東アジア大陸からの贈り物

講演タイトル:能登半島輪島における大気中フッ化物イオン実態調査
:Study on atmospheric fluoride ion at Wajima on Noto peninsula, Japan
東アジア大陸からの贈り物
金沢大院薬
○唐
寧,楊
小陽,山田
丸,亀田貴之,鳥羽
陽,早川和一
日本と東アジア大陸との友好交流は,2000 年以上の歴史を持っています。日本海を超え,
贈られてきていた東アジア大陸の文化は,日本文化を形成する源となり,いまや大きく相互
依存しながら,経済や産業の発展を遂げてきました。しかし近年,アジア大陸で起こってい
る急激な産業発展に伴って,地理的に偏西風の風下に位置する日本には,黄砂や硫黄酸化物
などの有害化学物質も運ばれてくることがわかってきました。しかも,その量は年々増える
傾向にあります。黄砂による被害は,飛行機の運行障害,自動車や洗濯物の汚れ,地球温暖
化への寄与などがあり,硫黄酸化物による被害は,土壌の酸性化,植物の枯れ,文化財の腐
食などがあります。さらに,これら有害化学物質による被害は,われわれの健康にも影響を
及ばし,喘息,気管支炎やアレルギーなどを引き起こすことが懸念されています。
そこで,本研究グループでは,東アジア大陸から長距離輸送されている有害化学物質の実
態を把握するために,その飛来を最も敏感に感知できるように石川県能登半島の先端に位置
する,21 世紀 COE プログラム(平成 14~18 年度,拠点リーダー:早川和一)で整備した大
気観測ステーション(旧国設輪島酸性雨測定局)において,観測を継続しています。その結
果,中国で大量に石炭を使用する冬季に,その不完全燃焼に由来して発生するベンゾ[a]ピレ
ンに代表される発がん性/変異原性/内分泌撹乱性多環芳香族炭化水素類やフッ物の濃度が
上昇していることがわかりました。本研究では,特にフッ物に焦点を合わせ,日本海を超え
て飛来する長距離輸送を検証しました。