度(カオリン)
2.吸光光度法(透過光濁度)
分光光度計または光電光度計を用い、試料を通過した波長660nm付近の透
過光の強度を測定し、カオリン標準液またはホルマジン標準液を用いて作成し
た検量線から求める。
※測定範囲
(参考値)
吸収セル
カオリン
ホルマジン
50mm
5~50度
4~80度
10mm
25~250度
20~400度
《備考》
○濁度は変化しやすいので、試料採取後直ちに試験することが望ましい。
○その他、散乱光濁度、積分球濁度などがある。
検量線
ある物質の濃度を横軸に、その物質の示す物理的または化学的性質の測定
値を縦軸とって、それらの間の関係を直線(曲線)で示す。
この検量線を用いれば、未知試料について求めた測定値からその濃度を知る
ことができる。
手順
①予めわかっている濃度の試料について、吸光度または透過率を測定する。
②濃度をX軸、吸光度または透過率の測定値をY軸として、検量線をひく。
③濃度が未知の試料の吸光度または透過率を測定する。
④検量線から、濃度未知試料の濃度を算出する。
手順③
吸光度
未知試料
の測定値
手順①②
既知濃度試料の測定
未知試料の濃 手順④
度の算出
10
20
濃度
30
図 検量線の一例
3
吸光光度法の測定原理
吸収スペクトルは定性分析に用いることもあるが、吸光光度分析では定量
分析が主体である。定量分析では溶液中に溶けている化合物の濃度を求
めるもので、Lambert-Beerの法則に基づいて行う。
強さ I0 の単色光束が濃度 c 、厚さ l の液層を通過すると、光が吸収
されてその強さが減少する。通過した直後の光束の強さを It とすれば、
It と I0 の間には、Lambert-Beerの法則が成り立つ。
I t = I 0 10 −εcl
ここで、ε(イプシロン):吸光係数(化学物固有の比例定数)
濃度cが1mol/ℓ、溶液の厚さlが10mmのときのεの値をモル吸光係数という。
It
=t
I0
また、
を透過度、
t ×100 = T を透過率(透過パーセント)、
1
透過度の逆数の常用対数 log = A を吸光度とよぶ。
t
透過度を百分率で表した
吸光度Aを用いてLambert-Beerの法則を表すと、
A = − log
It
= εcl
I0
l は通常一定なので、吸光度は溶液中の化合物濃度 c に比例する。
あらかじめ濃度と吸光度の関係を求めておけば、未知濃度の溶液の吸光
度を測定することによって、化合物濃度を求めることができる。
どの波長を使うかは化合物によって異なる(濁度の場合は660nm付近)。
特徴的な吸収を示さない成分の場合は、適当な発色試薬を用いて光の吸
収を向上させ、測定感度を上げる必要がある。
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装置
光の吸収を測るために分光光度計または光電光度計が用いられる。
分光光度計の基本構造を図に示す。
吸収セル(試料)
スリット
スリット
光電セル
表示装置
モノクロ
メータ
光源
0.199AU
多色光
単色光
溶媒(ブランク液)
《備考》
色と波長について
身の回りのほとんどの物質には色
があり、色があるということは、その
物質が光を吸収していることを意味し
ている。いわゆる可視光は380~
780nmの波長の光で、すべての波長
を混合すると白色光になる。
たとえば、トマトが赤く見えるのは、
波長が700nm域の赤い光を出してい
るのではなく、500nm域の緑色の光を
吸収しており、人の目には補色として
赤く見える。
表 可視光の色と補色
波長(nm※)
色
補色(余色)
~400
無・紫外
-
400~435
紫
黄緑
435~480
青
黄
480~490
緑青
橙
490~500
青緑
赤
500~560
緑
赤紫
560~580
黄緑
菫(すみれ)
580~595
黄
青
595~610
橙
緑青
610~750
赤
青緑
750~
紫赤
緑
※ nm=10-9m
5
光を吸収する現象
電子エネルギーは連続的に変化
するものではなく、ビルの1階と2階
に一定の高さの差があるように、下
の状態(基底状態という)と上の状
態(励起状態)では一定のエネル
ギーの差があり、そのエネルギー
差に相当する光を吸収して、一気
に下から上へと状態を移す。
励起状態
エネルギー
物質を構成する原子の核の周り
には電子が軌道を描いて回ってい
る。この電子の持っているエネル
ギーが光の吸収に関係している。
(エネルギーの高い
不安定な状態)
光、電気、
熱、化学反応
などによる
エネルギーの吸収
回転や振動などの
熱運動や発光
による
エネルギーの放出
基底状態
(安定な状態)
図 基底状態と励起状態
また溶液状態では分子の振動あるいは回転エネルギーの関与や分子会合に
よる相互作用のため、吸収波長は線ではなく帯になる。波長と吸収の強さの関
係を表したものが、吸収スペクトルと呼ばれるもので、化合物ごとに違う形を示
す。光の吸収は、可視領域だけでなく、200~380nmの紫外領域でも観察される
ため、吸光光度分析は、紫外可視分析ともいう。
5-3 懸濁物質,蒸発残留物の測定
水中の不純物質を分析するとき、一般に以下のように分類される。
懸濁物質
強熱減量
強熱残留物
蒸発残留物
溶解性物質
(溶解性蒸発残留物)
強熱減量
強熱残留物
本実験では蒸発残留物と懸濁物質について測定する。
下水中の懸濁物質は汚染の有力な指標であり、下水処理では直接、汚泥生
成量に関係し、また生物学的処理に重要な役割をもつ。
蒸発残留物
total residue
水中に溶存または浮遊しているものをさし、試料を蒸発乾固したと
きに残る物質のことである。
懸濁物質(浮遊物質)
suspended solid; SS
水中に存在する小粒子状物質のことであり、試料をろ過し、ろ過材
上に残った物質を105℃~110℃で乾燥したものをいう。
強熱残留物
fixed solids
600±25℃で30分強熱して灰化し、残ったもので、懸濁物質、残留
物質のそれぞれにある
強熱減量
Volatile solids; VS
主に有機物や水分などの含有量を推定するのに用いられ、懸濁物
質、蒸発残留物及び溶解性蒸発残留物のそれぞれの強熱残留物
との差から求められる。
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原理
蒸発残留物の定量原理は一定量の検水を蒸発皿にいれ、蒸発乾固し秤量に
よる重量の増加量により計算し、1L中に含まれる残留物の重量(mg/L)で表す。
懸濁物質はろ過材上に残留した物質を乾燥させその重量を測ることによる。試
料中に含まれる物質の重量(mg/L) で表す。
測定
ろ過材について
ろ過材には大きく分けてガラス繊維ろ紙と有機性ろ過膜(メンブレンフィルター)
があり、孔径は1μm前後のものを使用する。
ガラス繊維ろ紙は目詰まりは少ないが、ガラス繊維が脱離する恐れがある。樹
脂加工したものはその恐れが少ないが、懸濁物質の強熱残留物を測定する場
合には、樹脂加工分の減量が約10%あるので、あらかじめ強熱減量を求めてお
く必要がある。
有機性ろ過膜(メンブレンフィルター)孔径がほぼ一定である。メンブレンフィル
ターは種類によって耐薬品性、耐熱性があるので取り扱いに注意が必要である。
操作について
・ろ過しにくい試料はよく振り混ぜながら少量ずつ入れ、ろ過困難になったら添
加をやめる。
・加熱乾燥によって、懸濁物の一部が酸化されたり、揮散したりする場合があ
るので、この条件を一定にする必要がある。
・蒸発皿は、質量変化が少なく、なるべく軽量のものを使用する。磁性蒸発皿
は温度湿度で質量が変動しやすいので取り扱いに注意する必要がある。
・高い温度で熱すると残留物が変質したり、結晶水や有機物が揮散したりする
ことがあるので、105~110℃を守るようにする。また、蒸発残留物には吸湿性
のものも多いので、秤量は手早く行う。
《注意》
・懸濁物質の量が少なくなると測定値も変動しやすい。
・試験の再現性を求めるために、懸濁物質の量が20~40mgになるように
試料をろ過するのがよい。
・懸濁物質は試料容器の内壁底に付着しやすいので、十分に降り混ぜて
均一にした状態から全量ろ過する。
7
ろ紙の種類と折り方
種類
孔経(μm)
用途
定性
1~10
分析試料中に存在する物質の検出
定量
1~10
分析試料中に存在する物質の種類および量の
検出などの精密な定量分析
ガラス繊維
0.5~1
大気中の浮遊粒子、懸濁物質
メンブレンフィルター
0.1~10
細菌の除去、粒子の除去
定性濾紙
定量濾紙
JIS P 3801
1種
2種
3種
5種A
5種B
5種C
保留粒子(μm)
6
5
3
7
4
1
○四つ折り:沈殿物の回収な
どを目的とするときに使用
少しずらして折る
○ひだ折り:試料の量が多く
、かつ濾液のみを必要とする
場合、流量を速くするときに
使用
四つ折り
ひだ折り
実験10 透視度・濁度の測定
実験の課題
水の透視度および濁度の測定方法を学ぶ。
[試料] 河川水,水道水,純水
1.透視度の測定
[使用機器など]
透視度計
[試験操作]
1)各試料をよく混ぜ、透視度計の百の目盛りまで注ぐ。
2)上部から底部を見て透視度計の底にある、二重線が識別できるまで、下の
コックを開いて試料を抜いていく。
3)二重線が識別できる目盛りを記録する。JIS10mmを1度として表す。
この操作を2、3回繰り返し、水面の目盛りを読み取り平均を求める。
《注意》
・日陰(直射日光が当たらないところ)で行う。
・懸濁物質は多い試料は底に沈殿することがあるので、よく混ぜる。
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2.吸光光度法による濁度の測定
[使用機器など]
吸光光度計、メスシリンダー(50,100)セット、濁度標準液、
ガラスセル(試験管型ビーカー、ろ紙、漏斗、漏斗台、ガラス棒、
メスフラスコ、ピペット、ピペッター
[試験操作]
検水を目視で確認し、状態を記録する。
<吸光光度計の準備>
1)吸光光度計のスイッチをいれ、30分置く。(ランプが暖まるまで時間がかかる
ため)
2)吸光光度計にセルを入れないで、ゼロ調整を行う。
3)セルに純水を入れ,透過率100%の調整を行う。
<吸光度の測定>
検量線の作成
1)濁度標準液(測定試料に適当な濃度)を準備する。
2)濁度標準液をセルに入れ,セルの外壁の水分や汚れを紙で拭いて、
吸光光度計に挿入し透過率を読み取り記録する。
3)透過率→吸光度の換算表を用いて,換算し記入する
(電卓で計算しても良い)。
4)グラフ用紙上で,濁度標準液の濃度(濁度)と吸光度でプロットし、
グラフに近似線を引く。
試料の測定
5)試料をセルに入れ,吸光光度計に挿入し透過率を読み取り記録する。
6)試料の透過率をプロットする。
7)この点から試料の濃度(濁度)を読み取る。
《注意》
・標準液と未知濃度試料を測定するセルは同じものを使用する。
・吸光光度計に挿入するときは、セルの向きに注意する。
・セルに汚れや水分が付いていた場合、十分に拭き取ってから吸光光度計に挿入
する。
・セルの○印より上を持つ(指紋等がついて吸光度が変わらないようにするため)。
・試料はセルの8割程まで入れる。
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3.応用
試料をろ過し、ろ過前後の透視度、濁度を比較する。
<ろ過の方法>
1)漏斗台に漏斗とろ紙とビーカーを準備する。
2)試料をろ過する。
3)ろ液の吸光度を測定する。
4)ろ液と試料を比較する。
※ろ紙の折り方
○四つ折り:沈殿物の回収などを目的とするときに使用する。
○ひだ折り:試料の量が多く、かつ濾液のみを必要とする場合、
流量を速くするときに使用する。
少しずらして折る
四つ折り
ひだ折り
実験11 懸濁物質,蒸発残留物,強熱減量の測定
実験の課題
河川水などに含まれる無機物質,有機物質,懸濁性物質の量を測定する。
[試料]
河川水,水道水,純水
[使用機器など]
乾燥機、蒸発皿 3枚、吸引ろ過器一式、ビーカー(50,100,200)セット、メ
スシリンダー100,500mL 各1個、ピンセット、ろ紙 3枚、シャーレ
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1.懸濁物質(浮遊物質,SS)
[試験操作]
1) 105-110℃で約1時間加熱乾燥した後、デシケーター中で放冷する
(準備済み)。
2) シャーレの番号を記録する(シャーレをろ紙用の受け皿として使用する)。
3) ろ紙の質量をはかる。
4) 吸引ポンプとろ過器を取り付ける。
5) ろ紙をろ過器に取り付け,ガラスフィルターを上からのせクランプで留める。試
料をよく振り混ぜ、メスシリンダーではかり(500mL程度),ろ過器に注ぎいれて
吸引ろ過する。メスシリンダーとろ過器壁面に付着した物質は,洗瓶の水で洗
い落とし,水で数回洗浄する。
6) 圧力を抜いてから、ろ紙をろ過器から注意して取り外し,シャーレ上に移し,
105-110℃で2時間加熱し,デシケーター中で放冷する。
7) 丁寧に天秤で質量を計測する。
8) 次式によりSSを求める。
SS=(a-b)×1000V
SS:懸濁物質(mg/L)
a:ろ過後のろ紙の質量(mg)
b:ろ紙の質量(mg),
V:試料(mL)
《注意》
・ろ紙は,ピンセットで扱うこと。
・デシケーターの中にシャーレをすばやく入れる。(空気中の水分を吸収して質
量が変わるため)
・デシケーターはふたを取ったまま長く放置しないこと。ただし、熱い物体を入
れるときはすぐに密閉せずにしばらくの間ふたを少しずらして熱気が逃げるの
を待ってからふたを合わせる。
・質量を測るときはすばやく行う。
・加熱後のシャーレは熱いので火傷に注意する。扱うときは軍手をはめること。
上部ろ過管
ろ過剤(フィルター)
フィルターを上下
ろ過管で挟んでク
ランプでとめる。
下部ろ過管
図 ろ過器の例
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2.全蒸発残留物
[試験操作]
1)蒸発皿をあらかじめ105-110℃で約1時間乾燥する(準備済み)。
2)デシケーターから取り出し,蒸発皿の番号を記録して質量を測定し記録する。
3)試料の適量(50mL程度)を蒸発皿に入れて,乾燥器に入れ,蒸発乾固する。
4)次式で全蒸発残留物(mg/L)を算出する。
R1=(a-b)×1000/V
R1:蒸発残留物(mg/L)
a:残留物の入った蒸発皿質量(mg)
b:蒸発皿の質量(mg)
V:試料(mL)
《注意》
・蒸発皿は,常にるつぼばさみで,つかむこと。
・蒸発中に沸騰させないようにする。
《参考 強熱減量(LOI) 》
1)2.4)で蒸発乾固した蒸発皿を600±25℃で,マッフル炉にて約30分加熱する。
2)デシケーター中で放冷後,質量を計測する。
3)次式で強熱減量(%)を算出する。
R2=(a-b)×1000/V
R2:強熱残留物(mg/L)
a:強熱後の蒸発皿質量(mg)
b:蒸発皿の質量(mg),
V:試料(mL)
LOI=(R1-R2)/R1×100
LOI:強熱減量(%)
R1:蒸発残留物(mg/L)
R2:強熱残留物(mg/L)
《注意》
・蒸発皿は,常に蒸発皿ばさみで,つかむこと。
・高温の蒸発皿は,デシケーターに移す前に,触れないように気をつける。
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