Editor`s choice - 回復期リハビリテーション病棟協会

回復期セラマネ1・2期生座談会
若手・中堅セラピストの
人材育成
回復期リハの病院に所属するセラピスト数は年々増え、数十名、
100名超が勤務する状況も生まれています。大勢の若手と中堅を
どのような方法・ステップで教育し主力化していくのがよいか。
「回復期セラピストマネジャーコース」1・2期生の管理者5名で
語り合いました。
司会はやわたメディカルセンターの後藤伸介さん(当協会理事、
PTOTST委員)。
回復期リハビリテーション◆ 2014.1
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回復期セラマネ1・2期生座談会
回復期セラマネ1・2 期生座談会
若手・中堅セラピストの
人材育成
司 会
出席者
後藤 伸介
奥山
中島
池田
佐藤
椎名
夕子
龍星
吉隆
浩二
英貴
理学療法士 やわたメディカルセンター リハビリテーション技師部 部長
理学療法士 藤田保健衛生大学七栗サナトリウム リハビリテーション部 課長
理学療法士 長崎リハビリテーション病院 教育研修部 アシスタントマネジャー
作業療法士 初台リハビリテーション病院 教育研修局 OT部門チーフ
作業療法士 湯布院厚生年金病院 リハビリテーション部 部長
言語聴覚士 森之宮病院 リハビリテーション部 副部長
大所帯となった若手・中堅セラピスト
人材育成は共通の課題
後藤 やわたメディカルセンターの後藤です。理
学療法士27 年目です。本日は機関誌の座談会と
して、回復期リハ病棟のPT・OT・ST、特に入職
1 年目から 5 年目ぐらいまでの「若手」と 6 年目
から10 年目ぐらいまでの「中堅」の人材育成に
ついて語らう目的でお集まりいただきました。
皆さんは現在、各病院のリハ部門、教育部門等
でマネジャー的な立場についておられます。また、
当協会の回復期セラピストマネジャーコース(以
下、セラマネコース)で 1 期生、2 期生として学ん
だ経験を共通にお持ちです。
回復期リハ病棟が誕生して早 14 年になろうと
しています。2014年1月31日現在、全国1,233の
病院に1,545の回復期リハ病棟ができ、ベッド総
数は 6 万8,185床に増えました。この間、各地で回
復期リハを担う多くの病院が365日リハ実施へと
舵を切り、特に2006年度診療報酬改定以降、毎年
まとまった数のセラピストを増員する傾向が続い
ています。
当協会が全国の回復期リハ病院を対象に2013
年 9 月に行った実態調査(有効回答病院数 756 病
司会の後藤伸介さん(やわたメディカルセンター)
08 回復期リハビリテーション◆ 2014.1
院、回答率63.1%)の結果によれば、病院所属の
若手・中堅セラピストの人材育成
理学療法士数は25.8名、作業療法士数は15.6名、
言語聴覚士数は6.1名(いずれも全国平均値)
で、3
職種を合わせると 1 病院にセラピスト47.5名がい
る状況です。人数が急速に増えて“大所帯”とな
った経験浅い若手・中堅セラピストをどのように
育成すればよいか。これは今、多くの病院に共通
した課題だろうと思います。
そこで本日は、各病院での若手・中堅教育の取
り組み、人材育成にスポットを当てて現状を紹介
いただきながら、彼らの若い力をどう伸ばしてい
くか、一緒に考えてみたいと思います。
セラピスト教育の現状
――若手の教育研修プログラム
藤田保健衛生大学七栗サナトリウムの奥山夕子さん
後藤 若手セラピストに対する教育研修プログラ
ムの概要を順にご紹介いただけますか。
職直後の学園主催の新人オリエンテーションでは、
接遇やコミュニケーション、リスク管理など本当
七栗――基本はグループ教育
リーダー・中堅・新人の3人がペアに
に基礎的なことから教育します。リハ部では 4 月
はリハの基本的評価と治療のあり方について教育
奥山 藤田保健衛生大学七栗サナトリウム(以下、
します。看護部と協力して行う「現場体験実習」
七栗)の奥山です。理学療法士18年目です。
では、互いの職種の背中に丸 1 日貼り付きで業務
当院は学校法人藤田学園が運営する 3 病院のな
かの 1 施設です。セラピストは全病院への関与を
の流れを体験させます。
5 月以降はPT・OT・ST合同での実習が始まり、
前提に学園のリハ部に入職する形ですので勤務場
シーティング、基本動作介助、呼吸療法、促通反
所は回復期リハ病棟だけではありません。3 病院
復療法、STの評価と訓練……と、徐々に技術的
全体のなかで教育を考えていく必要があります。
内容を入れていきます。
当院ではリハ部内に学術班が設置され、教育プ
ログラム全般の企画・実施を担当しています。入
当院では「トライアングル・ペアーズ(Tri-p)
」
という3 人 1 組のグループを基本単位とした教育
病院のプロフィール
●学校法人藤田学園 藤田保健衛生大学 七栗サナトリウム(三重県津市、218床 入院リハ、外来リハ、通所リハ)
内科、外科、リハ科、歯科/回復期リハ×2 病棟(106床)
、ほかに緩和ケア病棟、一般病棟、療養病棟
学園:大学病院×3 施設
セラピスト数 学園全体:183 名、うち七栗サナトリウム所属:77名
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回復期セラマネ1・2期生座談会
方法をとっています。3 人は指導者、中堅、新人
います。また、翌 2 年次にも、別の症例で発表さ
となるように組み合わせます。若手の人数が増え、
せています。1 年を空けて 2 回目の発表を聞くと、
組み合わせがきれいに整わない場合もありますが、
一人ひとりの 1 年間の変化や成長がとらえやすい
能力をみながらグループごとにバランスが取れる
ので、人事考課材料としても活用しています。
ように振り分けています。
臨床で患者さんをみる際には「複数担当制」を
とり、PT、OT、ST別に必ず2人のセラピストが1
長崎リハ――まずはすべての職員が
「みんなでやる」姿勢を持つことから
人の患者さんに関わるようにしています。技術的
中島 長崎リハビリテーション病院(以下、長崎)
指導のほか、退院に向けたゴール設定などをTri-
の中島です。理学療法士17 年目です。
pでディスカッションを重ねて決めていきます。
8 月∼10 月にかけては「症例検討会」を行って
当院は開設 6 年目とまだ日が浅く、明確な教育
プログラムは最初からあるわけではなく、若いス
います。新人には全員に担当事例を出して発表す
タッフや自分も含めた中堅メンバーと一緒に考え、
るよう求め、アプローチの振り返りの機会として
実践しながらやってきた経緯があります。業務マ
ニュアル等の作成と同時進行で取り組んできまし
た。当院の組織の特徴は、看護部やリハ部、医局
といった職種ごとの縦割りの部・課を作らず、患
者さんに関わるスタッフ全員を「臨床部」にひと
まとめにし、その全員を各病棟に専従配置してい
る点です。これは職種間の壁を極力なくすことが
目的です。
開院以来、力を入れてきたことは、ひと言でい
うと「みんなでやる」
「チームでやる」ことです。
今考えると、専門性はひとまずあとにするくらい、
チーム、仲間を意識した組織づくりをしてきたよ
うに認識しています。新人は 4月、5 月の約 2 か月
間、新人オリエンテーションとして事務部も含め
た全職種合同で行う
「集合研修」で教育を受けます。
長崎リハビリテーション病院の中島龍星さん
内容は回復期リハの制度の話、一つひとつの病
病院のプロフィール
●一般社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院(長崎県長崎市、143床 入院リハ、外来リハ、訪問リハ、通所リハ)
リハ科・脳神経外科/回復期リハ× 3病棟
所属セラピスト数 法人全体:139名
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若手・中堅セラピストの人材育成
態・障害の評価の話、ICF(国際生活機能分類)の概
年間の整理と院内での発表の機会を課しています。
念の話……と、さまざまなテーマです。
初台リハ――プリセプターは2年生
まずは全員が共通の目標に向け意識を一つにす
専門的内容はケースバイザーに質問
ること、みんなでやる姿勢を持ってもらうこと、
そして一方では、
「いろいろな職種の人が仕事を
池田 初台リハビリテーション病院(以下、初台)
している職場」であることを理解してもらう流れ
の池田です。作業療法士 21 年目です。
新人は法人の教育・研修関連の大枠のなかで、
になっています。
新人を対象とした初年度の集合研修は「職種共
入職後すぐ初期研修に参加します。多部門の新人
通」の内容のものを中心として年間を通して計画
が集まり多職種合同の缶詰め状態で 7 日間、接遇、
的に実施しています。OJT(職場内で行う研修)
理念の理解、チームアプローチなどの基礎教育を
については、職種のリーダーが中心となり、大枠
受けます。
入職から約半年後に新人全員を集め、ワークシ
の年間スケジュールを作成し、
「担当患者の受け
持ち開始」
「早出・遅出業務の開始」
「カンファレン
スへの参加」
「家庭訪問への参加」等々の新人スタ
ッフの自立目標時期に沿った実践がされます。
職種によって、プログラム内容や運用は異なって
いるのが現状です。
スケジュールに沿って指導的役割を果たす専門
職のリーダーが中心となり、新人職員の支援、評
価を行いながら「独り立ち」の最終的な時期を判
断しています。たとえば、
「大きな声で発言できる」
「カンファレンスの目的や流れが言える」
「リーダ
ー等に事前報告や結果報告ができる」などの項目
を設定し評価しています。
入職から 6 か月程度経った 9 月、10月には、
「フ
ォローアップ研修」を講義やワークショップ形式
で行い、その後、年度末には、
「症例報告」など 1
初台リハビリテーション病院の池田吉隆さん
病院のプロフィール
●社団法人輝生会 初台リハビリテーション病院(東京都渋谷区、173床)
リハ科・神経内科/回復期リハ× 4 病棟
法人事業所:病院、在宅総合ケアセンター× 2 施設(在宅生活を支える維持期の各種リハサービス)
セラピスト数 法人全体:460名、うち初台リハ病院所属:189名
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回復期セラマネ1・2期生座談会
ョップ形式の「フォローアップ研修」を行ってい
感触を持っています。
ます。各人には入職してから半年間の業務を振り
新人教育については当院でもプリセプター制を
返ってもらい、チェックリストを用いて自己評価
とっています。新人各人には 2 年生をペアとして
してもらいます。
つけ、業務的なルール、職員マニュアルの内容は
内容は、
「法人の理念を理解できたか」
「チーム
すべてペアを組む先輩が教えるようにしています。
アプローチは理解できたか」など36項目です。ワ
専門的な内容に関する疑問・質問には 4 年目以
ークショップでは実際の業務に取り組み始めてか
上のシニアスタッフがケースバイザーとなり、一
ら各人の感じた悩みの部分を出し合ってもらって
人では解決できないケースの悩みなどを相談でき
います。同期生がどういうところでつまずいたり
る形にしています。
悩んだのかを共有してもらい、解決策を示して少
OJTに関しては、新人は入職して免許証が届く
し気を楽にしてもらうのが趣旨です。実際、この
までに 1 か月ぐらいかかるので、その間にクリニ
研修への参加により救える人もいるのかなという
カル・クラークシップ(臨床参加型実習)的にま
ずは院内見学をして、
「学生時代とは違った少し
高いレベルで患者さんをみないといけないんだ」
というところの意識づけをしてから、先輩の模倣
と実施、評価を重ね、入職後のリアリティ・ショ
ックを避けつつ徐々に臨床の現場にソフトランデ
ィングできるようにフォローしています。
症例発表もPT・OT・STの各部門別に実施して
います。PT部門は12月∼2 月、OT部門は12月と 1 月、ST部門は2 年次に発表会を開いています。
湯布院――実践形式の活発な新人研修
プリセプターは3年生以上
佐藤 湯布院厚生年金病院(以下、湯布院)の佐藤
です。作業療法士33 年目です。
当院では、病院が採用した全職員に対し 1 週間
湯布院厚生年金病院の佐藤浩二さん
病院のプロフィール
●一般財団法人厚生年金事業振興団 湯布院厚生年金病院(大分県由布市、291床 入院リハ、外来リハ、通所リハ、訪問リハ)
リハ科・内科・神経内科・循環器内科・心療内科・整形外科/回復期リハ× 3病棟(180床)
ほかに一般病棟、療養病棟/他事業所:在宅総合ケアセンター× 2(在宅生活を支える維持期の各種リハサービス)
所属セラピスト数 湯布院厚生年金病院所属:163名
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若手・中堅セラピストの人材育成
の新人研修があります。座学の講義は受け身にな
る側」の人手が足りない状況です。2 年目以上の
りやすいので極力減らし、参加型、実践形式の活
スタッフの教育についてはかなり以前から人事考
発な研修プログラムを組んでいます。先輩セラピ
課制度を導入して年度ごとの目標を設定していま
ストを模擬患者に見立てて行う「医療コミュニケ
す。達成度等で客観的指標が出にくい側面もあり、
ーション訓練」
、5 ∼ 6 名で行うグループワークを
私一人で160人全員と面接するため、エネルギー
通じ、新人に患者さんへの接し方のマナー、チー
が要りますけれども、次年度につないでいくやり
ム医療、協働の重要性について教育します。その
とりはここである程度できていると思います。
後、新人は部門別に配属されます。
4 月∼ 6 月頃までは病院の主催で行う「院内研
修」
「心のリハビリテーション」と並んでリハ部
森之宮――スーパーバイズと
ケーススタディがOJTの2本柱
内でも月∼水曜日の 3 日間、各 1 時間を「新人職
椎名
員研修」の時間にあて、日替わりテーマで講義や
言語聴覚士30 年目です。
森之宮病院(以下、森之宮)の椎名です。
ワークショップなどを開いています。秋以降、年
新人教育の内容については皆さんのところとほ
度の後半には当院でも「症例報告」を行っていま
ぼ同じです。まずは入職後 1 週間ほど法人全体の
す。そして、よいものがあればPT・OT・ST各協会
研修があり、接遇や安全管理など一般的な内容の
の学会で発表させています。
研修を受けます。このあとリハ部門の新人研修が
当院ではプリセプター制を採用しています。新
5 月下旬ないし 6 月上旬頃まで続きます。PT・
人を担当するのは入職 3 年以上のセラピストです。
OT・ST合同で行い、リハビリテーション部の業
新人は先輩からリハの技術面はもちろん、記録の
務の説明、医療安全、感染予防、移乗動作などに
つけ方、書類作成、リスク管理、他職種との業務
始まり、ハンドリング技術など、かなり実技的な
などあらゆる内容を身につけて「独り立ち」して
内容も含めて、実際の治療の場で手技を指導して
いきます。また、複数担当制をとっており、1人
いき、さらにPT・OT・ST個別に各専門領域に関
の患者さんにPTとOTが 2 名ずつ主担当、副担当
する研修を行います。そのあとがいわゆるOJTに
を務め、交代勤務で担当者が入れ替わってもリハ
なります。
サービスの質を保てる体制になっています。
当院には現在、セラピストが約160名います。5
年未満の人たちが 6 割ぐらいいますから、
「教え
当院では 2 つの特徴的な制度がOJTの大きな柱
になっています。1 つの柱は、
「スーパーバイズ」
の制度を充実させていることです。実際にスタッ
病院のプロフィール
●社会医療法人大道会 森之宮病院(大阪府城東区、351床 入院リハ、外来リハ)
神経内科・リハ科を含む計 12科/回復期リハ× 3病棟(180床)
、ほかに一般病棟、小児障害者病棟
法人事業所:病院、診療所× 3 施設、訪問看護、居宅介護支援、福祉用具貸与、老健施設、特養など
所属セラピスト数 法人全体:290名、うち森之宮病院所属:206名
回復期リハビリテーション◆ 2014.1
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回復期セラマネ1・2期生座談会
う指導のしかたをしていけばよいのか、といった
ことについても実際の場面を通して直接学んでい
けます。教育上、効果的に機能していると考えて
います。
2 年目以降のスタッフについても、卒後研修に
類する形の集合研修を週に 1 回ずつ続けています。
後藤 新人への教育研修の流れのお話を中心に、
現状をご紹介いただきました。
新人研修では各施設とも多職種合同のスタイル
を重視し、社会人教育の視点で基礎からしっかり
指導されている印象です。新人教育の主担当は長
崎と森之宮が管理者クラス、初台が 2 年生のプリ
セプターとシニア主任クラス、湯布院が 3 年生以
森之宮病院の椎名英貴さん
上のプリセプター、七栗がTri-p のリーダーと、
違いが見られました。
フが患者さんの治療をしているところに管理職が
基本的な考え方では共通点が多いようですが、
一緒に入って、問題点の見つけ方、治療の方法を
それぞれの状況に応じていろいろと工夫をされ、
指導していく方法をとっています。新人だけでな
Off-JTとOJTが効果的に組み合わされて行われ
く中堅も含め、管理職が指導にあたっています。
ているようですね。
もう1 つの柱は、週に一度行っている「ケース
スタディ」です。管理職である主任 1 名はセラピ
スト5 ∼6 名からなるグループを担当し、各グル
中堅は若手に干渉しすぎ?
もっと自分を伸ばす努力と投資を
ープの発表者は担当患者さんの協力のもと、治療
後藤 入職 5 年未満の若手を中心に「教わる側」
場面のプレゼンテーションを行います。そのあと、
のスタッフの数が急速に増えてきたことによって、
グループ・ディスカッションを行い、患者さんに
現場で「教える側」の中堅や管理職ががぜん忙し
対する現行の評価と方法が適切か、改善すべき点
くなっているという状況がありますか。
がないかをみていきます。
佐藤 はい。相対的に以前よりも「教える側」の
ケーススタディのよいところは、1 年目のスタ
体力、総合力が下がっていると感じることがあり、
ッフはなかば一方的に知識を得る、
「教えてもら
提供できているリハサービスの水準としてはむし
う」という受け身の態勢になるわけです。それが
ろ、以前のほうが高かったのではないかと少し危
中堅になるにしたがって、
「今度もし自分が後輩
惧しています。
を指導していく立場になったら……」と考え、ど
後藤 そう感じるのはどのようなことですか。
のようなポイントを見ていけばよいのか、どうい
佐藤 「教える側」の教え方が過干渉になってい
14 回復期リハビリテーション◆ 2014.1
若手・中堅セラピストの人材育成
ると感じます。4 割の足りないほうの側が、6 割
休みでいないようなときに問題が発生することが
いる大勢の「教わる側」に手取り足取り技術指導
あります。問題解決能力、コミュニケーション能
している。これは非効率です。若手の様子を横で
力、スキルアップのために、中堅は後輩に対する
見ていて不安になるのか、
「もう見ていられない
干渉の程度の使い分けをもっと勉強していかなけ
わ」という感じで口を出したり手を出してしまう。
ればいけないと思います。
過干渉は逆効果だと思います。教わる側に「甘え」
の構造ができてしまう気もします。若手との間に
は適度な「距離感」が大事だと思います。
「教える側」はあくまで自発的に、まず自分自
どこまでが義務でどこから自己学習?
難しい棲み分け
池田 2、3年前まで当院では技術指導と称して、
身を伸ばす努力、エネルギー投資をすべきです。
終業後にリハ室で先輩が若手の疑問、質問に答え
その取り組む姿勢を若手に見せてもらいたいなと
る直接指導が日常的に行われていました。当時は
思います。毎年の学会を目指して原稿を書き、実
夜の10時、11時までリハ室の明かりが煌々とつい
際に発表するでも何でもいい。
「自分たちも先輩
ていて、あたかもそれが病院の風土のように感じ
のように自己研鑽しないといけないな」と感じさ
ていた部分もありました。そうした慣習がその後
せるほうが若手は伸びるのではないでしょうか。
の法人全体での業務改善、ワーク・ライフ・バラ
若手の側にももう少し技術職としての緊張感を
ンス推進の流れのなかで見直され、現在は大幅に
持ってほしいですね。うまくいかない、難しい、
減少しました。今は遅くとも夜 8 時にはリハ室の
わからない……誰だってつまずいたり壁に当たっ
入口とスタッフルームを施錠し、それ以降に残る
たりします。でも、そこで自分で考えないと。
「自
スタッフには届けを出してもらい、1 つの会議室
己解決しないと先に進まないんだ」という自覚を
のみを使用可能としています。自己学習は、自分
しっかり持ってほしいと思います。
でやるという認識にシフトチェンジしている段階
奥山 当院の場合、技術的指導の場面で逆に、も
です。
っと直接的に過干渉にならなければいけないのか
後藤 「教わる側」の反応はどうですか? 教え
なと思うこともあります。訓練効果に直結するよ
てもらえないと、不満を感じるような意見は出て
うな患者様の触り方や誘導の仕方などは、口だけ
いませんか?
でなく実際に見せて、触らせて、やらせて学習さ
池田
せる必要があると思っています。
OJTやOff-JT、さらには院外研修等の教育研修
すみません、何も教えないのではなく、
一方で、コミュニケーション力が問われる他職
システムを駆使し、時間内に最低限度のこと
種とのやりとりなどは、もう少し自分自身で考え
を効率的に行っていることが前提です。その
る機会を持たせてもよいのかもしれません。当院
プラスαの部分の考え方の違いでしょうか? 従
の場合、新人などが失敗体験をしないようにと、
来のやり方で教育を受けた私自身、今でもどこま
先輩が他部門とのやりとりをはじめ、根回しをし
でそのプラスαの部分をやればよいかジレンマを感
すぎるぐらいするものですから、先輩がたまたま
じています。
「その意識を変え効率的にやるよう
回復期リハビリテーション◆ 2014.1
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回復期セラマネ1・2期生座談会
に」と上司からいわれています。ただ、先輩は後
クさせたキャリアパスの作成にとりかかっていま
輩をもっと時間をかけて教えたいという意見は確
す。
かにあります。
後藤 手取り足取り導くのではなく、
「道は作る
たとえば、プラスαの部分を基本、自己学習とし
けど歩くのは自分だよ」というスタンスですね。
た場合は何か問題になりますか?
佐藤 日本看護協会がラダー形式で看護師の熟達
佐藤 若い人たちが「自分で学んでいくんだ」と
度の評価を採用していますが、セラピストにも似
いうところでベースがきちんとそろわないと、教
たような形の評価ツールが要るだろうとは思いま
えられる側も教える側も成果が上がらないまま疲
す。それぞれの職種に最低限求められる知識と技
れていくような気がします。
術を、
「入職…年時にはここまで達していなけれ
椎名 「すべて自分で学ばなければいけない。す
ばいけない」という形で示した人事考課制みたい
べて個人の問題なんだ」といってしまったときに、
なものです。
若手の一部または全員が質的に一定水準に達しな
ただ、その導入が許されるような現場の環境が
いまま放り出されている状態になっているとすれ
全国的にあるかというと正直、疑問です。多くの
ば、質的に届いていない部分のすべてについて病
現場では、2 年目あたりの職員が「1 日18 単位と
院側は何らかの教育をすべきだし、それは病院側
ってくれ」といわれています。患者さんの重症度
に求められる義務だ」という考えも出てくると思
によって多少配分は変えていると思いますが、5
います。どこまでが自分たちが求められる義務で、
年目、10 年目のスタッフと同じような形で担当さ
どこからが各自のスペシャリストとしての技量を
せられて、そこで毎日一定の 18 単位をきっちり
高めていくためのプラスαの自己学習の場になる
取ってもらうという感じになる。そういう環境が
のか、そのあたりの棲み分けは非常に難しいわけ
本来いいのか。根深いところがあるのではないか
ですけれども、
「すべて自己学習」といってしまう
と思います。
ことの危うさについては注意が必要だと思います。
後藤 ある程度単位的な業務をしなければいけな
中島 当院では開院以来、
(スーパー)バイザーを
いということになると、別に研修の時間を作って
置かずに今まできました。その結果、
「教わる側」
行うことはなかなか難しいです。現場で患者さん
にそれぞれメリット、デメリットが生じました。
「だ
をみていくなかでどうやって教えていくかが現実
れに相談していいかわからない」
、これはデメリ
的には大事になってくると思います。
ットです。
「自分のほうから兄貴分(先輩)を見つ
中島 OJTについてもできれば一定の標準化が必
けにいく」
、この積極性はメリットだと思います。
要な気がします。教える人の力量によって、まっ
新人たちは意外に真面目で、さまざまなタイプの
たくもって成果が違うからです。中途採用も含め
先輩たちの様子を観察しながら自分の将来の姿を
ていろいろな先輩方がいるなかで、標準化された
重ね合わせているようです。
ラインができていないと、新人・若手からみてあ
現在、開院以来取り組んできた臨床・学術関連
の経験と実績、職員の個人目標、人事考課をリン
16 回復期リハビリテーション◆ 2014.1
まりにも不平等なことも出てくるのではないかと
思います。
若手・中堅セラピストの人材育成
病院の理念やビジョンを実現する
ための目標を定める
当院ではスタッフの教育目標が 9 項目あり、こ
れらが人事考課を行う際に段階的に評価されます。
評価は本人が自己評価用に使うシートをチームマ
奥山 先輩が後輩を教えなくてはいけないことも、
ネジャーとわれわれ各部門のチーフ、主任、サブ
後輩が先輩から教わらなくてはいけないことも、
マネジャーがそれぞれ評価し、それらを照らし合
法人や病院、部門が掲げる方針の実現のためだと
わせながら内容をフィードバックしていきます。
思います。
中島 当院でも今それをやっているのですけれど
リハ部門の2013年度の目標は病院の方針のなか
も、目標と人事考課がなかなかリンクしません。
から、①専門性と科学性の高い医療実践をする、
奥山 当院では一昨年リンクしました。ただ、専
②選ばれる病院になる、③安心、安全で最短で最
門職の技術的な面の評価がまだ抜け落ちています。
高のリハ効果を保証する――の3 つを選び、スタ
椎名 当院でもそこを人事考課の中にどうやった
ッフルームに貼り出しました。そして、
「この 3
らうまく落とし込めるかを検討しているところで
つの実現のため先輩は後輩に何を教えるべきか、
す。どうしても、こうした人事考課で使うシート
各個人が自分に足りない部分はどこか常に意識し
のフォーマットというのは、医療職向けの仕様と
よう」とリーダー間で協力してやり始めました。
いうよりは事務系の職員が使用しているものが雛
当院では毎年年始めにスタッフ各人に「目標管
形になって要ることが多いと思います。項目別に
理シート」を書かせています。これは、個人の目
つけていこうとしたときに「業務の実態とうまく
標より先に組織の目標があり、その目標に向かっ
マッチしていない」部分が出てきます。
て自分が何をすべきかという目標を書き記し、そ
後藤 目標を人事考課にリンクさせたほうが、評
れが年間を通じて実現できたかどうかチェックす
価を受ける側も学習意欲がわく、成長しやすいと
る目的で始めました。年度の中間時点で面接を行
いう感じを持ちますか。
い、取り組み内容と進捗状況を評価し、年度末に
奥山 はい。それが昇給などに反映するといわれ
再度、自己評価と他己評価のWチェックを行って
ればそれなりに必死になると思います。
います。先々はそれが人事考課につながり、給料
佐藤 各現場スタッフの考えを聞き取っていくに
や昇進に結びつくようにしたいと考えています。
は非常によいツールですが、自分たちの医療の技
池田 七栗さんでは病院の理念やビジョンを実現
術的な側面を評価に落とし込んでいきづらい点、
するために個人が何をするかといういちばん妥当
また、原資に限りがあるなか、複数名を同等に評
な目標の決め方でいいなと思いました。
価すれば絶対評価が相対評価に変質し、低報酬と
当院の目標の書き方は似ていますが、
「社会人
なってしまう点など、限界があると感じています。
としての目標」
「専門職としての目標」
「チームの
後藤 スタッフのモチベーションをどう上げてい
一員としての目標」という 3 つの目標があり、こ
くか、評価がそこにつながっていかないと、その
の 3 つをそれぞれどう達成するか、個人レベルの
評価自体が逆に不満につながり、マイナス効果に
自己管理目標として掲げてもらっています。
なってしまいかねません。いかに公平に評価でき
回復期リハビリテーション◆ 2014.1
17
回復期セラマネ1・2期生座談会
るかが大事だと思います。
セラマネコースで学んだ18日間
を振り返って
で説明できることだし、逆に言葉で説明できるこ
とというのは、下の人たちにもきちんと伝えてい
くことができる、だから技術だと思うのです。自
分が教えを受けたことを次の世代の人たちに伝え
後藤 回復期セラピストマネジャーコースを受
ていく、そういう意味でとても貴重な機会を与え
講・修了後、皆さんは再び各持場で管理者的な仕
てもらったなと思っています。
事を担っておられると思います。セラマネコース
中島 あとになってセラマネコースの18日間の研
で学んだ 18 日間の経験を現在振り返ってみて、
修が一つのきっかけになったのかなと思っている
どのようなことを感じますか。
ことは、日々自分でさまざまな意思決定を行うに
池田 「マネジメントの考え方を回復期の現場に
あたって、判断基準といいますか、①自身の現在
活かすことが改めて必要だな」という観点にさせ
の立ち位置と考え、②法人や上司の考え、③病
てくれた研修だったなと思います。先ほど、プロ
院の後輩スタッフの考え、④患者さんはどう感じ
を招いて学ぶという話が出ましたが、マネジメン
ているのか――と、大きくこの 4 つぐらいの視点
トをすることは、われわれセラピストはやはり苦
で分けて考えられるようになったことかもしれま
手だと思います。必要な知識とか技術はほとんど、
せん。
患者さんとの直接的な関わりのなかで身につけて
後輩の教育にしても、上司がどう考えるかとか、
きたためかもしれません。回復期リハ病棟でマネ
病院がどう考えるか、自分はどうしたいのか、と
ジメントをするといっても「何をどういう観点で
いうことをそれぞれ別個にまず整理する必要があ
見たらよいかがわからない」という苦手意識があ
るのだろうし、そこからがもしかしたらセラマネ
ったのが、少し払拭できたと思います。どこの職
の役割なのかなと思ったりしています。
場にもマネジメント的な考え方がベースにないと
最近意識しているのは「何でも基本が大事だな」
だめなんだなと最近思っているところです。
ということです。患者さんに行う評価、病態・障
椎名 私たちの世代は先輩の背中を見て育ってき
害解釈・目標設定・治療計画・治療の実践など、
た世代です。先輩がたはこれほど大きな組織を動
一つひとつをしっかり理解しながら相対していく
かす経験をしたことがなかったので、だれもマネ
という基本姿勢が、職種の専門性を伸ばしていっ
ジメントについては教えてくれなかった。そのう
たり、他職種と一緒によりよい協働ができる関係
ち、組織がどんどん大きくなり、何十人何百人と
をつくっていくのかなと感じています。その意味
いう人たちをまとめていかなければいけなくなり
で、基本を見失わないようしっかりやっていきた
ました。みんな何となく漠然と感じていたと思う
いと思います。
のですが、マネジメントの必要性をきちんと学ば
奥山 PT人生で考えるならば 30 年以上やってい
せてもらったということが一つです。
くと思います。今 18 年目になって、
「ここでマネ
それから、マネジメントというのはやはり技術
ジメントの業務に徹していかなければいけないの
でもあると思うのです。技術であるからには言葉
かな」と、ちょっとジレンマがあります。本当は
18 回復期リハビリテーション◆ 2014.1
若手・中堅セラピストの人材育成
PTとして患者さんをもっともっとみて、知識を
ます。
増やし、技術的なことを身につけていく時期では
セラマネは必要なものだと強く思っていましたし、
ないのかという迷いも正直あります。
受けて本当によかったと思います。
ただ、これまでやってきてスタッフの数も80
佐藤 私自身はPTOTST委員会の立場でこのコ
名という規模になってきたなかで、
「マネジメン
ースの立ち上げに関われたことを嬉しく思います。
ト業務は必要なんだな」ということは肌で感じて
当院では現在、私を除いて 6 名のセラマネがい
います。自分自身、そちらへシフトする時期なの
ます。受講後、彼らを見ていて感じるのは、主任
か、確かに迷いはありますが、セラマネは絶対的
やリーダーとして、各自が所掌するスタッフのま
に必要な役職、機能だと思っています。自分が歩
とめ方を具体的にイメージできるようになったこ
んできた時期と照らし合わせると、
「ちょうどよ
とです。セラマネコース受講をきっかけに各人が
い時期にこのセラマネのコースと出会えて受講で
以前の自分を振り返り、
「いかに漠然としたまと
きた」と思っています。
め方をしていたか」に気づいたのだと思います。
当院にはセラマネはまだ私ともう一人の受講生
この変化は、後輩たちに向けた考え方の提示とし
がいるだけですが、80人を統率するならばマネ
ても非常によかったと思っています。PTはPT、
ジャーは 4 ∼5人はほしいと思っています。何人
OTはOTで自分たちの職能をもっと開花させてい
に 1 名のセラマネが必要なのか、また、一人ひと
くためには、まわりの他職種のセラピスト、さら
りのPT、OT、ST人生を考えたときにそれぞれ専
には看護・介護スタッフなど、
「セラピスト以外
門職種としてどのように働いていくべきなのか、
の他職種とも力を合わせていくことが有益なん
それらの形づくりがこれからの課題だと思ってい
だ」というイメージが具体的に持てたと思います。
回復期リハビリテーション◆ 2014.1
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回復期セラマネ1・2期生座談会
セラマネコースでは 120 時間に及ぶ講義・実習
等を通じさまざまな知識や技術を教わりますが、
さわむらせいし
おおたひとし
受講者にとって大きいのは、澤村誠志、大田仁史、
はまむらあきのり
いしかわまこと
さいとうまさみ
くりはらまさき
素晴らしい研修ではないかと思っています。
頭で覚えた知識というのは忘れちゃうんですけ
ど、感動であったり感覚っていうのは忘れないで
浜村明徳、石川 誠、斉藤正身、栗原正紀……こ
すよね。そういうすごく貴重な場を与えてくれる。
れらリハビリテーション業界を張ってこられたお
同じ気持ち、マインドの仲間が全国のさまざま
歴々の方々揃い踏みのなかで本人たちから直接、
なところにいて、同じように頑張っている、その
話が聴けることだと思います。一人ひとりの生き
ことを知るだけですごく励みになりますし、同期
ざまに触れるような貴重な時間も味わえます。リ
の仲間同士、何か困ったら気軽に相談もできます。
ハビリテーション・マインドを強く感じられる場
18日間のこのコースは、マネジメントの勉強
でもあります。
をする場であると同時に、気の合う仲間のできる
このセラマネコースを志願して入ってくる人は
場でもあります。そして、参加者一人ひとりがセ
前向きな子たちだろうと思います。現場で頑張っ
ラピストとしてキャリアを積み、学び続けていく
てくれている人たちを見ると私は大変頼もしく感
上での貴重な糧になる場だと思います。
じます。このコースはさらに発展していくだろう
と思っています。
リハの真髄を感覚的に感じられ
学び続ける上で貴重な糧になる場
今日は後輩セラピストの育成について各病院の
現状を紹介いただき、工夫や悩みなども語ってい
ただきました。熱意溢れる皆さんのお話ぶりから、
日々、後輩をはじめスタッフ一人ひとりのことを
真剣に考えながら教育システムづくりに力を注い
後藤 チームアプローチの基本を学ぶ場というの
でいる様子が強く伝わってきました。今後も取り
は実は、なかなかありません。人を教える、ある
組み状況を共有していければと思います。
いは臨床のなかで自分たちが行う上でも、やはり
今日は本当にありがとうございました。
チームアプローチの基本をちゃんと知った上でや
ることが必要だなと思います。
こういう仕事をやり続けていく上では一生もう、
学んでいかなきゃいけない。それもだれかにやら
されて行う受身的な学習ではなくて、能動的に学
び続けていかなければいけない。ただ、自分で能
動的にやるには動機づけが必要ですし、やはり
「仲間」が必要なのではないかと思っています。
そういう意味ではこのコースが自分自身の動機づ
けにつながること、あとはやはり学問的な話だけ
ではなくて感動的な話がいっぱい聞ける。リハビ
リテーションの真髄をすごく感覚的に感じられる
20 回復期リハビリテーション◆ 2014.1
出席者 ありがとうございました。